2020年12月23日水曜日

イスラエルの多層防空体制は世界の最先端を誇る。進化し続けるのは周辺国の脅威に対抗するため。

 

スラエルはハヌカ祝日を前に海軍部隊を出動させ前例のない防空演習を実施した。高性能標的装備を巡航ミサイル、無人機、弾道ミサイルに見立てイスラエルが整備してきた多層防空システムの機能を試した。

 

イスラエルミサイル防空機関(IMDO)が米ミサイル防衛庁と共同発表し「デイビッズスリング兵装システムが巡航ミサイル弾道ミサイルの実弾迎撃テストに成功した」と発表した。演習ではアイアンドーム、アローの各システムも含めた多層防空システム同士の連携も実証した。イスラエル国防省は「有事には各種装備で脅威に同時対応可能と実証できた」と発表した。

 

今回のテストはイスラエルが1990年代以来進めてきたミサイル等の脅威に対応する各種システムの集大成といえる。米国はイスラエルと共同でアロー、デイヴィッズスリング両装備の開発を進めてきた。さらにアイアンドームは稼働以来10年が経過し、ガザでのロケット砲撃に効果を発揮するなど、今やイスラエルで最も頼りになる装備になっている。米陸軍もアイアンドームを採用し、短距離射程でロケット弾、ミサイル迫撃砲、無人機に効果を発揮する。イスラエル国防企業ラファエル高性能防衛システムズはテストで「アイアンドームによるUAV、巡航ミサイル含む各種脅威への対応性能を実証した」と発表。

 

巡航ミサイルや無人機を強調するのはイランがこうした装備でサウジアラビアのアブカイブ石油施設を2019年9月襲撃したためだ。「テストでは積極防空装備のアイアンドームおよびデイヴィッズスリングも使用し巡航ミサイルや攻撃型無人機といった新規脅威への対応力を試している」(ミサイル防空分野の専門家タル・インバー)

 

「イエメンのフーシ勢力がサウジアラビアの石油ガスインフラを攻撃した事例でもイラン装備品が使われ、同様の攻撃がイスラエルに発生してもおかしくない」とインバーは述べた。「イスラエルの多層アクティブミサイル防衛体制は脅威の変化に呼応し常に改善している」

 

 

 

襲撃事件では無人機多数、巡航ミサイルが遠距離から発進された。イランはシリアにも無人機、ミサイルを搬入しイスラエルの脅威になっている。ただしイスラエルは先を見ており、多層防空体制で各種脅威に対応する必要があるとする。その理由としてレバノンのヒズボラがイランの支援を受けミサイル15万発を備蓄しており、精密誘導弾も開発中であり、イスラエルに膨大な規模の脅威となっていることがある。アイアンドームは供用10年で効果を実証しているが、デイヴィッズスリング、アローともに運用実績はここ三年間しかない。

 

イスラエルは複数年計画モメンタムで国防軍の威力、精度を引き上げる。F-35や多層防空体制以外に特殊部隊の投入や情報活動の強化も含む。近隣遠方の敵をイスラエルが精密攻撃するためにも防空体制で国民を守りつつ陸軍、空軍が決定的な打撃を与える。モメンタム計画では特殊コマンド司令部も創設しイランに「第三包囲網」を形成する。2018年、2019年と続けて発表された報告でイランが弾道ミサイルをイラクに搬入しているとあった。12月にイスラエルが統合防空体制を演習したのは実際の効果を誇示する意図があったのだろう。

 

問題になるのは1月に米国に新政権が誕生し、イランが新たな脅威をイスラエルに準備中の可能性があることだ。イランはトップ核科学者の暗殺で、ヒズボラは重要人物殺害でそれぞれイスラエルを非難している。

 

最新テストを海上で実施したのは安全上の理由のためだ。イスラエル海軍は防空装備C−ドームを艦艇に搭載しており、デイヴィッズスリングも同様だ。米ペイトリオットに近いデイヴィッズスリングは中距離で脅威に対応する迎撃体を運用する。アローは長距離弾道ミサイル対応専用だ。

 

イスラエルは「デイヴィッズスリングの新型高性能版の効果を試し、将来脅威への対応を実証した」と発表。テストにはイスラエルの主要防衛産業各社が参画しており、「ラファエルがデイヴィッズスリングの主契約企業となり、米レイセオンが協力した。IAIエルタ事業部がMMRレーダーを、エルビットがゴールデンアーモンド戦闘管理センターをそれぞれ開発した」とイスラエルは発表。

 

ベニー・ガンツ国防相はテスト成功を褒め称えた。「世界最先端の防空装備であり、我が国を近隣遠隔からの脅威から防衛する」とし、米側の協力にも感謝した。

 

テストでは各種システムを同時運用し複数手段を同一脅威に対抗させた。これには近年の脅威数が増えていることがある。イスラエルは海上でも同様の脅威に直面し、最新のサアル6型海防艦に最新装備を搭載した。

 

世界では最新技術をセンサー、シーカー双方に投入しており、常に一歩先を目指す動きが顕著だ。巡航ミサイルや無人機の阻止が困難なのは低空飛行と低速のためだ。レーダーや迎撃機で捕捉が困難なのだ。シリア、リビア、アゼルバイジャンでの紛争では防空体制と武装無人機の競合が表舞台に出ている。

 

高性能防空体制でも無人機や滞空弾と呼ぶカミカゼ攻撃無人機の阻止ができない。イスラエルもこの種の装備品を製造しており、優れた電子光学監視機能を有する無人機を長時間監視偵察に投入し、人工知能で脅威を特定している。

 

イスラエルは今回の延長で最先端多層防空システムを実用化しそうだ。イスラエルが直面する脅威が多種多様で周辺国がイスラエルに投入する意思を有しているためこの実現は必要だ。イスラエルのシステム整備が域内のみならず世界的なレベルで防空体制へ影響を与えそうだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。周囲を敵意にみちた勢力に包囲された状態が70年つづき、しかも敵対勢力の装備が進歩している中で、イスラエルがこうした体制を真剣に整備するのは十分理解できるところです。日本にも参考となるところですが、イスラエルの真剣さ現実感が希薄なのはイージス・アショアが地元反対で頓挫すると、艦艇しかも2隻で代替すれば解決という姿勢にもあらわれていますね。

 


Does Israel Now Have the Best Air Defense Systems in the World?

https://nationalinterest.org/blog/buzz/does-israel-now-have-best-air-defense-systems-world-174783

December 19, 2020  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IsraelMilitaryWeaponsWarMissiles

by Seth J. Frantzman


Seth J. Frantzman is a Jerusalem-based journalist who holds a Ph.D. from the Hebrew University of Jerusalem. He is the executive director of the Middle East Center for Reporting and Analysis and a writing fellow at Middle East Forum. He is the author of After ISIS: America, Iran and the Struggle for the Middle East (forthcoming Gefen Publishing). Follow him on Twitter at @sfrantzman.

Image: Reuters


日英共同開発新型空対空ミサイルJNAAMの実現に一歩近づく。令和3年度予算

本政府は12月21日、日英共同開発の共用新型空対空ミサイルJoint New Air-to-Air Missile (JNAAM) 開発の予算計上を認めた。

防衛省が12月21日の報道会見で確認し、10億円をJNAAM試作型の生産試行に投入する。

共同開発は2018年度から試作段階に移行しており、2022年度に試作型の生産試行を完了する予定と防衛省公表資料にある。このあと、両国はミサイルの性能評価に入り、量産に移すか決定する。日英共同研究は2014年に始まり、2023年度まで続く予定だ。

The cabinet of Japanese Prime Minister Yoshihide Suga on 21 December approved funding for the co-development of a Joint New Air-to-Air Missile (JNAAM) with the UK. (Japanese Ministry of Defense)

 

関連する英国のミサイル技術にMBDAのミーティア視界外射程空対空ミサイル (BVRAAM)がある。

日本は高性能無線周波数シーカー技術を三菱電機がAAM-4Bで開発した実績があり、BVRAAMの精度と性能を増強し、JNAAM開発に投入する。

三菱電機はコメントを拒み、防衛関連事業に言及しないとだけJanesへ回答してきた。■

 

この記事は以下を再構成したものです

Japan moves ahead with JNAAM co-development

22 DECEMBER 2020

by Kosuke Takahashi

 


12月22日ロシア中国の日本海東シナ海上空爆撃機演習の第一報です。

 


Russia China bomber exercise

2020年12月22日のロシア中国の共同演習時の飛行経路図。Japanese Ministry of 


  • 12月22日ロシア、中国両国の軍用機が東シナ海、日本海上空で演習を展開し、日本・韓国の反応を引き出そうとした。

  • 前回の両国共同演習は2019年7月のことで、韓国機が警告射撃をした。


シア、中国の爆撃機が前回の演習から1年半後に再び日本海、東シナ海上空で演習を展開した。


韓国はロシア、中国機合計19機の領空侵犯に対応し戦闘機部隊をスクランブル発進させた。


韓国防空識別圏 (KADIZ) に中国機4機が侵入し、その後ロシア機が15機続いたと韓国統合参謀本部が発表。


Russia Tu-95 bomber

2020年12月22日の共同演習で撮影されたTu-95爆撃機。Japanese Ministry of Defense


韓国軍によれば中国から通常の演習との連絡があった後にKADIZ侵入が発生したという。韓国軍は現地時間8a.m.にKADIZ侵入が始まり、3:20p.m.に退去したと発表。ただし、韓国領空侵犯はなかったという。


ロシア国防省はTu-95MS戦略爆撃機2機、中国のH-6K戦略爆撃機4機で「日本海、東シナ海上空の監視飛行を実施した」と発表。「両国軍用機は国際法を厳格に守った。外国龍空有の侵犯は許されない」とし、演習は「他国を意識したものではない」とも発表した。


爆撃機隊にはSu-35戦闘機が援護し、A-50U空中早期警戒統制機が随行したと国防省は発表し、日本のF-15戦闘機隊が「飛行経路の一部で」接近してきたと発表。


日本の防衛省はロシア、中国の爆撃機の写真ならびに飛行経路地図を公表し、琉球諸島から朝鮮海峡にかけ飛行したと示している。


Russian A-50 military plane

2019年7月23日にロシアA-50が竹島付近に侵入した。Japanese Defense Ministry via Reuters

Defense


韓国国防部はロシア、日本に対し「憂慮の念」を伝えたと聯合通信が伝えており、韓国外務部が「再発防止策」を求めたという。


今回の共同演習は二回目で初回は2019年7月で日韓両国で領有権の主張がある竹島周辺にロシア機が接近し日本、韓国が強い反応を示した。


韓国軍機はロシア機に数百発警告発射し、日韓両国がロシア中国を領空侵犯したと非難したが、この両国は事実を否定。


今回の監視飛行はロシア、中国の関係強化を反映しつつ、両国が米国はじめ域内各国と緊張を高めている状況の裏返しとも言える。


China H-6 bomber

2020年12月22日の共同演習に撮影された中国H-6爆撃機。Japanese Ministry of Defense


ロシア国防省は声明文で、演習は両国関係を広く深め、共同で戦略安定性を強めるため、としている。


「ロシア中国は準軍事同盟の段階に入った」とロシア軍に詳しいアレクセイ・ムラヴィエフ教授(オーストラリア・カーティン大)が今年夏のInsider取材で答えていた。同教授によれば2019年7月の演習はロシア軍から学ぶ中国軍の姿勢の一例だったという。


「単純に両国の戦略爆撃機だけではなく、両国のAWACSも投入し監視偵察機能を共有した」と分析していた。


韓国と日本が領有権をめぐり対立している以外にも両国には意見不一致があり、両国関係に影を落としていると海外関係協議会で日本が専門の研究員シーラ・スミスがコメントしている。この対立を横目にロシア、中国が接近しているというのがスミスの見解だ。



2019年演習についてスミスは「ロシアと中国に弱点を露呈されたのは痛い」とし、「以前は政治上の課題だったが、今やロシア、中国に利用され、米国の同盟国間の不一致をつかれた感がある」とスミスはコメントしている。■


この記事は以下を再構成したものです。


Russian and Chinese bombers conducted another joint patrol between South Korea and Japan

 

Christopher Woody 1 hour ago



Reuters contributed to this report.


2020年12月22日火曜日

米陸軍の榴弾砲が70キロ先標的に命中。既存技術の改良でここまでの長射程化が実現すれば、スタンドオフ効果は大きい。

 

 

米陸軍はユマ演習地で長射程砲弾を開発中で砲弾、砲身含め抜本的な火砲の改良を目指し榴弾砲の性能向上を狙う。 (Army)

 

陸軍が開発中の長射程火砲Extended Range Cannon Artillery (ERCA) systemが12月19日アリゾナ州ユマ演習地でエクスカリバー長射程誘導砲弾を43マイル(69.2キロメートル)先の標的に命中させた。

 

米陸軍はロシア含むハイエンド敵勢力に対しスタンドオフ攻撃の優位性を確保すべく火砲の長射程化を目指している。今回のERCA火が実用化されれば敵の攻撃が届かない地点から標的を狙える。

 

ERCA火砲はM109A7パラディン統合制御(PIM)榴弾砲の車台を使い、39口径砲身を58口径30フィート銃身に交換した。これにレイセオン製のエクスカリバー砲弾とXM1113高性能推進剤を組み合わせ、射程を大幅に延長した。

 

2020年3月に陸軍は目標とする射程70キロメートルに一歩近づく65キロを達成していた。

 

今回の試射は三発で、一発目は強い向かい風のため標的にわずかに届かなず、二発目は慣性測定用ハードウェアが故障し、三発目が推進剤、砲弾他のバランスをとり長射程を実現した。

 

ただ今回の成功ではなく、あくまでも実戦投入への過程にすぎないと陸軍は説明。今回発射された砲弾はそれぞれ微妙に相違舌設計で秒速1000メートルでERCA砲から発射時の高圧と運動量に対応すべく最適解を求めた。

 

今回の試射で一年半に及ぶエクスカリバー砲弾開発は大きな成果を上げ諸条件の実現に目処がついたと陸軍は振り返る。

 

エクスカリバーは高速高圧の環境でも機能し、70キロ先の標的を直撃する性能を発揮したと総括している。

 

陸軍が目指すのは現場で実用的に扱える技術で、推進剤や弾薬部分でも例外ではなく高性能といえども発射回数が減るのでは効果がなくなる。そのため砲弾と推進剤の最適組み合わせで榴弾砲が運用し、最大効果の実現をめざしている。

 

2021年に最終仕様を決定する。その中でロケット推進部分と砲弾の仕様が重要となる。また鋼材の選択も攻撃効果を左右する。

 

ERCAは2023年に実戦投入される見込み。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

Army long-range cannon gets direct hit on target 43 miles away

By: Jen Judson 

2020年12月20日日曜日

ライフルのバイヤーズガイド。ホーワ1500。ボルトアクションライフルでその筋には有名な同製品のメーカーは中部地方に本社を置く日本企業だった。

 

 

 

ーワ1500シリーズは不当に低い評価だが、頑丈な構造で耐久性があり正確な射撃が可能なボルトアクションライフルで狙撃、狩猟ともに対応する。

 

ボルトアクションライフルの売れ筋というとレミントンルガーボスバーグウィンチェスターCZ-USAの名前がうかぶ。ではNRAの狩猟用ライフルのトップリストにあるホーワ1500とは?

 

一般が知らなくても火器ユーザーにはあたりまえということだ。日本の豊和工業は米国大手ブランドほどの知名度はなく、事実ホーワ1500についてここまで不当な扱いを受けるライフルはないとまで書く銃火器ライターもいる。同製品は新製品でもなく、まったくのオリジナル製品でもない。

 

 

まず豊和工業のボルトアクションライフルはフィンランドのサコ製品を原型とし、M1500は大口径ボルトアクションライフルで、ブローニングアームズのAB3、X-Boltとならぶ三型式のひとつだ。その中でホーワ1500は今日も生産が続く、世界市場で販売中の唯一の製品だ。

 

豊和工業とは 

豊和工業は1907年創業で小銃の生産開始は1936年で砲弾、航空機部品とともにだった。第二次大戦中は99式小銃とあわせ38式小銃用部品を製造した。

 

戦後は繊維機械メーカーになったが、1952年に米軍制式装備のM1ガーランド、M1カービン銃のコピー品を創設間もない自衛隊向けに製造したほか、米軍用に航空機用投下爆弾も製造した。

 

冷戦を通じ、現在も同社は自衛隊専用に小火器を製造し、輸出はごく少量にとどまる。

 

現在の同社は他社向けに製品部品の製造も行っており、米火器メーカーのモスバーグスミス&ウェッソンウェザビーも顧客だ。M1500は他社も世界各地で別ブランドで販売している。ウェザビーのヴァンガードは事実上ホーワ1500だ。

 

狩猟ライフル、狙撃ライフル 

もう一つ注目されるのはホーワ1500はもともと狩猟ライフルとして1970年代末に開発され、M1500として発売開始され、大型銃身モデルは日本警察が採用している。海上保安庁のSST特別保安チームも64式小銃と併用している。

 

M1500は各種仕様で販売されており、口径サイズも異なるが、共通して三点式安全装置が付き、射手は安全にM1500から銃弾を外し、ボルトシャットをロックできる。

 

ホーワ1500は40年以上前の発売開始だが、しっかりした作りで耐久性に富みかつ正確なボルトアクションライフルで狙撃や狩猟に使える。中射程だが買いやすい価格で、確かに優秀なライフルは他にもあるが、これだけの価値をこの価格で実現している例は皆無といってよい。

 

この記事は以下を再構成したものです。いかんせん銃火器にくわしくないので、今回の記事には多少なりとも誤りがあるかもしれません。ご容赦ください。

それにしても豊和工業のホームページにこの製品の紹介はありませんでした、変ですね。

 

The Howa 1500 Bolt Action Rifle Is Well Worth Its Price

December 18, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarGuns

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.

This article first appeared earlier this year.

Image: Howa USA


2020年12月19日土曜日

台湾の恒例行事、元旦の初日の出戦闘機編隊飛行は中共機の度重なる接近飛行への対応で負担増加中の空軍を考慮し2021年は中止へ。

 台湾の恒例行事、元旦の初日の出戦闘機編隊飛行は中共機対応で空軍の負担増加中のため2021年は中止へ。


   

恒例の元旦明け編隊飛行が2021年は中止になった。 写真は2020年元旦のもの。 蔡宗賢記者撮影)



湾で毎年人気行事になっている元旦の空軍戦闘機編隊飛行だが、2021年は中共人民解放軍機の領空侵犯を増やす中、空軍の負担を考慮して急遽中止となった。


地元屏東県政府は今年の元旦に国防部の協力で、元旦の日の出にあわせ、空軍戦闘機5機編隊の上空通過飛行を今年も予定していた。


台湾空軍はPLA機の飛来増加に対応し警戒態勢を強めており、特に今年は対応回数が増えている。


中止を受け、現地ではフライトに合わせ予定してたその他催事の準備は続けるものの、企画していた宿泊プランや記念切手発行など予定が狂わされた格好だ。■


この記事は以下を再構成したものです。一方、日本では初日の出チャーターフライトを今年も実施するようで警戒態勢の中で暮らす台湾国民と違い平和ボケになっているようです。


墾丁元旦曙光戰機衝場軍方因勤務繁重取消- 生活

2020/12/17 21:15



AI副パイロットのU-2がISRミッション実証飛行に成功した。マン−マシン複合ミッションの新しい時代の幕が開いた。(2020年12月15日)

 今年は目立たないものの着実に未来の航空像に着実に近づいた年だったようです。飛行中ソフトウェア更新については先にお知らせしましたが、今回はAIを副パイロットとした偵察ミッションの実証に成功したというニュースです。2020年は大きな分岐点になったのではないでしょうか。



 

空軍のロッキード・マーティンU-2ドラゴンレイディが人工知能(AI)とのフライトを12月15日に行った。

 

パイロットの少佐はカリフォーニア州ビールAFBの第9偵察航空団所属機を操縦し、アルゴリズム“ARTUµ”がセンサー運用、戦術航法を担当し、パイロットと連携しミサイル攻撃の想定で偵察ミッションを実施した。離陸するとARTUµがセンサーを担当し、敵ミサイル発射装備の探査を開始し、パイロットは脅威となる敵機接近を警戒した。機内のレイセオンの高性能合成開口レーダーシステムは両者が共有した。敵は別のコンピュータアルゴリズムだった。

 

「これはすごい。AIの相棒が後席にすわりミッションの負担を肩代わりするのは一歩前進だ」とミッチェル研究所理事マーク・ガンジンガーがコメントしている。航空戦闘軍団を2014年から2017年にかけ指揮した『ホーク』カーライル全国国防産業協会理事長は第4世代機から第5世代機への進化が一歩進み、能力・効率化を向上させるループに入ったとの意見だ。

 

ARTUµがプログラムµZeroを使い、空軍次官(調達・技術・兵站)ウィル・ローパーは「世界的に著名なプログラムでチェス、碁、コンピューターゲームなどで使われており、今回は事前情報なしでU-2を制御する」とポピュラーメカニクス誌に事前解説し、当日の予定をツイッターで予告していた。

 

「レーダー操作はARTUµに全面的に任せたが、その他サブシステムは『切』にした。ブレイカーのようなもので、AIにまかせたくないものを任意に選択できる」(ローパー)

 

構想はローパーがDoDの戦略戦力整備室長時代から提唱されている。空軍はAIで操縦するスカイボーグ自律無人機と有人機のチーム運用を目指している。ローパー自身もサイファイファンで、スカイボーグの未来型『頭脳』を「R2D2」と呼んでいる。

 

ローパーはフライトでARTUµがミッション指揮官であり最終決定者になったと述べている。ここに至るまでAIシステムは過酷な訓練を受けており、コンピュータシミュレーション訓練は50万回に至ったという。

 

「パイロットなしでARTUµがレーダーをミサイル陣地探知と機体防御に使った」「今回のフライトはコンピュータの副パイロットの実用化にむけたささやかな一歩だったが、将来の軍事作戦の『コンピュータカインド』“computerkind”には大きな一歩だ。(ローパー)

 

ARTUµを開発したのはビール基地内にある航空戦闘軍団フェデラルラボラトリー。ローパーはラボで「µZeroのゲームアルゴリズムでレーダー操作の訓練をし、偵察の良い結果(敵の位置を捕捉)、悪い結果(U-2喪失)を学習させシステムを再構築したが、すべてパイロットとの相互連絡を通じてであった」と述べている。

 

空軍はソフトウェアをコンテナ化するオープンソースツールKubernetesを利用した。同ソフトは新型機の開発期間短縮化にも投入されている。

 

11月中旬に空軍は飛行中U-2SでKubernetesコンテナ化ソフトウェアのアップデートを空中ネットワーク経由で行い、基地に戻る戦闘機材で電子戦術などソフトウェアのアップデートが可能だとを実証した。これもフェデラルラボラトリーが実施した。


「今回のフライトは綿密に準備したシナリオの一部でAIで動的アルゴリズムを使う新技術を試した」と空軍は発表しているが、詳細は明かしていない。


ガンジンガーは「公表内容が不明」のためAIがどこまでの機能を果たしたのかわからないとする。発表にある「対抗アルゴリズム」に興味を惹かれるという。実証済みアルゴリズムをベイスラインとしてARTUµの性能を比較して同じ標的に向かわせたのではないか、という。


つまり真の課題は「これからのループでのヒトの役割を真剣に考えることで、マシンのほうがヒトの知能より迅速に実行できることもある」が、「適切に交通整理して決定過程にヒトを関与させること」というのだ。


カーライルも「まだ課題は残っている」とし、「技術的には可能だし、AIにしかできないこともある。計器アプローチの場合にAIを副パイロットにするのが合理的だろう」という。


Teal Groupのリチャード・アブラフィアも「AIは全面戦争で標的捕捉、攻撃の効果を引き上げる可能性を秘めている。ただし、全面戦争の可能性は低い」とする。この二十年は地上戦が主で戦闘員掃討作戦、飛行禁止空域の執行、水上パトロール等が米国の戦争形態の中心だった。こうした分野ではAIの役割は極めて限られる」とアブラフィアは指摘する。■


この記事は以下を再構成したものです。

 

US Air Force Flies U-2 With AI Wingman

Jen DiMascio December 16, 2020


AI Copilot Based On Gaming Software Takes Flight

By   THERESA HITCHENS

on December 16, 2020 at 1:06 PM


2020年12月17日木曜日

ここに来て動きが出てきた米、中、ロの戦略爆撃機の状況について。B-21、H-20、PAK DA他既存機種も。

  

B-21 bomber concept

B-21の初飛行と低率初期生産開始は2022年と米空軍の最新工程表にある。Credit: Northrop Grumman Concept

 

、中、ロの「超大国」間での競合復活をうけ戦略爆撃機が再び注目を集めている。

 

上記三国は新世代ステルス爆撃機を秘密裏に実用化しようと労力を投入してきたが、長期供用中の既存機種でも性能向上を同時に進めてきた。その新型ステルス爆撃機第一陣が2021年に姿を表しそうだ。今回は新規開発機とあわせ供用中機種の改修の状況もお伝えする。

 

【B−21】米空軍はノースロップ・グラマンB-21レイダーの初飛行は2021年12月4日とすると2018年7月に公表したあと低姿勢だったが、今後12ヶ月以内にカリフォーニア州パームデールのプラント42第4地区の建屋401から初号機が姿を表しそうだ。▼空軍の新日程表ではB-21初飛行を2022年としている。新型機が初飛行に先立ち屋外地上テストを6-9ヶ月かけるのが通例なので、逆算すれば新型機がロールアウトする時期は2021年下半期となる公算が強い。▼B-21では低率初期生産が2022年に始まるとノースロップ・グラマンは述べており、工程表だと量産仕様機材引き渡しは2024年からになる。

 

B-21開発は空軍の迅速戦力開発室が統括した秘匿体制のもとで進められており、B-21の正確な機体単価は不明だ。▼契約交付の2015年10月時点で空軍は80-100機生産した場合の平均単価を550百万ドル(2012年ドル価格)としていたが、インフレ調整を加えると632百万ドルに相当する。▼ペンタゴンは今後数年間の国防予算をよくて横ばい、削減も覚悟しており、空軍最大の課題はその他事業の予算を減らしB-21本格生産を軌道に乗せることにある。

 

【H−20】製造状況がよくわからないのが中国初のステルス、全翼機形状の爆撃機H-20だ。▼2018年に米国防総省が議会向け年次報告でH-20をステルス亜音速爆撃機でノースロップB-2あるいはX-47Bに似た形状で有効航続距離を少なくとも4,590 nm (8,500 km) 、通常兵器、核兵器少なくとも10トンのペイロードとした。▼2019年に同省はH-20のデビューは2020年代に予想されると追加発表した。▼ペンタゴン推定が正しければ、H-20は米西海岸は無理としても北太平洋ほぼ全部に到達可能で、アラスカ、ハワイ両州もここに入る。

 

【PAK DA】ロシアでは将来型航空複合体長距離航空(PAK DA) の爆撃機が2020年に生産段階に入るとの予測がある。▼今年春の衛星写真では大型の新工場がツボレフの生産施設があるカザンに着工されていた。▼5月までにテスト用一号機の機体構造組立が始まったとTASS通信が伝え、ロシア国防産業筋を引用し、最終組立は2021年に完了するとした。

 

上記三機種は冷戦後初の新型爆撃機となる。就役開始時期はそれぞれ不明だが、ノースロップの第一世代ステルス爆撃機B-2Aの運用開始が1997年だったのでほぼ30年を経て次世代機が登場することになる。こうした新型機生産が今後10年以上にわたり活況を呈すれば防衛産業への影響は大きい。

 

ただし、既存機種を全廃しようとする国はない。新型エンジン、センサー、兵装に重点的な資金投入を続ける一方で、冷戦時の旧型機に新たな価値を与える動きが顕著だ。

 

【B-52、エンジン換装、兵装の強化】2021年6月に米空軍からボーイングB-52の76機用新型ジェットエンジン608基の納入業者の発表がある予定だ。▼同機は導入後60年になるプラット&ホイットニーTF-33-P-3(推力17千ポンド)を搭載しており、換装エンジンの候補はGEエイビエーションのパスポート、CF34両エンジン、プラットのPW800、ロールスロイスのBR.725原型のF130だ。▼それぞれ一気に数世代先の設計で経済性と信頼性が向上する。▼またパイロン改修で最高22千ポンド搭載を可能とし、ロッキード・マーティンAGM-183A空中発射式迅速対応兵器を左右の主翼に搭載させる。▼ボーイングは機内の回転式発射機2基も改修し各巡航ミサイル8発を搭載する。▼今後新世代のスクラムジェット推進極超音速巡航ミサイルが実用化されれば現在回転式発射機に搭載するAGM-86と同程度の大きさ重量なので、B-52一機で極超音速長距離ミサイルを22発運用可能となる。

 

【B-1B】同様にB-1Bでも運用変更案があり、11月に空軍グローバル打撃軍団が亜音速ロッキードAGM-158共用空対地スタンドオフミサイル (Jassm)を同機外部パイロンに搭載する実証を行った。▼B-1Bの外部パイロン合計6箇所にAGM-183極超音速ミサイルを搭載する可能性がある。▼同時に機内回転式発射機からも巡航ミサイル8発を発射できる。▼2021年度予算案ではB-1合計17機を退役させ、浮いた運行経費で残る45機の近代化改修を進めたいと言うのが空軍の要望だ。

 

【H−6】人民解放軍海軍が初めて西安H-6Jを南シナ海ウッディ島に11月に配備した。▼同機はツボレフTu-16バジャーの直系だが、H-6Jは米海軍の太平洋艦隊に対抗可能な機体でYJ-12対艦ミサイルを搭載する。▼人民解放軍空軍もH-6Nの空中給油機能を2019年10月に公表した。▼同国内の政府発行雑誌がH-6Nが空中発射式弾道ミサイルを搭載した写真を掲載し、中距離対艦ミサイルDF-21の可能性がある。▼直近ではH-6NがDF-17極超音速滑空式兵器に類似したペイロードを搭載した写真が出ている。

 

【ロシアその他機種】ロシア爆撃機でも近代化は進んでおり、新型エンジンに換装したTu-160、Tu-95が飛行テストを開始した。▼さらにTu-22M3M試作機が2020年にテストに入り、エンジン、エイビオニクス、搭載ミサイルを更新しており、超音速空中発射式ミサイルKh-32もその一つだ。■

 

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Secret Bomber Programs Set For Possible Rollouts In 2021

 

Steve Trimble December 09, 2020