2015年2月5日木曜日

★★F-35のステルス性能は有効なのか疑問が増大中



要は時間をかけた間にステルス対抗技術も進歩し、F-35のステルス性能で想定した範囲では不十分になっているということですね。配備とともに陳腐化してしまうとした史上最高の無駄な事業になります。F-35が罪深い機体にならないよう祈るしかありませんね。第六世代機の企画ではぜひF-35の失敗を繰り返さないようお願いしたいところです。

Proliferating Threats Open Door To F-35 Follow On

Senior Pentagon officials consider a future where the F-35’s crown jewels are compromised
Feb 2, 2015Amy Butler | Aviation Week & Space Technology

開発中のF-35が敵防空網の前に無効となる事態が発生したらどうなるのか。ペンタゴンは検討を開始した。
  1. JSF費用は現在4,000億ドル事業と見積もられ、当初の二倍、工程が8年遅れているが、生産は2030年代にかけ続く見込みだ。
  2. 計画の狂いで導入予定の各国は旧型機を長く稼働させることになる。その間に敵の脅威内容は進化していく。
  3. 国防総省高官の懸念は高性能防空レーダーや対空兵器の拡散だと業界筋が明らかにしている。「時間がかかりすぎた。その間に敵の脅威が深刻になっている」が、高官レベルはあえて警告したくないようで、この話題に口を閉ざしているのが現状だ。
  4. まだ危機的状況が現実に存在しているわけではないと業界筋は語る。兵器体系の陳腐化は避けられないが、F-35で発生したらどうなるか、予想より早く陳腐化したらどうなるか。「気になる敵の防空能力の登場が見え始めています」とアル・シャファー国防次官補代理(研究開発)Al Shaffer, acting assistant secretary of defense for research and engineering がAviation Weekに昨年3月時点で語っている。VHFレーダーでステルス機を長距離探知できる技術を言及している。さらにVHFレーダーが目標データを指揮命令機能に転送するだろう。
  5. ボーイングF/A-18E/F支持派がステルスが効力を失う可能性を指摘し、F-35Cの空母運用を断念させスーパーホーネット採用にもっていこうとした。しかし当局はF/A-18E/F追加発注に向かわなかった。逆に次世代機で必要な性能の検討が始まっている。ボーイングはノースロップ・グラマン、ロッキードとならびF-35後継機の採用をめぐる競争に加わるとみられる。
  6. ロシアの「ステルス対抗」レーダーシステムがモスクワの航空ショー(2013年)に展示され、ステルスの有効性についてあらためて懸念が生まれたが、ロシアは防空体制の統合化でも進展している。また中国もステルス対抗と呼称するVHFのAESAレーダーを珠海航空ショーに出展していた。
  7. 「ステルスを無効にする技術があると信じられており、ステルスが有効ではないと信じる向きがある」と空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が1月15日の記者会見で語っている。「事実はこうだ。ステルスとは各種要素の組み合わせである。単に低視認性だけではない。スピード、低視認性、データ収集、送信手段を帰ることであり、送信状態を秘匿することでもある。つまり敵の防空網を無効にすることだ」
  8. 敵の防空網の着実な進歩で今後登場する長距離打撃爆撃機(広範なステルス技術を搭載する)の開発でも影響が出ている。同様に次世代戦闘機となるF/A-XX(海軍)、F-X(空軍)で広帯域ステルス特性の搭載を検討されている。
  9. ステルスが無効になる可能性については初期段階の検討にすぎず、詳細検討はオバマ政権を引き継ぐ新政権に委ねられる。新大統領がF-35技術が陳腐化していると判断する可能性もあると業界筋はいう。もちろんF-35技術がまだ数十年間有効であると期待したいところだが。
  10. 現時点では研究は学術的かつ初期段階で、ペンタゴンがF-35に関心を失う兆候はない。むしろ2011年の開発仕切り直し以降は同機への支持は揺るいでいないし、今後5年間で同機の増産を企画しているところだ。
  11. ペンタゴンの調達トップ、フランク・ケンドールからスーパーホーネットの追加購入は必要がないとの発言が昨年のファンボロ航空ショーで出た。1月には ウェルシュ大将がF-35初期作戦能力獲得を年末までに実現する空軍の方針を支持した。「新型レーダーが開発されて機体探知が可能となっても、レーダーがそのまま誘導兵器に有効なデータを流して機体が撃墜されるわけではない。敵地に到達し、敵のミサイルが発射されるまでに敵の防空網が寸断されればステルス機の投入が成功したと言える」
  12. F-35後継機は既存技術を流用しつつ、最新技術を導入するはずと業界筋は示唆する。選択肢にはサイバー攻撃手段cyberoffenseによるレーダー破壊があるという。熱管理技術の向上により赤外線誘導兵器への防御が進み、電子対抗装置の高性能化で機体が安全になるという。選択肢は仮定だが、企画は慎重に作業中だと関係者は語る。
  13. F-35の強みは米同盟国中心にした世界規模の支持だが、逆に弱みになる。ステルス対抗技術によりステルス性が無効になればその影響も世界規模になる。
  14. サイバー攻撃でテラバイト規模の情報が盗まれたことでこの可能性が現実味を帯びている。各国としてはF-35の最重要性能たるステルス性が中国によると言われるサイバー不正侵入で実効性を減じているのか不安に感じている。悪名高きエドワード・スノーデンが暴露した秘密文書によるとF-35のエンジン、熱管理、レーダーに関する情報をハッカーがアクセスしている。開発部門は実害は発生していないというが、F-35は敵にとって大きな標的だ。
  15. そこでもし同機の実効性が危うくなっていたら投入した巨額予算が無駄になってしまうという疑問が生じている。ステルス特性だけでも大規模な支出がされている。
  16. 同様に戦闘機用としてこれまで最大の大きさのエンジンにも数十億ドル単位の支出がされている。プラット&ホイットニーF135(推力43,000 lb.)で、ノースロップ・グラマンAN/APG-81AESAレーダーでも同様だ。またF-35では新型波形を使う多機能データリンクMultifunction Datalinkでミッション中に機体間のデータ通信を行う。各技術は次期戦闘機にも応用されるはずだ、と業界筋は見ている。
  17. 各種の検討は非公式ながら2017年の政権交代まで続きそうだ。■


2015年2月4日水曜日

米空軍の重点技術開発分野は量子、サイバー、無人機 



技術優位性の回復、維持で差をつけたい第三の相殺戦略の中、国防予算でも技術開発は重視されているようです。公開した情報ではこれだけしかわかりませんが、Black 予算でもっととんでもない技術開発が進んでいるかもしれませんね。今後に期待しましょう。

US Air Force Launches Trio of Tech Studies

By Aaron Mehta10:59 a.m. EST January 31, 2015
WASHINGTON —米空軍の目指すべき将来技術はなにか。
空軍関係者はこの質問を何度も考えてきた。日常的に大々的な作戦を展開する一方で将来戦力を構築するというバランス感覚を空軍は求められている。
【SABとは】 米空軍の科学審議会 Scientific Advisory Board (SAB)がこの問題で諮問する立場だ。審議会は政府独立組織で50名の科学技術者が委員として在籍し、空軍の課題を掘り下げて毎年検討している。
SAB委員長はワーナー・ダームWerner Dahm(前空軍主任科学者)で、審議会の役割はどの技術が投資に値する現実的なものかを空軍に対して助言しつつ、長期的におお化けしそうな技術も指摘している。
「正しい技術を推薦するのは本来業務ではない。工程表がしっかりした事実に基づいているがを確かめるのが仕事だ」
1月27日に委員が集合し、今年は三分野を特化対象にした。量子、無人機、サイバーの各分野。検討結果は7月に空軍トップに説明され、年末までに公表される。
【量子】 最初の話題は空軍における量子システムの活用方法だが、ダーム委員長からは量子コンピュータだけを考察することのないよう釘を差している。「この分野の研究はもっと広範」とし、量子力学の応用システムがあれば空軍ははるかに迅速に暗号解読ができ、高性能電子光学・赤外線センサーや通信の暗号化、精密時計(フェムト秒単位で計測可能)が実現するという。
【サイバー】 2番目の注目分野はサイバー上の脆弱性で航空機や宇宙システム上の組み込みシステムに焦点を絞る。飛行制御用の機体内部のコンピューターやレーダーでインターネットと接続していがサイバー攻撃に脆弱なものが対象だ。
脆弱性問題は認識されており、研究では問題に決定打解決策の確立をめざすが、このために問題ごとに技術開発するのは避け、費用対効果に優れた方法を模索するという。
【無人機】 三番目の研究分野は無人機で激戦環境での生き残り可能性をどれだけあげられるかが課題だ。これも新しい課題ではない。.
研究ではどの選択肢で現実的に無人機の生存性を引き上げられるかを掘り下げて検討し、ステルス性能の向上から無人機間での協同運用、あるいは無人機の単価を引き下げて生存性自体を無視できるようにする可能性も取り上げる。
「これら次世代、次次世代の技術が既知の内容であれば、当方の研究は大きな意味がなくなる。思考プロセスを明らかにすることに審議会の存在意義があるのであり、何をすべきか、何をしたらよいかを示す」
【空軍の期待】 基調講演をしたラリー・スペンサー大将Gen. Larry Spencer(空軍副総司令官)は率直な発言をしている。
「みなさんの助けが必要です。突破口を見つけてください。なぜなら空軍は現状の方法にどっぷりつかっており、『これはできない』だの『これはうまくいかない』でがんじがらめになっているからです」
スペンサー大将はSABに対して実施可能な仮説の提示を求めている。「机上の世界から現実に利用可能な段階に移るべく皆さんにご助力願いたい」
新規発想や技術内容の出処はSABだけではない。2016年度予算案では空軍を未来に導く技術内容を重視しているとペンタゴン関係者のコメントが出ている。
1月28日には新アメリカ安全保障センターが主催したイベントでボブ・ワーク副長官がまもなく提出の予算案に言及し、「有望な新技術、新性能として無人潜水機、海中機雷、高速打撃兵器、高性能新型ジェットエンジン、レイルガン、高エネルギーレーザー」への予算確保にとりくんでいると発言があったばかりだ。
同日に調達を取り仕切るフランク・ケンドール副長官が下院聴聞会で次世代戦闘機として空軍向け海軍向けの開発予算を2016年度予算に盛り込むと発言している。
【強制予算削減で研究開発はどんな影響を受けているか】 ケンドールと平行して、上院は予算強制削減の影響について四軍司令官を質問攻めにしていた。空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将からは強制削減で技術開発能力が犠牲になっていると発言があった。
「強制削減で空軍の科学技術関連予算は2.23億ドルが16年度に削減され、その後はおよそ10.8億ドル減額の見込み」とウェルシュは意見書を提出している。「このためおよそ100分野で契約中止や取り消しが発生する。契約内容には制空技術、指向性エネルギー、製造技術、人的システム各種、弾薬、推進装置、機体構造研究、サイバー、センサーおよび宇宙技術が含まれる。」
このことはSAB審議委員も意識しており、財政が厳しい中で中国の台頭に対応して技術開発のニーズを両立させるべきかとのスペンサー大将の問題提起に多数の質問を投げかけている。
「相手の動きに反応する立場になってはいけないと思う。反応する人材がほしい。」とスペンサー大将は発言。「予算縮小の中で難易度が高いのは承知しているが、脅威は減少していないのだ」
「現時点の要求と将来の要求の間でバランスを取るのがジレンマであり、同時に実現を迫られるのもジレンマだ」とスペンサー大将は付け加えた。
SABは空軍の研究機能の一部であるが、予算を意識して活動を展開している。
「相対コストが重要度を上げてきている。実現の可能性がない非現実的な解決方法では負担は不可能だ。当方は予算関連組織ではないが、空軍が同じ予算で最大効果を得られるように考えているつもりだ」■

2015年2月3日火曜日

★潜水艦ステルス性が危い: 対抗策は新しい発想による戦術と技術の利用だ



なるほど海中も空中も電子電磁空間と考えれば同じという発想ですね。潜水艦乗りは単独行動を好むはずなので協調作戦が可能になるまでに相当の価値観の変更が必要でしょうね。無人潜水機を運用、回収するとすればDARPAが検討しているUAVの空中母艦と同じ構想を海中で実現することになりますね。

Transparent Sea: The Unstealthy Future Of Submarines

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 22, 2015 at 6:07 PM
ssn695WASHINGTON:  探知されない潜水艦でアメリカの優位性を第二次大戦後一貫して維持してきた。しかし海中で姿を隠すのが困難になってきた。
潜水艦探知で新技術が出てきた。低周波ソナー、LED、ビッグデータ処理で探知は容易になる。だが同時に潜水艦間の相互通信も容易になる。
Bryan Clark Bryan Clark
  1. 全く新しい戦術が生まれると海軍作戦部長の上級顧問をつとめ潜水艦勤務も長いブライアン・クラークは指摘する。複数艦のネットワークで行動するのだという。有人潜水艦は敵国の海岸線から200カイリ地点で脅威を気にせず行動し、無人のミニ潜水艦や無人機が接近阻止領域拒否の防衛体制を突破できる。
  2. ネットワーク化した潜水艦戦隊ではアメリカのコンピュータ技術の優位性が活用でき、通信技術、自律運行の技術も応用できる。クラークの新戦術が米国の空中戦闘構想における無人機、スタンドオフ兵器、ネットワークの応用と同じく聞こえても偶然ではない。
  3. 「センサー類の改良とデータ処理能力の向上で海中戦は空の戦闘と似てきます」とクラークは主張。「探知はより容易になります。潜水艦と外部の連絡を水平線の彼方から探知できます。音声は地球の湾曲に沿って伝わる」ので無線信号とは異なるのだという。
  4. ビッグデータも新しい探知方法になる。各国海軍は通常はアクティブ・ソナーで1,000ヘルツ以上の高周波を用いるが、低周波で情報量はもっと多くなる。低周波は長波長となるが精度が落ちるもののコンピュータ処理で情報は明確になる。ちょうど空の世界で低周波レーダーがコンピュータの力でステルス機探知が可能になったのと同じだ。
  5. ビッグデータは別の魅力ある技術も可能にする。ソナーのかわりにレーザーやLEDの点滅光を使って潜水艦を探知する。アクティブ探知のかわりにパッシブな監視に専念し、背景雑音から海中生物の立てる音と海中を進む潜水艦の立てる波を区別する間接的な探知方法だが、空の世界でも同様の例がある。「パッシブ・レーダー」でステルス機を探知するには背景の無線発信でわずかな乱れを見つけるのだ。これはすでに当たり前の技術になっている。
  6. 潜水艦探知技術は「ステルス機を探知する方法と類似している」とクラークは言う。空中、海中ともに「ステルスの優位は消える」。
  7. だからといってF-35戦闘機、潜水艦ともに重要性を失うわけではない。ステルス性能がない機体(艦体)ならもっと悪い結果しか待っていない。ただしステルスは戦闘地帯に進入する際に代償となり、探知されずに侵入する保証はないという。
  8. そのためスタンドオフとステルスの合体が必要とクラークは主張。有人ステルス潜水艦を一定の距離外に配備し、探知されても退避可能な場所を選ぶ、一方で無人ステルス艇を消耗品と覚悟の上で送り出し、接近戦を行わせる。水上艦から大型無人機や無人潜水機unmanned underwater vehicles (UUVs)の運用は可能だ。
  9. 運用で連携をとるため水中通信ネットワークが必要になる。「水中センサーの性能向上に役立つ技術が水中通信でも利用できる」とクラークは言う。高周波音波、レーザー、LEDのすべてが水中でも広帯域のデータリンクを実現する。ただし空中の無線よりは有効範囲がせばまる。コンピュータ処理でノイズを取り除いて受信できる。海中にケーブルや中継装置が敷設してあればネットワークは陸上基地まで延長できる。
  10. 潜水艦乗りにはカルチャーショックとなるだろう。潜水艦では長期間誰とも話さず、本国の司令部とも交信しないのが通例だ。水上艦部隊と同じ集団運用・微調整のコンセプトが海中にも適用されるだろうか。海中ネットワークの実現は容易ではない。クラークは海軍上層部に働きかけてきたが、今度こそ真剣に検討されそうだ。■


2015年2月2日月曜日

★インドから日本へ潜水艦事業への参加要請が入ったとの報道



インドから気になるニュースが入ってきました。日本にとっては嬉しい悲鳴が聞こえそうですが、インドでどんなことが報じられているのか、ジェーンのサイトからみてみましょう。

India asks Japan to offer Soryu subs for Project 75I requirement

Rahul Bedi, New Delhi - IHS Jane's Defence Weekly
29 January 2015
India has asked Japan to offer its Soryu class for its Project 75I submarine requirement. Source: Japanese Ministry of Defen
インドが総額INR5,000億(81億ドル)のインド海軍 プロジェクト75I (India) 事業に日本の参加を求めている。計画では6隻を調達し、対地攻撃能力を備え、AIP(大気非依存型推進力)を装備するという。
関係者によればインドは日本政府にプロジェクト75I参加の検討要請を送付済みで、、そうりゅう級潜水艦(4,200トン)の想定だという。そうりゅう級はオーストラリア海軍も導入を検討中だ。
プロジェクト75Iに日本を巻き込むことはナヘンドラ・モディ首相による日本との戦略枠組み強化の一環として防衛協力の強化が狙いだ。さらに米、豪含め四カ国間の海軍関係の樹立も視野に入れる。

プロジェクト75I入札開始は7年近く遅れていたが、昨年10月にインド国防省が承認しており、今年後半に実施の運びとなった。インド海軍は現在潜水艦11隻を運用中だが、定数を13隻下回っている。
プロジェクト75Iはライセンス方式で潜水艦を国内建造する構想で、交渉対象としてDCNS(フランス)、TKMSの子会社HDW (ドイツ)、ナヴアンシア Navantia (スペイン)、ロソンボロンエキスートRosonboronexport (ロシア)を想定していた。
A. V. スベダール中将の海軍委員会で国内造船所7箇所で潜水艦建造能力の審査を行っている。この結果は2月に国防省へ提出され、選定造船所とインド海軍認可の海外潜水艦メーカー数社が2016年想定の公試を許され、その結果から2018年に絞り込まれる。
その後価格交渉に入り、プロジェクト75Iの一号艦は2025年から27年に就役するとインド海軍は見ている。
これとは別にインドは新明和US-2i水陸両用捜索救難飛行艇12機の調達も日本と交渉中で総額16.5億ドルといわれる商談は、2016年早々に成立しそうだ。
インドは日本技術の導入で自国防衛産業基盤を強化スべく、日本を巻き込もうとしている。また日本との二国間関係を広げて中国の軍事力を背景とした南シナ海、インド洋地域(IOR)への進出に対抗しようとしている。
両国とも中国とは未解決の領土問題を抱え、米国もインド、日本、オーストラリアとの防衛協力の増進を求めており、中国への懸念で各国に共通したものがある。
バラク・オバマ大統領の訪印時に共同発表された「アジア太平洋及びインド洋における合同戦略ビジョン」が想定する四カ国間の国防産業協力関係はインド原案に近いものだが、実現すれば戦略的な協力関係が強化されよう。■


☆★AC-130の最新J型に105ミリ砲をまず搭載、レーザー兵器は後日装備



ISISとの戦闘が長期化することを見越し、特殊作戦軍団もAC-130の拡充に動き始めました。レーザーや電磁ガンまで搭載したらどんな威力になるのでしょうか。それにしても105ミリ榴弾砲をそのまま機内に持ち込むという発想がすごいですね。地上からはさぞかし恐れられるでしょう。

Ghostrider’s Big Gun: AC-130J Gets 105 ASAP; Laser Later

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 27, 2015 at 5:44 PM



AC-130スペクターの夜間射撃の様子はしたをクリックシてください。



WASHINGTON: スマート爆弾がスマートな選択にならない場合、空中から強力な火力支援が必要だ。地上部隊は老朽化進むAC-130ガンシップが搭載する105mm砲に期待する。そこで空軍特殊作戦軍団司令官ブラドレイ・ヘイソルド中将 Lt. Gen. Bradley Heithold は新型AC-130Jゴーストライダー Ghostdiers にも105ミリ砲を搭載する。中将はAC-130旧k型機の退役を遅らせている。
「退役と決まっていた2機を16年度に買い戻す」と中将は語り、さらに3機を復帰させるという。ただし、作戦用機材ではなく予備機材Backup Aircraft Inventory (BAI)になる。その場合でも整備が必要だが15年度予算で計上していない。「議会に交渉しなくてはいけないな」 中将は全米国防産業協会の総会で発言。
 AC-130U機内の105 mm 砲
「AC130で37機体制は維持できないが、退役を遅らせ当面26機を維持したい。14機がAC-130U、12機がAC-130Wで、まだ在籍中のベトナム時代のAC-130Hスペクターは姿を消す」
U型は「スプーキー」の名称で古典的なガンシップ仕様だ。105 mmも含む火砲を多数搭載する。W型は「ストリンガーII」として知られ、アフガニスタン仕様で特殊改造されており、グリフィンミサイルや小口径爆弾を搭載するが、火砲は30mmしか搭載していない。J型を原型にするゴーストライダーは当初はストリンガー同様の仕様を想定していたが、エンジン出力と機内に余裕があるので105 mm砲の搭載も可能だ。そこで中将は砲の搭載を先に実施することで第一線投入が遅れても構わないと判断した。。
古参の105ミリ砲はスマート兵器よりも精密攻撃が可能だといえなくもない。砲弾に積まれた火薬が小口径爆弾よりも少ないからだと中将は説明する。また砲弾はミサイルや爆弾より小さく、機内に大量に持ち込むことができる。さらに単価はスマート兵器よりはるかに安い。105mm砲の砲弾単価約400ドルに対し低価格ミサイルでも12万5千ドルする。
「AC-130は精密攻撃手段だ。30(ミリ砲)と105で正確に弾丸をお見舞いできる。さらに安く実施できる」と述べた。
AC-130U型W型の退役はアフガニスタン戦が終了すれば需要が減るはずという前提だったのだが、実際にはテロリストの活動が活発化しているため旧型機の退役を遅らせJ型を就役させて時間を稼ぐことにしたのだという。
J型でも最初の二機には105 mm砲が搭載されず後日搭載となる。3号機から搭載する、と中将は説明。空軍特殊作戦軍団で退役機材から砲を取り外し、J型に積みこむだけだという。また、J型最終7機にはレーザー兵器を搭載するという。
Air Force PhotoAC-130U がフレアを発射し、熱追尾型ミサイルを回避しようとする
ゴーストライダーでは大口径砲だけでなく、旧型機で自機防衛装備も一新する。チャフ、フレア、レーザーで熱追尾ミサイルを無効にする大型機赤外線対抗装置Large Aircraft Infra-Red Counter Measures (LAIRCM) である。ただしレーダー誘導式ミサイルへの対応装備はない。J型で特殊作戦群団は電磁対策の要求を出している。
中将は『螺旋状開発』を三段階想定するが、第三段階は実現しないかもしれない。完成ずみテスト用の2機はJ型「ブロック10」で乗員7名で105は搭載していない。初期作戦能力(IOC)の想定はブロック20機材で105を搭載し乗員2名追加する。一名がセンサー操作にあたり残りは火砲を扱う。究極のゴーストライダーはブロック40で指向性エネルギー兵器を搭載する構想だが、製造機数はゼロになるか最高でも7機となる。
「高出力レーザーや電磁砲の威力を検討中で、なんとか予算を確保したい。各技術が成熟化しつつある」と中将は述べた。■


2015年2月1日日曜日

スーパーボウルで次世代爆撃機CMを流すノースロップの狙い





Northrop Ad To Run During Super Bowl: Hints At Next-Gen Bomber

By COLIN CLARKon January 31, 2015 at 2:59 PM
 21世紀有数の大型案件となる長距離打撃爆撃機をめぐりノースロップ・グラマンは、ボーイング/ロッキード・マーティン合同チームと競っている。同社は第六世代戦闘機の設計チームを社内に立ち上げ、空軍、海軍に売り込もうとしている。(CMは次のリンクで見られます)
WikimediaNorthrop XB-35あ
ペンタゴンが2月2日(月)に提出する予算案では次期爆撃機事業が大きな目玉となる見込みだ。ノースロップ・グラマンは全米最高の視聴率となるスーパーボウルで新作コマーシャルを放映する。最後に登場する機体は布をかけられているが、明らかにLRSBあるいは次世代戦闘機のいずれか、あるいは両方のヒントだろう。
CMでは同社の無尾翼の全翼機旧作YB-35がまず登場する。、次にB-2があらわれ、その後、空母無人発着艦をやってのけたX-47Bが紹介される。
140817-N-CE233ATLANTIC OCEAN (August 17, 2014) – The Navy’s unmanned X-47B conducts flight operations aboard the aircraft carrier USS Theodore Roosevelt (CVN 71). The aircraft completed a series of tests demonstrating its ability to operate safely anNorthrop X-47 carrier landing
LRSBは厳しく秘密が守られなかなか実態がわからないが、任意で有人操縦可能となるといわれ、高度のステルス性を実現し、高性能センサーを搭載し、無人機を発進、操作可能となるという。
ノースロップは素晴らしい性能を誇り素晴らしく高価な現行のB-2を生産している。B-2は全21機が生産された。
では新規事業の規模はどれくらいか。国防予算の専門家トッド・ハリソンTodd Harrisonによると調査開発費用だけで250億ドルがかかるという。空軍は計100機調達する意向だが、2010年度のドル換算で単価は5.5億ドルになる。ハリソンはインフレを考慮した現時点の価値で6億ドルになると指摘。
ハリソンはF-35がフル生産に達する2020年頃にLRSB事業も相当の規模になると見ており、同時に次世代ミサイル原潜もテンポを早め、KC-46給油機もフル生産に入る他、次世代空軍練習機T-Xも相当数の調達に入っているはずだと見る。
そうなると空軍内部で予算の争奪となる他、他軍とも予算をめぐる緊張が高まるだろう。民間防衛産業各社も当然競争は激化する。ノースロップは先手をうち、納税者に同社の姿勢を見せることで全体が縮小傾向の国防予算で大きなパイを獲得することを正当化しようとしているのであろう。
スーパーボウルで国防産業がCMを放映した前例があるのか不明だが、ノースロップの大胆な一手は同社にとって次期爆撃機や次世代戦闘機案件の落札がどれだけ死活的かを示すものだろう。なお、B-2パイロットがLRSBをどう見ているかは下の記事を参照されたい。

2015年1月31日土曜日

第7艦隊司令官が海上自衛隊の南シナ海進出を期待する発言


極めて率直な発言です。早速中国がカリカリしているようですが、ワシントンは無視することでトラブルを避けようとしていますね。これが現地と中央の感覚の差なのでしょうか。国境線と利益線は異なるという陸奥宗光外相の名言を思い出す気がしますし、米海軍も手が回らないと言うんが実情なのでしょう。日本は十分な遠隔地での運用能力を持っていますし、あとは周辺国(中国、韓国除く)の合意形成次第でしょうね。

U.S. 7th Fleet CO: Japanese Patrols of South China Sea ‘Makes Sense’

By: Sam LaGrone
January 29, 2015 11:37 AMUpdated: January 29, 2015 12:26 PM

USS Pinckney (DDG-91) and the Japan Maritime Self-Defense Force (JMSDF) ships near Guam on July 8, 2014. US Navy Photo
USSピンクニー(DDG-91)と海上自衛隊艦艇がグアム付近を航行。2014年7月8日撮影。US Navy Photo

米第7艦隊司令官が日本は海上警戒範囲を南シナ海に拡大すべき、中国の領有権主張が「不必要な摩擦」を周辺国に発生させていると発言している。29日のロイター取材で答えてロバート・トーマス中将Vice Adm. Robert Thomasは中国の海洋力が増大するなかで日本が安定作用を実現できると発言。


  1. 「将来において海上自衛隊の作戦海域に南シナ海を追加するのが当然だろう」「南シナ海における中国漁船団、海上警察、海軍艦艇は率直にいって周辺国に対して強力すぎる存在だ」

  1. 海上自衛隊が活動範囲を東シナ海から南シナ海まで拡大すると中国政府は日本による挑発行為と受け止めるだろう。

  1. 忠実な米国の同盟国日本は尖閣・魚釣諸島をめぐり東シナ海で中国と対立しており、2014年には中国の領空侵犯への対応回数が記録更新したほどだ。

  1. 中国国営通信は安部首相を領土拡大を狙った軍国主義者になぞらえる報道を繰り返し、日本の防衛姿勢は自衛の範囲を超えていると極めて批判的だ。

  1. 直近では日本はフィリピンと防衛協力の拡大を協議している。「フィリピンにとっては防衛能力の問題、日本にとっては装備供与を超えて訓練、作戦面でも援助の対象として適材適所というところだ」(トーマス中将)

  1. これまで米国は南シナ海の領有問題には立ち入らない慎重姿勢で多国間交渉により解決すべきとの立場で一貫しているが、中国が二国間協議にこだわるのと対照的だ。

  1. トーマス中将は中国のいわゆる九段線 nine-dash line ふくむ領有権主張は国際的に認知された南シナ海各国の領有権に抵触し、緊張を増大させていると指摘する。
Vice Adm. Robert Thomas, 7th Fleet Commander
Vice Adm. Robert Thomas, 7th Fleet Commander

  1. 「いわゆる九段線は国際法や通念、規範と適合せず、むしろ問題を生じさせ、無用な緊張を生んでいる」と発言。今週はASEAN加盟国の外相が会合し中国がスプラトリー諸島に軍事基地建設をねらい埋立工事をしたことに対し、南シナ海における行動規範を求める声明をだしたばかりだ。

  1. 「行動規範の整備が進まない間に埋立工事の既成事実ができてしまったことで大きな懸念事項になっている」とシンガポール外相兼法相K・シャンムガム K. Shanmugam, Singapore’s minister for foreign affairs and law との発言をJane’s Defence Weeklyが伝えている。

  1. ただしトーマス中将がロイターへの発言が南シナ海問題での米政策の変化を意味するかは不明。

  1. 29日にペンタゴン報道官からUSNI Newsに対しトーマス中将発言が米政府の方向転換を示しているものではないとのコメントが寄せられた。またワシントンの米海軍報道官は報道内容へのコメントを避けた。■

2015年1月30日金曜日

次期大統領専用機は747-8に....でも大丈夫か米空軍の調達事務


日本は777-300ERを次期政府専用機に選定済みですが、米空軍は747-8にするようです。ただし、ボーイングとのからみで空中給油機選定で一昔前に政治問題にまで発展した経緯があり、米空軍は相当慎重にことをはこぶのではないでしょうか。就航後かなり長く稼働させる意向でもあり、世界で最後に残る747 になるかもしれません。やはり四発機の747は堂々たる姿をしていますので大国の威容を示すのにはもっともふさわしいのでしょうね。

Boeing Nabs Sole Source Prime On Next Air Force One


USAF

米空軍は次期大統領専用機調達でボーイングを特命発注先 sole-source provider とする。予算数十億ドル規模で747-8を採用する。

空軍の説明では747-8が「大統領の執務を支援するため必要な機能をすべて実施でき米国内で生産される」唯一の選択肢だとしながら、空軍長官デボラ・リー・ジェイムズはサブシステムで競合を求めると説明。ただし競合の中身は発表がない。
  1. 空軍は1月28日付声明で今回の決定を発表し、予算は2016年度予算案に計上ずみと思われる。予算案は2月2日に公表される。これとは別に2015年度予算で16億ドルが初号機の開発、調達用調査費として計上されていた。
  2. ボーイングは空軍発表を歓迎し、同社広報は大統領専用機で50年の実績を強調。空軍が調達方針を議会で問われる際も同じ論旨を繰り出すだろう。
  3. 大統領専用機更新事業Presidential Aircraft Recapitalization (PAR)は現状のVC-25A(原型747-200)2機の後継機を調達する目的で、新たに加わる747-8の2機は2023年に初期作戦能力を獲得する見込み。-200各機は1990年代に就航したが、まだ運行しているのは空軍だけで、整備保守が大変複雑で費用がかかる。2014年度のVC-25A運行の時間単価実績は$210,877。
  4. 正式契約は2017年になる。ボーイングが1号機の特殊改装を開始するのは2018年と空軍広報が発表。
  5. 空軍は「耐用期間30年を通じ十分な技術水準を維持いしたい」とするが、ボーイングが民間商用機の技術データを強固に守る中で微妙な期待であるが、同機の稼働期間がわかる。
  6. 選定が747-8に落ち着いたのは当然だ。選択肢は他にエアバスA380しかなく、同機は米国外で製造されている。787も選択範囲だったという筋もあるが、空軍は一貫してセンサー類や電子装置の電源確保のため4発機が必要と主張してきた。
  7. 機材改装までのボーイング特命発注は政治的に波紋を呼びそうで、上院軍事委員会委員長に就任したばかりのジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)が空軍とボーイングのやりとりに極めて神経質になっている。10年以上前の空中給油機リース案件が不調になった前例がある。同案件で空軍とボーイング双方で関係者が刑事訴追されている。
  8. 改装作業なら空軍単独で実施できるという関係者もあるが、ボーイングは同機の技術データを外部公開するのを嫌がっており、結局ボーイングに作業を任せるしかなかった。
  9. 「今回の決定でただちにボーイングに747-8機発注をするものではない」とPAR事業主任エイミー・マケイン大佐は言う。「全体調達方針を最終決定しておらず、ボーイングにはリスク低減索として技術開発と製造両面で契約交渉をすすめてから技術内容と価格を決定することになる」
  10. ジェイムズ長官も空軍は「サブシステムでは他社の競合も取り入れたい。この競合は主契約企業の主導のもとおこなわれる」と発表。長官は「既存技術製品や民間で認証済み装備」を採用するという。■

移動式ミサイルを事前に攻撃可能にする技術開発は相殺戦略の要だ



A2AD含め米国にとって厄介な仮想敵国の戦略の前提を新技術で覆そうというのが第三相殺戦略(新技術開発運用で米国の優位性を維持、伸ばす)のポイントのようです。では、面倒な地上移動型ミサイルへどんな対応ができるのか、専門家の知見を見てましょう。


Stopping Mobile Missiles: Top Picks For Offset Strategy:

By ROBERT HADDICKon January 23, 2015 at 10:55 AM
発射台装備車両(TEL)に搭載された敵の移動式陸上ミサイル(地対地、地対空、対艦)への対処法は、米国の軍事戦略立案担当者に未解決のままだ。所在を隠せる各種兵器は敵にとって運用コンセプトに機動性を生むことになる。中国、ロシア、イランや米国の敵になる可能性のある多数の国で使用され、米軍の遠征作戦で追加コストとリスクを発生させる。
  1. 【なぜTELを狙うのか】 迎撃ミサイルは移動式ミサイルへの対応策にならない。ミサイル防衛では陸上発射型、海上運用型ともにある程度まで成功を収めているが、ペンタゴンがミサイル防衛に費やしている膨大な努力・費用を考えれば将来において今以上の実績が生まれると当然期待したいところだ。だが高度装備を備えた敵が多方面同時攻撃を実施した場合、一部の敵ミサイルが防衛網をすり抜ける可能性を覚悟しなければならない。
  2. その場合の被害は甚大だ。とくに艦艇で損害が大きいだろう。もっと重要なのは迎撃手段のコストはその対象目標の数倍も高くなり、攻撃側が絶えず有利な立場になることだ。これに対しTELを狩ることは「射手を攻撃する」ことになり大変な価値があり、敵の戦略の根底が崩れればその意味は大きい。
  3. 敵の移動式ミサイルへの対向技術と作戦構想の開発がペンタゴンが進める国防イノベーション構想Defense Innovation Initiative別名第三相殺戦略Third Offset Strategyでの最重要課題になっている。敵ミサイルの発射寸前での効果的な対応方法は実現手前に来ているので、ペンタゴンの作戦に織り込むことができそうだ。実現すれば移動式ミサイルに潜在的敵国が投入してきた莫大な投資は無駄に終わり、作戦構想が成立しなくなる。その結果、コストが妥当なら、「対抗戦略」の根底ができあがる。
  4. 【米海軍の苦悩】 移動式ミサイル問題は米海軍で特に顕著だ。陸上配備の移動式対艦ミサイルで制海権が脅かされ、有事の際に東アジア、アラビア海、ペルシア湾を結ぶ交通路の確保がむずかしくなる。米海軍の潜水艦と航空部隊にとって敵艦船を沈めるのは大して難しくない。ただし長距離射程の対艦ミサイルが移動式車両に搭載され内部聖域に残り、遠距離の海上交通を妨害できるとなると、米軍・同盟軍は重要な海上交通路の利用ができず、軍事作戦にも支障が出る。
  5. なかでも中国のDF-21D対艦弾道ミサイルは悪名高い存在で、誘導式極超音速弾頭を装着し1,500キロの射程があるといわれる。今までのところ中国は同ミサイルで移動標的への実地テストを行っていないが、同ミサイルの発射管制・目標捕捉施設は米軍の妨害に脆弱と思われる。中国側も弱点を当然認知しているはずで米海軍は中国が今後改善を図ることを前提にすべきだ。
  6. また海軍は中国等がゆくゆくは長距離ステルス・スマート対艦巡航ミサイルを配備すると覚悟しなければならない。同ミサイルは米海軍が今後配備する長距離対艦ミサイル Long Range Anti-Ship Missile (LRASM)と同様の装備となろう。LRASMは共用空対地スタンドオフミサイル長距離射程型Joint Air-to-Surface Standoff Missile-Extended Range (JASSM-ER)の派生型で、射程は900キロを超え、ステルス性があり、飛行中にデータアップデートが可能で目標を変えることも可能であり、妨害脅威を探知回避でき、目標を識別して攻撃できる
  1. 中国はすでにHN-3巡航ミサイルを配備しており、TELを使った移動式で射程は3,000キロといわれる。中国がTEL搭載式対艦ミサイルでLRASMと同等の性能・射程を有する兵器を2020年代に開発することは十分ありえる。米海軍部隊を一旦発見すれば、中国はミサイル多数を発射し組織的に捕捉するだろう。ミサイル間で探知情報を交換し、目標情報のアップデートも受信する。こうしてみると米海軍にとって陸上発射型の長距離対艦ミサイルの脅威は悪化する一方だとわかる。
  2. 【スカッド狩りの教訓】 歯がゆい思いをさせられた湾岸戦争での「スカッド狩り」はTELに搭載したミサイルへの対抗がいかに困難かを示している。イラクに対する航空作戦は1991年1月に開始されたが、サダム・フセインは移動式対地ミサイル部隊を西部砂漠地帯に展開し、テルアビブ他目標に発射し、イスラエルを参戦させてアラブ各国の連帯を崩そうとした。そこで有志連合軍は急遽数百回の爆撃出撃を振り向け移動式スカッド・ミサイルを探す不毛の努力を強いられた。その8年後にNATOはコソボからセルビア軍の撤退をさせるため航空作戦の実施中に、移動式地対空ミサイルが米空軍のステルス機F-117撃墜に成功している。
  3. 1990年代のスカッド狩りに懲りて米空軍は移動式ミサイル捕捉で別の作戦構想案を模索した。その一つの成果が低コスト自律型攻撃システムLow Cost Autonomous Attack System (LOCAAS)で全長1メートルで航空機から発射するミサイルでTELなど移動車両を捕捉・攻撃するプログラム変更可能な兵器だ。レーザーレーダーを搭載しており、(LIDARまたはLADARと呼ばれ実験中の自動運転車両にも使われている)車両を正確に区分できる点で人員操作よりも正確度がはるかに高い。識別できればLOCAASは降下開始し目標を破壊する。LOCAASには30分間の飛行が可能な燃料を搭載しており、LIDARは雲より下の低高度で60平方キロ範囲で目標を捜索する。量産に入れば単価は75千ドル程度になり、想定する目標車両よりも安価になるはずだった。
  4. 残念なことにLOCAASは開始数年で中止された。敵の電磁ジャミングを想定して開発陣はLOCAASに自律的攻撃機能を持たせて人的関与を不要にしたが、政策立案部門はあきらかに殺人無人機の概念におじけづき、中止に追い込んだ。
  5. ただしその後、移動式ミサイル問題は深刻さをまし、TEL狩りが一層重要になった。また政策立案の上層部も自律型装備に対する警戒心をゆるめてきた。米空軍の新戦略案では自律性能を技術上の最優先分野と位置づけている。また国防イノベーション構想(第三相殺)の発表でチャック・ヘイゲル国防長官も自律型装備を構想の中心に捉えていた。
  6. 【MALDを元に新ミサイルを開発】 空軍のミニチュア空中発射デコイ Miniature Air Launched Decoy (MALD) はLOCAAS直系とも言える。MALDは全長3メートルで重量300ポンドほどのジェット推進式無人機であり、敵防空網を混乱させるべく米軍機と同じ飛行特性やレーダー反射を発生させる。MALDは45分間飛行可能で900キロ飛ぶ。最新のMALD単価は322千ドルである。
  7. そこで新しい第三相殺戦略でMALDあるいは類似小型ジェット機をもとにミニチュア自律捜索攻撃ミサイルMiniature Autonomous Search and Strike Missile (MASSM)に改装し、LOCAASの後継機として大幅に性能を向上させることになろう。MASSMもステルス性があり、LIDARとミリ波レーダー、画像識別型赤外線センサーを搭載する。TELが搭載するミサイルが簡単に破壊できることもあり弾頭は強力である必要がなく、その分多くの電子装備や燃料を積める。衛星通信能力で管制官はMASSMの目標を途中変更でき、MASSMから捜索結果を報告できる。.
  8. MASSMはLOCAASよりさらに高高度からの探知が可能となり、センサー有効範囲が広がる。MASSMではステルス特性も必要に応じ変更可能でセンサーのとらえた情報と事前プログラムした目標情報を照合する。探知範囲が広がり、航続時間も長く、速度も増加するためMASSMの一回の出動で3,000平方キロ範囲を捜索できるはずだ。量産すれば単価はMALDの322千ドルを下回るはずで、DARPA(国防高等研究プロジェクト庁)からは妥当な目標を見つけられなかったMASSMを空中で回収し再利用する構想が出ている。.
  9. 空軍はB-2や長距離打撃爆撃機 (LRS-B) をMASSMの母機として敵防空網の内部で運用するだろう。B-2は500ポンドの共用直接攻撃爆弾なら80発、すなわち4万ポンドのペイロードがある。MASSMは重量300ポンド想定で、B-2ないしLRS-Bに100機搭載できる。一機の爆撃機で計300千平方キロを探知できることになる。
  10. 米海軍は敵の陸上配備弾道ミサイルの制圧を必要とし、DF-21Dあるいは将来の長距離対艦巡航ミサイルが発射されればTELの捜索攻撃を海岸線から1,500キロ内部まで行う必要が出てくる。米空軍によれば、中国のTEL搭載ミサイルは道路上の運行に制限されるという。しかし、DF-21Dを搭載するLETは道路外の運用も可能だ。
  11. そこで敵国の道路網や地形を慎重に分析すれば探知範囲を絞れるだろう。人口密集地の狭い道路はTELの運用には適さない。オフロード性能があるTELだと複雑になるが、どこにでも移動できるわけではない。大重量LETでは沼沢地、森林、急坂他移動できない地形を避ける必要があるからだ。
  12. また衛星画像等のその他情報源や偵察機によりMASSMの探知範囲を絞ることができる。
  13. 【対中国戦のシナリオ】 中国との軍事衝突を仮定すると、東シナ海・南シナ海での海上交通路確保のため、対艦ミサイルを搭載したTELを奥行き1,000キロ、幅2,000キロの範囲(2百万平方キロ)で捕捉する必要が出る。MSSM搭載機で30万平方キロの探索が可能なので、爆撃機は計7回出撃すれば十分だ。さらに道路状況、地形の事前解析で捜索範囲を最初から狭めることが可能。爆撃機から合計数百のMASSMが展開し、LETを捜索し、攻撃を加え、ミサイルの隠匿を無効にできる。その間に西太平洋で海軍部隊、空軍部隊の作戦を実施する。
  14. 【イランの場合】 MASSMでイランの移動式ミサイルを制圧するのははるかに容易だろう。CIAによるとイランの道路延長は198,866 キロで、一機の爆撃機でMASSM100機を展開し全国の道路上でTELを識別できる。イランの国土面積は1,531,595平方キロで、大部分はおオフロード式LETでも走行不能だ。最悪の場合でも爆撃機5ソーティでMASSSMを運用すれば国土すべてで移動式ミサイルの所在をあぶりだすことができる。
  15. 【敵への影響】 このような性能を有する装備を運用すれば、特にそのステルス性のため敵ミサイル部隊の作戦は混乱に陥るだろう。国内にもはや聖地はない。ミサイル部隊指揮官は攻撃されると覚悟しなければならない。そうなると更に多くの予算をかけて掩壕を準備し、戦術も変更せねばならない。敵国指導層もミサイル部隊の実効性を信頼できなくなり、抑止力の支えがなくなる。
  16. ただしこの構想では技術上の課題が多く、さらなる開発が必要だ。 例として1991年のスカッド狩りでイラクは囮装備を配置し、本物の所在をわかりにくくすることに成功している。そのためLIDAR他精密ミリ波レーダーが実用化され、探知センサーの実効性が上がった。また上で紹介した構想の前提はセンサー、期待、その他技術が実用化されていることだ。LRS-Bの就役は中期的将来になる。肝心なのは敵のミサイルTEL対応を手の届く費用で実施することだ。
  17. ただ今回ご紹介した構想は相殺戦略が目指す方向を示す好例で、米国の比較優位性を長距離攻撃、無人機、センサー、システム統合の各分野において個別具体的な軍事課題として利用を狙う。その結果、敵の大型投資を無効にする新しい作戦構想が生まれる。敵方に回る可能性のある各国は移動式ミサイル整備を重視しているが、新構想で敵の作戦前提条件が崩れてしまう。これこそ対抗戦略の効果だ。
  18. MASSMの実用化に成功してもミサイルを隠す側と見つける側のいたちごっこは終わらないだろう。敵が民生用40フィートコンテナーにミサイルを隠したらどうなるか。2010年にはロシアの対艦ミサイル「シズラー」がコンテナーに搭載され発射された前例がある。長距離ミサイルを民間に紛れ込ませることの政治、法的な側面、さらに軍事上の有効性は別途検討したい。とりあえずの結論はそのような対抗手段をとってもMASSM構想の開発には影響がないということ、MASSMの実現は費用対効果の面で有効な戦略手段となるということだ。■
著者ロバート・ハディックは元海兵隊将校で現在は米特殊作戦司令部から個人業務委託を受ける。上記論文は本人の責任において執筆したのもの。著書 “Fire on the Water: China, America, and the Future of the Pacific” は海軍協会出版部が刊行している。


2015年1月29日木曜日

16年度国防予算は総額5,850億ドルで要求 米国防総省


日本の15年度予算は411億ドル相当とお伝えしていますので、米国の16年度予算規模は日本の14倍に相当しますね。(14年の中国は1,333億ドルと推定。防衛省)問題はその中身で、技術優位戦略の一環をになう今後登場する高性能装備の開発、配備が着実に進むことを祈るばかりです。金額が大きくて感覚が麻痺しますが、ISIS向け戦闘の予算が1%弱相当でしかも15年より減少するのはいかがなものでしょうか。(別の予算があるのでしょうが)長時間をかけても要求側と査定側が知的な議論をくりひろげるのはチェックアンドバランスの機能そのものでしょう。

Source: DoD To Request $585B For FY16

Includes $51B for Overseas Contingency Operations

By Paul McLeary2:49 p.m. EST January 27, 2015


WASHINGTON — 国防総省は2016年度予算として5,850億ドルを議会に2月2日提出する。うち5,340億ドルが基本予算で別に510億ドルの海外緊急作戦予算overseas contingency operations (OCO)が加わる形だ。
空軍が1,529億ドル(対前年比160億ドル増)、海軍省は1,610億ドル(同118億ドル増)、陸軍は1,265億ドル(70億ドル増)となる。
イスラム国との戦闘には53億ドルを計上しており、2015年度の56億ドルとほぼ同額だが、以前10億ドルで要求した基地再編をすすめるヨーロッパ再保証構想European Reassurance Initiative で7.89億ドルの追加が目立つ。
また510億ドルの追加戦時予算のうち420億ドルがアフガニスタン顧問団関連(現在米軍10,900名が駐留)で78億ドルは装備関連で事前に確保ずみの分だ。
議会からは4,990億ドルが上限と事前に伝えられているので、提出案は議会を無視する形になる。支出優先事項をめぐる議会との長い議論の基礎として、軍トップ、国防長官は議会においてきびしく聴聞されるのを繰り返すことになるのは確実だ。
昨年12月に通過した2015年度予算は5,540億ドルだったので今年の要求は増額となる。なお15年度予算でのOCOは640億ドルだった。
OCO関連が予想より増加したことで議会の反発は確実だ。イラク、アフガニスタン撤兵後も要求が多額のまま続くことに議会は憤慨しており、従来は基本予算で執行していた軍活動をオバマ政権が追加資金でおこなうことに違和感を感じている。■