2021年10月5日火曜日

中国の思い通りにはさせない。新型無人給油機MQ-25が太平洋の戦いを決める存在になる。

 


 

ここがポイントこの空中給油機が対中戦の勝敗を分けるといっても過言ではない

 

年前は単なる構想だったものが、数々の試作作業、実証を経て現実になった。米海軍の新型空母搭載無人機が空中給油に成功し、無人給油機開発に向けた海軍の努力が実り、空母搭載機材の航続距離が大幅に伸びる可能性が出てきた。空母は従来よりも後方からスタンドオフ兵力投射が可能となる。

 

今回有人機に空中給油を行ったのはボーイングMQ-25スティングレイ無人機だ。

 

「今回の飛行では受け手の海軍所属F/A-18スーパーホーネットがボーイング所有のMQ-25テスト機T1に接近し、編隊飛行を評価し、ドローグを伸ばし、その後接続させた。T1はその後燃料を航空給油貯蔵ポッドからF/A-18に移送した」と海軍は発表した。

 

海軍はテストデータを集め、誘導技術、逝去機構の基本から必要となるソフトウェア改良の情報を得る。海軍で無人空母搭載機材開発を進めるチャド・リード大佐が語っている。

 

「T1テストは今後数カ月続け、飛行性能限界を徐々に伸ばしていく。エンジンテスト以外に空母艦上の取り回し実証を今年後半に行う」という。

 

無人給油機が実現すれば海軍の作戦立案に戦略戦術両面で大きな利点が生まれ、急速に変化している脅威内容への対応が可能となる。この給油機が中国との戦闘で勝敗のカギを握るといっても過言ではない。

 

その理由として中国の「空母キラー」対艦ミサイルのDF-21DおよびDF-26がある。1000カイリあるいは2000カイリ先の空母を精密攻撃する能力があると伝えられる。F/A-18あるいはF-35の戦闘行動半径は300カイリなので、現状では空母はDF-26の射程内に入らないと兵力投射や対地攻撃任務が実施できない。

 

だが、MQ-25スティングレイが稼働し、戦闘行動半径を倍増できれば 空母は安全な距離を維持できる。空母に搭載される防空能力の強化にも関心が集まっており、安全を確保したまま、さらに遠距離地点から航空機を発進させられる。空母から無人機を発進させれば、大型非ステルス有人給油機を展開するリスクを減らせる。無人機から給油を受けた戦闘機は攻撃対象上空での滞空時間を延ばし、別の地点の攻撃に移動するか、情報データを受けて再度攻撃を加えることが可能となる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

 

China's Aircraft Carrier Killer Missiles Just Lost Their Edge (Thanks to This)

June 9, 2021  Topic: MQ-25 Update  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaMQ-25 StingrayDronesU.S. NavyAircraft CarrierMilitary

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master's Degree in Comparative Literature from Columbia University.


米陸軍の軽戦車調達にジェネラルダイナミクス、BAEシステムズが対応し、試作戦車の実地テストが行われる。

  

 

BAE Mobile Protected Firepower

BAE提案の高機動装甲火力構想車両 Image Credit: BAE.

 

陸軍の機動性防御火力事業 Mobile Protected Firepower Program  (MPF) の選定業者は軽量かつ航空移動可能な装甲車両を納入することになる。

 

機動性防御火力事業は軽量戦車の実現を目指し、限定的な試験段階を経て評価を下すもので、テストには陸軍戦車部隊が加わり試作車両二型式の改良をめざす。

 

MPF構想とは

 

 MPFがめざすのは歩兵旅団戦闘チーム(IBCT)で顕著となっている能力ギャップの解消だ。IBCTには専属戦闘車両がなく、高機動、装甲つきかつ攻撃力を備えた車両が必要だ。とくに敵の強力な陣地、軽車両への対抗手段が必要と陸軍自身が説明している。

 

MPFは軽戦車をめざし、重装甲旅団に配属されない存在となる。MPFは軽歩兵部隊や空挺部隊向けとなる。

 

MPF車両は装甲と車体重量の二つを両立しながら航空移動を可能とする。これは言うほど簡単なことではない。軌道付き車両で航空移動可能だった陸軍車両は問題の多かったM551シェリダン以降なく、軽戦車としてはM41ウォーカーブルドッグがあたtが、車両重量が大きく、航空輸送はできなかった。

 

ジェネラルダイナミクス案

 

ジェネラルダイナミクスがMPFに提案する車両は同社の長年の戦車づくりの経験(GDはM1エイブラムズ主力戦車のメーカー)を生かすとある。さらに電子系統や火力制御はM1に近く、乗員訓練が楽になる。

 

同社提案では同社が英陸軍に供給するエイジャックス車両の部品も流用する目論みがある。ただ同車両は問題が多く、振動の多さとのため英陸軍では医療処置を求める隊員が続出している。また高騒音のため難聴を訴えるケースも出ている。このままGDのMPF提案に組み入れるかは不明だ。

 

GD提案では105mm主砲(NATO主力戦車では120mmが主流)を搭載し、車体は小型とはいいがたく、試作車は30から50トンとなっており、機動性について早くも疑問が出ている。

 

BAEシステムズ案

 

他方でBAE提案ははるかに小型かつ軽量となっている。装甲車両ながら、試作車両ではエンジン脱着が簡単で戦場での修理点検を考慮している。

 

BAEは自社のシェリダン後継を狙いながら失敗作となったM8装甲主砲装備の知見も活用している。今回は車体下部の防御並びに電子系統、エンジンをともに改良しているが、軽量はいいとしてもエンジン出力が比較的低いことから制約が生まれそうだ。

 

両社提案ではともに長所短所があり、優位性が明確にあるとは言えない。ただし、運用部隊の評価次第ではどちらかが優位に立つことはありえる。■

 

The U.S. Army Could Soon Have a New Light Tank

By Caleb LarsonPublished21 hours ago

 

Caleb Larson is a multimedia journalist and Defense Writer with The National Interest. He lives in Berlin and covers the intersection of conflict, security, and technology, focusing on American foreign policy, European security, and German society.

In this article:Army Light Tank, Light Tank, Military, Mobile Protected Firepower Program, NotHome, U.S. Army Light Tank


シェリダンについては以前ご紹介しておりました。https://aviation-space-business.blogspot.com/2021/03/1m551_5.html 


ヘッドラインニュース10月5日(中国の台湾ADIZ進入が記録更新、米陸軍向け軽戦車構想、米政府機能停止の可能性、新型ミサイル警戒衛星、アーレイ・バーク級70隻目、ロシア極超音速ミサイルとヤーセン級潜水艦)

 

ヘッドラインニュース10月5日号

編集の都合上、最新ニュース以外も入りますので

ご了承ください。

★は後日、フル記事を掲載予定の注目記事です。


 

中国がこれまでで最大規模58機を台湾ADIZに進入させた

The Warzone

10月4日、台湾南西部の防空識別圏に人民解放軍機58機が飛来し、二日前の39機を上回る最大の規模となった。飛来したのは爆撃機、多任務戦闘機、偵察機で二波に分かれた。ここ4日で合計149機が台湾ADIZに進入した。

 

★米陸軍向け新型軽戦車の競作が進んでいる

1945

ジェネラルダイナミクス、BAEシステムズの試作車を米陸軍がテストする。両者は米陸軍軽歩兵部隊支援用の軽戦車機動性防御火力事業 Mobile Protected Firepower Program  (MPF) として試作した。軽歩兵部隊、空てい部隊には十分な火力を備えた装甲車両がなく、強力な敵を相手とした場合に火力不足がかねてから問題視されていた。GD案は105mm砲で車体重量が30トン超となるが、航空輸送可能としている。BAEシステムズ案はエンジン出力不足が早くも問題視されているが、ともに改良の余地が残っている。

 

米宇宙軍の最新ミサイル監視衛星の打ち上げ近づく

Defense Blog

ロッキード・マーティンの宇宙軍向けミサイル警戒衛星打ち上げ準備が整ってきた。宇宙配備赤外線地球静止衛星6号Space Based Infrared System Geosynchronous Earth Orbit (SBIRS GEO-6) は敵の妨害を受けにくい新型仕様となり、推進系、電力出力、電子系統を強化している。打ち上げられれば宇宙軍の赤外線監視衛星群に加わる。

 

債務不履行に備えるペンタゴン

Defense News

米議会であらたな政府借入限度が設定されないと、政府執行予算がパンクする事態が近づいている。ペンタゴンから全体通達はまだ出ていないが、財務省はこのままだと10月18日に政府予算は底をつくと予測。ギリギリの段階での妥結を期待する声もあるが、米国政府が債務不履行となれば、軍では給与、退役軍人手当の支払いが滞る見込みだ。国防調達事業への影響は予測できない。予定していた支払いを受け取れなくなると政府相手の訴訟が予想される。

 

アーレイ・バーク級70隻目が完成した

Naval News

USS Carl M. Levin DDG 120

 

10月2日、USSカール・M・レビン(DDG 120)の命名式がジェネラルダイナミクスのバスアイアンワークス造船所で執り行われた。同艦はフライトIIA仕様9隻の五番目の艦となる。艦名は1979年から2015年まで長く軍活動を支援したミシガン選出上院議員にちなむもの。フライトIIAはIII仕様へのつなぎの存在となり、ベイスライン9システムを搭載し、防空、ミサイル防衛双方に対応する。同艦は2021年度内に就役する予定。

 

ロシアが潜水艦からの極超音速ミサイル試射に成功と発表

The Warzone

ロシアが潜水艦からの3M22ジルコン極超音速ミサイル初発射に10月4日に成功したと発表した。使われたのはヤーセン級セベロドビンスクで潜航中、水上航行中の発射を実施したという。発射場所は白海でミサイルはバレンツ海の標的に到達したという。ロシア国防省はミサイル発射の映像を公開した。ジルコンは水上艦艇アドミラル・ゴルシコフ空の発射も先に行われている。米国はヤーセン、ヤーセンM級潜水艦を脅威対象とみている。さらに極超音速巡航ミサイルが組み合わさる事態を憂慮する。

 

 


2021年10月4日月曜日

(再)米海兵隊F-35Bの運用テストを開始した海自は、英海軍とも協力関係深化をめざす。将来日米英で艦、機材の相互利用体制が生まれそう。警戒する中国は国内反対勢力に火をつけ、集団安保反対の論調を張らないか。

 海上自衛隊は今後も「ヘリコプター護衛艦」の名称を使うのでしょうか。米海軍でも強襲揚陸艦を空母として利用しても揚陸艦のままの呼称なのであながちこれが間違いとはいえないのですが。


第一期改修後のいずも youtubeより

 

 

海兵隊のF-35Bが海上自衛隊のいずも(DDH-183)に搭載される。海兵隊機材で日本は自国発注のF-35Bの導入前運用を試すことになる。とくに今回はいずも改装後の運用能力を試す。

 

防衛省発表では海兵隊機材は10月3日から7日まで艦上運用される。固定翼機の空母運用は日本では第二次大戦終了後初めてとなる。いずも(排水量24千トン)はこれに先立ち岩国基地へ回航されていた。

いずもには海兵第一航空団海兵航空集団12の機材が搭載される。同集団には飛行隊二つがあり、うち海兵戦闘攻撃飛行隊121(VMFA-121)「グリーンナイツ」が2012年11月にF-35Bを配備され、初期戦闘能力(IOC)を2015年に獲得しており、岩国基地には2017年1月に移動してきた。同飛行隊は海上でのライトニングII運用の経験も重ねており、2018年3月に強襲揚陸艦USSワスプ(LHD-1)にF-35B6機を展開している。

 

2020年10月に岩国基地にVMFA-242「バッツ」が加わり、今年9月にIOCを宣言した。

 

このうちVMFA-121の機材がいずもに搭載される。海兵隊では同様に英海軍空母HMSクイーン・エリザべス、イタリア海軍空母カヴール(写真下)でもF-35B運用を行ってきた。

 

いずもは2隻ある同級の一番艦ヘリコプター空母として建造され、当初は回転翼機専用艦となっていた。ただし、発注時から固定翼機運用も想定しており、二隻は第二次大戦後の日本で最大規模の艦となった。

 

今年夏、いずも飛行甲板の改装が完了し、同艦はF-35B運用に対応可能となった。中でも耐熱塗装によりF-35Bの推力偏向型エンジンの高温排気に対応するほか、照明設備も変更された。

 

ただしF-35Bの運用をねらった今回の改修に続き、さらに飛行甲板の改装が控え、末端の形状で四角形になる。内部もF-35B用の補給物資、整備作業を念頭に改良される。また航空燃料、弾薬類の貯蔵区画を加える。

 

いずも級にスキージャンプ方式の離陸用ランプをつけるのではとの観測があった。英、伊両海軍艦にはこれがついている。だがこれは実現しないようだ。また後方エレベーターと格納庫スペースはF-35Bの移動に対応しているようだ。いずもの飛行甲板長からSTOVL機運用には制約がつくようで、海兵隊機では軽武装の上、極めて短い発艦を求められそうだ。

 

最終的に同艦には共用精密誘導着艦システムJoint Precision Approach and Landing System (JPALS)が導入される。JPALSは固定翼機、ヘリコプターのアプローチ、着艦を支援し、すでに米海軍で大きな効果を上げている。

 

一連の改修がいずもで完了するのは2026年の予定だ。二号艦かがも同様の改装を受ければ、海上自衛隊でF-35B運用に対応する艦艇が二隻そろうことになる。通常の整備や訓練のサイクルを考慮しても作戦能力が大幅に増強される。整備は5年周期で行うのが通常だ。

 

日本のF-35整備計画では157機導入し、うち42機をF-35Bとする。これまでのところうち8機の契約が成立しており、宮崎県新田原基地への導入は2024年度に行われる。令和4年度予算要求にさらに4機調達予算が計上された。F-35Bは航空自衛隊が運用する。

 

 

いずも級空母に米海兵隊機が定期的に搭載される可能性がある。これは英海軍艦艇に英軍保有機がそろうまで海兵隊機を搭載するのと並行する。ただ、英国が当初予定通りのF-35B導入できるか不透明な中で、海兵隊機搭載は長引く可能性も出てきた。

 

日本が海兵隊の「ライトニング空母」構想を参考にする可能性もあろう。これは強襲揚陸艦にライトニング戦闘機を搭載するもので、いずももこの構想の影響を受けているといえる。

 

米軍との共同作戦体制を敷く日本は英国とも同様の動きをめざし、英国がアジア太平洋に戦略中心を移動させるのに対応する。両国でF-35Bが供用されれば、英軍機が日本艦から、あるいはその逆の状況が生まれてもおかしくない。

 

日本が固定翼機運用空母を実用化することは中国人民解放軍海軍の増強に対抗する意味があり、中国の空母、強襲揚陸艦部隊の著しい拡充が視野にある。海上自衛隊に任務部隊が生まれれば、艦載F-35Bによるスタンドオフ対艦ミサイル攻撃能力も実現し、徳に揚陸部隊の迎撃に有効となろう。

 

F-35Bの艦載運用により有事の際に運用面で柔軟性と生存性が増強され、陸上基地の脆弱性を相殺できる。F-35B搭載艦が尖閣諸島付近に展開すれば、日本領土への兵力投射を困難にできる。

 

これまで日本では憲法の理念を受けて防衛を旨としてきたため、固定翼機を運用し、攻撃的性格の兵装を運用する空母の取得は困難とされてきた。いずも級各艦が「ヘリコプター駆逐艦」の区分となっているのはまさしくこのためである。ただし、中国や北朝鮮の脅威の高まりを念頭に、考え方にも変化が生まれており、将来はF-35Bが日本の空母から普通に運用される日が来れば、新しい防衛上の現実のシンボルとされよう。■

 

Marine Corps F-35s Are About To Be The First Fighters To Fly From A Japanese Carrier Since WWII

Next week, F-35B stealth fighters are due to go aboard the newly modified Japanese carrier Izumo for the first time.

BY THOMAS NEWDICK OCTOBER 1, 2021

2021年10月3日日曜日

米海兵隊F-35Bの運用テストを開始した海自は、英海軍とも協力関係深化をめざす。将来日米英で艦、機材の相互利用体制が生まれそう。警戒する中国は国内反対勢力に火をつけ、集団安保反対の論調を張らないか。

海上自衛隊は今後も「ヘリコプター護衛艦」の名称を使うのでしょうか。米海軍でも強襲揚陸艦を空母として利用しても揚陸艦のままの呼称なのであながちこれが間違いとはいえないのですが。


第一期改修後のいずも youtubeより

 

 

海兵隊のF-35Bが海上自衛隊のいずも(DDH-183)に搭載される。海兵隊機材で日本は自国発注のF-35Bの導入前運用を試すことになる。とくに今回はいずも改装後の運用能力を試す。

 

防衛省発表では海兵隊機材は10月3日から7日まで艦上運用される。固定翼機の空母運用は日本では第二次大戦終了後初めてとなる。いずも(排水量24千トン)はこれに先立ち岩国基地へ回航されていた。

いずもには海兵第一航空団海兵航空集団12の機材が搭載される。同集団には飛行隊二つがあり、うち海兵戦闘攻撃飛行隊121(VMFA-121)「グリーンナイツ」が2012年11月にF-35Bを配備され、初期戦闘能力(IOC)を2015年に獲得しており、岩国基地には2017年1月に移動してきた。同飛行隊は海上でのライトニングII運用の経験も重ねており、2018年3月に強襲揚陸艦USSワスプ(LHD-1)にF-35B6機を展開している。

 

2020年10月に岩国基地にVMFA-242「バッツ」が加わり、今年9月にIOCを宣言した。

 

このうちVMFA-121の機材がいずもに搭載される。海兵隊では同様に英海軍空母HMSクイーン・エリザべス、イタリア海軍空母カヴール(写真下)でもF-35B運用を行ってきた。

 

いずもは2隻ある同級の一番艦ヘリコプター空母として建造され、当初は回転翼機専用艦となっていた。ただし、発注時から固定翼機運用も想定しており、二隻は第二次大戦後の日本で最大規模の艦となった。

 

今年夏、いずも飛行甲板の改装が完了し、同艦はF-35B運用に対応可能となった。中でも耐熱塗装によりF-35Bの推力偏向型エンジンの高温排気に対応するほか、照明設備も変更された。

 

ただしF-35Bの運用をねらった今回の改修に続き、さらに飛行甲板の改装が控え、末端の形状で四角形になる。内部もF-35B用の補給物資、整備作業を念頭に改良される。また航空燃料、弾薬類の貯蔵区画を加える。

 

いずも級にスキージャンプ方式の離陸用ランプをつけるのではとの観測があった。英、伊両海軍艦にはこれがついている。だがこれは実現しないようだ。また後方エレベーターと格納庫スペースはF-35Bの移動に対応しているようだ。いずもの飛行甲板長からSTOVL機運用には制約がつくようで、海兵隊機では軽武装の上、極めて短い発艦を求められそうだ。

 

最終的に同艦には共用精密誘導着艦システムJoint Precision Approach and Landing System (JPALS)が導入される。JPALSは固定翼機、ヘリコプターのアプローチ、着艦を支援し、すでに米海軍で大きな効果を上げている。

 

一連の改修がいずもで完了するのは2026年の予定だ。二号艦かがも同様の改装を受ければ、海上自衛隊でF-35B運用に対応する艦艇が二隻そろうことになる。通常の整備や訓練のサイクルを考慮しても作戦能力が大幅に増強される。整備は5年周期で行うのが通常だ。

 

日本のF-35整備計画では157機導入し、うち42機をF-35Bとする。これまでのところうち8機の契約が成立しており、宮崎県新田原基地への導入は2024年度に行われる。令和4年度予算要求にさらに4機調達予算が計上された。F-35Bは航空自衛隊が運用する。

 

 

いずも級空母に米海兵隊機が定期的に搭載される可能性がある。これは英海軍艦艇に英軍保有機がそろうまで海兵隊機を搭載するのと並行する。ただ、英国が当初予定通りのF-35B導入できるか不透明な中で、海兵隊機搭載は長引く可能性も出てきた。

 

日本が海兵隊の「ライトニング空母」構想を参考にする可能性もあろう。これは強襲揚陸艦にライトニング戦闘機を搭載するもので、いずももこの構想の影響を受けているといえる。

 

米軍との共同作戦体制を敷く日本は英国とも同様の動きをめざし、英国がアジア太平洋に戦略中心を移動させるのに対応する。両国でF-35Bが供用されれば、英軍機が日本艦から、あるいはその逆の状況が生まれてもおかしくない。

 

日本が固定翼機運用空母を実用化することは中国人民解放軍海軍の増強に対抗する意味があり、中国の空母、強襲揚陸艦部隊の著しい拡充が視野にある。海上自衛隊に任務部隊が生まれれば、艦載F-35Bによるスタンドオフ対艦ミサイル攻撃能力も実現し、徳に揚陸部隊の迎撃に有効となろう。

 

F-35Bの艦載運用により有事の際に運用面で柔軟性と生存性が増強され、陸上基地の脆弱性を相殺できる。F-35B搭載艦が尖閣諸島付近に展開すれば、日本領土への兵力投射を困難にできる。

 

これまで日本では憲法の理念を受けて防衛を旨としてきたため、固定翼機を運用し、攻撃的性格の兵装を運用する空母の取得は困難とされてきた。いずも級各艦が「ヘリコプター駆逐艦」の区分となっているのはまさしくこのためである。ただし、中国や北朝鮮の脅威の高まりを念頭に、考え方にも変化が生まれており、将来はF-35Bが日本の空母から普通に運用される日が来れば、新しい防衛上の現実のシンボルとされよう。■

 

Marine Corps F-35s Are About To Be The First Fighters To Fly From A Japanese Carrier Since WWII

Next week, F-35B stealth fighters are due to go aboard the newly modified Japanese carrier Izumo for the first time.

BY THOMAS NEWDICK OCTOBER 1, 2021

2021年10月2日土曜日

AWACS機E-3の廃止がいよいよ迫ってきた。米空軍はE-7ウェッジテイルに注目するが、本命は宇宙配備レーダー衛星群の整備だ。



E-3 セントリーが「タッチアンドゴー」訓練をしている。963空中指揮統制飛行隊の機体。ヒル空軍基地(ユタ)で、2021年8月31日。963飛行隊はアジャイルコンバット演習でヒルAFBに移動してきた。(U.S. Air Force photo by R. Nial Bradshaw).

 

 

空軍の最重要機材は民間エアラインでの運用が終了して久しく、今や老朽化し維持が困難になっている。航空戦闘軍団トップが記者団に明かした。E-3空中早期警戒指揮統制機(AWACS)の原型ボーイング707は米エアラインでの旅客輸送を1983年に終了しており、世界でもイランのサハエアラインズ機が2019年に墜落し運用中の機体は皆無となった。

 

その高機齢707が米軍に重要戦闘情報を提供している。直径30フィートのレーダード-ムを機体上部につけたE-3AWACSは敵味方の機体・艦艇を追尾しながら、地上司令官に情報通信を提供し続ける。だが老兵E-3の運用継続にこれまで以上の手間がかかっている。

 

「だから世界で707を運用するエアラインは皆無なのだ」と航空戦闘軍団司令マーク・ケリー大将が空軍協会主催カンファレンスで語った。ケリー説明では707に搭載するTF33エンジンが難題なのだという。

 

1957年に原型が飛行した707同様にTF33エンジンも相当古く、1959年に初めて飛行に用いられている。AWACSの登場は1975年だ。機体運航を継続できているのは奇跡に近いと同大将は述べた。

 

整備陣が尽力するものの、2011年以来、同機では稼働率目標を達成したことがないと、2020年の米会計検査院(GAO)報告にある。原因の一つに交換部品の在庫がないことがあるという。

 

「規模が少量すぎて部品メーカーも製造再開したくない関係者が言っている。さらにE-3エンジン部品もサプライチェーンが『冷え切り』民間業者での製造も止まったままだ」とGAOはまとめている。

 

ケリー大将もこの点で同じ見解だと席上で述べた。

 

「部品手当に苦労している。6,800機も運航中の737と対照的だ。737部品は各地にあり、フランクフルトでもどこでも要員を派遣すれば手当可能だ」

 

The Air Force flies these planes daily. Here’s why civilian airlines won’tオーストラリア空軍のE-7Aウェッジテイル、イラク上空。 April 2, 2020. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Daniel Snider)

 

 

E-3のほかにも米空軍には長年活躍する機体がある。なかでもB-52ストラトフォートレス爆撃機では最後の完成機は1962年製で、空軍は2050年代までは同機を稼働させるべく、26億ドルで76機にロールスロイス新型エンジンに換装させる。だがE-3には同様の対応はなく、代替策が浮上してきた。

 

ボーイング737の初飛行は1967年で現在も新型機が製造中で、パーツ供給は707より堅固かつベースが広い。米軍でも737は輸送機として空軍が、支援機として海軍が供用している。同機にE-3を交代させる案がある。実際にE-7Aウェッジテイルは737原型の早期警戒統制機で王立オーストラリア空軍が10年近く運用しており、米国でも導入の動きがある。

 

「E-7により空の状況把握が進めば第五世代戦闘機の威力を増強させ、第四世代機はより長く威力を発揮できるようになる」とケリーは見ている。

 

米空軍でE-7を待望するのはケリー大将だけではない。太平洋空軍司令のケネス・ウィルスバック大将もウェッジテイルの早期導入を提唱している。E-7はより新しい機材でスペアパーツ供給でも心配はなく、小型で燃料消費効率も優れながら、E-3のレーダーより進んだレーダーを搭載する。

 

ケリー大将のボス、空軍参謀総長チャールズ・「CQ」ブラウン大将も耳を傾けているようだ。ブラウンからは空軍は「内部検討」をE-7に対して行っており、運用中のオーストラリア、英国と連絡を密にしている。


ただし、米空軍がウェッジテイル導入を決めたとしても、同機はつなぎにすぎず、空軍は宇宙空間での移動目標追尾監視システムの導入をめざしている。

 

宇宙軍トップ、ジョン「ジェイ」レイモンド大将からレーダー衛星群で地上移動目標の追尾をし、空中待機機より広い探知範囲を実現する構想が5月に発表された。レイモンド構想では地上目標の追尾のみを対象にしていたが、ブラウンは空中の監視も可能だと説明している。

 

宇宙配備装備の稼働までは時間がかかりそうだ。またE-7の正式採用の話がいつ出てくるのかも見えない。だがE-3の残り稼働期間はいよいよ終わりが見えてきたようだ。■

 

The Air Force flies these planes daily. Here's why civilian airlines won't


"There’s a reason why zero, exactly zero, airlines on the planet operate the 707."

BY DAVID ROZA | UPDATED SEP 28, 2021 9:26 AM