2020年10月20日火曜日

中国がカンボジアに海軍基地を確保する動き。札びらで横顔をたたく? アジア太平洋地区への影響は必至だ。

  


Google Map

 

国資金で建設した海上保安施設をカンボジア政府が撤去したが、これが中国人民解放軍海軍(PLAN)向け施設へ転用する動きと関連していると米政府が懸念を10月初旬表明した。

 

カンボジア政府の言い分は中国との「緊密な関係」は長年続いており、タイランド湾のリアム海軍基地の問題が浮上したのは昨年からにすぎず、もともと中国が同基地の30年間租借を求めていたというものだ。中国は軍関係者の常駐とともに兵器備蓄と艦艇の横づけ施設の利用を期待している。

 

シアヌークビル地方にある同基地は王立カンボジア海軍が運用中で敷地は190エーカー(約77万平方メートル)。2010年からカンボジア米国艦の訓練、演習の拠点として活用されてきた。

 

「カンボジア軍が築後わずか7年で米カンボジア関係の象徴たる保安施設を撤去する決定をしたのに失望」と在カンボジア米大使館の報道官チャド・ローデマイアーが声明文を発表した。「軍事プレゼンスが実現すれば米カンボジア関係の悪化は盛られず、さらにインド太平洋地区にも悪影響が生まれ不安定化は避けられない」

 

 

 

 

米国が建設した同施設の撤去処分は9月5日から10日の間とされる。対象の建屋はその他と移転され、中国はリアムに自由に出入りできるようになる。

 

問題の建物は海洋保安国家委員会の現場本部とされ、2012年に竣工し、米国資金で建設しオーストラリアが備品を納入していた。

 

PLANがリアムにプレゼンスを確保する動きは予定通り進行している。基地周辺には中国企業が土地を確保しており、こうした企業は中国政府と関係があるといわれる。表向きは民間開発事業でリゾート施設を造るとあるが、PLANが使わない保証はないし、中国企業に基地周辺を確保させ緩衝地帯にする狙いかもしれない。

 

さらに基地から北へ3マイル地点で埋め立て工事も進行しており、現時点で100エーカーの土地造成が完成しているが用途は不明だ。

 

タイランド湾に基地ができればPLANは南シナ海南方に新たな進出ができるだけでなく高度な戦略的意義を有するマラッカ海峡付近で有事となっても機動性が増える。マラッカ海峡を通過するタンカーが中国の原油輸入の8割を占めている。

 

カンボジアのフンセン首相は新規港湾施設は中国資金で建設だが、荷役施設はすべての国に開放すると発言していた。「仮に一国の海軍艦艇が同地へ寄港しても、その他国も全く同じことができる」「各国船舶へ貨物港への寄港を認める。ただしリアム海軍基地は軍港であり、事前許可が必要だ。あらゆる国の艦船による横付け、燃料補給、あるいは共同訓練を歓迎する」と述べていた。■

 

この記事は以下を再構成したものです。金で横面をたたく中国の強引さが今後の二国関係にどんな影響を及ぼすのか注目です。中国は自分も開発途上国だと言ってきますが、「上位」の途上国として「下位」途上国をいいように利用することに抵抗はないようですね。

 

Will the Chinese Navy Soon Build a Base in Cambodia?

October 15, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaChinese NavyCambodiaMilitary

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com

2020年10月19日月曜日

RQ-9にAIM-9Xを搭載し、空戦ミッションに投入する日がそこまで近づいている

 

場で性能実証済みの米空軍のリーパー無人機はテロリストを襲撃し、精密誘導式のヘルファイヤミサイルで敵戦車や固定施設を撃破できる。さらに戦闘状況のライブ映像を地上の政策決定層に配信できる。だが、空対空戦に投入可能できるのだろうか。実はリーパーは戦闘機になろうとしている。

MQ-9リーパーは実証実験で巡航ミサイル役の無人機をAIM-9X空対空ミサイルで撃破した。AIM-9XF-35F-22へも搭載され、「視程外」でも照準できるのでパイロットは背後に回った敵機も撃破できる。この「視程外」技術でパイロットはヘルメットにつけた位置指定装置でAIM-9Xの飛翔中にコースを変更できる。

202093日、ネヴァダ州クリーチ空軍基地でMQ-9AIM-9Xブロック2の実弾を巡航ミサイルを模したBQM-167に発射するのに成功した」と空軍は発表。

リーパーを空対空戦対応にするのは技術的に挑戦となるが大きな進化にもなる。ミッションの幅が大きく拡大するからだ。AIM-9Xでリーパーを武装すれば同ミサイルを「迎撃手段」に使い敵の巡航ミサイルの接近を阻止できるし、敵機を攻撃することも可能だ。

こうした可能性もあるが、実際には兵装と偵察装備を一体化したリーパーの長距離センサー、高精度カメラを使って敵機の正体をつかむことの方が可能性がある。その後、地上からの指令でリーパーに敵機を葬らせればよい。この方法でセンサーの情報探知から実際の攻撃までの所要時間を大幅に減らせる。

ドッグファイトに投入したり、高速機動飛行をさせる可能性は少ないだろう。ただし、こうした性能はF-22F-35の操作によりリーパーが活躍する日が来ると重要となる。前方配備のリーパーで敵防空網の有効性を試す、あるいは高リスク地帯で敵の砲火が活発な中で偵察飛行させれば、パイロットの人命を危険にさらさずにミッションの幅が広くなる効果が期待される。

AIM-9Xの追加配備は空軍のミッション能力整備にもつながり、リーパーには新型装備搭載となる。ここにきて空軍は同機に新型燃料タンクを追加したり、新技術で各種装備の火器管制能力を付与している。

リーパーはAIM-9X以外にAGM-114ヘルファイヤミサイル、500ポンドレーザー誘導爆弾のGBU-12ぺイヴウェイIIGBU-38共用直接攻撃弾(JDAM)を運用している。こうした兵装はそれぞれ自由落下式だがGPSや慣性航法による誘導を受けられる。■

 この記事は以下を再構成したものです。

WhatiftheReaperDroneBecameaFighterPlane?

October17,2020 Topic:Security Region:AmericasTags:ReaperReaperDroneDronesUAVU.S.AirForceDogfight

byKrisOsborn

Photo: Wikipedia, English edition

中国の極超音速攻撃手段の開発状況をうかがわせる映像の流出

 

CHINESE INTERNET

 

 

国からの映像でH-6Nミサイル発射用爆撃機に長大な兵装が吊り下げられている。ミサイル前方の鋭角形状から極超音速兵器の可能性がある。また寸法は中国の地上発射式DF-17極超音速兵器に類似している。弾道ミサイルで加速し、無動力DF-ZF極超音速滑空体をマッハ5で飛翔させつつ経路を操作し標的に命中させるものだ。

 

中国が地上発射式弾道ミサイルを空中発射式に転用しようとしているのは前からわかっていた。空中発射式極超音速加速滑空式兵器の登場は予測にあったが実物を目にするのは初めてだろう。

 

H-6Nは大型兵装用に特別改装され、高速無人機から対艦ミサイルまでさらに従来型の巡航ミサイルまで運用可能だ。H-6Kの発展型だが、ソ連時代のTu-16バジャーが原型だ。

 

中国が既存の地上発射式装備から空中発射式極超音速兵器の開発へ走るのは理屈にかなう。中国が軍事パレードで誇示したDF-17をもとに開発するのはそれが唯一の選択肢だからだが、原型ミサイルの性能自体が不明だ。とはいえ、中国としては実用に耐える極超音速兵器を保有している姿を世界に示したいのだろう。


CHINESE INTERNET

建国70周年記念軍事パレードに現れたDF-17部隊

 

だからといって今回現れた映像で謎がすべて解けたわけではない。米国同様に中国も極超音速兵器各種を並行開発し、各種用途を想定しているはずだ。空気取入れ式極超音速巡航ミサイルもそのひとつだ。これと別に従来型の弾道ミサイルに制御可能な弾頭を付ける試みもDF-21DやDF-26にあるが、判明している画像の弾頭部分はこれを裏付けるものではない。高解像度の映像画像が現れればこの推論も変わりそうだ。

 

CHINA MEDIA

DF-21D の試射

 

極超音速滑空兵器を数千マイル先を狙っ中国国内からて発射すれば、有効射程外だった敵基地も脅威にさらされる。グアムのアンダーセン空軍基地およびウェーク島がとくに要注意だ。ただしこの種の兵器は各地の高度防衛施設を攻撃可能で、敵艦隊撃破も目指して開発が進んでいる。この戦力で中国が米国の先にあるのかは議論を呼ぶところだ。

 

今回の映像で極超音速兵器開発に拍車がかかっていることがわかる。米側の極超音速兵器は各種が開発中で、それ以外にも極秘事業があるはずだが、中国も黙ってみているわけではない。一千マイルを12分で移動したといわれる米空軍のAGM-183ARRWと同様に人民解放軍も数千マイル先の標的を防衛不可能にする空中発射式の高精度極超音速攻撃手段を重宝するはずだ。今回の映像が示しているのは中国が米国の開発に後れを取らず努力していることだろう。そのほか、映像では弾道ミサイルを搭載した機材の姿から中国が戦略上の効果を期待していることもわかる。

今回の映像関連の情報は変更となる可能性もある。追加情報や詳しい分析が出てくればこの場で提供したい。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Video Of Chinese Missile Carrier Jet Hauling What Appears To Be A Hypersonic Weapon Emerges

The video could be the first visual evidence that China is actively testing an air-launched hypersonic weapon.

BYTYLER ROGOWAYOCTOBER 17, 2020

Contact the author: Tyler@thedrive.com


2020年10月18日日曜日

F-15Eへ搭載が始まったストームブレイカーことSDB IIは対地・対艦攻撃力を増強する米空軍・海軍向け新兵器だ

 

Raytheon

 

 

F-15Eストライクイーグルは導入から年数が経ったが、さらに強力な対地攻撃任務をこなす恐るべき存在になりそうだ。米空軍が小直径爆弾IIのストライクイーグルへの搭載開始を発表した。「ストームブレイカー」“StormBreaker”の名称がついた精密誘導弾は航空戦闘軍団(ACC)が9月30日に認証していた。

 

SDB IIストームブレイカーの搭載が可能となったのはF-15Eが最初で、続いてF-35ライトニングII共用打撃戦闘機およびF/A-18E/Fスーパーホーネットへの搭載が予定されている。▼「SDB IIストームブレイカーの供用準備ができた。長期の開発試験を行ってきた」(SDBII事業主幹ジェイソン・ラスコ大佐)「配備に至ったり軍と民間企業による長年の共同作業が報われる。大きな威力があり国防の構図を一変させる存在だ」

 

 

 

ストームブレイカーとは

SDB IIには多モードシーカーがつき、赤外線、ミリ波レーダー、セミアクティブレーザーのほかGPSさらに慣性誘導方式で誘導できる。ストームブレイカーは小型のためミッションでのペイロードを増やす効果が期待できる。このため投入機数を減らしても従来と同じ効果が期待できると空軍は見ている。▼ストームブレイカーの有効射程は40マイル以上で、搭乗員が危険にさらされる時間が短くなる。▼「SDB IIは移動目標も攻撃可能で、しかも遠距離で悪天候でも対応可能だ。これによりわが方の部隊に相当の優位性が生まれる」とヒース・コリンズ准将空軍兵器開発統括官が語っている。「この装備を配備することで大きな成果が期待できる」

SBD IIの開発背景

 SBD IIが生まれた背景に空軍と海軍で調達の方向性を共有したことがあり、空軍の兵装局ミニチュア弾薬部が主導しレイセオン・ミサイルディフェンスと共同開発した。▼試験運用はエグリン空軍基地(フロリダ)で行い、F-15E搭載の認証のため開発運用飛行は138回に至った。▼「ストームブレイカーで実戦パイロットに今までにない戦力が実現する」とレイセオン・ミサイルディフェンス副社長ポール・フェラーロが述べている。「洋上陸上問わず、移動目標を遠距離から悪天候でも撃破できる」▼SDB IIストームブレイカー開発は技術面で難局に直面し、生産が一年にわたり止まったこともあったが、レイセオンは問題解決のため爆弾にフィン折り畳み用のクリップを追加した。

 

Raytheon

 

レイセオンは昨年7月に生産を一時停止し部品設計を見直したが、空軍・海軍へ納入済みの598発には後付改修した。今夏に生産再開した。

 

配備が始まりレイセオンはSDB IIの性能を改めて宣伝している。「これまでの各種テストで性能は実証済みで、各種標的に対応し、過酷な天候条件でも威力を発揮した」とレイセオン・ミサイルディフェンスでストームブレイカー開発を率いたクリスティ・スタッグが述べている。「多モードシーカーとデータリンクを利用するストームブレイカーは天候条件が悪くても関係がありません」■

 

この記事は以下を再構成したものです。SDB IIは滑空誘導爆弾というべきでしょうか。

 

F-15E Strike Eagle Is Now a StormBreaker

October 17, 2020  Topic: F-15  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15EU.S. Air ForceF-35U.S. NavyMilitary

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.


2020年10月17日土曜日

祝 進水 新型潜水艦たいげいに秘められた海上自衛隊の運用構想を海外メディアはここまで伝えている...一方、国内メディアは?

 

JAPANESE MINISTRY OF DEFENSE

 

 

本が画期的なディーゼル電気推進式潜水艦を完成させた。同艦は戦後建造の潜水艦として最大の大きさを誇る。

 

ほぼ10年にわたる研究開発を経て日本は新型ディーゼル電気推進方式潜水艦の供用開始に一歩近づいた。同艦に画期的なリチウムイオン電池が採用された。そうりゅう級最後の二隻でも同様の動力源が採用されたが、今回進水のたいげいは当初からこの仕様となっている。現時点でリチウムイオン電池潜水艦の運用国は日本だけである。

 

たいげいは2020年10月14日、三菱重工業の神戸造船所で進水し、進水式には岸信夫防衛相、山村浩海上幕僚長が出席した。

 

報道では同艦建造費は710百万ドルとある。全長は275フィート7インチで浮上時排水量は3,000トンと戦後日本が建造した潜水艦で最大。現行のそうりゅう級は排水量2,900トンだ。たいげいの乗員は70名で、海上自衛隊は「女性乗組員向けにふさわしい環境」を提供すると特記している。潜水艦学校に2020年から初の女性隊員が入校している。

 

たいげいの最大の革新性はディーゼル電気推進系の進化で、リチウムイオン電池の活用にある。そうりゅう級最後の二隻にも同様の仕様を採用し、長時間潜航能力を誇示していた。再充電時間が短縮化され、電池寿命も鉛電池を上回っているといわれる。加えてリチウムイオン電池は容積が減り、保守管理が簡単になる。

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他方でリチウムイオン電池は高価格だ。海上自衛隊の資料ではそうりゅう型標準仕様の建造単価は488百万ドルだったが、リチウムイオン搭載型では608百万ドルとある。

 

2017年にThe War Zoneのタイラー・ロゴウェイは新型潜水艦でリチウムイオン電池以外に大気非依存型推進方式(AIP)の搭載を予測した。

 

実はその時点で日本はAIPに代わる手段を模索していた。新構想は潜水艦の騒音レベルをさらに下げるべくAIP系統の可動部品を廃するとした。ディーゼル電気推進型潜水艦で注目されているAIPシステムそのものが非常に静寂だ。

 

きわめて静寂な潜水艦になれば敵は探知追尾が非常に困難になるが、AIP搭載艦より潜航時の加速性能が向上する効果も生まれる。ここにPLANの拡大する原子力潜水艦部隊やAIP搭載艦に海上自衛隊が瞬発力とステルスで対抗する意図が見える。

 

他方でリチウムイオン電池の問題点に発火しやすく、高温を発すること、さらに有毒性の排気他事故の可能性がある。このため、潜水艦では安全性をさらに担保する設計が必要だ。

 

海上自衛隊はこの問題をすでに克服し安全性への懸念を払しょくしているようだ。そうりゅう級後期建造艦には特製の自動消火装備が搭載され、たいげいにも同様の装備が搭載されたと考えてよい。

 

たいげいは推進系の性能向上を実証するねらいもありそうだ。2018年12月に日本政府は「2019年度及びその後の防衛ガイドライン」を発表し、たいげいを新技術実証を中心に使うとある。これでたいげいの開発建造が早まった背景が見えてくる。三菱重工は2019年6月に新型29SS級の建造計画を発表し、建造は2025年から2028年にかけて、一号艦進水は2031年ごろとあった。たいげいは艤装や海上公試を経て、海上自衛隊での運用開始は2022年3月の予定だ。

 

たいげい、さらに今後建造される各艦は日本が進める防衛力整備の一環で、日本周辺で安全保障への懸念が強まる状況に対応するものだ。まず、中国があり、とくに海軍力整備が加速している。またそこまでの威力はないが北朝鮮も潜水艦発射式弾道ミサイルの新型含む新兵器を公表している。

 

人民解放軍海軍(PLAN)の東シナ海、南シナ海さらに太平洋での活動が急増している中、日本の防衛計画には潜水艦部隊を22隻まで増強する項目が入っている。

 

海上自衛隊が現在運用中の潜水艦はおやしお級(排水量2,750トン)の9隻、そうりゅう級(2,900トン)が11隻あり、さらにリチウムイオン搭載そうりゅう級とうりゅうが2020年3月に就役した。同艦は現在各種試験中でその後正式に自衛隊艦隊に編入される。

 

この潜水艦22隻体制で日本は少なくともたいげい級潜水艦2隻を加える意向で、うち一隻の建造費用が最新の予算要求に入っている。防衛予算案にはF-35共用打撃戦闘機から極超音速ミサイルまで大型案件複数が入っている。令和3年度防衛予算は550億ドルに達する。

 

新型潜水艦は東シナ海、南シナ海の重要海上交通路を確保する海軍力の先鋒となることに加え、海外の関心も呼びそうだ。そうりゅう級のオーストラリアへの売り込みは不調に終わったが、日本政府は防衛政策を練り直しており主要装備品の輸出に道を開いた。リチウムイオン電池技術の優位性を体現したたいげい級あるいはその搭載装備は広く関心を集めそうだ。

 

同艦で採用した電池推進システムを他国が採用するかは今後の話だが、海上自衛隊の潜水艦部隊がリチウムイオン電池推進に向かっているのは明らかだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。日本国内の報道はおしなべて表面的でここまで掘り下げていませんでした。一般社会の軍事装備品への関心の低さ、もあるのでしょうが、技術そのものへの関心度が低くなっているのは今後心配な事象です。

 

Japan Just Launched Its First “Big Whale” Lithium-Ion Battery Powered Submarine

BY THOMAS NEEDICK OCTOBER15, 2020

 


2020年10月15日木曜日

F-3を開発すべきか、忠実なるウィングマン無人機を開発あるいは導入すべきか 防衛省内でどんな議論が展開したのだろうか

 

SATOSHI AKATSUKA VIA LOCKHEED MARTIN/CODE ONE

 

菱F-2戦闘機の後継機種検討で無人戦闘機案も選択肢の一つだった。無人戦闘機の提案は自民党の河野太郎が費用削減策として出したとの報道がある。

 

提案を今年初めに検討したと共同通信が伝えている。だが防衛省が同案を一蹴したようだ。同案はイージスアショア導入の断念直後に退けられたとあるが、実際に二つが関連していたか不明だ。

 

共同通信記事では無人機を「戦闘機」としており、日本関係者は高性能無人戦闘航空機(UCAV)の導入を検討していたとある。しかし、記事では同機の具体的な性能要求を伝えていない。

 

日本にMQ-9リーパークラスの無人機がないことに注目すべきだ。日本はRQ-4グローバルホークのブロック30機材を3機導入するが、米空軍が同型機の退役案を提案していることから新たな疑問も生まれている。

 

U.S. AIR FORCE/CAPT. AARON CHURCH

アンダーセン空軍基地の319作戦群分遣隊1所属のRQ-4グローバルホークが定期巡回展開で横田航空基地に着陸した。Japan, May 30, 2020

 

 

無人戦闘機導入の話題が日本で出たのはこれが初めてではない。ただし、提案の却下理由は明らかではなく、今回提案のあった無人機の詳細情報はごく限られている。

 

今回の無人機導入提案の裏には新型戦闘機在開発の費用圧縮があったのは明らかだ。

 

これまで日本はF-22ラプターステルス戦闘機の調達を狙ってきた。その後も同様の高性能機材を手に入れる願望を断念せず、完全国産あるいは外国提携先の手を借り実現を目指してきた。ここから無人戦闘機の選択肢に影響が出たのだろう。また自律型技術の国産開発は可能なのか懐疑的に伝える報道もある。

 

U.S. AIR FORCE/YASUO OSAKABE

エルメンドーフ-リチャードソン共用基地から飛来したF-22ラプターが横田基地を離陸した。 July 17, 2018.

 

 

さらに日本はX-2心神実証機に332百万ドルを投じ、一機を製造しテスト飛行させた。X-2はステルス性機体、推力偏向型低バイパス比ターボファン二基で軽快な機体制御性能を実現したが、ここが日本の次期戦闘機にも期待される性能なのだろう。

 

 

AP PHOTO/EMILY WANG

X-2実証機、三菱重工格納庫内で

 

一方で日本はF-35を大量発注しており、147機をそろえる。ここにF-35Aが100機含まれ、F-4EJファントムII後継機とする。さらに42機が短距離離陸垂直着陸型F-35Bでいずも級空母搭載を目指す。

 

U.S. AIR FORCE/STAFF SGT. DEANA HEITZMAN

三沢航空基地で航空自衛隊と第35戦闘航空団の関係者が航自向けF-35Aの一号機到着を見守った。 January 26, 2018

 

さらに日本は200機近くあるF-15J制空戦闘機の半数に大型予算をつぎ込み、日本向けスーパー迎撃機 (JSI) 仕様に改良する。米政府は2019年10月にこの案件を承認した。改良の中心は新型アクティブスキャンアレイレーダー、ミッションコンピュータ改良型、電子戦装備の一新他だ。

 

こうした有人戦闘機出費がUCAV案を葬ったのかもしれない。ただし高性能無人機はある時点までは有望な選択肢だったのだろう。

 

日本は競合相手のロシアや中国、さらには自らの同盟国と違い、無人航空機開発に及び腰で、防衛体制の中で無人機をどう活用するのか明確な方向を示していない。防衛省内で有人機推進派と無人機派で対立があるのかも不明だ。

 

航空自衛隊がF-3を純国産あるいは海外国との共同開発で有人戦闘機を就役させるのかまだ不明だ。有人ステルス戦闘機を開発し、配備すると非常に高価格となり、時間もかかることは歴史が証明している。このためUCAV案が防衛省内で浮上したのだろう。共同開発で費用面等は抑えられるだろうが、それでも日本には相当の負担となる。日本関係者の話として新型有人戦闘機開発をいちからはじめれば500億ドルに加え定量化不可能な時間がかかるとあった。

 

第四世代機F-2で日本が直面した問題からこの危険さはすでにわかっている。F-16ヴァイパー原型のF-2は相当の高価格機となり、日本製アクティブ電子スキャンレーダーを搭載した少数生産が背景にあった。

 

U.S. AIR FORCE/SENIOR AIRMAN DANIEL SNIDER

航空自衛隊の三菱F-2Aと米空軍F-16がレッドフラッグ-アラスカ19-2演習で アラスカのエイルソン空軍基地に並んだ。 

 

 

日本にとって費用対効果が一番高いのはF-35とF-15JSIのハイ・ローミックスではないか。両機種は生産中で広範囲の支援が活用できる。また両機種で性能改修が続いており、今後はさらに魅力的なオプションが出てくるだろう。

 

さらに費用対効果が高くミドルエンドのステルスUCAVが近い将来に出現してもおかしくない。既存戦闘機と飛ぶ忠実なるウィングマンとすればよい。自律飛行も可能だろう。ただ、航空自衛隊の戦術機材の主要任務が防空と対艦戦で、F-2のように生身のパイロットを乗せるのは良い策とは言い難い。とはいえ防空ミッションではパイロットはまだ必要だ。

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本土防空ミッションは近い将来も有人機が本領を発揮する分野だろう。日本は極めて高い頻度でスクランブル出動を年間を通じ実施しており、ロシアや中国機が日本領空へ接近することが多くスクランブルは年千回に達する。これだけの頻度だと日本の戦術機部隊に相当の負担となり、こうしたミッション実施は無人機では交代できない。

 

無人機が利点を発揮するのは対水上艦戦任務だが、その他にも可能性がある。対地攻撃任務もその一つで、その他にも長時間飛行の海上パトロール機が長距離対艦ミサイルを搭載し、統合運用部隊とネットワークで結べば効果がさらに上がる。現在はF-2がこの任務に投入されているが、同機は同時に空対空戦もこなしており、将来登場する多用途機も同様に重宝されるはずだ。これで航空自衛隊のF-15部隊を他の任務に回せる。

 

BOEING AUSTRALIA

ボーイング・オーストラリアが開発した忠実なるウィングマン無人機なら日本の有人機をうまく補完するはずだが、有人機をすぐ全廃することにはならないだろう。

 

 

有事になれば多用途戦術機材が発揮する柔軟性が日本列島防衛に効果を発揮するはずだ。また国産あるいは輸入機材の忠実なるウィングマン無人機がこうしたミッションを大いに助けるとはいえ、防空で空対空戦をすべて無人機に任せるのは現実的ではない。日本の国土条件を考えればUCAVの長距離飛行性能の必要度は高いとは言えない。

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結局のところ日本は忠実なるウィングマン無人機を自国開発し、戦闘機部隊の補完勢力にするほうがいいのではないか。このほうがハイエンド新型戦闘機あるいは高性能UCAVを開発するよりはるかに現実的であるばかりか、産業界や運用面で複合効果が生まれ、さらに技術進歩によりさらに高性能のUCAVの登場につながることになるのではないか。

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F-2後継機種がなんであれ航空自衛隊は2035年ころの交代を予定している。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

BYJOSEPH TREVITHICKTHOMAS NEWDICKTYLER ROGWAYOCTOBER 14, 202