- UKRAINIAN MINISTRY OF DEFENSE
米空軍はB-1Bボーンズ編隊が黒海でAGM-158C長距離対艦ミサイルLRASMの発射訓練をしたと発表。B-1は供用期間の終わりが近づいてきたが、特に太平洋で水上艦攻撃への投入が期待されている。今回の訓練でヨーロッパでも緊急事態対応に同機が有益な存在になると示した格好で、黒海ではロシア海軍の存在が厄介になっている中、クレムリンにメッセージを送ったと言える。
第28爆撃航空団所属のB-1B2機はエルスワース空軍基地(サウスダコタ)を離陸し、長距離爆撃任務部隊ミッションを2020年5月29日実施し、NATO加盟国他ヨーロッパ協力国所属の各種機材と訓練を展開した。ウクライナはSu-27フランカー、MiG-29フルクラム戦闘機部隊を派遣し、トルコのKC-135Rから空中給油を受けた。ともに米空軍のボーン部隊に初の実施となった。在欧州米空軍(USAFE)は6月1日に対艦攻撃訓練を発表したが、どちらの機体がLRASMを搭載していたのかは明示していない。
空軍はアンダーセン空軍基地(グアム)での常時爆撃機プレゼンスを2020年4月に中止し、16年続いた一回六ヶ月のB-1B、B-52のアンダーセン基地配備に終止符を打った。かわってダイナミック戦力配備方針を打ち出し、敵の予測を超えた予告なし短期間配備で敵の作戦立案を危うくする。
B-1Bが注目されているのは、外部パイロンも活用し搭載量を増やす構想があるためだ。同時に爆撃機が再び注目されており、中でもLRASM搭載のボーンズでの海上作戦支援に期待が集まっている。
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B-1B爆撃機2機にウクライナ空軍のSu-27フランカー前方とMiG-29フルクラム後方が随行し、黒海上空を飛行した。2020年5月29日。
「LRASMが外洋、沿海双方で米海軍の作戦アクセス維持に重要な役割を果たすのは長距離でも標的捕捉能力があるから」とUSAFEの603航空作戦センター・爆撃機任務部隊ミッション立案責任者ティモシー・アルブレクト中佐が5月29日の黒海フライトについて語っている。「海上脅威が増加し、接近阻止領域拒否をめざす装備品が出現しているが、ステルス対艦巡航ミサイルで攻撃機はリスクを減らし敵防空体制に侵入しこれを制圧できる」
B-1BでAGM-158Cの搭載が2018年12月に可能となった。LRASMはAGM-158共用対艦スタンドオフミサイル(JASSM)ファミリーから生まれた。今年4月に空軍はグアムでB-1BにJASSM実弾を搭載する作業を写真公開し、中国に明白なシグナルを送ったばかりだ。
対艦ミサイル搭載の爆撃機編隊が飛行したと空軍がわざわざ発表したのはロシアの黒海艦隊へもメッセージを送るためだろう。黒海は有事に対艦ミサイルが飛び交う戦場になる。
B-1Bの黒海への派遣、ウクライナ機との訓練は明白なシグナルを送る。2014年にロシアはウクライナのクリミア半島部分を不法占拠し、海軍基地を確保し、さらにウクライナ東部のドンバス地区の分離派を公然と支援しはじめた。クリミアでのロシア軍プレゼンスは増加し、戦闘機材、長距離地対空ミサイル、対艦ミサイル部隊の増強が目立っている。5月29日のミッションでもロシアのフランカー編隊が同地区からボーンズを迎撃してきた。
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ロシア参謀本部の主作戦局長セルゲイ・ルゾコイ上級大将は6月1日報道陣向け説明で5月29日のB-1B爆撃機編隊の動向を解説した。地図ではB-1Bの飛行経路とロシア長距離ミサイル部隊の位置も示されていた。
NATO加盟国ルーマニア、ブルガリアも5月29日の爆撃機任務部隊ミッションに自国機材を派遣したことから、空中発射対艦ミサイル兵器が重要な存在だとわかる。B-1B各機がJASSM24発を搭載でき、LRASMも同様と思われる。ロシア黒海艦隊は水上艦艇50隻程度、潜水艦5-6隻が配備されるに過ぎない。ボーンズ数機で各艦艇すべてを始末できる。
USAF
ルーマニアのF-16Cヴァイパーが黒海地区上空をB-1B編隊と飛んだ。5月29日。
遠隔地から飛来するB-1Bがスタンドオフ対艦攻撃をロシアの高密度統合防空バブルの外から行えば大きな意義がある。米本土から飛行し、作戦を実行できる能力があればヨーロッパ内の各基地への依存度が減る。各基地も攻撃の前に脆弱性を露呈するはずだからだ。
LRASMは自律航行能力があり、GPS利用の誘導システムと双方向データリンクが妨害された場合への対処を講じている。またステルス性を活かし敵防空体制をくぐり抜ける。最終段階で赤外線画像シーカーを稼働させる。これも電子戦妨害措置の影響を受けない。
活発な動きを示す米爆撃機にロシアが警戒心を示すのは当然と言える。6月1日の説明会でもロシア国防省は米空軍力の動き、NATO演習を非難し、各国が5月にバレンツ海で行った対水上艦攻撃演習を挑発行為とまで述べた。「冷戦終結後で初、かつドイツ戦勝75周年の前夜にNATO海軍部隊がバレンツ海で演習した」とルゾコイ上級大将は注意喚起した。「演習ではロシア領海内の標的の攻撃のほか、ロシア弾道ミサイルの迎撃も対象にしていた。こちらから見れば、挑発行為でバレンツ海への米艦艇進入も直前まで通達はなかった」
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5月のバレンツ海でのNATO演習についてルゾコイ上級大将が巨大な地図を背景に説明し、NATO及びロシアの艦船航空機の動きを示した。
ルゾコイ上級大将は5月29日のB-1B黒海上空飛行もとりあげ、ロシア国境線周辺部ヨーロッパ、太平洋での米爆撃機の活動がここ数ヶ月活発になっていると指摘。5月21日にはオホーツク海上空に米爆撃機一機が侵入する前例のない事態もあり、三方向がロシア領のため米軍機は同地区での飛行は避けていた。
米空軍は新しい形でB-1Bや爆撃機任務部隊ミッションによる戦闘航空投射を太平洋地区で実施してきたが、ヨーロッパでもロシアを狙い同様の活動規模を拡大したと言える。■
この記事は以下を再構成したものです。
Air Force Reveals B-1Bs Were Practicing Decapitating Russia's Black Sea Fleet Last Week
Russia has decried that mission, as well as other American and NATO exercises around its borders in recent months, as provocative.
BY JOSEPH TREVITHICKJUNE 1, 2020
Contact the author: joe@thedrive.com
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