2025年8月29日金曜日

ニュークリアエナジー最新情報 – 米エナジー省が先進炉開発を加速など(The National Interest) 

 

「ニュークリアエナジー最新情報」は、技術・外交・産業動向・地政学における原子力エナジーの最新動向を追跡します

原子力規制が各国で緩和されつつある中で、日本は全く別のアプローチとなっています

イスは欧州で原子力禁止政策の撤廃を検討する最新の国となった。今年初めにはイタリアが40年に及ぶモラトリアムを終了し、ベルギーは段階的廃止政策を撤回、デンマークも欧州のエナジー安全保障懸念を背景に40年間の禁止政策の見直しを開始した。スイス政府は法案草案を提出し、2018年の原子力段階的廃止政策を撤廃するとともに、企業の原子炉建設許可申請を認める。ただし議会承認と住民投票の実施が条件となる。この新法案は「停電を止めよう」イニシアチブに対応したものであり、新規原子力開発の憲法上の保証を求めるものだが、政府によればより遅くリスクの高い道筋だという。可決されれば、欧州における原子力復活のさらなる勢いを示すことになり、電力需要の増加、AI開発の急拡大、地政学的緊張の継続の中で、各国政府が安定的で低炭素な電力確保を急ぐ姿勢を反映するものとなる。

イリノイ州が大規模原子力禁止の解除を検討

イリノイ州のスー・レジン州上院議員(共和党)が原子力エナジーの許可手続きを効率化する法案を提出したのを受け、J.B.プリツカー州知事は、同州が1987年に導入した大規模原子力プロジェクトのモラトリアム終了を支持する意向を表明した。米国で最も多くの原子力発電量を誇る同州は、既に2023年12月に小型モジュール炉(SMR)の禁止を解除し、新技術の限定的導入を認めている。プリツカー知事は、この政策を大規模施設にも拡大することが「あらゆる地域における再生可能エナジーへの移行において重要な要素となる」と述べた。昨年春に州議会で同様の法案が否決されたものの、今回の再推進は、クリーンエナジー目標の達成と電力系統の信頼性確保の戦略として原子力発電容量の拡大に動く米国各州の増加傾向と一致している。

米空軍がマイクロ原子炉を導入

米空軍はカリフォーニア州のラディアント社と、基地へのマイクロ原子炉導入に関する合意書に署名した。エナジー自立の促進、信頼性向上、ディーゼル発電機への依存度低減が目的だ。ラディアント社はワイオミング州でのユニット建設を目指し、国防革新ユニットが監督する「施設向け先進原子力プログラム」のもと、2028年の納入を予定している。この契約は、ラディアント社が2026年にアイダホ国立研究所で実施予定の原子炉試験に選定されたことに続く動きである。同研究所で新規原子炉設計が評価されるのは約50年ぶりとなる。また、トランプ大統領が国防総省に対し2028年までに軍事基地で原子炉を稼働させるよう命じた大統領令に沿ったものだ。アラスカ州のエイエルソン空軍基地でも同様の取り組みが進められている。米空軍は別のマイクロ原子炉プロジェクトについて、オクロ社に契約授与意向通知を発出した。実現すれば、ラディアント社とオクロ社のマイクロ原子炉プロジェクトは、米軍基地の電力供給で重要な転換をもたらすことになる。

英国、原子力規制の大幅見直しへ

ドナルド・トランプ大統領の規制緩和戦略を参考に、英国政府は原子力分野の大幅な規制緩和へ動き出した。政府委託の調査で現行規制が「目的を果たせていない」と指摘され、「大幅な遅延とコスト膨張」を招いていることが判明したためだ。キーア・スターマー首相が任命したタスクフォースの責任者ジョン・フィングルトンは、「過剰な規制」と「リスク回避」の文化が、民生用・防衛用原子力プログラムを過度に複雑化し、重複と不整合を生じさせ、既存・新規市場参加者の双方を阻害していると指摘した。この見直しは、主要プロジェクトのコスト増(ヒンクリーポイントCは180億ポンドから480億ポンドに、サイズウェルCは380億ポンドに膨れ上がった)を受けて実施された。スターマー首相は、今秋提出予定の提言を迅速に実施する意向を示している。この転換は、過剰な規制が英国の原子力発電容量を予算内で期日通りに供給する能力を損ない、気候変動対策とエナジー安全保障目標達成に向けた原子炉建設加速の基盤を築く可能性があるとの、政治界と産業界の懸念の高まりを反映している。

米エナジー省が試験用原子炉を迅速化

ドナルド・トランプ大統領が今年初めに発令した原子力エナジーに関する大統領令を受け、エナジー省は原子炉パイロットプログラムの創設を発表した。これは来年夏までに3基の試験用原子炉を「建設、運転、臨界到達」させることを目的としている。現在、エナジー省は11プロジェクトを選定。選定企業はアーロ・アトミックス、アンタレス・ニュークリア、アトミック・アルケミー、ディープ・フィッション社、ラスト・エナジー、オクロ、ナチュラ・リソーシズ、ラディアント・エナジー、テレストリアル・エナジー、ヴァラー・アトミックスの各社。国立研究所施設外でのプロジェクト認可により、開発期間の短縮とコスト削減を図り、中小の先進炉開発企業に商業化への明確な道筋を提供する狙い。成功すれば、このプログラムは小型モジュール炉市場の加速、米国における原子炉認可基準の再構築、将来の商業建設に向けたサプライチェーン強化につながる可能性がある。■

画像:Vink Fan/Shutterstock




Nuclear Energy Now – DOE Fast-Tracks Advanced Reactors

August 15, 2025

By: Emily Day

著者について:エミリー・デイ

エミリー・デイは、地政学、原子力エナジー、グローバルセキュリティを専門とする経験豊富な研究者、ライター、編集者である。『ナショナル・インタレスト』誌『エナジー・ワールド』のアソシエイト・エディターであり、ロングビュー・グローバル・アドバイザーズのリサーチ・アソシエイトとして、公益事業、リスク、持続可能性、技術に特化したグローバルな政治・経済動向に関する知見を提供している。以前はグローバル・セキュリティ・パートナーシップのデラ・ラッタ・エナジー・グローバルセキュリティ・フェローを務めた。


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