2019年3月8日金曜日

3月8日EA-6Bが米軍供用を終了、半世紀近く活躍した同機の豆知識

5 fun facts about the EA-6B to say goodbye to the Marine Corps' Prowlers 米海兵隊で退役するEA-6Bの豆知識5点

Blake Stilwell,


US Marine Corps electronic warfare EA-6B Prowler Al Udeid Air Base Qatar

カタールのアルユデイド航空基地に展開したEA-6Bプラウラー。 September 12, 2018. US Air Force/Tech. Sgt. Ted Nichols


2019年3月を持って海兵隊はEA-6Bプラウラー最後の飛行隊を解隊する。
これによりプラウラーの米軍供用に幕が下りる。戦術電子妨害機として1971年に供用開始し、現役機材では最長期間を飛んだが2019年3月8日がいよいよ最後となる。
後継機種はF-35共用打撃戦闘機でF/A-18ホーネットやAV-8Bハリヤーと同じ構図だ。

1. ホーチミンからISISまで相手に戦った
It fought everyone from Ho Chi Minh to ISIS
海兵隊のEA-6Bが空中給油を終え離脱していくイラク上空June 28, 2018. US Air Force/Staff Sgt. Keith James
最初に投入されたのは1972年の東南アジアでプラウラーは空軍、海軍、海兵隊の各機材と70回に渡る事態で260千時間を飛んだ。

2. 欠点のない勝利の実績

Its victories were flawless
海兵戦術電子戦飛行隊2の9機がカタールのアルウデイド基地に揃ったAugust 16, 2018. US Army/Spc. Jose Diaz
一機も敵の手で喪失していない。北ヴィエトナム、リビア、イラク、イラン、タリバン、パナマと敵は数多かったがアメリカを守った170機のプラウラーを落とせなかった。
ただし事故等で50機を喪失しているのは残念だ。

3. 敵レーダー妨害が仕事

敵レーダーをどう妨害するのか。無線信号を使えなくし、標的照準を不可能にする。

プラウラーはテロ掃討世界戦争で完璧な装備となり携帯電話通話を妨害し、車庫扉の開閉装置を作動不能にし、地上部隊を敵の遠隔操作即席爆発物から安全に守ってきた。

4. 戦術機で最長の供用期間

It's the longest serving tactical jet

EA-6BプラウラーがISIS標的攻撃ミッションを終えUSSジョージ・H・W. ・ブッシュに着艦する Thomson Reuters

F-16もかなわない。プラウラーの供用期間はF-16を上回り米軍戦術ジェット機で最長だ。いまのところ。

5. ビン・ラディン殺害を支援

The Prowler helped ice Bin Laden
米海軍所属のEA-6Bプラウラー、イラク上空で空中給油を受けたところ。October 4, 2014. USAF

パキスタンでSEAL部隊が特殊極秘ヘリコプターで忍び込んだのは事実だが、実はEA-6Bブラウラーがオサマ・ビン・ラディン住居周辺でレーダーや電子信号の作動がないことを確認したため、作戦が実行できた。■
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新型機登場 XQ-58Aは空軍の戦闘様式を一変する可能性を秘めたステルスUCAV

無人機分野での進展が早く、新型機がどんどん登場しつつ作戦運用構想も技術の発展に合わせ進化しています。F-35に20年も費やす間にそれだけ進展しているわけで、追いつくのが大変なくらいですね。


Air Force's Secretive XQ-58A Valkyrie Experimental Combat Drone Emerges After First Flight 米空軍の極秘XQ-58Aヴァルキリー試験戦闘無人機が初飛行に成功

The XQ-58 may lead to a whole new class of highly-flexible and affordable unmanned combat air vehicles that could revolutionize how the USAF fights.

XQ-58は高度な柔軟性と低価格戦闘無人機につながりUSAFの戦闘方式を一変する可能性を秘める

BY TYLER ROGOWAYMARCH 6, 2019


USAF

ーイングが輸出を意識した「忠実なるウィングマン」構想の戦闘無人機を発表した翌週に空軍研究開発本部(AFRL)がよく似た構想のXQ-58Aヴァルキリーが初飛行したと発表した。同機は長らく秘密のベールに隠されていたが二年半たってその実態が初めて明らかにされた。
USAFは公式発表を以下伝えている。
XQ-58Aヴァルキリー実証機は長距離飛行可能の亜音速無人機で2019年3月5日にアリゾナ州ユマ試験場で初飛行に成功した。空軍研究開発本部がクレイトス無人航空機システムズと共同開発した。
同機開発は空軍研究開発本部が目指す低価格消耗航空機技術Low Cost Attritable Aircraft Technology (LCAAT) の一環で戦術用途機材で上昇する一方の価格傾向を打破する目的がある。LCAAT構想ではUASの設計製造を早めるため設計ツールを改良し民生製造技術を流用して製造期間コスト共に下げる。
同機は滑走路がなくても運行でき76分間飛行可能。契約交付から2.5年で完成した。XQ-58Aはテスト飛行5回でシステム機能、空力特性・発進回収システムをすべて評価する。.
「XQ-58Aは低調達コスト低運航コストをめざす初のUAVでありながら戦闘能力を革新する存在、とAFRLのXQ-58A主幹Doug Szczublewskiが語る。
USAFの「消耗品扱い」無人戦闘航空機構想としてついに姿を表したXQ-58Aは話だけ先行していた空軍の新型UCAVで、空軍にはこれ以外にも秘密のUCAVがあるはずだが同機はローエンド機材の代表なのだろう。

KRATOS DEFENSE

XQ-58Aはクレイトス社のXQ-222案と酷似しており、同機から発展したとわかる。
XQ-58Aは低価格ステルス無人機として偵察攻撃・電子戦支援能力を発揮し単機であるいは多数を同時運用する、または「忠実なるウィングマン」役のQ-58として有人機の指揮統制下で飛ぶのだろう。同機の飛行距離は2千マイルで小型口径爆弾二発あるいは電子戦装備や偵察装備を搭載し、滑走路がなくてもロケット発進方式で飛行する。

同機を製造したクラトス・ディフェンスは標的無人機の製造で知られ、AFRLはXQ-58をコスト面では従来の流れを断ち切る存在として求めた。以前にもこの構想を以下のようにお伝えしている。
LCASDの狙いは再利用も任意に可能ながら高度に適応力のあるローエンド無人戦闘航空機を年間調達99機未満の場合単価3百万ドルで実現し、年間100機生産なら2百万ドルにすることだ。LCASD構想は戦略構想、調達規模双方で「大量」を狙う
USAF


以上の記事の単価が高性能巡航ミサイル単価とほぼ同額なのに留意願いたい。また高性能ステルス無人機で何度も再利用する狙いがないことも重要だ。試験機段階から作戦機材に変身すれば、Q-58には空軍の攻撃力や柔軟対応力を比較的廉価で実現する潜在力がある。.
整備された滑走路がない場所からでも運用できることはペンタゴンがめざす大国との戦闘でインフラがない環境でも運用できることを意味する。また航続距離を見れば抵コストでも敵の接近阻止領域拒否バブルの突破が常識を破る形で実現でき、戦闘機が脆弱な給油機に依存しているためこの任務が容易でないことを考えると対照的だ。
そう、XQ-58AはXプレーンであり、近い将来における空軍の戦闘方法を一変させる可能性を秘める。敵味方とわず外国も急速にそれぞれ長距離ステルス戦闘航空機の実用化を進める中でXQ-58が姿を表したのは絶妙のタイミングと言える。
くりかえすが同機USAFのローエンドUCAV構想の一部であり、頂上となる存在は見えていない。いつの日かその姿を拝みたいものだ。■

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イスラエルに米陸軍THAADが初の完全展開した意味


U.S. Sends THAAD To Israel For First Time As Both Countries Slam Iran's Missile Programs 米軍THAADがイスラエルに初の完全展開し、米イのイランへの決意を示す


The United States and Israel have been laying the ground work for this type of deployment for years.米国とイスラエルはこれまで数年かけて今回の展開の基盤を構築してきた


BY JOSEPH TREVITHICKMARCH 4, 2019

US ARMY

軍がTHAAD高高度迎撃ミサイル防衛装備をイスラエルに演習用だが初めて送付した。今回の配備は両国がイランの弾道ミサイル開発に神経質になる中での実施となったが同時にここ10年にわたり実施中の緊急展開案もにらんだものだ。
米欧州司令部によれば今回の展開は3月4日に発表されたが、米陸軍が公表した写真を見るとイスラエル中央部ネヴァティム航空基地に搬入された第一陣は3月1日に到着している。演習は国防長官代行パトリック・シャナハンが命じ、ペンタゴンのめざす「動的部隊展開構想」の実証の意味があるという。これは米国の敵対勢力に知られないうちに部隊を展開するジェイムズ・マティス前長官提唱の構想だ。
「展開の目的には迅速展開を世界各地に向けて実施する訓練以外に、イスラエル空軍の防空装備との協力体制を進める意味もある」とイスラエル空軍はツイッターで説明している。「防御目的の展開であり現状のいかなる出来事とも無関係だ」
· 14h
The purpose of the deployment is to practice rapid deployment across the globe of complex systems, and to enhance cooperation with the IAF’s Air Defense Systems.

The IDF is working in cooperation with US forces in order to enhance coordination between the two militaries and...
This is a defensive deployment that is not related to any specific current event

米陸軍がイスラエルにTHAADを持ち込むのは今回が初めてだ。THAAD装備には輸送起立発射車両が最大9台あり、各8本の迎撃ミサイルを発射できる。これにあわせXバンドレーダーAN/TPY-2、移動式射撃管制指揮命令所、その他支援装備で構成する。迎撃ミサイルは補充可能だ

MDA
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今回展開したのはテキサス州フォートブリスの第11防空砲兵旅団隷下の第二対空砲兵連隊B中隊とオハイオ州軍174対空砲兵旅団の一部で、11旅団は陸軍のTHAADの大部分を管理しており、二個中隊がグアムと韓国に前方配備中で北朝鮮脅威に対応している。
今回の動的部隊展開演習は装備の搬送、輸送、展開、設置の他イスラエル国防軍と接続し防空網の一部とする作業の評価にうってつけの機会となった。実際の緊急対応ではイスラエルが整備下弾道ミサイル防衛能力を補完するねらいがある。演習は米軍のミサイル防衛体制見直しの最新版とも歩調を合わせ地域なの同盟国との協力を強調する形となった。
「米国は強力なミサイル防衛協力関係をイスラエルと維持し、このたびの米イスラエル合意事項を尊重する」とミサイル防衛体制見直し報告書は説明している。「二国間演習の機会を利用し...米イ両国は今後も作戦協力関係の強化を通じて地域内のミサイル脅威に対応していく」
US ARMY
米陸軍隊員がTHAADの輸送起立発射車両を空軍のC-17AグローブマスターIII輸送機に搬入している テキサス州フォートブリスにて

イスラエルはミサイル以外に非誘導式ロケット弾の脅威にも直面しており、シリア独裁者のバシャ-アルアサド政権、イラン、イランが支持するシリア内勢力がこれを発射しており、レバノンにはヒズボラもあるが一番大きな懸念がイランが弾道ミサイル整備を進めていることだ。「イランが行使する手段としてミサイルがまず考えられ、本数が増えるとともに精度、飛翔距離、威力が向上している」とミサイル防衛体制評価が警句を鳴らしている。
そのため米イ双方はTHAAD配備は実際の情勢と無関係と主張するものの、イランへ何らかのメッセージを送っていることは当然だろう。2019年1月にイラン当局は衛星打ち上げに失敗したが米イ両国は弾道ミサイル開発を隠す意図があったと非難している。2月にニューヨークタイムズ記事が米政府がイランミサイル開発の妨害をひそかに再開したと伝えた。
米国はイランの核兵器開発をめぐる多国間取り決めから2018年に脱退しているが、トランプ政権はこれまでになく厳しい姿勢をイランに示しており、経済制裁再開を主張している。トランプ政権にとって核以外の問題に何も手を付けていないことが不満の種だ。
イランもシリア国内の複数地点に弾道ミサイルを撃ち込んでいる。この発射でイラン政府は周辺の敵対勢力にメッセージを送っているのだ。
さらにイランは弾道ミサイル技術を周辺地域の味方陣営に拡散している。ヒズボラもその例でイエメンのフーシ反乱勢力など中東で一層の脅威になっている。イスラエル政府はイランがヒズボラにGPS誘導装置を手渡しミサイルに搭載させたと非難しているが証拠は一切示していない。ヒズボラはイスラエルがミサイル工場だと指摘した建物が公表されるとすぐに証拠抹消を図った

IDF released video about Iranian and Hezbollah Missile Accurate Project (MAP) facilities near Beirut Airport /Israel /Lebanon
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初のイスラエルへのTHAAD完全展開となったが陸軍ではジュニパーコブラの名称でイスラエルへの装備迅速展開を訓練しており、3月の実施が多い。米軍は今回のTHAAD展開が今年度のジュニパーコブラの一部なのか明言していない。
毎年の演習ではペイトリオットをイスラエル各地に展開する。ただし2007年以降の演習シナリオではTHAADとアーレイ・バーク級駆逐艦が搭載臼るイージス弾道ミサイル防衛装備をシミュレートしてきた。ジュニパーコプラではイスラエルのペイトリオットとアロー系の弾道ミサイル防衛装備も展開する。

US ARMY
2018年のジュニパーコブラ演習でイスラエルに搬入された米陸軍のペイトリオット関連レーダー装備。

2012年以降は米国はAN/TPY-2前方配備レーダーをイスラエルのネゲブ砂漠にあるハーケレン山(サイト512)頂上に設置しているが、今回の展開の様子を示す写真ではB中隊は自前でAN/TPY-2を持ち込んでいるようだ。
2017年に陸軍はイスラエル防空学校のあるビスラチ航空基地内にサイト883を開設した。これもネゲヴ砂漠だ。これは米軍対空対ミサイル装備のイスラエル前方配備の増加への対応だ。これに伴い米陸軍は第13ミサイル防衛中隊を稼働させている。

US ARMY


THAAD装備一式を全部持ち込むことはシミュレーションとは意味が違い、周辺国へメッセージを明確に送ることになる。イランはその対象の一つで米国とイスラエルが有事に際してどう行動するかを実際に見せる意味もある。

トランプ政権がミサイル防衛を継続拡張する意向を示す中でイスラエルとの防衛協力はイランの弾道ミサイルへの強硬な態度とともにイスラエルへのTHAAD展開が今後は当たり前になると示しているようだ。■

Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2019年3月7日木曜日

海自あさひ級二号艦しらぬい が就役


Japan commissions second Asahi-class guided-missile destroyer

日本のあさひ級誘導ミサイル駆逐艦二号艦が就役

Kosuke Takahashi, Tokyo - Jane's Defence Weekly
05 March 2019

JMSDFはあさひ級二号艦を2月27日に自衛艦として就役させた。 Source: MHI

上自衛隊(JMSDF)のあさひ級誘導ミサイル駆逐艦二号艦の引渡式が2月27日に長崎県で行われた。

JSしらぬい(艦番号120)と命名された同艦は青森県大湊基地の第三護衛隊群第七護衛隊に配備される。

しなぬいにはJMSDF初の潜望鏡探知レーダーが搭載されており、2017年10月進水し、2018年7月から海上公試に入っていた。一番艦のJSあさひ(艦番号119)は2018年3月に就役した。

JMSDF広報官は同級では以降の建造予定はないとJane'sに3月4日に伝えている。かわりに3,900トン級多任務フリゲート艦計8隻を2021年度までに建造すると言う。

Jane's Fighting Shipsによればあさひ級は全長151メートル基準排水量5,100トンでジェネラル・エレクトリックLM2500ガスタービンエンジン2基でコンバインガスタービン発電とガスタービンを複合したCOGLAG方式を採用した。

最高速度は30ノット、乗員定数220名とJMSDFは発表。飛行甲板、格納庫にそれぞれ三菱重工(シコースキー)SH-60Kヘリコプターを搭載する。

あさひ級は127 mm海軍砲を主砲とし、ファランクス20mm近接防御兵装を搭載する。その他90式対艦ミサイル、RIM-162発展型シースパローミサイル(ESSM)を運用する。

対潜装備には324mm魚雷発射管6本とOQQ-24艦首ソナー、OQR-4戦術曳航式アレイを装備している。■


本ブログでは護衛艦という国内向けの珍妙な名称は使っていません。あしからずご了承ください。海自DDの建造は当面予定されていませんので当面は同艦が最新のDDとなるわけです。フリゲート艦は米海軍でも計画が進んでおり、日米の建艦思想の違いがどこまで現れるか注目されますね

北朝鮮に米空母撃沈は可能? 答えはYES


North Korea vs. a U.S. Navy Aircraft Carrier (Who Wins?)

北朝鮮が米海軍空母に挑めばどうなるか
You might be suprised.  驚きの結末になる
March 6, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryNavyAircraft Carrier

朝鮮軍に米海軍空母撃沈は可能か。可能だが空母のタイプによるし、米海軍司令官の空母配置場所や北朝鮮軍が戦術上の利点を活用できるかにもよるし、戦闘で幸運に恵まれるのがどちらかでも変わる。運とは実に簡単に相手を替え一旦手を離れても戻ることが戦闘では往々にしてある。米空母が水中、空中から攻撃にさらされるか疑問だが戦闘で絶対にない、とか必ずこうなると断言するのは愚者のみであり、劣勢な勢力が強力な相手に逆に勝つこともよくある。
これを前提に可能性を見てみよう。.
まず、予備知識だ。DPRK海軍が水上艦を沈める能力があることは判明している。まさしく2010年にこれが発生し、潜水艦が韓国海防艦ROKS天安を撃沈した。同艦は単独行動しており空母や揚陸部隊の場合とは違い護衛艦と同等の対潜装備がなかったのは事実だ。だが天安事件は一つの根拠となり、水中戦では旧式ディーゼル潜水艦で鈍足でも静かに敵に接近し攻撃撃破が可能だ。韓国海軍艦艇が新型で乗員に高度能力があってもこれだったので米海軍で同じ事が起こってもおかしくない。
弱小海軍が潜水艦で強力な敵に対決した事例は多い。1982年に英海軍任務部隊がフォークランド諸島防御にあたる中で英国の対潜装備全部をもってしてもアルゼンチンの209型ディーゼル電気推進潜水艦ARAサンルイ一隻を掃討できなかった。アルゼンチン艦長は艦を海底に安置し捜索を逃れたとのことである。推進を止めれば機械音が消え同艦は探知されなかった。第二次大戦中の戦術が洗練され弱小国でもNATO加盟国の高度の対潜能力の裏をかいたわけだ。
2006年の例もある。中国の039型宋級ディーゼル潜水艦がUSSキティホーク空母打撃群の防御陣を突破し空母から5カイリ地点に浮上した。空母群は対潜警戒態勢をとっていなかったが、米海軍が潜水艦接近を探知できなかったことが警戒を呼んだ。対潜戦は簡単ではないが米海軍は冷戦後に腕を磨いていないことが問題だ。その時点で海軍上層部は「抜本的にこれまでとちがう海軍部隊」に変革する決意をいだき、水中戦の遅れを取り戻そうとした。
各評論家がこのときの潜水艦を「ステルス」と表現したことに興味を感じる。ステルスの語には魅了するものがあり多用の傾向があるが、そもそも潜水艦はすべてステルスだ。ステルスでない潜水艦は海底に眠る残骸だけだ。DPRK潜水艦は撃破されずにその利点を活用できる有利な状況をつくろうとするはずだ。たしかに米空母は強力な装甲や攻撃力があり推進派はそこを強調するが、沈めることは決して困難ではない。ほぼ一世紀に渡り、装甲艦といえども空中から、水上で、あるいは水中から攻撃を受け沈没する事例はたくさん見てきた。米海軍は対艦攻撃能力を75年にわたり磨いており現在はさらに精密攻撃手段も実用化されている。DPRK海軍を相手に傲慢な態度を取る根拠はない。
二番目に、相手にする空母部隊のタイプ次第でDPRK海軍の勝ち目は変わる。空母打撃戦闘群の中心は原子力空母(CVN)で揚陸部隊の強襲揚陸艦(LHD、LHA)と全く違う。CVNも“amphibs”のワスプもF-35のような高性能機材を搭載するが大型CVNは一通り揃えた機材構成の航空戦力を誇り、支援機も運用する。またカタパルトもあり機材を発進させる。LHDやLHAはCVNの半分程度の艦体でカタパルトをもたず、ヘリコプターとF-35を運用するが作戦半径は正規空母より短い。
揚陸部隊は北朝鮮航空部隊にとって相手にしやすい存在になり、ロケット砲兵隊や海軍部隊も空母より楽に対応できる。米海軍は朝鮮沿岸地方の戦況が落ち着くまで揚陸部隊を前面に出さないはずだ。揚陸部隊が海岸線に接近するのは空爆やミサイル攻撃で対艦兵器の脅威を一掃してからのことになる。これで揚陸部隊の防御力でも対応可能となる。つまり米海軍が部隊をどこに配備するか、作戦手順をどう編成するかで空母が北朝鮮空軍、水上艦、潜水艦、対艦ミサイルの脅威にさらされるかが変わる。
米国では北朝鮮の偵察能力は初歩的だと見る傾向がある。海域は相当広く、空母打撃群も小さな存在になる。だがその探知は決して難しくないし、外海で捕捉・交戦も同様だ。中国人民解放軍海軍がこの事実を1995年96年の台湾海峡危機で発見した。ビル・クリントン大統領が空母群二個を総統選挙を控える台湾付近に展開させ中国の軍事行動を抑止した。中国は西太平洋を遊弋する米海軍部隊に照準をあわせられず探知もできなかったことに表面上なっているが、北朝鮮が当時より進んだ効果を実現できない理由はない。すくなくともDPRK軍にはPLAから提供された情報がある。中国としては1995-96年の借りを代理勢力で返したいと思うだろう。
だが三番目に戦略面の大家から警句が鳴らされており、クラウゼビッツは運と不確実さが戦いの環境を形作ると述べ、最高にまで賢明な軍指揮官でさえ全てを思いのままにできないとしている。エドワード・ルトワークは平時なら合理的な費用効果の比較で行動するものの戦闘部隊は「皮肉な逆転現象」を有事に体験する、つまり戦場では運不運が逆転するということだ。ともすればこの事実を無視したり幸福感で無理な見方におちいりがちだが突如不利な状況や敗北を喫することがあるということだ。
ルトワークの言う「逆説論理」は戦略面で例外を認めず、米海軍航空部隊でも同様だ。従って北朝鮮相手の海軍戦略の枠組みは自信をもって準備し、過剰な自信は慎むべきだ。■

James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and is coauthor of Red Star over the Pacific (second edition forthcoming 2018). The views voiced here are his alone.

Su-35はどうやってF-22の探知追尾に成功したのか----ステルス技術は万能ではない

ステルスの過信が危険であることを物語るエピソードであり、技術進歩が現在のステルス機を一気に陳腐化させる危険性を示しています。対抗措置が出ればその対抗....と終わりはないようです。

How did a Russian Su-35 Fighter Track a "Stealth" F-22 Raptor?

Or is this fake news?  ロシアのSu-35がF-22ラプターを追尾できたのはなぜか。それともフェイクニュースだったのか
March 4, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22MilitaryTechnologySu-57RussiaStealth

シアのスホイSu-35Sのパイロットと自称するものが投稿した写真に米空軍F-22AラプターがフランカーE搭載のOLS-35電子光学赤外線方式捜索追尾装置にその姿を捉えられている。
投稿写真の真贋は定かではない。ただし笑ってばかりいられない。写真撮影の意味を理解しないと判断が下せない。
近接距離ならラプターがSu-35の電子光学赤外線センサーにその姿を捉えられることは可能で、今回がまさしくその例なのかもしれない。(画像が本物だとして)民生用電子光学赤外線装置をFLIRシステムズが市販しているがこれでもF-22を近距離なら捉えることができる。2010年のファンボロー航空ショーで実証済みだ。F-22は遠距離なら赤外線探査装置を逃れる設計だが接近距離では話が違う。
近い距離からだとラプターも他の機種同様に赤外線センサーで探知できる。2009年の演習ではラプターがフランスのラファールの電子光学赤外線センサーにその姿を捉えられている。また2012年のレッドフラッグ演習がアラスカで開かれたがドイツ空軍のユーロファイター・タイフーンがおよそ20カイリ地点からラプターをEuroFIRST PIRATE赤外線探知装置で追尾した。
ロシアのOLS-35はPIRATEほどの性能はないがそれなりの性能のセンサーである。スホイによれば同装置は目標四機を同時に50キロ範囲(27カイリ)で探知でき90キロ(49カイリ)にわたり追尾可能という。精度が高い範囲はアスペクトアングルにより変わり、その他大気の状況によっても変わる。同装置にはレーザーもつき、20キロ以内で標的の距離を正確に測定できる。.
究極的には長波赤外線捜索追尾でステルス機も相当の距離唐揚tんち出来る。これがF-22にとって最大の脅威となる。米海軍のIRSTポッドのブロックIIでは高速度データネットワーク機能と高性能センサー融合を組み合わせてずば抜けた長距離ステルス対応能力が実現している。「個別の実験内容や脅威想定についてお話できないがIRSTは長距離ステルス対抗技術をめざしています」と海軍航空システムズ本部(NAVAIR)のデイヴィッド・キンドリー大佐が説明する。大佐はF/A-18およびEA-18G統括室主幹だ。
問題の本質は大気中を移動する機体が熱を発生することだ。「敵機がこちらに向かってくるとして低レーダー断面積の機体としましょう。それでも発熱は免れません」とボーイングでF/A-18E/FおよびEA-18Gを担当するボブ・コメゲイが語る。「これで敵がステルス機を開発しても対応可能です。Xバンドの有効範囲を外れて移動してもこちらは対抗が可能です」
従来は赤外線では距離データが得られず武器を有効に作動させられかったが、データネットワーク機能とコンピュータにより一変した。「単機のIRSTでビームを出してホットスポットと方角がわかるが距離は不明だ。これでは武器を有効に使えない。しかし2機のビームが二本あれば交差点で武器利用に十分な精度の演算が可能で対象を追尾できる。そのため戦闘には敵のレーダー探知範囲に入る前に敵を探知追尾できる」(コメゲイ)
赤外線がステルス機の脅威となる点を考慮の上、ペンタゴンは今後登場する機体の要求性能をまとめる必要がありそうだ。■

Image: Creative Commons.