2021年12月13日月曜日

DARPAのグレムリン無人機が空中回収に成功し、実戦化されれば、航空戦の姿を革命的に変える可能性を示した。中国、ロシアへのペンタゴンの切り札になるか注目。

 

2021年10月、ユタ州ダグウェイ試験地区でグレムリン航空装備のテストが行われた DARPA

 

  • DARPAのグレムリン無人機が10月に大きな成果を上げた

  • C-130でグレムリンの飛行中回収に初めて成功した

  • グレムリンが期待通りの性能を発揮できれば、米軍機は敵防空網の有効射程外に留まれる

軍のトップ研究機関たる国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が開発を進めるグレムリン無人機事業で大きな進展があった。


最新のテストでC-130がグレムリンの飛行中回収に成功した。


グレムリンが米軍の想定する性能通りなら、航空戦闘を革命化し、中国やロシアといった高度軍事力を有する相手にも優位性を発揮できる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンは想像上の生物で、2015年に開発が始まり、再使用可能かつ消耗覚悟の無人機装備の実現を目指している。


ペンタゴンは同機多数を投入し、各種武装も想定する。DARPAは同機の「大群状態」でを有人機と同時運用し、敵打破をめざす。


10月のテストではX-61グレムリン二機を編隊飛行させた。グレムリンはゆっくりとC-130に下方から接近し、母機が垂らすケーブルの先のフックに接続させた。


その後C-130機がケーブルを模き戻し、飛行中の収納に初めて成功した。テスト部隊は同機を24時間後に別のテストに供した。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


DARPAはテスト飛行四回を実施し、グレムリンの飛行特性データを収集し、母機との運用、飛行中回収を試した。


同機事業は完成の域に達しておらず、グレムリンの別の一機を事故で喪失もしている。


同無人機に情報収集監視偵察(ISR)センサーを搭載すれば航空状況あるいは地上の状況の認識能力が実現し、電子戦ジャマー装備により有人攻撃機の侵入路を「開ける」機能が実現するだろう。


グレムリンで搭載可能なペイロードは150ポンドほどなのでAGM-114ヘルファイヤミサイルなど小型装備に限られるはずだ。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンとは機体探知能力、対空能力、対無人機攻撃能力を有する大国へのペンタゴンの回答だ。


ここ20年にわたる米軍は高度といいがたい敵相手に航空優勢を維持できた。だが今やロシアや中国のような手ごわい相手との競合を想定せざるを得ず、航空優勢の確保がままならなくなる事態が想定される。DARPAはグレムリンで安価な解決方法をめざし、20回使用でき、かつ運用維持は有人機や従来型の無人機より低価格とする。そもそも既存機種は数十年もの長期間供用を前提としている。


グレムリンは空中回収可能・再利用可能とすることでコスト削減をめざしている。空中回収発進によりグレムリンの作戦半径を伸ばしながら母機は遠距離地点で無人機を発進させ、敵の対空攻撃外に留まり生存性を高める。


グレムリンはミッション完了後に母機に回収される。24時間の保守整備を受け、次のミッションにと入可能となる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


今回の空中回収が失敗におわっていれば、ペンタゴンとDARPAは同事業の見直しをせざるを得なくなるところだった。


次に考えられる同機の運行形態としてグレムリン多数を母機部隊から運行することがある。この大量運用を実現するべく、DARPAは30分以内にグレムリン4機の発進回収テストを行う。このテストに成功できないとグレムリン事業は大きく見直しが必要となる。


グレムリン事業の母機として、B-52ストラトフォートレス爆撃機、AC-130スプーキーガンシップ、MC-130コマンドーII輸送機、F-35ライトニングII以外にほかの無人機もDARPAは想定している。


1958年にソ連がスプートニク人工衛星打上げで米国の先を行くことが判明し、創設されたDARPAはグレムリン以外でも多大な成果を上げている。


同庁はペンタゴンの先端技術案件の研究開発で主となる組織で米軍の技術優位性維持に貢献している。米国の実力に伍する国の登場で優位性は揺らいでいるが、DARPAの革新技術は対潜戦、ドッグファイト、自律運用装備、さらに将来の地下での戦闘を対象に応用が期待されている。■


DARPA Gremlins Test Shows How US Planes Can Be Drone Mothership

DARPA's latest 'Gremlins' test shows how the US military's biggest planes could be motherships in future wars

Stavros Atlamazoglou Dec 10, 2021, 12:14 AM


Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.


F-35:フィンランドも採用へ。スイスも先に採用を決定しており、ライトニングIIはヨーロッパで連戦連勝の状態へ。

 


Two U.S. Air Force F-35A fighter aircraft from Hill Air Force Base, Utah, fly in formation with two Finnish F-18 Hornets while en route to Turku, Finland on June 13, 2019. (US Air Force/ Airman 1st Class Jovante Johnson)


ィンランドの次期戦闘機選定でF-35の評点が4.47と次点の3.81に大差で採択された。


ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機がフィンラインドのHX戦闘機選定で採択され、契約規模は100億ユーロ(110億ドル)相当になる。


フィンランドはF-35A通常型離着陸仕様を合計64機導入する。近隣諸国ではノルウェイもF/A-18ホーネットの後継機種として導入している。また、機体以外に兵装類及び機体維持パッケージも導入する。


フィンランド国防相アンティ・カイコーネンAntti Kaikkonenは採択結果を伝える報道会見で「接戦だった」と述べた。


ロッキードには競合相手多数があり、ボーイングはF/A-18E/Fスーパーホーネット、ユーロファイターのタイフーン、ダッソーのラファール、さらにSaabのグリペンEがあったが、F-35が各機より優れるとの評価を得た。


フィンランド空軍司令官パシ・ヨキンネン少将 Maj. Gen. Pasi Jokinen によればF-35が全分野で最高評価点を得ており、性能評価で4.47点で、要求水準の4.0点を上回った。次点の機体は3.81点に過ぎなかったという。


フィンランドHX競合が防衛ウォッチャーの関心を集めたのは同国の調達戦略が独特なためで、フィンランドの要求内容に応えるべく参加各社は複数機種含む各種システムを提示可能としていた。例として、SaabはGlobalEye空中早期警戒機もパッケージとして提示し、ボーイングはEA-18Gグラウラー電子攻撃機も加え提案した。選定は二週間にわたる戦闘シミュレーションで幕を下ろした。


「最高の性能を有するシステムの選定が重要となり、支援要素や開発力をライフサイクルにわたり提供できるかを判断した」(カイコーネン)


「F-35はフィンランドの要求する保安体制、供給力、産業界の関与、費用の各面で合格した。軍事性能面の評価で同機は総合戦力で最高点となり、我が国の防衛力強化に役立つと評価した。同機の性能は空陸海のいずれでも最高点となった」


フィンランド向けF-35一号機は2025年に引き渡し予定で同年に旧型ホーネットの用途廃止が始まる。


ロッキード・マーティンは選定結果に早速歓迎の意思を示し、同社提案が産業界にも恩恵を与えると強調した。


「フィンランド政府により開かれた競合の結果当社のF-35が選定されたことを名誉に思います。今後はフィンランド国防軍並びにフィンランド防衛産業界と協力しF-35の納入及び維持に努めます」と同社F-35事業担当副社長ブリジット・ローダーデイルBridget Lauderdaleが声明文を発表している。


「F-35はフィンランド国内産業界にもデジタル機能による第五世代機技術及び製造の強化という効果をもたらします。同機関連の製造は20年超にわたり続き、機体維持関連の業務は2070年代まで展開します」


同社提案の産業界への優遇策として機体前方部分、一部構造部品をフィンランド等で生産し、エンジン最終組立もフィンランド軍機向けに行うとフィンランド国防省が発表している。


今年に入りF-35はこれで二件目の採択を勝ち取った。6月にスイスが同機をダッソー、ユーロファイター、ボーイングを破り採択した。契約規模は65億ドル。カナダも待望久しい戦闘機選定結果を来年早々に発表する見込みでF-35とグリペンに絞り込まれている。


各国の選定でF-35は連戦連勝だが、ドイツは例外だ。ハイエンド戦闘機材の導入財務的に可能な各国はF-35に傾いており、その他機材がことごとく敗退している。


ボーイング広報はフィンランド選定結果に失望したとしながら、スーパーホーネットとEA-18Gグラウラーの今後の採用に期待し、「両機種への国際市場の関心は大きい」とした。


Saab広報はフィンランドとは今後も緊密に協力していくとし、「今回の結果は当社の期待通りにならなかったが、Saabはきわめて強力な提案を行い、グリペンとGlobalEyeを組み合わせ、総合的なパッケージとしたほか、広範な産業界の関与を提示した」と述べている。■


Finland picks F-35 in $11B fighter battle - Breaking Defense Breaking Defense - Defense industry news, analysis and commentary

By   VALERIE INSINNA

on December 10, 2021 at 9:58 AM


2021年12月12日日曜日

2022年の展望② 国家偵察局NRO長官の考える宇宙配備ISR機能の重要性について

 2022年の展望特集の第二回は米国家偵察局長クリス・スコレーズChris Scoleseです。ISRの重要度は高まるばかりで、宇宙空間からの情報収集にあたる専門機関NROは俊英な技術者の集団なのでしょう。

 

 

 

家偵察局(NRO)は60年以上をかけて世界最高水準の情報収集偵察監視装備を宇宙空間に展開してきた。政策決定層に重要情報を提供し、アナリストや軍でも活用されている。悪意の行動する側の意図を理解するとともに、自然災害被害への支援にも役立ち、気候変動にも対応している。

 

 

米国の宇宙空間での優位性は数々の技術革新で達成され、その典型がNROだ。技術革新は創造性を重視する環境あってのことだが、同時にリスクをあえてとる姿勢と、作業に当たる人員を勇気づけ、他国の動静に絶えず気を配ることにより実現する。最良の人材が集まっており、今後の針路を照らす存在だ。

 

NROは空中回収式の小型カメラから地上150マイル上からデータを直接地上へ送る装備へと比較的短時間で進化を遂げた。最近ではパンデミック中でも18カ月で16個ものペイロードを軌道に乗せた。目指すゴールはより良い情報をもっと迅速にかつ利用可能な形で提供し、任務遂行に役立たせること、さらに能力を拡大し高精度情報を提供することだ。

 

今や新しい課題が控えている。わが方の装備は宇宙空間で妨害を試みる勢力から守る必要がある。米国の宇宙利用での優越性に気づき、追いつこうとしている国がある。新技術を開発し、新技法を利用し、技術を組み合わせ最大の難題となるISR問題を宇宙で解決することにかけては米国が世界のどこよりも優れている。

 

だが敵対勢力より先を進むには、わが国は単独では解決できなくなっている。同盟国等の力に頼る時が来ており、従来の想定と異なる新しい協力国を育成すべきだ。単独で対応するよりも優秀性を一貫して維持できるはずだ。

 

そのため、より多様な衛星群、より高い応答性、より予測可能なカバレッジ、よりダイナミックなタスク処理など、より弾力的でミッションに特化したアーキテクチャを実現しなければならない。わが方のアーキテクチャは、NROが開発したシステムだけでなく、現在配備されている高機能な商用および国際的なシステムにも依存する。イノベーションに境界がなく、特定機関のみのものでもない。力を合わせれば、驚くべき進歩を遂げることができる。

 

また、新技術やパートナーシップは地上システムにも適用し、頭上からの大量データをサポート・管理し、さらに多くの宇宙装備を統合し、意思決定を改善し、サイバー攻撃にも耐えられるようにする。

 

調達プロセスで進化を続けねばならない。NROは、従来の長期開発サイクルを短縮する能力を有しており、これは政府内で認知されている。実際に現在軌道に乗っている2つのプログラムは、コンセプトから3年以内で実用化できた。国家安全保障のための宇宙事業では短いタイムラインが常識になるべきだ。

 

より強固な能力をより早く、より低コストで提供できる開発や技術への投資が必要だ。例として、人工知能や機械学習のアルゴリズム改良、宇宙装備内の低消費電力コンピューターシステム、妨害に耐える通信システムなどがある。サプライチェーン全体へデジタルエンジニアリングを導入し、より迅速な開発を可能にする以外に、量子コンピューティング、センシング、コミュニケーションなど新技術へも投資が求められる。

 

また、信頼性の高い、頼れるプライチェーンも必要だ。世界規模のパンデミックで混乱が生じているが、これを二度と起こしてはならない。敵の一歩先を行くためには、宇宙で他に類を見ない状況認識を提供するシステムを構築する部品が不可欠だ。有効なサプライチェーンがなければ、実現はままならない。

 

最後に、平和維持のためシステムを構築するには、強力で有能な人材の確保が必要だ。現在のNRO人材は、任務を果たすことができると確信する。また、将来の人材が、宇宙ベースのISRにおける世界的なリーダーとしてのNROの遺産を引き継いでくれると確信している。

 

国家として今日ほど宇宙に依存したことはなかった。現代の生活様式、経済、軍事、国家安全保障は、宇宙へのアクセスと自由な活動に依存している。

 

.NROの60年にわたる革新とパートナーシップの伝統から、我が国の実力を確信させ宇宙分野における変化に立ち向かわせてくれる。技術を進歩させ、能力を迅速に提供することに成功したNROは、現在のみならず、次の60年、さらにその先も、宇宙におけるアメリカの情報面の優位性を維持するため不可欠な存在といえよう。■

 

 

NRO director: Innovation is the key to America's advantage in space

By Chris Scolese

 Dec 6, 07:10 PM

Chris Scolese is the director of the U.S. National Reconnaissance Office.


米海軍のスーパー駆逐艦ズムワルトが艦体に錆を走らせたまま、第一線配備が進んでいない状態についてSNSで関心が広まっている。

 

@CRJ1321 VIA @WARSHIPCAM

 


海軍に三隻しかないDDG-1000級駆逐艦の一号艦USSズムワルトは南カリフォーニア沖合で試験評価と訓練を続けているが、5年前に就役したものの、サンディエゴ湾を定期的に出入りする状況が続いている。二号艦USSマイケル・マンソー(DDG-1001)もサンディエゴに到着し、艤装工事と公試に入った。だがズムワルトの外観がここにきて輝きを失っている。レーダー波吸収タイルの一部が脱色しており、艦体に錆が見られる。

 

 

@CRJ1321撮影の写真がツイッター@Warshipcamに掲載されているが、同艦は通常のきれいな状態と異なる外観だ。


 

米海軍自慢のスーパー駆逐艦に錆が広がっていることにソーシャルメディアの関心が広がりを見せている。

 

長期間展開する艦艇を高ピッチで運用した場合は、整備の整った基地に停泊されたままの状態と異なり、艦の状態が悪くなることはよくある。「錆の広がり」は議論を呼ぶが、艦が動く限りは大きな問題ではないとの意見もある一方、海軍内に大きな問題がある証拠で憂慮のタネだとの意見もある。

 

同艦の外観での言い訳として、そもそも同艦乗組員が最小規模で設計されており、DDG-1000級はアーレイ・バーク級よりはるかに大きいものの、乗組員数は半分程度の175名で、しかもこれは実戦投入時の定員だ。

 

自動化の採用で省人化を進めているとは言え、肉体労働は必要であり、DDG-1000の清掃対象が広い。ズムワルト級乗員は低視認性塗料の維持もこなす必要があり、艦体には従来艦より曲面が多く錆発生への対応が大変だ。このため、ズムワルト、マイケル・マンソーの艦橋は複合材とし錆の発生を少なくしている。ただし姉妹艦USSリンドン・B・ジョンソン(DDG-1002)の艦橋は鋼鉄製に変更されている。

 

ズムワルトがいつ第一線配備になるか不明だが、現時点で初期作戦能力は獲得済みのはずだ。米会計検査院(GAO)は主要米軍装備品事業について最新の報告書で同級について以下述べている。

2020年9月時点で海軍は169百万ドルの予算要求でDDG 1000級の少なくとも一隻に新装備4種類の搭載を想定している。さらに追加予算を要求し、残る各艦への装備搭載を進めるとしている。海軍は各装備品は艦艇搭載に向け成熟化済みと主張するものの、搭載の完了は2021年12月の初期作戦能力獲得から数年先となる。このためDDG 1000級各艦は少なくとも2025年までは想定した作戦能力を下回る状態のままとなる

 

ズムワルトの近況について海軍に照会している。同艦は巨額の予算を投じ物議を醸しだしたものの、このような状況に置かれているのは不幸とした言いようがない。外観のみじめさのため、同艦が初めて出動した際の成果予想に陰りを落としてる。

 

海軍省は以下返答してきた。

USSズムワルト(DDG 1000)は高度消磁テストを終え12月9日母港に入港した。水上艦部隊には常に錆との戦いがある。運用環境の厳しさのため乗員は懸命に錆対策を整備中に行い、艦艇の戦力維持のため乗員訓練が必要だ。

The Navy's $9B Stealthy Super Destroyer Is Covered In Rust


 

The controversial futuristic warship looked less than gleaming as it pulled into San Diego Bay recently.

BY TYLER ROGOWAY DECEMBER 10, 2021

2021年12月11日土曜日

米中が空中給油機開発を懸命に進めている。中国はY-20改装、米国は無人機MQ-25とアプローチが全く異なるのが興味深い。

 


MQ-25スティングレイがF/A-18スーパーホーネットへの空中給油に成功した Courtesy photo/Boeing

 

  • 米中両国で新型空中給油機開発に大きな進展

  • 輸送機、無人機と形態は異なるが、空中給油機として僚機の運用距離を延ばす効果を期待


中両国で新型空中給油機開発が進んでいる。両国軍それぞれで長距離作戦運用を重視する動きを反映したもので、広大な太平洋を考えると当然といえる。


Y-20


11月28日にY-20空中給油機1機がその他軍用機26機とともに台湾防空識別圏に進入した。中国機の大量侵入は日常茶飯事となっているが、11月28日はY-20戦略輸送機の空中給油型が初めて加わり注目された。


China Y-20 aerial refueling aircraft

Y-20空中給油型の写真を台湾国防部が公表した. Taiwan Ministry of Defense



Y-20タンカーはJ-20など戦闘機やH-6爆撃機への空中給油が可能で、H-6は11月28日にも5機が加わっていた。


中国の空中給油機は現在30機ほどあり、旧ソ連製Il-78やH-6爆撃機を改装したHU-6がある。中国国営通信によればY-20タンカーは燃料90トンを搭載し、Il-78に近いが、HU-6を上回る。


タンカーの「大きな意義」は「H-6K爆撃機の作戦行動半径を延ばすことにあり、米艦艇や台湾東海岸も脅威を受けることにあるとRANDコーポレーションのティモシー・ヒースTimothy Heath主任研究員が評している。


中国軍に関する最新レポートをまとめた米国防総省はY-20給油機の登場で中国の航空戦力は「第一列島線外でも運用可能となる」としている。


Y-20タンカーは完成した機体ではなく、ソ連製エンジンに代わり中国製エンジンに換装し、性能向上が期待される。


中国は空中給油の経験を増やす中で、Y-20タンカーについて「PLAは時間をかけて新機材の運用の経験を積むだろう」とヒースは見ている。


MQ-25


数日後に米海軍から最新鋭無人空中給油機MQ-25スティングレイが空母USSジョージ・H・W・ブッシュ艦上で初の「空母艦上運用テスト」を開始したとの発表が出た。


米海軍は2018年8月にボーイングへMQ-25契約800百万ドルを交付し、同機は一年後に初飛行した。


2021年6月に海軍のF/A-18スーパーホーネットへ無人機による初の空中給油を行った。


飛行を伴わない空母艦上テストでMQ-25は「飛行甲板上を移動させ、取り回し特性を検分する」「カタパルトへの移動、固定、着艦地帯他各種の動きをまず見る」(同上報道官)


海軍はMQ-25を72機調達する。搭載燃料は15千ポンドで二機分の給油に相当し、空母から500カイリ地点へ進出すれば、スーパーホーネットの運用半径が300カイリほど伸びる。


MQ-25は米海軍空母航空団の飛行距離を拡大する効果を生むべく、今は空中給油に軸足を置いている。海軍上層部には同機で別のミッションも実行させる期待もある。情報収集や空爆任務だ。


海軍はMQ-25の第一線運用を2025年ごろには開始したいとしており、同機は陸上及び艦上で各種テストを受ける予定で今後は空母発着艦も行われる。同機の投入で空母航空戦力の飛行距離が延びるのは事実だが、中国には対艦弾道ミサイル等の攻撃手段があり、中国沿岸には接近が難しくなっている。この点をハドソン研究所レポートが指摘している。


同レポートではMQ-25調達が72機では空母から遠く離れて運用するその他機材への支援として不十分との指摘も見られる。


数が限られてもF/A-18部隊に安堵感が生まれる。同機にはタンカー任務も兼用する運用があり、タンカー用途に当たるパイロット・機体は給油任務に不適だと指摘するのは元スーパーホーネットパイロットのケヴィン・クランKevin Chlan(戦略予算評価センター主任研究員)だ。


「無人機運用が始まれば戦闘機による空中給油が不要となり、負担感が大きく減る効果が生まれる」(クラン)■


US, China Developing New Aerial Refueling Tankers to Extend Range

Christopher Woody 23 hours ago


2021年12月10日金曜日

もがみ級FFM四号艦「みくま」が進水!

 

もがみ級フリゲート艦みくまの進水式。JMSDF picture.



菱重工業で海上自衛隊向けFFMもがみ級フリゲート艦四号艦「みくま」が12月10日進水した。同級は海上自衛隊が調達を進める次世代フリゲート艦でFFMと呼ばれる。


一号艦もがみは2021年3月に三菱重工が進水させており、三井E&Sが岡山で二号艦くまのを2020年11月に先に進水させていた。三号艦のしろは三菱重工で2021年6月進水した。


同艦は大分県の三隈川にちなみ命名され、同級各艦は国内河川の名をつけている。同艦は同造船所で艤装工事に入り、2022年末から2023年初頭の引き渡しを予定する。


同級はFFM(30FFM)との名称で多任務フリゲート艦として海上自衛隊向けに建造される。計22隻が就航する予定だ。


各艦は三菱重工長崎造船所と三井E&Sのある岡山で建造される。


もがみ級FFMの諸元


「みくま」の進水式JMSDF picture.



FFM多任務フリゲート艦は満排水量5,500トン、全長132.5メートル、全幅16.3メートルで最高速度は30ノット超、乗組員は90名と極めて少ない。これは高度の自動化を採用したことで実現した。


FFMは以下の各種武装装備品を搭載する。

  • BAEシステムズ製Mk.45 mod.4 5-インチ砲 ×1

  • 日本製鋼所製J12.7mm遠隔操作兵器システム ×2

  • Mk.41 VLS

  • レイセオン製SeaRAM ×1

  • MHI 製 17式対艦ミサイル ×8

  • 三菱電機製OPY-2 多機能レーダー

  • 三菱電機製OAX-3EO/IR センサー

  • 日立製OQQ-11 機雷ソナー

  • NEC製OQQ-25対潜ソナー(VDS/TASS)

  • UUV (MHI製OZZ-5) ・USV (型式不明) を掃海任務に

  • 機雷敷設も可能


Mk.41VLS搭載の予算化について


当初、もがみ級FFMにはMk.41VLSの搭載は想定しながら調達していなかった。だが令和3年度補正予算によりFFM2隻分のVLS調達のめどがたった。VLSは16セルで、74百万ドルを調達にあてる。令和4年度予算ではFFM9番艦、10番艦用にVLS調達予算を要求している。このため補正予算で調達するVLSは1号艦から8号艦のいずれかに搭載される。■


Japan’s MHI Launches ‘Mikuma’ 「みくま」Fourth FFM Mogami-class Frigate for JMSDF

Xavier Vavasseur  10 Dec 2021

https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/japans-mhi-launches-mikuma-%e3%80%8c%e3%81%bf%e3%81%8f%e3%81%be%e3%80%8dfourth-ffm-mogami-class-frigate-for-jmsdf/


クアッドは軍事同盟のみの存在ではない。中国の技術覇権に対抗すべく、今や単独では中国の後塵を拝する米国が各国と組んで技術戦略を展開するしくみづくりへ。

 

 

 

 

iStock illustration

 

 

戦布告なき技術戦争が米国と中国の間で始まっており、米国の懸念事項は多い。重要分野で米国側の手詰まり状態がある。

 

 

米国に挑戦する中国は産業諜報活動に長け、数十億ドル相当の知的財産を盗み出している。中国は統制経済と長期展望での技術開発を目指している。予算の遅れや意見の相違に煩わされることはない。また限界がないほどの資金を新技術につぎ込み、軍用化を目指しており、強い経済で優位に立っている。

 

ただし、中国にないものが米国に豊富にある。同盟国、友邦国の多さだ。米軍首脳部はよく米国単独で戦争開始することはないと発言している。

 

今回は軍事研究開発部門でも同じ方法論を採用すべきとの論調で記事をまとめた。同盟各国との共同作業で先端技術を開発委s中国が目標とするインド太平洋での覇権確保を阻止するのである。

 

防衛問題を扱うのが本誌の趣旨だが、中国への対抗を軍事技術のみで捉えるのは近視眼的だ。中国は民生技術、軍民両用技術の数々を開発し、戦場と商業の双方を制するのが目的と明言しており、世界各国の指導層、民間産業が米国を見限り、どの同盟国とたもとを分かつことを狙っている。

 

これまで米中競合関係は分野別に見てきた。海洋技術、人工知能、極超音速技術、戦略鉱物資源などだ。今回は「クアッド」加盟国が軍事研究開発アライアンスに発展する可能性に着眼し、中国の豊かな人的資源に対抗できるか検証する。

 

日米豪印戦略対話の四か国は共通の権益つまり「自由で開かれたインド太平洋という共通ビジョン」のもと結集している。四か国は「クアッドプラス」と呼ぶヴェトナム、ニュージーランド、南朝鮮も加え、9月にワシントンDCで会談した。

 

共同声明で四か国の目指す技術協力の行動予定が示された。クアッドが目指す第一の分野としてCOVID-19ワクチン生産の新規製造拠点をインドに

設ける。次に四各国はクリーンエナジーの実現で協力する。また、半導体含む重要技術や原材料のサプライチェーンを確立する。また重要技術向けで復元力にあふれ、安全なサプライチェーンを確保し、政府による支援策、政策の重要性にかんがみ、透明性と市場重視を貫く、と声明文にある。

 

その他の技術協力の分野として宇宙空間の持続的利用や衛星を介したリモートセンシングを気候変動の監視に応用することがある。

 

また、中国を意識したクアッドは5G通信技術の応用推進を前面に押し出し、中国企業の独占状態を打破する。また四か国はサイバーセキュリティ分野での協力を確認した。

 

クアッドでは「人材確保の戦い」への関与を目指し、理学、工学、数学の理系学卒者100名に研究職を与える。

 

また、さらなる技術協力の枠組みも作った。クアッド原則を技術、設計、開発、ガバナンス、利用に関し制定し、対象各国のみならず世界規模での応用を通じ、責任ある、開かれた、高度のイノベーションを実現すると声明文にある。

 

一方で2021年に中国の研究開発支出が米国を上回る予想がある。中国は2021年に6215億ドルを研究開発に投じ、次世代の経済社会の実現を目指しているが米国は5987億ドルで二位となると調査会社Statistaは見ている。

 

ただし、クアッド加盟国をここに加えると、合計額は中国を上回る。

 

その他インド太平洋諸国の台湾、南朝鮮、カナダ等が中国との競合を強く意識しているため、中国には不利な状況に見える。ただしこの構図は実際には単純でなく、各国とも中国と交易関係があり、中国は各国に投資活動を展開している。米国も例外ではない。

 

また落とし穴になりそうな側面もある。クアッド四か国それぞれに官僚組織や政策があり、国際協力に抵抗する場面が想定される。特に機微情報の共有への反対が出よう。例えば米国は武器国際取引規制を厳しく適用しているため、多国間あるいは合同による事業の支障になりそうだ。

 

四か国はすべて自国経済の構築と自国民の雇用機会創出を目指している。例としてオーストラリアは国内防衛産業を整備することで米国等外国との提携への依存を減らそうとしている。

 

日本は民生技術イノベーションで世界のリーダーの座を1980年代は守っていたが、今は二十年間に及ぶ不況を脱しようと懸命だ。昨今の政策方針の変更で日本は世界的な兵器市場に参入することが可能となった。

 

インドは国境線をめぐり実際に中国と対立する唯一の存在で、軍事技術の向上を目指すものの、冷戦時のロシア製装備の全廃に踏み切っておらず、米国との間でリスク要因になっている。

 

中国にも同盟関係はある。一帯一路政策で開発途上国を巻き込み、重要な天然資源もあわせ自国の影響下に置こうとしている。さらに独占供給状態を作り、他国を中国サプライチェーンに依存させようとしている。

 

クアッド加盟国が知恵を合わせ結果を出せればいい。新型ジェットエンジンが例となる。だが中国が世界のコバルト供給を独占すれば思惑通りに進めなくなる。

 

今回の特別記事の論点はクアッド加盟国でどんな協力分野があるのか、また乗り越えるべき障壁は何かにハイライトをあてる。また米国防産業から残る三国に何が提供できるかも探る。

 

技術戦争の勝者が戦場のみならずこれからの経済も支配することになるだけに大きなリスクが潜んでいるのである。■

 

Part 2: U.S., Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

Part 3 - India Manages Diverse Arms Sources for Military Modernization

Part 4: to come

Topics: Global Defense Market

 

The Quad: Creating a Defense Tech Alliance to Stand Against China

By Stew Magnuson

12/7/2021