2017年8月14日月曜日

★★英海軍新鋭空母がはやくも演習に参加、しかしその実態は?




英海軍が大型空母二隻を整備する理由がよくわかりません。グローバルな打撃力を実現するとしてもF-35Bが12機程度しか搭載できないのであれば片手落ちでしょう。結局米海兵隊機材を搭載するのであれば図体は大きいのに中途半端な存在にならないでしょうか。むしろ艦を建造し運用は余裕がある同盟国に任せる賃貸物件のオーナーのような立場になるのでは。日本から見ればF-35B運用の実際を見てみたいところですがね。あらためて防衛力整備には強力な経済力が必要だと痛感させられますね。今後の日本が心配です。

USN

Royal Navy's New Supercarrier Trains Alongside Its US Counterpart For The First Time 英海軍新造超大型空母が米海軍と初めて訓練に加わった

The training mission off the coast of Scotland offers the first glimpse of future Royal Navy carrier operations. スコットランド沖合での訓練から英海軍の空母運用構想が垣間見えた

 BY JOSEPH TREVITHICK AUGUST 9, 2017

  1. 英海軍の新鋭超大型空母HMSクィーンエリザベスが随行艦とスコットランド沖合で多国間訓練演習の最終段階に入っている。同艦は米海軍USSジョージ・H・W・ブッシュ以下空母打撃群2(CSG-2)と行動をともにし、将来の二国間合同作戦のモデルを示している。
サクソンウォリアー2017演習とは
  1. 艦船15隻と6千名がドイツ、ノルウェー、スウェーデン、英国、米国5カ国から北大西洋に終結し8月1日サクソン・ウォリアー2017演習の幕が開いた。目的は各国間の海軍作戦の共同実施で目玉は空母二隻が参加したことだ。
  2. 空母2隻は随行艦、各国水上艦と対空、対艦、対潜戦の他飛行禁止区域の執行を想定した各種演習をこなしている。
  3. 小舟艇多数が襲撃してきた想定での防御策や、英米それぞれの補給艦が交代に洋上補給し相互作戦実施の効果を確認している。
空母は完成したが搭載機がない
  1. 空母での固定翼機運用はHMSアークロイヤル退役の2011年以来行っていない英海軍には空母運用訓練が重要でだ。小型ヘリコプター空母HMSオーシャンは2018年に退役する。だが両艦ともクイーンエリザベスや建造中のHMSプリンスオブウェールズに艦の規模、複雑さで劣る。
  2. 「米海軍の空母打撃群との指揮命令訓練を英本土近海で実施したいと思ってきました」と英海軍大佐ケン・ホウルバーグ(空母打撃群参謀長)が語る。「HMSクイーンエリザベスが今年後半に戦力化すると自前で空母打撃戦力が生まれます」
  3. 英海軍にはサクソンウォリアー演習で航空戦力を完全搭載した空母との共同訓練の機会が大きな意義となる。今のところクイーンエリザベスの航空戦力は不在だが、英空軍がユーロファイター・タイフーンを飛ばし航空戦力を提供した。
  4. 英国防省はあくまでもクイーンエリザベスは航空部隊と2026年までに完全戦力化すると説明している。しかし同艦の完全戦力の意味するところは明瞭ではない。War Zoneでは同艦が海上公試に出港した2017年6月の時点でこう説明している。
F-35B調達の行方
  1. 英国が調達規模を縮小する可能性は相当高い。2017年6月初めにタイムズオブロンドンは英空軍のF-35A調達費用を確保すべくF-35B調達は削減されると報じている。B型は48機に減るという。
  2. F-35Bが48機になるとクイーンエリザベスおよびプリンスオブウェールズで攻撃力が完全展開できなくなる。英海軍はまずB型42機を2023年までに運用開始し、空母に24機配備し、残り18機を訓練に投入するとする。
  3. 英空母はカタパルトや拘束装置がなく、スキージャンプと垂直着艦運用のためF-35Bに適化している。F-35B調達が予定通り進まないと英海軍に代替策がない。英海軍はアークロイヤル退役を機にハリヤー全機を用途廃止し米海兵隊が購入したため再活用は無理だ。共用打撃戦闘機がないまま英海軍要員はF-35の取扱い訓練を実物大模型で陸上で行っている。
英米共同運用に向かうのか
  1. 「当方はすば抜けて幸運です」と英海軍ジェイムズ・キャップス少佐(佐草温ウォリアー2017で海軍固定翼機作戦士官)はブッシュ艦上で語る。「ここジョージ・H・W・ブッシュにて今後の英空母打撃戦力の方向性が見えてきますし、米国がどんな体制になっているかもわかります」
  2. 英米間の軍事交流はクイーンエリザベスが戦力化し初の哨戒航海に出る2021年には通常のことになりそうだ。2016年12月に英海軍は米海兵隊F-35Bの英空母艦上運用で合意している。英米両軍の要員は相互に事前訓練したうえで共同運用に向かう。
英海軍の考える空母打撃群構想
  1. 2017年7月に英海軍の次世代フリゲートとなる26型シティ級の建造が始まった。同級は23型デューク級に交代することになる。
  2. 新型フリゲート艦に45型ダーリング級駆逐艦が加わり将来の英空母打撃群を構成する。残念ながら隻数が不足し空母打撃群の遠征作戦の支援がむずかしい。米海軍の空母打撃群では少なくとも誘導ミサイル巡洋艦一隻、誘導ミサイル駆逐艦二隻ないし三隻さらに高速攻撃潜水艦一隻以上が加わる。補給艦を必要に応じて呼び寄せる。
  3. サクソンウォリアー2017ではデューク級HMSアイアンデューク、HMSウェストミンスターの二隻がクイーンエリザベスに加わっている。この二隻だけで23型フリゲートの6分の一に相当する。
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  1. このため英海軍が米海軍に空母打撃群の共同運用を提案する可能性は十分あり、自国水上艦艇の負担を軽減するはずだ。その他同盟国にも自軍艦艇を提供する動きがある。演習の広報写真撮影でクイーンエリザベスは米海軍のジョージ・H・W・ブッシュと並列航行し英海軍のその他水上艦とタイコンデロガ級巡洋艦USSフィリピンシー、アーレイ・バーク級駆逐艦USSドナルド・クック、ノルウェー海軍フリチョフ・ナンセン級フリゲート艦HNoMSヘルゲ・イングスタッドも加わった。
  2. サクソンウォリアーは8月10日に幕を下ろすが、クイーンエリザベスはその後ポーツマスに母港を移し今月末まで留まると英国防省は発表している。その後さらに海上公試を行い、2018年中に艦隊に編入される。
  3. その時点になれば英海軍が新編成空母打撃群の運用方針が判明するはずだ。■
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★米空軍第六世代戦闘機の技術開発の現況




米空軍が目指す新型戦闘機構想はいろいろな推測があり今一つはっきりしませんが(第六世代の用語も使わないと言ったり今回のように便利なので使ったり一貫しませんね)技術要素ははっきりしているようです。当面は該当技術の進展を横目に大日程を作るのでしょうが、米空軍の次の大プロジェクトになるのは必至ですね。


Air Force Starts Experiments for 6th Gen Fighter 

米空軍が第六世代戦闘機の実験作業を開始した

The Pentagon's 6th Generation Fighter may be stealthy and will likely have next-generation computers, electronic warfare technology, speed, weapons and sensors

ペンタゴンが目指す第六世代戦闘機はステルス、次世代コンピュータ、電子戦技術、速力、兵装、センサーいずれも優れた水準を目指す
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  1. 米空軍が第六世代戦闘機の実験と構想固めを開始した。F-35を超える技術革新を空軍上層部は期待する。
  2. 「実験、開発計画策定、技術投資を開始した」とアーノルド・バンチ中将(国防長官付け軍副代表)が Scout Warriors取材で認めた。
  3. 新型機は第五世代F-35共用打撃戦闘機の後継機となり、2030年代中頃に登場するもので現在は空軍海軍が共同で構想設計の段階にあり、新型機が搭載する技術内容、性能水準の検討を進めている。空軍は新型機の機体構想を次世代航空優勢機 Next-Gen Air Dominanceと呼んでいる。
  4. バンチ中将は現在進行中作業の詳細を述べていないが、空軍が考える将来機材の中核性能を論じる航空優勢2030フライトプランに触れている。
  5. 20年後の戦闘機は次世代のステルス技術、電子戦能力、飛躍的なコンピュータ処理能力、自律飛行能力、極超音速兵器さらに各種センサーを埋め込んだいわゆる「スマートスキン」を機体両側面につけるはずだ。
  6. その姿の一片をノースロップ・グラマンが昨年のスーパーボウル中継CMで想像図(上)の形で示している。
  7. ノースロップ以外のメーカーも採用を狙い競合するはずだが、現時点ではノースロップが構想、技術開発、初期設計で一歩先にあるようだ。ボーイングも開発初期段階とDefesen Newsはまとめている。
  8. 海軍はF/A-18スーパーホーネットの退役が2035年の予定で後継機をめざす。
  9. 機体表面塗料、ステルス、人工知能、機体制御、戦闘空間感知の優位性、通信、データリンクがそれぞれ急速に進展中と海軍上層部は認識している。
  10. 専門家は第六世代機では各種の次世代技術がカギとみており、センサーの接続性の極大化、スーパークルーズ性能、「スマートスキン」による電子能力に注目する。
  11. スーパークルーズで新型機はアフターバーナーなしで超音速巡航でき戦術上で有利になる。現場での任務時間が長く確保できるからだ。敵機は先に燃料切れとなり新型機に有利になるシナリオだ。空軍ではF-22がスーパークルーズ技術を採用している。
  12. 接続性を極大化すると通信量とセンサー性能を最大活用できリアルタイムで衛星やその他装備とつながり戦闘状況の情報を共有できる。極超音速兵器の運用も想定するが、スクラムジェットの実用化など乗り越えるべき課題が残っており、初期テストは成功したがその後は失敗も続いている。
  13. 空軍主任科学者ジェフリー・ザカリアス博士がScout  Warriorに語っているが、米国は極超音速兵器の実用化を2020年代、極超音速無人機は2030年代、再利用可能極超音速無人機を2040年代と想定する。極超音速技術は将来の機材、兵器双方で有望だ。
  14. スマートスキンは機体を各種センサーと一体化させ次世代コンピュータで情報を整理統合しパイロットに表示する。一部がF-35で実用化されている。センサーデータの融合に高性能コンピュータを使い関連情報を各種センサーから集め、整理してパイロットに表示する。ノースロップが開発中の分散開口システムDistributed Aperture System(DAS)はF-35パイロットに戦闘空間の360度画像を提供する。これはF-35機体数か所にカメラを取り付けても抗力を増やさずレーダー探知性も下げる。
  15. スマートスキンに分散型電子装置を組み合わせれば各種システムの機外装着が不要となり利点が生まれると専門家はみる。抗力削減、速力増、操縦性改善が実現しながらセンサー性能が向上するからだ。
  16. 第六世代戦闘機の高性能ステルス性能で敵防空網への対処がさらに向上する。敵側も高性能デジタルコンピュータ処理をで広範囲の周波数を探知し、遠距離からステルス機探知が可能になる予測がある。
  17. 第六世代新型戦闘機はレーザーや電子攻撃も運用可能となるはずだ。■


2017年8月13日日曜日

X-47Bをテスト機材としてMQ-25A受注を狙うノースロップ・グラマン



写真はかなり解像度が低いのですがあきらかにX-47Bですね。熱のゆがみではなくデジタルズームのためでしょう。かなり遠距離で視認していますね。

Modified X-47B Breaks Cover As Testbed For MQ-25 Bid

X-47BがMQ-25開発用のテスト機に使われ久しぶりに姿を現す
Aug 12, 2017Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report

Anonymous
LOS ANGELES—ノースロップ・グラマンが米海軍が求めるMQ-25Aスティングレイ無人給油機にむけた空中給油システムのテストでX-47B無人機(UAV)をテスト機につかっている。
  1. ノースロップ・グラマンのMQ-25Aにむけた準備の様子がこのたびAviation Weekが入手した写真で判明した。改修ずみX-47Bが米空軍の第42工場(カリフォーニア州パームデール)で撮影され主翼装備空中給油ポッド(WARP)を左主翼下に、落下式燃料タンクを右主翼下につけている。
  2. また写真では給油用プローブが右主翼についており、機体はAV-2/502、つまりX-47B二号機のようだ。X-47Bは海軍の求める空母運用無人機実証事業(UCAS-D) で製作され、同事業は2015年に終了している。
  3. 写真では高温のゆらぎのため詳細が見にくいが、WARPはCobham34に酷似しており200から325ノット速度域での使用する。同システムは毎分400米ガロンを移送する動力にラムエアタービンを使うが写真上でWARPの先端にこれがはっきり見える。
  4. 右主翼下のポッドはF/A-18ホーネット、F/A-18E/Fスーパーホーネットの標準補助燃料タンクに似ており、FPU-8(330ガロン)またはFPU-11(480ガロン)落下タンクのようだ。
  5. 米海軍が「ソルティドッグ」と呼称したX-47Bが海軍航空システムズ本部のパタクセントリヴァー基地(メリーランド)から今年1月パームデールに移動したがその後同機の動静は聞かれなかった。
  6. 改修したX-47Bの登場は海軍から正式なMQ-25A提案要求(RFP)が今年後半に予想される中でのことで、MQ-25Aは海軍初の空母搭載無人実用機となり早ければ2019年から2020年に登場する。RFP初版は6月に出ており、技術製造開発(EMD)契約を2018年に交付するとしている。要求内容はボーイングジェネラルアトミックスロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの各社に送付されている。
  7. ノースロップ・グラマンに照会したが回答を差し控えるとのことだった。■

2017年8月12日土曜日

★★PAK-FA(T-50)の制式名称がSu-57に、エンジン換装で本格生産は2020年以降




PAK-FAの意味がやっと分かりましたが、エンジン換装、各種改修をうけ本格生産が2020年以降開始というのは思ったよりゆっくりしていますね。おそらく機体価格が高くロシア軍に予算が足りないのでしょう。Su-35などの方がコスパがいいとみているのかもしれません。しかしいきなり50番台ということは第五世代だからでしょうか。Su-37があるのでその続き?よくわかりません。 

Russia's Fifth-Generation PAK FA Fighter Jet Officially Named Su-57

ロシア第五世代戦闘機PAK FAの制式名称がSu-57になった
© Sputnik/ Alexei Druzhinin
14:55 11.08.2017(updated 15:02 11.08.2017)

  1. MOSCOW (Sputnik) — ロシアの第五世代戦闘機はPAK FAあるいはスホイT-50と呼ばれてきたが制式名称がSu-57になったとロシア航空宇宙軍総司令官ヴィクトル・ボンダレフ上席大将が8月11日発表した。
  2. Su-57は単座双発エンジンの多用途ステルス戦闘機で航空優勢の確保と攻撃任務に投入する前提で設計されている。高性能エイビオニクスとアクティブフェイズドアレイレーダーを搭載する。
  3. 初飛行は2010年だった。合同航空機企業体社長のユーリ・スリュサールはSu-57の就役を2019年と語っている。
  4. T-50はPAK-FA(Prospective Airborne Complex of Frontline Aviation第一線航空運用の将来機材複合体構想)の一環としてエイビオニクス、ステルス、武装の改修を受けている。8月9日に設計主任セルゲイ・コロコフが同機用次世代エンジン製作に取り組んでいると認め、推力増と燃料効率改善、さらに製造単価の削減と信頼性がいずれも現状機材より向上するという。
  5. 来年には6機がロシア航空宇宙防衛軍に引き渡される予定で2020年までに55機納入し、その後本格生産になる。■

言葉だけ先行しながら米軍に北朝鮮対応の緊急体制見られず>トランプ大統領の資質が問われそう


言葉の使い方は本人の思考の裏返しで比較するとトランプと金正恩はよく似ているのではないかと思えます。すでに経済界には影響が出ているのですが、このまま言葉の応酬が続くのか、北朝鮮に先制攻撃をあえてさせるのか、どちらにせよ米軍が出動する体制を整えるのにはまだ時間がかかるということでしょう。それまでに言葉を使い果たしてしまいそうです。トランプ大統領の軍事センスが試されそうです。その責任は本人より補佐する面々が大といえますね。

There Are No Signs That US Forces Are About To Go To War With North Korea

北朝鮮と戦闘開始する構えが全く見られない米軍部隊


Despite President Trump's tough talk, America's military posture remains unchanged. トランプ大統領の強硬発言と裏腹に米軍の態勢に変化なし

 BY TYLER ROGOWAYAUGUST 11, 2017

写真 トランプ大統領と主要外交チーム AP


  1. ことばの応酬が先行し行動がともなっていない。ドナルド・トランプ大統領が思慮にかける声明で北朝鮮を非難したため一気にヒステリー状態になったが米軍が北朝鮮と戦火を開く兆候は見られない。確実に日常活動の範囲のままだ。
  2. 数時間前にトランプはこうツイートした。
「軍事解決の準備が完了して、照準を合わせ装填完了した。北朝鮮が愚かな行動に出れば対応する。金正恩には別の途を選んでほしい!」 Follow
  1. 朝鮮半島や周辺地域に展開中の米軍部隊はもともと「すぐ戦う」準備を維持している。さらにトランプの「炎と怒り」コメント、太平洋軍司令部およびジェイムズ・マティス国防長官も激烈なメッセージを出したが、朝鮮半島の戦場に出動する動きを示す装備は見られない。皆無だ。
  2. 戦闘航空機材を各地で支援する給油機の活動は見られない。該当地域にミサイル防衛装備の追加配備はなく、海兵隊、陸軍の地上増援部隊が韓国に出発する兆候はない。また韓国に向け出港する艦船はない。USSロナルド・レーガン空母打撃群も横須賀にとどまっている。
  3. 現地展開中の各部隊は長期戦略や防御の観点では相当の規模で約28千名あるが、いま開戦となれば適正規模とは言えない。仮に米国が先制攻撃で北朝鮮と限定戦するのなら、あるいは北朝鮮が米国、周辺同盟国を攻撃する構えを示したら、装備人員の大量投入が必要となる。
  4. こうしてみるとトランプ大統領の脅かしが空っぽであることがわかる。本人には戦闘準備のフェイントのつもりもないのだろう。このことから「炎の」発言はもっと大きな戦略の一部に過ぎないことがわかる。発言が真実なら行動が言葉を裏付けることになるのだが現実は逆だ。
  5. このため敵勢力に伝えるべきメッセージが明白かつ簡潔でなくなる。声明文の裏付けが目に見えなければ敵も信用しない。ここに信用度を巡る問題の本質がある。
  6. 同時に大統領の信ぴょう性、信頼性をめぐる問題が現れている。政治上の立場がどちらであっても国民が信頼できないと感じ、現実をうまく処理できないと思われる大統領では米国の国益に貢献できない。
  7. 「強力発言カード」を北朝鮮相手に使ってしまったわけだが、明らかに中身がない。もっと悪いことにこれが最初ではなく、内容はきびしい。トランプは前回空母打撃群が朝鮮半島とは反対の位置に展開していた事例から根拠のない軍事主張の教訓を学んだはずと思うかもしれない。残念ながらそうではなかったようだ。
  8. トランプは限定された情報時代で世界は回っていると考えているのかもしれない。本人はコンピュータを全然使わない。だがここに本人の危険な傾向が見え隠れする。トランプは自分がいえばすべて真実だと思う傾向がある。
  9. 実際には北朝鮮に向けた軍事圧力に新しい内容は皆無だ。金正恩一味は米大統領の発言と米軍行動の不一致を明確に把握しており、今後出てくる米軍最高司令官の発言を無視し、恐ろしい戦闘状態の実現回避で重要な局面を見逃すかもしれない。
  10. ツイッターや即応で発した憤激発言で大統領の外交軍事戦略の構想が判るのが現状だ。さらにトランプはヴェネズエラへの軍事介入も検討していると言っているのだ。
Contact the author: Tyler@thedrive.com

8月10日、米海軍がミスチーフ礁で再び航行の自由作戦を実施


中国の既成事実作りを許してきたのはオバマ政権の失策でしょう。時間は取り戻せませんが国際法を盾にする西側世界(既存勢力)と自国の主張を根拠とする中国等(挑戦勢力)のせめぎあいが展開されているといってよいでしょう。

USS John S. McCain Conducts South China Sea Freedom of Navigation Operation Past Mischief Reef; 3rd South China Sea FONOp This Year

USSジョン・S・マケインが南シナ海で航行の自由作戦をミスチーフ礁で実施し、今年三回目の南シナ海FONOpとなった

August 10, 2017 12:23 PM • Updated: August 10, 2017 1:28 PM

写真 USSジョン・S・マケイン(DDG-56) June 17, 2017. US Navy Photo

  1. 米海軍の誘導ミサイル駆逐艦が中国がフィリピン沖に構築した人工島の12カイリ以内を10日航行したと国防関係者がUSNI Newsに明らかにした。USSジョン・S・マケイン(DDG-56)がミスチーフ礁上に中国が構築した施設付近を航行した。
  2. 今回のFONOp航行の自由作戦は今回で三回目で国防長官と米太平洋軍がトランプ政権に今年初めに進言していた。
  3. ペンタゴン関係者はUSNI Newsに今回の作戦実施の事実関係を確認していないが、声明文を発表し航行の自由作戦は米国の標準行動の一環だと述べている。
  4. 「アジア太平洋地区で活動中の米軍は通常行動に南シナ海も範囲に収めている。作戦行動はすべて国際法に則り国際法の許す限り米国はいかなる場所でも航行、飛行、運用を実施する」と海兵中佐クリストファー・ローガンが発表。「FONOpsは通常の形で実施し今後も続ける。作戦成果のまとめはFONOps年間報告書で公表するので今はない」
  5. その他の航行の自由作戦とちがい、ミスチーフ礁付近の航行は中国の人工島構築に対する最も明確な挑戦である。中国は南シナ海各所で拠点づくりを進めているが大部分は満潮時も海面から出る地点で領海として無害通航として知られる運用手順の遵守が軍艦に求められる。
  6. これに対しミスチーフ礁は引き潮時でしか現れない陸標であり国連海洋法ではこうした陸標は領海起点とされず12カイリ以内の無害通航の根拠にならない。
  7. 米海軍は5月にミスチーフ礁を大胆に航行しており、USSデューイ(DDG-105)がミスチーフ礁上の基地施設から6カイリ地点を航行し、およそ90分にわたり12カイリ以内にとどまり、ジグザグ航行しながら人員救難訓練したとUSNI Newsがすでに伝えている。
2016年初頭のミスチーフ礁. CSIS Asian Maritime Transparency Initiative, DigitalGlobe Image

  1. 「今回はこれまでのFONOpsで最も意味のある実施だ。中国の南シナ海での主張に対抗するだけでなく、中国の該当陸標での主張に挑戦するものだからだ」とジェイムズ・クラスカ(米海軍大学校国際法研究ストックトンセンターで国際法教授)が5月時点で解説していた。
  2. 「米国は領海でのみ無害通航を認め、領海でないということは中国の領有を認めないということだ」
  3. 国防関係者からは10日にUSNI Newsに対し今回の作戦は5月事例ほど積極的ではなかったと明かしている。
  4. ミスチーフ礁を舞台にした作戦はこれで二回になったが駆逐艦USSステサム(DDG-63)がトリトン島(パラセル諸島)を7月に通航している。同地は中国、ヴェトナム、台湾がそれぞれ領有を主張している。
  5. 米国が準定期的FONOpsを南シナ海で2015年末に再開し過剰な領有権主張に対抗しているのは上院なかんづく上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長(共、アリゾナ)の圧力によるものだ。
  6. USNI Newsはこの4月にペンタゴン上層部がホワイトハウスにFONOps実施予定を提出し米国として予定調整が可能な範囲を示したと把握している。
  7. 駆逐艦マケインは米前方配備部隊の一環で日本を拠点とする。艦名は元米太平洋軍司令官ジョン・S・マケインJr提督に由来する。■
 

2017年8月11日金曜日

フィリピン向けヘリ部品供与<日本は東南アジア防衛協力関係強化を目指す



Exclusive: Japan seeks Southeast Asia clout with chopper parts for Philippines military - sources

フィリピン軍向けヘリコプター部品提供は東南アジア各国向け安全保障協力の第一歩


TOKYO (Reuters) - 陸上自衛隊がヘリコプター部品多数をフィリピンに譲渡し同国軍ヘリコプター機材の稼働を支援することで中国への対抗を後追ししながら戦略的に重要な南シナ海への影響力を確保するねらいがあることが複数筋から判明した。
  1. 今回のフィリピン向け部品はUH-1多用途ヘリコプター用で陸上自衛隊はH型ヒューイを2012年に用途廃止したが予備部品を保管している。
  2. 軍事外交による中国の南シナ海進出対抗は日本にとって新しい手段で、安倍晋三首相は従来の日本の姿勢をあらため域内でしかるべき役目を追求している。
  3. 東南アジアに対する軍事外交の強化を目指す日本にとり今回のフィリピン協定は第一歩で、各国が求める哨戒機、艦船他防衛装備の提供が続くはずだ。
  4. 「二国間の強固な戦略提携協力関係の象徴」とフィリピン空軍上層部はロイターに語り、日本はおよそ4万点の部品を提供すると述べている。
  5. 供与合意は日本として初の軍事援助となるが、6月に国会で余剰防衛装備の他国向け無償贈与が可能となっていた。
  6. 「予備部品の取り扱いを検討しているが具体的なことは決まっていない」と防衛装備庁関係者は語っている。「安全保障強化につながる防衛装備協力は今後も進めていきたい」
  7. マレイシア、フィリピン、ヴィエトナムの三国がP-3C哨戒機導入で日本と協議をはじめている。川崎重工製P-1の導入で余剰機材になっているためだ。
  8. これに先立ち日本は使用済みビーチクラフトTC-90キングエア3機をフィリピンにリース契約で供与している。
  9. 防衛上のつながりを構築するその他の動きとして南シナ海を航行したヘリコプター空母いずもにASEAN東南アジア連合の軍関係者が四日間体験航海している。
  10. インドネシア、マレイシア、フィリピン、シンガポール、タイランド、ヴィエトナムの軍関係者は日本で行われた災害救助演習を視察している。
  11. 安倍政権は東南アジアを中国の影響から守るには日本の方が米国より有利と認識している。米国では非民主政権下のタイランドやヴィエトナムには完全関与できない制限があるためだ。
  12. また米国内の条件によりフィリピンは中国やロシアに武器供給を頼らざるを得なくなっっているいうのが同国国防相の見解だ。
  13. 中国はすでにフィリピンに対し総額14百万ドル相当の軍事ハードウェアを寄贈しており、そのほかにも5億ドルのソフトローン枠を中国製武器購入用に設定している。■
Reporting by Tim Kelly and Nobuhiro Kubo in TOKYO; Additional reporting by Manuel Mogato in MANILA; Editing by Clarence Fernandez

トランプ大統領滞在中のゴルフ場上空を飛行したロシアスパイ機に神経を高ぶらせる米国関係者



オープンスカイズはもともとアイゼンハワー政権で提唱されていたものが50年以上かけて成立に至ったもので米ロ、欧州各国が加盟しています。忍耐強く成立にこぎつけましたね。西太平洋では成立の可能性はまずないですね。ロシアに対して米側が神経を高ぶらせているのがよくわかる記事です。このゴルフ場はトランプ大統領が北朝鮮に強硬発言をした場所です。

Russian spy plane flies over Trump's New Jersey golf club, DC area

ロシアのスパイ機がトランプ所有ゴルフ場、首都上空を飛行

Published August 09, 2017
  1. ロシアのスパイ機が8月9日水曜日ワシントンDCおよびニュージャージ州ベドミンスター上空を低空飛行するのが視認された。後者ではトランプ大統領が自身が保有するトランプナショナルゴルフコースで休暇中だった。ただし査察飛行は国際条約で承認されたものと関係者が説明している。
  2. 問題の機はツポレフTu-154Mでゴルフ場上空4,000フィートを飛行し5,000フィートに上昇し、ニューヨーク空域に移動したと国防関係者二名がFox Newsに語っている。
  3. うち一名によればロシア機はゴルフ場周辺に設定した臨時飛行制限(TFR)空域に侵入している。
  4. 同機はオープンスカイズ条約によりTFR通過飛行を許された。同条約は非武装監視機の上空飛行を加盟34カ国領土全域に認めており、ロシアと米国も加入している。
  5. 「ロシア機が上空飛行を許可されていなければしかるべき措置をとっていただろう」と関係者は匿名条件で話してくれた。
  6. オープンスカイズによる査察飛行は2002年の条約発効後に1,200回超を数える。ペンタゴンによれば投入機材は非武装かつ条約で認めるフィルムおよびセンサー類を搭載する。
  7. ペンタゴンによれば各国はフライトプランを事前通告され、自国監視員が同乗し条約に則っているか確認する。フライト終了後に被監視国は撮影画像の写しを得る。
  8. 同機はワシントンDC近郊上空を飛行したが、米議事堂上空は飛んでいない。米議会警護隊は議会上空飛行に午前11時から午後3時の間は注意喚起していた。「今回のフライトは警護隊指令所および連邦政府機関が監視していた」と発表。
  9. 米情報機関、軍の上層部はロシアが新技術で条約趣旨に違反していると懸念を示している。
  10. 軍縮局担当国務次官補をつとめたスティーブ・レイドメイカーは議会公聴会でロシアはオープンスカイズ条約を順守しているが条約で想定外の技術手段も使っていると発言している。
  11. 条約では各加盟国は領土全域での空中監視を認める義務をうたうが、レイドメイカーによればロシアはモスクワ、チェチェン、アブハジア、南オセチアで監視制限を加えており、後者二つはロシアが実効支配するジョージアの分離地方だ。
Fox News' Chad Pergram, Lucas Tomlinson and The Associated Press contributed to this report.

★北朝鮮へ米国が先制核攻撃に踏み切ればどうなるか

毎日目が離せなくなってきました。それでも国会ではこの問題は素通りしてどうでもいい話で政府を攻撃することに快感を覚える選良がのさばっているのはどういうことなのでしょう。

A B-2 Stealth Bomber performs a flyover at the 126th Rose Parade in Pasadena, California

This Is How America Would Wage a Nuclear War Against North Korea

北朝鮮をアメリカが核攻撃すればこうなる
今やThe National Interest Dave Majumdar
August 9, 2017

  1. 米朝対立はエスカレートの一方で双方とも引き下がるつもりはない。
  2. 日一日と開戦の可能性が高まっていく観があり双方が掛け金に手をかけようとしている。ドナルド・トランプ大統領は語調を強めており北朝鮮を核で先制攻撃するといわんばかりだ。
  3. 「北朝鮮はこれ以上米国を脅すべきではない」とニュージャージー・ベドミンスターのゴルフ場で報道陣に語っている。「北朝鮮は通常の国家の域を超えており、炎と激怒を食らわし世界のだれも見たことのない戦力を浴びることになる」
  4. その数時間後に平壌では金正恩政権が「米挑発行動の兆しが少しでも見られれば」米軍に先制攻撃を加えると脅かしている。北朝鮮発表の声明文によれば具体的には特殊部隊が「斬首作戦」の企てを示すことも含まれるという。
  5. 「米側から『先制攻撃』の兆しが見られればDPRK軍部隊は先に米本土を核戦争の舞台に化す」と北朝鮮外務省は発表している。「当方は各種戦略核攻撃手段を保有しており、米本土も攻撃範囲に収めていることを隠す意図はない」
  6. 一方でジム・マティス国防長官は慎重なことばで8月9日に声明文を発表し北朝鮮に核兵器放棄を求めた。「DPRKは自らの孤立を止めるか核兵器開発の追及を止めるか選択すべきだ。DPRKは政権の終焉さらに自国民の破滅につながる行動をすべきではない」
  7. マティス長官は同時に米国が圧倒的優位な核優位性を維持していると警告している。「国務省はすべての努力を払い世界的脅威を外交手段で解決する所存で同盟各国の軍部隊に今や地球上最高に精密、実証済みで強力な防衛攻撃能力があることを特記しておく」
  8. 緊張がこのまま高まり開戦になれば、あるいはもしトランプ大統領が先制攻撃の決断をくだせば米国には軍事オプションが多数ある。しかし付随的被害で壊滅的被害が韓国と日本に及ぶだろう。
  9. 「何が何でも核攻撃に頼らなくてもよいはずだ」とある国防総省退役関係者が語っている。「通常兵器でも脅威対象の多くは除去できる。ただし当然簡単にいかないが」
  10. 別の元国防関係者は北朝鮮とは複雑で多面的な問題だで軍事力で簡単に解決できたり米国単独で解決できる問題ではないという。日本、韓国、中国、ロシアと米国はこの方程式の解を求める必要がある。「日本や韓国の核武装を許せば中国が黙っていないでしょう」とこの高官は述べた。「軍事手段に向かう前に一番望ましい選択肢を試す必要がありますね」
  11. だがそもそも軍事解決策として米国はなにを選択できるのか。軍縮論者は先制核攻撃は国際法違反と指摘する。「北朝鮮を核兵器で狙うと話すこと自体が妄想でありそもそも選択対象にならない」と話すのはケルシー・ダベンポート、軍縮協会の非拡散政策部門長だ。「先制核攻撃の非合法性に加え、その結果生まれる非人道性、経済や環境への影響はまさに破壊的で北朝鮮国境内部にとどまらないはずだ。ワシントンは米側同盟各国を深刻な危機に陥れる。放射性降下物に加え北朝鮮の反撃対象となるからだ」
  12. トランプ大統領の発言を額面通り受け止め核先制攻撃が選択肢なら米空軍のノースロップB-2・スピリット爆撃機全20機が任務を実施するはずだ。「ブッシュ第一期政権以来海軍は戦術核兵器は使っていませんので海からの第一撃攻撃はありえません」とジェイムズ・R・ホームズ教授(海軍大学校、戦略論)が語っている。「ICBMあるいはSLBMによる攻撃は中国やロシアが自国への攻撃と誤解する危険性があるので実施されないでしょう。そうなると米空軍爆撃機おそらくB-2がミッションを実施するのでは」
  13. B-2は通常兵器ならGBU-57A/B大型貫通爆弾を30千ポンド搭載できるが、米空軍の在庫は少ないし、在庫が十分あってもGBU-57で北朝鮮の核開発基盤を決定的に破壊できるかわからない。
  14. 「通常兵器ではバンカーバスター爆弾もあります。作戦主体はUSAFにし、THAADやイージス艦にミサイル防衛を任せます。バンカーバスターの威力は攻撃箇所の数、地下の深さなどによりますが集中攻撃ができるかが肝心な点でしょう」(ホームズ)
  15. ダヴェンポートも米国に通常兵器の選択肢があることは認めるが成功の保証はないとくぎを刺す。さらに北朝鮮が移動式弾道ミサイルで報復に向かうはずという。移動式ミサイルは第一撃から逃れる可能性があるためだ。
  16. 「米国には通常兵器の空爆や巡航ミサイルで北朝鮮核関連装備を狙う選択肢があります。ただし通常兵器は破壊力が劣り、さらに北朝鮮の核装備すべてを標的にできる保証はありません。北朝鮮で米情報機関の選択肢は少なく、平壌は移動式核ミサイルを保有し探知が難しい点がやっかいです」
  17. トランプ大統領が核攻撃を選択しても攻撃効果で疑問が出る。「答えは効果の定義に依存するでしょう」とホームズは述べた。「核があれば危険な対象を除去できると思うでしょうが、その代償は?おびただしい人命や財産が奪われますが、米国の同盟各国や敵対勢力からも近い位置の国を核攻撃する話題なのです」
  18. 事実、米国の同盟各国への付随被害のみならず世界での米国の地位も破滅的結果を迎えるかもしれない。「日本、韓国との同盟関係にひびが入る可能性は相当にあり、中国、ロシアは未来永劫に敵のままでしょう」(ホームズ)
  19. もうひとつ考慮すべき点がある。軍事攻撃で北朝鮮核兵器を無力化しようとすれば核報復攻撃を招くのは必至だ。「もし北朝鮮が自国の核抑止力が危険になったと判断すれば、平壌は情勢を誤判断し核兵力を発射してくるかもしれません」とダヴェンポートは述べる。「核の応酬は規模を問わず地域内に大きな損傷を与えます。北朝鮮ICBMだけを狙った攻撃でも平壌は大規模軍事行動だと誤解するでしょう」
  20. 国家情報局長を務めた退役空軍中将ジェイムズ・クラッパーがCNNに語ったように北朝鮮は世界を厳格に現実主義の観点で見ている。敵に囲まれしかも敵は圧倒的に強い。金政権が敵に渡り合うため唯一の切り札が核兵器だ。金政権存続は核兵器の威力にかかっている。そのため米国の最良な選択は封じ込めと抑止力になる。「対話の機会が必要だが、核兵器保有国として認知する必要がある」とクラッパーはCNNに語っていた。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.
Image: Reuters


2017年8月10日木曜日

米国は北朝鮮ミサイルをどこまで監視追尾しているのか


北朝鮮を取り巻く状況がどうも悪い方向へ向かっています。ISRの重要性が今ほど重要になったことはないように思います。本当の性能はだれにもわかりませんが、抑止力の一つとして機能すればそれにこしたことはありません。

North Korea's New ICBMs: How Well Can American Intelligence Track Them?

北朝鮮のICBMをどこまで米情報機関は追尾できるのか

August 6, 2017

  1. 北朝鮮の核兵器開発が進展を見せているが米国は北朝鮮の核兵器運搬手段の所在地を把握し先制攻撃で破壊できるとくりかえし暗示している。
  2. 7月4日のICBMテスト直後に米軍は北朝鮮の発射準備を監視してきたと米関係者が報道陣に話している。Diplomatのアンキット・パンダの記事で「米国は発射前およそ70分の時点で発射台に乗っているミサイルを観察していた」と暴露している。発射の翌日にフォックスニューズのジェニファー・グリフィンも「米政府関係者は今回の発射準備の状況を米国が監視していた。液体燃料注入も監視していた」と伝えている。
  3. 7月28日の次回発射でも同じパターンとなった。米政府から報道機関に情報リークがあり、米情報機関は発射の兆候を事前につかんでいたという。リークは7月19日に始まり、翌週に激しくなる。発射当日の週には米側は発射日を「おそらく」7月27日の朝鮮戦争休戦日と予測していた。パンダは米政府関係者から「米軍情報部は火星14型の輸送起立車両をクソンで探知している」と聞いている。
  4. 前回テストが監視されてイラついたのか北朝鮮は二回目のICBM発射テストを北部慈江道(チャガンどう)舞坪里(Mupyong-ni)から発射した。また夜間発射にしたのは米偵察衛星の性能限界を熟知していたためだ。
  5. だが米国はだまされなかったと政府筋が再びパンダに伝えている。発射直後にパンダは以下報道している。「米政府は数週間にわたり発射準備を監視し発射24時間前に準備状況を把握していた」「情報筋は四時間前に発射が迫っていることを確信した」「評価の根拠は金正恩他政府上層部の視察用VIP席の準備が見られたため」
  6. 米監視活動の対象は北朝鮮の地上配備ミサイルだけではない。北朝鮮潜水艦の探知も可能と伝えている。通常潜水艦発射の弾道ミサイルは残存性が高いため機挑戦も整備を急いでいる。だが米政府関係者は平壌に対して潜水艦も米情報収集力の前に安全ではないと伝えようとしている。今週に入り米軍関係者がCNNに北朝鮮潜水艦活動が「きわめて異例かつ前例のない水準」になっていると語った。具体的には今月に入りミサイル排出テスト三回を確認しており、コールド・ローンチテストは今年四回実施している。テストは陸上での実施だったがこの関係者はさらに「北朝鮮サンオ型が黄海に展開したがその期間が長い。ロメオ型二隻が日本海に出動したが各艦一週間も展開した」と明らかにした。
  7. 総合すると米国は北朝鮮の核運搬手段をリアルタイムで追尾できる能力を有していると伝えようとしているのだ。この事は重要で米国が北朝鮮核兵器を発射前に地上で破壊する、おそらく先制攻撃の決定で大きな意味を持つ能力であるためだ。米関係者が意図的に明らかにしているのは北朝鮮指導部を怯えさせながら韓国など同盟国に米国の安全保障上のコミットメントは北朝鮮が米本土を核攻撃する能力を得ても有効だと伝える意味があるからだ。
  8. このうち前者での米国の試みは成功しているようだ。北朝鮮が今回のICBM発射で欺瞞工作を行ったのも核兵器の残存性に懸念を感じている証拠だ。残存性は核兵器整備を開始した段階の各国が直面する問題だ。アルバート・ウオールセッターが欧州内の戦略空軍基地がソ連の初期攻撃に脆弱だと証明すると米国はパニックになった。ジェフリー・ゴールドバーグとマーク・アンビンダーによればパキスタンは核兵器を民間車両に乗せて定期的に移動させて探知を逃れているという。北朝鮮の現状は特に脆弱である。弾頭数は少なく、ICBM福多数のミサイルは液体燃料方式であり、発射直前に燃料注入が必要だからだ。
  9. 一方で韓国を安心させことにはそこまで成功していない。韓国の主要紙朝鮮日報は今週に入り米本土が狙われるのであれば米国が韓国の防衛に本気になるとは「とても期待できない」と述べている。韓国は最悪の事態に備えて情報収集、監視、目標捕捉、偵察(ISTAR)に力を入れており、独自に北朝鮮を先制攻撃する能力を整備している。
  10. ただし北朝鮮の核兵器運搬手段を追尾する能力が本当に米関係者が言うほど有効なのかわからない。二回目のICBM発射の前に米関係者は報道陣に発射地点はクソンのはずと言っていた。発射後にはじめて舞坪里を以前から監視しており発射準備の様子を事前に把握していたと明らかにした。米軍の監視偵察能力が宣伝通りとしても先制攻撃はかなりのリスクとなるため先制攻撃はあくまでも最後の手段になるはずだ。第一撃を成功させるのが難しくなれば北朝鮮の核兵器整備と拡大の可能性は飛躍的にふえる。
Zachary Keck is a former managing editor of the National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.
Image: Reuters