2015年4月13日月曜日

中国提唱の一帯一路、AIIBの本質を見抜け



AIIBの話題ではバスに乗り遅れるな、あるいは様子を見る、という状況にどううまく反応するのかという小手先の議論が中心になっていますね。覇権をめぐる争いは軍事量だけの話ではなく、ソフトパワーも重要な要素で一路一帯=AIIB=中国の考える新世界秩序につながっていくのですが、ばらばらな議論をしていては中国の思いのつぼです。Holisticに物事を見られないのは学校、職場、社会で教えられてきた要素還元主義の「科学的思考」の弊害ですかね。せめてこのブログの読者には発想を広げて大きな視野で物事を考えていただきたいですね。ご関心があれば「ブレイクスルー思考」で検索してみてください。

China's 'One Belt, One Road' Strategy

By Wendell Minnick4:53 p.m. EDT April 11, 2015

Modern-day Silk Road Effort Could Challenge US Influence in Asia, Africa, Mideast


Austrian President Heinz Fischer Meets with Chinese President Xi Jinping(Photo: Parker Song-Pool/Getty Images)
TAIPEI — 中国の提唱する「一帯一路」政策が実現すれば中国は押しもされぬ地政学上の大国になるというのが専門家の多数意見だ。
  1. 構想ではアジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ新しい回廊を複数開発し、「新シルクロード経済通路」で中国とヨーロッパをむすぶべく、中央アジアの山岳地帯を直通する。「海のシルクロード」は中国の港湾部をアフリカ沿岸と結び、さらにスエズ運河経由で地中海に出る。習近平主席は3月28日海南島でのボアオアジアフォーラムBoao Forum でこの構想を公表。
  2. 「一帯一路構想は経済が出発点だが、政治的戦略的な意味もある」と上海交通大学Shanghai Jiao Tong Universityの国家戦略研究院副所長 庄建中Zhuang Jianzhongは解説する。「エネルギー安全保障では共同開発による互恵を目指す」
  3. 域内経済が向上すればテロリズムの根本原因が減るので米国も中央アジアや中東で同構想を安定化・平和の実現手段として歓迎すべきだというのが同副所長の主張だ。
  4. ただし専門家の多数意見は中国が新規開拓通商路の安全を維持できるのか疑問を呈している。それぞれ危険地帯を縫うように走るからで、アフリカ沿岸では海賊行為、中央アジアの「ワイルドウェスト」ではイスラム過激派が跋扈している。
  5. 各ルートには補給上の拠点が必要でその他通信インフラ、空港、鉄道、自動車道路、港湾の建設に加え軍部隊を配備しないと迅速な危機対応ができない。その場合は長距離戦略輸送機とともにマラッカ海峡・スエズ運河などに沿海戦闘艦船の配備が必要だろう。さらに病院船ほか各種装備で平時軍事作戦 Military Operations Other Than War (MOOTW)の実施を模索するだろう。
  6. 「一帯一路」はまだ構想段階と米海軍大学校で中国海事問題を専門とするジェイムズ・ホームズ James Holmesは言い、現時点では軍事上の意味はまだないが、「長期的には中国はアメリカをアジアから追い出し、わがほうの同盟国の切り離しを図るだろう」とする。
  7. 中国が目指すのはユーラシアに通商路複数を確保し、各国に対して中国式の制度がアメリカよりも上を行くと認識させることだが、そのためには実際に物資を輸送しなければならないとホームズは見る。「最終的に中国は仲間の各国へもっと多くを要求してくるはずで、米国が各国の港湾を利用するのを拒否するよう求めてくるでしょう。」
  8. ホームズは今回の構想は20世紀初頭のベルリン・バグダッド鉄道構想とは種類が異なると見ている。今回の構想は「経済開発に間接的な外交安産保障と軍事的意味を加えたもの」と見る。
  9. 新しいアメリカの安全保障を考えるセンターの主任顧問を務めるパトリック・クローニンPatrick Croninは「一帯一路で良くない結果が生まれる」と見るが、今のところはスローガンに過ぎず、現実になっていないと指摘。中国がソフトパワーで南シナ海、東シナ海での海洋領土問題を緩和させようとすると見る。
  10. クローニンはあわせて「米国もソフトパワーを発揮する絶好の機会なのに戦略的発想が欠けている」と批判する。
  11. 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行は2013年に誕生しており、「一路一帯」の実現のため各種施設の建設が目的だが、これも中国のソフトパワーの一種であり、米国のアジア再配備に対抗するものとクローニンは指摘した。
  12. 専門家多数の見解ではAIIBは国際通貨基金・世界銀行・アジア開発銀行の既存体制へのあからさまな挑戦であり、中国は逆に既存体制は米国の支配下にあると見ている。
  13. 「中国が米国と各国の争奪戦をする気なら、目に見える恩恵を無理のない形で提供しくはずだ。これが中国式の発想の根本だ。中国王朝は贈り物を提供し代わりに中国への政治的服従を求めるのが常だった」(ホームズ)
  14. 現時点の構想では海上関係はまだ完成度が低い。人民解放軍海軍(PLAN)はMOOTW活動を近年頻繁に行っており、海賊対策はアデン湾で2008年から実施している。今月はじめにPLANはイエメンで民間人救助を実施しているほか、2011年にもリビア内戦で民間人避難にあたっている。.
  15. 2014年に胡錦涛主席がPLANに新歴史的ミッションNew Historic Missions (NHM)を与えていると国防大学校で太平洋問題に詳しいクリストトファー・シャーマンChristopher Sharmanが解説する。その中に国家経済発展の防衛が入っていた。これは中国軍にとって目新しい任務ではないが、「2012年国防白書で前面に出され、戦略的海上交通路の防衛を特記した」とし、現在の状況もこの戦略方針の一環で、「遠隔地海上防衛」が中国の海洋戦略の一部であることがわかる。
  16. シャーマンによれば中国海軍の戦力再編のあらわれが056型江島Jiangaoコルベットであり、大型艦船が遠隔地に派遣されることが多くなる想定で第一列島線付近の任務を十分こなす性能を盛り込んである。さらに遠隔海域での作戦を想定して新艦隊編成の可能性もある。
  17. 「海のシルクロードでがそのままPLAN艦船の遠隔海域展開すにはならないと見ていますが、段階的な艦船派遣拡大はありうるでしょう」とシャーマンはフリゲート、駆逐艦、潜水艦の動向に注意をはらうよう指摘している。
  18. 戦略面では中国海軍は「基地」ではなく「寄港地」の交渉に入るはずだ。今後もスリランカや東アフリカへのアクセスを求めるほか、インドネシアも視野に入れているはずとシャーマンは指摘する。
  19. シャーマンは国防大学校で論文"China Moves Out: Stepping Stones Toward a New Maritime Strategy"(「新しい海洋戦略に乗り出した中国」)を著しており、中国の空母二番艦が構想実現の大きな要素と見る。MOOTWの各種任務の実現とともに遠隔地で中国の軍事力を誇示するはず、というのだ。■


2015年4月10日金曜日

☆ 米空軍の主力機が大型機に統一される日が来る?



第六世代戦闘機の開発に乗り出そうというところで、冷水をかけるような報告書ですが、大きなインパクトが出そうです。戦闘機命のヒエラルキーに支配された空軍の成り立ちが変わってしまうかもしれませんが、やはり価値観の違いを理由に黙殺されてしまうのでしょうか。なお報告書の著者は米空軍出身(ただし戦闘機パイロットではない)でRAND研究所でも仕事をしていた人とのことです。


Should Future Fighter Be Like A Bomber? Groundbreaking CSBA Study

By COLIN CLARK on April 08, 2015 at 3:46 PM

WASHINGTON: 米空軍の次世代主力機は小型戦闘機ではなくステルス長距離爆撃機に近い機体になるかもしれない。
  1. これは予算戦略評価センター Center for Budgetary and Strategic Assessmentsがこのたび発表する報告書 TRENDS IN AIR-TO-AIR COMBAT: IMPLICATIONS FOR FUTURE AIR SUPERIORITYの結論部分であり、このたびBreaking Defenseは同センターとは無関係の筋から写しを入手した。
  2. 報告書の主な所見は以下のとおり。「包括的結論として電子センサー、通信、誘導兵器で相当な技術進歩が過去数十年で発生しているので航空戦闘の形態がすでに根本的に変化している可能性があることへ注意喚起する」
  3. 上記結語は報告作成者ジョン・スティリオン John Stillion が世界各地で1965年以降の「1,450件以上の勝利実績」を集めたデータベースを精査して得たものだ。
  4. スティリオンの研究では敵機を探知、待ちぶせ、攻撃し、かつ防空体制をスピードと操縦性で出し抜く航空機の製造は、航続距離、速度、性能それぞれ物理的な限界に近づいているという。
  5. 「電子センサーに加え、物理的な痕跡の削減、RF(電波)・IR(赤外線)対抗装置の重要度が高くなっていること、絶対有利なSA(状況認識)を可能とするLOS(見通し線)内のネットワーク構築も同様に重要になる中で、高速飛行性能や操縦性の戦術価値が減っていくと大型戦闘航空機の生存性が高くなり、場合によっては従来の戦闘機よりも優れた特性を示す可能性がある」とまとめている。
  6. 言い換えれば、ミサイルに対して優越性を発揮できる戦闘機は少なく、ステルスや電子戦の助けがあってもこれは覆させられないということだ。
  7. 一方で1965年以降の航空戦闘データベースからは長距離ミサイルの台頭の一方、ドッグファイトが急速に減っていることがわかる。1991年の湾岸戦争で米軍が撃墜した33機で操縦性がかぎになったのは4件のみだ。その25年後に長距離探知センサーとミサイルの性能は向上の一途で、これまで重要視されてきた飛行速度、推力重量比、旋回半径は今や重要性を失っており、将来はさらに失うだろう。
  8. そこで報告書の結論では速度があっても将来の機体を救えない。なぜなら高速になればエンジン排熱も大きくなり、前縁部など機体表面が発する余熱も大きくなる。すると将来は赤外線探知追跡装置(IRST)への依存が高まるだろう。なぜならデジタル式無線周波数メモリーDigital Radio Frequency Memory (DRFM) を使うジャマーにより捜索レーダーが妨害されると敵は熱源をIRSTセンサーで捜索し、高速で飛行する機体ほど探知が容易になる。
  9. この考察は第六世代機といわれる次世代戦闘機開発を目指すペンタゴンにどんな意味があるのだろうか。
  10. スティリオンによればペンタゴンには従来の戦闘機の概念から「過激なまでの」脱却が必要で、センサー性能をさらに引き上げ、物理的な痕跡を制御し、ネットワーク化で優秀なSAを実現しつつ、超長距離兵器で敵に発見される前に交戦する機体を模索すべきだという。
  11. 「2035年以降に制空権を確保するためには広範かつ客観的にしかも想像力豊かに考える必要がある。現在の機体を発展させるよりも常識にとらわれない形状の機体をめざすことになるかもしれないし、ならないかもしれない。大事なのは評価を客観的に行うこと」と報告書作成者は記者に電子メールで伝えてきた。
  12. ペンタゴンは国防優勢確保構想Defense Dominance Initiative および関連した航空機性能革新構想Air Innovation Initiative(DARPAが主導)により次期主力戦闘機F-X及び搭載エンジンの開発を行う。スティリオンの研究内容はDARPAおよびフランク・ケンドール(ペンタゴンで調達部門を統括)が目を通すはずでどんな実験が必要か検討するはずだ。
  13. 報告書を読んだ業界筋は「スティリオンは良い指摘をしている。戦略の見直しが必要だ。第六世代機ではスーパーF-22を作ってどうするのか。F-22よりわずかに性能が向上してもコストは莫大だろう。太平洋での作戦範囲を考えると航続距離は短い。であれば逆に大型機に焦点を合わせたほうがいいのではないか」
  14. 大型機なら大きな開口部(レーダー、赤外線)で遠距離から敵を探知できるし、大型ミサイルを搭載して敵を事前に攻撃できる。
  15. 「一番説得力があると思ったのは」と業界筋は話した。「将来の米空軍の攻撃力となる大型機、長距離機、大ペイロードでステルスの機体一種類を開発すべきという点だね。機体を共通化すればミッションに応じてペイロードを変更できる」
  16. この業界筋は機体を一種類にすれば攻撃型、空対空ミサイル運用型、核運用型、制空権確保用に指向性エネルギー兵器を搭載した型、早期警戒用機材、地上監視ミッション用機材と必要に応じて準備できる。
  17. これをつきつめると将来の米空軍は400機を「中核機材」として兵力投射用に整備すれば十分、と上記業界筋は言う。
  18. 「新型機の一部は無人機にし滞空性能を更に伸ばす。この機体を「戦機」 “Battleplane”と呼んでもいいかもしれない。これはジュリオ・ドゥーエが1920年代に夢見ていた機体だ。 大陸間横断飛行ができる飛行距離があれば地球上どこでも攻撃可能となり、同時に制空権も確保できる。敵に近い基地防衛のため何百機もの短距離戦闘機を配備する必要はなくなる。大型機は遠隔基地から運用し、機種統一で兵站面、開発・調達、人員配置の各要素でどれだけの節減になるだろうか」と同上業界筋は見る。
  19. 賢明な方なら長距離打撃爆撃機 (LRSB)事業の選定業者がこの報告書が想定する新型機製造に一番近い位置にあることに気づくはずである。長距離性能と大きな兵装運用能力が鍵だ。ただこれで確定ではなく、多分、という意味だが。
  20. ではペンタゴンがこれまで75年の道のりを大胆に捨てて新しい方向に行く可能性がどれだけあるだろうか。
  21. 「歴史を見れば、可能性はない」と同上業界筋は言う。「空軍上層部は基本的に戦闘機パイロット出身者で『爆撃機』を制空権確立ミッションに使うと言ったらどんな反応を示すでしょうか」
  22. 構想の実現にはペンタゴン上層部および空軍内部の価値観を変える必要がある。ただし予算が枯渇し、ロシアや中国が台頭し強引さを強めれば、将来構想を真剣に考える条件が整う。
  23. この報告書は今後長きに渡り引用元になり、貴重な成果が含まれており、当時のペンタゴンに変革に踏み出す勇気があったのか思い返す材料になろう。航空戦闘の意味を理解したいのであれば本報告書は必読だ。


2015年4月9日木曜日

イエメン空爆作戦に米軍が支援提供を開始


サウジアラビア主導で空爆作戦を開始したのはいいのですが、やはり戦闘継続には米軍の支援が必要になったようです。シリア、イラク、からイエメンまで空爆作戦の展開が広範囲に中東で見られますが、特にサウジ主導の湾岸諸国がどのように今回の作戦の経験を今後活用するのかが注目されますね。それ以前に何をもってイエメン作戦を終結できるかが課題ですが。イランの動向には要注意ですね。

U.S. launches aerial refueling mission in Yemen

By Andrew Tilghman, Staff writer5:59 p.m. EDT April 8, 2015
サウジ主導の有志連合によるイエメン空爆作戦で米軍は空中給油機を毎日飛ばす支援を開始した。中東地区での米国の関与がさらに拡大していることの現れと受け止められる。
  1. 米空軍のKC-135ストラトタンカー一機が4月7日夜、サウジ空軍所属F-15イーグルとUAE空軍のF-16ファイティングファルコンに空中給油したとペンタゴン報道官スティーブ・ウォーレン陸軍中佐Army Col. Steve Warrenが8日発表した。
  2. 米中央軍CENTCOMは毎日一機の給油機を飛ばし有志連合を支援するが、給油機はイエメンの領空に入らないとウォーレン中佐は説明した。
  3. ペンタゴンは限定的ながら兵站支援、情報支援も承認しており、サウジ主導の航空作戦用の弾薬補給も認める。サウジアラビアほかアラブ諸国はイランが支援する戦闘員を標的に作戦を展開している。
  4. CENTCOMは米軍関係者10数名を「融合センター要員」としてサウジ他湾岸諸国が加盟の湾岸協議会に派遣し、限定的ながら米軍と調整作業を行っている。
  5. 派遣要員は限定的な情報提供は行っているが攻撃目標の個別情報は共有していないとウォーレン中佐は説明。
  6. 兵站支援の範囲もイエメン国外に限定しており、米海軍が3月27日にアデン湾で機外脱出したサウジのパイロットを救出している。
  7. イエメンは米国による対テロ作戦の成功例ともちあげられてきた。米軍は少数の特殊作戦要員と無人機でアルカイダ系戦闘員の侵入を食い止めてきた。
  8. しかし3月になりイエメンは混迷の度を深め、米国も100名規模の特殊部隊を撤収。特殊部隊はイエメン南部で政府軍の訓練にあたっていた。
  9. 同じく3月にサウジ主導の有志連合がシーア派が支援するフーシを標的に空爆作戦を開始した。フーシは政権奪取を試み、イランの支援を受けている。
  10. 国務副長官トニー・ブリンケンは7日に報道陣に対してサウジ主導の有志連合は「フーシだけでなく、その後ろ盾の勢力に対してもイエメンを力で転覆させないと強いメッセージを送っている」と述べた。
  11. 専門家の多くがスンニ派とシーア派のイエメン内戦が中東全体に拡大するのではと懸念している。イランはイエメンに海軍艦船を派遣中との報道がある。
  12. ウォーレン中佐は米国は地域内の「海軍活動を逐一注意深く監視している」と述べた。■

2015年4月8日水曜日

☆ 米空軍の考える近接航空支援の新しい姿とは



空軍が必要か、との議論もこのCAS任務に端を発しているのではないでしょうか。またここではA-10引退か否かの問題もからんでいます。一方で空軍とすればデビューしても当面は期待通りに使えないF-35を抱えてしまうのは大変との思いもあるのでしょうね。



USAF Eyes New Era Of Close Air Support

U.S. Air Force’s campaign to reinvent CAS
Mar 30, 2015Amy Butler Aviation Week & Space Technology - Defense Technology Edition
http://aviationweek.com/defense/usaf-eyes-new-era-close-air-support

2001年秋、ペンタゴンは史上最大規模の機体開発になるロッキード・マーティンF-35にゴーサインを出したが、その時点で近接航空支援(CAS)は任務の前面に掲げられていなかった。
契約交付の数週間前に9.11のテオロ攻撃が発生しており、CASミッションはイラク、アフガニスタンで普通のことになっていた。その時点ではF-35AにCASを激戦空域で実施させるのは補足的な扱いで空軍は同機にF-22と組んで深部侵攻をさせようと考えていた。現在は議員の側から空軍のA-10退役案に異議が入っており、F-35対A-10の単純な議論ではなくなっている。空軍はA-10全機退役を実施できなくなり、議論の「活性化」に追い込まれていると参謀総長マーク・ウェルシュ大将は語り、将来のCAS機材として各種戦闘機や爆撃機を投入し、F-35だけには任せないことになっている。
この問題は空軍で喫緊の課題。財政圧力の中で国防予算削減が計画されており、空軍は再度A-10退役案を提示して、単一任務しかできない機材の維持にあてる予算はないと主張。
JTACチームがA-10パイロットに航空支援ミッションで敵味方の区別を教えている。A-10の低高度低速度飛行特性と強力な火力は地上部隊には安心感を与える。Credit: USAF Airman First Class Chris Massey

将来のCASを検討すべく空軍はサミット会合を開催し、A-10の投入がなくてもミッションを実施できるのか、空の完全制圧をどう実現するかに関心を集約させようとしている。

政界の反応
議会は空軍のA-10全機退役方針を覆そうと、まず同型36機のモスボール保存に同意したが、節減効果は想定規模には到底及ばない。空軍長官デボラ・リー・ジェイムズ Deborah Lee James はこのうち18機を予備機材に編入することを認めたが計36機が現役から退ければ一飛行隊以上の規模の縮小だ。A-10計18機の整備要員はF-35A対応の訓練に回されるが、F-15Aが2016年に初期作戦能力獲得の予定なので整備要員がもっと多くしかも迅速に要請する必要は明白だ。
今も抵抗は根強い。A-10維持を強く主張する向きのひとつは米地上軍で、議会内でも選挙区にあるA-10用基地の維持を願う議員がここに加わる。ただし変化の兆しも見られる。陸軍参謀総長レイ・オデイエルモ大将Gen. Ray Odiernoは昨年はA-10支持派だったが、今年になり陸軍長官ジョン・マクヒューJohn McHugh が退役を支持する側に回った。「地上部隊の兵員が必要とするのは敵陣地に爆発物をお見舞いすることで、しかも効果的かつタイムリーに実施できればよい」と記者に語っている。

「提案内容に賛同しない議員がいるのは承知しています」とジェイムズ長官も認める。「そうなると再び『これをしないとどうなる』とこちらから尋ねることになり、それなら強制削減をやめてもらってもっと予算をいただけるのでしょうか」 A-10温存だけで2016年に520百万ドルが必要とウェルシュ大将は議会で語っている。2020年まで温存すれば4,200百万ドルとなる。「A-10を温存したくなる状況もあるが、予算的に無理」
ジェイムズ・ポスト少将 Maj. Gen. James P ost(航空戦闘軍団副司令官)がA-10を支持する将官は裏切りと同じとしている。また議会にA-10の性能内容を伝えるものは反逆分子と発言したと軍関係のブログJohn Q Public が伝えている。
空軍はなんとかして議論がA-10対F-35に向かわないようにしてきた。そのためCASをメインにした報道陣向けイベントも2回開催している。問題はA-10以後の機材をどうするかだとウェルシュ大将は言う。「メッセージそのものを再定義するつもりはない」とし、「将来にCASミッションを再設定があるかもしれないが、現在の検討はまだ二年目に入ったばかり」
機種別戦役別CASの実績
統計が物語るCASの実態
2006年から13年の間にCASミッションの67%はアフガニスタン(不朽の自由作戦)、イラク(イラク自由の作戦)で各戦闘機により実施されおり、A-10は24%をこなしたと米空軍大佐タッド・ショーティスCol. Tadd Sholtis (米空軍中央司令部報道官)は説明する。A-10だけがCAS機材ではなかったというのだ。ただし同機の貢献度には疑いの余地がない。
地上部隊にとって同機はCASの象徴であり、近接戦闘に巻き込まれた兵員の生命を空軍力が救った事例は多い。これはA-10の特徴である強力な30‑mmガトリング砲によることが多く、低速・低高度飛行で地上部隊を支援したことが大きい。これは目で見える助けになった。これに対して通常の戦闘機にも機関砲があるが、飛行速度はずっと大きく、高度も高くなり、地上部隊には存在が見えない。
ここでウェルシュの不満が繰り返される。「CASとはミッションであり、機材そのものではない。」A-10支持派が米空軍がCASミッションを放棄したと主張するのに大将は明らかに苛立っているのだ。「年間2万回はCASミッションを実施しているのにいつになったら正しく認知されるのだろうか」
肝心なのな実際にCASミッションを9.11以降に飛ばしたパイロットに尋ねることだ。CASとはつまるところ訓練だとわかる。
米空軍の機種別CAS能力と搭載可能兵装

CASミッション訓練の実態
「セスナ172にAK-471丁を載せて飛べばCASだ」と言ったのはF-15Eのパイロットだった。標準手順とはCAS機材を準備することで、A-10だけが機材ではない、というのがその主張だ。地上部隊からの要請が入れば、支援要員全員が出撃を迅速に行えるように準備し、タキシーング中の機のパイロットを敬礼で送り出し、危機に直面中の地上兵員を支援するミッションが実施される。
各基地でCASミッションの経験がある8名のパイロットと話してみると、異口同音にCASとは機材ではなく、訓練だとの答えが帰ってきた。地上要員の空軍兵員(別名合同最終攻撃管制官(JTAC))には攻撃機を呼ぶ任務が与えられており、やはり同じ意見だ。「一日が終わる段階で戦術的にはどの機材でも実用に耐えるとわかる」とJTACの一人がネリス空軍基地(ネヴァダ州)で語っている。この人物はウェポンスクールで戦術開発にあたっている。JTAC要員と各種機材(F-16, F-15E、A-10, B-1やB-52)のパイロットは多様な気象条件や地理条件のもとで各種武装を展開する訓練を受けており、精密誘導弾や必要に応じて機関砲の使用も含む。”
空軍要員は空域に到着して、対象の地上部隊の上空でJTACと報告連絡する訓練を受ける。JTACは欲しい軍事効果を伝え、具体的に兵装の種類を伝えることが多い。パイロットは信管を準備する。最近は各軍共通プログラム式信管が空中発射弾に使われている。最新鋭の目標捕捉ポッドやセンサーがあってもJTACはパイロットに口頭連絡することが多く、山岳地や集落の中に潜みながら、投下武器の規模が大きすぎたり、数メーターの誤差が出て友軍に死傷者が発生しないようにする。このミッションを「近接危険」 “danger close”と呼ぶ。
CAS機パイロットがグリーン・フラッグ演習を言及する事が多い。この演習は年間を通じてネリス空軍基地あるいはバークスデール空軍基地(ルイジアナ州)で開催される。レッドフラッグ演習は空対空戦の訓練で有名だが、グリーンフラッグには陸軍地上部隊も米空軍要員とともにCAS技術を磨くシナリオに参加する
同演習では最近の中心はCASを遂行できるパイロットの資質をどう維持するのかに移ってきた。A-10パイロットは自然にCASを中心に考えるが、F-15E、F-16やB-1のパイロットでは戦術訓練が関心の的だ。各機のパイロットは大尉クラスが多く、ハイエンド戦闘をほぼ同等の敵勢力を相手に行うことは学術的な課題と考えてきた。
だが空軍の戦闘部隊の半分以上でハイエンド戦闘への準備が不足している。ジェイムズ空軍長官はイラクやアフガニスタンのような無害な空域での作戦遂行を前提としてきた取り組みの変更が必要と議会で語っている。敵空域に進入して高度の防衛体制の中で目標攻撃する技能が萎縮したままだという。

技術面ではどんな進展があるのか
各機種のパイロットもA-10がCAS専用機材と認めている。同機はパイロットに地上の広い視野を与える設計で低高度低速飛行に特化し大量の精密攻撃弾薬と機関砲弾丸を搭載できる。だが「CASをこなせるのはA-10乗りだけというのはいいすぎだ」とA-10パイロットが語っている。空軍関係者によればCASシナリオが想定する武器は多様で地上掃射から5,000ポンドのバンカーバスター爆弾まであり、各種機材が投下可能だという。
しかし精密誘導弾薬の登場によりCASの正確性が飛躍的にあがり、ミッションをはるかに高速かつ高高度を飛行中の機材で実施するのが可能となった。直近では新型250ポンドの小口径爆弾(SDB)をF-15Eが使っている。もともと長距離誘導弾として作ってあり、SDBは直接攻撃の想定はなかったが、F-15Eパイロットは投下高度を変更する戦術を編み出し、メーカーのボーイングも滑空時間を短く調節できる改修を加えた。
戦闘機が不在あるいは能力不足の場合、A-10が呼ばれ航空支援の任にあたることがある。とはいえ戦闘機に標準搭載のシステムでも低空飛行などCASミッションの実施が可能だ。
F-15Eのパイロットからアフガニスタン東部の渓谷で地上部隊が攻撃を受けた際の経験談を聞いた。「このまま爆弾投下をしてもうまくいかないとわかっていたが、支援は重要だと認識していたが一番怖い状況だった」といい、「支援不可能とは言えず搭載のシステムで実施できるか、もう一度地形を観察した。機内の地図表示で地形の高度がわかる。そこで決断した。高度を下げ、目標上空を高速で飛ぶと敵はばらばらに走りだした。それだけで十分なことがある。こちらの姿を見ると逃げ出すのだ」
空軍はこれを「力の誇示」のミッション“show of force”と呼び、現場に到着するだけで敵を追い払えるとする。パイロットからは力の誇示により敵が逃げる事が多いとの報告もあり、弾薬投下が省略できる。
空軍関係者にはA-10退役で、能力ギャップが発生すると危惧する向きがあるが、新たな戦術の開発で他機種でも対応可能だ。
だが空軍上層部によれば結局は資金の問題だという。単一任務しかこなせない機種を維持する予算がない。「たしかにA-10のCAS能力はすごいが、他の機種でもミッションはこなせる」 と航空戦闘軍団の司令官ハーバート・カーライル大将Gen. Herbert Carlisle はAviation Weekに語る。「機種を変更すればリスク発生は発生するが、CASを重要に考えて、ほぼすべての機種をCASに投入する」
米空軍で精密目標捕捉ポッドや精密弾薬の利用が進んでいるが、陸軍や海兵隊のヘリコプターでも同様だ。回転翼機の弱点は速度と航続距離の不足で、友軍から遠く離れるとこれが顕著となる。また敵砲火にも脆弱だが、条件があえば強力な効果を発揮する。陸軍のAH-64アパッチとA-10はISISと戦う地上部隊に頼りにされている。
ここに空軍がCASを重視する背景がある。多様な機種で必要な支援は可能と関係者は強調したいのだ。またA-10の退役でCAS任務の実施が完全に実証がすんでいないF-35にすぐには任せられない。

移行期間にどう対処するのか
ウェルシュ大将が強調しているのはF-35Aの初期作戦能力獲得予定が2016年12月となっているがあくまでも初期能力である点で、航空戦闘軍団のカーライル司令官は3つのミッションを重視している。CAS、航空阻止、敵防空網の限定付き制圧だ。同司令官もF-35のCAS性能はIOC獲得時点では「初歩的」だと認める。IOC時点で想定する武装は500ポンドレーザー誘導爆弾と2,000ポンドの共用直接攻撃弾に限定される。パイロットも合成開口レーダーの性能はフルに引き出せず、ブロック4ソフトウェアの装着を待たねばならない。これはまだ相当先のことで、地上管制官とのビデオリンク機能もIOC獲得時点では利用できない。
「IOC時点での基本性能に通信機能がある」とカーライルは説明する。「Roverデータ共有システムは装備していない。これがあればポッドが撮影する目標画像を見て僚機間で話すことができる」 F-35の能力が向上するまでは他機種にミッションを実施させるという。ただし制空権が確立していない空域は別だという。
ウェポンスクール関係者は「CAS調査」でCASにF-35をどう投入するかを戦術面で検討していると第422試験評価飛行隊(ネリス空軍基地)のベンジャミン・ビショップ中佐 Lt. Col. Benjamin Bishop は述べている。検討内容にはF-35パイロットとJTAC間の連絡方法も含む。その結果は同機の戦術マニュアルに盛り込まれる。CASは海兵隊機材のIOCでも取り上げられている。海兵隊のIOCは7月1日予定だ。ビショップ中佐によれば空軍は3iソフトウェア搭載機でIOC宣言をするが、より強力なブロック4ソフトウェア搭載を待つという。
「3iではすべての兵器を運用できません。3Fだとより多くの種類を運用できFOC(完全戦闘能力)になります。そこで戦術を開発し、作戦テストで試します」とジェイ・シルヴェリア少将 Maj. Gen. Jay Silveria (航空戦センター司令官、在ネリス)は語る。「3Fでより多くの機能が利用可能となればもっと多くの兵器を想定した戦術とテストを展開します」
対照的に海兵隊機材はブロック2B搭載とはいえF/A-18やAV-8Bでできなかった能力を発揮できる。「搭載センサーによりパイロットの状況認識が向上し、精密弾を迅速に利用できるようになります」とポール・グリーンバーグ少佐Maj. Paul Greenberg(海兵隊報道官)は語る。「従来機では不可能だった地上支援ができる」のは同機のステルス性によるものだという。
ブロック3Fではデータ融合が向上し、赤外線捜索追跡能力が完全に利用できるようになるほか、機関砲が利用でき、レーダーの活用範囲も増える。電子光学式目標捕捉システムによりF-35をCASに適正に投入できるとシルヴェリアは説明する。.

今後の展望
空軍は制空権が確保した空域だけでなく戦闘中の空域でもCASを実施するべく、技術と戦術で複数の段階を想定している。
空軍主催のCASサミットには各軍の代表も出席し、今後の道のりを確認した。その中で注目を集めるのはCASの実績を持つ空軍要員の経験集約だ。A-10パイロットたちをF-16、F-15E、F-35の各飛行隊に派遣する。「CAS関連の技量を各隊に移転しCASの素養を維持する」とカーライルは語っている。「ブロック4搭載のF-35が利用可能となればCAS機材として相当の性能を発揮できる」
また空軍はCAS統合グループをネリス基地に立ち上げ、訓練、戦術開発、技術面で支援にあたらせる。ここに各軍要員のほか地上管制官も入れる。米空軍はまた仮想訓練を教程の一部に取り込みJTAC要員を増員する。「1990年時点では450名で要請すべてに対応していた」とカーライル大将は回想する。湾岸戦争では空軍力は敵防空網制圧のほかイラク国内の敵対的航空機の破壊に投入されたためCAS需要は大きくなかった。「現在は1,500名いるが要望に応えきれない」 
このCAS統合グループでは制空権が確立していない空域でCASの成果をどう発揮できるかも検討する。「激戦環境で戦う場合に自らを守りながらミッションを実施するには高い水準の訓練が必要だ」(カーライル)
さらに将来のCASに使うウェポンシステムの概念も検討する。その場合専用機投入も検討の一部だ。まだ検討段階に過ぎないが、カーライル大将は性能だけでなく今後戦闘機の機数が減ることからこのCAS機種を追加投入する可能性も慎重に検討させるという。
「将来発生する脅威への対策として必要な性能がひとつあり、定数問題もある」とカーライルは説明。「ハイエンド機材の性能水準をいかに維持するかを絶えず考えているが、必ず変化点がやってきて低コストで今より高度の性能が必要になる時が来るはずだ」 ただし、現状の脅威内容と予算環境を考えると「まだそこまで到達していない」という。
一方で空軍研究機関は長年の夢である爆発効果調整兵器“dial-a-yield” weaponsの検討を続けている。これはパイロットが破壊性能を機内で調整できる兵器のことだ。同じく期待されるのは多用途兵器でF-35機内に搭載し、激戦区で使うもの。「もうひとつ鍵になるのがポイントアンドシュートなのかキューアンドシュートかだ。A-10では機首を向けるが、ヘルメット装着の指示器で発射させることを目指している」とカーライルは発言している。「まだ実用段階にまで開発が進んでいない」とCASを想定して述べている。
これ以外にウェルシュ大将はCAS兵器では独創的な発想 out-of-the-box thinking を期待していると言う。たとえば指向性エネルギーや小型精密誘導兵器などだ。「次世代の近接航空支援で中心を置くべきものはなにか。技術で解決可能な内容でも見方を変えるべきだ」という。「前方発射型のレーザー誘導ロケットで内部から数千個の弾丸を放射してはどうか。結果として数千発の破裂が発生する」と従来よりも弾丸数が増える効果になる。「現在は機体の前方に搭載している銃を取り外しても同じく効果が得られないか」
まだ発想の域を出ないが、空軍がCASミッションの再強化に必要な予算を空軍が確保できるかとなると意見は一致していない。■



2015年4月7日火曜日

訪日直前、カーター国防長官が見る太平洋への展望



カーター長官が日本、韓国をまず訪問することの意義を考えたいですね。なんといっても日本と韓国がきくしゃくすることは防衛体制上マイナスなので中を取り持ちたいということでしょうか。またTPPにも言及し、経済も含めた統合的な国力を視野に入れていることがわかります。カーター長官自身は技術の意味を理解できる人のようなので今後が期待できます。

SecDef Carter Reasserts US Pacific Vision

By Aaron Mehta 4:02 p.m. EDT April 6, 2015


Carter speaks at State(Photo: US Department of Defense)

WASHINGTON — アラビア湾岸地区や欧州で現実的な課題が残っているが、それでも太平洋がアメリカの未来を決める場所とアシュトン・カーター国防長官が6日に述べた。
  1. アジア太平洋地区に焦点をあわせた初の政策演説でカーター長官は昨年の中東湾岸地区、欧州での出来事があったがアジアに軸足を移す政策自体に変更はないとアリゾナ州立大に集まった聴衆に述べ、太平洋再重視は長官が直接監督する課題と語った。
  2. カーターはさらに将来の安全保障に影響を与える「場所と出来事を考える」のが課題とし、将来の中心地は太平洋との見方を示した。
  3. 長官の発言は就任後初の太平洋地区歴訪に出発する前のタイミングで出たもの。
  4. 4月8日-9日は日本、その後韓国を2日間訪問する。最後にの米太平洋軍司令部(ホノルル)を4月11日訪問する。
  5. 今回の演説はカーターが太平洋の戦略的課題にペンタゴンを取り組ませるロードマップを示した。
  6. その中には新技術の重視が含まれ、長距離打撃爆撃機や新型対艦巡航ミサイルの開発が典型例となる。両事業ともアジアの地理的条件を考慮し長距離の有効範囲を実現する。また現時点の技術ではF-35共用打撃戦闘機を順調に本格生産することが課題だ。
  7. しかしながらカーターがより重視するのは各国との関係だ。アジア各地で「奇跡のような迅速な発展」が見られたのは「米国の一環したプレゼンスと対米関係」によるものとカーターは説明し、今後も関係維持を図ることが各国歴訪の主要メッセージになるだろう。
  8. 日本との新ガイドラインの準備が進んでおり、協力関係は「全く新しい段階に」入るとカーターは発言し、外遊中は日、米、韓の三カ国情報共有の段取りをつけたいとする。両国とも米国と長く同盟関係にあるが、カーターはあわせてベトナムにも言及し、駐米大使ファン・クアン・ヴィンが聴衆の一人であることを意識していた。
  9. カーターは環太平洋パートナーシップ(TPP)と呼ばれる通商協定にも言及している。TPPを妥結させることは空母建造予算の獲得と同等に「重要」だとし、各国との財政金融上のつながりは「米国の強みを維持する重要な要素であり、我が国の戦略的な影響力のしるし」と表現した。
  10. 長官はあわせて中国との協議にについてはとりあえず積極的に臨むとし、「米国と中国に同盟関係はないが敵対する理由もない」とした。「中国が勝てば、我が国の負け、というゼロサム思考は受け入れられない」とカーターは発言。「双方が勝利できる別のシナリオがある」■

2015年4月6日月曜日

★アラブ首長国連邦に謎の新基地が突如出現



ここまでわかってしまうと各国の防衛当局がグーグルアースに警戒心を抱くのは理解できますね。これだけの基地があっという間に完成するのも、用地取得の工程がおもいっきり省略できるアラブ首長国連邦ならではの展開なのかもしれません。

UAE’s Mysterious Airbase

Apr 2, 2015 by Tony Osborne in Ares
グーグルアースの画像で名称不明の謎の空軍基地がオマーン、サウジアラビアに近いアラブ首長国連邦の砂漠地帯で見つかった。
名称不明の空軍基地の近況  Credit: Google Earth

  1. コンクリート滑走路が一本あるだけだった飛行場が急速に拡張されている。当初の滑走路一本は3,000メートル級並行滑走路二本になった。駐機エプロンが建設済みあるいは建設中である。
拡張前の姿 Credit: Google Earth

  1. UAE軍がこの基地を戦闘機作戦用に準備していることは明瞭で、滑走路両端には拘束ケーブルを装備し、緊急着陸に備え、南西のランプには太陽光から機体を守る遮光シェルター10個が視認され、各シェルターには戦闘機が2機ずつ格納できる。
戦闘機用遮光シェルターが南西にあるランプ上で視認できる Credit: Google Earth

  1. 増設中の駐機場の規模はかなり広く、基地北側で建設中だ。長さ1,000メートル幅400メートルとグーグルアース付属の測定ツールでわかる。ランプは米空軍のアルウデイド空軍基地 Al-Udeid air base (カタール)より若干狭いがグーグルアースで一見するとKC-135やB-1サイズの大型機が40機50機駐機できる広さはある。

  1. この新基地がサウジ主導で実施中の決着の嵐作戦Operation Decisive Stormでイエメンのフーシ勢力Houthi rebels の空爆実施に使われる可能性は十分ある。

  1. 基地が遠隔地にあることが重要だ。UAEで一番近い入植地はアル・キスAl Khisだが50マイルは離れている。UAEはかねてから軍事施設の脆弱度とともに空軍基地の数が少ないことを懸念いsていた。このためアル・サフラン Al-Safranに戦闘機部隊用の空軍基地が新設され、ミラージュ2000飛行隊が少なくとも一隊展開されている。同基地は2008年頃に稼働開始したとみられる。
UAE空軍のミラージュ2000-9はアルダフラ、アルサフラン両基地に展開している Credit: Google Earth

  1. 新基地のグーグルアース画像では航空機は一機も視認できないが、格納庫や遮光シェルター内に巧妙に隠されているのかもしれない。戦時の本土防衛用に機体を隠ぺいするオーストラリア戦術に似たものかもしれない。

  1. この他の基地でも拡張が進行中で、うちグーグルがアブダビ北東基地 Abu Dhabi Northeast と呼称する場所で以前は2,000メートルだった滑走路が一気に4,000メートルに拡張されている。この基地にUAEで特殊作戦部隊が配属されているようだ。セスナキャラバン、AT-802農業機やDHC-6ツインオッターを運用している。

  1. UAE空軍の一部機材はアブダビ国際空港に移動されているが、以前は各基地に輸送機が分散配備されており、C-17がアルミンハドAl-Minhadへ、A330多用途給油輸送機はアルアインAl Ain に展開していた。空輸部隊をアブダビに集結させたのは作戦運用上の効率を考えてのことなのだろう。■


着々と進むイスラエルのミサイル防衛システム開発の現状


イスラエルのミサイル防衛システムは相手方の発射する単純なロケットから弾道ミサイルまで多層的な対応を目指しているのが特徴です。米国も共同開発することで成果の一部を利用しようとしているのですね。

Israel Declares Successful Stunner Intercept Tests

By Barbara Opall-Rome3:49 p.m. EDT April 1, 2015
635635000941103799-vs150331-010(Photo: Israel Defense Ministry)

TEL AVIV — イスラエルのミサイル防衛機構(IMDO)が4月1日に開発中のスタナー Stunner ミサイルの三回目の迎撃テストに成功したと発表した。
  1. スタナーは国営ラファエルレイセオンの共同開発で米・イスラエルで資金を分担し、イスラエルが進める David's Sling 自動防衛システムの一部となる。
  2. 「数日間の連続テストのデータ評価から完全成功と言える」とIMDO長官ヤイヤ・ラマティ Yair Ramati が発表した。
  3. ラマティは各テストは長距離ロケットおよび短距離ミサイルを想定した目標を相手に実施したと明らかにした。それぞれDavid's Slingの想定脅威である。
  4. またIMDOは米ミサイル防衛庁が今年中に第四回テストを予定していると明らかにし、その後イスラエル空軍が初期作戦能力獲得宣言をする。
  5. イスラエルは David's Sling をアイアンドームに次ぐ自動防衛手段として配備する意向で、カチューシャやグラッドといったロケット弾への迎撃はアイアンドームで有効性が実証されている。 David's Sling はこれに対してアロー2の下の位置づけだ。アロー2はスカッドやシハッド級の戦術弾道ミサイル迎撃用。
  6. 高高度迎撃ミサイルアロー3が米イスラエル共同で完成すればイスラエルは高高度でも自動防衛体制を整備して核弾頭搭載弾道ミサイルの迎撃が大気圏外で可能になる。■

2015年4月3日金曜日

★大変悩ましい次期長距離爆撃機開発企業の選定(米空軍)



一方が採択されれば他方は業界に生き残れないとは厳しい状況です。極秘予算の話も後半に出てきますがなんとか高度技術を散逸させない配慮が求められます。日本の産業政策をあれだけ批判していた米国が自ら防衛産業の基盤維持を図る政策を展開せざるを得ないとはなんとも皮肉な話です。LRS-Bという呼び方がLRSBに変わっていることに注目です。2020年というのはもうすぐですが、予算上は大変な時期になりそうです。

Tough Choices For DoD On Long Range Strike Bomber

By COLIN CLARKon April 02, 2015 at 4:30 AM

An artist's concept for a stealthy future Long-Range Strike Bomber.ノースロップ・グラマンのLRSB概念図
WASHINGTON:  でペンタゴンはあと数ヶ月で長距離打撃爆撃機(LRSB)の契約企業を選定するが、興味深い結果になるだろう。ボーイング=ロッキード・マーティンが選定されるとロッキードが高性能ステルス機の設計をほぼ独占することになる。逆の場合だとノースロップ・グラマンがステルス爆撃機を独占する。
  1. 結果は米国の産業基盤にも重大な影響を与えるが、問題が山積していた空中給油機選定の比ではない。
  2. 「この十年間で新型戦闘航空機の開発契約は皆無だったが、これからの十年も同様だろう」とリチャード・アボウラフィア( Teal Group の航空宇宙分野主任アナリスト)がフォーブス誌で解説している。「言い換えればLRS-Bに絡むは大手三社のうち、次の戦闘航空機開発に生き残れるのは二社だけだ。ロッキード・マーティンはF-35のおかげで心配の必要はない。残る二社は今回受注できなければ業界に残れなくなる。つまり2030年ごろに就役予定の次世代戦闘機開発の競合に参入できない。」
lockheed boeing long range strike bomberロッキード=ボーイングのLRSB概念図
  1. ボーイング主導のチームの主張はボーイングがこれまで大型機多数を予定通りに生産しており納得の行く価格で実現した実績を基にしている。ただしKC-46では困難に直面しているが。
  2. 「ボーイングは大量の大型機生産でずばぬけた実績を持っています」とアボウラフィアは記者に語った。「ただし同社もつまづくことがあります」とウェッジテイルの例とやや規模は小さいがKC-46の例を示唆した。両機種とも民間商用機を軍用に改装して、軍用機を完全新設計した場合に発生する諸問題を回避するはずだった。
  3. もしボーイングチームが敗退すれば、米国は「重要な生産能力を失い」、雇用も喪失する。「反対にロッキード・マーティン=ボーイング案が採用となれば、ノースロップ・グラマンが軍用機から撤退しそれもつらい結果になる」
  4. ペンタゴン調達部門のトップ、フランク・ケンドールからは産業基盤の配慮は選定で大きな要素にならないと発言があった。採用企業はあくまでも提案内容により選定規程に従って決まるという。ケンドール副長官が設計チームの選定を今後も守るべき大切な存在と表現していることから意味深長ながらもあきらかに意図を伝えようとしている。
  5. 空軍は機体単価550百万ドルで100機調達にこだわっているが、これとは別に研究開発段階で200億ドルが必要であり、これを見るとボーイングに有利に働く。というのは機体生産では技術の革新性よりも現場の生産活動が重要に働くからだ。
  6. またボーイング、ロッキード組には議会からの支援も期待できる。というのは両社とも規模が大きな企業で倒産させるわけにいかないからだ。しかし両社は予算縮小の影響を受けやすい。2020年に予算不足が発生したらロッキードはF-35を諦めてLRSBに集中できるだろうか。ボーイングがKC-46で譲歩するだろうか。ともに実現の可能性は薄く、新型爆撃機だけに専念できるのはノースロップ・グラマンである。
  7. ノースロップのステルス機設計技術を維持してロッキードだけに独占させないためにもアボウラフィアは「設計能力を温存させてきた秘密予算の世界が存在してきた」と指摘する。ノースロップが契約受注に失敗すれば同社が爆撃機を組み立てることはないが、ペンタゴンとしては同社の高度技能を有し情報に通じた従業員を高度の秘匿事業に関与させたいと願うだろう。こういった事業は予算書には姿を見せない。
  8. アボウラフィアもB-2の製造、保守管理を通じて得た同社の技術水準が重要と考える。
Over the Pacific太平洋上空を飛行するB-2
  1. それでもアボウラフィアでさえどちらが受注するのか直感でもデータでも答えられないという。
  2. ボーイングが受注の場合はロッキードが重要な設計工程を受持つが知的財産をボーイングと共有することは皆無と言ってよい。ボーイング=ロッキードチームには航空機生産で信用実績があり、ロビースト多数を送り、豊富な資金で議会に影響を与え、予算危機が今後発生しても事業の温存を図るだろう。
  3. もしノースロップが受注すれば、米国にはステルス機設計能力を有する企業が二社となる。
  4. 宇宙分野は技術や産業基盤の議論とずれるが、高性能技術の要求で共通要素がある。ボーイングが自社では十分な技術的知見を有しない高性能情報集衛星の受注に成功したが、結果として事業費の超過日程も大幅に狂う損失が数年にわたりつづき、事業が終了された事例(将来画像アーキテクチャ事業)がある。選定委員会が正しい判断を下すことを祈ろう。■