2022年1月2日日曜日

PLAN空母遼寧が20日にわたる演習を終え寄港。まだまだ低戦力とはいえ侮ってはいけない。もちろん日本は同部隊の動静を海空から監視しています。

 

統合幕僚監部

 

  • 日本の防衛省発表の写真で遼寧艦上で戦闘機、ヘリコプターの活動が認められる。同艦には5隻が随行している

  • 航続距離を伸ばした艦載機の導入で同艦の戦闘能力が増えたとコメンテーターが評している


国初の空母遼寧をはじめとする部隊が沖縄東方で戦闘機、ヘリコプターの運用演習を展開しており、同艦の戦闘能力向上を専門家が指摘している。



部隊は海軍艦艇6隻で遼寧、055型駆逐艦、052D型駆逐艦各1、054A型フリゲート艦2、901型補給艦1が沖縄県北大東島東方300km地点を12月26日航行したと防衛省が発表した。


同省公表の写真ではJ-15戦闘機、Z-9、Z-18の各へリコプターが遼寧艦上で確認され、J-15が発艦する写真もある。


統合幕僚監部



日本は駆逐艦いずもおよび戦闘機数機を送り、中国部隊の動向を監視した。


遼寧は先週から太平洋で外洋訓練を展開している。


遼寧に随行する055型駆逐艦南昌Nanchang、054A型フリゲート艦 日照Rizhao、補給艦呼倫湖Hulun Lakeが先週水曜日に男女群島西方350㎞地点で見つかり、宮古海峡を通過し翌日太平洋に入っていた。


海上自衛隊では052D誘導ミサイル駆逐艦廈門Xiamenも宮古海峡を通過したのを確認している。


中国軍で教官を務めたコメンテーターSong Zhonpingは演習を見ると遼寧は多用な機材を運用し戦闘能力を獲得したようだと述べる。


「航続距離が異なる機材の戦闘機、早期警戒機Z-18を運用することで戦闘力をフル編成した。比較的強力な防衛能力が外洋部分の海空で実現した」


S・ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のコリン・コーCollin Kohによれば遼寧はJ-15戦闘機を最大24機のほかヘリコプターを搭載する。「すべて訓練用で今後の基礎を築く意味がある」


二年前就役した国産建造初の空母山東Shandongは海南省を出港し「戦闘を意識した演習」を南シナ海で展開すると共産党を代弁する人民日報が12月26日に報じていた。


演習では戦闘機着艦、ダメージコントロール、海上捜索救助を行うと同記事にあるが、演習地点や時期は触れていない。


両空母は近日中に合流し、台湾や米国を意識した運用に入ると軍事観測筋は見ている。


空母三号艦も建造が進んでおり、これあmでの二艦より大型かつ高性能になるとの予想がある。商業衛星写真では同艦建造は上海で相当の進展を示しており、進水は三ないし六カ月以内と思われる。


コーによれば003型空母となる新型艦の航空戦力規模は米超大型空母に近いものになる。■


Chinese aircraft carrier's Pacific drills 'show boosted combat capability' | South China Morning Post

Pacific drills show China's first aircraft carrier has boosted its combat capability, experts say


Teddy Ng , South China Morning Post Dec 27, 2021, 10:59 PM

Additional reporting by Amber Wang.



続けて、中国空母部隊の帰港についてUSNI Newsが以下伝えています。


中国空母遼寧(16)が洋上給油を受けた。 December 2021 deployment. PLAN Photo

民解放軍海軍の遼寧空母群が2021年12月30日に母港青島に戻ってきた。PLANは同部隊は訓練を成功裏に終えたと公式発表した。

訓練は20日にわたり、同空母群は黄海、東シナ海を通過し宮古海峡から西太平洋に入った。各種想定で総合訓練を行ったと発表にある。12月9日に黄海で捜索救難訓練、戦術航空作戦としてJ-15戦闘機、Z-9Z-18の各ヘリコプターを運用した。発着艦訓練は昼夜通して行われた。

J-15 艦載機が遼寧(16)から発艦した。December 2021 deployment in the Western Pacific. PLAN Photo 海上自衛隊のいずもが写っている。

同部隊はその後西太平洋で戦闘能力を試し、対空対潜戦の訓練意外に指揮統制機能、補給活動、戦隊調整を試した。PLAN公表の写真では遼寧(艦番号16)が901型補給艦と補給活動演習を行う様子がわかる。

PLAN発表にはその他艦の言及がなかったが、日本の統合幕僚監部から遼寧に加え、駆逐艦南昌(101)、フリゲート艦日照(598)、901型補給艦を12月15日男女群島西方で視認され、南東に移動し、12月16日に宮古島と沖縄の間から太平洋に進出したと発表が出ていた。

日本側報道資料によれば12月19日、20日に上記四艦に駆逐艦厦門(154)、名称不詳の054A型フリゲート艦が合流し空母航空運用など演習が展開された。統合幕僚監部の12月27日発表では、遼寧空母群が12月25日に沖縄と宮古島間を通過し東シナ海に入ったとある。

この間は一貫して他国艦船航空機が同空母群の動静を監視していたとPLANが発表している。発表では国名を上げていないが、PLAN公表の写真には海上自衛隊のヘリコプター空母JSいずも(DDH-183)が付近に写りこんでいる。

J-15 が遼寧 (16) から離陸した December 2021 deployment. PLAN Photo

日本側発表ではいずもが遼寧空母群を東シナ海から西太平洋への移動中一貫して監視したとあり、その他駆逐艦あきづき(DD-115)、P-1海洋監視機が厚木航空基地、P-3オライオンが那覇航空基地からそれぞれ対応したとある。さらに日本側発表では航空自衛隊戦闘機もスクランブル出動し、遼寧からの航空機ヘリコプター運用に対応したとある。

遼寧空母群の航海と活動は国際慣行に沿ったものであったが、日本付近での行動は10月の軍事行動に続き懸念を生んだ。10月にはロシア中国の連合部隊が本州東方公海上を移動し、両国は今後も合同海上演習を続けると述べていた。

Chinese Carrier Strike Group Liaoning Returns From Deployment

By: Dzirhan Mahadzir

December 31, 2021 1:57 PMUpdated: January 1, 2022 1:56 PM

ついでに中国側の見方もお伝えしましょう。環球時報の記事です。

 

寧空母群が12月30日公海での演習を終えた。同群は黄海、東シナ海、西太平洋で21日にわたる演習を展開し、全体としての実戦対応力を引き上げた。

 

近距離で外国艦艇航空機が監視を展開したが中国部隊は難なく対応し、自信を深めた。

 

訓練を成功裏に終えた遼寧空母群は山東省青島に12月30日午前入港したとPLA海軍が報道発表した。

 

同群は黄海、東シナ海から宮古海峡を通過し西太平洋各地に展開し、総合的かつ実戦を意識した訓練を展開したと同上発表にある。

 

訓練では実戦シナリオを使い各種装備を組み合わせた訓練を展開したとあり、公海上での運用を意識し同群全体の戦闘能力向上につながった。

 

演習は12月9日に捜索救難訓練で幕を開け、黄海でJ-15戦闘機を全天候下で離着艦させた。

 

その後遼寧空母群は西太平洋へ移動し、高度警戒態勢のまま戦闘の各段階に応じ複雑かつ流動的な海上空中の状況への適合を試した。

 

西太平洋で同群は海上状況が悪かったが各種戦闘シナリオで対空対潜戦の腕を磨いた。J-15戦闘機は昼間夜間問わず第一列島線外に展開し、戦闘哨戒飛行のほか指揮統制機能、システム構築、戦力調整や総合支援も行った。

 

演習を通じ外国艦船航空機が繰り返し近距離での偵察を試み、中国空母部隊の動静を探り、追尾してきた。中国側は冷静に対応し、艦載機を発進させたとPLA海軍は公表している。

 

J-15が発艦する写真に日本の事実上の空母いずもが近距離を航行する姿が映り込んでいる。いずもには054A型フリゲート艦が追尾していた。

 

中国中央テレビが12月30日放映した映像はJ-15コックピットからのもので、外国のF-15戦闘機を追尾していた。

 

各演習で公海上での戦闘支援能力が向上し、中国空母群の戦力が本国から遠く離れた地点でも有効なことを示せたと海軍問題に詳しいテレビ評論家Song Zhongpingが環球時報に伝えている。

 

外国軍の近距離での監視偵察に適切に対応したことでPLA海軍は戦力の充実にあわせ自信を示せたと専門家は見ている。■

 

Aircraft carrier Liaoning wraps up open sea exercises and deals with foreign close-in reconnaissance

By Liu Xuanzun

Published: Dec 31, 2021 01:02 AM

https://www.globaltimes.cn/page/202112/1243847.shtml


 

 


2022年1月1日土曜日

新年早々物騒なニュース:中国のとんでもない噂 本当なら中国経済は超インフレに突入し、世界経済も大打撃。COVIDに続き再び中国が混乱の原因になるのか。

 


造幣局が「公式」偽造紙幣2兆元を印刷?


中国国家紙幣印刷造幣局の陳耀明が自首してきたとのニュースがネット上に流れている。2兆元(約36兆円)の「同数紙幣」を私的に印刷した疑いだ。


陳耀明氏は造幣局内の材料を利用し2兆元相当の偽札を印刷したという。紙幣には発行済み番号が再び印字されているので流通すれば同じ紙幣が存在することになる。



中央銀行の公表文によると、2021年11月の流通通貨(M0)は8兆7400億元なので、2兆元は23%を占める。


もし、2兆元の「本物」の偽札が流通していれば、間違いなく巨大なインフレを引き起こし、物価高騰と国の経済破綻を招く。


12月22日、中国人民銀行は、「性質の悪い噂」と一蹴した。 「人民元の印刷と発行には厳格な作業手順と技術基準があり、中国人民銀行は常に法律に従い作業を実施している。 当行は、このような風説の流布を厳しく非難し、公安当局に通報ずみ」と述べている。


https://www.163.com/dy/article/GS107F8F0552I9XH.html


中国では現金で買物するとまず偽札チェックを受けるのが普通です。それだけ贋札が流通しているため、電子決済に一気に走ったという事情もあるのでしょう。日のないところに煙は立ちません。中国経済が2022年大変な境遇に陥ることが予想されます。波乱の予感がします。


令和4年 2022年 年頭のご挨拶

 者のみなさまへ

あけましておめでとうございます

昨年もいろいろなニュースをお伝えしてきました。

今年も防衛関係、先端技術関係を中心に海外のニュースをお伝えしてきます。


今年の干支は壬寅で、

何か大きなことが始まる年になるのか、他人便りでなるようになるだけの年になってしまうのか、注目ですね。日本の防衛では引き続き進化が続くと思いますが、国民の意識と知識がまだまだ追い付いていません。中国ではなんらかの望ましくない変動が露呈してくるでしょう。北朝鮮は世界の関心を集めようと懸命に画策するはずです。


メディア関係者の皆様には例えばF-35をF35に勝手に改称する「慣行」を改めてもらいますようお願いします。また、そろそろ防衛専門のスタッフをそろえてもらい、知見を集積してもらいたいですね。


今年のカウンターは 8233885 からスタートです。








2022年最初の記事は、潜水艦発射長距離巡航ミサイルの検討に入った日本の新しい安全保障構想についてです。

 新年あけましておめでとうございます。

第一号記事として日本の安全保障上で重要な内容を選びました。例によって中国、北朝鮮の権益を代弁するような「平和」勢力が国会内外でノイズを上げそうですが(本人が否定しても結果的にそうなっているのでこれはヘイトではありません)、2022年は日本の安全保障が実効性を向上するための大きな一歩になりそうな予感がします。今年もご愛顧のほどよろしくお願いいたします。


JMSDF

 

 

日本がめざす潜水艦発射ミサイルは対地・対艦両用で中国、北朝鮮への抑止効果を期待する。

 

 

本が潜水艦で新型長距離巡航ミサイル運用を行う検討に入っており、射程620マイルのミサイルを2020年代後半に配備するとの報道が入ってきた。

 

 

ミサイルは国産開発で海上自衛隊にスタンドオフ攻撃機能が実現し、水上艦や陸上施設を標的とし、中国や北朝鮮による脅威を相殺する効果が期待される。

 

報じたのは読売新聞で匿名の複数政府筋が海上自衛隊で供用中の潜水艦並びに今後就役する潜水艦に長距離巡航ミサイルを搭載する案を検討中と認めた。搭載するミサイルは12式亜音速対艦ミサイルを原型とする。同ミサイルは陸上自衛隊が供用中で現在の射程は124マイル程度。発射方法として垂直発射方式(VLS)と魚雷発射管の双方を検討する。現行の海自潜水艦にVLSは搭載されていない。また潜水艦で何発のミサイルを運用するかも不明だ。

 

JGSDF

陸上自衛隊の12式対艦ミサイルの試射.

 

 

読売新聞記事では潜水艦による対地攻撃を強調し、「敵ミサイル発射基地を正当防衛として」攻撃するとある。ただし同記事掲載の図には潜航中の潜水艦が敵水上艦も攻撃する姿があるが、対艦ミサイルを先に搭載することが記事からわかる。「敵攻撃手段の有効射程外からの敵艦へ反撃」とあり、同兵器を「将来は敵基地攻撃に転用する」とある。最終的に同じミサイルで対艦攻撃と対地攻撃双方に対応させることとし、トマホークIVあるいはノルウェーがI開発の共用打撃ミサイル(JSM)と同様になる。日本は後者をF-35ステルス機用に導入している。

 

「正当防衛」を強調するのは攻撃行動を排除する現行憲法の枠内で自衛隊を運用する配慮のためだ。ただし、憲法で想定した状況は急速に変化しており、固定翼機運用の航空母艦の調達も実現している。

 

新型長距離巡航ミサイル開発の大工程は未発表だが、2020年代末に供用開始するとしたら相当野心的な構想だ。とくにVLSを既存艦あるいは今後建造する艦に搭載しようとすれば相当の工事となる。南朝鮮が建造中の島山安昌浩Dosan Ahn Changho級ではVLSを順次拡大し6本を今後10本にし、巡航ミサイルや弾道ミサイルを運用するといわれている。こうした順次拡大方式を日本も採用するかもしれない。また魚雷発射管を利用するミサイルを既存艦に搭載し、VLSは今後建造する艦に搭載するのだろう。

 

海自潜水艦はハープーン対艦ミサイルを搭載しており、魚雷発射管で運用するが、射程距離は今回構想の新型ミサイルより短く、対地攻撃能力もない。海自のUGM-84LハープーンブロックIIの有効射程は80マイル程度だ。

 

記事では岸田文雄首相がめざす国家安全保障戦略に「敵基地攻撃能力」を盛り込むとある。同戦略は2022年末に公表の予定で、防衛外交両面での中長期指針となる。潜水艦発射式ミサイルは目標達成の手段となり、海自には22隻の通常動力型潜水艦があり、現在2隻が加わる予定なので十分な規模といえる。ただし、空中発射式や艦上発射式巡航ミサイルで要求にこたえられそうだ。

 

12式対艦ミサイルの射程延長も進行中で、航空自衛隊のF-15Jに搭載する案もある。

 

12式の射程延長作業は2018年度から始まっているが、昨年12月に同ミサイルで設計変更の方針が発表され、搭載燃料増加のため大型化、推進部分を高高度飛翔に最適化することになった。飛翔距離は560マイルになり、さらに930マイルまで延長される。第一期の射程延長でも今回想定の新型巡航ミサイルと同程度の射程が実現する。もっと重要なのは12式も地上目標攻撃が可能なことで、レーダー断面積の縮小対策で探知されにくくなる。ただし、射程延長型12式を潜水艦発射用にする言及はなかった。

 

とはいえ、12式改良は2019年度から2023年度までかかると見られ、今回発表の潜水艦発射式巡航ミサイル構想に符合する。

 

12式陸上発射式対艦ミサイルとは:

 

対艦対地両用で長距離射程の巡航ミサイル12式は海上自衛隊にも有益な装備となる。海自は急拡大するPLAN水上艦艇部隊へ対応を迫られており、日本周辺以外に南シナ海、東シナ海ではとくに後者に尖閣諸島があり、PLANは空母打撃群まで整備している。

 

合わせて対地攻撃仕様の新型ミサイルで日本は中国や北朝鮮の弾道ミサイル能力を標的におさめる装備を入手できる。北朝鮮は弾道ミサイル発射をたびたび行い、日本近海に着弾させている。重要な軍事施設や国家指揮統制施設、航空基地、防空施設を標的とするのが海自長距離巡航ミサイルの有事対応となろう。

 

中国あるいは北朝鮮が日本を攻撃してくれば、潜水艦の対地攻撃巡航ミサイルで反攻する。敵第一撃で日本の航空戦力や水上艦艇が大損害を受けても潜水艦発射ミサイルは有効な手段となる。海自潜水艦の攻撃効果への期待以外にそもそも海自潜水艦は世界最高レベルの通常型潜水艦で、静粛度にすぐれ、リチウムイオン電池まで搭載している。

 

12式改良を念頭に長距離対応巡航ミサイルの開発は相当進んでいるのだろう。未確認情報だが、たいげい級一号艦はVLSあるいは魚雷発射管の評価に供され、艦寸法とくに上部構造を拡大しているのはVLS搭載を試す狙いがあるともいわれる。

 

日本はトマホーク巡航ミサイルを米国から調達する案も検討していた。2017年にこのサイトでお伝えしている。スタンドオフ報復攻撃手段として北朝鮮のミサイル発射施設に向け発射する構想だった。今回発表の長距離巡航ミサイル構想と並行しているが、日本が当初想定したのは陸上発射型のトマホーク導入で、潜水艦発射式ではなかった。その後トマホーク導入に進展がないが、ブロックIV仕様の同ミサイルは日本の求める性能に完璧に符合している。

 

新型対地攻撃ミサイルの潜水艦搭載に加え日本国から遠く離れた地点への攻撃能力を導入すれば従来の「専守防衛」が大きく変わる。ミサイルをVLSセル発射用に改装するのは容易で海自水上艦艇での運用も可能となろう。明らかなのは日本の戦略姿勢では長距離攻撃能力を潜水艦のみならず広範な手段で実現する要求が急速に強まっていることだ。■

 

Japan Wants To Arm Its Submarines With Long-Range Cruise Missiles: Report

The missiles would offer land-attack and anti-ship capabilities and would be expected to serve as a deterrent to China and North Korea.

BY THOMAS NEWDICK DECEMBER 30, 2021

https://www.thedrive.com/the-war-zone/43683/japan-wants-to-arm-its-submarines-with-long-range-cruise-missiles-report


2021年12月31日金曜日

中国海洋戦略の背後にマハンあり。米国生まれの戦略思想を中国が真剣に勉強した成果で大海軍が生まれた。

ホームズ教授の講義ですが、随所にあれと思う点があるのはエッセイが出たのが前の北京オリンピックのころのためです。そして時が巡り再び北京で冬季オリンピックが開かれる2022年ですでに中国海軍は規模の点で米海軍を追い越しており、変化があまりにも激しいのが気になります。

Naval History and Heritage Command

洋戦略思想家アルフレッド・セイヤー・マハン Alfred Thayer Mahan が死去し久しいが、今日でも世界を引き続き形成しているのがその根本思想だ。ただし、本人の予想と異なる形で影響を与えている。19世紀末のアメリカによるアジア進出を推進し、近代アメリカ海軍の祖の一人であるマハンの理論は、著作『The Influence of Sea Power upon History』や『The Problem of Asia』が伝えているが、中国などアジアの台頭で逆にアメリカが被害を被る可能性もある。

 

中国海軍にマハン思想が根付き、東アジアで米国の安全保障上の利益が損なわれる前に、ワシントンは北京と海洋戦略の議論を今すぐ始めるべきだ。

 

著者はこの問題を自ら体験した。北京でフォード財団主催の「シーレーン安全保障」会議で論文発表したが、中国のパネリストたちは数え切れないほどマハンに言及していた。また、必ずと言っていいほど、マハンの教えの中で最も好戦的に聞こえる、海上大規模交戦の想定を引用していた。

 

マハンの言う「海上指揮」とは、「敵の旗を追い払うか、逃亡させる海上での威圧的な武力」であり、「敵沿岸を往来する商業航路を閉鎖すること」だと中国側は指摘した。装甲戦艦は、この「威圧的な力」を具現化した。この力は、ライバル海洋国家の海軍を粉砕し、戦略的水路の支配権を奪うために使うべきだとマハンは暗示していた。

 

中国の経済力、軍事力が高まる中で、こうした思考は、南シナ海や台湾海峡など戦略的水路多数がある東アジアで緊張を煽りかねない。第一次世界大戦以前にも、新興ドイツが大英帝国にシーレーンの支配と帝国の「有利な地位」に挑戦したことがあった。

 

マハン理論は、世界大戦の勃発に間接的に貢献した。同様に、今日の中国の戦略家に武力行使を選択させている可能性もある。

 

影響力を及ぼすドイツ人ではカイザー・ヴィルヘルム2世、アルフレッド・フォン・ティルピッツ提督、そしてドイツ各大学の「艦隊教授」が、強力な戦闘艦隊整備を正当化するべくマハン理論を取り上げた。「私は今、マハン大佐の著作を単に読むのではなく、むさぼるように目を通し、暗記しようとしている」と、カイザーが言い放っていた。「この本は帝国海軍の全艦に導入し、艦長や士官が常に引用している」。

 

ドイツにとって困ったことに、ドイツ北部の港と大西洋を結ぶ「狭い海」、さらに1880年代から1890年代にかけ獲得したささやかな帝国にイギリス海軍が立ちふさがっていた。そこでドイツの海軍戦略は海上貿易に依存する島国であり、海上支配権を軽々に譲れないイギリスへの海軍戦略として戦艦建造を進めた。

 

英独海軍の軍拡競争は避けるべきだった。両国は友好関係を長く維持し、その海洋上の権益はほぼ一致していた。もしドイツがアフリカやアジアへのアクセスを確保しようと思えば、シーレーン警備に適した長距離軽武装の巡洋艦を大量建造したはずだ。これに対し、戦艦は燃料補給に縛られ、ドイツから遠く離れ活動できない。イギリスにとってドイツ戦闘艦隊は脅威にしか映らなかった。

 

そこで現在だ。今のところ、中国の戦略家がマハンをどう解釈したところで変わりは皆無に近い。中国は経済発展に夢中で、石油や原材料の自由な流れを危うくしたくないはずだ。中国の商船隊は急増し、新しい造船所が何十カ所も建設されている中で、海軍の拡張はこれからだ。

 

だがこれは変わる。中国の経済成長は、帝政ドイツの経済成長が海軍整備を支えたように、強力な海軍を構築するだけの資源を供給し始めている。中国の海軍士官が今日、海洋戦略についてどのように考えているかによって、中国海軍の戦略が形成される。マハンの弟子たちは、アメリカの「脅威」に対抗するべく強力な海軍の建造を選択するかもしれない。

 

北京が帝政ドイツの破滅を繰り返さないためにも、ワシントンは以下のポイント3点を指摘する必要がある。第一に、西側の海洋戦略はマハンから自由になっている。つまり、北京は中国の裏庭での米海軍作戦を過度に心配する必要はない。第二に、終末論的な艦隊交戦と同様に平和的な通商を強調したマハンを、つまみ食いで読むのは危険である。

 

最後に、米中両国は、東アジア全域の海上貿易を脅かす海賊やテロなどの脅威の排除で利益を共有する。不必要な海軍の軍拡競争に乗り出すのではなく、海洋国家たる両国は共通の利益のため協力すべきなのである。■

 

Is Alfred Thayer Mahan Driving Today's US-China Naval Interactions? | The National Interest

by James Holmes


December 18, 2021  Topic: Chinese Navy  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaChinese NavyU.S. NavyAlfred Thayer MahanMilitary

 

James Holmes is a senior research associate at the University of Georgia Center for International Trade and Security and an adjunct professor of strategy at the U.S. Naval War College.

This article is being republished due to reader interest.


期待高まる新技術、太陽光電力を無線に変換し地上送信する実証実験にAFRLが成功。軌道上太陽光発電施設の構築は2025年予定。実現すれば米軍の作戦活動に大きな変化が生まれる。

AFRL


KIRTLAND AIR FORCE BASE, N.M. (AFRL) – 

空軍研究本部(AFRL)がノースロップ・グラマンと開発中の宇宙太陽光発電段階的実証研究プロジェクトSpace Solar Power Incremental Demonstrations and Research (SSPIDR)の一部となるアラクネー宇宙機Arachne flight experimentの構成部品でエンドツーエンド実証実験に成功した。

 

新型構造部品「サンドイッチタイル」の地上実証で太陽光を無線周波数(RF)への変換に成功した。大規模太陽光発電を宇宙空間で行う道が開いた。


AFRLはノースロップ・グラマンに100百万ドル超の契約を2018年に交付し、試作型宇宙太陽光発電システムの中核構造部品の実証用ペイロード製作を求めた。サンドイッチタイルとはアラクネーのペイロードで重要な部材となり、今後の大規模実用システム製造の基礎となる。

 

サンドイッチタイルは二層構造で、まず高性能太陽光電池(PV)で太陽エナジーを集め、電力として第二層へ伝える。この第二層に配置したコンポネントで太陽光をRFへ変換し、送信する。


「太陽光をRFへ変換するのに成功し、軽量で拡大可能な宇宙構造物に一歩近づきブロック構造でアラクネーを実現する」とノースロップ・グラマン副社長ジェイ・パテルJay Patelが述べている。「世界各地に展開する米軍部隊に戦略的優位性を約束する機能の実現を今後も支援していきます」


関係者がノースロップ・グラマン社施設に集まり、大きな一歩となった今回の実証を見守った。


「SSPIDRプロジェクト室は今回の基本性能実証に大きく感動しています」とSSPIDRプロジェクト副主幹メロデイ・マーティネスMelody Martinezが感想を述べている。「太陽光エナジーをRFエナジーに変換できたことの意味は大きく、宇宙配備太陽光発電が大規模地表ビームで送信可能となります」


地上実証ではシミュレーターを使い、タイルのPV側が輝き太陽光-RF変換が進行中だとわかった。参列者はリアルタイムのRF出力データをモニターでフレキシブルプラスチック防護の後ろから確認した。 RFエナジーがピークに達すると太陽光RF変換が成功したとわかり喝采を上げた。


「SSPIDRで重要な場面に立ち会えて気分が高揚した。ノースロップ・グラマンのこれまでの奮闘が成果を生んだ」とアラクネー技術主任カイル・グレイクマンKyle Gleichmanが感想を述べている。「今後は中核となるペイロード打ち上げが控えており、さらなる一歩に踏み込みたい。軌道上でこの技術を早期に実現し、ニーズに答えたい」

 

アラクネー用のタイル機能実験に成功し、一平方メートルブロックを製造するめどがついた。これまでの太陽光-RF変換実験でもこの規模は未実施だ。アラクネー打ち上げは2025年の予定。■

 

AFRLとは

空軍研究本部(AFRL)は空軍省の第一線科学研究開発拠点で、導入可能な戦闘技術を空、宇宙、サイバー空間で開拓、開発、統合で重要な役割を果たしている。技術9分野で世界各地で40超の各種業務に11,500名が従事しており、AFRLが取り扱う科学技術分野は基礎研究から高度研究さらに技術開発へと多様にわたる。詳しくは以下へ。www.afresearchlab.com



AFRL, Northrop Grumman demonstrate solar to radio frequency conversion > Air Force Research Laboratory > News

AFRL, Northrop Grumman demonstrate solar to radio frequency conversion

 

  • Published Dec. 21, 2021

  • By Rachel Delaney

  • Air Force Research Laboratory


これはすごい。日本もオーストラリアで同様の実験を進めていますが、やはり安全保障がからむと真剣度、予算投入規模がちがうのでしょうか。軍事行動のエナジー供給で心配がなくなれば、兵たん活動が伸びる脆弱性から解放されるなど、大きな意味があります。民生用にも無限かつ安価な宇宙からの供給が実現すれば、今後増えるエナジー需要に応えるとともにいよいよ石油文明が終焉を迎えそうですね。

 

2021年12月30日木曜日

金正恩による北朝鮮統治が10周年を迎えたが、同国には崩壊、改革のいずれの兆候もない。2022年に何らかの動きを見せるのか注視したい。

 2022年は北朝鮮が国際社会の注目を集めようと何か悪いことをしそうです。中国の脅威の陰に隠れており、確かに中国の軍事力と行動原理と比べれば北朝鮮はスケールが小さいのですが、邪悪な思考にとらわれており無視することはできません。体制が地上から消える日が来るのが望ましいのですが.....

North Korean Leader Kim Jong Un. Image Credit: KCNA

2011年12月、北朝鮮の最高指導者金正日が死去した。実子の金正恩が後継し、最高指導者になり今月で10年となった。金正日も実父金日成の後を継いでいた。北朝鮮は三代続けて同じ家系が率いる王朝になっている。

王朝は珍しくなってきたが、サウジアラビアやブルネイと異なり、北朝鮮は思想上は「人民共和国」を謳い、「社会主義」を標ぼうしている。実務でみればオーウェル流の恐怖社会だ。同国が模範とするのはスターリン時代のソ連で、過激なまでの専制主義になっているが、巨大規模の軍組織、計画経済、イデオロギーを強調する北朝鮮は冷戦終結後にマルクスレーニン主義は放棄している。かわりに国家主義、個人崇拝、閉鎖経済を特徴とする。だがスターリン主義の構造として警察国家、強制収容所と「社会主義」が残ったままだ。

そこから生まれるのが封建時代にオーウェル流監視社会と混じり底辺に準共産主義が残る社会だ。このいびつな構造を覆すのが経済不振、汚職のまん延、世界経済からの孤立で、核・ミサイル開発を止めない同国への制裁が加わる。世界から見れば同国の状況は極めて不安定だ。北朝鮮崩壊の可能性を繰り返し話題にしており、北関連の会合では同国崩壊のシナリオがいつも出てくる。

崩壊はないが変化もない

とはいえ北朝鮮は崩壊していない。三代目が君臨し、王朝は極めて安定しているように見える。北朝鮮は門戸を開かず、自由化も行わず、統治体制に変化はない。国内で反乱も発生していない。1989年のヴェルヴェット革命、アラブの春(2011年)のような事態は発生していない。北朝鮮の行方の予測は続けるが、予測実現の兆候がない。

反対に金正恩の統治10年でもっとも顕著なのは北朝鮮にほとんど変化の兆しがないことだ。金正恩が改革を目指していると何度も耳にしたが、緩やかな経済変化以外にめぼしい成果がない。抜本的な経済開放改革として鄧小平の中国やゴルバチョフのソ連時代で生まれた動きは同国に関する限り発生していない。マルクス主義を脱したキューバやモザンビークのほうが国内運営はうまく行っており、世界とのつながりを実現しているが、北朝鮮はこれと逆だ。

三代目の金は核ミサイル開発を急ぐことであえて世界との関係悪化を選択している。この結果で厳しい精査措置が2016年から続いており、これで同国は世界との経済上のつながりを絶つことになった。驚くまでもなく、北朝鮮は人権に関しては全く進展を見せておらず、国連は北朝鮮内の収容所をナチドイツの強制収容所になぞらえ、金正恩を国際刑事裁判に立たせるべきとまで提言しているほどだ。10年目にして何か有意義な成果があるとすれば、結局金正恩が改革主義者ではないと朝鮮問題専門家に納得させたことだろう。

北朝鮮が崩壊しない、変化を拒む理由とは

この記念すべき年を迎えた北朝鮮で最も顕著な特徴は、驚異的と呼べるほどの耐久性と変化への断固とした拒否感だ。この国は、わたしたちが政治学や経済学で「知っている」内容に違反している観があり、わたしたちは同国の崩壊が近いと予測したくなる。反対に、なぜ一度も内乱が発生していないかを調べる価値がある。可能性が三つある。

北朝鮮国民はイデオロギーを信奉している。同国国民は政権のとんでもないイデオロギーを見透かしているといわれるが、脱北者によればイデオロギーの重視と押し付けがましさは本物でその束縛から逃れようとしてきたという。指導者が半人半神と信じられていては武装蜂起など思いもつかないだろう。

必要なら金正恩は誰でも殺す。2011年、エジプトのホスニ・ムバラク大統領(当時)は、タハリール広場の抗議行動の鎮圧に軍の出動を拒否し、最終的に政権の座から降りた。東欧各国の政府は1989年に政権を維持するため自国民を虐殺することに同様に疑問を抱いた。金正恩にはそんな遠慮はない。1990年代末の北の人為的な飢饉では、変化や改革どころか、100万人もの国民を死なせて平気だった。民衆が反対しても圧倒的な武力で弾圧するだろう。

国内の対抗勢力が弱い。革命には通常、政権に反旗を翻し、街頭運動と手を組む内部関係者が必要である。しかし、北朝鮮では極端な弾圧のため、政府外に抵抗勢力は存在しない。不満を持つ内部関係者は、外部に頼ることができない。金正恩はまた、長年にわたり、家、車、その他の制限された外国製品など、贅沢品や快適な設備で国内のエリートを買収してきた。最後に、内部関係者は、金正恩の血生臭い支配に加担しているので、金王朝の崩壊で自身も厳しい裁きを受けるかもしれない。

以上は観測にすぎないが、金正恩による統治10周年の記念日に見逃していけない点がある。金正恩は改革主義者ではない。北朝鮮は基本的に変化がない国だ。オーウェル流の恐怖国家であり、貧困に苦しみ、カルト的信奉で極度に軍事化した社会だ。この状態は10年前と同じであり、今後10年たっても変化はおそらくないだろう。■

North Korea: How Kim Jong Un's Orwellian Monarchy Survives - 19FortyFive

By Robert Kelly

Dr. Robert E. Kelly (@Robert_E_Kelly; website) is a professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. He is a 1945 Contributing Editor as well.