2018年2月17日土曜日

中国が海外販売をめざす99型戦車の実力とは

戦闘車両の世界は勉強中といったところですが、主砲でミサイル運用とか反応性装甲で敵弾の命中効果を減じるとか技術が相当進展しますね。中国製兵器は安価でそこそこの効果があるので途上国には魅力があるのでしょうね。実績が加わればいろいろな疑問も払しょくすると思いますが、世界に武器を売りつけるのが中国の狙いなのでしょうか。


China Is Selling a New Tank. Could It Beat the M1 Abrams in a Fight? 中国の新型戦車はM1エイブラムズに勝てるか




February 10, 2018


国の主力戦車ZTZ-99(99型)は輸出を意識した設計だ。輸出仕様はVT-4の呼称でタイ陸軍が採用している。VT-4はもともと輸出用にパキスタン、ウクライナが原産ノアルハリド戦車が原型としている。だがVT-4の実力はロシアのT-90S、米M1エイブラムズの輸出仕様あるいはレパード2と比べてどうなのか。

 VT-4のルーツは1990年代初頭開発のアルハリド戦車で、中国とパキスタンの技術が応用されているが、弱点はエンジンでドイツやウクライナからの導入を求めたが、結局ウクライナ製エンジンンを採用した。そのためVT-4では国産エンジンの実現をねらった。エンジン開発に成功したことでVT-4の販促資料では信頼性と性能水準を訴えている。
 タイがVT-4導入を決定したのはウクライナからT-84オプロット戦車が予定通り納入できなくなったためだ。当初はT-90SかT-84の選択を検討したが米国の外交圧力でT-84に落ち着いた。だがその後のウクライナの混乱と内戦でT-84納入は予定より低いペースになった。そのためT-84に代わる戦車選定が2016年に始まり候補は中国のVT-4とロシアのT-90MSだった。クーデターで生まれた新政権は中国に接近し、ロシアの影響は減少したためVT-4が選定された。とはいえ、T-90に輸出実績があった半面でVT-4は実績がなかった。タイがのVT-4採用は初の事例だった。
 VT-4は中国製125mmBT-4砲弾を搭載する。これはDTW125弾の輸出仕様でタングステン貫徹弾の中国製APFSDSの最終世代で射程2キロで700ミリ圧延鋼板を貫徹する。さらに輸出用新型弾がDTC125弾から開発中で同じ距離から750ミリを突破できるといわれる。125ミリ砲は標準口径だが、VT-4は120ミリ砲にも対応可能だ。さらに140ミリ砲が将来の中国軍向け主砲に検討されたが新型砲弾の開発とETC技術開発が先行し、今のところ棚上げされている。
 VT-4の砲弾自動装てん装置はT-72とほぼ同じで砲弾を砲塔の床面に水平方向に貯蔵し、ホイストで上部移動させる。タイ陸軍のVT-4はウクライナ製砲弾を利用できATGM(対戦車誘導ミサイル)も運用可能だ。VT-4でGLATGM(主砲発射対戦車ミサイル)は不要と想定したのは運動エネルギー利用の貫徹弾で途上国に十分と考えたためだが、タイ向けVT-4にはT-84導入で入手したミサイルの運用も可能になっている。VT-4のRHA装甲は500から600ミリと推定され、さらに爆発反応装甲は700-800ミリだろう。砲塔装甲のデータは極秘で導入国のみに開示される。その他VT-4の特徴としてレーザー照射警報装置があり、完全安定化で独立懸架の熱画像を車長に備えるのはロシア製戦車もまだ採用されていない特徴だ。
 タイ陸軍戦車部隊はVT-4のERAがオプロットより薄いと不満だ。オプロットのアクティブ防護を盛り込んだ設計は戦闘で効果が実証ずみだが、VT-4では効果は未検証である。ただし射撃演習でVT-4の射撃制御はオプロットより正確だと判明している。
 VT-4の性能は革命的とはいかないものの、(メーカーのNorincoはそう主張するが)価格のわりに充実した戦車であり、中国本土の製造元からのサポートも期待できる。残存性に関しては、砲弾の配置方法が同じなのでT-72やT-90と同様になる。主砲性能は砲弾が最新でないため米、中、ロの最新型とまではいかないが、最強装備を除けばほぼすべての戦車に対応できる。そのため予算が乏しい国向けにとってVT-4は訴求力のある製品となり、とくにロシア、ヨーロッパ、アメリカとのつながりがない国には「これで十分」な戦車だ。タイ陸軍が導入したスティングレイ軽戦車でも同じことがいえるが、今のところ同戦車を採用したのはタイだけだ。■
Charlie Gao studied political and computer science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national-security issues.

Image: Wikimedia Commons

2018年2月16日金曜日

B-21開発は順調と米空軍長官発言あるが、詳細は依然秘密のベールに

B-1,B-2の早期退役を決めた空軍はよほどB-21に自信をもっているようですね。B-21については一向に米空軍が口を緩める兆候がありません。それだけ重要な開発なのでしょう。F-35で中国のサイバースパイで情報が漏れたことが答えているのでしょう。画像を載せるといろいろ不具合があることがわかりましたので当面テキストだけとします。ご了承ください。


SecAF Says B-21 ‘On Schedule’ As China Rises To Air Force’s Top Threat 中国の脅威を空軍のトップに据えた空軍長官がB-21は「予定通り」進行中と発言


By COLIN CLARKon February 14, 2018 at 3:12 PM
PENTAGON: 空軍長官ヘザー・ウィルソンが中国を「こちらに歩調を合わせた脅威」と呼んだ。長官がペンタゴン予算発表の記者会見の席上でのこと。
中国が急速に装備近代化して米空軍も対応を迫られていると長官は述べ、PRCが衛星攻撃実験を行ったが空軍の対抗手段については詳細を語らなかった。
ウィルソン長官は口にしなかったがB-21爆撃機の長距離ステルス性能、電子サイバー戦性能が中国への対抗手段の中心であるのは明らかだ。記者は長官にB-1、B-2を用途廃止してB-21導入を進める案を発表したのは新型爆撃機に自信が相当にあるからなのかと尋ねた。長官からは開発は順調としか回答がなかったがそこに重要な意味がある。長官が再び同事業の基本に触れ「最低でも」100機のB-21を導入して175機の爆撃機部隊の一部とすると述べたところで、記者は長官にB-21ではそれ以上の詳細を話すつもりがないことを意味するのかと遮ると長官は微笑してその通りと答えた。
上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長にとっては笑い事ではない。同議員は空軍がB-21事業の内容を開示しないことを不満に思っている。
別の記者がウィルソン長官に調達規模を尋ねると長官はB-21の追加導入を希望している。国防戦略構想の内容から戦力構造を見直しているとだけ答えた。
長官からは空軍がUH-1ヘリコプター後継機の最終決定をしたこと、T-X練習機選定は今年中にの行うことも発表された。UH-1後継機は高速長距離機で運送能力も強化する。任務は二方面でミサイル基地への輸送とともに危険な事態に政府高官を安全に移動させることだ。ロッキード・マーティンのシコースキーが「選定前抗議」を会計検査院に提出し空軍の評価内容に不満を表明し当分決まらない感じだ。
このままヘリコプター選定が進まないと戦略軍司令官ジョン・ハイテン大将が何かいいはじめそうだ。

T-Xも何年にもわたり難航してきたがいよいよ今年中に選定がされそうだ。議会はいつものように素晴らしい仕事ぶりで通常支出法案の通過を阻んでくれた。おかげで空軍はまだ決定ができない。今回は二年間有効の予算手続きとなるので空軍も比較的自由に行動できる。2018年、2019年予算で議会は数百億ドルを追加している。■

日本にも参考となるか、USSアメリカがF-35B運用に向け改装工事

Navy USS America Amphib Gets New Tweaks for F-35B Attacks 米海軍USSアメリカ揚陸強襲艦でF-35B運用改装工事

Lockheed Martin

海軍は民間企業と揚陸作戦の将来に大きな一歩となる強襲揚陸艦USSアメリカ(LHA-6)でのF-35B共用打撃戦闘機用の改装をまもなく開始する。
USSアメリカは最新鋭級揚陸艦の一号艦で太平洋と中東で7か月運用を終えサンディエゴに帰港したばかりだ。
飛行甲板改装ではJSF搭載のセンサーや兵装と同期させることとF-35B排気熱に耐えるようにすることが主眼だ。F-35BはUSSアメリカ艦上でフライトテストを展開している。`
海軍技術陣は耐熱かつ滑り止め効果のある素材を既に飛行甲板と下部構造に塗布しており、今回は着艦スポット7番、9番の下にも追加する。
センサー類、各種戦闘システム、レーダーや兵装類もF-35運用を前提に各種改修を受ける。またJSFのフライトパス確保のため一部アンテナも再調整される。
アメリカ級には艦防御システムの呼称で新規技術が導入されている。その内容にはローリング航空機ミサイルRIM-116 Mk 49発射機二つ、レイセオン製20mmファランクスCIWS二基、.50口径機関銃二門を7か所に装着する。
アメリカ級二号艦USSトリポリ(LHA-7)は昨年5月進水し、ハイテク艦内情報処理機能のConsolidated Afloat Network and Enterprise Services(CANES)が搭載されている。
USSトリポリは全長844フィート、全幅106フィートで排水量44千トン。燃料効率が高いガスタービン推進で最高速力は20ノット超とハンティントンインガルスが公表している。
三号艦は2024年に完成予定でウェルデッキが復活する。
F-35Bは従来のハリヤーとは大幅に異なる機体で運用方法、戦術や手順が大幅に変わる。
ハリヤーも垂直離着陸可能な多任務機で主に軽攻撃ミッションを想定し、海兵隊の上陸作戦で近接航空支援を主としていた。
F-35Bはこうした任務をすべてこなしながら新型のセンサー、兵装、航空技術を海兵隊に実現する。
​そのひとつが分散開口システムでカメラ多数を機体に配置し360度全周イメージを得られ、電子光学目標捕捉システムもあり、F-35Bは攻撃や対地支援以外にISRミッションも実施可能だ。
C5I(指揮統制通信コンピューター統合)のためF-35Bの運用はハリヤー運用時と大きく変わるはずだ。

アメリカ級揚陸艦は海兵遠征部隊(MEU)含め乗員兵員を3千名まではこぶ。アメリカ級揚陸強襲艦の航空機戦力は最大31機でMV-22オスプレイ12機のほかCH-53スーパースタリオン、AH-1Zスーバーコブラ、UH-1Yヒューイ、MH-6シーホークを搭載し、F-35Bがここに加わることになる。■

2018年2月15日木曜日

E-767コンピューターをボーイングが米本国で2022年までに改修


米国防総省がE-767のミッションコンピューター関連の改修作業を官報で発表しました。2022年3月までに全4機を60.9百万ドルで改修し、作業は米本国で行われます。浜松基地に展開する各機は順次米本土へフェリーされることになりますね。

Search Defense.gov: Search
HOMENEWSCONTRACTSCONTRACT VIEW

Contracts

Press Operations
Release No: CR-028-18
Feb. 12, 2018

CONTRACTS
AIR FORCE
The Boeing Co., Oklahoma City, Oklahoma, has been awarded a $60,903,323 hybrid (fixed-price-incentive-firm, firm-fixed-price, cost-plus-fixed-fee, and cost-plus-incentive-fee) contract for the mission computing upgrade installation and checkout of four Japanese E-767 aircraft and associated ground systems. Work will be performed in Oklahoma City, Oklahoma; San Antonio, Texas; and Seattle, Washington, and is expected to be complete by Dec. 31, 2022. This contract involves foreign military sales to Japan and is the result of a sole-source acquisition. Japanese letter of offer and acceptance case funds in the amount of $56,969,735 are being obligated at the time of award. Air Force Life Cycle Management Center, Hanscom Air Force Base, Massachusetts, is the contracting activity (FA8730-18-C-0001).
ボーイングカンパニー(オクラホマ州オクラホマシティー)に$60,903,323総額のハイブリッド方式(固定価格奨励金付加、固定価格、実費固定価格付加、実費奨励金付加)契約で日本保有のE-767計4機のミッションコンピューティング関連アップグレード搭載及び関連地上システム装備品の契約を交付。作業はオクラホマ州オクラホマシティ、テキサス州サンアントニオ、ワシントン州シアトルでそれぞれ実施する。2022年12月31日を工期完了日とする。本契約は海外軍事品販売制度による日本向け案件が対象で指名契約方式とする。契約交付段階で日本より内定通知とともに$56,969,735を供託するものとする。本件の照会先は空軍ライフサイクルマネジメントセンター(マサチューセッツ州ハンスコム空軍基地内)で契約番号はFA8730-18-C-0001である。■
By redlegsfan21 (Flickr) [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons

http://alert5.com/2018/02/15/boeing-given-60-9-million-to-upgrade-4-jasdf-e-767s/#BK2prpvHuxmoZRtX.99 で詳細を読む


米空軍:B-21調達に伴い、B-1BとB-2は早期退役、B-52は当面供用継続

USAF's Controversial New Plan To Retire B-2 And B-1 Bombers Early Is A Good One 米空軍のB-2とB-1早期退役方針は物議をかもしても健全な案だ

The flying service is making the right sacrifices to ensure the B-21 Raider gets fielded in large numbers while making the B-52 all it can be.

空軍はB-21レイダーを大量調達しながらB-52の供用を確実にするべく代償を覚悟している

BY TYLER ROGOWAYFEBRUARY 12, 2018
TYLER ROGOWAY/AUTHOR

者の皆さんが航空機マニアだったり軍事技術に関心のある方なら米空軍が打ち出したB-1B「ボーン」とB-2A「スピリット」を予定より早く退役させる新方針には心穏やかでなくなるはずだ。爆撃機はとかく関心を集めやすく、愛着を感じる機体が多い。だが現実は厳しく、B-21レイダーが2020年代に第一線配備となれば、爆撃機四型式を維持する余裕がないと空軍は説明し、三型式の運用も困難だ。
2017年2月11日のAviation Week記事はUSAFが爆撃機の将来ロードマップを作成し、B-1BとB-2Aを2030年代中頃までに全廃する予定と報じた。このことにB-2運用部隊が目くじらを立てた。そもそも今世紀中頃までの運用を前提に各種改修を受けていたためだ。

USAF
現行の爆撃機三機種、B-52,B-1、B-2体制は1997年から続いている

ただしこの方針の背後にUSAFで最重要機材のB-21レイダーがあるのはまちがいない。同機は爆撃機と分類されるが、実態はステルスで高高度飛行可能な多任務かつ高度に柔軟な運用が可能な機体で長距離を飛び、給油機の助けなく敵地に飛ぶ機体である。また危険地帯を飛んでも安全に帰還し翌日また飛び立てる機体だ。同機こそ将来の戦闘作戦に絶対不可欠な機体で米国と拮抗する力を持つ大国との武力衝突をトランプ政権が新国防戦略に盛り込んだ今は重要さを増す一方の機体だ。
USAFは最低100機を整備したいとするが、空軍内外にもっと多数を求める声が強まっている。

NORTHROP GRUMMAN
B-21 レイダーの想像図

USAF原案ではB-1Bは2040年まで、B-52もほぼ同じ頃まで運用するとしていたが、B-52のほうがB-1Bよりも明るい未来がある。B-1Bは核運用能力がなく運行経費が著しく高い機体で稼働率も低い。B-2は2058年まで稼働してB-21と数十年間共存するはずだった。
ところが新方針でB-2を先に退役させることになる。2032年以前になるのは確実で、ロードマップ原案より15年程度早まる。B-1Bも2036年以前に退役することになった。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

B-2で稼働中な機体は20機弱で常時作戦投入可能なのは数機にすぎない。B-1Bは60機あるが、B-21生産が2020年代中頃に始まれば、一対一の形で旧型機と交代するはずで、まずB-21を80機運用体制にもっていき、B-1BとB-2Aは2036年に姿を消す。
新方針ではB-52Hの75機には手を触れず、2050年まで運用する。そうなると就役期間が100年を超える機体になる可能性が生まれる。新ロードマップでは2040年時点の爆撃機部隊を合計175機と想定し、B-52とB-21のみの編成とする。
B-2をここまで早く引退させるのは過酷な対策に見えるかもしれないが、20機弱という動機部隊は運行経費が著しく高価で保守管理も難題だ。確かに同機ならではの効果を提供してきたのは事実だが。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

だが同時にB-2の存在が今や当たり前に感じられながら運行経費の高さは他機種でできない効果で正当化されている。だがB-21の登場ですべてが変わる。ノースロップ・グラマンが製造するのはいわばB-2の「2.0」版で、これまでB-2の製造、維持で得た知見を投入しB-21はB-2を一気に抜き去る性能の存在になる。いいかえればB-21でUSAFははるかに高い性能を実現しながら、B-2を支援して得た知見やインフラまでの活用を狙っている。
B-1Bは非常に高性能かつ柔軟運用可能な機体になったが、たえずUSAFの爆撃機編成で存在意義が難しい機体であった。1990年代に核運用能力が取り除かれると同機の存在そのものが問われた。対テロ戦で戦術爆撃機として成功し、スナイパー目標捕捉ポッドを機内エイビオニクスに接続して近接航空支援能力を新しく獲得した。だがこうした通常戦能力があっても空軍内でB-1Bが特別の存在になったわけではない。

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B-1Bにスナイパー目標捕ポッドがついた
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爆撃機を四型式250機配備すれば支援体制が大規模になり、各種機材の運用経費は負担範囲を超えるだろう。新プランでも爆撃機総数は157機から175機の範囲となり、B-21製造が100機を超えればさらに増える。それでも機種が三型式から二型式になれば十分対応可能だろう。
そうなるとB-2とB-1の生き残りは困難だ。この二機種廃止で以下の長所三つが生まれる。
まずB-21を最低でも100機配備するには長期間が必要でその間同機を守る必要がある。USAFにおける爆撃機運用実績を見るとB-52からB-2までペンタゴンの死のスパイラルに注意が必要だと分かる。
B-21開発は順調に進展中で予算以内に収まっているようだが、秘密のベールに隠されているため確かなことはわからない。とはいえ、USAFにこの機体が将来必要となるのは確実であり、他機種より優先されるべき機体だ。そこで同機実現に向け現実的な資金投入に努め機体が完成後戦力化まで支援を緩めるべきではない。

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二番目に新プランでB-52H用の改修予算が生まれる。とくにエンジン換装で同機運航の信頼性と経済性の実現に繋がりながら、ペイロードや航続距離を増やす性能向上が手に入る。AESAレーダーと今後登場する長距離スタンドオフ(LRSO)ステルス巡航ミサイルを搭載すれば核・非核両用でBUFFは今後も武器運搬トラックとして数十年間供用に耐えるだろう。
その他の改修にレーザーやアクティブミサイル防御装置があり、生存性が高まる。またスタンドオフジャミング用ペイロードも搭載するだろう。こうしてB-21を補佐する能力が実現し、B-21が敵攻撃をかいくぐる攻撃・偵察ミッションを行う。
最後に新プランでB-21の核運用能力が遅延することなく実現し、B-2Aの敵地侵入核攻撃任務を引き継ぐ。核ミッションを早期に実施し、無人機になるB-21運用をUSAFは公式文書で思い描いている。
新ロードマップはペンタゴンが発表した新核戦争対応検討とも符合し、現時点より多くの核兵器運用手段を求めている。B61-12新型核爆弾を搭載すればB-21の大編隊は一回の出撃で多数地点を目標にし、かつ柔軟に途中で呼び戻すことも可能となる。

USAF


こうした三点以外に今回発表された「爆撃機方向性」では現状のUSAF各機材の運用の裏側が見えてくる。
Air Force Magazineによれば、飛行時間当たりの整備に要する時間は以下の通りだ。
  • B-1B:74 時間 
  • B-2A:45時間、ただしステルス機体表面の整備時間を含めず実際はもっと多い
  • B-52H:62時間 

だが重要なのは機体の稼働性(飛行可能な機体であること)とミッション実行率(戦闘システム全部が機能する状態で飛行できる機体)で差は大きい。
  • B-52Hは稼働率で平均80%をここ5年間維持
  • B-1B と B-2Aは稼働率平均50%
  • B-1Bのミッション実行率は平均40% 
  • B-2Aのミッション実行率は平均35% 
  • B-52Hのミッション実行率は平均60% 

飛行時間当たりの経費は以下の通り。
  • B-1Bと B-52H は平均 70千ドル
  • B-2の平均は110-150千ドルでUSAF機材中最も高価な運航コストの機体だ

B-52HとB-1Bの選択は単純に数字の面からあきらかで、B-52が新エンジン換装他改修を受ければさらに性能が上がる。B-2の場合はもともと生産数が少ないことで当時は最高水準の性能だったがそれ以前にステルス爆撃機そのものが存在していなかった。だがそれでも数字は数字であり、B-2の機材としての総合性能は低いと言わざるを得ない。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

B-21は成熟技術を中心に半成熟技術による部品やサブシステムを採用しリスクを下げつつ同時に長期供用期間を実現する。B-21の将来の活躍を過去の事例から考えようとする向きが多いが、前身の機体の運命を回避すべく作られた機体は今まで存在していない。事業の進め方や従来の調達方法と異なるが、そもそも同機の要求性能は15年以上前に凍結されており、追加要求や変更で高価格化になる道を閉ざしているのだ。
B-2ではこのような形で設計が大きく変わり、機体価格は大幅に上昇したが、一回も使わない性能内容に大金を払ったのだ。B-21ではこれを教訓とし目標水準の実現に直結する性能に焦点を当て、コスト面でもB-2の恐ろしい経過を繰り返さないようにしている.まだ同機の成功が保証されたわけではないが今後の予想をするのには十分だ。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

そうなるとほろ苦いが同時に重要なニュースとなりB-21の狙いが実現に向かうだろう。もしUSAFがハイエンドのB-21だけで爆撃機部隊を編成すれば、悲惨な結果になる。逆に今回の空軍の選択はハイローミックスの爆撃機編成で評価されるべきだ。
大事なことはB-2やB-1退役の前にB-21の優秀な性能を実現することだが、開発段階で困難な課題に直面しても大日程表の日付をいじる余裕はない。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

結局、USAFはこれまで使ってきた機種の一部を犠牲にする必要があるのであり、欲しかったステルス爆撃機部隊が最後には実現するだろうが、30年前と違い成熟技術で信頼性を高く、より高い戦力を実現するはずだ。
同様にB-52Hも長年素晴らしい働きを示しており、史上最高の機種になりそうだ。過去何年も合理的な判断が出来てこなかった空軍としては実に合理的な判断だと言える。厳しい選択でも論理的に正しい選択をUSAF上層部が下せることを示している。
この新プラン発表後や2019年度予算でB-21の広報キャンペーンが始まりそうだ。予算手続きは始まっており、レイダーの姿を目にできそうだ。■

北朝鮮との対決が長期化する事態に覚悟はできていますか。

またもやCatoの頭のいいひとが書いたエッセイですのでわかりにくい点があるのですが、要は北朝鮮ICBMが戦力化した事態が日常化するのを覚悟すべきということでしょう。予防戦争でICBMだけ破壊するという都合の良い考えかたは実行にうつすべきではない、ということです。では新「冷戦」がこれから長期化するとして米国が自国防衛を優先して同盟国を後回しにする危険が「拡大抑止」体制のもつあやうさというになります。日本にとっても都合の良いことだけ考える贅沢は許されないとしたら、冷戦体制を数十年続ける覚悟がいるのでしょうか。また日本の核武装もそのうち議題に上ることも考えられますね。


Could North Korea be America's Next Forever War?

アメリカは北朝鮮とも長期戦の覚悟が必要なのか


February 8, 2018


CNAS上級研究員にてポール・ツァイ中国センター(イエール大ロースクール)研究員ミラ・ラップ-ホッパーMira Rapp-Hooperが北朝鮮相手のいわゆる「鼻血」作戦の矛盾を以下論じている。
米国の作戦立案部門が「限定」攻撃がそのまま限定規模に終わると考えるのは理にかなわない。金正恩が反撃してくれば、第二次大戦後で最大に悲惨な米国の軍事作戦になる可能性がある。
 鼻血作戦の長所とされる点の大部分は金正恩が報復に踏切らない前提だ。だが、ラップ-ホッパーはこう述べる。
もし金正恩が核兵器やミサイルで合理的な判断を失えばあらゆる点でも冷静さを失うと考えるのが妥当だ。南北朝鮮の再統一を実現できず、米国や国連の制裁がさらに強化されれば金正恩の前提が変わる。いったん非合理的になればあらゆる局面で非合理的な行動に出る。ワシントンは抑止効果をどこで使うかなど考える余裕がなくなる。
 米国が他国で軍事力を行使することには、特に相手が核武装した北朝鮮であり反対意見は根強い。朝鮮問題の専門家ヴィクター・チャVictor Chaは次のように疑問を呈している。
金正恩が攻撃を受け自制心を失えば、攻撃をしかけた我々は抑止効果を期待できない。またもし金が予測不可能になれば、衝動や正気を失いかねずエスカレーションが避けられるか。あくまでも相手側が抑止効果やメッセージを理解できる前提に立っているのだ。
本人の結論はこうだ。
米国は軍事オプションの準備を続けるべきだ。北朝鮮が先に攻撃してくれば軍事力で解決する必要があるが、予防攻撃は核戦争につながりかねない。
 普通ならこうした議論は世論の中心となる。だが米国人はまだ終わっていない別の戦闘から教訓を得ており、さらに別の戦争を開始することに及び腰だ。ドナルド・トランプはイラク戦争に反対して共和党指名を勝ち取ったが、そもそもイラク戦争は共和当政権が始めたのであり、本人が一貫して反対していたと(虚偽の)主張したのは同様の事態は避けたいと考えている証拠だろう。アフガニスタン戦も同様だ。トランプの選挙戦公約を改めて読み返せば本人のタカ派傾向が浮かび上がるが、有権者の投票ではトランプの対抗馬への反感が強く出ており有権者はクリントン候補の方が実はもっとタカ派だと感じていたのだ。
 そうなると国民感情とトランプが時折示す懐疑心を思うと、戦争にならないかもしれない。少なくとも本人が戦争を増やすことにはならないだろう。
 ただしあくまでも「正常の」場合だ。悲しいことに今は正常時ではない。ラップ-ホッパーもチャもトランプ大統領に見てもらえる近道のフォックスニュース番組に登場しそうもない。そうなると開戦へ近づくことになる。
ラップ-ホッパーはきれいにまとめているがあえてひとつだけ言っておきたい。本人は国家安全省担当補佐官H・R・マクマスターが北朝鮮のICBM能力整備をトランプ政権がレッドラインと判断していると記している。
そのような宣言で平壌は長距離ミサイルを配備すれば、米国の同盟国向け拡大抑止力の誓約が信頼を失うと見抜く。また米国が本土防衛を優先し、各国は後回しになると見ている。このことに同盟各国は深く憂慮せざるを得ない。
 拡大抑止力でこれがいつも問題になる。他国より自国の安全を優先するのは自然なことだ。これを前提に拡大抑止力の実効性を同盟国と敵国に示すべく、米指導層は米国の狭義の権益に関係の及ばない行動を選択する可能性がある。こうした行動は制裁や外交圧力のように実害がない場合もあるが、同盟国のため参戦することも含まれている。
 米本土がたとえ一平方インチでも攻撃されれば即座に反撃する姿勢や軍事力にかわりはない。ただヘンリー・キッシンジャーが何年も前に述べたように「軍事技術がもたらす結果が恐ろしいだけに開戦理由がなかなか定義できない。軍事力行使には道義的な正当化が求めらる」のである。冷戦時代の中心的戦略思想家トーマス・シェリングもキッシンジャーの懸念を共有する。「海外での戦闘は軍事行動だが、敵も味方も同様に多大な負担をしてまで外地での戦闘を正当化するには軍事力だけでは十分ではない」と著書 Arms and Influenceで記している。「拡大抑止力には意図を示すことが必要となる。たとえこじつけでも意図を説得力豊かに示して他国の行動を抑える必要がある」とセリングは記している。
 端的に言えば、拡大抑止力の信用度を維持することの困難さは軽く見るべきではなく、抑止の対象から発生する付随コストやリスクに目をつぶるべきでもない。そうしたリスクに北朝鮮ICBMが米国都市を狙う事態がまもなく加わりそうだ。■
Christopher Preble is vice president for defense and foreign-policy studies at the Cato Institute and the author of The Power Problem: How American Military Dominance Makes Us Less Safe, Less Prosperous, and Less Free.

Image: Reuters


2018年2月14日水曜日

ちょっとびっくり MQ-25競作でジェネラルアトミックスにボーイングが共同開発に加わることへ



General Atomics to partner with Boeing on MQ-25 Stingrayジェネラルアトミックスがボーイングと合作でMQ-25スティングレイ採用をめざす



GA-ASIのシーアヴェンジャーを原型にした米海軍向けMQ-25スティングレイの想像図。 Source: GA-ASI

Gareth Jennings, London - Jane's International Defence Review
13 February 2018


ェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズInc.(GA-ASI)はボーイングと共同でMQ-25スティングレイ提案を米海軍に行うと同社が2月12日に発表した。
同社はボーイング・オートノマスシステムズと共同でMQ-25スティングレイ無人空母運用航空システム(UCAAS)競合に臨むことになった。
「当社はジェネラルアトミックスと共同でMQ-25提案に臨むことを喜ばしく思います」とボーイング・オートノマスシステムズ副社長クリス・レイモンドが述べている。「GA-ASIをわが社の航空機、自律運行の知見で助けていきたい」
GA-ASIはMQ-25提案の内容が明らかにさた。エンジンはプラット&ホイットニーPW815、降着装置はUTCエアロスペースシステム、通信装置はL3テクノロジーズ、ソフトウェアにBAE、航法システムはロックウェルコリンズ、降着装置特に拘束ギアにはGKNエアロスペースのフォッカーを採用する。さらにGA-ASIは傘下のジェネラルアトミックス・エレクトロマグネティックスシステムおよびジェネラルアトミックス・システムズインテグレーション部門の力も借りる。
GA-ASIはこれ以外の協力企業を明示していないが、機体はシーアヴェンジャーとして知られるアヴェンジャー(プレデターC)UAVの海軍版を原型にすると見られる。 
中止となったUCLASS(無人空母運用偵察攻撃機)構想の後を引き継ぐMQ-25スティングレイは米海軍のCBARS(艦載空中給油システム)の要求性能を実現する。給油任務以外にMQ-25は情報収集監視偵察(ISR)機能を備え、初期作戦能力獲得の目標を2020年代中頃に設定している。■

あれ、ボーイングが先に発表した試作機(下)は何だったのでしょう。これについては別途分析記事を掲載します。