2020年6月6日土曜日

AFRL:無人戦闘機対有人戦闘機の模擬空戦が来年7月に実施される

空軍が開発中の新型無人機は空対空戦で有人機を撃破する能力が目標で、無人機対有人機の模擬空戦が2021年7月に予定されている。
ペンタゴンの統合人工知能センターを率いるジャック・シャナハン中将は空軍研究本部(AFRL)が現行戦闘機に匹敵する画期的な無人機開発に取り掛かっていると明らかにした。▶「来年の初飛行に向け奮闘中で....マシンがヒトに勝つだろう」とシャナハン中将は6月4日開催のミッチェル研究所の航空宇宙研究イベントで語った。「そのとおりになればすごいことになる」
AFRLはAI応用の無人戦闘機開発を2018年開始し、18ヶ月以内の完成を目指している。Inside Defenseは2018年5月に機械学習技術をF-16のような最先端と言えない機材に導入し、F-35やF-22に対決させる構想を紹介していた。▶「最優秀パイロットには数千時間の経験値がある。さらにその能力を強化するシステムがあり、数百万時間相当の訓練効果を与えるシステムがあったらどうなるか。ヒトが考えるよりも早く決定できるシステムで戦術自動操縦を実現したらどうなるか」(AFRL)
目論見通りなら空軍のその他AI応用システムにも導入できそうだ。スカイボーグ・ウィングマン無人機構想がその頂点で、整備から戦闘立案に至るまでAIと機械学習アルゴリズムが広く導入できる。
今回のAFRLの事業には今年初めに巻き起こった自律飛行無人機が有人機に勝てるとのイーロン・マスク発言でまき起こった論争を思わせるものがある。▶「無人戦闘機は遠隔操縦されるが自律運航性能で機体制御を拡張する」「F-35は対抗できないだろう」(マスク)
ただし、シャナハン中将はこうした先進技術で全部解決にはならないと釘をさしている。自動運転技術の開発で得られた教訓に軍は注意を払うべきだという。▶数十億ドル規模の投資をしているものの「レベル4の完全自動運転車はまだ走っていない」とし、「自動車業界から軍は数十年分相当の経験を活用できる」と発言した。■

この記事は以下を再構成したものです。

Air Force to Test Fighter Drone Against Human Pilot

Air Force to Test Fighter Drone Against Human Pilot

June 4, 2020 | By Rachel S. Cohen


2020年6月2日火曜日

黒海、オホーツク海とロシア周辺部を飛行したB-1Bの示したメッセージとは....

  • UKRAINIAN MINISTRY OF DEFENSE

空軍はB-1Bボーンズ編隊が黒海でAGM-158C長距離対艦ミサイルLRASMの発射訓練をしたと発表。B-1は供用期間の終わりが近づいてきたが、特に太平洋で水上艦攻撃への投入が期待されている。今回の訓練でヨーロッパでも緊急事態対応に同機が有益な存在になると示した格好で、黒海ではロシア海軍の存在が厄介になっている中、クレムリンにメッセージを送ったと言える。
第28爆撃航空団所属のB-1B2機はエルスワース空軍基地(サウスダコタ)を離陸し、長距離爆撃任務部隊ミッションを2020年5月29日実施し、NATO加盟国他ヨーロッパ協力国所属の各種機材と訓練を展開した。ウクライナはSu-27フランカー、MiG-29フルクラム戦闘機部隊を派遣し、トルコのKC-135Rから空中給油を受けた。ともに米空軍のボーン部隊に初の実施となった。在欧州米空軍(USAFE)は6月1日に対艦攻撃訓練を発表したが、どちらの機体がLRASMを搭載していたのかは明示していない。
空軍はアンダーセン空軍基地(グアム)での常時爆撃機プレゼンスを2020年4月に中止し、16年続いた一回六ヶ月のB-1B、B-52のアンダーセン基地配備に終止符を打った。かわってダイナミック戦力配備方針を打ち出し、敵の予測を超えた予告なし短期間配備で敵の作戦立案を危うくする。
B-1Bが注目されているのは、外部パイロンも活用し搭載量を増やす構想があるためだ。同時に爆撃機が再び注目されており、中でもLRASM搭載のボーンズでの海上作戦支援に期待が集まっている。
UKRAINIAN MINISTRY OF DEFENSE
B-1B爆撃機2機にウクライナ空軍のSu-27フランカー前方とMiG-29フルクラム後方が随行し、黒海上空を飛行した。2020年5月29日。

「LRASMが外洋、沿海双方で米海軍の作戦アクセス維持に重要な役割を果たすのは長距離でも標的捕捉能力があるから」とUSAFEの603航空作戦センター・爆撃機任務部隊ミッション立案責任者ティモシー・アルブレクト中佐が5月29日の黒海フライトについて語っている。「海上脅威が増加し、接近阻止領域拒否をめざす装備品が出現しているが、ステルス対艦巡航ミサイルで攻撃機はリスクを減らし敵防空体制に侵入しこれを制圧できる」
B-1BでAGM-158Cの搭載が2018年12月に可能となった。LRASMはAGM-158共用対艦スタンドオフミサイル(JASSM)ファミリーから生まれた。今年4月に空軍はグアムでB-1BにJASSM実弾を搭載する作業を写真公開し、中国に明白なシグナルを送ったばかりだ。
対艦ミサイル搭載の爆撃機編隊が飛行したと空軍がわざわざ発表したのはロシアの黒海艦隊へもメッセージを送るためだろう。黒海は有事に対艦ミサイルが飛び交う戦場になる。
B-1Bの黒海への派遣、ウクライナ機との訓練は明白なシグナルを送る。2014年にロシアはウクライナのクリミア半島部分を不法占拠し、海軍基地を確保し、さらにウクライナ東部のドンバス地区の分離派を公然と支援しはじめた。クリミアでのロシア軍プレゼンスは増加し、戦闘機材、長距離地対空ミサイル、対艦ミサイル部隊の増強が目立っている。5月29日のミッションでもロシアのフランカー編隊が同地区からボーンズを迎撃してきた。
RUSSIAN MINISTRY OF DEFENSE

ロシア参謀本部の主作戦局長セルゲイ・ルゾコイ上級大将は6月1日報道陣向け説明で5月29日のB-1B爆撃機編隊の動向を解説した。地図ではB-1Bの飛行経路とロシア長距離ミサイル部隊の位置も示されていた。

NATO加盟国ルーマニア、ブルガリアも5月29日の爆撃機任務部隊ミッションに自国機材を派遣したことから、空中発射対艦ミサイル兵器が重要な存在だとわかる。B-1B各機がJASSM24発を搭載でき、LRASMも同様と思われる。ロシア黒海艦隊は水上艦艇50隻程度、潜水艦5-6隻が配備されるに過ぎない。ボーンズ数機で各艦艇すべてを始末できる。
USAF
ルーマニアのF-16Cヴァイパーが黒海地区上空をB-1B編隊と飛んだ。5月29日。

遠隔地から飛来するB-1Bがスタンドオフ対艦攻撃をロシアの高密度統合防空バブルの外から行えば大きな意義がある。米本土から飛行し、作戦を実行できる能力があればヨーロッパ内の各基地への依存度が減る。各基地も攻撃の前に脆弱性を露呈するはずだからだ。
LRASMは自律航行能力があり、GPS利用の誘導システムと双方向データリンクが妨害された場合への対処を講じている。またステルス性を活かし敵防空体制をくぐり抜ける。最終段階で赤外線画像シーカーを稼働させる。これも電子戦妨害措置の影響を受けない。
活発な動きを示す米爆撃機にロシアが警戒心を示すのは当然と言える。6月1日の説明会でもロシア国防省は米空軍力の動き、NATO演習を非難し、各国が5月にバレンツ海で行った対水上艦攻撃演習を挑発行為とまで述べた。「冷戦終結後で初、かつドイツ戦勝75周年の前夜にNATO海軍部隊がバレンツ海で演習した」とルゾコイ上級大将は注意喚起した。「演習ではロシア領海内の標的の攻撃のほか、ロシア弾道ミサイルの迎撃も対象にしていた。こちらから見れば、挑発行為でバレンツ海への米艦艇進入も直前まで通達はなかった」
RUSSIAN MINISTRY OF DEFENSE
5月のバレンツ海でのNATO演習についてルゾコイ上級大将が巨大な地図を背景に説明し、NATO及びロシアの艦船航空機の動きを示した。

ルゾコイ上級大将は5月29日のB-1B黒海上空飛行もとりあげ、ロシア国境線周辺部ヨーロッパ、太平洋での米爆撃機の活動がここ数ヶ月活発になっていると指摘。5月21日にはオホーツク海上空に米爆撃機一機が侵入する前例のない事態もあり、三方向がロシア領のため米軍機は同地区での飛行は避けていた。
米空軍は新しい形でB-1Bや爆撃機任務部隊ミッションによる戦闘航空投射を太平洋地区で実施してきたが、ヨーロッパでもロシアを狙い同様の活動規模を拡大したと言える。■
 この記事は以下を再構成したものです

Air Force Reveals B-1Bs Were Practicing Decapitating Russia's Black Sea Fleet Last Week

Russia has decried that mission, as well as other American and NATO exercises around its borders in recent months, as provocative.


Contact the author: joe@thedrive.com

B-52エンジン換装事業の背景と進捗状況




インド太平洋軍の爆撃機連続プレゼンス作戦の一環でB-52が二機太平洋上空に展開した。Photo: A1C Gerald Willis

B-52の最終号機がラインオフしたのは1962年だった。米空軍は2050年まで同機を供用する。そのため空軍はB-52のエンジン換装で整備性にすぐれ運用効率を高くする改修をめざしている。
同時にB-52エンジン換装事業は契約交付の短縮化を図る最初の事例ともなる。これまで綿密に細部まで打ち合わせ、書類多数を作成し各候補を比較してきたが、今回は「デジタルフライオフ」でエンジン候補をコンピュータ・シミュレーションにかける。比較項目は燃料消費効率、整備面の必要条件、各種条件での性能に絞る。
「この事業で学ぶべき点は多い」と空軍の調達トップ、ウィリアム・ローパーが述べていた。「デジタルエンジニアリングは紙の上の検討より優れた評価方法となり、システムのシミュレーションで採択案に絞っていきたい」
ローパーによれば契約事務工程が合理化され、さらにデジタルフライオフの採用で当初の工期10年を3.5年短くできる。
USAFは現在のプラット&ホイットニーTF33エンジンの代替候補を2018年10月に検討開始していた。
「既存エンジン改修は最初から検討対象から外した」とグローバル打撃軍団(AFGSC)広報官がAir Force Magazineに語っている。プラット&ホイットニーは既存エンジン改修を売り込んで新技術で効率の改良が実現し、整備時間も短縮化でき新規エンジン採用よりコストが低くなると訴えていた。
ただし、「空軍は既存エンジンのこれ以上の使用は無理と判断ずみ」とし、今のエンジンでは90年の稼働は不可能と考えている。
エンジン換装事業には後年度国防事業制度を使い15億ドルを投じる。だが総費用は公表されていない。2017年3月時点では70億ドルとの試算があった。
B-52は当初J57エンジンを搭載していた。写真は1950年代末のオファットAFBでの整備の様子。1961年にTF-33エンジンが導入された。Photo: USAF/AFA Library
USAFが2018年に作成した「爆撃機ベクトル」案ではB-52の供用期間延長事業はエンジン換装他も含め220億ドルとしていた。検討案では削減効果を100億ドルとはじき、「燃料費、整備費、整備人件費を2040年代まで積算した」との記述が文書にある。
公式にはB-52民生エンジン交換事業(CERP)の名称がつき、空軍は産業界と意見交換をしてきた。目標は「民生用の既成製品で生産中のエンジンを選定すること」と電子調達サイトにある。
76機あるB-52各機のTF-33エンジン8基の交換となると合計608基(さらに予備エンジンが加わる)となる。現行の双発用ポッドに格納する。
空軍は燃料消費効率で25ないし30%向上を期待し、航続距離が40パーセント伸びると期待する。また温室効果ガスの発生も減らせると期待している。
燃費効率が3割伸びる効果は「莫大」とローパーは述べ、コスト面に加え、航続距離や現場滞空できる時間が伸びる効果は大きいという。
コンピュータモデルによりコスト、性能の相互関係を比較できるとローパーは期待する。「ある企業から燃費3割改善だが価格が高い提案が出てきても他社案で効率はそこまで良くないが低価格提示があれば、選択は興味深い作業となる」
B-52エンジン換装は2007年に浮上。当時は同機を戦域大の電子戦に投入する構想で、スタンドオフジャマー(SOJ)としてでスタンドオフ兵器の発射後に機体を現場に残し、広域ジャミングを行わせ、海軍のEA-6やEA-8の投入を不要にする構想だった。新エンジンは航続距離とともにジャミング装備用の発電容量の確保で必要とされた。だがSOJ構想は結局実現されなかった。
2014年末に民生エンジンに換装すれば整備時間と燃料費を節約できるとわかり、空軍参謀副議長だったスティーブン・ウィルソン中将、AFGSC司令のロビン・ランド大将からエンジンのリース案が出てきた。
空軍はB-52のエンジン8基を大型ターボファン4基にする検討もしたが、技術面で課題がわかった。フラップや制御面との干渉、地上高の確保等の他、フライトテストも大々的に行う必要があり、兵装運用テストも必要となり、コックピットやスロットルが大幅改修され、ラダーも再設計対象となる。そこで8基のまま大型ビジネスジェット用のエンジンを選ぶことになった。
現在のエンジンは信頼性でTF-33よりはるかに優れ、一回搭載されれば途中で取り替える必要はない。対象となる規模のエンジンでは重整備平均時間は30千時間近くで、B-52に残る耐用期間を上回っている。
ルイジアナ州バークスデイルAFBでB-52エンジンを点検中。January 2018. Photo: A1C Sydney Campbell


長期間供用中のB-52では任務実施率は高く、各種兵装を搭載し高い効果を実現している。ただし、敵側に高性能防空体制がない場合には。ハイエンド戦でもB-52は敵の防空圏外からミサイル発射すればよい。また同機は核巡航ミサイル運用が可能な唯一の爆撃機であり、長距離スタンドオフ(LRSO)ミサイルの搭載も当面同機に限られる。
B-1、B-2はそれぞれ22年、30年も若い機体だがB-52より先に廃止される。それには以下の理由があると爆撃機ベクトル研究がまとめた。
  • B-52のミッション実行率は60パーセントだが、B-1、B-2ではそれぞれ40パーセント、35パーセントにとどまる。
  • B-52の時間あたり運航経費は70千ドルだが、B-2はほぼ2倍になる。ただしB-52のエンジン換装前の数字だ。
  • B-52Hは供用時間の大半を核運用の地上警戒待機ですごしており、機体構造は堅牢で数千時間の飛行が可能。
ただしB-52改修費用のすべてが予算化されていない。AFGSCでは上層部と予算折衝を続けている。
だがB-52は2050年でも飛行可能なのだろうか。機体表面や構造部品が50年経っても堅牢なことに驚くとAFGSCは言っており、エンジンとレーダーの更新があれば十分実用に耐えるという。
レーダー換装について「防御装備はいつも高性能にしておきたい」とし、その他エイビオニクスでも対応が必要だ。
B-52の改修作業は以前からあり、 Link 16 の搭載が完了しつつあり、CONECT「デジタルバックボーン」も完了に近づいている。VLF、AEHF通信装置も搭載され、機体内部兵装庫の改修は終わっているし、その他の改修予定もめどがついているという。
Sources: Rolls-Royce, Pratt & Whitney, and General Electric. Graphic by Mike Tsukamoto

エンジンの選択
製造メーカーで長年機体整備を支援してきたボーイングが新エンジン搭載作業をまとめるが、エンジン選択は空軍が行い、ボーイングは飛行性能や兵装搭載への影響で助言を与える。

プラット&ホイットニーは空軍がTF-33以外のエンジンで「最良の選択」は同社のPW815改修型という。ガルフストリームG600ビジネスジェットに搭載実績がある。
「当社は同機のエンジン、出力要求を知り尽くしており、他社の追随を許しません」と同社はAir Force Magazineに語っている「当社の提案内容は推進力、燃料消費、発電容量の要求内容すべて実現可能です」
GEエイビエーションからはCF34-10と新型「パスポート」エンジンのニ案がある。最終要求内容から絞り込みたいという。.
「CF34の信頼性が実証済み」とし、26百万時間の稼働実績を誇る。パスポートでは「燃料効率、航続距離、滞空時間」で前例のない性能が実現するとする。USAFの要求内容を見て一形式にするという。
ロールスロイスはエンジン換装案の発表前から手を上げており、BR725(軍用型はF130)が理想的な選択肢になると2017年にはやくも売り込んでいた。同社はガ
ス排気を95パーセント削減しながらUSAFの求める航続距離と燃料消費効率が実現できると述べている。
F130はRQ-4グローバルホーク、E-11 BACN,新型コンパスコール機にも搭載されており、後者はガルフストリーム650の特殊作戦用機材で空軍が供用中だ。
噂とは裏腹に、空軍は性能のみでエンジン選定しないという。逆にコスト面で各種の比較検討で選定するという。問題は「どのくらいの頻度で主翼から外す必要があるのか。補給処に予備を置いておく必要があるのか」だという。
TF-33の補給処はオクラホマ州のティンカーAFBで同エンジンの整備保守経費はここ11年で急上昇している。■
この記事は以下を再構成したものです。
Jan. 21, 2019

2020年6月1日月曜日

F-35各型で機体価格が軒並み低下、しかし60年間の総経費は1兆ドルのまま



  •  開発調達コストは7.1%減とペンタゴンがまとめた
  • 長期間にわたる供用、維持コストは7.8%増との試算


ッキード・マーティンF-35の機体価格に低下の兆しが見えてきた。開発調達費用の最新試算は7.1%減の3,978億ドルになった。


ただし議会、納税者は手放しで喜べない。66年間の運用維持総費用は1.182兆ドルとペンタゴンの昨年試算から7.8%上昇している。国防総省のF-35事業評価からBloomberg Newsがまとめた。


F-35事業管理室による調達費用低下試算は朗報の一つで、その他にも納期順守率の向上、パイロットの生命を脅かしかねない欠陥の解決、ソフトウェア不良の解決などがある。


報告書はまだ公表されていないが、F-35の海外販売見込を合計809機とし、昨年の764機から増加。


各種改良が進むF-35は国防予算削減の波から守られそうだ。Covid-19大量流行で連邦予算赤字は急増し、ペンタゴンも予算規模は2025年まで増加できる状況でないと見ている。


F-35の今後の予算見通しでは、2022年度の94機調達予定を9機削減するとある。94機調達は2023年度2024年度とし、2025年度は96機と見込む。2021年度要求が79機から拡大る。F-35で米軍向けと同盟国向け需要が3,200機の試算があり、このうち500機が引き渡し済みだ。空軍は計1,763機調達を目指し、米軍向け2,456機の中心となっている。


報告書作成の昨年12月時点でウィルスは大量流行していなかった。ロッキードは先週、Coovid-19の影響でF-35生産が一時的に減速と発表し、今年納入予定の141機で最大24機に遅延発生の可能性を明らかにした。


ペンタゴン評価ではロッキード及び協力企業のデータで年間生産実績をもとに製造機数を見直しており、調達費用を下げていることがわかる。F-35の米空軍向けA型の「フライアウェイ単価」は12.1百万ドル下がり、57.4百万ドルになった。ただし、エンジンは含まない。海兵隊向けB型は80百万ドルが72.1百万ドルになり、海軍のC型は79.5百万ドルから72.3百万ドルになった。


ただしこれで2077年までの供用期間中に発生する1兆ドルが減るわけではない。今後の見通しについて2019年3月、国防長官代行だったパトリック・シャナハンは「DoD史上最大の事業規模となり、機体維持経費は核兵器近代化事業とほぼ同額」と述べていた。■


この記事は以下を再構成したものです。



2020年5月29日 17:00 JST

2020年5月31日日曜日

パンデミック後のPRC⑦ 解放軍予算は最低の伸びとはいえ7%弱増、台湾へ圧力をかける



 

全国人民代表会議には習近平主席も参加し2020年5月22日に北京で開幕した。 (Kevin Frayer/Getty Images)


国は今年の国防予算を前年比で6.6パーセント増と30年で最低の成長率と発表した。

金額で昨年の1670億ドルが1782億ドルになる。この規模は米国に次ぎ第二位。伸びは最低とはいえ、110億ドルの予算増は中国のこれまでの実績でも第5位の規模だ。▶背後には人民解放軍PLAにCOVID-19パンデミックの影響を与えない意図が見える。中国経済は2020年第1四半期に対前年比で6.8パーセント縮小した。▶李克強首相は実質は政府のいいなりの人民代表会議開幕で演説し、PLAへの悪影響を否定した。▶「国防体制と軍の改革を進め、補給活動を強化し、革新的国防関連技術の開発を強化する」(李)。

李首相は台湾にも触れ、「独立を志向する分離主義の動きには断固反対しこれを抑える」とし、台湾住民に「本土に加わり、再統一の動きに合流せよ」と訴えた。▶意図的なのか李首相は台湾再統一で「平和的」との表現を避け、これまでの中国指導部が全人代で台湾に関し発言する際の常套句を使わなかった。中国は台湾再統一に際し武力行使を放棄していない。

李首相発言と同時に米国防長官マーク・エスパーは台湾を支持する米国の立場を再確認した。長官は米国は「台湾支持の公約を確実に守る」と述べ、台湾関係法の縛りもあり、台湾に必要な防衛装備を供給すると発言。▶米国務省は台湾向け潜水艦用大型魚雷18本を180百万ドルで売却する案件を21日木曜日に承認した。Mk 46 Mod 6高性能技術魚雷は台湾海軍潜水艦に搭載される。2017年には同様の兵装48点の売却があった。

台湾報道では台湾周辺で中国軍がパンデミックと無関係に活動を続け、中国艦艇航空機が国際空域、海域で定期的に活動している。中国は通常の訓練とするが、台湾政府は台湾への脅迫と見ている。■

この記事は以下を再構成したものです。


China announces $178.2 billion military budget


By: Mike Yeo    7 hours ago

米海軍:X-37で軌道上から地上へ送電の実験を行う


米海軍は巨大な太陽光パネルから地球上への送電を試行する。

国防総省発表に米宇宙軍がX-37B再利用可能スペースプレーンで宇宙空間実験を行うとあり、種子への放射線の影響を見る実験と、注目すべき内容ではない。

一方で、さりげなく目立たない形で海軍研究本部が太陽光エナジーを地球に送る活用方法を模索すると記述がある。マイクロウェーブエナジーに変換し地上へ送信すると広報資料にある。▶太陽光パネルをX-37Bに搭載し軌道上で太陽光エナジーを集めて地球へ送る構想だ。

宇宙からの送電実験

十分に作動する設計なら太陽光を収集し、莫大な量のエナジーを地球に送れる。宇宙空間なら雲に遮られることもなく発電効率が上がり、パネル上に埃もつかないはずだ。▶集めたエナジーは地球にマイクロウェーブとして転送する。エナジー収集のしくみは緊急時電源としてさらに軍事用途にも使える。▶移動困難地に展開する地上部隊も理論上は制限なしで莫大なエナジーが使えるようになる。燃料補給装備のトラック、タンク等が不要になる。▶さらに太陽光エナジーは軌道上の宇宙ステーション、スペースプレーンや衛星等に電源供給できる。

課題は

ただし、実現までに克服すべき課題がある。海軍研究本部のポール・ジャッフェ博士の説明では宇宙空間への打上げる費用が高額なことが一番だ。重量がかさめば多くの推進剤が必要となり費用も上がる。重量を最小限にするには内部部品を小型軽量化する必要があり、技術面で難易度が上がる。▶その他として太陽光収集だけの問題ではなく、衛星全般に共通する要素がある。いったん打ち上げれば、軌道周回中の衛星の速度は相当早くなる。別の軌道から地球上の任意地点にエナジー送信するのは難題となる。この目論見が実現可能となるかはわからないし、コストと技術上の課題も残る。■

この記事は以下を再構成したものです。


May 22, 2020  Topic: Technology  Region: Space  Blog Brand: The Buzz  Tags: AmericaU.S. NavySpace ForceSunSunlightSolar PowerSpace

Yes, the U.S. Navy Wants to Harvest the Sun’s Energy



Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.

2020年5月30日土曜日

主張 少ないF-22「最重要航空機材」をフル活用すべき米空軍

    

デプチュラ退役中将とバーキー両名が「最重要軍事装備」と呼ぶF-22 (Air Force)




5月15日に訓練中のF-22ラプター1機の喪失事故が発生し、同機の配備規模で警鐘となった。

アフガニスタン、イラクでの対戦闘員作戦を重視しすぎたあまりF-22調達は187機と小規模で終了した。空軍の要求は381機だった。今や、両国での戦闘は過去となり、新しく国防戦略構想が出た中で、F-22の性能がさらに重要度を増している。

第5世代機の同機こそ最重要軍事装備であり、今回の事故喪失でF-22の性能向上改修には予算を全額計上し実施の必要を痛感している。これからもF-22に匹敵する性能を有する機材は米国でも他国でも生まれない。同機に関する予算管理、機材管理には現実を反映させねばならない。

F-22の主要任務は航空優勢の確保にある。これが軍事作戦の成功に不可欠なことは言うまでもない。同機は地上目標も精密攻撃可能な性能を有し、敵が優勢の環境でも情報収集監視偵察任務もこなせるが、なんといっても空対空戦の王者だ。各種の性能を実施でき、その全貌は公開されていないが、F-22はわが国の通常抑止力で最大効果を発揮する。他機種より小規模な部隊編成だが、他機種と比べようのない戦闘効果がF-22から生まれる。

ステルス、センサー技術、処理能力、卓越した飛行性能でF-22は他機種の追随を許さない。一部の機能だけ有する機体はあるが、F-22のように全て包括した機体は存在しない。ステルスにより敵機は接近攻撃がきわめてむずかしい。センサーと処理能力で戦闘空間の把握は驚くほど精密になる。速力と操縦性で同水準の機体はない。F-22の真価に疑問を呈する向きには同機の水準に近づこうと必死な各国の姿を見てもらいたい。いかにF-22が画期的かがわかる。

わが国にF-22がもっと多く必要な事実は実に単純明快だ。だがF-22生産ラインは閉鎖され数年が経過し、生産再開は容易ではない。F-35はもともとF-22の補完用であり、対地攻撃能力を充実させ、同機も今後の航空戦力整備で不可欠な機体だ。F-22配備数が小規模のため、F-35の年間調達規模が一層重要になっている。今後登場する制空戦闘機構想はなんとしても進める必要がある。

ただし、COVID-19関連の予算制約により新型機開発の遅れは必至だ。パワーポイント上ならいくらでも展開できるが、そんな理論面での作戦構想で具縦的な作戦能力に混乱を来してはならず、現在将来の課題に答えねばならない。F-16やF-15といった旧設計機へ資金投入しても、最新の要求水準に対応できない。こうした機体も重要な存在とはいえ、運用上の有益度で今後低下が止まらない。安全保障面の課題に答えられなくなるからだ。

このため制空権確保でF-22が重要手段となる。敵と武力衝突となればF-22が最前方に投入されるのは明らかだ。だからこそラプターの性能改修で予算確保が必要で、今後も同機の性能を維持する必要がある。F-22部隊の戦力維持で費用対効果が最大になるのは訓練や試験に投入されている最古参のF-22ブロック20の33機を実戦対応機材にすることだ。これで最小の予算投入で一個飛行隊の新設効果が生まれる。費用面を重視する向きには、F-22全機がフルに性能を発揮できない場合に代償を払う覚悟があるのか問いたい。代償とは戦略目標の放棄であり、深刻な戦力低下であり、国民多数の生命の喪失だ。

F-22生産の打ち切りは悲劇であり、その影響を今後も痛感していくことになるだろう。ただし、今の時点で重要なのは現在あるF-22の活用だ。旧型ブロック20各機の性能改修で完全な戦闘可能機体にすれば敵に大きなメッセージとなる。すべてはF-22の性能に行きつく。数字を最適化しよう。今日明日の安全保障面の課題から現状を下回る機数では許されない。■

この記事は以下を再構成したものです。

The F-22 imperative

Commentary

By: David A. Deptula and Douglas Birkey, Mitchell Institute 

David Deptula is a retired U.S. Air Force lieutenant general with more than 3,000 flying hours. He planned the Desert Storm air campaign, orchestrated air operations over Iraq and Afghanistan, and is now dean of the Mitchell Institute for Aerospace Power Studies. Douglas Birkey is the executive director of the Mitchell Institute, where he researches issues relating to the future of aerospace and national security.