スキップしてメイン コンテンツに移動

大型ステルス駆逐艦055型の第一線配備が近づく

055型誘導ミサイル駆逐艦初号艦の就役式典時の様子。山東省青島にて。 Photo: Xinhua
国人民解放軍海軍(PLAN)が新型ステルス重武装の055型駆逐艦の供用開始を準備中で、空母や揚陸艦を外海で支援する狙いがうかがえる。
中国国内報道では1号艦は南昌と命名され、対艦ミサイル、対空ミサイル、対潜ミサイル、対地ミサイルを運用するとある。中国は現在2隻ある空母の護衛に新型駆逐艦を投入する意図があるのが明らかだ。
同艦は今年1月に就役しており、今回初の外洋訓練を終えた。興味深いのは同艦にはステルス性能を追求した形状の艦体艦首の一体化、なめらかな外形、大型マストの欠如、甲板上の兵装類を最小にしている特徴が見られる。米海軍のステルス艦USSズムウォルトと似た存在だ。南昌の主砲や艦橋はUSSズムウォルトを思わせるものがあり、直線基調だが内側に傾斜をつけ、艦体と艦橋はつながっている。指揮統制用の窓は小型化されており、USSズムウォルト同様にレーダーパネルが側方につく。艦橋を中央部に配置し、後方部を一体化したのは重心を調整し、荒天時に転覆を防ぐ狙いもあるのだろう。
同艦のステルス性能推定については 2018年にThe Diplomat誌が解説しており、「艦体はステルス性のため艦首を一体化」し、投錨装備は格納式になっている。艦橋の形状はレーダー特性を減らす意図のためであり、兵装も角度をつけず、貫通する形状にもなっていない。マスト本数も最小限になっている。
ただし、USSズムウォルトにはVLS(垂直発射装置)を分散配置しているが、Diplomat誌では055型駆逐艦では「64セルの集中配備型VLS」になっているという。VLSを集中して命中弾を受けると破滅的な損害となりそうだが、VLSを周囲に分散させれば一部が損傷を受けたり、攻撃が命中しても残りの稼働が可能となる。また集中配備型VLSはミサイル同時発射で熱発生が大きくなる欠点もある。
また南昌の艦後部はUSSズムウォルトよりごちゃごちゃしている。南昌にはヘリコプター発着用のスペースは確保されておらず、かわりに小型アンテナ各種、兵装、センサー類が乗っている。USSズムウォルトよりステルス性は劣るのではないか。ただし、近接交戦時に火力は大きい。Diplomat記事ではH/PJ-11 30mm近接兵装システムが搭載されているが、USSズムウォルトの甲板上には近接防御用装備はない。CIWSは最終防御手段として重要な存在で無人機や小型舟艇による襲撃を近接距離で撃破する意義がある。
後部のアンテナ多数は同艦の電磁特性を減らす意味もあるのだろう。送信の方向性を限定する効果があるからだ。南昌では甲板上に主砲が搭載されているが、USSズムウォルトの砲塔ほどの形状へのこだわりは見られない。こうしてみると、南昌はUSSズムウォルトのステルスとアーレイ・バーク級駆逐艦の兵装を組み合わせたように見える。
中国海軍は現在360隻を運用中で、米海軍の297隻を凌駕していると最新の議会調査報告が指摘。2020年5月度の議会調査局報告書は「中国海軍の近代化の現状、米海軍戦力への意味」とあり、揚陸艦船、潜水艦、空母近代化を特に取り上げている。報告書ではPLANは2025年までに400隻規模となり、空母は3ないし4隻に増えるとある。■

この記事は以下を再構成したものです。

China to Deploy New Heavily-Armed, Stealthy Destroyer

China to Deploy New Heavily-Armed, Stealthy Destroyer

By Kris Osborn - Warrior Maven Warrior Maven

2020年6月5日

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM