2021年2月9日火曜日

ロシアの弱点① 国防力の根源は強い経済----Su-57をいつまで立っても完成できず、量産するだけの予算が確保できないのはロシア経済の実力の反映だ。

 ロシアの弱点①


 

シアにはSu-57のような優秀装備があるのに、大量調達の資金がない。現在の財政状態では、大量調達の可能性は当面ないだろう。

 

だが、Su-57の技術成熟度は低く、生産ラインは小規模かつ効率が低い。短時間低予算で好転するようなものではない。

 

ウラジミール・プーチン大統領は2019年5月にアストラハンにある第929チカロフ国営飛行テストセンターを訪問した。

 

 

プーチンのIl-96VIP機をモスクワからアストラハンまで随行したのはスホイSu-57の6機編隊で、生産済み機体の半分に相当した。

 

2019年5月15日にプーチンはクレムリンが今後8年間でSu-57を多数調達すると述べた。プーチンが真剣ならロシア国防省が同機を一定数導入したはずだ。

 

だが、Su-57は未完成の機材だ。戦闘システムが欠如している。スホイは同機の本格生産ラインをまだ構築していない。だがなんといっても、同機を大量調達する資金がロシアにない。

 

開発が遅れている同機ではエンジン火災もあったが、非戦闘任務でシリアに「配備」されたのに、2018年にSu-57生産は停止し、非ステルスだが実証ずみのSu-27生産を優先させる方針がクレムリンから発表された。2027年までにSu-57はわずか16機が調達されるのみで、全体でも28機にしかならない。

 

方針変換に経済事情があるのは明らかだ。2016年のロシアは国防予算に700億ドルを投入した。だが、経済は不振でGDPは2015年に4%近く減ったため、ロシアも予算の優先順位の再検討を迫られた。これについて国際戦略研究所は「2016年度の予算編成ではこの支出水準は維持できないことが明白に認識されていた」と評している。

 

ロシア政府はSu-57の生産削減を目指した。「Su-57は現時点で世界最高性能の機材。そのためこの時点で同機を大量製造する必要はない」とユーリ・ボリソフ国防副大臣が当時報道陣に語っていた。2018年の決定でロシア空軍は当面はステルス戦闘機を実用化できないことになった。だが米国、中国旗法でステルス戦闘機を大量生産しており、新型ステルス爆撃機も開発中だ。

 

プーチンは2019年5月にこの不均衡を打破すると公約した。スホイにSu-57コストの20%削減を命じたとし、2027年までにSu-57を76機調達すると発表したのだ。

 

スホイはSu-57のコストについて発表はないが、ロッキード・マーティンのF-35が最新の組立ラインで年間数十機の生産数で単価100百万ドルというのが参考になろう。

 

米軍は7000億ドルの国防予算でF-35を年間60-70機導入しており、米国防予算でF-35は1%の支出規模となっている。ロシアが国防予算の1%をSu-57にあてれば、年間6機の調達が可能で、2027年までに54機がそろう。

 

だがそれは楽観的すぎる。Su-57の量産、実戦投入の前に、スホイは同機の戦闘システムを完成させる必要があり、兵装を搭載し、生産ラインを拡張し、作業員訓練も必要だ。

 

これはすべて言うは易しだ。また資金だけ投入しても先に進まない。F-35には20年間も潤沢な資金が投入されたが、技術面産業面で何度も苦境に直面している。

 

もちろん、プーチンを護衛したSu-57の六機編隊やその後の大規模発注の話とロシア空軍への同機導入は関係がない。全ては海外顧客の関心を買おうという販売活動だ。

 

ロシアでSu-57を押す動きとインドが同機の共同開発中止へ決定したのは偶然の一致ではない。

 

ソリアはトルコにSu-57開発に加わるよう秋波を送っており、インドに代わる資金提供者の役割を期待している。トルコはF-35を発注していたが、米政府が阻止しているのはトルコがロシア製防空装備を導入しており、搭載センサーがF-35のステルス性能の機微情報を捉えてしまうためだ。

 

プーチンがSu-57になみなみならぬ自信を示しているのもトルコ関係者をロシア製ステルス戦闘機採用という博打に向かわせる狙いがあるのだろう。

 

だがSu-57に買い手がついてもそれで解決とはいかない。Su-57の設計が未完成で生産規模が限られ、効率が悪いままだ。これを変えようとすれば時間も負担も相当必要だ。■

 

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No Rubles, No Su-57: Russia's Lack of Money Hurts Its Defenses

February 8, 2021  Topic: Economics  Region: Europe  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaMilitaryTechnologyWorldStealthSu-57

by David Axe 


David Axe served as a defense editor for the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article was first published in May 2019.

Image: Reuters


2021年2月8日海自潜水艦そうりゅうの海上衝突事故の第一報をWar Zoneはこう伝えていた

事故原因の究明で再発予防はもちろんですが、そうりゅうが戦力外となるのは痛いですね。海上自衛隊潜水艦部隊が萎縮しないことをいのるばかりです。また、変な勢力がこれを利用して悪意に満ちたメッセージをひろめないよう監視が必要です。


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5TH REGIONAL COAST GUARD HEADQUARTERS

 

 

上自衛隊の潜水艦が民間貨物船と衝突し、潜水艦の乗員少なくとも3名が負傷した。

 

事故は2021年2月8日10:58AM(現地時間)に足摺岬の南東25マイル地点で発生した。

 

潜水艦はそうりゅう級一号艦そうりゅうで、事故当時は通常の訓練中だった。

 

そうりゅうは事故当時浮上中で、民間商船の船腹を削ったと防衛省が発表した。未確認だが商船は中国・青島から岡山に鉄鉱石を運ぶバルク貨物船オーシャンアルテミス。同船は排水量51千トン全長750フィート。そうりゅうは浮上時排水量2,900トンで全長は275フィートだ。

 

日本政府関係者から潜水艦乗員3名が軽傷したが入院措置は不要との情報が出た。そうりゅうの損傷は潜望鏡・通信装置をおさめるマストハウジングに限定され、自力航行が可能だ。だが、母港の呉に向かったのか不明。

 

アンテナマスト損傷で通信機能が全損となり、同艦は携帯通信機器で方位確認し航行を迫られた。このため事故発生3時間半後に同艦から報告が入った。

 

海上保安庁所属サーブ340Bが撮影した写真ではそうりゅうの損傷が予想外の規模だとわかる。とくにセイルと潜航舵の被害が甚大だ。

 

5TH REGIONAL COAST GUARD HEADQUARTERS

5TH REGIONAL COAST GUARD HEADQUARTERS

5TH REGIONAL COAST GUARD HEADQUARTERS

 

 

加藤勝信官房長官は記者会見で衝突時に衝撃はなかったとの報告が民間商船から海上保安庁に入っており、大きな損害はないようだと報道陣に述べた。商船乗組員に負傷者発生の報道はない。

 

日本政府は事故報告を受け直ちに対策チームを編成し、実態調査に乗り出した。また民間商船の救難も必要に応じ実施しようとした。岸信夫防衛相は衝突事故を「遺憾」とする声明を発表した。

 

今回の事故で潜水艦浮上時に水上船舶と衝突するリスクが改めて痛感される。合わせて水中障害物や海底との衝突も危険な事案だ。

 

潜水艦には衝突予防策としてアクティブソナーを活用できる。潜水艦航路の前に障害物があれば探知できるが、アクティブソナー信号を他艦が探知することになるので使われることはない。

 

パッシブソナーは探知される可能性がなく、今回も使われていたのだろうか。パッシブソナーで得られる情報はアクティブソナーより少ないものの、今回の商船は探知できたかもしれない。

 

水中から浮上時に潜水艦のリスクが最大となる。浮上の前に、乗員は海面上の障害物となる他船あるいは艦艇の有無をまずチェックする。しかし、ソナー探知で水上艦をはっきり確認できないことがある。とくに氷山がある場合がそうだ。潜望鏡も浮上前に使い、リスク対象を確認する。

 

海上自衛隊の元海将伊藤俊幸教授はNHKに出演し、今回のような事故は起きてはならないと語った。乗員は浮上時の危険をよく理解しており、ソナーで安全航行に努めていると述べた。今回はソナーが正しく作動しなかったのか、あるいは「乗員の技量あるいは連携に問題」があったのかもしれない。

 

事故原因は今のところ不明だが、大惨事にならなかったのは幸運だった。2001年に水産訓練船えひめ丸がロサンジェルス級攻撃型原子力潜水艦USSグリーンヴィルと衝突した。潜水艦はハワイ・オアフ島南方を浮上航行中だった。衝突でえひめ丸は沈没し、35名中9名が死亡した。

 

本件では今後の進展に応じ、続報をお伝えする。■

 

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Check Out The Damage To This Japanese Submarine After It Collided With A Cargo Ship

https://www.thedrive.com/the-war-zone/39137/check-out-the-damage-to-this-japanese-submarine-after-it-collided-with-a-cargo-ship

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 8, 2021

 

2021年2月8日月曜日

歴史に残る機体31 ノースアメリカンF-100スーパーセイバーは初の超音速ジェット戦闘機でセンチュリーシリーズの一番手、高い事故率に苦しみつつも、ベトナムで活躍した。

 歴史に残る機体31


 

 

1947年10月14日、オレンジ色に塗ったベルX-1をチャック・イエーガーが操縦し、

水平飛行で初めて音速の壁を破った。X-1はロケット推進の実験機だったが、ジェットエンジン技術も進んでおり、超音速飛行の実現もまもなくとの期待が高まっていた。

 

ノースアメリカンは自社事業でF-86セイバーを超音速仕様に進化させようとしていた。セイバーは35度後退翼で高速度性能を実現した。F-100「スーパー」セイバーでは45度にし、機首の空気取入口は押しつぶした台形状になった。1950年代当時の新鋭機「センチュリーシリーズ」で一番手となったF-100についたニックネームは100を短くした「ハン」だった。

 

エンジンはJ-57-P-7 ターボジェットでアフターバーナーつきで、高高度で時速850マイルを実現した反面で燃料消費も著しかった。F-100は速度記録を更新した。

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空軍はF-100Aを1954年10月に供用開始したが、事故が多発し、空中分解でエースパイロットのジョージ・ウェルチが死亡し全機飛行停止となった。尾翼が小さすぎることで不安定になり制御不能なヨーが発生したためだった。

 

この問題は解決したものの、ハンには別の欠陥もあった。高速発射可能な20ミリM-39機関砲4門を搭載したものの、想定がすでに旧式になっていた。空対空ミサイルはまだなく、長距離捜索レーダーもないまま、短距離性能の欠点を補うため落下式燃料タンクを追加した。事故多発のF-100Aは早くも1958年に第一線を退いた。

 

RF-100A高速偵察機にはカメラ4基を機関砲の代わりに搭載し、短期間ながら成功作とされた。ドイツ、日本に配備され、高度50千フィートという高高度で東欧、中国、北朝鮮上空を飛んだ。当時は同機に追いつく迎撃機がなかったが、1956年に更に高高度を飛ぶU-2に交代した。

 

その後登場したのがF-100C戦闘爆撃機で476機が生産され、主翼を延長強化し、エンジンを強力なJ-57-P21 とし、最高時速が924マイルとなり、パイロン6箇所に6千ポンドの兵装を搭載した。さらに燃料搭載量が2倍になり、空中給油用のプローブもついた。これを利用しF-100Cの三機編隊が単発機として最長距離記録となったロサンジェルス-ロンドン間飛行を14時間で1957年5月13日に実行した。サンダーバーズ飛行展示チームがF-100Cを1956年に採用し、ソニックブームで地上の群衆を驚かせるのが常だったが、FAAにより禁止された。

 

F-100Dはさらに洗練され、1274機を製造し、尾翼主翼をさらに引き伸ばし、レーダー警告装置を搭載し、機体下部にハードポイント7つ目が追加され、AIM-9B熱追尾空対空ミサイル運用が可能となった。C型D型で搭載可能な兵装はナパームキャニスター、ズーニ2.75インチロケット弾、クラスター爆弾、AGM-45ブルパップ・AGM-83の対地誘導ミサイルまで多岐にのぼった。

 

NATOに配備されたF-100飛行隊は戦術核兵器4種類を運用し待機した。だが、核爆弾投下の場合に高速機といえども爆発の影響を受けずに脱出できたのか。通常兵器でも同様にリスクがあったが。

 

ハンパイロットは「肩越し」トス投下方式を訓練し、超音速バレルロールで上昇するのだった。機体が垂直に近づくと機内のMA-2低高度爆撃装備が核爆弾を自動投下する。爆弾が弧を描き落下すると、スーパーセイバーはロールしアフターバーナーを点火し反対側に逃げるのだった。

 

空軍はF-100でZEL(ゼロ距離発進)も試し、巨大ロケットブースターを機体下に装着し、トラックの荷台から発進させた。この方法を試したのはNATO航空基地がソ連の核攻撃で破壊された場合の代替離陸方法が必要だったからだ。テストは順調に進んだがZELが実際に採用されることはなかった。

 

Vietnam Workhorse—and First MiG Kill of the War?

 

1961年4月、フィリピン配備のF-100Dがタイ王国へ移動し、東南アジアに初めて米軍ジェット機が配備された。実戦出動の機会がなかったが、1964年に北ベトナム対空陣地制圧に出動した。1965年3月2日にローリングサンダー作戦でF-105戦闘爆撃機の援護を開始した。

 

1965年4月4日にはドナルド・キルガス大尉操縦のF-100がタンホア橋空襲部隊の援護にあたっていると、北ベトナムのMiG-17の四機編隊が雲の中から現れ、ベトナム戦初の空対空戦闘がはじまった。MiG-17は速力が劣りミサイルも搭載していなかったが、強力な機関砲三門がF-105を撃破し、二機目にも甚大な損害を与えた。

 

キルガスは燃料タンクを落下し、急角度で方向を変えMiGの後方に回ろうとした。ソ連製機体は垂直に降下し、キルガスを誘い込んだが、重量が大きい大尉の機体では引き起こしがそのうち不可能となる。高度7千フィートでキルガスは機関砲を使った。

 

「煙と閃光がMiGの垂直尾翼上に見えたが、すぐ何も見えなくなった。580ノットで飛んでいた。トンキン湾のしぶきが見えたと大袈裟に言うつもりはないが、ぎりぎりで機体を上昇させた」

 

当日にMiG三機を撃墜したが、二機はベトナム軍地上砲火によるものだった。3番目の機体がキルガスの相手で、実戦で初のMiG撃墜事例のはずだったが、空軍は「可能性濃厚」としただけだった。

 

その後のF-100は地上部隊支援任務で南ベトナムに回された。1967年にF-100C配備の州軍飛行隊が配属された。最盛期には南ベトナムに490機ものスーパーセイバーが展開し、毎日平均地上支援ミッション2回をこなし、予め設定した標的を攻撃したほか、地上部隊の求めに応じ近接航空支援をおこなった。

 

空軍は複座のF-100Fを初の「ワイルドウィーゼル」に投入し、敵防空レーダーを探知させた。EF-100Fにはレーダー受信機2つを搭載し敵レーダーの位置をわりだし、位置を随行するF-105に攻撃させた。その後のウィーゼル任務ではAGM-145シュライクレーダーホーミングミサイルでレーダーを撃破した。試行結果に満足した空軍はウィルドウィーゼル任務にF-105やF-4を投入した。F-100Fは「高速前方航空統制機」になり敵を探知すると煙ロケットで印をつけ僚機に攻撃させた。コールサイン「ミスティ」の高速FACは防空体制が整った危険地帯上空を飛んだ。

 

スーパーセイバーは高テンポで戦闘投入され、爆弾、ナパームの投下量は40百万ポンドに上り、出撃は360,283回になって1971年に戦場から離れた。この規模はF-4ファントム、F-105のいずれよりも多い。代償もあったベトナムでのF-100喪失は242機にのぼり、対空火砲で186機、基地駐機中に7機を失った。

 

ただし、スーパーセイバーの事故率は高く、コンプレッサー作動中止、主翼損壊、ヨー不安定などのほうが多くの犠牲者を生んだ。全生産2,294機中で889機が事故喪失で324名の生命を奪った。

 

フランス、デンマーク両国がF-100D、F型を運用し、フランスはアルジェ反乱分子の制圧に投入した。台湾もF-100Aを118機導入し、レーダー警報装置及びサイドワインダーミサイル運用能力をその後付与した。台湾機は中国のMiGと対決したほか、危険なスパイ任務にも使われたといわれる。

 

トルコはC型D型F型を200機以上調達し、ソ連領空への侵入にも投入され、Su-15迎撃機を振り切ったといわれるが、地対空ミサイルで一機を喪失している。1974年7月のキプロス介入作戦ではトルコは地上砲火で6機を、さらに事故で2機喪失した。トルコ機は750ポンド爆弾でニコシア空港を空爆し、ヘリコプター侵攻部隊を上空援護し、自軍の駆逐艦コチャテップをギリシア艦と誤認し沈めている。

 

州軍航空隊ではスーパーセイバーを1980年まで共用した。用済みとなった325機はオレンジ色塗色のQF-100標的無人機になりミサイルテストの標的となったが、現在でも数機が飛行可能な状態で保存されている。

 

米国初の超音速機は戦闘機として決して卓越した機体ではなかったが、甘受しがたい事故率を記録したものの、革命的な新技術を駆使し、戦術も生み出し、最終的に地上部隊支援機としてベトナム戦に活躍したのだった。■

 

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The F-100 Super Sabre Was America’ First Supersonic Jet

February 4, 2021  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-100Air ForceMilitaryTechnologyWorldWar

by Sebastien Roblin

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This article first appeared three years ago.

Image: Wikipedia


2021年2月7日日曜日

主張 日米同盟の本質は軍事力による抑止効果だ。日米両国は中国との戦闘を想定し、法的問題など構造面の準備で未解決問題が残るので、戦略思考で対応をひとつずつすませておくべきだ。

  

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週、中国が「独立すれば即開戦」との強い口調で台湾へ警告してきた。台湾国防部も中国機計15機が一度に台湾防空識別圏に侵入したと発表していた。緊張が高まる中で、中国が軍事力投入に踏み来る可能性が続く状況をバイデン政権は最上位の優先事項とすべきだ。

 

トランプ政権は同盟国との取引を重視したが、バイデン政権は米国の国益を守ることを最上段にしたまま、同盟国との戦略的関与を続けるだろう。中国の軍事脅威により長年の米国の同盟国日本の存在が高まり、米日同盟の根本である有事対応が浮上するはずだ。

 

日本国内で平和志向が根強いためか、自衛隊に憲法上の制約がついてまわるためか、同盟関係の軍事側面が軽視されがちで、同盟を安定化させる、あるいは経済・外交面の協力を目指す戦略意見交換を取り上げる傾向のほうが強い。相互作戦体制の実現を求める動きの先に同盟関係の軍事側面があるのだが、言及されることが少なく、両国の軍事組織の関係は極めて複雑なまま一部で改善が必要になっている。

 

米日同盟関係の目的は侵略行為の抑止であり、そのため効果ある軍事力が前提となる。両国の同盟関係は域内の平和、安全、安定の基礎とよくいわれるが、両国が責任を共有してこそ、効果が実現するのであり、平時から意味のある対応をしておくことで緊急時に効果を発揮する。だが米日同盟に有事に必要となる装備、配備、認証が予め整備されていると言えるだろうか。

 

ここ数年の中国の行為を見れば、中国が台湾へ軍事行動を選択する可能性に両国が備えるのは当然だろう。この可能性が現実となる確率は低いと主張する向きがあるが、では、10年後はどうなっているだろうか。可能性がいかに低くても米国は事態に備えるべきだ。中国が台湾を攻撃すれば、日本は米軍への支援を求められるはずだ。中国が在日米軍も攻撃対象にすれば、日本自体が攻撃を受ける。同盟関係は有事活動に日本防衛も視野に入れた体制になっているのか。この答えは日本と共同してバイデン政権が個別に解決することであり、有事シナリオを左右する要素になる。

 

まず法的な権限を適正に確保しておくことがある。有事に日本が自国防衛しかできないのなら、日本の政治日程と米軍の作戦日程を同期化しておかなければならない。例として自衛隊に出動命令を出すため、総理大臣は日本の存亡に関わる事態だと定義する必要がある。その後に米軍支援の議論が発生する。米国が期待する支援内容をあらかじめ明確に定義しておけば、日本政府は必要な法的政治的枠組みを平時から準備でき、有事発生でも迅速な承認が可能となる。他の米同盟国が加われば、日本上空の飛行やアクセスが必要となろう。日本が主要欧州各国やオーストラリアのような域内有力国との協力関係を強化しているが、有事に増援部隊の移動を支援する合意ができていることが不可欠である。

 

日本の役目が後方支援に限定されるとしても、米日両国は目的を共有すべきだ。台湾の緊急事態に対応する共同作戦が事前にできていなくても、少なくとも自国の作戦方針は共有しておくべきだろう。さらに米国と日本で指揮統制の仕組みが並列している現状でいいのか検討すべきで、急進展する戦闘状況で情報が不完全なままでは自国部隊運用ができない。最後に、日本領土内から作戦行動を展開するため、両国の弾薬燃料備蓄が作戦継続に必要な水準になっているか。バイデン政権がこうした点を逐一検討すれば、欠点や未解決課題の共同解消にむかうのではないか。

 

中国との開戦になれば日本への攻撃も必至なので、強固な日本の防衛体制と攻撃能力へ期待するのは当然だ。防空・ミサイル防衛分野ではイージス・アショア弾道ミサイル防衛装備の導入を日本が断念したのを受け、受動的防衛体制として燃料補給系や補給処の防護やハンガーの強化、おとり装置などの検討が必要となっており、長期戦闘への準備体制を点検すべきだ。日本でイージスアショア導入が困難なら、地上配備の中距離攻撃ミサイルの配備も困難になるのではないか。このため、米装備を基地に導入する意思が日本にあるのか問う可能性が生まれている。あるいはこれが困難な場合、少なくとも米装備を日本に迅速配備する体制ができているかだ。こうした装備がないままでも両国に海上配備、空中配備のミサイル装備があるが、中国の装備近代化のスピードを意識し、データ共有や標的捕捉を共同実施する体制をすすめる必要がある。サイバー、宇宙、電磁部門が絡む戦闘となれば両国では情報ネットワーク、センサー、機材の強化が十分な水準となのか、指揮統制通信・コンピュータ・情報収集監視偵察拠点への中国の攻撃に耐えられるか点検すべきだ。こうした作業には時間がかかる。

 

日本本土が攻撃を受け日本民間人がまきこまれる事態には、日本政府をあげての対応が必要だ。死傷者が現実に発生するのは人口密集地だろう。両国は史上最大規模の一般市民退避作戦の準備ができているだろうか。艦船や航空機の規模の問題ではない。むしろ、両国に法的な権限が正しく備わっており、退避行動に使う港湾・空港を防御できるかが問題となる。また食料・物資の補給を民間人多数に提供することになる。他方で両国で戦闘中に方不明が発生すれば、捜索救難活動を東シナ海で展開しつつ、日本国内の民間医療従事者向け支援も必要となる。このため事前集積の準備が必要となるが、日本政府から要請があっても市町村レベルの医療機関の支援を米軍が行う法的根拠の問題がある。すべて米日両国の政府間で共通化されていない課題につながる。平時から調整しておくのが混乱が予想される事態に備えることにつながる。

 

最後に、両国は最適な軍事姿勢を協議しておく必要がある。直近のRANDコーポレーション報告書では、東シナ海の有事で日本が何ができるかを検討している。沖縄のはるか西方で軍事衝突が発生すれば、日本は空輸・海上輸送、補給支援で課題に直面する。こうした課題を理解した上で米日両国は現状の部隊配置が最適なのか検討できる。日本が困難な状況になれば、米日両国で必要な調整を協議し、米軍配備を検討すべきだ。自衛隊が南西部に基地を整備しているが、米日両国の部隊を新基地に配備できるだろうか。また日本がF-35導入を進め、水陸両用部隊を創立し、次世代戦闘機や無人装備の開発に向かっているが、両国の機能を強化するため米軍部隊にどんな変化が必要になるだろうか。

 

バイデン政権が上記課題を短時間で全て解決するとはだれも期待していない。両国で駐留支援経費の日本側負担が協議されているが、もっと大事なのは両国に域内有事への対応能力があるのかという問題であり、ともすれば日本本土に近い地域だけに目がむきがちだが、広義の戦略課題に焦点をあわせるべきだ。両国は戦闘実施能力を強化し、有事対応で勝利を収めるべきだ。各課題の解決を先送りすれば、次の政権に大きな重荷を押し付けるだけだ。■

 

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The United States and Japan Should Prepare for War with China

JEFFREY W. HORNUNG

FEBRUARY 5, 2021

COMMENTARY

 

Jeffrey W. Hornung is a political scientist at the nonprofit, nonpartisan RAND Corporation. 

Image: Mass Communication Specialist 2nd Class Natalie M. Byers


非ステルス空中給油機のジレンマはステルス、非ステルス機を両用する米空軍の悩み。だが根本的な解決方法が実はあるのではないか。

 空軍が将来の空中給油機の残存性を高める構想を練っている。

米国は巨額の費用をステルス戦闘機、ステルス爆撃機、ステルス巡航ミサイル、さらにステルススパイ機に投入してきた。給油機もステルスにしたらやりすぎだろうか。

 

ステルス給油機構想は決して突飛なものではない。21世紀航空戦の主役といわれるF-35やF-22のステルス機の航続距離が短いことがその理由だ。

 

F-35の600から800マイルの航続距離はその他戦闘機と比べさほど劣るものではない。だが、F-35がステルス性を最大限にする場合は主翼下に追加タンクを搭載できない。

 

 

もう一つの問題は空基地あるいは航空母艦が敵弾道ミサイルの射程内に入っていることだ。第二次大戦からアフガニスタンまでの戦績は高性能戦闘機といえども地上あるいは艦上では無力な存在だと実証すている。とくに大国を相手の戦闘ではミサイルの雨が基地に降るはずで、攻撃後に投入可能な機体はわずかしかないだろう。

 

幸い米軍機材には空中給油が利用できる。だが民間旅客機を原型とした給油機が敵戦闘機に撃墜されるリスクは超長距離空対空ミサイルがロシアR-37のように射程が250マイルにもなり高まるばかりだ。中国も給油機、レーダー搭載機材等の支援機材の撃破を狙ってくると予想される。給油機を倒せば、太平洋の戦いは勝ったも同様だ。

 

ステルス戦闘機を敵領空に侵入させるとジレンマが生まれる。今日の地対空ミサイルには機動性の劣る機材を250マイル先から狙えるS-400のような装備がある。つまり、通常型給油機は敵防空体制のはるか後方にとどまる必要がある。しかし、その位置でもレーダー探知され敵戦闘機の標的になる。

 

レーダー断面積の少ない給油機が問題解決になる。ただし、ステルス戦闘機並みのレーダー断面積は不要だ。

 

米空軍は新型KC-46Aペガサス給油機を179機導入しようとしており、400機あるKC-135、KC-10の両機種を順次退役させるというのが、航空機動軍団の当初案で、その後に別の通常型給油機をKC-Yとして2024年頃から導入し、最終的にステルス給油機KC-Zを調達するとしていた。

 

ところが2016年にKC-46改修型の調達をふやすため、KC-Yは断念し、KC-Zを早期実現したいと空軍は方針を変えた。早期とは2035年以降の想定だ。

 

そんな中で空軍研究本部が2018年に発表したのが奇抜な形状の「発展型空中給油機」構想だった。(下写真)

 

他方、ロッキードも独自にスターウォーズに登場しそうな形状のステルス給油機構想を発表しを示した。(下写真)

 

 

設計提案は完全な全翼機ではなく、ブレンデッド・ウィング・ボディ形状だった。ハイブリッド・ウィング・ボディとも呼ばれる。

 

全翼機の主翼形状は揚力の確保に極めて有効で、機体にレーダー波を反射する鋭角がないためレーダー断面積を低くできる。だが、給油機は貨物機としても現場急行を求められることが多いので、機体には貨物収納スペースが必要となる。これがKC-ZにC=貨物がつく理由だ。そのため純然たる全翼機設計は採用されず、ハイブリッド形状になった。

 

ステルス貨物機の利点は特殊部隊の敵地侵入ができることだ。特殊部隊部門は長年に渡りこの実現を求め、接近阻止の傘の中にある前線拠点への物資補給を敵の長距離対空ミサイルに撃破されずにできないものか考えてきた。ただし、ステルス輸送機は全翼機のステルス性能よりステルス性能が劣る。

 

ステルス給油機の課題が購入可能な機体価格の実現だ。ステルス戦闘機、ステルス爆撃機はレーダー吸収剤(RAM)を塗布し、運航コストが高くなり、整備もステルス戦闘機が小型だから負担に耐えられる。給油機ははるかに大きく、飛行時間も年間数千時間になるので、コスト効果に優れたRAMがないとB-2爆撃機の時間あたり169千ドルという運行コストの再来になる。

 

空軍が考える将来の給油機は残存性を高めるため、アクティブ防御装備を搭載し、敵ミサイルの撃破を想定する。これはレーザーの利用を意味する。別構想では次世代レーダージャマー機材で認知知能機能を運用し敵レーダーを使用不能にするとある。また自律運行能力を高め搭乗員を減らしながら給油のスピードを高める構想もある。

 

航空機動軍団には海軍のMQ-25が実現した技術をKC-Zに応用する別の機体構想もあり、小型ステルス自律飛行機材の運用も想定する。ステルス無人給油機が大型通常型給油機の「母機」から給油を受け、制空権が確立できない空域に飛び、味方ステルス戦闘機に給油する構想もある。ただし、この給油の連鎖も非ステルス母機が敵の標的になれば破綻する。そこで、「各種システムのシステム」でステルス、非ステルス双方の給油機各機を混合運用する構想が出ている。

 

だがもっと簡単で安価な方法もある。短距離しか飛べない戦闘機のかわりに長距離B-21ステルス爆撃機を第6世代侵攻制空戦闘機として運用し、スダンドオフミサイルや長距離無人ステルスUCAVの活用も有益だろう。■

 

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Unstealthy Tankers are Harming the F-35 Stealth Fighter

February 3, 2021  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-22F-35MilitaryTechnologyStealth

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article first appeared last year and is being republished due to reader interest.

Image: Wikipedia.