2022年1月26日水曜日

ロシアはウクライナで砂漠の嵐作戦の再現を狙っている....プーチンを放置してきた西側の無能ぶりが招く結果なのか

 Russia

ロシアの新型BMT Image Credit: Creative Commons.

シアは砂漠の嵐作戦をウクライナで再現するのだろうか。ロシアの作戦構想について語りたい。

20世紀では砂漠の嵐作戦ほど決定的な影響を残した軍事作戦はない。1991年の湾岸戦争で展開した同作戦の目的は遠大だった。42日に及ぶ米主導の各国航空作戦を宇宙、サイバーが支援し、その後の圧倒的な地上作戦を展開した。中心は航空、ミサイル、宇宙、サイバー空間での精密攻撃、軍事指揮統制の機能の破壊でで、地上作戦を成功させることにあった。

砂漠の嵐作戦を振り返る

ここまでの作戦実施例は従来なく、戦闘の様相を一変させ、圧倒的な成功となった。戦闘経験が豊かなはずのイラク軍は圧倒され、展開中の指揮統制能力を喪失し、戦場の状況を把握することもままならなくなった。イラク軍はサイバー、航空、ミサイルの核攻撃にさらされ、部隊はクウェイト、イラクの砂漠でなぶり殺しにされた。

以後の近代戦で砂漠の嵐作戦が主流の考えとなっている。重要なのは、砂漠の嵐でソ連軍の劣勢があらわになったことで、軍事思想、軍事装備両面でイラク軍はソ連からの影響を受けていた。元国家情報協議会副会長を務めた中央情報局のグラハム・E・フラーGraham E. Fullerは1991年夏に「ソ連の軍事力は全く精彩を欠いていた」と述べている。

湾岸戦争から学んだロシア

湾岸戦争は1991年2月終結し、ソ連は同年12月に崩壊したが、ソ連の軍事、保安部門は砂漠の嵐作戦の教訓を心に刻んでいた。戦訓を検討し、論議した。1991年12月を過ぎると、ソ連が冷戦に負けた事実に我慢ができなくなったものが多い。

ロシア軍は1990年代、2000年代前半を通じて苦境に直面した。対ジョージア戦役でばつの悪い戦績を2008年8月に示し、(はるかに小規模の相手国にロシアが最終的に勝利したとはいえ、かなり苦労した)、ロシア軍は総合的改革を始めた。初期は目論見通りにいかないことがあったが、その後に成果が実った。ドミトリ・アダムスキDmitry (Dima) Adamskyはジョージア戦で露呈した弱点はIT-RMA(情報技術と軍改革の合体)で解決したという。「ロシアの軍改革の目的は通常兵力を再建し、RSC(偵察火力集合体)の理想像に向け進展させることにある」

ウラジミール・プーチンはかつてソ連崩壊を20世紀最大の悲劇と嘆いていたが、ソ連終焉の実態を学び、多くの教訓を得た。ロシアの軍事アナリストは米主導の軍事作戦事例を広く学び、とくに中東とコソボに着目した。20世紀最大の地政学上の対立で勝敗を決めたのは技術力であり、サイバー、航空戦力、宇宙空間で決定的な戦略優位性を確保することだ。ロシアが超大国に復帰するためにはまず自国で劣る点を解決し不利な面を克服する必要がある。さらにロシアは超大国になる運命を背負い、どのみち復活へ向かおうとしていた。

アーネスト・ヘミングウェイの言葉を借りれば、最初はゆっくり、やがて一気に復活した。1980年代半ばにソ連のニコライ・オガルコフ元帥の情報技術革命のもとで築かれた継続的な軍事的改良を背景に、モスクワは復活を遂げた。砂漠の嵐の教訓は、現在のロシアの偵察攻撃複合体の発展に役立った。ロシアの軍事調達と長年にわたる大規模な演習は、航空宇宙戦争への関心の高まりと、精密長距離射撃システムを統合したいわゆるC4ISR(指揮、制御、コンピュータ、通信、情報、監視、偵察)システム開発に重点を置くシフトを反映していた。モスクワは、チェチェンでの経験から、情報を支配する必要を学び、米国の航空・宇宙作戦に勝つためには、電磁スペクトルを支配する必要性を認識し、これらすべてがロシアの戦闘方法の進化に貢献した。

シリア介入した2015年までに、ロシアは初めて、情報戦と電子戦によるマルチドメイン(航空、水上艦、潜水艦、地上軍)の精密打撃に重点を置く、砂漠の嵐的作戦の要素を示した。ロシア通常軍がソ連の過去から脱皮し、米国に匹敵する能力を世界に示した。アダムスキーは、「参謀本部はシリア作戦を、ISR(情報、監視、偵察)、C2、火器システムを統合する能力を洗練させる実験場と考えた」と書いている。 つまり、シリアはロシアの軍事改革で学びの場だったのだ。さらに、ロシア軍参謀総長ヴァレリー・ゲラシモフValery Gerasimovは、シリアの教訓はロシアの国境を越えた「国益」を守り、促進するために役立つと述べている。

ロシア軍のベテランアナリスト、ティモシー・トーマスTimothy Thomasが、上記の進化を最もうまく表している。2017年7月から8月にかけて、ロシア軍情報源を引用し、戦争の初期段階が重要であり、「標的情報戦、電子戦、航空宇宙作戦、継続的な空軍の妨害作戦、様々なプラットフォームで打ち上げらる高精度兵器、長距離砲、新しい物理原理に基づく兵器の使用が含まれるだろう」と書いた。軍事専門家は、これこそ砂漠の嵐で起こったことだと言うだろう。トーマスは最後に、最終期には 「地上部隊の投入を中心に、残存敵部隊を制圧または消滅させる 」と述べている。ロシアの軍事調達と指導原理は、過去20年間、このような戦闘を遂行できる部隊の運用開発と投入を目指してきた。

ロシア版砂漠の嵐はどんな展開になるのか

では現在のウクライナに目を向けよう。今後の展開を正確に予言できるものはいないが、テクノロジー主導の航空宇宙作戦を実施し、情報戦とサイバー戦によって、東ウクライナの一部を奪取する陸上作戦を展開するピースはロシアに整っている。モスクワは、極東含む各統合作戦司令部から空軍、ミサイル、電子戦部隊を移動させ、ウクライナの全周囲に集結させている。トーマスが述べた初期段階の情報戦とサイバー戦が本格的に展開されている。脅威の下にあり、選択肢がないように見せるための継続的な外交努力と、最近の情報・サイバー作戦は、トーマスの言うロシア版の現代戦モデルに合致している。

ロシアのサイバー作戦の手口や歴史はすでに知られており、現在のウクライナでのサイバー攻撃の裏にクレムリンがいないとは言い切れない。これが真実なら、論理的な結論として、次は電子戦と航空宇宙作戦になる。ウクライナの国境沿い、ベラルーシや黒海沿いでのロシア軍活動は、それを十二分に物語っている。そして最近では、1月21日にロシアのヴャチェスラフ・ヴォロディンVyacheslav Volodin下院議長が、ウクライナ東部の「自称ドネツクおよびルハンスク人民共和国(DNRおよびLNR)の独立」承認を「協議」すると発表している。

ロシアは何が欲しいのか 

シリア作戦は、筆者が著書で述べているように、実はシリアが中心ではない。同様に、ウクライナも、ウクライナ以外に重要な点がある。どちらも、米国主導の冷戦後秩序を、ロシアの条件に合わせ修正するのがロシアの目的だ。ウクライナにより、モスクワは冷戦終結時と同じ状況に回帰した。モスクワの目には、砂漠の嵐以降のATOのコソボ作戦とアメリカのイラク侵攻での屈辱が続いていると映っているのだ。

ロシアがウクライナで軍事作戦実行に踏みきれば、ロシアが核に加え、通常兵力でも大国であると世界宣言することになる。戦力を戦略的に投入すれば、ウクライナを黒海から切り離し、同国の経済的価値を弱体化できる。また、政治的な目的達成には武力が一番優れているとのメッセージを送り、ヨーロッパの安全保障で再交渉の時期が来たとヨーロッパの一部指導者が認識するだろう。

アナリスト陣は、プーチンはウクライナとの本格的な通常戦争を望んでいないと述べており、おそらくその通りだろう。しかし、砂漠の嵐はそのようなシナリオを回避し、作戦に制限が設けられたため、死傷者は予想よりはるかに少なくなった。今回想定のシナリオは、限定作戦だ。また、プーチンは、最近デイヴィッド・J・クレイマーDavid J. Kramerが書いたように、戦争するしかない状況に追い込まれているわけでもない。トーマスの説明にある戦争の方法論では利用可能なオプションが豊富にある。そして、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキーVolodymyr Zelensky大統領がツイッターで書いているように、「小規模の侵略などというものはない」のである。

ロシアの次の手とは

筆者が間違っていればいいのだが。しかし、軍事アナリスト陣は、ウクライナ沿いでロシアが増強中の部隊は、以前よりはるかに深刻で包括的と指摘している。ロシアは、保有する強制力・威圧力のツールすべてを使っている。

不十分な分析が長年続き、西側諸国の政策立案者は、プーチン抑止の独自戦略を練られず、プーチンは日和見主義者に過ぎないと自ら慰めてきた。実際、プーチンはロシアの侵略行為の代償を払っていない。ヨーロッパと中東に航空宇宙軍を戦略的に配置させないままでは、制裁に効果がなかったのは確かである。欧米の弱腰姿勢がプーチンを増長させた。強硬態度では事態をエスカレートし過ぎると考えた人々は、弱腰で生まれる結果を直ちに思い知るだろう。

Russia's Desert Storm: Putin's Plan to Use America's Military Playbook Against Ukraine? - 19FortyFive

ByAnna BorshchevskayaPublished6 hours ago

Dr. Anna Borshchevskaya is a senior fellow at The Washington Institute, focusing on Russia’s policy toward the Middle East. In addition, she is a contributor to Oxford Analytica and a fellow at the European Foundation for Democracy. She was previously with the Atlantic Council and the Peterson Institute for International Economics. A former analyst for a U.S. military contractor in Afghanistan, she has also served as communications director at the American Islamic Congress. Her analysis is published widely in publications such as Foreign Affairs, The Hill, The New Criterion, and the Middle East Quarterly. She is the author of the 2021 book, Putin’s War in Syria: Russian Foreign Policy and the Price of America’s Absence (I.B. Tauris, an imprint of Bloomsbury Publishing). Until recently, she conducted translation and analysis for the U.S. Army’s Foreign Military Studies Office and its flagship publication, Operational Environment Watch, and wrote a foreign affairs column for Forbes. She is the author of the February 2016 Institute monograph, Russia in the Middle East. She holds a doctorate from George Mason University.


2022年1月25日火曜日

ロシアは上空飛行を禁止し、西側経済に損失を与える作戦に出る可能性。航空業界にはさらに大きな試練がやってきそう。

GETTY IMAGES / GREG BAJOR

 

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  • 世界が空路でつながる今日、ソ連時代にはあり得なかった手段をロシアが手にしていることに注意喚起したい

 

界がロシアの動向を不安な目で注視している。ウクライナ侵攻に踏み切るのか、NATO加盟国を強襲するのではないか。だがモスクワでは全く別の企画に踏み出す可能性がある。西側諸国を混乱させるのにクレムリンは複雑な手段は無用だ。西側エアライン各社の上空飛行を停止すればよい。エアライン側にこの事態の警告が出ている。それ以外の我々はグローバル経済により脆弱となっている各国の実態をそのまま受け入れるべきだ。親の世代の冷戦時とは全く違う世界になっているのだ。

 

ロンドンから北京に飛ぶとする。機体は東に向かい、北海、デンマーク、スウェーデン、バルト海を飛び越え、フィンランド空域に入る。そのまま長大なロシア空域を通過し、一瞬モンゴル上空に入り、中国に到達する。10時間余りで北京に着陸する。

 

ロシア上空を飛行しない場合、フライトは急にリスクが高くなる。シリア等の上空を通過することになるためだ。現在、西側航空会社でシリア空域の飛行をあえておこなう事は皆無に近いのは当然だろう。同様にロンドン‐北京フライトが中東を通過すればイラク空域を使うことになる。代替ルートはいずれも時間が余分にかかる。ロシアルートは安全かつ頼れる航路なのだ。

 

このためエアライン多数が長距離路線でロシア上空を通行している。COVID危機前の2019年時点でロシアの空を利用したフライトは300千便に及んでいた。乗客数百万名に加え膨大な量の貨物が当然のようにこのルートの恩恵を享受していた。ヨーロッパ、米東海岸のアジア便はかつてはここまで容易に運用できなかった。当時はアンカレッジに途中着陸して運航が可能となっていた。

 

ロシアと西側の対立が鮮明になった昨年10月、ロシアは米国エアライン各社に追加上空通過飛行権を与えた。ただし、簡単に発行されたのではない。各社はまず米国務省にロシア当局への橋渡しを依頼していた。「ロシア上空通過は米国エアライン各社のグローバル路線網の維持拡大のカギだ」とエアライン業界は説明していた。上空通過権がないと、不効率な航路を取らざるを得ず、「時間、テクニカルストップ、CO2排出量の増加に加え、これまで獲得しtスロット兼を失うことになります」と業界は説明していた。

 

航路が伸びればフライト時間も伸びる。途中経由地での燃料補給に加え既得権のスロットも失う。これこそ、ロシアが西側各国エアラインの上空通過飛行を停止した際の効果だ。年間数十万回のフライトが遠回りする状況を想像してもらいたい。現在稼働中の機材は冷戦時の旧型機より航続距離は伸びているので途中着陸地は不要になるかもしれない。シンガポールエアラインズのシンガポール=ニューヨーク線は19時間近くのノンストップ便だが、乗客にとって耐えられるものではない。

 

COVIDでぎりぎりまで追い詰められたエアライン各社に新ルート開拓で支出増と混乱が生まれる。「フライト時間が伸びて燃料消費が増える、という単純な話ではない」と保険ブローカーWTWの航空宇宙部門担当重役サイモン・クネチティが述べている。「復路便もすぐ出発しないと駐機料の追加支払いが発生する」

 

丸一日駐機すれば営業収益をそれだけ失うことになるし、順番待ちの機体でいっぱいになる。「ロシアルートが閉鎖されれば、時間経費で追加負担となり、一部路線は成立しなくなる。米系エアラインでも同様だ」とあるヨーロッパ系エアライン幹部が話してくれた。アンカレッジは現在国内線が以前より増加しており、急に国際線ストップオーバーが来ても対応できない。ロシアの狙いが最大限の苦しみを課すことであれば、北京オリンピックの始まる2月4日以前に上空通過を停止するのではないか。

 

今のところ上空使飛行を止める気配はロシアにないが、行使すればとんでもない効果を上げることは承知している。西側エアライン各社、西側各国政府もこれは理解している。上空通過を停止すればエアライン側から飛行料金が入らなくなるが、西側ビジネス界へ与える混乱に比べれば微小な負担だ。軍事行動に比べても費用対効果が高い。上空飛行禁止となれば西側政府、ビジネス界、エアライン利用客がロシアが他国を軍事侵攻した際の影響を真剣に考えるだろう。

 

西側はこれに対しロシア機の上空通過飛行を禁止して対抗するだろうが、東海岸やヨーロッパを離発着する西側エアラインのロシア上空飛行ほどの重要性はロシア機にはない。

 

西側政府の対応により航空業界が世界規模で混乱に陥る可能性がある。エアライン幹部が心配するのは制裁措置をバイデン大統領はじめ西側指導部がロシアがウクライナ侵攻したら必ず行使すると公言していることで、上空通過飛行が不可能になる事態だ。「西側が銀行決済や資金移動を制限すれば、ロシアへの通行料支払いができなくなる」と話すエアライン幹部もいる。制裁対象国の企業と取引中の企業の保険は引き受けられなくなる。あるいは保険引き受け側が罰金支払のリスクをかぶれば話は別だが。

 

上空通過飛行の取扱いというと行政手続き上の問題に聞こえるが、グローバル化した今日の世界では別だ。グローバル化により冷戦時にはありえなかった悪影響を他国に与える道が開けた。ライアンエア機が昨年5月にミンスクに強制着陸させられた。プーチンが同様の乱暴な手段に訴える可能性は低いが、上空通過飛行を止めるのは非合法ではないのだ。これまで30年に及ぶ絶えず増加してきたグローバル化の恩恵を当然のものと考えてはいけない。航空業界は今や衝撃に備えるべきだ。■

 

 

What If Moscow Cancels Airline Overflight Rights?

The interconnected world gives Russia tools that the Soviet Union never had.

 

BY ELISABETH BRAW

SENIOR FELLOW, AEI

JANUARY 24, 2022 03:24 PM ET

https://www.defenseone.com/ideas/2022/01/what-if-moscow-cancels-airline-overflight-rights/361103/

 

 

Elisabeth Braw is a Senior Fellow at AEI, specializing in defense against gray-zone aggression. She previously directed the Modern Deterrence program at the Royal United Services Institute. She is the author of "The Defender's Dilemma Identifying and Deterring Gray-Zone Aggression" (AEI, 2021).


2022年1月24日月曜日

地球規模で貨物人員を迅速に送り届けるロケット貨物輸送構想を米空軍は真剣に検討している。このためスペースXと契約が成立。

  

2021年5月5日、スペースXは試作型ロケット、スターシップの高高度テスト飛行および着陸回収に成功した。空軍研究本部は同ロケット含む再利用可能な商用ロケットで世界各地への貨物輸送が実現できると見ている。 (SpaceX)

 

空軍研究本部(AFRL)がスペースXと5か年契約を結び、宇宙打ち上げ手段を地点間輸送に活用した場合の制約条件ならびに実現可能性を検討する。

 

 

契約は102百万ドル相当で、AFRLは再利用可能ロケットでの貨物輸送ミッションのデータを入手し、民生仕様が国防総省用途に応用できるか検討する。民間の技術成熟化を待って政府が利用するのがねらいとAFRLは説明している。

 

米空軍2022年度予算要求ではAFRLヴァンガード計画として画期的技術で新しい輸送手段の実現を目指すとあった。

 

AFRLは、解析、素材研究、風洞検査装置の開発で民間企業に契約を交付してきたが、今回のスペースX向け契約は打ち上げ機企業で初の交付となった。AFRLはその他の打ち上げ手段提供企業との契約も検討する。

 

AFRLでは次の四分野を重視している。民生軌道打ち上げ着陸装備からデータを集める、米輸送本部規格コンテナの取り扱い可能な貨物搭載スペースを確保しつつ迅速な積み下ろしが実施できるか、各種地形に対応する着陸装置を研究する、大重量貨物の打ち上げ着陸の一連の作業を実証することだ。

 

着陸時の仕様及び輸送本部(TRANSCOM)規格コンテナの互換性、さらに貨物積み下ろし手順は重要要素となる。国防総省は地点間輸送をめざしており、民生輸送業務より広範な応用が想定されるからだ。民間企業は既存施設を使っての貨物運送に主眼を置くが、軍では未整備地点も使う物資補給や人道援助の搬送を目指す。

 

そのため、AFRLは上空通過問題を回避すべく特異な飛翔軌道を含む幅広い可能性を模索し、未整備地への着陸も想定するほか、医療品含む各種貨物を人口稠密地近くに送り込む想定もある。

 

AFRLは商用技術を利用するため、通常の開発日程でお決まりのマイルストーンは適用されない。

 

AFRLは独自装備を開発せず、スペースXのデータを集め、最終的に大型貨物輸送能力を実証する。

 

このようにAFRLがロケット貨物便構想を追求しているが、TRANSCOMも独自に民間企業と連携し、同技術の可能性を求めている。2020年に輸送本部は共同研究位開発契約cooperative research and development agreements (CRADAs)をスペースXおよびxArcとかわしている。xArcは宇宙アーキテクチャ技術企業だ。また先月にブルーオリジンともCRADA契約を結んだ。

 

CRADAはTRANSCOMが別個に締結しているが、AFRL事業にも参考になりそうだ。

 

米宇宙軍はAFRLの動きを注視しており、とくに経済性と実現可能性を重視する。宇宙軍の宇宙システムズ本部のジェイソン・コサーン准将は昨年6月に記者団に宇宙貨物輸送手段が民間部門で実現する様子に関心を寄せており、宇宙軍への導入にもつながると述べていた。■

 

AFRL partners with SpaceX to explore Rocket Cargo potential

By Courtney Albon

 Jan 21, 05:29 AM


地中海に水没した英F-35Bを回収した際のリーク画像。事故原因は信じられないほどの人的ミスか。

 



british f-35機体はロッキード・マーティンF-35Bのようだ (Left image courtesy of the U.S. Marine Corps)



2021年11月、英海軍のF-35が最新鋭空母の旗艦HMSクイーン・エリザベスを発艦直後に海上墜落した。今回、事故機が地中海から回収された様子の写真がオンライン上に現れた。




画像は英海軍が公式確認しないまま、ツイッターに投稿されたが、その後削除された。投稿者を追跡すると写真撮影者ではないことがわかり、かつ投稿は先にあったこともわかる。ここに掲載したのはRedditユーザーのu/Longsheepのものだ。

british f-35ソーシャルメディアに登場した画像は墜落した英海軍所属F-35の機体下部であることは明らか


正式に認証されておらず、出所もあやしいが、たしかに英海軍が運用するF-35B型に見える。また、上下さかさまで甲板上に乗るF-35など多くあるはずもなく、画像が本物だと思わせるのに十分だ。



確かにひどい状態だが、画像ではステルス機の特徴がわかり、一体型兵装庫の扉も空いたままになっている。全体形状、塗装、主翼フラップ付近や前縁部のレーダー波吸収剤の色など総合するとF-35であることがわかる。ただし、英軍所属機なのかは断言できない。


画像が本物なら、今回の墜落事故関連で二回目のリークとなる。事故発生の数週間後に墜落時の動画がオンライン上に出現し、携帯電話で撮影した動画で艦内の監視カメラに流れた映像のようだ。リークは問題だが、映像を見ると墜落原因として整備時に空気取り入れ口カバーを取り外すのを忘れたとする説明の裏付けとなる。


同上映像を見ると、問題のF-35が飛行甲板末端のランプに近づく中、最悪のタイミングで減速しているように見える。ランプ末端に近づいたが、前方移動の勢いを喪失しているようで、パイロットは機体が機首から地中海に落下する寸前に射出脱出している。


F-35もその他軍用機同様に非稼働時には空気取り入れ口やエンジンにカバーをつけ、各所には安全ピンでエンジン他重要な部分をデブリや天候から保護している。中でも安全ピンは各種の安全対策としてつけられており、すべてに「飛行前に取り外せ」との赤色タグがつく。


british f-35駐機中のF-35Aに赤色タグがついている((U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Caleb Worpel))


F-35でもフライト前手順としてカバーやピン全部を取り外すのだが、重要なのは全点取り外したか確認するチェックだ。最終的にパイロットも機体周りを歩き手順通りになっているか確認してから機体に乗り込む。


「レッドギアがエンジンに吸い込まれた場合は考えても恐ろしい。飛行中に発生することはあり得ない」と海兵隊退役でSandboxx News編集員のトニー・リッチが述べている。リッチは英海軍のF-35Bに先立ち登場したマクダネルダグラスAV-8BハリヤーIIの整備を担当した。


「FOD(異物デブリ)対策が整備員の存在意義のひとつだ。この対策は武器の安全規則への対応と同様の意味がある。この取り扱いがいい加減だと悪夢となる」


雨天用カバーなどが空気取り入れ口についたままだったなら今回のF-35墜落事故の原因として理解できる。カバーがエンジンに入り、内部を損傷し、エンジン一基搭載の同期では必要な推力が得られず離陸不能となった。また、大型リフトファンが損傷を受ければ、短距離離陸型のF-35Bで高度が確保できなくなったのだろう。


逆さまの英国F-35と思われるこの画像は、本物かどうかはさておき、目を離すことはできない。1億3400万ドル相当の国家機密がここまで無防備にさらされた姿は、そうそう見られるものではない。■


Image of British F-35 fished out of sea seems to emerge online - Sandboxx

Alex Hollings | January 21, 2022


2022年1月23日日曜日

ロシアのウクライナ侵攻作戦はこうなる。ロシアの狙いはジョージア紛争時の再現。しかし、ウクライナがどこまで抵抗するか、西側の対応が今回は異なる条件だ。

 

Photo: TASS

 

ロシアのウクライナ侵攻がジョージア事例に酷似する可能性、ジョージアモデルとは何か

 

2022年1月に入り、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切る可能性が一層具体的になっている。気になる兆候としてベラルシに大隊規模戦術部隊10個が到着していること、バルチック艦隊から揚陸上陸艦6隻が黒海に向け回航中、さらにロシア工作員が開戦の口実作りの偽装工作でウクライナ東部へ投入されていることがある。

 

プーチンが軍事行動に踏みきれば、ロシア地上部隊がウクライナの半分をドニエプル川を境に占拠する可能性がある。だが、西側専門家の見るところ、ロシアがウクライナ占拠を継続すれば、ウクライナ国民も抵抗戦を開始し、ロシアは対ゲリラ対応の泥沼に突入すると警句を発している。ウクライナは一般市民に不正規戦闘の訓練を開始している。

 

ただしロシア軍に詳しい筋はこのような警句は虚しく響くのみとする。ウクライナを永続的に占領してもロシア軍事行動の最終目標は達成できないからだ。プーチンが望むのはウクライナ軍の無力化であり、同国がNATO接近を断念し、東部ウクライナをロシア系住民に譲渡することにある。

 

軍事アナリストのロブ・リーRob LeeはFPRIに以下のように投稿した。「地上作戦で可能性が高いのはウクライナ軍部隊をドニエプル河東側で殲滅し、防衛力を弱体化させることだ。このため、侵攻は懲罰行為とし、一二週間で意図的に撤収する可能性がある。またキエフ近郊を占拠し、ロシアの要求をウクライナ政府に飲ませる可能性もある。こうしてみると、ロシアが2008年にジョージアで展開した作戦に酷似して、クリミア半島併合時より過激な内容になってもおかしくない」

 

ロシアが代償が高くなる都市戦や戦闘拡大を避けるべくウクライナ各地の長期間占拠を避けるとの見方はリー以外にもある。ロシアも戦火で荒廃した領土を獲得しても、再建の経済負担は避けたいと考えているはずだ。

 

ジョージアモデルとは

 

12日にわたり展開されたロシア=ジョージア戦でも同様に、親ロシア分離主義勢力への軍事支援が軸だった。分離勢力はロシア国境付近の南オセチアおよびアブハジアを実効支配していた。先にロシアが挑発行為を展開し、ジョージア政府は南オセチア分離主義勢力への大規模攻撃を愚かにも開始したが、州都ツキンヴァリにロシア軍が展開していた。

 

ロシア軍は迅速に反撃し、ジョージア軍はツキンヴァリから放逐され、攻勢は一層強まった。空爆、弾道ミサイル攻撃がジョージア各地に向かい、一般市民200名超が死亡し、ロシア軍は第二戦線をアブハジア地方に展開した。敗退するジョージア軍は大部分が消滅し、中央部ゴリ、ポチ港湾都市はロシアが占拠したが抵抗は皆無だった。

 

ゴリから首都トビリシはわずか35マイルで理論上はロシア軍はそのまま首都へ進軍できたが、ロシアはジョージア全土の制圧はめざしていなかった。逆に同年8月12日、ジョージアは停戦合意した。ロシア軍はその後もジョージア軍が放棄した軍事装備品の破壊を続け、ジョージア海軍は大部分を喪失している。その後ロシア軍は撤収し、残されたジョージア軍は機能を失い、分離主義者が占拠する地方はロシアに併合された。

 

キエフを屈服させるのが目的か

 

ウクライナの人口はジョージアの4倍もあり、抵抗力も強い。戦闘が拡大すれば投入部隊の規模もそれだけ増え、戦死者も数百名規模どころか数千名にのぼるだろう。ロシアがこの違いを認識しているのは事前軍事準備態勢の規模からわかる。

 

ベラルシでのロシア軍展開からロシアがウクライナ首都キエフを標的にしていることがわかる。ベラルシ国境からキエフは110マイルにすぎない。ウクライナ指導部へプレッシャーをかけるねらいもあるのだろう。

 

ロブ・リーは上記投稿で「ウクライナ軍に死傷者多数を発生させ、捕虜をとり、防衛体制を崩壊させることでロシアはウクライナ大統領ゼレンスキに政策変更を迫り、譲歩を勝ち取ろうとするだろう」と述べている。

 

考えられる譲歩内容としてウクライナにNATOとの関係を絶つよう求める、NATOとは中立関係に保たせる、東部ウクライナで分離主義者に領土割譲させる、クリミア半島への交通通信を確保させることがある。だがロシア軍はウクライナ都市部から撤収し、国土再建の高い代償はウクライナ政府に負担させるだろう。ウクライナ軍はロシアに抵抗する戦力を喪失したまま残される。

 

 

「懲罰戦」戦略の問題点

 

こうした目論見はウクライナの政治軍事トップを苦しめ、希望を失わせ屈服させることにある。理想的には防御された都市部の占拠は避け、その他領土の占拠も短期間に止め、一般国民の抵抗運動を発生させないことだ。

 

ただ、ロシア側は重要な要素を見落としている。ウクライナ軍は戦力でロシアの比ではないとしても、一方で八年に及ぶ東部ウクライナ戦で鍛えられている。つまり、2014年より戦闘力が高くなっており、ジョージアのような短期間で崩壊したり存在が消える事態は考えにくい。ゴリ、ポチ両都市占領が無抵抗で進んだ事態の再来はないだろう。

 

2014年から15年にかけてウクライナ軍は抵抗をつづけ、デバルツェボで分離主義戦力に敗退したものの、ルハーンシク、ドネツク両空港のウクライナ軍は圧倒的な敵火力を前に頑強に戦った。

 

残念ながら頑強さだけでは十分ではない。ロシアはウクライナ軍への長距離攻撃を航空機、ロケット、通常火力さらに戦術弾道ミサイルまで投入して実行してくるからだ。米航空兵力がイラク陸軍を標的にした1991年2003年の事例同様に、ウクライナ地上部隊は反撃する間もなく壊滅的被害を受けかねない。ジョージア同様にウクライナでも抵抗姿勢が圧倒的攻撃の前に消えれば、政治課題など取るに足らない存在になる。

 

ただし、ロシアのスタンドオフ戦戦略の効果もウクライナ軍が残存したまま、主要都市ハルキウ、キエフ、マリウポリ等、あるいはドニエプル河沿いのドニプロやザポリージャで防御態勢を維持すれば簡単な展開は望めなくなる。

 

一度に一つずつの街区で意識の高い抵抗勢力を駆逐するのは時間がかかり、代償も高くつくが、スタンドオフ攻撃では実現できない。歩兵部隊や装甲車両部隊を危険地に送れば、損失の覚悟が必要だ。一般市民にも死傷者は発生する。各都市を制圧すれば膨大な人的損害が不可避となる。

 

ロシア軍はこのような残酷な戦闘を実行してきた。1999年に砲兵隊空軍部隊を組織的に投入し、グロズニーを5週間かけ占領したが、一般市民数千名に加え兵員2千名が死亡した。

 

ただし、ウクライナ紛争をより大きな視点で捉えれば、ウクライナに同情する西側諸国があり、首都占拠や地方分離勢力共和国誕生といった軍事作戦の実施をさらに危険にする可能性がある。まず、戦闘が長期化すればロシアの負担とリスクが増大する。外部からの干渉も各種生まれ、望むような「短期で勝利を収める戦闘」は生まれなくなる。

 

この関連で、プーチンは周囲の顧問とともにキエフにゆさぶりをかけ、ウクライナ軍を短期戦で壊滅させれば、長期占領や都市部制圧といった望ましくない展開を回避できると考えている節がある。だがロシアがウクライナ指導部を狙い軍事行動を開始し、その後の展開が予想に反し、ウクライナが頑強な抵抗を示せば、ロシアの負担は増える一方となり、他方で外国による干渉は一気に跳ね上がる。■

 

The 'Georgia Model': Russia's Plan for Invading Ukraine? - 19FortyFive

BySebastien Roblin

 

Sébastien Roblin writes on the technical, historical and political aspects of international security and conflict for publications including the 19FortyFive, The National Interest, NBC News, Forbes.com, and War is Boring. He holds a Master’s degree from Georgetown


チリがE-3セントリーを英国から購入。ルックダウン機能で麻薬取締の効果を期待か。他方、RAFはE-7へ機種変更。

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CROWN COPYRIGHT

 

 

英国の中古機材を導入し、運用中の老朽警戒機の代わりにすればチリの警戒探知能力は飛躍的に伸びる。

 

リ政府が英空軍が供用していたE-3Dセントリー空中警戒統制機材(AWACS)3機を購入したとの報道が出ている。チリ空軍で供用中のボーイング707原型の早期警戒機に交代させる。

 

複数の報道機関がRAFのE-3D3機のチリ売却を今週に入り伝えているが、英国チリ両政府は売却を公式に確認していない。チリ空軍は2機を運用し、三機目は部品取りに使う意向とJanesが伝えている。売却の総額は不明だ。

 

RAFはセントリー運用を1991年に開始し、最盛期には7機運用していたが、維持に困難を感じ始めた。2020年12月に飛行可能な機体は3機にまで減り、翌年全機の運用を終了した。RAFはボーイング737原型のE-7ウェッジテイル空中早期警戒指揮統制機を後継機として導入し、初号機は2023年に運用開始する。

 

米海軍も同型機1を購入の上改修してE-6Bマーキュリー乗員の専用訓練機にしている。E-6は「終末の日」機とも呼ばれ、米国の核抑止力部隊へ空中から命令を伝える任務をこなす。E-3D、E-6Bともに原型はボーイング707だ。

 

チリが中古セントリーを購入したと聞き驚く向きもあるかもしれない。だが、上記の通り、同国は707改装の空中早期警戒機1をコンドルの名称で運用している。

 

コンドルはイスラエル製 Elta EL/M-2075 ファルコンLバンドのフェイズドアレイレーダーを搭載し高性能機材といえる。機体にはアンテナアレイ6基を搭載し、機首が特徴的な球根上になっており、機体側部左右、尾部に搭載している。空中、海上の対象を追尾し、ある程度の電子情報収集能力もあるといわれる。また指揮統制機能も優れている。

HIPPOCAMELUS VIA WIKIMEDIA

チリ空軍のコンドル空中早期警戒指揮統制機

 

コンドルは1994年から供用されているが、原型機は製造が1965年でボーイングで試験機として使われたのちにチリのフラッグキャリアLAN-Chileエアラインに売却されたのが1969年だった。同社はその後LATAM Chileに社名変更している。

 

コンドルのエンジンは1950年代のプラット&ホイットニーJT3D低バイパスターボファンエンジンで維持運用が著しく高くつくようになってきた。また、ファルコンレーダーも複雑な機構で運用が困難だ。3機しか搭載しておらず、残り2機はイスラエル軍にある。

 

RAFのE-3Dも707改修だが、装備はより近代的で燃料消費効率が高いCFM56エンジンを搭載する。AN/APY-2パッシブ電子スキャンアレイレーダーをレドームに収容し、機体後部上に搭載し、空中、水上の標的を追尾しつつ、強力な通信装備で指揮統制機能をこなす。

 

米空軍他の機材と異なり、RAFはE-3Dの性能改修を行っておらず、チリ空軍は供用開始前に改修作業する可能性がある。

 

それでもE-3D導入でチリ空軍は大幅な機能向上を期待できる。コンドルは単機だが、E-3Dが2機あれば、複数地区を監視対象にしたり、長時間運用が可能となる。予備機も含めた早期警戒指揮統制機の実現が今回の取得で実現する。

 

チリ空軍の戦闘機部隊はF-16ヴァイパーが46機程度、F-5E/F改修型12機あり、このうちF-16の10機はブロック50仕様のC/D型で残りは旧型ブロック20だ。

 

チリは山地が多く、南北に極めて長い地形なのでAWACSの恩恵は大きい。とくに「ルックダウン」機能で小型かつ低高度を飛行中の標的への対応力は山岳地帯で有効だ。E-3は小型機に加え、小舟艇の探知能力が優れることでも知られ、麻薬密輸の取締まりで関係部局と連携した運用をチリが期待しているのだろう。

 

チリ空軍が元RAFのE-3Dをいつ運用開始するかはまだ不明だ。チリの機材購入には米政府承認が必要となる。手続き上が難航する兆候は今のところないが、長時間を要するお役所仕事の手続きを経る必要がある。Janesによれば今年末までにチリ空軍での供用を開始できそうだという。

 

RAFで運用を終えたE-3D各機がラテンアメリカで新しい供用先を見つけることになる。■

 

Chile Has Bought A Trio Of Retired E-3D Sentry Radar Planes From Britain: Reports

 

BY JOSEPH TREVITHICK JANUARY 20, 2022

THE WAR ZONE

 

Contact the author: joe@thedrive.com