2022年4月1日金曜日

ウクライナ空軍の強さは米空軍との共同訓練の効果。創意工夫に満ちたウクライナの特性もあるが、ロシアと東部で以前から戦闘を経験している事が大きい。それに対し、ロシア空軍は.....

 

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F-15 Pilot Ukraine Fighter Su-27 MiG-29

USAF/TECH. SGT. CHARLES VAUGHN (MAIN IMAGE)/EBAY (PATCH)/DAVE_S-WIKICOMMONS (SU-27 SOLO)

 

ウクライナの戦闘機搭乗員が訓練時に示した技量を考えれば、ロシア軍を食い止めている理由が理解できるとF-15パイロットが語っている。

クライナの戦闘機パイロットには、当初から感心させられました。飛行時間が少ないのに、とても優秀です」と語るのは、最近退役したF-15Cイーグルのパイロットで、フレズノのカリフォーニア州空軍第144戦闘航空団で演習と計画責任者を務めていたジョナサン「ジャージー」バードだ。

 

ロシアのウクライナ侵攻から1カ月以上経過し、ロシア空軍が圧倒的な数的・技術的優位なはずなのに、ウクライナ上空で争奪戦が続いている。ウクライナの地上防空網、戦闘機パイロットや支援クルーは、ロシアに航空優勢を握らせないよう、また、ロシアが自由に活動できないように奮闘している。

U.S. ANG/TSGT CHARLES VAUGHN

クリアスカイ2018演習でウクライナのスタロコステイァンティニフ航空基地を離陸するSu-27 

 

空戦の状況は正確な把握が難しいが、ウクライナ空軍は健在で、ロシア軍に大きな損失を与えている。ウクライナのパイロットは各国メディアでオープンに発言しており、行動の詳細は当然ながら作戦上の秘密に包まれているが、勇気と技術が侵略者に大きな打撃を与えている。

ウクライナの戦術機飛行士や、ウクライナでの訓練で彼らと一緒に飛行したことがあるジャージーのようにウクライナパイロットの能力を本当に評価し、理解できる人は皆無に近い。カリフォーニア州軍は1993年以来、グローバルな関係構築を目的に「ステート・パートナーシップ・プログラム」でウクライナ軍およびウクライナ国家警備隊と密接な協力関係を築き、現在では93カ国と85のパートナーシップを結んでいる。

ウクライナは、ブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、北マケドニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニアとともに、米国州兵局のプログラムのチャーターメンバーとなった。国ごとに州が決まっており、ウクライナとカリフォーニア州の空軍州兵との親密な関係が始まった。

「カリフォーニア州軍航空隊のパートナーがウクライナだったのは幸運でした」とジャージーは説明する。「2011年の夏、私がカリフォーニア州兵になる前、第144戦闘航空団はF-16を飛ばしており、ウクライナのミルゴロド空軍基地でセーフスカイ2011という画期的な演習を行ったんです」とジャージーは説明する。

同演習では、アラバマ、カリフォーニア、アイオワ、ワシントン、マサチューセッツの部隊からF-16がウクライナ軍のMiG-29やSu-27と飛行し、空域の安全性を促進する多国間協力の促進と強化を全体目標としていた。

U.S. AIR FORCE PHOTO/TECH. SGT. CHARLES VAUGHN

セイフスカイズ2011でF-16がSu-27とウクライナ上空を飛んだ

 

 

Safe Skies 2011で親密な関係が始まった」とジャージーは言う。「ウクライナ側は非常に限られた条件で一緒に飛行訓練をし、7年後の演習Clear Sky 2018の基礎となりました」

第144戦闘航空団からは2018年10月6日、F-15Cイーグルがウクライナに初上陸し、Clear Sky 2018はウクライナ主催、在欧米軍後援による史上初の多国間合同演習となり、歴史に名を刻んだ。「この演習で相互運用性へ大きなステップを踏み出した」と、当時のカリフォーニアANG司令官でClear Sky 2018演習をまとめたクレイ・ギャリソン少将Clay Garrison Maj.Genはコメントしている。「Clear Skyは、2011年の演習より飛躍的に包括的で広範なものとなった」。

USAF

144戦闘航空団のF-15Cと編隊を組むウクライナ空軍Su-27

 

「ウクライナから演習の依頼があった」「NATOは世界の安全保障協力での金字塔であり、高い安全性と現実性を確保するルールがある。ウクライナは、NATOとの相互運用性を確保する唯一の方法は、同じ基準で訓練することだと理解しており、それこそが、この訓練の目標で、これを達成した」と当時ギャリソンは語っていた。

ジャージーは2018年演習でカリフォーニアANGのリードプランナーを務め、ウクライナ空軍の能力を明確に理解できた。「Clear Sky 2018の目標は、大規模交戦の緒戦への対応だった」「「さらに、基本的な戦闘機演習(BFM、別名ドッグファイト)を展開したが、西側戦術航空のすべてをウクライナ人に公開したんです」とジャージーは説明。また、両軍パイロットが戦闘機を交換して飛行する体験機会も生まれた。

U.S. ANG/TSGT CHARLES VAUGHN

カリフォーニアANGとウクライナ軍のパイロットの交歓が Clear Sky 2018で見られた


「F-15CでMiG-29やSu-27を相手にBFMをたくさん行いましたが、正直言って、向こうのパイロットが非常に優秀だとすぐにわかりました。戦術的に非常に独創的で、機体を熟知しており、何が足りないかも理解している。つまり、彼らは古いジェット機を飛ばしているのです。これに対しF-15も古い機体ですが、常に新しいエイビオニクスでアップグレードされているのです」。

ウクライナは一部の戦闘機の改修とアップグレードを開始したばかりだった。今回破壊されたリヴィウ州立航空機修理工場(LSARP)が主導し段階的プロセスがMiG-29フルクラムに導入された。その他、Su-27、Su-25、Su-24MRが対象となった。

「Su-27、Su-25、Su-24MRの訓練は、NATO統合に向けたものでした」と、ジャージーは続ける。「ポーランド空軍や、ルーマニア、ブルガリアといった近隣諸国との飛行を開始し、国境を越えた飛行で統合を目指していました。2018年のミッションの多くは、F-15で彼らのSu-24やSu-25を目標地域に護衛し、他国のフランカーと対決するなど、統合に特化していました」。

「一緒に飛んで、技量と近接ドッグファイトは信じられないレベルだと思いました。ウクライナ側は機体を熟知していました。他国のフルクラムやフランカーと戦ったことがありますが、ウクライナが最高のレベルでした。クリアスカイ演習では、あらゆる機材をミックスして使う戦術構想でした。ウクライナが必要とするときには私たちが現地に展開すると100%信じていましたので、今みたいに傍観するだけになるなんて想定外です」

USAF

ウクライナのSu-27 がB-52 のエスコートミッションにフル武装でついた.

 

「ウクライナ戦術は、戦闘機と地上システムを活用するものです。クリアスカイで学んだ教訓から、戦術を調整・改善しており、全体の戦闘計画はすべて自国で編み出したものです」

「これまで8年間、ウクライナが東部地域でロシアと戦ってきたことを、人々は気づいていないか、忘れているのでは。クリアスカイの打ち合わせで、フロッグフット(Su-25)のパイロットに、F-15に乗った私の写真を見せたときですが、彼は主翼の半分が欠けたフロッグフットの写真を見せてくれたんだ。彼は『数カ月前、マンパッド(携帯型防空システム)にやられた』と言っていました。ウクライナは今回のロシア侵攻に備えていたのです」

「クリア・スカイでウクライナは高性能機が必要だと理解した」とジャージーは説明する。「ポーランドのMiG-29から始めたらと勧めましたが、最近のアイデアはクリアスカイ演習後の推奨事項にすでに出ていたんです。ポーランドのフルクラムは、新しいF-35の導入で余剰機材になっているんです」

「そして、ウクライナには第4世代機の基本性能を持つF-16への移行を勧めました。ウクライナがポーランドのMiG-29やF-16で飛び回っていたら、状況は今と大きく違っていたはずです。ウクライナが完全に空を支配しているのは間違いなかったでしょう」 

ジャージーは、ウクライナ軍がロシア空軍と戦い続けるためには、追加戦闘機以外にも、地対空ミサイルシステムの増強が決定的に重要であると言う。

現状を見ると、ウクライナ空軍は数では不利かもしれないが、活発に活動している。「ウクライナの戦闘機パイロットには超ベテランばかりではなく、若い人もいます。ウクライナのパイロットは自分たちの限界を知っていると思う」とジャージーはコメントする。「敵国の脅威を想定した訓練では、敵国の最高級のシステムを相手にし、そのシステムが最大限活用される想定で訓練するんです。ロシアが同じことをしていたとは思えません。彼らは、敵が自分たちが言われたとおり想定ではないのにすぐ気付かされたのです」。

「ウクライナ側には覚悟がある。私はこの国に何度も行っているので、わかるんですが、この人たちがどれだけ国を愛しているか、他国は気づいていないと思うんです。どれだけ愛国心が強いか。私は、バトル・オブ・ブリテンや、人々が自分の家や祖国を守ることと類似していると思うのです。ロシアのような侵略軍と、自分の故郷を守ることは同じではないのです」

「ウクライナ空軍の、攻撃第一波で撃破されないようにするために、機体を迅速に移動させた能力に大きく感銘を受けました。航空機の探知を困難にしたんです。ロシアは初回攻撃で地上の航空機のほとんどを破壊することを期待していたが、そうはならなかった」。

U.S. ANG/A1C CHRISTOPHER S. SPARKS

ウクライナパイロットにF-15Cのコックピットを見せていた.

 

「ウクライナのパイロットは粘り強く動いて、打つべきところに打っている。詳細は省きますが、ウクライナ空軍は地上配備型防空システム(GBADS)と戦闘機を組み合わせ、一挙手一投足を綿密に計画していると確信しています」

「ウクライナと仕事を始めたときは私たちが戦術の専門家でした。私はずっと戦闘機の訓練をしてきたが、実戦に勝るものはない。今はこの人たちが紛れもない専門家ですよ」

「ウクライナのパイロットは時間と場所を選んで戦っている。彼らはそれを利用しているのです。8年以上ロシアと戦ってきて、彼らはいつ自分の資産を危険にさらすか、どれだけのリスクを負うべきかを学んだ。それに加え、彼らは英雄的な男たちであり、真の戦士です」

「『キーウの亡霊はいるのか?』と聞かれることがありますが、ウクライナのパイロット全員がキーウのゴーストなんです。ゴーストとは現れる時を決め、傷つけることはできず、そして、怖がらせるものでしょう?彼らはいつ、どこに現れるかを決められるんです」■

F-15 Eagle Driver On What It Is Like Flying Against Ukraine's Fighter Pilots

BY JAMIE HUNTER MARCH 29, 2022


2022年3月31日木曜日

スロバキアからS-300がウクライナへ移動する。米国がヨーロッパで動き、旧ソ連装備品のウクライナ移送を画策している。

  

 

 

ロイド・オースティン国防長官はスロバキア首相エデュアルド・ヘーゲルとスロバキア首都ブラスティラヴァで会見した。March 17, 2022. (Jaroslav Novák/TASR via AP)

 

防総省高官は、バイデン政権がNATO同盟国スロバキアからのS-300地対空ミサイルシステムの対ウクライナ供与の追加に動いていると3月30日に連邦議員に語った。

 

 

 スロバキアはウクライナへの旧ソ連装備品の提供に同意しており、セレステ・ウォランダーCeleste Wallander 国防次官補は下院軍事委員会公聴会で、米国はスロバキアへ何らかの埋め合わせをしている、と述べた。


 ただし、スロバキアのヤロスラフ・ナドJaroslav Nad国防相が、西側同盟国が「適切な代替品」を提供する条件でS-300を送るとの申し出をして2週間がたっており、マイク・ロジャースMike Rogers下院議員(共アラバマ)は、なぜ取引が成立しないのかと質問した。ウォランダーは、各国との調整の中で「進行中」と述べ、より詳細な回答は後の機密セッションでさせてほしいと述べた。


 「スロバキアと協力して、同国のニーズを満たす要件を特定している」と「一方で、S-300システム含むソ連の旧式装備を保有する国々、S-300のミサイル本体、各種部品の保有国に、ウクライナへの移送を働きかけてきた」(ウォランダー次官補)


 ウクライナのヴロディミル・ゼレンスキー大統領が、ロシア機とミサイルによる攻撃を受けながら、ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定、あるいは代わりにS-300など防空システムや戦闘機の供給を米議会に求めた演説から数週間たっている。


 ドイツでは、国防相がロイド・オースティ国防長官を水曜日に訪問し、ウクライナと東部で国境を接するスロバキアへペイトリオット防空装備を派遣すると約束した。ナドは、パトリオットはあくまでもS-300の補完で、交替装備ではないと述べている。


 これと別にウォランダー次官補はスイッチブレード100機が、ウクライナに届けられると明言した。エアロヴァイロメントAeroVironment製の同無人機は、今月送る8億ドルの援助の一部で、対人武器、火器、防護服、弾薬と合わせ送付すると以前報告されていた。ウクライナ軍はトルコ製バイラクターTB2武装無人機を使用中だ。


 スイッチブレード100機でロシア軍輸送隊の破壊に十分なのか、もっと必要なのか、と聞かれたNATO軍ヨーロッパ司令官トッド・ウォルターズTod Wolters大将は、「スイッチブレードを入手すれば、すぐにもっと欲しいという要求がウクライナから来るはず」と答えている。


 

 水曜日には別の会合で、下院軍事委員会委員長アダム・スミス議員Rep. Adam Smith(民ワシントン州)は、ウクライナの都市に破壊の雨を降らしているロシア砲を排除するために、可及的速やかにウクライナへの無人機多数の供給に賛成すると述べた。同議員は、ロシアの補給車列への攻撃が、首都キーウ奪取を狙ったロシア作戦を妨げたと評価している。


「無人偵察機には、現場で姿を隠す能力があり、生存性が高く、撃墜されることもなく、効果を出す。それが無人機の意義だ」とスミスは語った。

 公聴会では、議員からウクライナへの沿岸防衛巡航ミサイルの送付や、ポーランドからのソ連時代のMiG-29の送付申し出の実行について、また米国と同盟国がウクライナに送っているジャベリン対戦車ミサイルやスティンガー対戦車ミサイルの生産を米国の防衛産業基盤が増強していることについて質問が出た。


 ウォランダー次官補によると、国防総省の取得・維持局が産業能力以外に、国防総省が必要とする新たな権限や資金についても研究している。また、国防安全保障協力局、統合参謀本部、外交部門と協力し、ウクライナからの軍事援助要請への対応を主導している。


 ワシントンは最近、ロシア・ウクライナ危機に対処するため136億ドルのパッケージを承認したが、大部分は東欧に軍隊と武器を送る費用をまかなうためだ。バイデン政権は、米国装備品の直接移転を含め、ウクライナに総額20億ドルの安全保障支援を送っている。


 超党派の上院議員グループは火曜日、ロシアの侵攻以来、米国がウクライナに提供した防衛支援について、バイデン政権に具体的説明を求めた。ジョニ・アーンストJoni Ernst(共アイオワ)とカーステン・ギリブランドKirsten Gillibrand(民ニューヨーク)両上院議員は、国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバンに、提供ずみ殺傷力のある、あるいは非殺傷性装備品のリストと提供の状況を求めた。


 ロシアは、ウクライナへの最新型防空ミサイルの輸送に反対し、西側の武器供給を狙う可能性があると警告している。


 スミス委員長はウォルターズ大将に、米国と西側同盟国の支援強化に対し、ロシアがウクライナ国外へ戦争を拡大するリスクとのバランスを取る必要があるか、と尋ねた。


 ウォルターズ大将は「常にある」と述べ、「状況は1秒ごとに、1日ごとに、1週間ごとに変化している」とした。■

 

Will Slovakia send Ukraine S-300 air defenses? The Pentagon is working on it.

By Joe Gould

 Mar 31, 2022

 

About Joe Gould

Joe Gould is senior Pentagon reporter for Defense News, covering the intersection of national security policy, politics and the defense industry


2022年3月30日水曜日

ウクライナ戦は新型兵器のテストの場となっている。ロシア海軍がカリブル巡航ミサイルを実弾発射している。無神経なTASS通信記事のためご注意ください。

 Screenshot from Russian MoD video


クライナ武器貯蔵庫へ向けブヤンM級コルベットがカリブルKalibr巡航ミサイル8発を発射した。ロシア国防省公開の映像は、同ミサイルの攻撃で初の公表となった。


ご注意 この記事はロシア国営通信社TASSの原稿を翻訳したものです。


国防省報道官イーゴリ・コナシェンコフIgor Konashenkovは、海軍の精密ミサイルがロブノRovno市北西14キロのオルジェフOrzhev兵器庫を攻撃したと発表した。「西側諸国が供給した武器や軍用装備を保管するウクライナの主要兵器庫を破壊した」と述べた。

 カリブルミサイルは、黒海からプロジェクト21631ブヤンMBuyan-M級ミサイル艦が発射したとされる。映像には、8発のミサイルが次々と発射される様子が映し出されている。同艦はミサイル8発を搭載するため、全弾発射したことになる。



独立軍事評論誌のドミトリー・リトフキンDmitry Litovkin編集長は、今回の一斉射撃で、カリブルミサイル全弾を同時発射で威力を確認できたと述べている。


情報のやりとり

リトフキンは、カリブルミサイルが飛行中に情報を交換したと見ている。「人工知能は武器やハードウェアに導入され、あるミサイルが目標を見て、情報を他のミサイルと共有する。1発のミサイルが落ちれば、残りのミサイルはどこに飛べばいいのかがわかる。ネットセントリックが実現する」と述べた。

 「一斉射撃でカリブルミサイルがリアルタイムで情報交換を行っていることを示した。巡航ミサイルは実はロボットだ」(リトフキン)。


カリブル巡航ミサイルを発射するブヤン級コルベット



カリブルとは

カリブルS-14(NATO報告名称SS-N-27シズラーSizzler)は、エカテリンブルクのノバトール設計局Novator Design BureauがグラナートGranat S-10から開発し、93年に初めて一般公開された。

 グラナートは、米国のトマホークSLCMとGLCMに対抗して設計された。グラナート3M-10は、1983年に魚雷発射管発射用アルファAlpha3M-51巡航ミサイルに開発された。1993年、アブダビでの兵器ショーとMAKS-93でモックアップが展示された。

 1991年以降、設計者はクラブClubミサイルの輸出オプションに焦点を当てた。潜水艦(Club-S)および水上艦(Club-N)で発射可能とした。最初の3M-54はAlphaから開発され、3M-14はグラナートを原型に開発された。輸出用オプションの射程は275-300kmだった。

 ロシア海軍は3M-54と3M-15を水上艦のカリブル-NKコンプレックスと汎用3S14ランチャー、潜水艦のカリブル-PL魚雷ランチャーで使用する。最初のコンプレックスは、2012年にプロジェクト11661ダゲスタンDagestan小型ミサイル艦に納入された。射程は1400kmから2600kmといわれる。

 カリブルは、地上、空中、海上、水中仕様に開発され、輸出オプションも用意された。ロシア、インド、中国が運用しているとの情報がある。



3S14 UKSK万能ランチャー(タス通信)


ランチャー

万能ランチャー3S14は、ロシア海軍でのカリブルの使用を進めた。アルマース・アンテイ社Almaz-Antey Companyが設計した垂直発射台だ。


カリブル、オニクスOnyx、ブラーモスBrahMosの各ミサイルを発射でき、2022年に試験を完了する予定の極超音速ツィルコンTsirkonにも適合する。

 同ランチャーは、ロシアの新世代軍艦に搭載されており、フリゲート艦プロジェクト22350と11356、コルベットのプロジェクト20385と20386、ミサイル艦プロジェクト11661、小型ミサイル艇プロジェクト21631と22800など、各種艦艇に搭載されている。プロジェクト22160パトロール艦もランチャーを搭載できる。プロジェクト1144巡洋艦、プロジェクト956駆逐艦、プロジェクト1155大型対潜艦もカリブル発射が可能だ。

 同ミサイルは、プロジェクト636.3ヴァルシャヴィアンカ級Varshavyanka-classディーゼル電気潜水艦、プロジェクト885MヤーセンMYasen-M級SSGNでも発射できる。


Iran and Russia are planning to hold naval drills in the Caspian Sea, the commander of the Iranian navy said on Sunday, January 6, 2018.ロシア海軍カスピ海戦隊の海上訓練でカリブルNKミサイルを発射(写真:ロシア国防省)


交戦

同ミサイルの最初の実戦投入はシリアだった。国防省は99発で13回交戦したと報告している。

 最初の発射は、プロジェクト11661ダゲスタン級ミサイル艦、カスピ海戦隊のプロジェクト21631小型ミサイル艇3隻で行われた。カスピ海から 26発のカリブル-NKをシリアのテロ拠点11箇所に発射し、指揮所、武器庫、キャンプを破壊した。

 潜水艦からの最初の発射は、2015年12月8日だった。プロジェクト636.3ディーゼル電気潜水艦ロストフ・オン・ドンRostov-on-Don が、ラッカ州のテロ目標に向け潜航中にカリブル-PL4発を発射した。ロシア水中艦隊で初の実弾ミサイル攻撃となった。

 黒海艦隊のプロジェクト11356Rフリゲート艦アドミラル・グリゴローヴィチAdmiral Grigorovichが2016年11月15日、初めてカリブルミサイルを発射した。続いて、プロジェクト636.3アドミラル・エッセンAdmiral Essen級フリゲート艦クラスノダールKrasnodar、ヴェリキー・ノヴゴロドVeliky Novgorod、および潜水艦コルピノKolpinoが発射した。東地中海から攻撃を行い、デイル・エズ・ゾールDeir-ez-Zorの南東にあるテロリストの司令部、通信拠点、武器庫を破壊した。国防省によれば、ミサイル7発が水中から500〜670km先に発射されたという。

 2017年10月5日、黒海艦隊所属のヴェリキー・ノヴゴロドと潜水艦コルピノが10発のカリブルミサイルを発射し、アルマヤディンal-Mayadin付近のテロリストの指揮所、主要武器庫、装甲車両を破壊した。

 カリブルは非核戦略的抑止力として理想的である。核弾頭も搭載できる。ロシア艦隊はカリブル・ミサイルで武装し、長距離かつ柔軟な長距離攻撃が可能となっている。■


2022年3月29日火曜日

23年度予算案に見る米空軍の動向。23年は大量の機材を処分し、新型機導入の基礎を準備するとしてるが....F-22、AWACS, JSTARSも退役対象機に....

 




内情に詳しい情報筋2人によれば、フランク・ケンドール空軍長官は、F-15EXの調達中止の検討を空軍の予算班に命じていたという。逆に23年度概算要求ではプラスアルファの調達となる。


空軍は、F-15EXを優先しF-35調達は短期的ながら減速する計画で、JSTARSとAWACS双方の退役を求め、研究開発費の大幅増額を要求しているが、いずれも中国を意識してのことだ。



 本日発表された空軍省予算案には、空軍向け1,695億ドル、宇宙軍に245億ドル、空軍が省外の機密プロジェクトに支払う「ノンブルー」支出として402億ドルが含まれる。

 空軍の予算担当副次官補であるジェイムズ・ペチアJames ペチアは、この数字はFY22の空軍要求と比較すると、推定2.2%のインフレ率を含め約8%の実質成長であると述べています。

 中国の経済力と技術力に対抗できる空軍に変身させる必要があるということだ。フランク・ケンドール空軍長官は金曜日の記者会見で、数年前に国防総省の調達トップとして在任中に、記者から「あなたは変革型のリーダーか、進化型のリーダーか」と問われた時のことを思い出した。

「そのとき、私はどちらかといえば進化的なリーダーだと答えた。「今日は、その逆で、進化よりも、変革の方が今は重要だ。原動力は脅威だ」。

 空軍と宇宙軍にとって、研究・開発・試験・評価(RD&E)が勝者として浮上し、22年度予算要求の401億ドルから23年度は492億ドルに跳ね上がった。

 ここには、B-21爆撃機の購入予算17億ドルや、ロッキード・マーチンF-35の調達数を減らし、ボーイングからF-15EXを購入する決定が含まれている。

 F-35Aの調達は33機、45億ドルで、22年度から15機減る。一方、ボーイングF-15EX戦闘機は24機、14億ドルで購入する計画で、前年度の調達数の2倍になる。

 ボーイング機に関心を向けているように見えるが、空軍はもっと慎重である。この問題に詳しい情報筋2名によれば、ケンドール長官は空軍の予算班にF-15EX調達中止を検討するよう命じていた。しかし、空軍や国防総省のF-15EX推進派が反発した。

 その結果、空軍はF-15C/Dに代わるF-15EX調達を急増させ、高度なF-35ブロック4仕様が購入できる時が来るまでF-35調達を減らす選択をしたのである。

 F-35購入は、今後5年間で元に戻るとケンドール長官は述べた。

 「F-35にこだわるのか、と聞かれる。もちろん、我々はF-35にコミットしている」「F-35は当分の間、戦術空軍の基礎となることに疑問の余地はない。」(ケンドール長官)


ボーンヤード送り

 空軍は23年度に269機以上の航空機を処分する意向だ。昨年要求の200機程度をはるかに上回る。

 「これをしなければならない。明日の資源を確保するため、旧式機を処分しなければならない」とケンドール長官が語った。

 空軍の広報担当者がブレイキング・ディフェンスに語ったところによると、処分場に向かう航空機のリストには、以前に議会へ説明された119機が含まれるという。しかし、残りの150機には、これまで対象でなかった航空機が含まれており、議会や他の予算ウォッチャーが驚ろくことになりそうだ。

 空軍は、地上目標情報を提供するE-8C JSTARSを8機退役させる計画で、残るJSTARSはわずか4機となり、これも24年度に退役する。

 空中目標を感知、識別、追跡するE-3セントリー空中警戒管制機AWACSも15機を退役させたいとしている。現在、空軍は31機のAWACSを保有しているが、後継機導入に伴い退役させる。

 戦術機も大幅削減される。空軍は旧式ブロック20のF-22の33機を退役させる承認を得るとし、ケンドール長官は戦闘能力がないと述べている。ペチアによると、各機を処分できないと、今後8年間の維持費として18億ドルかかるという。

 また、昨年に引き続き、老朽化したF-15とF-16の退役を進め、合計F-15C/D26機とF-16C/D67機を処分したいとする。

 空軍は、C-17やKC-10などに移行する前に、訓練生の機動性飛行の教育に使用されるT-1ジェイホーク練習機50機を引退させると示唆した。空軍は声明で、T-6テキサン練習機の進歩により、パイロット養成に影響を与えずに、同機のみで訓練するシラバスへの移行が可能になると述べている。

 ボーイングKC-46の運用開始に伴い、旧式給油機の部分的退役を継続し、23年度にはKC-10を10機、KC-135を13機退役させる。

 アラバマ州のマックスウェル空軍基地のC-130H10機をモスボール保存するが、4機のC-130Jが稼働開始し不足分は部分的に緩和される予定。また、電子戦機EC-130Hコンパスコール1機と特殊作戦機EC-130Jコマンドーソロ3機の処分を進める。

 12機のHH-60Gペイブホークを退役させ、最新型HH-60Wに置き換える。

 そして最後に、空軍はA-10の一部を退役させる。インディアナ州空軍が運用する21機のA-10を廃棄し、その代替としてF-16を導入したいとする。アリゾナ州議会は歴史的に、現在281機残るA-10の退役に抵抗がある。

 厳密には退役ではないが、空軍は100機のブロック1仕様MQ-9リーパーを、ケンドール長官が名前を伏せた政府機関(おそらく中央情報局)に引き渡そうと考えている。この動きは、戦闘指揮官の要求に応えるために必要な能力を維持しながら、リーパーの運用とメンテナンス経費を空軍予算から外すのがねらいだ。


資金はどこに流れるのか

 23年度も空軍は、長期優先事項のため、調達と開発資金を交換する傾向を続ける。研究開発費に334億ドル(22年度288億ドル)、調達費に257億ドル(前回229億ドル)を要求している。(この合計額には、宇宙軍への支出は含まれない。)

 B-21レイダー計画は17億ドルの要求で調達段階に移行したが、秘密主義のプログラムにふさわしく、ペチアはその金額で何機のステルス爆撃機が購入されるのか明示を避けた。

 さらにボーイングKC-46タンカーを15機、28億ドルで購入する。また、ボーイングのMH-139グレイウルフの調達も再開する。

 「このヘリコプターには、合格すべき認証が2つある。「1つ目は完了した。2つ目はここ数ヶ月で完了するので、23年度には再びMH-139調達を開始できる」トペチアは述べた。

 その他回転翼機の調達では、空軍はHH-60WジョリーグリーンIIヘリコプター10機を8億7000万ドルで最終購入した後、戦闘救助ヘリコプター調達を早期に終了する。

 F-15EXとF-35の追加購入のための投資以外にも、空軍はF-22の先進的なセンサーに3億4400万ドルを投資する。

 RDT&E予算には、核近代化プログラムへ多額の資金が含まれており、ミニットマンIIIに代わる地上戦略抑止システムには36億ドル、B-21爆撃機の継続設計に33億ドル、核の長距離スタンドオフ兵器には9億2900万ドルと膨大な規模の予算が計上されている。

 ボーイングE-3セントリー空中早期警戒管制機をどのように置き換えるのが最善か、何年も水面下で検討された後、空軍は23年度にE-3後継機に227百万ドルを計上し、新型機を配備する可能性がある。ケンドールによると、ボーイングE-7ウェッジテイルWedgetailがAWACS後継機で有力候補だが、正式な調達決定の前に市場調査を済ませるという。

 ペチアによれば、空軍は次世代航空優勢(NGAD)に16億5000万ドルを要求し、約1億3300万ドルの増額で、ほとんどが第6世代戦闘機に関連する高度なセンサーと弾力性のある通信装備用だという。また、NGADとB-21を強化する「忠実なるウィングマンLoyal Wingman」スタイルの無人機では空軍の最新の専門用語である「高度連携型機材advanced collaborative platforms」用の113百万ドルも含まれている。

 先進エンジン開発プログラムに3億5400万ドルを投じ、適応エンジン技術プログラムの2億8600万ドルと次世代適応推進の6600万ドルを含む。

 先進戦闘管理システムプログラム向け予算は、23年度に約28百万ドル増加し、231百万ドルとなるとべチアは述べた。■


F-35 cuts, F-15 boost, and E-3 replacement: Air Force's $170B budget makes big moves in FY23


By   VALERIE INSINNA

on March 28, 2022 at 1:31 PM