2021年10月9日土曜日

台湾に一年以上前から米特殊部隊が展開していた。中国への抑止効果が生まれている。一方で米中両国の公式チャンネル接触が進む兆候。

                 

US ARMY

 

 

ォールストリートジャーナルの記事で米特殊部隊及び海兵隊が台湾に少なくともここ一年はローテーション派遣されているとある。台湾の国防部長が2025年になれば中国軍が台湾への「全面的」侵攻作戦を現在よりはるか低リスクで実行可能になると公の場で発言した翌日に記事が出てきた。

 

米特殊部隊隊員及び支援要員合計24名ほどが現在台湾におり、「台湾地上部隊に訓練を施している」とジャーナル記事にある。人数不明の海兵隊員も「現地の海兵隊員に小型ボート運用の訓練をしている」と伝えている。ここ一年の米軍の台湾でのプレゼンスが常駐だったのかは不明だ。

 

US ARMY CAPTURE

米陸軍公式ビデオよりのスクリーンキャプチャ。昨年出たビデオではグリーンベレー隊員が台湾特殊部隊隊員を指導していた。同ビデオはその後回収された。

 

 

ジャーナルの記事は昨年11月に海兵隊レイダー部隊が台湾に配備されたとの記事に注目し、台湾の海軍司令部がその時点で事実を認めたとある。台湾国防部はその後、同部隊の存在について肯定も否定もしないとした。ペンタゴン報道官も当時、こうした記事は「不正確」としたが、どの部分が正しくないのかは明らかにしていない。

 

「米特殊部隊の存在はこれまで報じられていない」とジャーナル紙記事は不正確な内容になっている。The War Zone他は米陸軍ビデオ、スクリーンキャプチャでグリーンベレー部隊が通常の統合共同交換訓練(JCET)として台湾に展開する様子を伝えていた。このビデオはその後回収された。別のレポートでは2017年に米特殊作戦司令部が公表した文書で特殊作戦部隊が台湾へその一年前に少なくとも一回派遣されていたとの記述がある。

 

JCETとは小規模の訓練で10名ないし40名の米軍関係者が加わり、一般的な技能に加え関連戦術、技能、手順を交換しあうもので、通常は同盟国や友邦国の特殊部隊が対象だ。このこととジャーナル紙記事が伝える台湾に派遣中の米特殊部隊隊員の規模と行っている内容が一致する。

 

ジャーナル紙記事では今年初めに出た米軍、おそらく米陸軍の第5保安支援旅団(SFRB)が台湾の訓練基地がある 湖口Hukou(北部新竹Hsinchu省)に展開していたとの未確認情報に触れていない。米陸軍・州軍にはSFRBが六個あり、軍事顧問機能を果たす。中でも第5SFABはワシントン州ルイス=マッコード共用基地に駐屯し、インド太平洋地区の保安部隊への支援が中心の部隊だ。そうなると米軍が湖口で目撃されたとする記事が正しければ、特殊部隊あるいは海兵隊の可能性がある。

 

台湾にいる米軍部隊の所属いかんにかかわらず、特殊部隊や海兵隊が派遣されているのなら話の筋道がつく。特に米陸軍特殊部隊は非通常型の戦闘作戦の支援について訓練を受けており、大規模交戦の場合も敵前線の後方に残る現地部隊とともに戦う、あるいは支援する想定だ。

 

今年5月、ジョシュ・ホーリー上院議員(共、ミズーリ)が米特殊部隊と台湾軍の協力関係深化を提言していた。クリストファー・マイヤー国防次官補(特殊作戦、低じん度紛争担当)の承認公聴会の席上で、ホーリー議員は米特殊部隊がバルト諸国のエストニア、ラトヴィア、リトアニアに展開し、ロシアの侵攻に対抗してきたのが台湾の事例のモデルになると具体的に発言していた。

 

「実施を強く検討すべき内容だと思う。特殊部隊は非対称型の対抗手段になる」とマイヤーは議員の発言を受けて述べている。その後マイヤーは議会の認証を受けている。ただし、本人はその時点で実際にそうした協力がすでに実施されていることに触れていない。

 

ジャーナル記事では小型ボート運用訓練にも触れているが、海兵隊は台湾軍向けにこの技術を伝授しており、将来に海峡をはさむ軍事対決が発生すれば重要な戦術となる。海兵隊ではゴム舟艇から対戦車誘導ミサイルを発射するなど柔軟な新戦術を開発していることはThe War Zone でも注目してきた。

 

USMC

米海兵隊がジェベリン対戦車誘導ミサイル装備をゴム舟艇に持ち込んで訓練している。日本での2021年の演習にて。

 

第5SFABが台湾に昨年来展開していたか確認できないが、実際に展開していても驚くにあたらない。SFAB分遣隊は台湾軍に各種の重要な助言を与える能力がある。米製新装備品の運用開始にあたり準備することもそのひとつだ。米政府は台湾政府に各種装備品の売却を承認しており、高性能版のブロック70仕様F-16C/Dヴァイパー戦闘機、MQ-9B無人機、地上発射方式のハープーン対艦ミサイル他多数がある。陸軍の教導隊は台湾が今後導入するM1A2Tエイブラムズ戦車やM106A6パラディン155mm自走砲の運用で支援を与えるのに最適だ。

 

小規模でも米軍部隊が台湾に定期派遣されれば抑止効果が生まれ、中国政府は米軍隊員に死傷者を発生させるのは躊躇するはずだ。死傷者が出れば、米政府は米国の同盟国として台湾での相互防衛義務に向かわざるを得なくなる。派遣部隊が規模を拡大すれば中国の意思決定により大きなインパクトを与える。

 

インド太平洋の戦略枠組みを説明した文書がトランプ政権末期の今年1月に機密解除されており、「台湾をして効果のある非対称型防衛戦略・能力を整備させ、安全と自由を確実にし、外部勢力に対する耐じん性を実現し、台湾の条件で中国に対抗させるものとする」との具体的な記述がある。同じ文書内で「中国が今後さらに強硬な態度を取り台湾へ統一を強いる場面が生まれる」と注意喚起しており、その後この記述が現実のものとなっている。

 

「台湾攻撃の能力は現在でも相手が有しているが、代償は高くつく」と台湾国防部長邱国正Chiu Kuo Chengが昨日発言している。同部長は2025年になる床の代償は相当低くなり、逆に台湾への「全面侵攻」の可能性が高くなると発言した。

 

中国政府の見解では台湾は反逆地方政府であり、軍事力を行使しても現地政府が独立宣言をするのを阻止すると繰り返し警告している。昨年から人民解放軍が挑発的な軍事展開を大幅に増やしており、台湾周辺で航空機と合わせ艦艇の活動も目立ってきた。すべて台湾当局への明確なメッセージであり、国際社会も視野に入れたものだ。台湾国防部によれば中国軍用機は今月だけで南西部の防空識別圏侵入が150ソーティを超えたという。

 

ウォールストリートジャーナルから米軍部隊の台湾内プレゼンスに関し質問を入れたところ、中国外交部は「中国はいかなる手段を取っても自国主権と領土の保全を守り通す」との声明文を出してきた。

 

「PLAは米侵略部隊を標的に一掃する攻撃を加えるはずだ」と環球時報主筆Hu Xijinが述べている。同紙は中国共産党が運営し、Huはツイッターでも同じような反応を記している。「本当なら中国軍はただちに開戦し、米兵を掃討し追いだすべきだ」としたのはテキサス選出ジョン・コーニン上院議員が誤って30千名の米軍隊員が台湾に派遣中とソーシャルメディアで述べてしまったからだ。

 

米政府は技術的には今も「一つの中国政府」を堅持しており、北京政府を中国の唯一の正統政体として1979年認識している。同時に米国は台湾関係者との交流ならびに台湾軍の支援を続ける権利を主張している。4月には米代表団が訪台し、台湾軍への支援他の継続性を伝えた。これと別に議会代表団が米空軍C-17AグローブマスターIII輸送機で6月に訪台している。

 

ウォールストリートジャーナル記事のいうように米軍が定常的な台湾へのプレゼンスを強めてきたのが真実なら、大陸との緊張が高まる台湾政体を支援する米国の姿勢のあらわれだろう。米軍が台湾軍に対し支援する様子がより詳細になれば、北京へのメッセージは明白となる。ペンタゴンは中国を「着々と強化を続ける脅威」"pacing threat"と位置づけ、米軍全体として大規模開戦への準備に焦点をあてつつ、実際に開戦にならないようインド太平洋地域で中国を抑止する姿勢をとっている。

 

ホワイトハウスからバイデン大統領が習近平主席と年末までにリモート会談を行うとの発表が出た。実現すれば、喫緊の課題に触れるのは確実だろう。チューリッヒで国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバンが楊潔篪外交政策顧問と会談したのを受けこの発表が出た。

 

一方で、バイデン政権はトランプ政権同様に台湾を狙う中国の野望に前広に対応する姿勢を示し、公然とこれを実施しているので、台湾海峡の両側にどんな影響が出るのかが注目される。■

 

American Forces Have Been Quietly Deployed To Taiwan With Increasing Regularity: Report

 

A report that the U.S. military has been stepping up its activities in Taiwan for at least a year comes amid growing fears of a Chinese invasion.

BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 7, 2021

 

Contact the author: joe@thedrive.com



2021年10月8日金曜日

台湾併合に向け開戦をいとわないとする好戦的な社説を環球時報が堂々と掲載。CCPの思考方法が垣間見える好材料だが、世界から孤立してもいとわないと本当に考えているのだろうか。

 ここまで好戦的な社説はめったにありません。CCPの見解といってよいでしょう。今回は環球時報英語版の記事をもとにお伝えします。

   

 

この記事は中国共産党につながる環球時報英語版の論説記事をそのままお伝えしています。当ブログの意見ではありません。

国務省から10月3日に出た声明文ではPLAが展開中の大規模演習は台湾島が独自に設定した南西部防空識別圏に入っているとし、PLAが「挑発的軍事行動」で「域内の平和安定を乱している」と述べ、さらに「米国の台湾向け公約は岩のように堅固」とある。直ちに台湾外務部はバイデン政権へ謝意を表明した。

 

国慶節の休日にもかかわらず、PLAの戦闘機他軍用機が記録的な規模で台湾海峡上空に展開している

 

PLA空軍が活動を強化しているのは分離主義者の台湾民進党(DPP)当局への強い警告だけでなく、台湾海峡を挟む情勢の厳しさを示しながら、同時にDPPと通じる考えの支援勢力にも明確に警告を与えるためである。

 

数年前まで同地区に流れていた平和的な空気は今や消え、DPP当局は公然とPLA戦闘機を「敵機」と呼ぶに至っている。さらに事あるごとに、自らをいわゆる民主世界の最前線で「独裁支配」に抵抗する勢力と称している。戦略的なつながりを米国日本と強めようとするDPPはいっそう予測不能となっており、台湾海峡を挟む情勢は一触即発と言ってよいほどでいつ開戦となってもおかしくない

 

同島を守備する分離主義勢力はいかなる名目でも台湾を中国から独立させることは許されず、ましてや同島が米国の中国封じ込めの前線基地になることは許されない。

 

この記事は中国共産党につながる環球時報英語版の論説記事をそのままお伝えしています。当ブログの意見ではありません。

 

蔡英文が政権の座についてからは台湾海峡を挟む平和的な状況が一変した。米政府はDPP当局と台湾島を米主導のインド太平洋戦略に組み入れ、中国を敵視する政策に走っている。中国本土は同島を米国に統合させる動きは看過できない。

 

中国本土による総合的軍事闘争を準備するカーテンが上がったのは明らかだ。PLAの軍事演習は台湾島の領有権の主張にとどまらず、部隊集結、動員、強襲上陸や補給活動を事前に展開し、平和的再統一を実現するねらいもある。中国本土の世論では戦闘も覚悟しつつ可能な準備を進めるべきとの意見が主となってきた。

 

そこで、DPP当局ならびに支援勢力に警告する。火遊びはやめよ。中国本土が台湾分離勢力に対し武力行使の準備を進める状況はかつてないほど強化されている。

 

台湾問題を解決し、国家再統一を実現する重責は全中国人民の肩にここまで重くのかかったことはなかった。米国等が台湾問題を外交カードに使い中国へ対抗しようとしている。台湾問題の根本的解決策とは日を追うごとに分別ある行動をとることである。

 

米国とDPP当局がこの機会をとらえ、流れを変えないと、中国本土の軍事懲罰が「台湾独立」を唱える分離勢力に向けられ、引き金を引くことになる。時がたてば、こうした警告が言葉だけのものではないことが証明されるはずだ。■


この記事は中国共産党につながる環球時報英語版の論説記事をそのままお伝えしています。当ブログの意見ではありません。


Time to warn Taiwan secessionists and their fomenters: war is real: Global Times editorial

By Global Times

Published: Oct 04, 2021 08:58 PM


速報 シーウルフ級攻撃型潜水艦USSコネティカットが南シナ海で水中衝突事故に遭遇。負傷者発生、艦に損傷なく、グアムへ移動中。

 


いったい何に衝突したのか、南シナ海とあれば、中国の潜水艦との衝突も十分考えられます。今後新たな展開がありそうです。衝撃の程度が大きくなかったから乗員の負傷も軽微に留まっているのでしょう。すると、低速で航行していたのか。

 

シナ海で米海軍原子力攻撃型潜水艦が正体不明の物体と衝突し乗組員十数名が負傷したことをUSNI Newsがつかんだ。

シーウルフ級原子力攻撃型潜水艦USSコネティカット (SSN-22)は10月2日、公海で作戦を終え帰港の途中と太平洋艦隊はUSNI Newsに7日伝えてきた。

 

「シーウルフ級高速攻撃型潜水艦USSコネティカット(SSN-22)が潜航中に物体に衝突した。10月2日午後のことで、インド太平洋の公海で作戦中だった。乗員の安全は海軍の最優先事項である。生命に危険な程度の負傷者は発生していない」とビル・クリントン大佐がUSNI Newsに伝えてきた。

 

「同艦は安全かつ安定した状態にある。原子力推進機関及び艦内区画には損傷がなく完全作動できる状態にある。艦のその他部分での損傷程度を調査中。米海軍は外部の援助を要請していない。今回の事態を調査する」


USS コネティカット (SSN-22) は2021年7月31日に横須賀に寄港していた。 US Navy Photo

 

国防関係者から衝突が発生したのは南シナ海で乗員11名が負傷し、中程度から軽度の負傷だとUSNI Newsは知らされた。同艦は現在グアムに向け航行中で翌日に到着予定と同関係者は説明している。同艦はグアムに向け浮上走行中という。

 

ワシントン州キツァップ-ブレマートンを母港とする同艦は5月27日より太平洋で展開していた。7月8月には日本へ寄港しており、第七艦隊司令官カール・トーマス大将が同艦を8月に訪れている。

 

コネティカットはシーウルフ級潜水艦の一隻で冷戦末期に最新鋭のソ連潜水艦を掃討するべく建造された。姉妹艦USSシーウルフ (SSN-21)、USSジミー・カーター(SSN-23)とともに海軍で最高水準の性能を誇り、機密情報の塊といえる攻撃型潜水艦である。

 

判明している直近の水中衝突事件ではUSSサンフランシスコ(SSN-711)が水中山脈に全速力で衝突した2005年の事案がある。グアム付近のことで、乗組員一名が死亡した。■

 

 

UPDATED: Attack Submarine USS Connecticut Suffers Underwater Collision in South China Sea - USNI News


By: Sam LaGrone

October 7, 2021 2:38 PMUpdated: October 7, 2021 3:51 PM


2021年10月7日木曜日

C-1とC-2が並んだ写真から改めて日本の航空機技術の進歩と日本の安全保障上の役割の変化がわかる。海外販売で成約がないのは残念だが。

 



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Kawasaki C-2 taxis next to C-1 in Japan

SCREEN CAPTURE FROM @MISONOR



崎重工業のC-2軍用輸送機は全くの新型機というわけではない。航空自衛隊での供用は2016年に始まっているからだ。とはいえ航空機スポッターがとらえた画像で先に登場した同じ川崎のC-1との比較が話題をかもしている。


C-2が各務原飛行場でC-1と並んで駐機している様子を捉えた写真だ。撮影したRikizo Misono (@misonor)は短いビデオ映像も公開しており、両機は親子のようだ。両機の大きさの違いに改めて驚く向きも多い。


親子になぞらえらえたが、「親」のC-1が先に登場し、大型のC-2が「子ども」だ。


日本はC-1後継機としてC-2を今世紀に入り開発開始した。ちょうど日本が国際任務を広範に実施し始めたころのことだった。C-1は第二次大戦時の米製旧型ピストン輸送機に代わる輸送機として企画され、最高時速430ノットながら航続距離は中途半端となったのは日本の防衛方針のためで、1974年に運用を開始した。通常運用で18千ポンドの運搬能力があり、C-130初期型より相当低い。C-1運用は今日も続いているが、運用上で制約がつく。


JAPAN MINISTRY OF DEFENSE VIA WIKIMEDIA

原型XC-2が量産型C-2と並んで飛行している。


そこで中距離中型輸送機開発がC-X輸送機として1995年に初めて予算化された。2001年にC-Xと当時MPXと呼ばれたのちのP-1哨戒機の同時開発で民間企業へ提案を防衛省が求めた。その時点で業界に懐疑的な見方が強かったが、P-1とC-2では一部サブシステム等の部品を共通化している。


巨大に見えるC-2だが、サイズはC-17とC-130の間で、性能も同様だ。事実、同機に一番近いのはターボプロップ方式のエアバスA-400Mだ。C-2はジェネラルエレクトリックCF6-80C2K1F高バイパス比ターボファン双発で、これは767搭載エンジンに近く、C-1のJT8D-M-9エンジンはとても小さく見える。同エンジンはプラット&ホイットニー原設計でライセンス生産された。推力の点では両機搭載エンジンの差は歴然としており、C-1は各14,500 lbsなのに対しC-2のCF6は各60,000 lbsだ。


JAPAN MOD

C-1が並んだ威容


C-2もC-1同様に短距離離着陸性能を実現しており、軍用輸送機としては異色の存在だ。双発仕様も同様だ。運航維持面で双発は扱いが楽だし燃料消費効率も高いもののエンジン喪失時の柔軟性が欠点となる。


C-2の大型後部貨物扉はC-1では不可能だった大型貨物の取り扱いを可能とした。ペイトリオット地対空ミサイル、装甲車両さらに三菱H-60ヘリコプターも搭載できる。


MINISTRY OF DEFENSE

C-2が軍用トラックを運んできた


C-2により自衛隊は兵員貨物の迅速展開が可能となり、人道援助等への機材提供も可能となった。日本が従来より広範な国際任務を想定する中でC-2は重要な機材だ。2021年8月にはアフガニスタンのハミド・カルザイ国際空港にC-2が派遣されていた。


C-2はC-1に対し圧倒的な優位性がある。航続距離、速力、ペイロードが拡大したほか、C-2には新技術が導入されており、操縦席周りや飛行制御系、自動空中投下機能、自機防御装備、空中給油能力が導入されている。


そこでC-2に貨物輸送以外の任務を期待する声がある。日本は試作二号機を電子情報収集用RC-2に改装し、周辺国の脅威の高まりに呼応し、重要な機材になっている。


軍用機の国際市場で日本製装備品は大きな存在ではないが、C-2はP-1とあわせ海外販売されることになり、エアバスA400MやイリューシンIl-76と競合している。ただし海外での成約はまだない。航空自衛隊の調達規模は22機とC-1の31機より下回る。

 

各務原に駐機するC-1とC-2の姿からツイッターで驚きの声が続いたが、軍用機開発に向けた日本の熱意とともに数十年で運用能力がここまで高まったことが改めてわかる。■

 

Japan’s C-2 Cargo Jet Absolutely Dwarfs The C-1 It Was Developed From In This Viral Video

A video of a Kawasaki C-2 taxing past its smaller ‘parent,’ the C-1, shows just how big a leap in size and capability the C-2 offers.

BY BRIAN O'ROURKE THOMAS NEWDICK TYLER ROGOWAY OCTOBER 6, 2021


F-35Aの核兵器運用能力取得まであと一歩。模擬核爆弾投下に成功。F-35が核抑止力の手段になる日がやってくる。


An F-35A Lighting II carrying a B61-12 Joint Test Assembly sits on the flight line at Nellis Air Force Base, Nevada, Sept. 21, 2021

B61-12模擬核爆弾を搭載したF-35AライトニングII がネリス空軍基地に現れた Sept. 21, 2021. US Air Force photo by Airman 1st Class Zachary Rufus


  • F-35Aの核運用能力が実現に一歩近づいた

  • 米空軍は同機が模擬爆弾投下を実施し、核兵器運用認証取得が近づいたと発表

  • ステルス機には敵防空網を突破し大きな攻撃効果が期待される


空軍のF-35AライトニングII共用打撃戦闘機が核兵器運用に近づいた。最近実施されたテスト結果を空軍が発表した。


2機のF-35AがB61-12共用試験体(模擬核爆弾)の投下テストをトノバ試射場(ネヴァダ州)で9月21日に行った。


今回のテストは核運用認証手続きの最終実地試験の第一段階で第二段階は後日完了する。


An F-35A Lightning II takes off to complete the final test exercise of the nuclear design certification process at Nellis Air Force Base, Nevada, Sept. 21, 2021

核運用テストのためネリス空軍基地を離陸するF-35A ライトニングII 、Sept. 21, 2021. US Air Force photo by Airman 1st Class Zachary Rufus


空軍は今回のテストについて「代表的核兵器B61-12の投下テストを運用中のF-35Aで行う最初の実施」だったと表現している。


B61-12とは投下式B61ファミリーの最新版で約800ポンド重量で核爆発効果が調整可能で最大TNT50キロトンになる。最初の生産型が2022年に空軍に納入される。


「B61シリーズは戦術投下型核兵器でF-15EやF-16C/Dでも運用可能だ」とダニエル・ジャクソン中佐(ACC戦略抑止効果核兵器統合主管)が声明を発表している。「第五世代機が核運用能力を獲得すれば全く新しい戦略レベルの戦力が実現し、米国の核抑止任務が強化される」


ただし、F-35A全機が核兵器運用可能となるわけではない。核兵器運用認証が下りても、核兵器運用を想定する部隊の機材に限り核兵器運用の仕様変更が行われる。米空軍の核運用可能ステルス機にはB-2スピリット爆撃機があるが、ステルス戦闘機がここに加われば空軍の戦力増強が実現する。


「潜在的勢力は攻撃を命じる前によく考える必要がある」と航空戦闘軍団の戦略抑止力担当次長ダグラス・A・ケイベル中佐がAir Force Magazineで語っている。「ステルス機は非ステルス機では不可能なほどの戦闘空域内部への侵入が可能だからだ」


今回のテストには422および59試験評価飛行隊、57および926航空機整備隊、ボルト航空機整備隊が参加し、F-35Aの核兵器運用が一歩近づいた格好だが、現時点で同機の核兵器完全運用がいつになるかは不明だ。■


F-35A Stealth Fighter Moves Closer to Being Able to Carry Nukes


Ryan Pickrell 8 hours ago

 

敗戦から76年経過し、日本が空母運用国に復帰。いずも、かがの空母化で変わる日本の安全保障。

F-35B_TAKEOFF_IZUMO1

防衛省

 

本が固定翼機による空母運用の世界に戻ってきた。米海兵隊のF-35Bがヘリコプター空母いずもから発着艦を行った。今回の実証で海上自衛隊に新時代が開いた。

 

防衛省は米海兵隊所属F-35B二機がいずも艦上での運用に成功したと本日発表し、写真映像を公表した。四国沖だったという。防衛省からは海兵隊機材を使い10月3日から7日の間に太平洋で実証を行うとの発表が先に出ていた。いずもをヘリコプター空母から真の空母に改装した効果を実証するのが目的だ。実証に先立ち、いずもは岩国に回航されていた。

 

今回投入された機材は海兵戦闘攻撃飛行隊242「バッツ」のもので岩国海兵隊航空基地に2020年投入され、先月に初期作戦能力(IOC)獲得宣言を受けたばかりだ。

 

「バッツ」とともにVMFA-121「グリーンナイツ」が岩国基地に配備されており、同隊は2015年7月にIOC宣言を受け、2017年1月に同基地に移動してきた。

 

いずもは今後さらに固定翼機運用を想定した改修を受けながら、通常の運用を続けていく。まず、耐熱塗装を飛行甲板に施し、F-35Bの高温排熱に対応する。その他照明、甲板上のマーキングが変更された。

 

防衛省

VMFA-242所属の F-35Bがいずもに垂直着艦をした。 

 

長期的には同艦の飛行甲板は大幅に改装される。現在は末端がすぼまって台形になっており、艦載機の運用に充てる面積が減っている。いずも艦上のF-35B運用映像を見ると、機体は極めて短い発艦によりこの制約を克服しているようだ。改修後の同艦は飛行甲板が四角形になり、米海軍の大型強襲揚陸艦に似た外形になる。

 

いずもの次に姉妹艦かがが同様の改修を受けるが、予定では改修を一度に完了する。

 

F-35B運用を想定し両艦は飛行甲板の下で各種の改修を受け、機体整備が楽になり、弾薬類や航空燃料の貯蔵部分が生まれる。

 

改修は日本がF-35B調達を進めるタイミングで行われている。日本が調達するF-35全147機中、42機がSTOVL型F-35Bだ。 

 

いずもの改修は2026年に完了する予定で、それまでは海兵隊機材が同艦から運用する姿が見られるはずだ。海兵隊は同機を英空母HMSクィーンエリザベス、イタリア海軍空母カヴールでもF-35Bの運用を試行している。

 

日本の空母運用復帰まで時間がかかった。太平洋戦争の1945年が最後の空母運用実績だった。戦後になり日本の憲法は防衛を旨とする精神は本格的空母の保有を認めてこなかった。ただし、遠からぬ将来に日本は自国の固定翼戦術航空戦力を海上から展開する能力を手に入れることで、海上自衛隊の戦力を増強し、アジア太平洋のみならずその先にまで展開することが可能となる。■

 

F-35B Stealth Fighters Operate From A Japanese Aircraft Carrier For The First Time

The U.S. Marine Corps jets are the first fixed-wing aircraft to fly from a Japanese warship since World War II.

BY THOMAS NEWDICK OCTOBER 5, 2021


 

2021年10月6日水曜日

エイブラムズ戦車は40年にわたり供用され、今日も改良を続ける。米陸軍が手放したくない装備。ロシア、中国の最新戦車に対抗する決め手は?

 

 

M1 Abrams Tank History

Image: Creative Commons.

 

陸軍はM1A2エイブラムズ主力戦車の後継装備を調達すべきか、それとも改良を続けるべきか。いまのところ、改修を支持する声のほうが大きい。

 

M1A2は大幅改良されており、車内は当初の様子から大幅に変わっている。同型式を世界最高峰の技術を盛り込んだ戦車だとする向きも多い。今年エイブラムズM1A2は北極付近の天候条件で2千マイル走破して寒冷地運用に問題がないことを証明する予定だ。

 

信じがたいことだが、エイブラムズの原企画はカーター政権時代の1970年代末だ。第一陣が納品されたのは1980だった。以後40年以上にわたり供用されている。最初の大規模実戦は砂漠の嵐作戦で、イラク軍を圧倒した。1,900両近くが砂漠に投入されサダム・フセインの軍を蹴散らした。エイブラムズ喪失はわずか18両で、第一湾岸戦争で戦車乗員に一人も犠牲者が発生していない。このあとに米同盟国からの同戦車発注が相次いだ。その後ロシア製戦車への対抗策としてエイブラムズは順次改良を受けていった。

 

エイブラムズには強力な120mm滑腔砲と機関銃二門の武装がつく。乗員4名で運用し、三秒で次の砲弾を装填可能だ。ガスタービンエンジン1,500馬力で時速42マイルを出し、265マイルの航続力がある、

 

中でも大きな改良点が車両間情報システムInter-vehicle Information System(IVIS)で戦闘中でも常時接続により通信が可能となった。先導車の車長に配下の各車から情報が自動的に更新されていく。各車それぞれの位置情報と移動ポイントが設定され、IVISの機能をフルに発揮する。IVISは敵戦車の位置も把握するのでM1A2は大きく戦闘で優位となる。各車長は全天候熱画像で状況を把握する。運転者にデジタルディスプレイがつき、砲手の視野角も広がった。IVISには音声認識機能及びデジタル地図機能が後日搭載される。

 

エイブラムズは40年にわたり供用されるという驚くべき戦車となった。対テロ戦では歩兵戦闘車や騎兵部隊が戦闘の前面に立った。だが、ロシアや中国が対戦相手となると装甲部隊間の戦闘となり、これまでの改良によりエイブラムズで米陸軍は優位性を保つはずだ。

 

残念ながら、海兵隊には戦車戦は発生しない。海兵隊はすでに装甲車両部隊を廃止しており、海兵隊仕様のエイブラムズの運用をやめている。そうなると米陸軍が装甲車両が衝突する戦闘で独壇場となるはずだ。■

 

Abrams: The 40 Year Old Super Tank The U.S. Military Can’t Get Rid Of

ByBrent M. EastwoodPublished17 hours ago

 

 

1945’s new Defense and National Security Editor, Brent M. Eastwood, PhD, is the author of Humans, Machines, and Data: Future Trends in Warfare. He is an Emerging Threats expert and former U.S. Army Infantry officer.



AUKUSに入れてもらえなかったカナダ。本来米国と一衣帯水の関係のはずだが、防衛力整備に真剣でなかった。だが逆転し、カナダも含めたCANAUKUSが生まれる可能性がある。

 


カナダ首相ジャスティン・トルドー、国防相ハージット・サジャンはAUKUS合意から取り残されたと感じているのだろうか。 (Sean Gallup/Getty Images)


子力潜水艦建造の構想を砕かれ憤懣やるかたないフランスだが、米国の北にフランス語を使う国がもう一つある。



新しく生まれたAUKUS同盟はフランスにとって660億ドルの潜水艦商戦を失う悪夢となったが、ファイブアイズのメンバー、カナダにはもっと大きな喪失感を生んでいる。


今回の新同盟について事前相談を受けなかったカナダの官僚組織は正しく状況を見ているようだ。匿名でカナダ関係者はこれは「スリーアイズ」だとし、「カナダ除外は三か国から見ればカナダは対中国対抗では『弱い姉妹』なのだろう」と述べた。


カナダだけではない。ファイブアイズのもう一つのパートナー国ニュージーランドも二級国扱いだ。サウスカロライナ州程度の人口しかないニュージーランドには反核平和主義が長く続き、最近も対中関係で軟調な姿勢なので、この扱いは不当とは言えない。だがカナダでは今回の取り扱いは大きなショックと受け止められている。


面積では米国並み、人口はカリフォーニア州と同程度のカナダは1941年のハイドパーク宣言以来、米国に最も近い防衛協力国となっている。両国の防衛産業が国境を越え複雑に絡み合っているため、カナダは米輸出規制の唯一の例外国であり、法的には米国の防衛産業基盤の一部との扱いを受けている。これを一般には国家技術産業基盤National Technology Industrial Base (NTIB)と呼ぶ。


カナダが国防力整備に本腰を入れてこなかったのが懸念点となっていた。回想すれば、AVROアロー戦闘機を1959年にカナダは開発中止し、以後60年に及ぶ国防力衰退を招いたといえる。カナダの国防支出はGDP比で1960年の4.2%が2014年には0.99%にまで下がっていた。


福祉国家カナダにとって国防軍の規模、戦力は革新性と合わせ低下していった。イラク、アフガニスタンへの派兵でカナダの財政事情は圧迫され、装備近代化の予定は棚上げされた。レーダー、艦艇、航空機で劣化が進み、一方で中国とロシアは北方洋を自国の湖に変えようとしている。


カナダの主権保護のためには北方へ移動可能な強力な潜水艦部隊整備が高優先順位のはずだが、カナダは艦齢30年の元英海軍ディーゼル潜水艦4隻を保有しているに過ぎない。この潜水艦はパキスタン海軍でさえ受領を断ったものだ。王立カナダ海軍の戦力は1988年に当時のロナルド・レーガン大統領がペンタゴンの頭ごなしに原子力潜水艦技術をカナダに譲渡することで新型艦建造を認めた当時を思えばはるかに低い水準だ。またとないチャンスをカナダが結局ものにできず、原子力潜水艦は結局構想に終わった。


オーストラリアが新たな脅威地図を意識し防衛体制強化に向かい、米国との防衛協力関係で近い間柄になったのは当然といえる。その発端は2015年に米議会がオーストラリア、英国をともにNTIB構造の一部に組み入れたことに始まる。AUKUSはNTIBから一気に進展し、AIや量子コンピュータなどその他分野も対象にしており、もはや潜水艦近代化のみが対象ではない。


カナダが取り残された感があるが、実は同国はこの5年で防衛支出増で一定の進展を見せている。それでも米国同様に国家予算は社会福祉に向かうほうが多く、軍事力整備は後回しになっている。さらに支出を増やし、適正な装備品導入に予算を回す必要がるが、問題は政治の判断で意思の力であり、これがないと実行はできない。


レーガン大統領構想を再度とりあげ、カナダに強力な原子力潜水艦部隊を整備するべきだ。米仏いずれかの支援でこれを進める。カナダは太平洋、大西洋、北極海に面する。そこに高性能水中戦力が実現し、志を共にする同盟国とともに意味のある装備を備えた部隊が生まれれば各戦域での戦力が増強されることになる。


事態の進展が良い意味の刺激となり、4か国体制のCANAUKUSが近いうちに生まれるだろう。■


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Bill Greenwalt, long the top Republican acquisition policy expert on the SASC, rose to become deputy defense undersecretary for industrial policy. A member of the Breaking Defense Board of Contributors, he’s now a fellow at the American Enterprise Institute.