航空自衛隊がPAC-3対空迎撃ミサイル装備を米横田基地に展開し能力を実証した。 Aug. 29, 2017. (Eugene Hoshiko/AP)
日本政府がイージス・アショア弾道ミサイル防衛導入を取りやめる決定をし日米同盟へ懸念が生まれている。ミサイル防衛推進派の反対意見が出てくるのは確実で、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃対処では実効性がイージス駆逐艦部隊より高いと主張してくるはずだ。
その主張は部分的に正しい。というのはイージス・アショア設置費用が当初予定より倍増しているとはいえ各18億ドルと、単価16億ドルでイージス・アショアのかわりに導入する3隻ないし4隻より安くなるからだ。
日本の防衛相は取りやめの理由の第一に費用をあげたがもっと大きな理由に近隣住民の懸念がありミサイルの一部が落下する、高出力レーダーが健康に不安を与えるというものがあった。
こうした懸念の一部は根拠が怪しいが、安倍政権は中期防衛計画の実現のためイージス・アショア予算を「総合的対空対ミサイル防衛能力」の整備に流用し日本が直面する全方位脅威に対応するべきだ。
イージス・アショアがあれば日本を広範囲で弾道ミサイルから防衛できる。ただし、施設内のミサイル数で性能が限定され、配置場所が固定され攻撃を受ける可能性がある。北朝鮮は弾道ミサイルを相当数配備しており、おとりやその他補助手段も動員しイージス・アショアのミサイル24本に飽和攻撃を試みるはずだ。敵のミサイルに防衛側が迎撃ミサイル複数を発射すると見越しているためだ。中国やロシアはさらに大規模な攻撃をしてくるはずで、イージス・アショア施設自体も標的となる。
防衛省はイージス・アショア代替策として以下を検討中。SM-3ではブースターを洋上に落下させるプログラム作成、レーダー設置場所を海岸線近くに移動し、近隣住民への影響を抑える。またイージス・アショアそのものを艦船やはしけに搭載する案も検討している。こうした動きは社会の懸念に答えるものだが、費用は現行より高くなりそうだ。
弾道ミサイル防衛が不調に終わる内容に予算を増やすより、防衛省は総合的な防衛体制の防空、ミサイル防衛の実現を目指すべきだ。特に中国等との激しい競争に日本が直面していることを考えると、日本は抑止効果の観点からも早期警戒、標的捕捉の能力を引き上げ、巡航ミサイル・弾道ミサイルの双方に対応し、意思決定を迅速化し、防衛網をかいくぐるミサイルがあっても靭性を発揮すべきだろう。
では日本の防空・ミサイル防衛はどうあるべきか。以下要素が5つあり、一部は既に実現しており、実行に必要な予算を下げられる。イージス・アショアに行くはずだった予算で以下すべてが実現できる。.
- 移動式、固定式双方のセンサー(パッシブ、アクティブ)で分散型ネットワークを構築する。海自イージス駆逐艦もこの一部とし、米衛星群、AN/TPY-2レーダーに加え現在計画中の長時間飛行可能無人機に赤外線センサーを搭載し弾道ミサイルや極超音速ミサイルの発射を早い段階で探知する
- 迎撃手段は短中距離ミサイル対応を重視すべきだ。こうしたミサイルは小型で安価で性能が高い。対応は現行のSM-3、今後登場するSM-6を海上運用し、広域防衛させ敵機も迎撃させる。ペイトリオット性能向上型-3迎撃ミサイルは重要地区・基地施設の防衛にあて、 Rolling Airframe Missile (RAM)は局地防衛に投入する。さらに発射直後の北朝鮮ミサイルには今後登場するブースト方式空対空迎撃ミサイルで対応する。
- 高出力マイクロ波、電子戦ジャマー、おとりの他重要施設周辺にレーザーを配備すれば無限の発射回数が実現し、既存の短距離迎撃手段や局地防衛手段を補完できる。
- 指揮命令系統が攻撃を受けてもすぐ回復できるようにし、米軍ともデータを融合し、脅威に対し経済的な迎撃手段を選択することで防衛の効率を高める。
- 受動防衛措置として防衛部隊のカモフラージュ、隠蔽、偽装の他、一部施設を強化、再整備し、敵の標的捕捉能力を劣化させつつ防衛部隊の継戦能力を確保すること
防衛能力の補完や代替策として攻撃作戦が話題になる事が多い。しかし、日本の攻撃能力では北朝鮮への先制攻撃はありえず、中国やロシアのミサイル発射装置や指揮命令所を実質的に使用不能にできない。
日本政府はイージス・アショア凍結で生まれた好機をとらえ総合的なアプローチにより日本を敵機、ミサイルから守るべく、各種防衛手段を組み合わせ、さらに指揮命令機能を引き上げ、弾力性を加え敵攻撃を抑止することが可能だ。これができないままだと日本の安全保障体制向上につながらないまま弾道ミサイル迎撃手段の夢を追い求めることになりかねない。■
この記事は以下を再構成したものです。
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