2020年4月11日土曜日

歴史に残る機体24 ロッキードF-80


チのジェット戦闘機への対抗手段として開発されながら、朝鮮戦争で初投入されたF-80はどこまで戦力になったのだろうか。
 1950年11月8日、直線翼のジェット機4機編隊が北朝鮮新義州の飛行場を急襲した。F-80シューティングスター各機は機首搭載の50口径機関銃で飛行場を掃射すると対空火砲が周りで炸裂した。
シューティングスター各機は数ヶ月前に現地到着したばかりだった。北 朝鮮軍は圧倒的戦力で南を侵攻し、その後国連軍が事態を一転させた。第51航空団所属のF-80は米軍占領下の平壌から中国国境付近に飛び、残存する北朝鮮軍に攻撃を加えていた。
 3回目の通過飛行を終えたエヴァンス・スティーブンス少佐、ウィングマンのラッセル・ブラウン中尉は高度20千フィートへ上昇し、残る僚機の援護にあたった。すると、ブラウンが約10機の戦闘機が高高度からこちらへ突進してくるのに気づいた。
 歴史初のジェット戦闘機の空中戦で、米側は速力が劣る機材を使っていた。

ナチのジェット戦闘機への米側対抗手段として
米国初のジェット機はベルP-59エアラコメットで1942年10月初飛行したが一回も作戦投入されていない。エンジンの信頼性が低く、速力も410マイルがやっとで、P-51マスタングに及ばなかった。1943年に連合軍情報部はナチのMe-262は速力540マイルで作戦投入寸前とつかんだ。英国製ターボジェットでジェット戦闘機製造の要請がロッキードに下った。わずか6ヶ月で。
 伝説の航空技術者クラレンス・「ケリー」・ジョンソンがアールデコを思わせる優雅な機体を設計した。完全な秘密体制で試作機はわずか143日で完成し、作業に130名が投入されたが、ジェット機製作とはだれも知らなかった。
 試作機XP-80は時速500マイル超で、当時のピストンエンジン戦闘機の水準を超えた。当初のデハヴィランド製ゴブリンエンジンは強力なアリソンJ33ターボジェットエンジンに換装された。
ただし、主翼は直線翼で尾翼は当時のピストンエンジン戦闘機の形状のままと、音速付近で不利な設計だった。XP-80は燃料ポンプの不良でロッキードの主任テストパイロットのみならず当時のエース、リチャード・ボングの命を奪った。
 Me-262は手強い相手になるはずだったが、ドイツは燃料不足や産業基盤の悪化で戦局を覆せなかった。
 試作型YP-80A4機が1945年にヨーロッパに派遣され第二次大戦が終結した。二機は英国に残り、一機は事故で喪失した。残る二機はイタリアで戦線に投入されたところで大戦が終結し、敵機との遭遇もなかった。
 戦後にロッキードはシューティングスターを1,700機生産し、制式名はF-80に変わった。F-80B型が続き、射出座席を採用し、次のF-80Cではエンジンをさらに強力なJ33-A-35に取り替え時速600マイルとし、翼端燃料タンク(260ガロン)で航続距離が1,200マイルになった。
 米国初の実用ジェット戦闘機は次々に記録更新していった。1946年には米大陸横断飛行をジェット機で初めて実施し、同年に大西洋横断にも成功。特別改装のP-80Rで短期間ながら623マイルの最高速度記録を樹立した。

朝鮮での空戦
北朝鮮のYak-9戦闘機やIl-10強襲機が相手ならシューティングスターは十分に有利でもMiG-15は別だった。
 F-80より先進設計のMiG-15は後退翼で、ロールスロイス・ニーンをリバースエンジニアリングしたVK-1ターボジェットを搭載した。英国政府が同エンジンのソ連売却を1946年に承認したのは驚くべきことだ。MiG-15の速力は670マイルでシューティングスターを上回り、23ミリ機関砲2門、37ミリも1門と重武装だった。
 MiGは中国内戦の最終局面で登場したが、朝鮮で存在が確認されたのは1950年11月1日のことで、中国から飛び立ちF-51マスタング編隊を待ち伏せ攻撃し、一機を撃墜している。大戦時のソ連ベテランパイロットが空中戦で活躍していた。
 冒頭の11月8日に話を戻すと、スティーブンスとブラウンは左へ急転回し、接近する敵機を射撃する態勢に入った。ブラウン機のM3機関銃4門が弾づまりしたが、敵機に数発を命中させた。このMiGは反転降下し、ブラウンが追尾し時速600マイルで地表に向かった。ブラウンがさらに数発命中させると相手は爆発炎上した。ブラウンはぎりぎりで機体を引き起こした。
米側はジェット戦闘機で初の空中戦で撃墜に成功したと主張。
だが、ソ連側戦史では11月8日の記録は全く違う。MiGパイロットのウラジミール・ハリトノフ中尉は米戦闘機一機の待ち伏せを受けたが降下で逃げ切ったと報告している。ロシア記録ではジェット戦闘機同士の初の空戦は11月1日で、MiGのパイロット、セミヨン・ホミニッチ中尉がF-80(フランク・ヴァンシックル中尉操縦)を撃墜したとある。米側記録ではヴァンシックルは地上砲に撃墜された。いずれにせよ、ブラウンの交戦後に海軍のF9Fパンサーがミハイル・グラチェフ大尉操縦のMiG-15を撃墜し、これは双方の記録が一致している。
 ジェット空戦で初の撃墜で主張が食い違うが、MiG-15が速力、操縦性、武装のいずれもF-80をうわまわっていたことで意見の相違はない。米記録ではシューティングスターは17機を空中戦で喪失し、撃墜したMiG-15は6機、その他プロペラ機11機だった。B-29大編隊をF-80、F-84混成100機で護衛したが、MiG30機の待ち伏せを受け、B-29が3機撃墜されたのが1951年4月12日のことだった。
 空軍は急いで最新鋭機F-86セイバーを派遣し、これでMiG-15と互角に戦えるようになった。中国国境近くの「MiG横丁」上空で空中戦が続き、撃墜実績が米側に好転した。F-80は対地攻撃任務に回され5インチロケット弾8本あるいは千ポンド爆弾2発を主翼下に搭載した。
 朝鮮で対空砲火によるシューティングスター喪失は113機に及んだ。例として1952年11月22日、チャールズ・ローリング少佐は国連軍を釘付けしていた砲兵陣地の攻撃中に対空砲の命中弾を受けた。少佐は傷ついた機体を陣地に突入させ、死後に名誉勲章を受けた。
 朝鮮にF-80飛行隊10個が展開したが、1953年までにすべてF-86セイバーあるいはF-84対地攻撃機に転換した。うち、一個飛行隊はマスタング供用に戻った。米軍でのシューティングスター供用が減ると、余剰機は南アメリカ各国の空軍部隊に払い下げられ、60年代70年代まで使用された。
 朝鮮戦線でシューティングスターはすでに旧式化していたが、2形式の機体の原型となった。知名度が低いのはF-94スターファイヤー複座レーダー夜間戦闘機で朝鮮で6機を撃墜し、MiG-15も初の夜間ジェット空戦で撃墜している。
 もう一方が伝説の機体T-33複座ジェット練習機だ。6,500機が生産され、40カ国の空軍部隊で供用された。CIAが進めた1961年のキューバ侵攻ではB-26爆撃機を三機撃墜し、艦船数隻を沈めている。
 20世紀後半に世界各地のパイロット数千名がT-33で訓練を受けた。ボリビアが2017年にT-33供用を終了し、同機の運用に幕が下りた。
 1940年代に急ぎ開発された米国初の実用ジェット戦闘機は予想外の長い供用実績のもととなった。■

この記事は以下を再構成したものです。

Meet the F-80: America's First Fighter Jet

It wasn't great but it was a start.
April 9, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: HistoryNorth KoreaMilitaryTechnologyWorldF-80


2020年4月10日金曜日

SR-72はすでに完成している...?

SR-71ブラックバードは世界最速、最高高度を飛行する性能のまま1990年代末に引退した。多分早すぎたのだろう。

衛星より早い
スパイ機の任務は大部分が衛星偵察に取って代わられたとはいえ、衛星が完璧な解決策とは限らない。衛星が正しい位置につくには最長24時間かかるので、SR-71ブラックバードより遅い。同機ならLAからD.C.までわずか1時間で移動できる。
衛星にはもう一つ弱点がある。攻撃に脆弱だ。衛星の軌道は予測できるため、敵対国家が衛星の飛行経路を追尾し、いったん有事になれば撃墜できる。これは深刻な脆弱性につながる。
無人機が偵察に広範に投入されているが、飛行速度は高速といえず、ステルス性能がないと攻撃に脆弱だ。
しかし恐れる必要はない。ロッキードのスカンクワークスに解決策がある。SR-71の2倍で飛行する新型機だ。
スカンクワークス
実態が不詳のままSR-72の性能で観測を呼んでいる。SR-72はマッハ5以上の極超音速飛行性能を有しているはずだ。
SR-71は飛行前準備からして大変だった(宇宙機打ち上げのようなカウントダウンが必要だった)が、SR-72ではそこまでの準備作業は必要とならないはずだ。
SR-72事業についてオーランド・キャヴァルホ、ロッキード・マーティンの航空部門執行副社長がフォートワースの航空宇宙展示会で以下説明している。
「詳しくお話できないが、スカンクチームはカリフォーニア州パームデールで飛行速度への挑戦に取り組んでいる」とし、「極超音速はステルスと同様の効果がある画期的技術で、ブラックバードの2倍3倍の飛行速度が実現する。保安上の規則によりマッハ5以上とだけお伝えしておく」
SR-72の実態は不明のままだが、ロッキード・マーティン広報資料によればスクラムジェットとタービンエンジンでマッハ5超の速力を実現するとある。機体サイズはSR-71とほぼ同じで2020年代末ごろに供用開始するといわれる。
すでに完成しているのか
SR-71の事案どおりなら、SR-72の存在は供用を開始しても当分知られることはないはずだ。つまり、SR-72はすでに飛行開始している可能性もある。■

この記事は以下を再構成しました。

Could a Mach 5 SR-72 Spy Plane Already Be in the Sky?

April 7, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: SR-71SR-72TechnologySpy PlaneHypersonic
Caleb Larson is a Defense Writer with The National Interest. He holds a Master of Public Policy and covers U.S. and Russian security, European defense issues, and German politics and culture.

2020年4月9日木曜日

トランプ憎しで取材放棄する米メディアの横暴さはなんとかならないのか


これはひどい。何様のつもりなのでしょう。メディアが国民の信用を失っているのは日米共通でしょうが、報道しない自由などと自分勝手な価値観を変えようともしないからでしょう。メディアのビジネスモデルも変わり、もはや裸の王様ですね。既存メディアは解体に向かうべきです。国民は愚かではありません。

ワイトハウスで定例記者会見が中止となった際は民主主義の終焉と騒がれた。記者会見は復活したが、やはり民主主義の終焉と呼ばれている。

女優ジェイン・リンチはツィッターでドナルド・トランプ大統領に連日の報道機関向け背景説明をやめ、報道陣にも取材中止を求めた。▶左翼活動団体 MoveOn.org も大統領の連日の背景説明の取材を中止するよう求めている。▶この流れに便乗する政治分野の専門家も現れた。▶「説明会の生中継はやめたい。情報が誤っているからだ」とリベラル派のMSNBCホスト、レイチェル・マドーが自らの番組で述べた。▶「もうたくさん。アメリカ国民には大統領の説明よりよい内容を聞く権利がある」と民主党の戦略担当マリア・カルドナが記している。「大統領は毎日の報道記者会見を中止し、専門家に場を譲り、アメリカ国民の不安に希望を与えるべきであって、これ以上の恐怖を感じさせるべきではない」▶最悪なのは記者会見終了の動きが本当にメディア大手にあることだ。

ニューヨーク・タイムズ主筆ディーン・バケットがなぜホワイトハウスでの背景説明は取材する価値がないかを説明している。▶「最近はニュース性がほとんどない。もちろん、本紙にはその様子を伝えるべき権利があるが、ニュース性がある場合に限られる」「だがそんな状況は発生していない」▶3月25日付のニューヨーク・タイムズ記事ではメディアがトランプ大統領の記者会見報道を中止する理由は報道すれば「誤った情報」とメディアが呼ぶ内容が拡散するからだという。

タイムズの見解と逆に背景説明は毎回人気を集めている。タイムズ記事の出だしはこうだ。「トランプ大統領は視聴率を集めていることに、一部ジャーナリストや公衆衛生専門家がこれを危険な動きとみなしている」▶ワシントンポストのコラムニスト、マーガレット・サリバンは報道陣向け説明の内容について「相応に調整」する必要があると報道陣に諭し、説明会が政治集会の様相を示しており、大統領の政治目的に利用されているとする。▶「トランプは誤った情報を拡散して自分の政治的利益に使っている。自らを戦時大統領と表現しているが、我が国が厳しい局面にあり自らが導いているとあたかも21世紀のフランクリン・デラノ・ロウズヴェルト(FDR)だといわんばかりだ」(サリバン)

FDRは全国向けラジオ番組を自らの政治的利益に利用しなかった。メディアがホワイトハウスでのコロナウィルス背景説明の取材を中止したいのはトランプの得点につながることを恐れるからだ。

コロナウィルス発生前にホワイトハウスで定期記者会見が中止され大騒ぎした報道機関がこの調子である。記者会見を「民主制度の必要条件」とまで言うメディアまであったのに。▶国民誰もがホワイトハウスの発表を見守る中、国の維持に機能する場にメディアは興味を示さない。どうなっているのか。

ニューヨーク・タイムズ他ホワイトハウスが誤った情報を拡散していると非難しているメディアは中国の宣伝工作をそのまま伝えることになにも問題は感じていないようだ。▶先週もはやりニューヨーク・タイムズはじめ数紙が米国でのウィルス死者数が中国を上回ったとの記事を掲載したが、圧政の姿勢を見せる共産主義政権が発信した情報は信用できない。繰り返し自国国民や世界に嘘をついてきた国である。

しばらく前にもトランプ政権が中国からの旅行者を拒絶する決定したことをさんざん批判する大手メディアが続出したが、この措置は大筋で世界保健機関による提言に沿ったものだった。▶問題はWHOが中国提供の情報に依存していることだ。

メディアが権力に疑いの目を持つのは健全であり、そうあるべきだ。ただし、懐疑の目は絶対的な権力にこそ向けられるべきであり、中国共産党政権がまさしくこの例だ。▶にもかかわらずメディアはトランプ政権叩きに集中しており、真実を伝えることは二の次のようだ。

結局、ホワイトハウスの記者会見が減っても民主主義は終焉しない。アメリカ国民多数が家庭にこもり通常より多くの国民が大統領や政権がこの危機をどう乗り越えるかを知りたがっている。▶現政権のパンデミック対応は完璧と言い難いが、メディアが国民多数が見たがっている中で大統領を取材しないとは滑稽千万だ。

実際に大統領に毎日の会見取材を取りやめるメディアがあることをどう思うのか聞いた記者があったが、大統領の反応にはいかにもと思わせるものがあった。▶「アメリカ国民が最終的に決定する。見たくないなら見なければ良い、「メディアが合衆国大統領の肉声を伝えないと判断すれば、民主主義は終わりだね」▶メディアはな現下の国際危機の中で自己修正を行い、失った信用を回復してもらいたいものである。▶だが、大統領のマイクスイッチを切るようでは信頼回復は程遠いと言わざるを得ない。■

この記事は以下を再構成したものです。


Why Is the Media Censoring Trump And Showing Chinese Propaganda?

A double standard is afoot.


April 5, 2020  Topic: Politics  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: Donald TrumpCoronavirusChinaCOVID-19Communist Party Of China


This article by Jarrett Stepman first appeared in The Daily Signal on April 4, 2020.

2020年4月8日水曜日

CSIS主催のアジア太平洋会合がF-3を議論

F-3開発はインド太平洋の観点で見れば日本だけの思惑で実現できる事業ではないようです。また2020年代以降に始まる新たな戦闘機開発事業は少なく、それだけF-3に各国も注目しているのでしょう。CSISはこのフォーラムを今後も続けると思われますので、情報公開が楽しみです。


本が開発を目指す、次期戦闘機がワシントンのシンクタンク主催の非公式意見交換の場で話題となった。日本、米国、英国、オーストラリアの各国関係者が新型機の要求性能や期待内容を話題にした。
戦略国際研究センター(CSIS)が立ち上げた1月の第一回会合に25名程度が参加したという。内訳は政府関係者、企業幹部、4カ国のシンクタンク研究者だったとCSISで米国の同盟国関係をまとめるパトリック・ブチャンが述べている。
同会合は外交用語で「トラック1.5」と呼ばれる作業部会とされ、正式な政府間会合と舞台裏外交の中間の位置づけとブチャンは説明。正式な会合として政府関係者が個人の意見として議論に加われ、チャタムハウスルールで公式表明は回避したという。 
作業部会の司会はCSIC副理事長でアジア担当のマイケル・グリーンだった。グリーンは1980年代から90年代にかけ展開され、誤解と失望に終わったFS-X事業の二の舞は避けたいとの意気込みで作業部会をまとめた。ブチャンは同事業から生まれたF-2は性能不足だったと表現。
FS-X事業での日米協力関係は両国の緊張が高まる1980年代後半に生まれた。そして現在はトランプ政権が在日駐留米軍経費の日本側負担を5倍にする要求を付きつけ日米で摩擦があらわれている。
当時との違いは中国の軍事装備近代化が進展したことで、次期戦闘機の行方にも影を落としている。日米双方とも日本の要求水準を満たせない装備品にしてはいけないと自覚している。
日本政府関係者がそのまま出席することは困難と理解したCSISは作業部会の形にして日本も議論に加われるようにしたとブチャンは説明。第一回会合ではグリーンは質問12項目を参加者に下し、各自は個別装置のボタン操作で秘密のうちに回答した。
CSISは質問項目と回答内容の完全な一覧を今春中に公表する。一例が次期戦闘機の技術互換性だ。参加者に戦闘機が互換性を有するのが望ましいインド太平洋地区の国(米国以外)を上げるよう求めた。回答にはオーストラリア、インド、韓国が入っていた模様だ。参加者の83パーセントがオーストラリア空軍との互換性を望んだとブチャンは述べている。■
 この記事は以下を再構成したものです。

Think Tank Creates Informal Forum For Japan NGF Talks

Steve Trimble April 06, 2020


2020年4月7日火曜日

米空軍のX-37「軌道無人機」は初の宇宙兵器システムになるのか



ランダの天文マニア、ラルフ・ヴァンデバーグが地上210マイル地点を飛行する米空軍の極秘宇宙機X-37Bを2019年6月と7月に撮影した。

「機首、ペイロードベイ、尾翼を視認できましたし、もう少し細かい詳細部分も見えました」(ヴァンデバーグ)

「もう一度見ようとしましたが計算通りの時間と位置に現れませんでした」「別軌道に変更したのです。アマチュア衛星ウォッチャーのネットワークが再発見したので写真撮影できました」

今回オランダのヴァンデバーグが撮影に成功したX-37Bは2017年9月にスペースXのファルコンロケットで打ち上げられた。

空軍はX-37BをOTVつまり軌道試験機と呼称する。ボーイングはX-37Bを少なくとも2機米空軍向けに2000年代に製造し、単価は10億ドルといわれる。一見、NASAのスペースシャトルの縮小版に見えるが、X-37Bは再利用可能で制御可能な小型衛星となり、単独用途の衛星よりミッション期間は短い。X-37Bのミッション経費は毎回200百万ドルといわれる。

X-37Bの初回ミッションは2010年4月で、2018年に帰還した第4回ミッションは最長記録の717日となったが今回のミッションが宇宙滞在記録を更新する期待がある。

今回のミッションは第5回で空軍研究本部が製造した高性能構造組込み式熱拡散装置を搭載している。

空軍の説明では同装置は「試験電子装置および振動式熱パイプ技術を宇宙空間で長期テストする」のに役立つとある。X-37Bのミッション期間は次々に延長されており、数年間にわたる軌道飛行への需要に応えることになりそうだ。

「第5回ミッションでX-37Bの宇宙空間での性能と柔軟度をさらに伸ばし、宇宙技術実証機として試験装備を搭載する」と空軍は説明している。

空軍がペイロードの開示を頑なに拒んできたため、様々な観測を呼んだ。空軍はX-37Bが武器を搭載したことはないとする。宇宙機の過剰武装は1967年の外宇宙条約に違反する。

宇宙軍を創設し、ミサイル防衛も含む軌道上装備の開発をめざすドナルド・トランプ大統領がこれまでの宇宙配備兵器の禁止を解除する可能性もある。

ただしX-37Bを再利用可能なスパイ衛星として活用することは全く合法であり、驚くべきことではない。その他の科学ミッションを妨害せず情報収集が可能だ。

実際、空軍も熱拡散装置のテスト以外の任務があると認めている。

「第5回OTVミッションではこれまでより大きな傾斜角軌道でX-37Bの軌道飛行性能を拡大する」と空軍は説明。

軌道傾斜角は上空通過する際の南北の最大緯度に等しくなる。これまでは37度と43度の間だった。

傾斜角度を増やすと情報収集の拡大につながる。これまでのX-37Bの傾斜角ではロシアのほぼ全土が外れていたことに注目すべきだ。

X-37B第5回ミッションはロシア上空を飛行する可能性がある。■

この記事は以下を再構成したものです。

Could The Air Force's X-37B 'Orbital Drone' Be The First Of America's Space Weapons?

For now, space weapons are prohibited by treaty.
by David Axe 
April 4, 2020  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: X-37X-37BMilitaryTechnologyU.S. Air Force


David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This first appeared earlier in August 2019 and is being reposted due to reader interest.

Image: U.S. Air Force.

2020年4月6日月曜日

パンデミック時代の安全保障

第二次大戦終結後初めて米海軍空母の機能を封じる敵が出現した。敵対国家ではなく、ウィルスだ。米軍事力の究極の象徴が目に見えない敵に屈し安全保障分野に驚きの声が広がっている。ロシアや中国との大国間軍事対決に備える中で、米国はより危険なパンデミック流行に関心をはらってこなかった。
米海軍は3月31日に空母USSセオドア・ローズヴェルト乗組員多数がグアム島内施設への隔離を開始したと発表。艦内で中国ウィルス疾病が大量発生した。同艦は1月から太平洋でのパトロールを展開中で、3月24日に初症例3件の発生を報告。3月30日には症例が100名になり、艦長ブレット・クロジアー大佐から緊急文書が海軍に発信され、大量発生の阻止対策を求めてきた。艦内で乗組員同士が距離を置くことは不可能で、隔離検疫施設はないと艦長は訴えた。クロジアー艦長は同艦の戦闘能力を犠牲にしても寄港し乗組員多数を避難させ、アウトブレイク状態が落ち着くまで待つしかないと判断した。
太平洋ではUSSロナルド・レーガンでも2症例が見つかったとの報道がある。ニミッツ級の両艦は空母打撃群の中核であり、米国の兵力投射能力の根幹である。レーガンでも乗組員の退去が必要になれば、米国は太平洋の同盟国防衛と自国の国益の防護の象徴を失う。
ローズヴェルト事案はパンデミック疾病が国家安全保障に及ぼす脅威を改めて教えてくれた。影響が一番軽くても軍の即応体制に影響が出るし、交代部隊を派遣すれば国内の公衆衛生に穴が開く。悪意ある勢力ならこの機会を捉え混乱と破壊を企てるだろう。
それでも最悪のシナリオと比べればこれなど軽いものだ。流行病で死亡した米国人の合計は戦死者を上回る。現在の予測が正しければ、中国ウィルスによる死者はヴィエトナム戦、朝鮮戦争、イラク・アフガニスタン戦の死者合計より多くなる。さらに現在直面しているウィルス以上の致死性を持つものがある。1918年のインフルエンザ流行は40百万名の生命を奪い、第一次大戦の戦死者の4倍に相当する。
米国政府が今回の事態を超大国間の武力衝突に匹敵する脅威と同様に受け止めてこなかったのは残念でならない。国家安全保障担当補佐官だったジョン・ボルトンは国家安全保障会議でパンデミック脅威が所管の事務局が格下げされたことに警告を出していた。トランプ政権の例にもれずパンデミックへの準備体制も近視眼的かつ予算計上が不足している。
パンデミック関連の安全保障は通常型の脅威への準備と比べるといかにも劣勢だ。昨年も国防脅威削減庁の生物関連脅威に関する各国協力予算が極超音速ミサイル開発に流用されてしまった。国家核兵器安全保障部門は予算が2割増額で新型核兵器調達に向かう中で疾病制御予防センター(CDC)の予算は15%減らされた。2019年度の連邦予算で公衆衛生関連事業は136億ドルだったが、2021年度予算要求でトランプ政権は核兵器開発関連に460億ドルを計上している。
今こそ行動のときだ。疾病発生の歴史を見れば、次の大流行の発生はもしもではなく、いつになるかの問題だ。軍には各種任務があり、さらに追加したところでリスクや対策費用が減るわけではない。パンデミックへの準備として「政府全体」による対応が必要だ。その中で国防総省には多省庁にない能力があり、パンデミックへの準備体制もある。しかし、予算は公衆衛生担当部門に直越投入したほうが次の伝染病流行の予防、発見、対応に効果が出る。分担と予算執行を適度に行えば、ペンタゴンも減量運営を強いられよう。少なくとも表面的には。国防と無関係の連邦、州政府、地方当局あるいは民間団体に権限を与えれば猛威を振るう疾病への対策がもっと効果を上げるはずだ。
ノーエル受賞者ジョシュア・レダーバーグは「人類最大の脅威は地球上にずっと居座っている。それはウィルスである」と述べた。生医学研究も公衆衛生の準備体制も国際協力も全て世界規模での衛生面での安全保障実現で鍵となる。次の世界的流行が現実になる前にこうした柱を強化したいものである。 
パンデミック時代の国家安全保障はもう始まっている。■

この記事は以下を再構成したものです。

National Security in the Age of Pandemics

  • Gregory D. Koblentz is an associate professor and director of the Biodefense Graduate Program at George Mason University’s Schar School of Policy and Government. He is also a member of the Scientists Working Group on Biological and Chemical Security at the Center for Arms Control and ... FULL BIO
  • Michael Hunzeker is an assistant professor at George Mason University’s Schar School of Policy and Government. He is also the associate director of the Center for Security Policy Studies. He served in the U.S. Marine Corps from 2000–06 and holds an A.B. from the University of California, 

韓国のグローバルホークは今年中に供用開始(ただし残り3機は未納入)

国空軍は本年中にグローバルホーク運用を開始する。
韓国は昨年12月にRQ-4ブロック30のグローバルホーク遠隔操縦機(RPA)初号機を導入し、運用準備を開始し専用の偵察飛行隊を新設した。▶国防筋は準備は遅滞ないとするが、正確な日程は変更の余地があるとし今年中の運用開始だとした。▶米国との2011年取り決めで韓国は4機を購入する。残る3機は今年上半期の納入予定だが、日程は未定。▶世界最高水準の情報収集能力を誇る同機はノースロップ・グラマン製で高度2万メートルからの偵察を40時間実施できる。▶高性能の対地監視レーダーを搭載し、最大3千キロまでの範囲で最小30センチの地上標的を識別できる。▶同機の供用開始で北朝鮮の脅威が依然残る中、周辺国からも安全保障上の挑戦を受ける韓国の偵察能力が向上すると関係者は説明している。■
この記事は以下を再構成したものです。

S. Korea pushing to deploy Global Hawk aircraft this year

All Headlines 11:42 April 03, 2020