2022年1月13日木曜日

主張 ウクライナ問題をロシアの視点で見るとこうなる。NATO拡大がロシアの最大の懸念だ。

 

ウクライナをめぐりホワイトハウスが協議しているが、この問題はロシア側の視点と歴史から見る必要があると筆者はモスクワで何度も聞かされた。

立モスクワ国際関係研究所の招へいで2021年12月13日の週にモスクワを訪れ、米国が体験したヴィエトナム、イラク、アフガニスタンでの各戦役について、さらにジョー・バイデン政権の国防予算についてモスクワ軍備管理会議及びロシア政治学会で講演した。訪問のタイミングで米ロ関係が怪しくなっていた。ロシアがウクライナ国境地帯に数万名規模の部隊を集結させ、状況はロシアがクリミアを併合した2014年に似ていた。また12月はソ連邦崩壊30周年とも重なった。このため、各会合でウクライナ情勢が公式非公式問わず重くのしかかっていたのは当然といえよう。

 

筆者のプレゼンテーションはヴィエトナム、イラク、アフガニスタンで米国が成功を収められなかった理由に触れ、米軍の優位性があっても目指す目標に世論の支持を勝ち取れなかったと説明し、国内で支持を得られなかったことが後を引き、結果として大きな財務並びに人命の負担となった点に触れた。

 

ただしモスクワ滞在中にわかったのは2014年のようにウクライナ軍がロシア軍に敗退する可能性が低いことだ。ウクライナは緒戦で敗退しても戦闘意欲を失うことはない。この点についてニューヨークタイムズ報道ではウクライナイが民間人に訓練を開始しており、装備品を提供しロシア侵攻の場合に抵抗運動を開始する構えとある。ロシアの視点で見るとウクライナ侵攻が米国が体験したヴィエトナム、イラク、アフガニスタンと同様の状況になるのを懸念しているようだ。

 

モスクワで話を聞くとロシア国民でウクライナ侵攻を支持する声は少数派だとわかった。特に結果が出ないまま長期化するのを危惧している。

 

筆者は別の機会にロシア側専門家の反対意見にも触れた。ロシア側は米国が中国に焦点を当てすぎており、東欧でのロシア軍事活動のエスカレーションに対応する意欲も体制もできていないのではないかとみていた。専門家の一人がこう言っていた。米国の安全保障戦略は三つのCに振り回されている。チャイナ、コロナウィルス、気候変動のCだという。ただ筆者は米国の安全保障でこう説明した。民主党とバイデン政権は中国を重視しつつもその他の脅威を放置していない。事実、バイデン政権の国防支出はインフレを考慮するとトランプ政権を上回っている。またレーガン政権時の国防整備の最高水準を超えそうで、中国の3倍、ロシアの10倍以上の国防支出となる。

 

幸いにも筆者の訪ロ中にロシアはウクライナ侵攻に踏み切らなかった。プーチン=バイデンがウクライナをめぐり50分にわたる意見交換を行った。ロシア、米国は1月に直接会談しさらにこの問題を協議することで合意した。

 

この問題については歴史の面から、並びにロシアの視点でとらえる必要があると訪ロで痛感した。

 

まず、ロシアでは旧ソ連指導部がドイツ再統一を承認した際に米国からNATOに東欧各国の加盟はないと保証を受けたと主張している。実際に米政府関係者はNATOがロシア近くまで拡大することはないと確約しているようだ。旧ソ連最後の米大使だったジャック・マトロックはミハイル・ゴルバチョフに文書と口頭でドイツが再統一後にNATOに残ればNATOは東に延びることはないと確約していた。当時安全保障補佐官だったロバート・ゲイツ(後に国防長官になった)はNATOの東方拡大についてゴルバチョフ等への説明と違うと批判していた。

 

さらに旧ソ連指導部に確約したのは米政府関係者だけではなかった。ドイツ、フランス、英国の指導層も同じだった。この視点で支えとなるのが封じ込め政策の父ジョージ・ケナン含むかつて政府に奉職した専門家集団だ。ケナンは1997年に「NATO拡大は冷戦時の米国政策で決定的な過ちとなる。この決断はロシア外交を望ましくない方向へ進ませる結果となる」と批判していた。同じ意見は各界50名の専門家から出ており、ポール・ニッツェ、ジャック・マトロックはビル・クリントン大統領に公開書簡を送り、NATO拡大は歴史的な愚策と指摘していた。

 

にもかかわらず1999年、クリントンはNATOに新規加盟三か国を加えた。旧ワルシャワ条約機構のポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーだ。2004年にはさらに7カ国が加わった。うち三か国はバルト諸国で旧ソ連の一部だった。2008年にジョージ・W・ブッシュ大統領がジョージア、ウクライナの加盟を持ち出し、両国も旧ソ連の一部でロシアと国境でつながっている。プーチンはこれに対しジョージアを2008年、2014年と続けて侵攻し、クリミアをウクライナから奪いロシアに併合する反応を示した。

 

 

二番目に、ロシア側から聞かされたのはウクライナ=ロシア関係の理解が大事だという点だ。1922年から冷戦終結に至るまでウクライナはソ連邦の伊津部であった。実際にウクライナはソ連邦立上げの原メンバーでもある。当時はウクライナソビエト社会主義共和国と呼称され、ソ連邦共産党が統治していたい。公式言語はロシア語で、旧ソ連の指導者レオニド・ブレジネフ、ニキータ・フルシチョフの妻の生誕地でもある。

 

三番目に、プーチンが率いる今日のロシアはソ連時代より経済面で好転していることに留意する必要がある。訪ロ中にもモスクワが現在のパリに似てきた、80年代90年代に訪問した当時よりはるかに良好になっているのを実感した。

 

四番目に、米国としてはウクライナ、ジョージア両国のNATO加盟を阻止する立場にないが、両国加盟には28加盟国の賛同が必要で現時点で承認を得られる状態にない。バイデンは少なくともここ数年で実現する状況ではないとロシアに知らせるべきだ。

 

五番目に、ロシアは米国から大国にふさわしい取り扱いを受けていないと感じているようだ。ロシア側政治学者はフランシス・フクヤマがソ連崩壊で冷戦が終わったと宣言したのを冷笑し、逆に最近亡くなったロシア学者スティーブン・コーヘンがロシアを再興させたプーチンを評価しているのを引用していた。

 

バイデン政権にはロシアとこうした視点を忘れず、二国間協議に臨んでもらいたい。ヨーロッパの運命がかかっている。■

 

How Russia Views the Ukraine Crisis | The National Interest

by Lawrence J. Korb 

January 7, 2022  Topic: Russia  Region: Europe  

 

筆者ローレンス・コーブはアメリカ進歩研究所の主任研究員。レーガン政権で国防次官補を務めた。

 

Image: Reuters.


2022年1月12日水曜日

U-2に対艦ミサイル搭載し、米海軍へ売込みを図ったロッキード。実現すれば当時としては画期的な攻撃手段になっていたはずだが....

 

                実現しなかった構想シリーズ

戦末期、ロッキードから高高度飛行可能なU-2スパイ機に長距離対艦ミサイルを搭載する提案が出た。U-2の航空母艦運用する案と加え、実現していれば米海軍の対艦攻撃の有効範囲がはるかに伸びていただろう。


U-2の供用開始は1955年で、米国の偵察能力を飛躍的に伸ばした。ケリー・ジョンソンの伝説的なスカンクワークスでの開発は一年未満で完了し、U-2は高度70千フィート超での飛行が可能となり、当時のソ連防空戦闘機やミサイルの性能では対応できなかった。


Lockheed Martin


だがU-2を特別な機体にした要素は別にあった。空中給油が始まったばかりの当時にU-2原型は無休油で3千マイル飛行が可能で敵領土上空での極秘作戦を展開できた。搭載した最初のカメラは高度60千フィートで解像度2.5フィートだったが、その後改良が進み、米軍でも最高性能の光学センサー、初の見通し線データリンクを搭載している。


ハイテク機器を搭載するU-2でミサイルを実際に搭載したことはない。だがロッキードはU-2売り込みを目指し、この点に踏み込んだのだった。


ロッキードはUI-2販売増加を狙っていた


海外国の航空施設に依存しなくてもよくなるため、U-2を米海軍空母で運用する構想がCIAにあったことは承知の通りだ。この試みは各種あったがおおむね成功している。



1963年8月、ロッキードのテストパイロット、ボブ・シューマッハーがUSSキティホークからU-2を初めて発艦させ、その後陸上基地に着陸した。翌年2月にはシューマッハーは改装型U-2GをUSSレインジャーから発艦させ、着艦に成功した。同年末にはU-2は実際に米空母から発進しフランスの核実験を偵察した。


CIAはそのまま続けるはずだったが、最新のCIA仕様U-2Rを海洋捜索センサー満載のEP-Xに発展させる米海軍の構想はとん挫した。テストで成功を重ねたが長大な主翼を空母格納庫に収納する問題や極秘機材を空母艦上で保守管理する負担を考えると同機から得られる偵察内容に見合わないと判断したのだった。


これまで報じられていなかったが当時のロッキードは政府に同型機をたくさん購入させようと理由をつくろうとしていた。同社はU-2を1955年から1989年にかけ104機製造したが、情報収集機能以外でしかるべき理由があれば販売を伸ばせると見ていた。


1970年代末の同社は国防産業として過去の名声を失い、財務上のスキャンダルが続き、ビジネス判断を読み間違え、容赦ない報道陣は同社の存続を危ういと踏んでいた。1971年には2億ドルの赤字(2021年のドル価値で13億ドルに相当)を計上し、コスト超過と契約違反でペンタゴンと争っていた。


同年にロッキードへエンジンをもっぱら供給し栄太ロールスロイス が破産を宣告し、操業を続けるべく同社は米政府に250百万ドルの支援を持ち掛けた。70年代末にはロッキードの企業価値は低下し、米防衛産業では第六位にまで落ちてしまい、ジェネラルダイナミクス(F-16)やマクダネル・ダグラス(F-15)より下になってしまう。ロッキードには何としても朗報が必要で、当時開発中の案件もあったが、U-2は性能で折り紙付きで生産ラインも稼働中だった。また同機の操縦は極めて難しかったものの、同機の性能をさらに伸ばす方法を模索していた。


ゲーリー・パウワーズ操縦のU-2がソ連上空で1960年に撃墜されたことで同機の生命が立たれたと考えていた者もあったが、もともと同機はソ連防空体制の限界以上の高度での運用を想定しており、航続距離を伸ばし長時間運用を可能とした偵察機とあれば無視するわけにいかなくなった。たとえ高速かつ高高度飛行性能を有するSR-71が既に存在しており、衛星の性能も向上していたとしても。


ロッキードが米海軍に同機を導入するのに成功していれば、同社にはのどから手が出るほど欲しい収益が実現していただろう。だがそのためにはドラゴンレイディと呼ばれた同機の威力をさらに伸ばす仕掛けが必要だった。


U-2にミサイルを搭載し対艦攻撃に使う構想だった



ロッキードはU-2を偵察装備満載した海洋捜索機としては海軍に販売できなかったが、同社には別の手もあった。


U-2を設計したケリー・ジョンソンはまず空軍にCL-282として同機を提案した。これがのちにU-2となったのだが、戦略空軍(SAC)の伝説の司令官にして第二次大戦時の太平洋で戦略爆撃方式を編み出したカーティス・ルメイに一蹴されてしまった。ルメイはロッキード社訪問団に「車輪も銃も搭載しない」同機には関心がないと冷淡にあしらわれてしまった。


ロッキードはこの時の教訓を胸におさめたものの、U-2に着陸車輪や銃を搭載せず、かわりにミサイル搭載を想定したのだった。


315B型との名称がついたU-2の派生型に二人目の乗員が乗り、レーダー迎撃士官として搭乗するのであり、米海軍のF-14トムキャットなど戦闘機の後部座席に乗る士官と同様だった。


二名運用とすることで、乗員の認知的負荷が効果的に分散される。つまり、パイロットは操縦に集中し、後部座席士官は通信、敵味方の位置把握、航法にもっぱら集中できる。さらに315B型U-2の場合、ウェポンシステムや防御手段の操作に集中できる。


トップガンのグースが高度で30千フィート高いところにいる様子を想像できるだろうか。


U-2 パイロット訓練はビール空軍基地で複座型TU-2Sで行う。 (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Bobby Cummings/Released)


この315B仕様U-2には当時新型で試験中のAGM-53コンドル長距離空対地ミサイルを搭載し敵艦船を最大60マイル先から攻撃する構想だった。コンドルミサイルは電子光学装置(つまりテレビ)がデータリンクで機体に連絡し後席搭乗員が自分で標的に誘導する想定だった。ミサイルはこの形で標的にロックされると搭乗員は別の標的を探し攻撃する構想だった。


同ミサイルは全長14フィート、直径17インチで4フィート5インチの翼幅だった。ロケットダインMk70固体燃料ロケットを推進力とし、排気は小型ノズル二本から出す設計で、後部にはデータリンクが大部分を占めていた。同ミサイルの重量は2,100ポンドになり、ここに630ポンド弾頭も含まれていた。最大速力マッハ2.9で60マイルを一分半で飛翔する性能だった。大型艦の操艦にかかる時間とコンドルのデータリンクに頼る標的捕捉装備を考えれば、敵艦船攻撃手段として優れた選択だった。


さらにコンドルは通常弾薬と核兵器を併用する想定だった。つまり、U-2に核攻撃機になる可能性があったということで、315B仕様とコンドルがともに技術的に成熟するのが条件だった。残念ながらコンドルのメーカー、ロックウェル、ロッキードともに生産に移すことはなかった。


AGM-53コンドルの開発には問題がつきまとい、推進系の信頼性から実用に耐えるデータリンクの実現が予算超過になったことまで多くの難関が生まれた。さらに悪いことに比較的小型の弾頭をつけた同ミサイルの価格がとんでもない金額になり、合理性が失われた。当初は250発調達を1976年までに完了する想定だったが結局開発中止となった。


同ミサイルと同様に315B仕様のU-2も米海軍で実現することはなかった。数年後にロッキードは軍事航空分野で再び頭角を現した。世界初のステルス機F-117で、同機の試験飛行が始まったからだ。


U-2スパイ機はその後も米空軍で重要な役割を続け21世紀の今日に至っている。現在も30機超のU-2が各種任務をこなし、むしろ用途は拡大している。一部機材は米空軍最高性能を誇る戦闘機F-22ラプターとF-35共用打撃戦闘機間の安全な交信の中継機になっている。この各機種がすべてロッキードのスカンクワークスの手によるもので、U-2同様にロッキードは長年にわたり安定した事業展開を続けている。■


Lockheed pitched arming the U-2 with anti-ship missiles - Sandboxx

LOCKHEED PITCHED ARMING THE U-2 WITH ANTI-SHIP MISSILES

Alex Hollings | January 3, 2022

 

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


北朝鮮ミサイル発射後にFAAが米西部で民間機に地上待機を命じていた。一方、日本はEEZ外に着弾したようだ、被害は発生していないとの発表のみ。危機管理意識の差が大きく出た。

 




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MICHAEL H—GETTY IMAGES

 

 

西海岸、ハワイを中心に民間機に地上待機を命じた奇妙で説明のないままの措置は1月10日の北朝鮮弾道ミサイル発射直後だった。

 

邦航空局が昨日2:30 PM PSTごろ米国西部からハワイにかけて全航空機に地上待機を命じた件についてやっと公式発表が出てきた。措置があったと確認できたものの、未回答の点が多く、特に最重要な点、つまりそもそもこの決定を下した理由とは何だったのかが不明のままだ。

 

 

連邦航空局(FAA)は命令発出後20時間以上の本日、声明を発表した。The War ZoneはFAAに質問を送っていたが、いまだ回答がない。

 

FAA声明文で今回の事態に関する部分は以下の通りだ。

 

安全策としてFAAは一時的に西海岸沿いの一部空港で出発便を止めたた。月曜日夜のことだ。15分後に完全運航を再開した。FAAは予防安全策を定期的に行っている。事態が落ち着き次第今回の措置を検分する。

 

この声明文に興味をそそられる点がある。まず、航空管制記録は公開されており、地上待機となったパイロットとの交信でこの措置は西海岸限定ではなかったことがわかる。ハワイ州ホノルルでも同様の指示が出ていた。

 

アリゾナ州ユマに向け飛行中だったパイロットがThe War Zoneに語ってくれた。ユマは西海岸から150マイル内陸部にある。緊急通報は「全国規模の地上待機」とされていた。ここからこの措置は出発便のみが対象ではなかったのがわかる。その他の航空管制音声記録では直ちに着陸を命じられた機があったことがわかる。

 

FAA声明には「安全予防策」は何のためだったのか言及がない。バーバンク(カリフォーニア州)の鉱区管制官が音声記録で不特定の「国家安全脅威」に言及しているのがわかる。

 

地上待機命令は北朝鮮ミサイル発射と関連があったとの報道が出ている。FAA指示が出た時間とほぼ一致する。確かに全く無関係とも言い切れない。ロシアのミサイル演習でドイツの米空軍中心基地のラムステイン航空基地に向かう弾道ミサイルが2020年に探知されたことがある。こうしたミサイルが米本土はもちろんハワイや太平洋の米領に向かう可能性はある。

 

そこで米戦略軍(STRATCOM)に本日早朝に照会したところ、今回のミサイル発射が米国あるいは各地の米領土に対し脅威と認定されたのかについて広報係は肯定も否定もせず、FAAに聞いてほしいと回答してきた。米カナダが共同運営する北米防空司令部 (NORAD) からは北朝鮮ミサイルに関し警告は出していないとの回答で、同日にCNNが報じた内容を否定していた。CNNからはNORAD関係者の談として北朝鮮ミサイル発射は米国への脅威ではないと即座に判定されたと伝えている。

 

FAAが対応を迫られる脅威は枚挙にいとまがない。中には本当の脅威もあるが実はそうではないものもある。2021年1月にニューヨーク地区の航空管制官が脅威対象となる無線交信を傍受していたが、信ぴょう性が低いものだったと判明した。「水曜日に連邦議事堂に一機激突させる。ソレイマニの復習だ」とのデジタル音声記録があったといわれ、実際に1月3日に米軍がイランのカセム・ソレイマニ将軍を殺害していた。

 

とはいえ、STRATCOMからFAAにどんな情報が流れたのか不明だし、北朝鮮のミサイル発射試験で何らかの脅威情報が伝えられたのかも不明だ。このため、NORADから警告は出していない、今回のミサイルが脅威対象にはならなかったとの発言がある中で今回の措置が取られたことに興味を覚える。

 

その他の脅威について報道があり、真実かどうかはともかく、FAAの一部がコンピュータハッキングされた、単純な間違いだったとかの説も可能性はあるが、いずれも北朝鮮ミサイル発射と無関係だ。現時点では判断しかねる。

 

FAA声明文の内容が極めて限られたもので、大規模事態特有の情報の不在が感じられる。全体像に触れていないだけでなく、今回の措置とした理由にも触れていない。照会中の各機関から回答が入り、事態が解明されれば当日の状況がすべてわかるのだが。

 

本件については情報を入手次第、続報をお伝えすることとする。■

 

FAA's Statement On Mysterious Air Traffic Halt Leaves More Questions Than Answers

 

BY JOSEPH TREVITHICK JANUARY 11, 2022



2022年1月11日火曜日

2022年1月6日署名された日豪円滑化協定(RAA)の大きな意義について解説する記事を見てください。日本が域内安全保障の維持に大きく舵を切ったとの評価。

 これだけ重要なのに、我が国メディアは小さなニュースとして伝えていたようですね。中国の反応は条件反射的に伝えたようですが。文脈が理解できないのか、普段から関心がないのか。やはり、安全保障を広く解説できる知見を持つ専門家が日本のメディアに必要です。(記者に提供するポストではありません)また今回の記事で談話を伝える日本人が一人も皆無というのはどういうことでしょう。知力の欠如なのでしょうか。ブロークンでも自分の意見を堂々と言える日本人を一人でも多く作らなければなりませんね。さもないと、いいところは全部相手国にもっていかれ、日本は冷や飯を食わされますよ。


 

二国間協定の署名を終えた岸田文雄首相とスコット・モリソン首相 January 6, 2022. REUTERS/Issei Kato/Pool


  • オーストラリアと結んだ円滑化協定は日本にとって特別な意義がある

  • 域内各国と結ぶ協定の「お手本」となり、米国を助ける効果も期待できると観測筋が見ている



ーストラリアと日本が2022年1月6日合意した協定には画期的な意義があり、その他西側諸国がアジア太平洋で積極的なプレゼンスを展開する道を開くとアナリスト陣は見る。一方で日豪両国が防衛活動を強化すれば米国の域内活動の負担を軽減する効果が生まれる。


日豪両国が二国間関係を深化させた。オーストラリア首相スコット・モリソンScott Morrison、日本首相岸田文雄が待望の相互アクセス協定Reciprocal Access AgreementRAA)をヴァーチャルサミット会談において署名し、両国の軍部隊が共同演習や災害救難活動を展開する枠組みを決めた。


交渉は2014年に始まり、2020年11月に大枠合意が完成していた。


今回署名された協定はともに国内批准が必要だが、日本にとっては米国との地位協定締結が60年前にあっただけで実に久しぶりの取り決めとなる。


今回のRAA及び合意事項は安全保障関連問題が対象だが、両首脳はこれと別に経済安全保障の強化も合意している。


署名式ではモリソン首相から150百万オーストラリアドル(107百万米ドル)を投資し日本向けクリーン水素エナジーの製造輸出を行うとの発表もあり、日豪による脱炭素技術のパートナーシップの一環となる。

 

HMASブリスベーンで横浜入港前に日章旗を掲揚する乗組員。November 15, 2021. Royal Australian navy/LSIS Daniel Goodman


RAAは防衛が主眼だが、モリソン首相からはオーストラリアの対日関係は「安全保障問題だけにとどまらない深いものになっている」との発言があった。


「両国で完全な相互運用体制を実現でき、ともに作戦展開が可能となった。単に敵対勢力への対応にとどまらない。インド太平洋における人道救難目的で日本はオーストラリア同様に積極的に動いている」と発言し、アジア太平洋地区での関与でインド洋にも言及した。


「強調したいのは今回の協定が日本にとってこれに類するものがない二国間相互協定となっており、極めて特別な存在になっていること」とモリソン首相は述べ、極めて高い「両国間の信頼」を示していると付け加えている。


確かにRAAは志を友とする域内国を結びつけ、ともに中国の影響力増強に対抗する動きだと理解されているが、RAAには防衛分野以外の意味もあり、他分野での協力関係も育っているとアナリスト陣は指摘する。


「単なる防衛協定ではなく、より広範な合意であり、税制や司法分野まで含んでいることを忘れてはいけないでしょう」とオーストラリア国際問題研究所 the Australian Institute of International Affairで東アジア・日本問題を専門とする専務理事ブライス・ウェイクフィールドBryce Wakefieldだ。


「今回の協定から生まれるのはより広範な協力関係であり、協力内容はさらに広がります。また協力内容がすべて国家安全保障関連ではありません」


 

オーストラリアのショールウォーターベイ演習地で前方観測訓練を行う日豪隊員, May 24, 2019. Australian army/Cpl. Tristan Kennedy


最初の事例としてRAAで法律上のメカニズムが生まれ、日豪両国の軍部隊が相互に入国可能となる。実際に日本の自衛隊部隊がオーストラリアに展開し山火事対策にあたった事例があるとウェイクフィールドは指摘する。だが、同時に英国等その他国が同地域内にプレゼンスを確立仕様とする際に参考となる「お手本」になる。


「域内プレゼンス構築に前向きな国の中でも英国が一番目立つ。域内における法の支配を守ろうとする国が増えれば、それだけ南シナ海に展開する国が増えるし、法の支配をもとにした国際秩序の強化が進む」(ウェイクフィールド)


「実際に何が可能かを知る上でオーストラリアがお手本となり、今回の協定後はオーストラリアが大きく試されそうだ」とウェイクフィールドは付け加えている。


早稲田大学助教ベン・アシオーンBen Ascioneは今回の協定でインド太平洋地区の米軍の負担を他国が肩代わりする効果が生まれるとし、「日本オーストラリア両国の能力強化で米軍の負担が減り、二国間三国間演習が増えるのでは」という。


日本にとっては「ファイブアイズ」情報共有協定への加盟が進む効果も生まれれよう。現在は米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの五か国の協定だが日本は六番目の加盟国になろうとかねてから着目してきたとアシオーンは指摘する。ただし、日本政府は自国の機微情報の保護が甘いことを自覚している。


中国が両国の署名にかみつき、外務省報道官 汪文斌Wang Wenbin は「太平洋は平和の海とするべきであって面倒を起こそうと画策してはいけない」との談話を発表した。


これは米英豪間の安全保障上の取り決めAUKUSに対する反応と近い。


だがばRAAのほうがAUKUSより先に構想が生まれており、長時間をかけて現実になっているとウェイクフィールドが指摘している。「中国が懸念をもって見守るはずだが、域内ほぼすべての国は前向きにとらえるはずだ」


オーストラリア国立大で国際法の教授ドナルド・ロスウェルDonald Rothwellはこの見方に賛同するものの、同時に今回の協定から別の成果が生まれるとし、日本が域内での役割拡大に前向きになっていると指摘している。


「今回が今までと違うのは日本が米国以外の協定に踏み切ったことです」「オーストラリアというよりも日本が大きく舵を切ったのです。日本が域内外関係国との共同防衛に自信をもってしっかりとコースを定めたといえます」(ロスウェル)


 

コープノース演習でテニアン島に展開した自衛隊機を防備するオーストラリア空軍隊員, February 19, 2019. Master Sgt. JT May III


ただし、RAAに関してはオーストラリア軍隊員が重大犯罪を行った場合、日本には死刑があることが一貫して合意形成に立ちふさがり、両国は妥協したと外部筋は見ている。


アシオーンは任務中のオーストラリア軍関係者は死刑の訴追対象とならないものの、勤務時間外での犯罪は死刑が適用されることで両国が合意したと述べている。


「この妥協策で両国は協定を活かせると思いますよ」


ウェイクフィールドは日本政府が「ケースバイケース」で慎重に検討するのではとみている。


「日本の死刑制度はかなり柔軟に運用されている点が重要で、裁判所も政治判断に敏感になっている」という。


「今回の合意で展開するオーストラリア軍隊員が死刑判決を受けることはないといってよい。日米地位協定で米軍関係者が日本で死刑判決を受けることがないのと同じで、重罪を犯した場合でも同じだ」■


Australia-Japan treaty could 'ease US military burden' in Indo-Pacific amid China's rise | South China Morning Post

Su-Lin Tan and Julian Ryall , South China Morning Post Jan 8, 2022, 1:23 AM


2022年1月10日月曜日

F-22退役が想定より早まるのはNGADがすでに姿を現しているためか。一方、F-35は改修しながら、NGADと相互補完しながら2070年まで供用を続ける....米空軍の構想が見えてきた。

Raytheon.com


F-22退役の日程が前倒しになったのはNGAD第六世代機の登場が早まったためのようだ


 

米空軍の第六世代機が飛行可能となっており、、速力、ステルス、操縦性、兵装、AI応用センサーなどで技術限界を破り現行F-35の性能を超えている可能性がある。

 

未実証の開発初期段階のまま、事業を加速化する第六世代次世代航空優勢機材(NGAD)への空軍の姿勢は適切である。

 

しかし、第6世代機の付加価値でF-35の大幅削減を示唆する動き、あるいは正当化する議論で見落とされがちな変数が数点ある。

 

第五世代機のインパクト


第6世代機の大量投入を加速するため、F-35を削減すべきか?答えは否だ。F-35には相互補完運用を想定しており、実際、今後の同機はミッションセットや技術特性で現在と微妙に異なる機材になる可能性がある。

 

新型第6世代機の構成、性能、任務特性についてほとんど不明だが、同機が、F-35の後継機ではなく、代替機として想定されていることを示す証拠がある。

 

F-22退役が2030年に始まると明らかになったのを考えるとこの想定は一層正しくなっているようだ。ラプターは改修を数次にわたり受けたきたが廃止は当初想定より数十年早くなる。

 

F-22退役が早まるのはNGAD第六世代機が想定より早く登場するためだろうか。その可能性は十分あるようだ。

 

F-35、F-22ともに第五世代機であるものの、全く違う機材である点に注意する必要がある。このため次世代のF-22にあたる第六世代機の開発が実現してもF-35が無用の存在になることはない。

 

逆の意見もある。F-35は、他の追随を許さない情報監視偵察センサー技術、AI対応情報処理、ソフトウェア改修や新型ミッションシステム、標的捕捉での技術革新を受け一貫して性能を適応、変化、向上するマルチロール戦闘機となる。

 

F-35の近代化改修を長期にわたり継続する展望がペンタゴンにあり、2070年代以降まで飛行を続ける。F-35はマルチロール戦闘機でドッグファイトなどこなしながら、最大の優位性はセンサー能力、コンピュータ処理能力、長距離高精度標的捕捉技術にある。

 

これに対しF-22が第六世代機と組むと補完機能を提供するものの、第五第六世代併用による航空優勢のあるべき姿とやや異なる様相となる。


F-22は最高速度、機体制御、空対空戦で世界最高峰の機体だ。センサー能力、近接航空支援能力、通信ネットワーク機能で優れるとはいえ、F-22は航空優勢確保のための機材だ。

 

第六世代機にF-35が必要

 

ここから全体像がはっきりしてくる。第六世代機はパラダイムチェンジをもたらす機材となるが、あくまでもマルチロールF-35が補完的に運用されることで本領を発揮できるのだ。

 

米空軍が第6世代ステルス戦闘機に示す熱意がめだつ。空軍はF-35と新型第6世代次世代制空戦闘機を数十年先まで供用する意向なので、F-35大幅削減の可能性は低いように思える。

 

新しい第6世代機の構成や任務範囲に関するデータは皆無にちかいが、空軍幹部の最近のコメントと過去数年間の開発動向を照らし合わせると、第6世代機は1対1の置き換えにならない可能性が高い。つまり、第6世代機は次世代F-35ではないのだ。

 

むしろその逆で、第6世代ステルス戦闘機と第5世代多任務機F-35は、それぞれ他方にない属性や特徴を持つ。F-22が187機で打ち切られたことを考えると、第6世代機がF-22のような航空優勢で画期的な結果をもたらす可能性の方がはるかに高い。

 

第6世代戦闘機は、F-22をはるかに凌ぐ操縦性を実現するだろうか?おそらく、新次元のスーパークルーズ、推力、加速、機体操縦性で敵機を突き放すだろう。同時に、F-35のユニークな特性として、技術進歩の速度とソフトウェアによる武器アップグレードの継続的かつ迅速な実行を考えると、優位を今後長く発揮するかもしれない。

 

CNNによると、トランプ政権時に、維持費を節約し、第6世代航空機の急成長を十分に活用するために、空軍計画のF-35合計1763機調達を800機に削減する提案をした空軍高官がいた。

 

この発想は、第6世代機開発の初期に生まれたものかもしれないが、当時の空軍の立場を表しているとは思えず、かつ空軍の現在の見識も反映していないのは確かだ。チャールズ・ブラウン空軍参謀長は、のF-35の機材数調達方針は完全に堅持していると述べているが、もちろん、一部で議論が続いている。

 

その後、第6世代機はF-22の代替機となりF-35を補完し、併用される可能性を示す兆候が増えている。

 

あらゆる場面で他機種をしのぐ性能を示す単一機種を生むのは不可能といってよく、このためF-35は今後も改修を続けながら新型第六世代機と併用され、相互に性能を補完することで航空優勢の確保で最適な組み合わせになるとの意見が優勢になっている。

 

第5世代・第6世代のステルス機は、ステルス性能を引き上げていく。第5世代・第6世代機は、現在のネットワーク化の進展を基礎に、現時点以上の効果を戦闘にもたらすとの想定がある。つまり、迅速なネットワーク構築で情報共有し、相互連動が機能すると考えられる。両機種が、付近を飛ぶ無人機や無人地上装備品やロボットと運用されるだろう。

 

NGADとF-35の連携でここまで威力を発揮する

 

近年の技術ブレークスルーで、F-22とF-35間で安全な双方向接続が可能となり、情報・標的情報共有のパラダイムシフトで、連携航空攻撃に新たな地平を切り拓いている。第5世代・第6世代間の連携に大きな期待を抱かせ、さらに発展していくものと思われる。

 

例として、超長距離、高精度のセンサー画像解像度を持つISR対応F-35は、電子光学照準システムにより、第5世代敵編隊の位置を特定し、コンピューター化ミッションデータファイルとAI対応センサーフ融合により、迅速に標的の識別が可能となる。F-35は、脅威データを膨大なデータベースで高速分析し、個別データを関連付けながら迅速に整理しパイロットに提供する、標的を発見し、付近を飛ぶ第6世代航空機にデータを送信し、敵の第五世代戦闘機部隊を撃破させるのだ。■

 

Is the Pentagon's 6th-Gen Fighter an F-22 Replacement?

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN

JAN 5, 2022


-- Kris Osborn is the Managing Editor of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master's Degree in Comparative Literature from Columbia University


合成麻薬の大量流入で米政府がいよいよ中国企業・個人をその他麻薬生産国同様に厳しい制裁の対象とし、政府横断的な対応を展開することへ。

  NOVEMBER 30: U.S. Treasury Secretary Janet Yellen testifies during a hearing before Senate Banking, Housing and Urban Affairs Committee on Capitol Hill November 30, 2021 in Washington, DC.

財務長官ジャネット・イエレンが上院銀行住宅都市問題委員会で証言したJ November 30, 2021 in Washington, DC. PHOTO BY ALEX WONG


ェンタニル摂取による死亡数は米国でヘロイン過剰摂取死亡を上回っており、中国はフェンタニル製造の中心だ。


中国企業4社および中国市民1名が米財務省の制裁対象となった。バイデン政権は大統領令で合成薬品の過剰摂取による死亡例増加に歯止めをかけようとしている。

 

大統領令2通が本日発表された。「多国籍組織犯罪に関する米国審議会の設置」「世界規模の薬物不法取引に関係する外国人に制裁を課す」はともにフェンタニル製造元を追求する政府の業務を助けようと発出された。フェンタニルは圧倒的に中国製が多い。

 

財務省発表では制裁措置をメキシコ、ブラジル、コロンビア、中国の個人10名組織15団体に課すとある。このうち中国企業はYuancheng Gongchuang Technology Co., Shanghai Fast-Fine Chemicals Co, Hebei Huanhao Biotechnology Co.. 、Hebei Atun Trading Co.の各社で、個人としてはChuen Fat Yipの名前が挙がり、財務省は「フェンタニル、アナボリック・ステロイド等合成薬物を米国に流入させ、同時にフェンタニル前駆体を個人・組織に販売する企業集団をまとめている人物」とある。

 

大統領令で発足する多国籍組織犯罪対策協議会は「政府全体で多国籍組織犯罪の脅威に対応するべく企画立案を進めるとともに法執行機関情報機関に総合戦略対応策を立案させ政府全体として行動、運用、対応していく」とホワイトハウスが発表している。

 

過去20年にわたり、「麻薬対策としての制裁措置は海外麻薬中心人物特定法で実施されてきた」と政府高官が説明している。

 

その後登場したフェンタニルはじめとする合成薬品は中国製が圧倒的に多く、ヘロイン等に代わり死亡例を多数生んでいる。しかし米政府は変化に対応しきれていなかった。2020年の麻薬製造、販売の大手リストをホワイトハウスが作成したが、1961年海外援助法が根拠となっており、アフガニスタン、コロンビア、メキシコ、ヴェネズエラ他をヘロイン、アヘン、コカイン等に関係していると列挙していた。ただし、中国の名はなかった。

 

上記1961年法は「植物原料の麻薬製造者または流通者を対象としていたが、合成薬品は対象外だった」と別の政府高官が説明している。■


Chinese Firms Targeted by New Biden Orders Meant to Curb Fentanyl, Synthetic Drugs - Defense One

NOVEMBER 30: U.S. Treasury Secretary 

BY PATRICK TUCKER

TECHNOLOGY EDITOR

DECEMBER 15, 2021