米海軍の対潜技術レベルは冷戦終結後に急低下している。
フランスの原子力攻撃型潜水艦がサフィールはUSSセオドア・ローズベルト空母打撃群の防御網を突破し、魚雷発射シミュレーションに成功したとフランス海軍が伝えたが、内容はその後削除されている。
2015年3月4日、フランス海軍がサフィール(サファイヤの意味)が空母ロウズベルトの追尾、攻撃シミュレーションに成功したとブログで伝えた。シミュレーションとはいえ原子力空母の撃沈は初めてであり、隻数不明だが護衛部隊も同時に撃沈されている。
フランス海軍の新鋭艦サフィールは配備前にロウズベルト空母打撃群と演習中だった。空母の護衛にタイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦、アーレイ・バーク級駆逐艦が数隻とロサンジェルス級原子力攻撃型潜水艦一隻があたっていた。
USNI Newsによれば、空母打撃群(CSG)12はノーフォーク海軍基地、メイポート海軍基地から3月5日に出港し、中東の配備先に移動中だった。CSG12の護衛部隊は巡洋艦USSノーマンディ、駆逐艦ウィンストン・S・チャーチル、フォレスト・シャーマン、ファラガットで構成。
配備前訓練場所はフロリダ沖合で、二段階構成とブログは説明している。第一段階でサフィールは米海軍部隊に加わり、敵潜水艦を探知しデータを対潜部隊に送った。「敵潜水艦」とはCSG 12に配備されていたロサンジェルス級原子力潜水艦だろう。
第二段階でサフィールは役目を変え、敵軍になった。サフィールはロウズベルトを突き止め撃沈可能な位置につくのが目標だった。演習シナリオが撃ち合いの様相を示すとサフィールに攻撃許可が下り、同艦はロウズベルトを「撃沈」し、護衛部隊の「大部分」も撃破したことになっている。
フランス海軍によるブログ投稿は3月4日のことでツイッターに掲載されたが即座に削除された。防衛関係サイト数点が投稿に気づき、保存した。ロシアのRTは「重大な脆弱性」のためサフィールはロウズベルト打撃群を突破できたと伝えた。ただしこれは完全な推測で、フランス海軍も脆弱性に言及していない。
とはいえ、本件は実際に発生していたようだ。ブログ削除のもっともらしい説明は単純に米側にバツの悪い内容だったからだろう。
サフィールはルビ級原子力攻撃型潜水艦6隻の二番艦で、同級はフランス初の原子力攻撃型潜水艦だ。1980年代初頭までフランスの攻撃型潜水艦は通常型だった。潜航時排水量が2,630トン、全長241フィートというルビ級は原子力潜水艦として世界最小だろう。乗員はわずか70名でK48加圧水型反応炉で水中速度25ノットを実現した。艦首魚雷発射管は4門でF17 Mod 2魚雷及びMM39エクゾセ対艦ミサイルを発射する。
ここまで小型の潜水艦で50倍の大きさの空母を撃沈できただろうか。ロウズベルト護衛部隊は対潜戦センサーを全て稼働していたのだろうか。作動に何らかの制約を加えていたのだろうか、あるいは演習のため使用不能扱いと想定の装備があったのだろうか。
二番目に、「撃沈」と引用符を振ったのには理由がある。フランスのF17魚雷は551ポンドのHBX-3高性能弾頭がつく。同時発射しても最大4本にしかならないのは同艦の発射管が4門のためだ。551ポンド魚雷一発ではタイコンデロガもバーク級も沈めるのは無理だが、損傷を与えるのは確実だろう。ニミッツ級スーパー空母の撃沈は絶対に無理だ。また空母を守る4隻とロウズベルトが搭載する対潜ヘリコプターが周囲を固める中でサフィールは魚雷4本の発射が精一杯ですぐ撤退を余儀なくされたはずだ。
サフィールがロウズベルトおよび援護艦3隻を攻撃対象に選択していたとすれば、4隻が損傷を受けた可能性はあるが、沈んだのは皆無だっただろう。護衛部隊が行動不能に陥った可能性はある。ロウズベルトに命中したのが魚雷一発のみなら、同艦は作戦を継続できていたはずだ。
米海軍の対潜戦技量は冷戦終結後に急低下し、とくに9/11後にその傾向が強い。地上戦を重視する方向になり、海軍は熱情も予算も別に向けてしまった。中国海軍が増強を続け、ロシア海軍も地中海やバルト海で横暴さを増す中、ASWのレベルアップは当然の優先事項だ。セオドア・ロウズベルトの「喪失」は海軍の誇りへ打撃となるが、現実に目を覚ますのが大切だ。次回、外国潜水艦が米海軍空母にまとわりつけば、空母に乗る6千名近くにとって生死を分ける話になる。■
Fact: A French Nuclear Submarine 'Sunk' an American Aircraft Carrier
June 25, 2020 Topic: Security Blog Brand: The Reboot Tags: FranceUnited StatesAircraft CarrierMilitaryTechnologyWorldNavyU.S. NavyFrench Navy
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
This article first appeared in 2016 and is reprinted here due to reader interest.
Image: Reuters
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