2021年2月13日土曜日

帝国海軍の潜水艦運用を反面教師に、海自潜水艦部隊は効果的な作戦形態を実現し、米国とともに中国への対抗を狙う存在になった。歴史は生きている

 

上自衛隊の潜水艦乗組員は帝国海軍の潜水艦運用実績から教訓を学び、反面教師とみなしている。

史上最悪の潜水艦部隊の候補はいろいろあるが、筆者は日本帝国海軍(IJN)をノミネートしたい。潜水艦が広く使われるようになり百年以上となるが、優秀な戦果をあげた艦とそうでない艦に二分される。「浮かぶ棺桶」とまで酷評されたもの、幸運に恵まれた艦がある。国家の目指した戦略や政治面の目標を台無しにした艦もある。

 

 

潜航可能艦の発想は昔からあったが、初めて戦闘投入された可潜装備は手動で進む奇妙な装備タートルで英海軍艦船の爆破を目指した。独立戦争のことである。だが、19世紀末になり、バッテリー、電気モーター、内燃機関の各技術が成熟して実用化の道が開いた。

 

各技術を組み合わせディーゼル電気推進方式が確立され、潜水艦は静かに深く電気モーターで進み、海上ではディーゼルで充電しながら航行するハイブリッド方式となった。英海軍は1900年にジョン・フィリップ・ホランド設計の初期型潜水艇5隻を発注し、水中戦の新しい歴史が始まった。

 

近代的な潜水艦はゆうに一世紀を超え存在し、幾多もの設計、建造施設、海軍部隊が関わり海上に展開した。だが、各人の資質が異なっているように、潜水艦も優秀艦から目を覆いたくなるような艦まで多岐にわたる。ではどう評価し、どの艦が他より卓越していたと言えるのだろうか。

 

では、水中戦の効果をつぎの基準三点で評価するのはいかがか。軍事思想の大家カール・フォン・クラウゼビッツは軍事力には物質、人的の各面があると主張した。軍事力とは力と意思の組み合わせであるとした。各装備や運用効果を測る際には意思の力が重要となる。また、技量、熱意、肉体精神両面の強靭さを含めても良い。こうした資質が揺るぎない決意を強い軍事力に変貌させる。

 

実戦投入された潜水艦部隊をこの尺度で評価してみよう。

 

任務をどこまで実行し、上官ならびに政治の期待に応えたかを見れば、潜水艦部隊の優劣を決めるのが可能となる。こうした尺度で見るとまず英海軍のK級潜水艦は可潜式蒸気船であり、嘲笑の対象だ。

 

哨戒に出港したまま、帰還しなかった潜水艦もある。設計上の欠陥、機関の故障、乗組員の誤作動あるいはその組み合わせが原因だ。攻撃型原子力潜水艦USSスラッシャー、USSスコーピオンの事例が頭に浮かぶ向きもあろう。ともに謎のまま海底に沈んだのは半世紀も前のことだ。ロシアのオスカーII級クルスクは2000年に沈没し、アルゼンチンのディーゼル艦ARAサンフアンは2017年大西洋の深海に沈んだ。

 

だがもっと大きな視点で見よう。個別艦の成功、失敗ではない。クラウゼビッツの言うように個別の戦術結果は政治意思の表明に過ぎない。

 

そこで日本の帝国海軍だ。第二次大戦時のIJN潜水艦部隊には数々の恥辱の歴史が続いた。だが日本潜水艦の建造に欠陥があったわけではない。海軍史でも米ゲイトー級艦隊型潜水艦と遜色ない性能との評価がある。米海軍は同級を投入し日本帝国を打破すべく、各地の海上交通を寸断し、日本は物資輸送がままならなくなった。

 

また日本の潜水艦乗員の運用水準が低かったわけでもない。戦術レベルや勇猛さも同様で、その逆だ。同国の水上艦部隊や航空部隊同様に潜水艦部隊もプロとして卓越していた。人的側面でも同様だ。IJN潜水艦部隊は米太平洋艦隊の潜水艦部隊SUBPACと同等の水準にあった。潜水艦部隊の芳しくない戦果は東京の帝国海軍、陸軍の最高司令部の統率力が原因だ。米潜水艦部隊による貨物船損害が続いても無関心のまま、司令部はIJN潜水艦を米輸送力攻撃にむける策には関心を示さなかった。

 

最後の基準が戦略で、日本潜水艦部隊には最悪の結果となった。SUBPACの各艦は真珠湾で主力水上艦が攻撃被害から回復しない間から大打撃を与えていた。米潜水艦乗員に「バブルヘッズ」の愛称がつき、日本の輸送航路を襲撃し、結果として日本国内産業を疲弊させ、相当の部隊を出動させた。米潜水艦はその目的を果たした。1944-45年の日本の継戦能力はあらゆる面で衰退の一途をたどった。

 

日本潜水艦部隊は技量も装備も相当のものだったにもかかわらず、戦果はわずかだった。IJNは逆襲の機会を逸し、米国の動きを止められなかった。極東での戦闘に米海軍は長大な距離を克服する必要があった。補給線は長くなる一方で、それだけ脆弱になったが、南部中部太平洋地区で揚陸作戦の攻勢をかけていた。これはIJN潜水艦に絶好の狩りの機会になったはずだ。それでも日本の潜水艦部隊は米主力艦攻撃を第一とし、支援艦艇の攻撃は二次的とした。米輸送艦部隊は手薄な防御まま、補給拠点から戦闘艦艇間を移動したが、ほとんど襲撃を受けていない。強力な補給体制に支えられた米艦隊は戦闘を常時行える体制となり、日本海軍に勝ち目がなくなっていた。

 

IJN潜水艦部隊は作戦でも戦略でも不活発で、せっかくの装備を活用できず、ここぞという場にも活躍できなかった。実はIJN潜水艦部隊には群を抜く性能があったのだ。戦後に生まれた海上自衛隊(JMSDF)は帝国海軍の歴史を学び、同じ轍を踏まないと決意している。冷戦期に海自潜水艦部隊は共産勢力の封じ込めで重要な役割を果たした。今日でも米日両国による中国との戦略競合で同じ役割を再演している。

 

見方を変えれば、現在の米国は強力な敵だった日本帝国海軍に借りがあるとも言える。歴史の皮肉というべきか。■

 

この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


How Japan Became Ashamed of Its Imperial Submarine Force (And Learned From It)

February 11, 2021  Topic: History  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: JapanMilitaryTechnologyWorldImperial JapanSubmarine

by James Holmes

https://nationalinterest.org/blog/reboot/how-japan-became-ashamed-its-imperial-submarine-force-and-learned-it-178024

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific. The views voiced here are his alone. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters.


2021年2月12日金曜日

中国の弱み④ ジェットエンジン技術が追いつかない。リバースエンジニアリング、盗作に走るのは結果だけ求める中国の思考形式の限界を反映している。

 中国の弱み④ 

https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2009%3Anewsml_GM1E5B4126I01&share=true

 

国は海外の兵器技術に過剰依存の傾向がある。国内産業育成に走る中国がロシアからの輸入や米国技術の盗作に頼らる必要のない日が来るだろうか。だがその日は当面やってこない。

 

中国の国防産業界は外国設計の「借用」で悪名高い。特に航空宇宙産業にこれがあてはまる。中国で供用中の戦闘機は大部分が無許可のコピーが原型だ。J-10はイスラエルIAIのラヴィであり、もとをたどれば米国のF-16だ。J-11はロシアSu-27のクローン、JF-17はソ連MiG-21を近代化した機体、J-20にはF-22との類似性があり、J-31はF-35共用打撃戦闘機の技術を借用していると広く信じられている。海外技術の盗用で中国は研究開発費用と時間を節約し、PLAAFは安価に近代化が可能となった。ただし、盗用戦略ではテストデータがなく、産業基盤も揃っていないため肝心な技術に成約が生じる。この例が当てはまるのがエンジンの国産化で、まともなジェットエンジンがいまだに生産できない。

 

技術ミスマッチの根源は技術知識の欠如であり、人財の不足だ。このため、海外システムの摸倣が結果として高い代償につき、多大な時間の消費につながり、結局ゼロから製造工程を整備しなくてはならなくなる。最悪の場合は粗悪部品となり、性能が大幅に低下する。中国は1990年代2000年代にロシアのジェットエンジンをリバースエンジニアリングしたが、結果は極端に低寿命でロシア製より低出力のエンジンだった。現在も中国のジェットエンジンがPLAAF戦闘機材の近代化で足かせとなっており、最新型でも依然として出力不足の傾向だ。問題をさらに複雑にするのがSu-27搭載のAL-31エンジン以上の出力があるエンジンの供与にロシアが慎重になっていることだ。それでも中国には別の打開策もある。

 

オプションとしてまず、国産エンジンの性能を引き上げることがある。2016年に第13次5カ年計画で戦略的新興産業の育成が叫ばれ、国産ジェットエンジン設計の向上とあわせ航空宇宙産業の底上げを狙った。その成果が一部にせよ現れ、J-20試作型に改良版のWS-10エンジンが搭載され、当初のAL-10よりステルス性能、出力が向上したはずだった。しかし、中国国産エンジン関連の情報は不足気味で性能の確認ができない。WS-10初期型が中国製フランカーに搭載されたがAL-31より圧倒的に性能が劣っていた。成都航空宇宙高性能合金技術(CASTC)がターボファン技術で大きな飛躍を可能とし、高温域で高性能を発揮するエンジンに道を開いたが、この成果がPLAAFの現役機材に届くまでまだ時間がかかりそうだ。

 

 

民生部門が航空宇宙分野の技術の突破口を開けば、政治面でその後に成果が続くはずだ。国営航空機メーカー各社は政治面で力をつけつつあり、一部企業の首脳陣には裁量権が認められている。一方で、CASTCのような民間企業が優れた結果を実現すると、政治面での影響力が生まれ、既存の国営企業が民間企業と提携関係を樹立するようになるかもしれない。いずれにせよ、CASTCの成果は中国国防産業界ならびにイノベーション分野で深い意味を持ってきそうだ。

 

もっと簡単な方法は外国製戦闘機で高性能エンジンを搭載した機材を調達することで、この例がSu-35をロシアから導入したPLAAFだ。Su-35にはAl-41F1S(ALS-117S)が搭載されており、推力偏向方式を採用した強力なエンジンでAL-31から数段先をゆく技術になっている。中国はAL-117単独での導入を想定したが、ロシアがエンジン単体の輸出を拒み、さらにALS-117の知的財産の保護を強く主張した。

 

しかし、中国の知財遵守の実績はきわめて疑わしく、ALS-117を部分的にリバースエンジニアリングしてくるのは間違いない。ただし、これはそんなに簡単なことではない。ロシア筋は同エンジンの核心技術は分解しないかぎり見られないとしている。さらに中国がWS-10でも手こずった事例を見ると、外国製エンジン設計を入手したからと言って同等性能の製品の即実現には直結しない。

 

さらに中国がロシアの知財保護対策を守ると言いながら、破ればロシアの先端技術の利用を今後一層難しくなりかねない。更にALS-117の中核技術は分解しないとわからないというロシアの言い分が正しければ、リバースエンジニアリングしてもPLAAFにはエンジンの欠けた機材しか手に入らなくなる。そうなると、ALS-117のリバースエンジニアリングで短期的な成果を追求するのは、金の卵を生むガチョウを殺すのと同じだ。ただし、ロシア軍需産業の見通しが暗いため、ロシアとしても中国市場を失う損害を考え別の道に走るかもしれない。

 

たしかにロシアの優位性は縮まりつつあり、中国の技術、産業の基盤が強化される一方、ロシア技術の導入は減りそうだ。中国は自信を深めるだろうが、ロシアとの友好関係にひびが入るリスクが生まれれば、外交面の投資が無駄になりかねない。

 

最後に、中国は民生ジェット産業の発展をバネに軍事用途も一気に発展を目指すかもしれない。民生航空分野の強化が西側企業との協力関係につながれば、中国航空技術の輸出市場も生まれる。ドイツはタービンブレイドの購入を中国から狙っており、ドイツ製品より優秀な出来上がりとなっているからとする。皮肉にも中国はドイツから同技術を習得したのだが。さらに、中国国内の需要に応えれば民生航空機分野で世界最大の規模の中国市場に参入できる。とはいえ、欧米企業は技術移転の厳しい条件で操業を続けているのが現実で、そこに政治圧力や知財窃盗が加わり、西側企業は中国事業への投資に及び腰だ。知的財産の保護が鍵となり、米中関係が冷え、貿易戦争を加熱しかねない。その結果として中国が拡大近代化をめざす産業基盤に損害が生まれかねない。

 

こうした障害にもかかわらず、中国の軍事航空での進展は今後も続くはずで、中国が技術面でいつまでも遅れたままとなる可能性は低い。3Dプリント技術によりジェットエンジンの試作、製造、開発が加速化される日が来るかもしれない。とはいえ、3Dプリント技術はすでに各国で利用されており、航空機部品の製造にも応用されている。が、ジェットエンジンの複雑さを考えると、3Dプリント技術を広く応用するまでまだ数年かかりそうだ。中国は戦闘機用エンジン技術の習得という困難な選択に当面取り組み、空軍機材の戦力向上を狙うのではないか。■

 

この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


Engine Trouble: Why China Needs a Domestically-Produced Air Force

February 10, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaAir ForceMilitaryTechnologyWorld

by Robert Farley 

 

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government. This article first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters.


2021年2月11日木曜日

ロシアの弱点② 人口構成からロシア軍の現行規模は維持不可能になる。しかし、強大な軍の規模を信じる既存勢力が事実を認めようとしてない。

  

ロシアの弱点②

 

シア財務相が歳出削減のため軍人員10%削減策を提案したがロシア国防省の反対にさらされているとの記事をピーター・スチウがNational Interestに投稿した。

 

Covid-19関連で予算削減は理解できるが、人口構成の問題が存在感をロシア軍で強めている。

 

1991年のソ連崩壊後に生まれたロシア連邦の人口構成は崖っぷち状態だった。出生率は1997年から2001年にかけ1.2まで低下し、死亡率が急上昇した。この人口構成でロシア軍が900千名体制の維持に苦慮しているのは当然といえよう。更にこの問題は今後にかけて存在感を増す。

 

国連人口動向統計で、2020年時点のロシアの20-34歳男性人口は14.25百万人で、2050年の予想中央値は12.91百万人とある。減少率9%で軍の募集活動が大きく影響をうけそうだ。だが真の惨状はもっと早期にあらわれ、同じ年齢層の男性人口は2025年は11.55百万人、2030年は11.26百万人の予測がある。つまり、募集対象人口が2020年代に約20%減る。この問題はコロナウィルスやその結果の予算制約と関係ない。

 

募集対象男性人口の2割縮小がロシア軍戦力にどんな影響が出るのか。20−34歳人口と軍の規模を比較した「軍事化率」を見れば、ロシアの人口問題の深刻さがわかる。2020年のロシア軍事化率は対20-34歳男性人口14.25百万人で6.31%で、正規軍は国際戦略研究所の推定で900千名規模だ。ただ約5%の軍人員は女性で対象外となる。また、18-19歳男性もここに入らない。とはいえ、この数字からロシアの人口構成上の課題が浮かび上がる。

 

 

2030年までの20−34歳男性人口の減少予測を加味すれば、90万名体制を維持するためロシアは軍事化率を2025年に7.79%、2030年には8.01%まで増やす必要がある。実際はロシアはすでに軍事化された社会になっている。各国の数字を見ると、2020年の軍事化率は米国が3.86%、フランス3.62%、トルコ3.58%、イタリア3.52%、日本2.54%、パキスタン2.24%、英国2.21%、中国1.24%、インド0.77%でロシアが突出しているのがわかる。またロシアは周辺国より軍事化率が高く、ウクライナの2020年統計では4.82%、ルーマニア3.80%、ポーランド3.16%をいずれも上回る。

 

で社会が耐えられる「最大軍事化率」を想定すると、ロシアの現実が一番その水準に近い。中長期的にロシアはこれ以上の人員募集に耐えられないはずだ。とはいえ、状況は絶望的とも言えない。給与水準の改善も選択肢のひとつで、軍勤務の魅力を引き上げる策もあるが、スチウ記事では財務省が反対の方向を目指しているのがわかる。

 

別の対策に現行の徴募期間一年を2年に延長することがある。近代戦は高度技術を駆使するので、徴募期間も大部分が訓練に費やされ、実戦対応が整うのは最後の数ヶ月しかない。徴兵制度を温存するのなら、期間延長により戦闘対応度を高めれば、国防省も人材育成への支出資を無駄にすることを防げる。ただし欠点もある。若年層をさらに一年軍に留まらせれば、民間労働市場に一年間加われず、経済成長に悪影響が出る。さらに、徴兵制度は今でも政治的に不人気で、延長すれば国民の抵抗にあうのはほぼ確実で、支持率を重視するプーチン政権に心配のたねとなる。

 

女性活用方針を国防省が変えれば部分的にせよ解決になるかもしれない。前述のとおり、45千名の女性がロシア軍に勤務しているが、身体条件から実戦任務に適さない。国防省は次の三通りで現行方針を変更できる。女性に戦闘任務志願の道を開く。女性の徴募期間を延長するが、戦闘任務は与えない。(これで戦闘任務に投入可能男性を増やす)あるいは、女性を全面的に活用することである。それぞれ可能性は少ないが、国防省は女性のパイロット登用など打開策を模索している。ロシア軍に働く女性の規模は米国より低い。米国では空軍の20%、海軍19%、陸軍15%、海兵隊9%が女性だ。ロシア軍で支援任務に限り登用し女性比率を10%にするだけで男性徴募率の低さを解決できる。

 

ただし上記は国防省があくまでも現在の軍の規模を維持する限りついてまわる問題である。財務省の10%削減提案に激しい抵抗が出たのは、現在の軍の規模を維持する願望が強いあらわれだ。ただし、現行の方向性を維持した場合の財政上の重荷を考える必要がある。さらにCovid-19が加わる。ロシア社会では若年層が今後さらに減る。90万名体制維持は今でさえ難題で、今後維持できるはずがない。解決策として、給与水準の改善、徴募期間延長、女性募集の増加、それぞれ何らかの効果があるが、いずれもロシアの人口構成を抜本的に改善せず、ロシア軍の課題解決にもつながらない。ロシア連邦が軍縮小するとしたら、コロナウィルス関連の歳出削減を理由にあげるはずだ。この説明でまちがいとはいえないが、軍の規模縮小はロシアの人口構成上で不可避だ。Covid-19流行は都合の良い理由付けに過ぎない。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


The Russian Military is Facing a Looming Demography Crisis

February 1, 2021  Topic: Russia  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: Russian MilitaryDraftDemographic DeclineSoviet UnionMilitary

by Ethan Woolley


Ethan Woolley is a student at the European University at St. Petersburg, where he is pursuing an MA in Energy Politics in Eurasia. He graduated from the University of Pennsylvania with a BA in International Relations and Russian and East European Studies.

Image: Reuters.


そうりゅう事故を米海軍元潜水艦乗りはこう見ている。痛々しいそうりゅうの写真から浮かび上がるシナリオが正しいかは今後の調査であきらかになるはず。

 The Japanese submarine Soryu after a collision in February 2021.

JAPAN COAST GUARD


 

 

本の潜水艦そうりゅうと貨物船の衝突事故についてThe War Zoneは元潜水艦乗員含む各筋から興味深い話を聞いた。通常の訓練のはずが事故につながったのはなぜか、米海軍で潜水艦勤務が長く、航行安全指導員もつとめた人物以外に、同じく米海軍潜水艦でソナーマンだったアーロン・エイミックからも話を聞いた。

 

前者は匿名の取材源とさせていただく。実際に何が起こったのか正確に把握できていない中、潜水艦に詳しい筋の見識から水中行動のわかりにくい世界で興味深いシナリオが浮かび上がってきた。

 

JAPAN COAST GUARD

Soryu after the accident.

 

まず、判明している事実をまとめる。2021年2月8日現地時間10:58AM、四国足摺岬南東約25マイル地点で、海上自衛隊のディーゼル電気推進潜水艦そうりゅうが鉄鉱石を運ぶバラ詰み貨物船オーシャンアルテミス(51千トン香港船籍)と衝突した。貨物船は中国青島を前週金曜日に出港し、岡山へむかっていた。

 

報道を見ると衝突で潜水艦乗員少なくとも三名が負傷している。当初、防衛省はそうりゅうの損傷は潜望鏡と通信装置を収めたマストに限定されると伝えていたが、損傷はその後もっと深刻だったと判明し、右舷潜舵がほぼ2つに割れている。またセイル上部にも大きな損傷が見え、音響タイル数枚が欠落している。

 

当時の双方の動きを記録した自動識別システム(AIS)のデータにはオーシャンアルテミスが北向きに航行し、衝突時の速力が7.7ノットから11.1ノットだったことがわかる。すべて公開情報。

 

そうりゅうは潜航していたが深度は深くなかったようだ。だが潜望鏡深度よりは深かったことがわかる。仮に潜望鏡深度だったなら観測員がオーシャンアルテミスを見逃すはずはなかっただろう。当時の現場は昼間で天候は良好だった。


JAPAN COAST GUARD

 

元潜水艦乗りはそうりゅうの潜望鏡がほぼ完全に上がっていることから、貨物船の船腹に直接衝突していないのではないかという。ここから衝突時には潜望鏡が下がっていたとの仮説が生まれる。あるいは、衝突で曲がったり、切断されたのかもしれない。潜水艦では潜望鏡は冗長性をもたせ二本となっている。これも確証を持って言えないのだが、事故当時の同艦が潜望鏡深度だったら貨物船を視認できていたはずだ、というのが潜水艦乗りの感想だ。

 

またオーシャンアルテミスはソナーの死角となる後方から接近したのではという。そうりゅうが確認できなかった理由に2つの要因がある。まず、事故当時は曳航式ソナーは格納済みで、これは浮上時の手順の一部だ。つぎに、潜水艦には後方把握のためのソナーは装備されていない。このため前方および側部ソナーで後方の状況把握につとめる。そうりゅうの進路が北よりだったらしいので、航行の一番多い外洋への警戒が手薄になっていたのではないか。オーシャンアルテミスは結果として潜水艦に向かい航行したはずだ。


JAPAN COAST GUARD

 

こうした事態が重なり、大型貨物船が後方から接近する最悪の事態となり、そうりゅうはベンチュリ効果で貨物船の船腹に吸い込まれたのかもしれない。この現象は決して未知のものではなく、ロサンジェルス級原子力攻撃型潜水艦USSニューポートニューズがホルムズ海峡野南で2007年に遭遇している。同艦は日本のタンカー最上川(川崎汽船)に吸い寄せられ、艦首を損傷し、艦長が解任された。

 

米海軍の元潜水艦艦長は何らかの人的要因が介在したと見る。そうりゅう乗組員は疲労あるいはストレスの影響下にあった、あるいは技量を過信していたのではないかというのだ。きびしい潜水艦勤務で、極度のストレスがかかると状況把握が低下することがある。演習後の乗員によく見られる現象だ、という。

 

JAPAN COAST GUARD

JAPAN COAST GUARD

 

別の可能性として、そうりゅう乗組員が浅海域でのソナー反響の読みに不慣れだったのか。事故発生地点が大陸棚上だったとすれば、反響経路が深海部と全く異なる。今回の取材源も「深海・浅海で生データは同じように見えるが、実は意味が全く違う。海底反響と直接経路を間違えてると距離が全く違うことに気づかない。これは経験豊かな乗組員でもよくある誤りだ」という。このシナリオだが、貨物船から返ってきたソナー音を海底からの反響と勘違いしたことになる。ただし、米海軍の元潜水艦乗りはそうりゅうのようなディーゼル電気推進艦の乗員は浅海域運用に慣れているはずだと述べている。

 

最後に、事故が単純な衝突事故で白昼の海面上で発生した可能性がある。「愚かしい事態が発生した」のか。


JAPAN COAST GUARD

 

これに対し、アーロン・エイミックが異なる見解を示しているので紹介したい。

日本のSSKそうりゅうがオーシャン・アルテミスと衝突した今回の事故は潜水艦がいかに危険と紙一重で運行されているのを改めて示した。事故直後にヘリコプターが撮影した写真を見ると、潜水艦の右舷が衝突したことがわかる。セイル、潜舵、マスト、アンテナに損傷が見られる。艦前方と後方に損傷がないのは衝撃が舷側に限られていたからだろう。

損傷がセイル上部と潜蛇に限定されているのは同艦が衝突時に潜航中だったからだろう。そうりゅうは潜望鏡深度になる前にオーシャンアルテミスの船腹に吸い付けられたのか、大型船の航行で押しのけられたのだろう。

 

潜水艦に詳しい筋から洞察力に富む説明が得られた。

 

事故原因が何だったにせいよ、重傷者が発生しなかったことに安堵するばかりだ。別の元米海軍士官は世界各地で超大型船が増えていることで、こうした衝突事故は残念ながら今後増える一方だろう、という。■

 

この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


Veteran Submariners Explain What Might Have Caused Japanese Submarine Collision

 

Despite all the technology at their disposal, for a submarine crew, the simple act of surfacing can sometimes be fraught with danger. 

BY THOMAS NEWDICK AND TYLER ROGOWAY FEBRUARY 9, 2021

THE WAR ZONE

 


2021年2月10日水曜日

KC-46Aはレモン(見栄えはいいけど使えない)だ。空中給油任務は当面実施できないので別任務にあてる米空軍。一方で空自向け機体がロールアウトしているのだが....

 

  •  

KC-46 TOPSHOT

U.S. AIR FORCE / AIRMAN 1ST CLASS NILSA GARCIA

 

 

空軍はトラブル続きで正規空中給油任務に投入できない状態が続くKC-46Aペガサス給油機を「レモン」と呼ぶ。42機が納入済みで基地4箇所に配備済みの同機に別の活用方法を模索する。

 

今後も毎月2機のペースで納入が続くが、一部機材を「限定運用」へ投入する検討が進んでおり、中核任務の空中給油は当面想定していない。にもかかわらず、これでペガサスも支援任務を実施出来るようになる。一方で同機の完全作戦任務実施宣言は一番早くても2023年または2024年まで待つ必要がある。

 

「10年単位で見れば、現時点はレモンからレモネードを絞っているところ」と航空機動軍団司令ジャクリン・ヴァン・オヴォスト大将が報道陣に語った。昨日も米輸送軍団が同機のため「日常活動や戦闘実施が危険にさらされている」とまでコメントしている。

 

USTRANSCOM

被給油機から見たKC-46Aに問題を抱えた遠隔画像システムが機体中央部の給油装置前についているのがわかる。 

 

KC-46では問題が色々あるが、肝心の空中給油能力はまだ完全ではない。ボーイングが179機製造契約を空軍から交付され10年経過したが、発注までこぎついたのは94機というのが現状である。当初日程から遅れ、1号機を空軍が受領したのは2019年1月だった。

 

一方で空軍の試験部門は給油システムの問題を解決しようとしており、給油対象機材も現在は10機種になった。ヴァン・オヴォスト大将は数ヶ月以内で5機種が増えるとしている。

 

対象機材のひとつがF/A-18スーパーホーネットで海軍のブルーエンジェルズが昨年末の恒例の陸軍対海軍フットボール試合でウェストポイント上空を飛んだ際に空中給油を受けた。その他海軍機材にもペガサスが搭載するホーズ・アンド・ドローグ装備が効果を発揮している。

 

「限定運用能力」の検討が進んでいるとヴァン・オヴォスト大将が認めたが、想定任務の種類については発言がない。空軍はこれまでも遠隔画像システム(RVS)の改良が終わるまでKC-46Aを通常の給油任務に投入しないと表明している。RVSは機内のブーム操作員が給油対象機との接続作業に使うもので、改良作業はまだ完了していない。

 

RVSはKC-46Aの給油任務の中核といえる。これまでの給油機ではブーム操作員が機体後部から視認しつつ作業していたが、ペガサスでは操作員はコックピットにすわる。

 

ヴァン・オヴォスト大将はRVS改良作業が完了するのは2023年末と見ており、全機で作業を行い、取り扱い訓練を完了刷るまで時間がかかる。このためKC-46の真価が発揮されるまで日程がさらに遅れる。

 

こうして問題がある中で、KC-46を限定付きだが給油任務以外に活用する。

 

KC-46Aは空中給油以外に人員貨物の輸送も想定し、医療搬送任務も可能だ。ペガサスは高性能戦闘管理システム(ABMS)を搭載し指揮統制機材としてテストされている。今の所こうした任務はあくまでも評価用だが、通常任務となる可能性が出てきた。

 

U.S. AIR FORCE/STAFF SGT. DANIEL SNIDER

題22空中給油航空団のKC-46AがC-17グローブマスターにペルシア湾上空で初の給油任務を実行した。2019年11月。

 

こうしてKC-46を別任務に投入しても、既存の給油機材の負担は軽減されない。空軍はKC-135RとKC-10Aエクステンダーの退役を想定しており、KC-10の第一陣はすでに機体廃棄施設に移動している。

 

ヴァン・オヴォスト大将はRVS改良を急ぐというが、その他にも問題もある。最近発覚したのが補助動力の問題でこれは早く解決できそうだ。

 

またペガサスでは給油時にブームに従来機より強い力をかけないと接続がうまく行かない。その他深刻なカテゴリー1となっている問題もあり、空中給油任務の通常実施ができない。カテゴリー1問題には貨物の固定があり、これは解決済みだが、燃料系統のもれが大量に発生している。

 

主翼に搭載した給油ポッドを加え、KC-46は同時に三機に給油可能となるが、これも実現が遅れており、ボーイングは予定より三年遅れて最初の9基を納入しようとしている。

U.S. AIR FORCE/AIRMAN 1ST CLASS NILSA GARCIA

KC-46Aを救命搬送任務に投入するテストがアンドリュース共用基地で2020年7月に行われた。

 

KC-46では品質問題が残ったままだ。昨年3月に上院の軍事委員会が聴聞会を開き、ニューハンプシャー州軍航空隊への機体納入が電気系統の問題で止まっていることが明らかになった。ボーイングはこれまでも完成済み機体に異物混入がみつかったため、納品を停止したことがあった。

 

未解決問題へ取り組みが続く中で、空軍とボーイングは機体納入を続けることで合意し、同社は欠陥の解決をめざし、空軍は初期納入合計52機で問題解決まで15億ドル相当の支払いを停止する。遅延や問題解決のためボーイングの損失は50億ドルを超えており、当初契約規模を超えている。

 

限定つきの作戦能力獲得宣言が出ればKC-46で朗報となるが、本来の主任務たる空中給油ができないままでは民間企業に空中給油任務を委託する案が重みを増す。

 

KC-46初の輸出先の日本にも懸念が広がっており、同国は有償海外軍事援助(FMS)をつかって昨年10月に3号機4号機の購入オプションを行使したばかりだ。日本向け1号機は2021年中の納入が予定されている。イスラエルも米上院の販売承認を受けており、8機導入が期待される。イスラエルは使用中のボーイング707改装給油機部隊の老朽化で後継機種を模索している。

 

BOEING

日本向けKC-46A1号機がワシントン州エヴァレットでロールアウトした。

 

こうした中で空軍の既存給油機が奮闘している。古参兵KC-135RやKC-10Aを退役させれば空中給油能力に不足が発生し危険、と空軍が主張することから、KC-46が主任務を果たせなる状態にでないのがあらためて浮き彫りとなっている。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

Air Force Says KC-46 Is A “Lemon” That It's Trying To Make Lemonade Out Of

The Air Force is evaluating using the Pegasus for limited operational missions, but it’s still years away from providing its intended mission set.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 2, 2021