2023年3月6日月曜日

CO2をジェット燃料へ。米軍基地でのエナジー確保策に国防総省が本腰。

 

2017年6月7日、日本の嘉手納基地で、第44戦闘飛行隊に所属する米空軍のF-15イーグルが滑走路に着陸する(U.S. Air Force photo by Senior Airman Lynette M. Rolen)


国防総省の国防革新ユニットDIUは、最も入手しやすい温室効果ガス二酸化炭素を、紛争地域で軍用機燃料に利用する。

 DIUは、ニューヨークの炭素技術会社Air Co.に、二酸化炭素を合成航空燃料に変換する6500万ドル相当の契約を発注した。契約は、DIUが「Synthetic Fuels for the Contested Environment」(SynCEプロジェクト)と呼び取り組みの一環で、戦時中に迅速に配備できる小型で移動可能な燃料生産システムの構築を目指す。

 プロジェクトSynCEの運営責任者である米空軍のNicole Pearl中佐は、2月28日声明で「世界各地のエナジー供給網への負担を減らしながら、任務を犠牲にせず排出量を削減する素晴らしい機会」と述べている。「現地燃料生産技術を開発し、展開し、統合軍はより弾力的で持続可能となる」。

 国防総省は米国政府で最大の燃料消費者であり、国防物流局によると、2022会計年度には110億ドル以上を資源に費やしている。軍用機が燃料の最も大きな使用者だ。

 そのため、国防総省は、燃料供給ネットワークが攻撃や気候変動の影響を前に脆弱になることを懸念している。DIUによると、合成燃料技術に投資することで、「敵の標的を抑止すると同時に、将来の統合軍に脱炭素化の道筋を提供する」ことができる。


ウオッカがジェット燃料へ

エア・カンパニーは、二酸化炭素が原料の蒸留酒「AIRウォッカ」を主力商品としているが、代替燃料にも力を入れている。同社のプロセスは光合成に似ており、持続可能な資源から得られる二酸化炭素を、AIRMADEと呼ぶカーボン・ネガティブな持続可能なジェット燃料に変換する。

 同社のアルコールと燃料の製造プロセスは類似している、と同社は声明で述べています。

 エアカンパニーの最高技術責任者(CTO)Stafford Sheehanは、「持続可能な利点に加え、当社の技術により、当社のパートナーは燃料の供給と入手をコントロールできます。DIU関係者と協力することで、当社技術のモジュール性、信頼性、オンサイト生産の効率性を継続的に向上させることができます」。

 目標は、軍が固定基地や遠隔地の前方作戦拠点で合成燃料を生産することだ。その他の代替燃料と異なり、航空機で使用するため化石燃料と混合する必要はない。

 DIUは、「これにより、各軍は、地元商業市場から燃料を調達する『商業優先』戦略への依存を低減または排除できる」と述べている。

 プロジェクトにおけるDIUのパートナーは、空軍、運用エナジー能力向上基金、エナジーー省、陸軍技師長室だ。


Defense Innovation Unit seeks to convert CO2 into jet fuel

By Courtney Albon

 Mar 4, 05:40 AM


Courtney Albon is C4ISRNET’s space and emerging technology reporter. She has covered the U.S. military since 2012, with a focus on the Air Force and Space Force. She has reported on some of the Defense Department’s most significant acquisition, budget and policy challenges.


2023年3月5日日曜日

2023年の米軍の展望 ①海兵隊 戦力再編が進む中、バーガー大将の任期が今夏終了。後継人事と本人の統合参謀本部議長ポストに注目

 U.S. Marines with III Marine Expeditionary Force Support Battalion, III Marine Expeditionary Force Information Group, board a C-130J Super Hercules on Kadena Air Force Base, Okinawa, Japan, Jan. 20, 2023.


2023年1月20日、沖縄・嘉手納空軍基地でC-130Jスーパーハーキュリーズに乗り込むIII海兵遠征軍情報群支援大隊の米海兵隊員たち。アメリカ海兵隊 / CPL. CESAR ALARCON


「フォースデザイン2030」のビジョンへの取り組みが、軌道に乗ってきた。だが、次の設計者は誰になるのだろうか



州で陸上戦が二年目に入ったが、反対側の半球で準備にはげむ海兵隊の関心が削がれている状況はない。

 「ある日突然、海兵隊員2万人が日付変更線の西側で活動する。私たちの仕事は、来るべき危機に対処するため、組織化し、訓練し、装備し、準備することです。私たちは太平洋に集中しています。しかし、これらの部隊は太平洋ためだけに想定されているわけではありません」。海兵司令官補佐エリック・スミス大将は、2月14日、サンディエゴでのWEST2023会議で、「太平洋で最も有用だが、世界各地でで非常に有用だ」と述べた。

 海兵隊は1月、コロナウイルス流行で遅れていたグアムのキャンプ・ブラスを再稼働させた。同基地は、沖縄から海兵隊員数千人名を移動させるとの日本との長期にわたる合意の一部で、海兵隊と米軍に西太平洋での訓練と作戦の「戦略的ハブ」を提供する。

 海兵隊は1月に、日本にある第12海兵連隊を、計画されている3つの海兵隊沿海域連隊の第2連隊に改編すると発表した。


戦力再編成の進捗状況

あと6年で、「フォースデザイン2030」ビジョンを実現する海兵隊の取り組みは、佳境に入ってきた。

 「分割を終えました。国防長官が計画指針と国家防衛戦略で全員に指示したのを受けて迅速に行った」と、海兵隊司令官デビッド・バーガー大将はDefense Oneに語る。「だから今は安定している。そして今、迅速に、部隊を近代化しつつあり、能力を現場投入することができる。5年後でも7年後でもなく、今すぐだ。私たちはそうしている」。

 バーガーは、海兵隊退役将校の一部による戦力再編への批判にもめげず、こう語った。しかし、耳を傾けている。

 「数名は、絶対に戦力再編に影響を与えている」とし、「飛行隊に何機の機材があるかという議論。歩兵大隊に何人の海兵隊員がいるかという議論。これらすべて、プロセスの中で起こっていた議論だが、彼らはそれを提起した。だから、コンセプトを洗練させ、仮定に立ち返ってテストする方法に絶対に影響を与えている」。

 バーガーは、トレーニングや "基本的なエートス文化 "など、「変わることのないものをより明確に伝える」必要があるという指摘にも耳を傾けてきたという。

 戦力再編が正しい方向に進む「証拠」として、バーガー大将は1月に行われた日米発表で、海兵隊が次のMLRを日本に設置すると発表したことを挙げた。

「これは2つの大国間で行われたもので、第一の項目は、海兵隊が何をすべきかということです。「両国のリーダーが、これは絶対に進むべき方向であり、より速く進むべきであると認めているのです。

 第3MLRは、今年中に初期運用能力を達成する予定だが、カリフォーニア州とアリゾナ州で「かなり現実的な環境下でのストレステスト」を行い、学習と調整を図っている、とバーガー大将は言い、実験で第12次MLRが日本でどのように組織されるかを決定すると語った。

 海兵隊は、戦力再編の取り組みの一環として、「施設とロジスティクス2030」という新しい報告書を発表したばかりだ。報告書には、数十年にわたり「即応性と致死性」を優先してきた結果、兵舎、食堂、職場といった「必要不可欠な存在」に取り組む必要がある、とバーガー大将は述べた。海兵隊教典4「ロジスティクス」の更新も間もなく行われると、司令官付軍事秘書官のロブ・ワイラー大佐がDefense Oneに語った。


人員

 戦力再編の取り組みで最重要なのは、やはり人材とバーガー大将は指摘する。

 「装備品などの要素ではなく、適切な人材を招き入れ、適切な方法で訓練できなければ、うまくいかないからだ。人という要素を正しく理解できれば、他のことはどうでもいい。これこそが海兵隊の基本なのです」。

 海兵隊は、2021年以降、隊員を維持するため努力してきたこともあり、他軍より良い結果を出している。

 「今年だけでも、従来よりも3カ月ほど早く、兵力維持の目標を達成する予定です。これはポジティブなことだ」と、海兵隊のトロイ・ブラック最先任上級曹長はDefense Oneに語った。

 「何人を維持するか上限を設ける代わりに、それを下限とするプロセスになっている」とブラックは言った。「だから、より多くの一期生の海兵隊員を維持する。さらに重要なのは、2回以上再入隊した隊員、つまり後期研修生をより多く確保することだす」。

 人材管理の年次報告書は、3月上旬に発表される予定だ。

1ヶ月前の「訓練と教育2030」文書には、「将来の活動環境」に備えるためのToDoリストが掲載されている。海兵隊訓練教育司令官であるケビン・アイアムス中将は、すべての海兵隊部隊レベルに「ライブ、バーチャル、建設的な訓練環境」を提供するプロジェクトトリポリという新プログラムが含まれていると述べている。




予算

バーガー大将によると、ウクライナに送られた榴弾砲など武器や装備の多くは、海兵隊と陸軍のもので、両軍はDODの「グループ」活動の一環で、2024年の防衛予算要求で在庫補充の資金提供を求める見込みである。

 バーガー大将は、海兵隊が財政的に規律正しく、戦力再編で築いた道を歩み、海軍と国防総省が決めた手段内で活動していくことを改めて誓った。

 「海軍長官が期待するのはもし、もっと予算があったら、どうするのかでしょう。これに対して私の答えは、『より速く』です。そして、うちのいくつかは、もちろん装備品展開ロジスティクスだろう」。


水陸両用運用能力

2023年の国防権限法では、海兵隊は少なくとも31隻の水陸両用艦を保有し、水陸両用部隊に関連する決定については司令官の意見を聞くとされた。将来の水陸両用部隊の規模と構成は、水陸両用戦力要件調査が分析したが、結果は機密のままである。

 バーガー大将は、研究が求める水陸両用戦力規模について言及を避けたが、「研究の厳密さ、分析には非常に満足している」と述べた。「報告中に組み込まれた仮定と結果には満足している」と述べた。

 同大将は、艦船数より準備態勢が重要だと述べている。

 「即応性が高ければ在庫を少なくすることができます。私たちの高い準備率では、31隻が最低限です」とバーガーは言う。「2つ目は、構成です。31隻は、大型艦と中型・小型艦の両方に分けなければならないので、それぞれ内訳が必要だ」。

 バーガーとスミスは、31隻以下になれば、戦闘指揮官に潜在的なリスクがあると述べている。

 海兵隊は、大型揚陸艦とドック揚陸艦間の能力ギャップを埋めるため、陸上から陸上への接続船も追求している。LSM(ランディング・シップ・ミディアム)が、海兵隊沿岸連隊に使用される予定だ。海兵隊は、MLRあたり9隻、メンテナンス期間中の8隻の合計35隻を必要とすると、バーガー大将は述べた。海軍は2025年に新型の水陸両用艦の導入を開始する予定なので、つなぎとして海兵隊は民間船尾揚陸船(SLV)3隻をリースして改造し、連隊での使用方法をテストしている。最初のSLVは4月から5月にかけサンディエゴに到着し、今夏に実験を開始すると、ワイラー大佐は述べている。

 バーガー大将は、SLVの可能性や機能性だけでなく、海兵隊員からのフィードバックにも期待を寄せている。

 「海兵隊員からどんなフィードバックが返ってくるか期待している。手元にあるからこそ、実験ができる。そして、こういうことができる、あんなこともできる、と教えてくれるでしょう。学ぶことができる」(バーガー大将)。


将来

バーガー大将が今夏に司令官任期を終えると、誰が海兵隊を率いることになるのかまだ不明である。当のバーガー大将は、誰になるか知らないという。この決定は、海兵隊がバーガーの築いたフォースデザイン2030の道をどれだけ忠実に歩むか、あるいはどこで乖離するかを決めるかもしれない。

 バーガーの次の章は?報道では、彼は統合参謀本部議長の座を狙う将官の一人だという。バーガーは、ロイド・オースティン国防長官とジョー・バイデン大統領が「決定を下し、そのプロセスを実行する」と述べ、話をそらした。

 「彼らが喜んで提供しようがしまいが、私は彼らの前に立ちはだかるつもりはない。それは彼らの、彼ら自身のものであり、正しいやり方なのだ」と述べた。

 大統領とオースティン長官の両報道官は、次期議長指名プロセスに関するコメントを避けた。■


State of the Marine Corps 2023 - Defense One

BY CAITLIN M. KENNEY

STAFF REPORTER, DEFENSE ONE

MARCH 2, 2023


2023年3月4日土曜日

NGADの実態が一枚のパッチからわかった...?ボーイングがNGADで主導的な立場になっているのか 新センチュリーシリーズでF-101へのオマージュが登場

 


ーイングのファントムワークス部門から出た風変わりなパッチが、空軍の次世代戦闘機のカーテンの裏側を初めて垣間見せてくれたのか...少なくとも可能性はある。

火曜日に、Aviation Week Defense and Spaceの編集者Steve Trimbleは、記事を投稿し、「Voodoo II」と書かれたパッチと「2-o-hunder」とあるパッチの画像2枚を添付した。素人目には、フリーマーケットやミリタリーサープラスストアに散乱している航空パッチとよく似ているが、トリンブルのユニークな経験則からすれば、パッチはかなり多くの情報を提供している。

「Aerospace DAILYは3つの事実を明らかにできる:ここにあるVoodoo IIパッチは合法で、パッチは本物のファントムワークスプロジェクトを表し、プロジェクトは過去4年以内に行われた」とトリンブルは書いている。「プロジェクトの性質も説明できる:Voodoo IIは、ファントムワークスが風洞試験した次世代戦闘機コンセプトの構成だ」。

 さて、トリンブル自身は、このパッチがファントムワークスが毎年行うラピッドプロトタイピングの一つに過ぎないかもしれないと警告しているが、Voodoo IIがそれ以上かもしれないという考えにも、妥当な論拠を述べている。実際、トリンブルの調査によれば、このパッチでアメリカの次期制空戦闘機NGADを初めて本格的に垣間見ることができるかもしれない。

 しかし、この可能性はどこまで信じていいのか、さらに、それが本当なら、NGADプログラムでどんな意味を持つのだろうか。


 Voodoo IIで判明していること


このパッチやNGADプログラムとの関係の可能性はすべて一人の記者から得ている。スティーブ・トリンブルだ。もし読者が航空オタクで、トリンブルの名前を知らなくても、ほぼ間違いなく本人の仕事を目にしているはずだ。防衛ジャーナリズムにおけるキャリアは数十年に及び、1997年にArmy Timesでスタートし、2000年にはMilitary.comの立ち上げに貢献した。2001年には、国際的に評価の高い Aviation Weekに加わり、Jane's Defence WeeklyやFlightGlobalといった他の有名な出版社でも執筆している。

 トリンブルは数々受賞しており、2022年には航空報道部門で最も優れた記者に贈られるDefence Media Awardを、ご存知の方も多いであろうもう一人の航空ジャーナリスト、つまり筆者と分け合うなど、その活動は多岐にわたる。

 トリンブルは非常に信頼できる情報源だが、絶対的ではない。彼は、このパッチとその潜在的な意味合いについて興味をそそる詳細を述べているが、あくまでも大きな「もしも」の話である。

 トリンブルによれば、Voodoo IIの開発は、ボーイングのファントムワークス(ロッキード・マーチンの有名なスカンクワークスに相当)で、過去4年間秘密裏に行われてきた。

 目的は、F-35やF-22のような第5世代戦闘機が4万時間の風洞テストを要するのに対し、4,000時間未満で飛行可能な第6世代戦闘機を開発することにあった。

 トリンブルによると、同社はその実現に成功した。

 しかし、Voodoo IIという名前はどうか。トリンブルは、1954年に初飛行したマクドネルF-101ブードゥーにちなんでおり、当時のいわゆる「センチュリーシリーズ」の2番目の戦闘機を示唆している。ウィル・ローパー前空軍次官補(調達・技術・物流担当)は、2019年に「デジタル・センチュリー・シリーズ」を立ち上げ、デジタルツールを用い、先進的な新型戦闘機の実戦投入のコストと時間を削減すると明言しており、説明は非常に理にかなっている。

 そのため、パッチは、オリジナルの「センチュリーシリーズ」のマクドネル(後にマクドネル・ダグラスとなり、1997年にボーイングと合併)を彷彿させるデジタルセンチュリーシリーズの先進戦闘機の配備を目的としたファントムワークスプログラムと考えても、大袈裟ではないようだ。


エリア51上空を飛行するボーイングのYF-118バード・オブ・プレイ(ウィキメディア・コモンズ)


ステルスで真っ先に思い浮かぶ会社ではないが、ボーイングの低視認性の実績は、競合他社よりも前にさかのぼる。ボーイングは、F-35と契約を争ったX-32を開発しただけでなく、90年代にはYF-118Gバード・オブ・プレイを製造・テストし、エリア51上空でのみ飛行するステルス技術実証機とした。しかし、同社の最も初期のステルス機の設計で、ほとんど忘れ去られている853-21型クワイエットバードは、F-117ナイトホークより10年半近くも前に存在していた。

 ファントムワークスは昨年、アリゾナ州メサに20万平方フィートの巨大な複合材製造施設を新設したが、今のところ、同施設で何を作るかはまだ明らかにされていない。このことは、フランク・ケンドール空軍長官がNGADプログラムは「事実上」エンジニアリングと製造の開発段階に入ったと述べたことと合わせ、ボーイングのブードゥーIIがNGAD契約を勝ち取り、すでに飛行している可能性があることを示唆している。

 しかし、これはトリンブルの憶測であり、事実と異なる可能性があることを再確認しておく必要がある。


センチュリーシリーズ」には、F-100スーパーセイバー、F-101ブードゥー、F-102デルタダガー、F-104スターファイター、F-105サンダーチーフ、F-106デルタダートといった戦闘機がある。


新生センチュリーシリーズ



初代センチュリーシリーズの各戦闘機は、画期的な航空機だった。1954年に就役したF-100から1959年就役のF-106まで、アメリカ初の超音速戦闘機、初めてマッハ2を達成し、初めてレーダー、武器、能力を考慮したシステムとして設計され、初めて核兵器を搭載した戦闘爆撃機もあった。各機は、今日のデジタル・センチュリー・シリーズのように、積極的な技術アプローチで生まれた。

 しかし、2つの戦闘機シリーズのつながりは別にある。1960年、ランド・コーポレーションは、リーランド・ジョンソンによる「センチュリー・シリーズ・ファイター」と題した研究を行った。ジョンソンは、初代センチュリーシリーズの戦闘機に顕著な特徴2点を指摘している。1つ目は、真に最先端技術を活用した戦闘機を実用化する際に内在する不確実性の高さで、これは今日のプログラムとほぼ同じだが、2つ目は、空軍と海軍が次世代航空支配プログラムで議論していることに直接つながるもので、ある戦闘機で開発した部品が「当初計画していなかった機体にうまく使用できることが多く非常に柔軟である」事実だ。

 ジョンソンは、センチュリーシリーズ戦闘機用に開発されたサブシステムが、しばしば他のシステムで高度な「適用性」を示したと説明し、場合によっては、技術的課題を克服したシステムが各種プラットフォームで活用できるようになるまで、サブシステムを独自に開発する方が理にかなうのを証明したと付け加えている。

 NGADは、新型の航空優勢戦闘機の実戦配備を目指すだけでなく、F/A-XXで開発中の海軍戦闘機まで視野に入れた取り組みであることを読者はご承知だろう。

 空軍と海軍は、それぞれのニーズに合わせた別の戦闘機を配備する意向だが、国防総省関係者は、全体コストを削減するだけでなく、将来の改良を合理化するため、モジュール式サブシステムを多数共有すると繰り返し述べている。


Image courtesy of Rodrigo Avella



NGADについて、どこまでわかっているのか?


 

 アメリカ空軍のNGADは、次世代の航空優勢戦闘機の開発をめざしている。目標は、今後数十年にわたり敵空域を支配できるプラットフォームを開発することだが、より直接的な意味では、伝説のF-22ラプターをしのぐ戦闘機の開発を意味する。

 空軍当局は1997年から飛行しているラプターが、能力向上の点で限界に近づいていると認めている。空軍当局は、ラプターとNGADのギャップを埋めるため約110億ドルを投じてアップグレードを続けているが、F-22は早ければ2030年には過酷空域で生存が不可能になると見ている。

 「この問題から逃れるためのF-22の近代化は不可能...」と、空軍将来装備担当の副参謀長S.クリントン・ハイノート中将は説明した。

 F-22の後継機として、「Air Superiority 2030」や「Penetrating Counter-Air」などが、2014年まで遡り、多様な呼称で行われてきたが、2018年には、プログラムの前提が、生産機に先立つ研究開発のに集中したコンセプトに煮詰まり、NGADの名称が誕生した。それ以来、この取り組みは秘密のベールに包まれたまま継続されており、空軍関係者はなかなか手の内を見せず時折最新情報を提供している。

 しかし、秘密主義にもかかわらず、NGADプログラムは全速力で進展している。2018年から2022年の間に、空軍はプログラム開発に25億ドルを投資したと報告されており、2025年までに90億ドルに増加する。

 世界最高峰の戦闘機の性能を超えるのは容易ではないが、NGADは斬新なアプローチをとっている。空軍は、1対1のドッグファイトでラプターに勝てる戦闘機を1型式導入するのではなく、高能力の搭乗型戦闘機とAI対応のドローンウィンマン群を組み合わせた「システムファミリー」導入を目指している。

 しかし、国防総省資料によると、このドローンウィングマンは、NGADの包括的目標の4分の1に過ぎないとある。残る3つは、先進的な推進システム、新複合材料、先進センサーだ。

 過去数年間に空軍や防衛関連企業が発表したレンダリング画像から、新型戦闘機は、垂直尾翼含む古典的な戦闘機の設計要素を省略していることもあり、現行ステルス機を上回るステルス性があると見られる。言い換えれば、NGADの有人型戦闘機は、現在のドッグファイターより、新鋭ステルス爆撃機とのほうが共通点が多いかもしれない。

 これは、アメリカの次期トップクラスの戦闘機において、ダイナミックなドッグファイト性能より、センサーリーチ、データフュージョン、高度な武器能力へのシフトが重視されるのを示唆しているのか。米国議会調査局が昨年作成したNGADプログラム報告書が、まさにそのように説明している。

 「B-21のような大型機は、戦闘機のような機動性はない。しかし、指向性エネルギー兵器を搭載し、その兵器のために大電力を生み出す複数エンジンを備えた大型機は、多くの空域で制空権を獲得すできる」。(「空軍次世代航空支配計画」議会調査局著、2022年6月23日)


(U.S. Air Force render)



NGADはドッグファイターでなくても、ホットロッドになる可能性はある


 新型機は推力偏向制御のF-22ラプターのようにダイナミックな航空ショーは行えないかもしれないが、だからといって新型戦闘機が性能面で劣るというわけではない。

 2020年、前述のウィル・ローパーは、空軍がNGAD戦闘機の「フルスケール飛行実証機」を飛行させていると世界に明らかにした。ローパーは詳しく説明しなかった、その航空機が「記録多数を破った」と付け加えていた。

 しかし、NGADや海軍のF/A-XXのようなプラットフォームが克服すべき課題を考えれば、記録の一部は候補になる。最たるものが、太平洋上での戦闘での「距離の暴力」への懸念だ。

 つまり、次に登場する戦闘機は、間違いなく戦闘半径が大幅に拡大されるはずだ。そのため、効率的な新型エンジンと、大きな機体、多くの燃料を貯蔵できる機体が必要となる。

 しかし、航空優勢戦闘機には長距離性能だけでは不十分で、高速で相手との距離を縮めることも必要だ。スーパークルーズは、燃料を消費するアフターバーナーを使わず超音速を維持する能力を指す。ラプターはマッハ1.5超でスーパークルーズすると言われているが、より長い距離で効果を発揮するために、NGADはそれ以上の速度を発揮できるようになりそうだ。また、高速機と相性の良い、超高度飛行も可能になるはずだ。

 そのため、ローパーが言及した記録は、このクラスの航空機の無給油航続距離、超低空飛行の持続速度、上昇限界、あるいは最高速度..もっと劇的な、空気取り入れ指揮航空機全般の記録であったのかもしれない。

 もちろん、供用中機材の記録とは大きな違いがある。史上最速のアメリカ軍戦闘機はF-15Cで、公開されている最高速度はマッハ2.5以上、上昇限界は65,000フィートだ(ただし、F-22がいずれかを上回っている可能性もある)。しかし、どのアメリカ機にも勝つということは、SR-71の最高速度マッハ3.2以上、使用高度85,000フィートを上回るということだ。

 それは...ありそうでなかった...しかし、楽しみではないか。


テキサス州バーグストローム空軍基地のマクドネルF-101A(S/N 53-2425)。(米空軍撮影)


Voodoo 初代機から何を読み取れるか


 もしボーイングがNGADをVoodoo IIと名付けたのであれば、決定はマーケティングを念頭に置いたもので、歴史的な言及をストーリーテリングのツールに使い、設計の強みや能力を強調することと思われる。では、ボーイングが宣伝材料として国防当局や議員の心に刻みつけたいと思うような、オリジナルのブードゥーの決定的な長所や能力は何だったのだろうか。

 F-101ブードゥーは、1948年に登場したマクドネルXF-88ブードゥー試作機を改良したものだ。当初は爆撃機護衛を目的としていたXF-88は、燃料貯蔵量を増やすため胴体を長くし、大型ターボジェットエンジンのためにエンジンハウジングとインテークを再設計するなど、大幅改良された。F-101ブードゥーは、爆撃機の護衛から核爆弾の運搬まで、さまざまな任務が期待できる「戦略戦闘機」に分類され、1954年9月に供用開始した。

 ブードゥーの2番目の生産型F-101Bは、内部のロータリーベイに非常に興味深い空対空兵器を搭載した2人乗りモデルで2発のAIM-4Aセミアクティブ・レーダー誘導ミサイルと2発のAIM-4B赤外線誘導兵器を搭載して飛行した。ミサイルが発射されると、ロータリーシステムが反転し、次のミサイルが発射位置に配置される。

 しかし、この装備は後にAIM-4C赤外線誘導ミサイル2発とAIR-2ジニー核ロケット2発に変更され、間違いなく、米国やその同盟国が実戦投入した中で最も非常識な空対空兵器となった。この核ロケットは、ソ連の爆撃機編隊を一度に破壊する狂気の装備だった。

 しかし、F-101Bが敵機に核ロケットを発射する能力ではなく、ボーイングはVoodooの画期的で記録を打ち立てるスピードスターとしての評判を利用している可能性が高いようだ。これは、NGAD飛行実証機がすでに「多くの記録を破った」というウィル・ローパーの主張にさらなる意味を持たせています。

初代のVoodooは、1957年にロサンゼルスからニューヨークを7時間以内で往復する大陸横断速度記録を樹立した。その約1ヵ月後、別のF-101Aがカリフォルニアのモハベ砂漠上空で1,207.6mph(時速1943.4km)の絶対世界速度新記録を樹立した。

 ボーイングのウェブページに掲載されているブードゥーの歴史的なスナップショットにあるように、新しいファントムワークスのパッチに直接言及されている「ワンオワンダー」というニックネームは、この素晴らしい高速性能と評判から生まれたものだ。



(Voodoo II patch image used with permission from Steve Trimble at Aviation Week)


ファントムワークスのパッチに話を戻すと


 そこで、オリジナルのセンチュリー・シリーズが今日のデジタル・センチュリー・シリーズにどう反映されているのか、また、F-101ブードゥーは「ワンオワンダー」というニックネームを持つ記録的なスピードの悪魔だという新しい理解を得た上で、スティーブ・トリンブルのファントムワークスパッチを再度見てみよう。

 パッチ上部には「ブードゥーII」の名がはっきり記されており、トリンブルはすでにボーイングのファントムワークスの第6世代戦闘機計画を連想した。また、下部に書かれた "two-o-hunder "は、初代のブードゥー、特に記録破りのスピードスターとしての評判にちなんだものだ。

 トリンブルは、このプログラムは過去4年間、つまりおよそ2019年から2023年まで(あるいは2018年から2022年まで)行われたとしており、2020年にはウィル・ローパーが、空軍がNGADプログラムの技術実証機を飛ばしていると明言し記録を更新していたと明かしていた。

 その元となったワンオワンダーの愛称は、F-101の最高速度がマッハ1以上であることを指して語られることが多く、時には最高速度が時速1,000マイル以上であることを指して語られることがある。そのため、Voodoo IIの「トゥー・オー・ハンダー」は、初代の2倍の速度を指している可能性がある。おそらくマッハ2以上のスーパークルーズ能力だろうが、より興味深い可能性として、最高速度が時速2000マイル、つまり適切な高度なら記録的なマッハ2.6だろう。

 デジタルセンチュリーシリーズにおけるブードゥーIIの役割は、センチュリーシリーズにおける初代ブードゥーと同じく、他の機体、特に海軍の次期F/A-XXに搭載されるサブシステムを搭載している可能性がある。ボーイングのファントムワークスは大規模な新しい複合材建設施設で作業を開始しており、複合材はNGAD開発の4大プロジェクトの1つだ。

 情報を総合すれば、ボーイングのブードゥーIIは、NGADプログラムで開発されるアメリカの次期制空戦闘機のベースになっている可能性が高いとことになる...しかし、はっきりさせておきたいが、まだ状況証拠に過ぎないだ。

 ボーイングがアメリカの最新戦闘機開発で主導権を握っている可能性は確かだが、解決したとは言い切れない。

 とはいえ、トリンブル自身の言葉を借りれば、「空軍のNGADプログラムの勝者の正体は、依然として謎のままだ。その間はVoodoo IIを思い出してください」。■


Voodoo II: Could a simple patch give us a sneak peek at NGAD? - Sandboxx

Alex Hollings | March 2, 2023




Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


2023年3月3日金曜日

イランの核兵器取得が間近に迫ってきた。核交渉再開の目処は? イスラエルはどう反応する?

 

Image Credit: Creative Commons.

 

国防高官によると、イランは2週間以内に核爆弾1個分の核分裂性物質を製造できるとみられている。コリン・カール国防次官(政策担当)は下院軍事委員会で、ドナルド・トランプ前大統領が2015年の共同包括行動計画(JCPOA)から離脱して以来、テヘランの核能力達成への接近が急速に進んだと語った。

カールの警告は、イランが地下施設「フォードウ燃料濃縮工場」で兵器級に近いレベルまでウランを濃縮したとする国連の評価と一致する。同次官は発言の中で、核計画復活がイランの「目覚ましい」進展を解決する可能性があるとの考えをあらためて示した。

 しかし、長年にわたるウィーン核協議は2022年に行き詰まり、イランは条約上の義務に違反している。イランの核開発面の進展は憂慮すべきものだが、米政府関係者は、同政権が実際に爆弾を製造するのに必要な技術は保有していないと依然考えている。

イランが核爆弾製造に必要な濃縮ウランの量は?

核爆弾を作るには、ウラン粒子を純度90%まで濃縮する必要がある。今週、国際原子力機関(IAEA)は、イランの地下施設FFEPで濃縮されたウラン粒子が純度83%以上に達したことを確認した。

 低濃縮ウランは商業用原子力発電所の燃料生産に再利用できるが、高濃縮ウランは、遠心分離機で精製されると核用途に操作できるようになる。イラン・ウォッチによると、テヘランは遠心分離機の機種を改良し、兵器製造に必要な物質の濃度を高めている。

 政権は長年、核活動は純粋に「平和的」で民生目的と主張してきたが、イランの科学者は2015年のJCPOAに違反し、以前の濃縮よりはるかに高い純度60%までウランを濃縮していることを公にしている。


イランはIAEAの規制を公然と破ってきた

テヘランはIAEAの規制を拒否してきた歴史がある。昨夏、ウィーン核交渉が行われていたにもかかわらず、イランは核施設から20数台の監視カメラを撤去すると発表し、IAEAに打撃を与えた。国際的な監視機関である35カ国理事会は、イランが同機関の規則を露骨に無視したことを非難した。実は、イランはウィーン会談が始まった当初から、交渉に有利になるようにIAEAの映像を隠していたのだ。


核合意はまだ可能か?

イランの核開発の急速な拡大と査察官のアクセス不足は、イランが核の敷居を越えるまであと数日というカール次官の警告を裏付けている。昨年4月、ホワイトハウスはイランの核武装解除時期が数週間後に迫っていると発表し、同様にトランプ政権がJCPOAから離脱したのを非難した。

 バイデン大統領は選挙戦当時から核条約への再加入を唱えており、イランもそれを知っている。カールは今週、下院軍事委員会で、米国が「この問題を外交的に解決し、核計画に制約を戻すことができれば、他の選択肢より優れている」と述べ、同条約に対する政権のコミットメントを再確認した。

 しかし、今はJCPOAが氷漬けにされている。イランはウラン濃縮増強に加え、ウクライナ侵攻でクレムリンに致死的な無人機を供給したことで注目されている。

 IAEAによる最新の調査結果で、ウィーン交渉再開は先送りされそうだ


Is Iran Close To Building A Nuclear Weapon?

ByMaya Carlin

https://www.19fortyfive.com/2023/03/is-iran-close-to-building-a-nuclear-weapon/


Maya Carlin is a Middle East Defense Editor with 19FortyFive. She is also an analyst with the Center for Security Policy and a former Anna Sobol Levy Fellow at IDC Herzliya in Israel. She has by-lines in many publications, including The National Interest, Jerusalem Post, and Times of Israel.

In this article:IAEA, Iran, JCPOA, Middle East, Nuclear Weapons


2023年3月2日木曜日

E-3後継機としてE-7の製造契約を米空軍がボーイングに交付。就役は2027年予定。

 


U.S. Air Force


米空軍は、E-7Aウェッジテイル・レーダー機でまず2機の製造をボーイングと契約した



ーイングは、米空軍の次期空中早期警戒管制機(AEW&C)の開発に着手し、E-7ウェッジテイル・レーダー機の派生型を開発する契約を締結する。空軍は、31機ある707ベースのE-3 Sentry Airborne Warning And Control System (AWACS)の一部をE-7で置き換える予定だ。E-3各機は作戦準備のレベルを反映する空軍の指標である任務遂行率の低迷に悩まされている。

 ボーイングによると、12億ドルを超えない契約のもと、「E-7 空中早期警戒管制機(AEW&C)の米国向け新型機2機種の開発を開始する」そうだ。ここでは2つ異なるバージョンが開発されているような表現だが、実際には、米空軍標準のE-7を同じ仕様で製造した最初の2機が、運用に入る前に「生産代表試作機」として使用されることを指す。



アメリカ空軍塗装のE-7Aウェッジテールのコンセプトアートワーク。U.S. Air Force



「ラピッドプロトタイピングプログラムは、DAF(空軍省)の要求を満たすため、米国ベースのミッションシステムを機体に統合すると同時に、E-7Aを運用中の連合国や同盟国のとの相互運用性を確保する」と、空軍は声明で述べている。

 ボーイングはメディアリリースで、E-7は「最も困難な作戦環境でマルチドメイン認識を実現する、完全統合され、戦闘実績のある、柔軟なコマンド・コントロール・ノードを提供する」と述べている。E-7は、「オープンシステムアーキテクチャとアジャイルソフトウェア設計により、航空機の能力を進化させ、将来の脅威を先取りできます」と述べてる。

 ボーイングのE-7プログラム副社長兼ゼネラル・マネージャーのステュー・ボボリルは、「E-7は実績あるプラットフォーム」と述べている。「E-7は、米空軍の空中早期警戒管制の要件を短期間で満たすことができる唯一の先進的な航空機で、統合作戦の実施を可能にするものです」。


2022年1月20日、レッドフラッグ22-1のためにネリス空軍基地(ネバダ州)に着陸するオーストラリア空軍のE-7Aウェッジテイル。U.S. Air Force/William R. Lewis



今回の契約は、空軍がE-7を「老朽化してきたE-3の代替に必要な期間内に、国防省の戦術的戦闘管理、指揮統制、移動目標指示能力の要件を満たすことができる唯一のプラットフォーム」と判断して、期待されていたものだった。これは、空軍関係者を含め、ウェッジテール購入でさかんに議論されていたのをうけてのことだ。

 2022年4月のウェッジテイル調達決定は、その前の2月に空軍がE-3一部の後継機を探していることを正式発表した後だった。E-7の唯一の競合機はサーブのビズジェット機「グローバルアイ」で不採用となった。

 E-7の目玉は、ノースロップ・グラマンMESA(Multi-Role Electronically Scanned Array)センサーで、空中と海上の脅威を同時に360度カバーできる。E-3が採用している機械走査式レーダーより、少なくとも1世代進んだ電子走査式技術だ。

 空軍の2023年度予算要求によると、MESAの利点は「最新の電子スキャンアレイセンサーを有人プラットフォームに統合することによるキルチェーン効果の向上、信頼性/可用性の向上、運用コストの削減」という。電子スキャンアレイは、レーダービームのステアリング、セクターステアリング、ターゲット再訪問速度の高速化が可能で、E-3AWACSの機械スキャンレーダーでは不可能な、より強固な電子保護と現代の脅威の検出・追跡を可能にするとある。

 E-7は、長距離で各種目標を探知・追跡するだけでなく、先進的な戦闘管理システム(ABMS)機能を提供する。これは、中国など敵対国との将来の紛争において、より効果的な長距離「キルチェーン」を提供するペンタゴンの野心に欠かせない機能です。

 E-7はまた、確立ずみサプライチェーンの恩恵を受け、空軍は、E-3と比較して、メンテナンスおよびロジスティクス費用を大幅削減し、より健全な任務遂行能力が確保できると期待している。E-7は737-700 Next Generation(NG)をベースにしており、ボーイングは737 NGの商業生産を2020年に終了したものの、E-7や米海軍のP-8ポセイドンなど軍事派生機の顧客向けに生産を続けている。

 E-7はすでにオーストラリア、韓国、トルコの3カ国が運航しているため、認証プロセスが簡素化され、一部の主要同盟国との相互運用性も確保されることになる。また、E-7はイギリスも発注しており、作業は現在順調に進んでいる。

 アメリカ空軍向けの新型E-7については、2025年に生産を開始し、2027年までに最初の機体が運用を開始する予定と発表が出ている。空軍は、契約の対象となる最初の2機と同様に、2032年までにさらに24機のE-7を購入する計画だが、合計数は今後数年間の資金調達次第で決まる。

 E-7が就役するまで、現在のE-3フリートは継続的なアップグレードプログラムで生き延びなければならないが、一部であっても機体の代替は非常に歓迎される。

 Defense Newsによると、空軍のE-3の40%から45%が、最新の数字である2021年には飛行不能状態だった。最新のE-3Gの任務遂行率は、2020年の70.7%から2021年には60.7%へと10ポイント低下している。一方、E-3Bの任務遂行可能率は同期間に65.8%から55.8%に低下している。



2022年3月22日、アラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地で、牽引されるE-3 AWACSを監視する第962航空整備隊所属の米空軍兵。 U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Andrew Britten



 1970年代後半に最初のバージョンが就役したE-3セントリーでは、生産終了して長いTF33エンジンを搭載したボーイング707の機体を使用しており、このことも稼働率低下の一因となっている。

 E-7が必要なのは、E-3後継機としてだけでなく、空軍と国防総省の監視・戦闘管理能力を抜本的に見直すためであることは明らかだ。実際、空軍は次期E-7を「すべての空中活動を探知、識別、追跡し、統合軍司令官に報告する主要な空中センサー」として機能させると述べている。

 しかし、長期的には、空軍は、空中監視と地上移動目標指示(GMTI)任務の両方に宇宙ベース資産を使用する考えを受け入れつつある。一方、E-7は、アメリカ空軍の空中早期警戒管制部隊の基幹となるべく、良いポジションについているようだ。■


Air Force Orders First E-7 Jets To Replace Aging E-3 Sentry

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED MAR 1, 2023 3:02 PM

THE WAR ZONE

https://www.thedrive.com/the-war-zone/air-force-orders-first-e-7-jets-to-replace-aging-e-3-sentry