2020年1月19日日曜日

F-23が制式採用されていればF-22以上の高性能戦闘機になったはずなのに...

いまさら30年も前の不採択機について言うのはなんですが、敗けたのは性能でなく、企業力の違いとここまではっきり言われてしまうと、選択が違っていれば安全保障環境は今ごろどうなっていたかと思わざるを得ません。技術で優れていてもアピールが足りなかったということでしょうか。F-3となるNGFにもその設計思想が影響を与えるのか、F-3の話でこの機体の存在がちらちらするのは何か意味があるのでしょうね。National Interestの記事からです。



ースロップが受注成功していればF-23が実現し、より高い性能を誇っていたはずだが、相当の高額機材になっただろう。
 1991年、ロッキードが米空軍の高性能戦術戦闘機(ATF)競合を勝ち抜き、F-22ラプター制空戦闘機となり、ステルスで世界を圧倒した。
 敗けたノースロップYF-23は設計で上回っていたのに、米空軍がロッキード案に傾いたのは同社の開発管理の実力の方が高く、ラプターの方が費用を抑えられると判断したためだった。
 当時のノースロップはB-2スピリット・ステルス爆撃機事業他で大幅なコスト超過を発生させており、ペンタゴン、議会からにらまれていた。共同事業体のマクダネル・ダグラスも誇れる状態ではなかった。「空軍がATF交付先をどう決めたかわからないが、ノースロップのテスト不正事例、契約不履行や過去の罰金事例が考慮にあっただろう」とジョン・コニヤース下院議員(民、ミシガン)がLAタイムズに語っていた。
 だがF-23として実用化されていたらどんな機体になったのか。ジェネラル・エレクトリック製の革命的な可変サイクルエンジンYF120の搭載でどんな性能が実現していたか。
1991年当時でも、YF120エンジン搭載のYF-23はプラット&ホイットニーYF119を搭載した競合機を上回る性能との認識だった。YF-23は超音速巡航機能、ステルスで上回り、低速域の操縦性に難があると指摘があった。
 「YF-22、YF-23でAoA迎え角60度で全く同じだったのは興味深い。YF-23は推力偏向機能を使わずに実施できた。V字尾翼が本来不安定な機体で大きな機能を果たした」と両機種に詳しい内部筋が述べている。「YF-22の利点は超低速の飛行時に発揮されたが、両社とも時間不足のため低速での運動性を入念に調査できず、AoAでも同様だった。機体の比較検討時ではPR的なフライトテストが重要だとわかる事例だ。ロッキードはこの点を理解し、高AoAをやってミサイル発射し9Gで操縦してみせた。すべて一回きりの実施だったが印象は残った」
 この内部筋によればノースロップには不利な要素があった。
「ACC(航空戦闘軍団)のパイロットはドッグファイト重視の傾向があり、ロッキードは高AoAデモで好印象を与えた。テストは限定的かつ厳しいものではなかった」という。「ノースロップが実証中に高AoAを避けたのが過ちだ。両機種も同じように操縦できた。だがYF-22の方が『優れているように見える』と評価されたのは同機が興奮を呼ぶ飛行を見せたのにノースロップはこれをしなかったためだろう」
 だが実戦機材に意味があるのか。いずれにせよ米空軍は高性能制空戦闘機を配備できた。ロッキード・マーティンF-22が米国で生産された制空戦闘機で最高の存在であることは事実だが、F-23が実現していらばさらに優れた性能で、現在ラプターが想定する敵勢力の機材に十分対応できるだけの余裕があっただろう。
 F-23は航続距離でラプターを上回ったはずだ。超音速巡航性能が寄与する。YF120エンジンの効果で太平洋では大きな意味がある。ステルス性能も上でありながらラプター各速度域や高度でラプター以上の操縦性能を発揮しただろう。
 ラプター、F-23ともに空対空ミサイル8本の機内搭載は空軍の要求どおりで変わりない。さらにエイビオニクスも差はなかったはずだ。両社の提案構成は類似していた。ラプターはYF-23で搭載予定のレーダーを採択している。
 空軍はラプターを選定した。だがYF-22、YF-23ともに優秀な設計だった。ノースロップF-23になっていれば全般面でもっと高性能機になっていただろうが、価格は高くなった可能性がある。F-23で米空軍は中国のJ-20やロシアのSu-57に対しても余裕ある性能を実現していたはずだ。だがそれで機体価格の差が正当化できただろうか。むずかしい疑問で、想像するしかないだろう。■

この記事は以下を参考にしました。

King Of The Skies: Who Wins When The F-23 And F-22 Stealth Jets Do Battle?

Find out.
January 18, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-23MilitaryTechnologyWorldStealthAir Force


2020年1月18日土曜日

防衛装備品で市場参入の障壁は日米双方に存在する。日本企業は米国参入を進めるべき。

軍用装備では実績が物を言うので、日本製品はそれだけ不利なのですが、それとは別に前から指摘しているように政府が乗り出せば良い、という殿様商売では成約は無理でしょう。経験を金で買う、アプローチで民間のたくましい力を政府が積極的に使う意思がないのなら、紙の上の話で終わってしまいますね。またオーストラリア潜水艦案件で実は民間企業は不成約に安堵したともいわれていますが、防衛省需要を超える規模の生産基盤を整備しても民間企業に十分利益が生まれる構造にしないとお上頼みの体質は変わりませんね。ただしold企業はそんな簡単に変容しないでしょう。Dual technologyの時代ですので、意外なところから新しい防衛産業企業が生まれるかもしれませんね。

本政府が武器輸出制限を撤廃し5年たったが、日本の防衛産業は輸出で大きな成果を上げていない。日本で初めて開催された総合防衛産業展示会 DSEI Japan のカンファレンスで関係者、専門家が指摘した。
防衛装備庁(ATLA)の防衛技監外園博一は「安全保障環境が急速に変化中」と中国がクロスドメイン技術を導入し、日本も対応を迫られている状況を指摘。防衛省は陸海空に加えサイバー、電磁スペクトラム、宇宙空間を次の武力衝突場面と想定している。
防衛装備庁の研究開発は優先分野を6つと外園は紹介。サイバー、水中技術、電子戦、極超音速、広域情報収集監視偵察、ネットワーク運用だ。
目指すのは自衛隊を「マルチドメイン防衛部隊」に変え、日米同盟の強化で抑止効果を高めて外部脅威に対応することだ。防衛研究開発活動では従来の機材中心から「機能志向」に変える必要があると指摘した。
日本の高度技術では素材科学やロボット工学が有名で大部分は民生分野に源を発している。外園は新技術を軍事転用する必要があるとも指摘。
中国は軍事力を急速に拡充中だ。日本がペースに合わせられないと、日本の優位性が失われることになりかねない。「最重要なのは各技術を防衛装備に統合していくこと」(外園)で、産官学に加え同盟国交えた協力を高める必要があるという。
展示会には米、欧州、中東、豪州の企業多数が参加し、ロッキード・マーティンノースロップ・グラマンコリンズアエロスペースレオナルドDRSジェネラルアトミックス・エアロノーティカルレイセオンといった米国企業が出展していた
だが日本企業は自社製品の米国内販路開拓に文化の壁に直面し、米企業も自衛隊向け装備の販売で壁にぶつかっている。
「日本には少規模ながらハイテク航空宇宙関連の商機がありますが、日本はこれに慣れていないようです」とレイセオン・ジャパン社長のロバート・モリッセイが述べる。レイセオンは日本側ベンダー企業60社を招き、各社技術が有益か判断する場を設けた。「単独サプライヤーより、サプライヤーは多いほどいいのです。そこで日本の防衛産業に積極的に働きかけているところです」という。
日本には民生用途で開発され軍事装備に転用可能な技術が多数ある。ロボット工学以外に、機械学習、マシンビジョン、人工知能、素材工学、バッテリーで知見が豊かだ。極超音速機に活用され、5Gネットワークでもノウハウが活かせるはずと専門家は見ている。
GARアソシエイツのグレッグ・ルビンステインは米政府内、防衛産業、コンサルタントの経験を1974年から積んできた。最近の米国と日本の共同開発の成果にスタンダードミサイル3(SM-3)があり、両国政府とレイセオン、三菱重工による協力の優れた例だという。
「以前も米日共同案件はありましたが、相互の要求内容をもとに研究を進め共同開発に至った例として初です。現在は生産に入っており、調達サイクルが動いています」 同事業は先行事例として重要で、協力しながらの調達で大きな一歩となったと指摘する。
こじれた場面もあったとモリッセイは述べる。「政府と民間で意思疎通がうまくいかず、予算確保が危うくなりました。だが、最終的に成功に至った。次回の共同案件では双方の距離は縮まるでしょう」
今後は企業間の契約も必要とモリッセイは見る。日本の技術で問題となるのが価格と指摘する。顧客が日本の防衛当局のみのため少数調達・少量生産となり高価格を生む。だがそれ以外に競争関係が不在だ。「単一調達先で原価上乗せ方式の契約が日本で普通のようだ」「監督官がナット類の重量、長さ、厚みを測定する光景を目にしたことがある」といい、表面的な検査だが、要求水準を超えた部分まで検査されるため、「高コストになってしまう」のだという。
防衛省は固定価格契約を多数交付すべきという。「各社に利益を生む機会を与えるべきです。防衛案件で利益率が6-7%では足りません」
SRC副社長で国際事業を担当するジム・ダニエルズは日本市場で35年の経験がある。同社はレーダーや電子戦技術が専門で、事業は米国が中心だったが、4年前から国際進出を模索し始めた。アジア太平洋に注目している。
SRCではアジア太平洋を南北に分け、進出先を2つとしている。南部ではシンガポールで、東南アジアの技術ハブであり、最良の製品を調達できる。北部では日本に注目している。
「日本でSRCの知名度は低いです。そこで展示会で当社の紹介をめざしています」といい、日本で提携先を模索し、米国へ技術移転を実現したいという。
文化と言語の壁のため、各社は日本側提携先の案内で市場参入したいとする。提携先も複数とする。
「だれ聞いたことがない日本企業が防衛産業を話題にしています。市場はこれから開くところです。日本政府も市場拡大に動いており、各社が参入を目指しています」
米国にとって日本は最長の実績をもち、最も忠実な同盟国だと指摘する。製造業は「強力」だが経済性が高い製造が課題という。「設計を製造に移し実現させる能力には魅力を感じる」という。
自衛隊も米軍同様に国内企業からの調達を好む傾向があるが、「市場は今や海外企業にも開かれています」とダニエルズは言う。
「同盟国にはミッションの重要点や技術を共用してもらいたいものです」とし、「設計、開発、製造、サポート、運用の各面つまりcon-opsチェーン全体で協力が深まれば、それだけ双方に良い結果が生まれます」
日本企業の米国市場参入が実現すればハードルが低くなるとルビンステインは指摘し、第一段階は認知度を上げることだという。日本の大手企業でワシントンDCに事務所を置く例は多いが、駐在員数名が政策の動向を追っているだけで不十分と指摘する。
「日本企業も米国でのプレイヤーと認知してもらわないといけませんね」とし、事務所を強化して米国事情に詳しい人材を加え、自社製品を担当部局にプレゼンし、研究開発機関に売り込む必要があるとする。
一つ成功事例がある。日本のリチウムイオン電池メーカーで米国製を上回る性能で軍民両用に使える製品だ。同社は米国事務所を開設し、コンサルタントを雇いマーケティングを開始した。数年かかったが、米陸軍の関心を集めることに成功し、その後海軍も続いた。
「はじめは大変ですが、数年間粘り強く活動し、米側の調達担当者や政府関係者の関心を勝ち取りました。バッテリーの優秀さが理解され、米国防調達で優位性を発揮しています」(ルビンステイン)
米国市場参入を目指す日本企業には米企業とウェポンシステム部品を共同研究プロジェクトとして小さく始めたらよいという。
日本政府も防衛調達ミッションを派遣し日本企業の存在感を海外で強めるべきと指摘する。ミッションは官民合同でもよいが、現地で専門家を使うのがよいとルビンステインは述べている。
専門家は「現地ルールを熟知しており、問題が発生しても誰に頼ったらよいかがわかっており、解決が早くなるだけでなく意思疎通も上手くいくはずです」という。■
この記事は以下を参考にしました。

U.S.-Japan Defense Tech Cooperation Stymied by Cultural Hurdles

1/17/2020

2020年1月16日木曜日

F-3はF-35とこう併用される。2020年、高まるNGFへの期待

F-3は今後数十年にわたり自衛隊の重要な機材になる。
2019年2月、日本はステルス戦闘機の国産開発にかじを切った。直前に日本は米国よりF-35の100機超導入を決定しており、X-2ステルス戦闘試作機は前年に開発打ち切りに決まっていた。
防衛省は新型戦闘機F-3開発を中期防衛計画に取り入れ、自衛隊装備の今後の近代化の一環に据えた。
中期防に新型戦闘機が追加された背景に防衛支出の大幅増があり、更にその背景に日本を取り巻く安全保障環境の悪化がある。
防衛省はF-3は三菱F-2戦闘機の後継機種だとする。F-2は21世紀初頭には世界最先端の機体でAESAレーダーや複合材によりレーダー断面積の削減に成功していた。拡大した主翼面積で対艦ミサイル運用も可能となった。F-2最終号機は2011年にオフラインとなり、同型は2030年代に退役する。
ではF-35はどう活用するのか。本来ならF-2後継機はF-35ではないのか。
日本が導入するF-35の100機超はF-4EJの後継機の位置づけで、1970年製のF-4の戦力は現代においては疑問だ。また即戦力としてF-35に日本が期待するものも大きいのだろう。
日本がF-35Bも導入するのはいずも級以外に前方の厳しい環境の基地からの運用も想定しているのだろう。遠隔地の島しょ部でも航空戦力の運用が可能となる。これはF-3では期待できない機能だ。
そこでF-3には大型機内兵装庫を与え、攻撃能力を強化する。F-2に複座型もあるが、F-35にはない。このためF-3も複座型が開発され、攻撃ミッションの処理用あるいは今後登場する戦闘無人機の統制を行う「母機」になるだろう。
F-3は日本の航空宇宙産業力の維持の意味でも重要だ。F-16を原案にF-2開発が決まった際は日本で物議を醸した。米国からの技術移転が限定されていたためで、今回は防衛省が国内産業を優遇しそうだ。F-35事業のその他関係国と異なり、日本は自衛隊仕様の機体製造で小さな役割しか果たしていない。
とはいえF-3は自衛隊にとって今後数十年にわたり重要な機材になる。急成長する中国航空戦力に対抗しつつ、十分な機数を確保できるだけの経済性を実現しなければならない。軍事装備品輸出の制限を緩めた日本には輸出の可能性も広がる。失敗すれば、日本の戦闘機開発能力は終焉を迎えかねない。■

この記事は以下を参考にしました。

Japan Chose The F-3 Over America's F-35 For One Reason (China)

The F-3 has a bigger internal weapons bay.
January 16, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarJapan


2020年1月15日水曜日

中東が戦火に包まれないのはイスラエルの核兵器のおかげなのに現実を直視できない日本

日本人にとってイスラエルの存在は理解しにくいようです。イランが自制しているのはトランプが怖いからではなく、イスラエルがいるからでしょう。その背後に核兵器があり、だからイランは核兵器開発に躍起となり、イスラエルは核の独占を破られるのを恐れ、イランを牽制しているではないでしょうか。核兵器を道徳上の悪と非難する向きがありますが、現実の世界では抑止力を生む核兵器は保険として有効です。ただし、保有していてもノーコメントを何十年も貫ける個性の強さがユダヤの強みなのでしょう。某半島の民族には無理ですね


2016年9月、元国務長官コリン・パウウェル陸軍退役大将がイスラエルが「核弾頭200発」を保有と電子メールでほのめかし大騒動になった。数字は誇張気味だが、噂は広がった。イスラエルの核兵器は通常戦での敗北を阻止し、核・化学・生物兵器による敵国の攻撃を抑止する働きをしている。目標は一つ。イスラエル崩壊を防ぐことだ。

イスラエルが核兵器開発を決めたのは1950年代のことだ。ベン-グリオン大統領は敵国に包囲されたイスラエルの生存の鍵は核兵器と執念を燃やしていたと言われる。貧しく生まれたばかりの小国イスラエルには過大な夢だったが、イスラエルに大国から安全保証はなかった。自力で、時にはブラックマーケットで通常兵器を調達してイスラエル国防軍の装備を整えた。迫害を経て自決の道に歩みだした同国民にとって核兵器は究極の保険手段だった。

ベングリオンは科学顧問エルネスト・ディヴィッド・バーグマンに極秘核開発をイスラエル原子力委員会から指揮するよう求めた。後に大統領、首相を歴任したシモン・ペレスはイスラエルに親近感を覚えるフランスへ接触し、大型重水炉がプルトニウム再処理工場と供与された。使用済み核燃料は核兵器の重要な材料となる。原子炉はネゲブ砂漠の中、ディモナに作られた。1960年代末の米国の評価ではイスラエルの核兵器装備は「ありえる」とあり、米国は核開発を遅らせようとし、イスラエルが核非拡散条約に加盟すれば動きがとれなくなると考えていた。1969年9月、ニクソン大統領はイスラエル首相ゴルダ・メイヤと秘密合意に至り米国は査察をやめ、イスラエルは非拡散に合意し、見返りにイスラエルは核兵器の保有宣言も核実験も公表しないという内容だったと言われる。

イスラエルにとって初の危険状況はすぐにやってきた。1973年のヨム・キッパ戦役でアラブ各国軍は奇襲攻撃に成功し、イスラエル地上部隊はシナイ砂漠、ゴラン高原の双方で敗走を強いられた。イスラエルの核爆弾が出撃体制に入り、ジェリコI対地ミサイル、F-4ファントムに搭載された。イスラエルの反抗の決意は固く、双方の戦線で状況を変えルノに成功したが、核兵器は使われなかった。

当時のイスラエル核兵器の実態は不詳だ。何発あったのか、威力はどれくらいだったのか。イスラエルは通常兵器では数の上は劣勢だが周囲に核保有国はなく、イスラエルが戦術核兵器数発でアラブ連合軍の戦車部隊、軍事基地、飛行場を破壊できたはずだ。イスラエルから周辺国への距離が短いため、カイロやダマスカスもネゲブ砂漠から狙えたはずだ。

イスラエルは核兵器保有を否定も肯定もしない。専門家は概ね同国が核兵器約80発を保有と見ており、規模はフランス、中国、英国より小さいが、依然として周囲の敵対国は保有していない。イスラエル版の「核三本柱」で陸海空の各軍が敵の奇襲核先制攻撃を抑止している。

イスラエル初の核兵器は重力落下式爆弾だったはずだ。F-4ファントムが初の核攻撃機材だった。その後の核爆弾が小型化され、F-15IやF-16Iで運用可能になった。ミサイル技術の進歩により重力落下式爆弾は時代遅れとの声もあるが、最後のぎりぎりで攻撃を中止し呼び戻せる有人戦闘機には利点もある。

イスラエル初の地上配備核兵器はジェリコIミサイルで、フランスと共同開発した。ジェリコIはすでに用途廃止と見られるが、その後ジェリコII、-IIIミサイルが加わった。ジェリコIIの射程は932マイルでジェリコIIIでは3,106マイルに伸び、イラン等の遠隔地に睨みをきかせる。イスラエルの弾道ミサイルの本数も不明だが、20発程度と見る向きもある。

その他核保有国と同様にイスラエル海軍も生存性が最も高い潜水艦に核兵器を搭載しているようだ。イスラエルはドイツ建造のドルフィン級潜水艦5隻を保有し、核巡航ミサイルを搭載しているといわれる。核巡航ミサイルはポパイ空対地ミサイルあるいはゲイブリエル対艦ミサイルが原型だろう。これにより「第二撃能力」が生まれ、潜水艦一隻でもパトロール中ならイスラエルが核攻撃を受けても核の反撃を行える。

核の三本柱を作り上げたのはイスラエルが核抑止力を真剣に考えている証拠だ。だが同国は核保有国と名乗りを上げる様子は当面ない。核兵器があるのか無いのかあいまいにすることが同国の利益にかなってきた。少なくとも数年先まではイスラエルは中東で唯一の核保有国のままだろう。だが、核合意が崩れればこの状況も一変しかねず、イスラエルの究極の保証は機能しなくなってしまう。


この記事は以下を参考にしています。

A Known Secret: Israel's Nuclear Arsenal Is Deadly And Ready
January 12, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldIsrael





2020年1月14日火曜日

中国潜水艦はこうやって狩られる:P-8Aの役割は大きい




P-8ポセイドンが重要な機材であることがわかります。▶中国には目の上のたんこぶの様な存在でしょうか。中国としては早期に排除したい機体でしょう。▶航行の自由作戦の継続で、中国が偶発的にこうした機体を「誤って」撃墜する事態が来ないとも限りません。▶では我が道をゆく日本のP-1の性能はどうなのでしょうか。P-8Aと決定的に違うとは思いませんが、情報の共有のほうが重要なのでは。▶皆さんはどう思いますか。

国の核搭載弾道ミサイル潜水艦の活動範囲が広がっている。JL-2ミサイルは米国の一部を射程に収めると言われ、米海軍はその対応策として攻撃型潜水艦の建造強化、長距離無人機の配備、さらに対潜哨戒機P-8Aポセイドンの取得を続けている。
なかでもポセイドンの増強を加速化している。2020年度予算で海軍はポセイドン9機の調達を目指す。ボーイングには昨年24億ドル契約を交付しており19機の追加生産も決まっている。ポセイドン増強は太平洋戦域で航行の自由ミッションを平和裏にすすめる意図につながる。
太平洋の広大な地理条件に呼応しつつ中国潜水艦部隊の拡充に対抗すべく、海軍は議会に働きかけヴァージニア級潜水艦の建造ペースを高めようとしており、トライトン海上哨戒無人機もグアムへ配備された。
監視飛行にはポセイドン、RQ-4グローバルホーク、U-2ドラゴンレイディを投入している。
このうちポセイドンにはハイテク監視偵察任務が想定され、南シナ海に中国が造成した人工島の映像が数年前に公開されたことは記憶に新しい。さらに高性能センサー類、ソノブイ、兵装の搭載が中国を封じ込める戦略の一部になっていることは想像に難くない。中国の核搭載弾道ミサイル潜水艦(SSBN)部隊への抑止力なのだ。
PLA海軍は太平洋の外にまで活動範囲を広げている。中国のSSBNsが西太平洋沿岸から遠く離れた地点で確認される事例が増えている。JL-2に加え新しくJL-3ミサイルが登場し、米国に圧力をかけている。国家航空宇宙情報センターによれば中国は2017年時点でJL-2を48基潜水艦に搭載していた。JL-2の射程は4,500マイル超で米国にも脅威となる。
2018年、米太平洋艦隊で情報部長を務めたジェイムズ・ファンネル大佐は議会で中国の核ミサイル潜水艦の追尾及び抑止を訴えた。
「PLA海軍のSSBNが核パトロールに出動する度に、米海軍が追尾し核ICBMを我が国に発射する前に撃沈する準備をしておく必要がある」(ファンネル)
SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射してからの迎撃が困難なことから、より賢明な対応策は「中国SSBNがSLBMを発射する前にこれを撃破すること」という結論が出る。
ポセイドンはSSN攻撃型潜水艦と協調しながらのSSBN狩りに最適な機材のようだ。P-8の移動速度時速564マイルはP-3オライオンより相当高いが、燃料タンク6基の追加でポセイドンは広大な海洋上を移動し、脅威対象を捜索できる。海軍によればポセイドンは連続10時間の哨戒飛行が可能で1,200カイリを対象にできるという。長時間飛行に高速移動が加わったポセイドンは中国SSBNを広大な海域で見つけ出す機能で優れている。
P-8Aはボーイング737-800の海軍仕様で、魚雷やハープーンを搭載し、ソノブイ129個の他、空中給油で長距離飛行が可能だ。大深度まで潜水艦を探索し、各種攻撃手段が利用できる。高高度からソノブイを運用するP-8は敵の水上攻撃や小舟艇の集中攻撃から安全に運用できる。その他のISR機材や無人機と異なり、ポセイドンは敵潜水艦の探知にとどまらず、攻撃撃破まで可能だ。
AN/APY-10探査レーダー、MXシリーズ電子光学赤外線カメラで水面を探査する以外にソノブイをパラシュート投下し潜航中の敵艦を各種深度で捕捉できる。また対潜作戦に加わる各種装備のネットワークで「中継点」となり水上艦、無人水上艦艇、無人機の海上探査センサー、潜水艦を結ぶ。相互に接続した対潜ミッションの実際でポセイドンはアクティブ電子スキャンアレイ、合成開口レーダー、地上移動標的捕捉機能をフル活用する。
また水中聴音機、磁気コンパスを使い、情報を水上の発信機と有線で結べばポセイドンのソノブイは海中の音響エナジーを無線信号に変換し機内でコンピュータ処理にかける。
またソノブイは米海軍が整備した水中聴音機ネットワークにも有効活用される。中国北部からフィリン、さらにインドネシアにまで連続設置されているという。ポセイドンの対潜哨戒機能でこの「水中防衛ライン」の実効性があがり、中国SSBNsは探知されずに移動できなくなる。
ポセイドンがペンタゴンの核抑止力一助になっていることは興味深い。またペンタゴンが採る「攻撃力が最高の防衛手段」の思想にも合致し、核の三本柱抑止戦略に適応する。SSBNsの行動が制約されれば、中国は潜水艦発射ミサイルによる核攻撃が容易にできなくなる。その意味でポセイドンは水中、空中の核抑止力を結ぶ存在だ。ポセイドンは中国SSBNsを追尾する米水上艦、潜水艦に重要情報を提供する一方、核抑止力を強化する役割も果たしている。■


この記事は以下を参考に作成しました。

This Is How the U.S. Navy Hunts Nuclear-Armed Chinese Submarines

From the sky!
January 10, 2020  Topic: Security  Region: Pacific  Blog Brand: The Buzz  Tags: Anti-Submarine WarfareSSBNP-8 PoseidonPLA NavyJL-2


2020年1月13日月曜日

英空母の米国貸し出し構想は実現可能なのか

国防予算の先細り傾向が続けば、当然ながら新しい運用方法をひねり出す必要があります。仏独やNATOで高価な装備の共有が現実に始まっており、超大国以外の「普通の」一国で全て保有し運用することに限界が生まれつつあるのかもしれません。▶以前、ディーゼル電気推進方式攻撃型潜水艦を日米共同運用する構想を考えたことがありますが、空母で艦の貸し借りは可能でしょうか▶そもそも英国が空母二隻を建造してしまったことで全体戦力構造にしわ寄せが生まれている気がするのですが。▶また強襲揚陸艦がこれからの「空母」の標準になりそうですね。日本ではいずも級は「習作」の位置づけになると見ていますが、そうなると次の「本格的」空母に期待が集まりそうです。


国で空母一隻を米国にリースする案が検討に入ったと英メディアが伝えている。
かつては空母運用で世界をリードしていた英国だが、2016年以来空母がない状態になっていた。だがHMSクイーン・エリザベスが就役し、2021年に戦力化され、HMSプリンスオブウェールズも加わる。80億ドルを投じた各艦は最大36機のF-35Bを搭載可能で排水量は65千トンと米国最新鋭のフォード級原子力空母の100千トンに及ばないが、自動化が進んでいる。英国空母の乗組員は800名ほどでフォード級の2千600名より少ない。ただしここには航空部隊要員は含まない。
英海軍は新型空母を米空母部隊に統合しようと懸命になっている。「英米混合空母打撃群の運用構想は実証済み」と海軍幕僚長トニー・ラダキン大将がHMSクイーン・エリザベスの米東海岸来訪時に語っている。「構想を進めて、部隊の交換運用まで持っていきたい」
だが装備が異なるだけでなく、運用方針や伝統も異なる米海軍で英国空母は運用可能なのか。「米海軍で他国海軍から戦闘艦艇をリース運用した実績があるか。補給維持活動がまったく違う国同士だと艦艇の維持だけで課題だ」と話すのはシンクタンクRAND Corp.の海軍専門家ブラッドレイ・マーティンだ。「空母運用の支援・維持は米英で共通でも、艦艇は別だ。乗組員の配置そのものがちがう。米国のNCA(国家統帥権)で英国民に下令し危険な状況に対応させられるだろうか。リース案は実現するとは思えないし、米乗組員が英艦を運用するのも大変だ」
「米海軍の視点ではこの構想はまともに見えない」とワシントンに本拠を置くシンクタンク戦略予算評価センターの海軍専門家ブライアン・クラークは述べる。「米国には大型空母10隻以外に10隻の空母つまりLHA、LHD強襲揚陸艦がある。後者はクィーンエリザベス級よりわずかに小さい。米海軍ではLHA/LHDを対テロ作戦で中東投入が増えており、大型CVN(原子力空母)の負担を減らしつつF-35Bに対応させている。ただ米海軍では艦艇の維持費が課題で、別の艦をリースしてまで使える予算を減らす選択は考えにくい」
リースすれば英海軍に運用可能な空母がなくなる。「当初は英海軍は空母一隻を常時運用し、乗組員も一組で艦を交代する構想だった。一隻が補修に入ればもう一隻を配置し乗組員がやってくるはずだった。この方法では空母二隻分の運用維持経費は節約できないものの人員面で節減効果が生まれる。英海軍では人件費が大きな負担項目となっている。そこで空母を米海軍に貸し出せば、経費を賄う収入が生まれるものの英海軍の空母運用構想は実施不可能となり、運用可能な空母がない状態が一年続く状況が生まれる」(クラーク)
英米で艦艇貸し出しに前例がある。第二次大戦中に英国はレンド・リース方式で多額の援助をうけ、その中には米駆逐艦50隻の英海軍への貸与もあり、見返りに英海外領土に米海軍基地が設けられた。駆逐艦は旧式でナチUボート対応には非力だったが、単独でヒトラーに対抗していた1940年の英国には救いの神に写っただろう。
クラークは英空母に米海軍・海兵隊の機材・乗員が乗り込む方式を想定した。「英海軍は運用人員を削減し、米側も自国艦艇の整備中でも人員を有効活用し相互運用能力が向上する効果も期待できる」という。
マーティンも英空母リース案に一定のメリットはあるものの、そんなに大きなメリットではないという。「米側から見れば英空母の性能はCVNより劣るが、シナリオによっては有効活用できるだろう。たしかにリースのほうが新規建造より安価だ。だがそのまま実施が継続できるとは思えない」■


この記事は以下を参考に作成しました。

America Needs More Aircraft Carriers, And Britain's Royal Navy Has An Idea

Is leasing an option?

米空軍に第6世代戦闘機開発は財政的に無理なのか、F-35がF-22の代役になる?

米空軍の第6世代戦闘機は実現の可能性が遠のいているのではないか。であればこれから開発しようとする日本の事業に米国が多大な関心を寄せてくるのは必至だろう。
 いよいよ2020年代に突入し、将来予測は2030年代が中心になってきました。米空軍に第6世代機PCAを開発できないのであれば、日本が進めるNGF(F-3)の実現性が極めて重要になります。考えられるのは米国がNGF開発に協力する形を取りながら相当の注文を出してくることでしょうか。しかし本当に必要な機材を米国が開発できなくなる事態が本当にやってくるのか、疑問も残りますね。F-35だけでは西側の防衛体制には相当の欠陥が生まれるのではないでしょうか。

F-22ラプター後継機が2030年代の米空軍予算を食いつぶすと議会予算室(CBO)が指摘している。
空軍は新規機材調達に1980年から2018年までの各年に平均120億ドルを使ってきた。だがF-22を2030年代に更改すると年間230億ドルになると2018年12月のCBO報告書が結論している。
「必要とされる規模に比べ現行の空軍規模はあまりにも小さい」とヘザー・ウィルソン空軍長官(当時)が2018年9月に発言していた。米空軍が飛行隊数を現行312から386に増やすと新規機材調達経費は増加の一方だ。拡張案では戦闘機飛行隊を7個新規編成し、合計62隊になる。
CBO報告が空軍に一つの方向性を示した。F-22後継機としてF-35追加調達したほうが新型機の開発より予算が節約できるというのだ。
空軍の新規機材調達が最大規模になったのは1986年で290億ドルだったが、当時はソ連との欧州対決をまだ想定していた。
1991年にソ連崩壊で冷戦が終結すると米国防予算は急減した。1995年に空軍の機材調達予算が50億ドルになった。その後、予算は増えたが増え方は緩慢だった。2010年から2017年にかけ新規機材調達予算は年平均90億ドルとCBOがまとめている。
1980年代の大盤振る舞いの調達がその後の機材構成に影響を与えている。2018年時点で空軍機材5,500機中、1,500機は機齢26年から35年にで、F-15やF-16が大半だった。
80年代製機材の更新が必要だ。F-35がその更新用なのだが、機体単価は100百万ドル近くで、空軍は年間60機しか調達できず、F-35の1,800機調達目標実現に2040年までかかる。
2030年代になるとラプターの供用期間は40年に入り、F-22後継機含めステルス戦闘機二型式を調達するだけで年間140億ドルが必要となる。さらに輸送機、給油機、爆撃機も必要であり総額230億ドルが必要とCBOは警句を鳴らしている。
そこでF-22後継機にF-35が浮上する。「航空優勢2030フライトプラン」(2016年)では「侵攻型制空」(PCA)能力が必要としていた。言い換えると高性能の空対空戦闘機である。
だが研究では新型機開発を提言していない。F-22の老朽化にはF-35で対応すればよいとCBOが提言する。
PCA機材の位置づけに不明確な点があり、高価格のため、CBOは空軍総予算に影響が出ると分析している。例としてPCAで想定する高性能は高価になりすぎる、かわりにF-35追加調達する決定に至る可能性も残されている。
「F-35Aの推定機体単価は94百万ドルだがPCAは300百万ドルとなる予想で、新規機材調達のピークは2033年でPCAを実現しない場合は200億ドルとなるが、PCAが加わわれば260億ドルに膨らむ」という。
予算節約策で調達機数を減らす選択肢もある。が、これだと現行の作戦機材5,500機規模が維持できなくなる。さらに飛行隊数を増やす空軍方針で必要な機材数が減ることはありえない。■
この記事は以下を参考にしました。

The Air Force Could Soon Be Saying Good Bye To America's Storied F-22

The F-35 is just too good.
by David Axe 
January 11, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35MilitaryTechnologyWorld