2017年8月19日土曜日

北朝鮮のインターネット利用状況を解明する


北朝鮮でインターネットを使うのはどんな人たちなのか、何に使っているのか。今回の報告書ではデータの層別に問題があるようですが、特権階級が自分たちの欲望に動かされてアクセスしていると想像するのは難くないですね。もちろんサイバー攻撃部隊は別で、ワナクライもその仕業ですが身代金搾取で国家歳入の一部にしようと何とも許せない所業です。

Social Media and Shopping: Report Provides Potential Insights on North Korean Online Behavior

北朝鮮のインターネット利用状況を解説した報告書でわかること

AUGUST 18, 2017
発表されたばかりの研究報告が北朝鮮のインターネット事情の内側を解明している。平均的な北朝鮮国民、労働党上層部及び軍部は一般が想像するようにインターネットと無縁の生活は送っていない。ただしアクセス回数やその範囲は把握できないという。基本データが入手できないためだ。北朝鮮のオンライン活動の実態が俗説と違うと説明しているだけにこれは残念なことでデータの裏付けがあれば北朝鮮に対する見方が変わるのはまちがいない。
報告書の要旨
  1. 7月に報告書を出したのはInsikt GroupでマサチューセッツのRecorded Futureの研究部門だ。同社はオンライン上の危険情報を機械学習を利用して企業に提供している。報告書の下になったのは北朝鮮の国外インターネット活動を集計した Team Cymru(コンピュータセキュリティ専門の非営利団体)でInsiktの「情報収集パートナー」だという。
  2. 報告書ではRecorded Futureの戦略危険開発部長で米情報機関で12年の経験を有するプリシラ・モリウチが北朝鮮ユーザーはインターネットでソーシャルサービスメディアで時間を使うことが多いと指摘。とくにフェイスブックをグーグルから見て、百度やインスタグラムに多数のアクセスがある。アリババ、アマゾン、テンセント、アップルが今年4月1日から7月6日の間の集計でソーシャルネットワーキング関係でトップのサイトだ。
  3. 報告書では4月1日を例に163.comのメールアカウントから中国語映像サイトYoukuへ移り、新華社、人民日報のニュースを閲覧するユーザーの動きを取り上げている。
  4. Team Cymru はデータ収集方法を明確に説明していないが、「データ提供出典各方面」と共同作業していると以前述べていた。また同社の業務利用者以外にデータ利用を禁じているが、報告書では北朝鮮のトラフィックの識別方法の詳細を述べており、インターネットアドレスは三種類のブロックに大別されるという。
  5. 最初のブロックが175.45.176.0から175.45.179.255のアドレス計1,024点で北朝鮮唯一のインターネットプロバイダーStar JVに割り当てられている。同国のウェブサイトはすべてこの中にあり、同国内に居住する外国人や旅行者向けインターネットサービスを提供するKoryolink 3Gも使っている。
  6. 二番目のブロックは210.52.109.0から210.52.109.255までのアドレス256点で中国のアドレスだが北朝鮮の国営通信プロバイダーにChina Netcomが提供している。これはStar JV発足前からの措置で15年前の北朝鮮国内ウェブサイトがこれを利用していた。
  7. グループ三番目が77.94.35.0 から77.94.35.255までのアドレス256点でSatNet向けだ。これはロシアの衛星インターネットプロバイダーで現在はレバノンで使用登録されている。以前は北朝鮮が使っていたがインターネットアドレス登録データベースではその内容と食い違っており、北朝鮮のアドレスとして使われていたのか、今も使われているのか不明だ。
  8. モリウチの感触ではSatNetのアドレスは北朝鮮が使っていたがSatNetアドレスとStar JVアドレスへのアクセスパターンが類似していることに着目しレバノンのウェブサイト用ではないと見る。ここでも基本データがないため裏付けはない。ただしモリウチは筆者にSatNetのトラフィックのうちおよそ4割のデータで中国のChina Netcomからのアクセスは1パーセントにすぎないと語ってくれた。残りは北朝鮮のIPアドレスからであり、報告書の所見を裏付けるものとなっている。
  9. モリウチはこの他にも北朝鮮からインド、マレーシア、ニュージーランド、ネパール、ケニア、モザンビークの各国向けに予想外のトラフィックがあることをつきとめた。アクセス数が通常より多く、特定の現地ニュース報道サイトや官公庁サイトに集中しているという。通常は現地居住者が主にアクセスする種類のサイトだ。.
  10. 調査対象となった活動の五分の一がインド関連であったのは驚くべき事実だ。報告書では北朝鮮から同国大学少なくとも七校に留学生がおり、インド国内の研究機関とも関係があるのではと推論している。
  11. 特徴的なのは5月17日でビットコイン関連のトラフィックが観察されている。4月から皆無だったが突然スパイク現象を示した。報告書では「ワナクライ」マルウェアによるコンピュータ攻撃が5月12日から15日にかけ続いたと指摘している。ワナクライはビットコインで支払いを求め北朝鮮のコンピュータ保安企業体の関連が言われている。
  12. また報告書ではVPN(仮想プライベートネットワーク)関連で西側企業少なくとも7社の利用があると指摘している。この利用にはクレジットカードが必要だが、北朝鮮が海外で手続きするのは不可能ではなく、ここでも背後に誰がいるのかという疑問が残る。
  13. 報告書では「あるVPNがiPadで利用されGmailアカウントのチェック、グーグルクラウドへのアクセス、フェイスブックやMSNアカウントもチェックし、成人向けコンテンツ閲覧に使われている。別のVPNやVPS(仮想プライベートサーバー)でMetasploit(セキュリティソフト)を作動させ、ビットコインで買い物をし、Twitterをチェックし、ヴィデオゲームを楽しみ、画像ストリーミングを視聴し、文書をDropboxに保存してからアマゾンを覗いている」と指摘。
要注意な点
  1. 今回明らかになった事項で要注意なのは何人が実際のユーザーでかつその正体が不明なことだ。報告書ではインターネット利用者を「限定的」とするが、平壌には常時数百名の外国人が居住しており、インターネットで海外サイトにつながることは多いはずだ。その場合VPNでフェイスブックやグーグルに入り163.comのメールアカウントをチェックすることは十分ありうる。
  2. モリウチは筆者に外国人居住者に違いないと思われるトラフィックも見つけたが、全体の中の少数に過ぎないと主張する。数量を把握するのは不可能であり、なぜなら報告書では数をとりあげておらずモリウチも実数を明らかにしていない。
  3. インドのトラフィックを例にあげると、インド向けの動きが増えた理由が平壌のインド大使館で退屈した外交官によるものなのか判別できない。また解析対象のデータ量も不明だし、アクセス対象のサイト数や平壌市内のインターネット利用者数の推計もわからない。
未解明部分
  1. 世界各地同様に北朝鮮でもフェイスブックが一番の人気サイトで、グーグル、百度他有名サイトにも相当の時間を費やしている。北朝鮮発のトラフィックが居住外国人や旅行者以外ならばわれわれと大差ない。
  2. 報告書では北朝鮮国内のインターネット事情の不透明な部分に考察を加えているが、観察された事象がすべて北朝鮮発と断言できない。
  3. 北朝鮮やインターネットに詳しい筋に報告書の件を話してみたが、全員同じ結論だった。数の点で不正確さが残る。多分外国人発信分のデータの方が多いのだろう。
  4. あるいは我々全員が北朝鮮のインターネット利用状況を誤解しているのかもしれない。情報がもっと必要で今回指摘されている事項には驚くべき内容が含まれているので精査が求められる。
  5. モリウチは利用データから得た結論に自信を持っている。アクセスがあったサイト、トラフィックのパターン、活動状況で筆者も正しいと思う。だとしてもデータをもっと解析して詳細面を把握し結論の裏付けを得たいと思うが。
  6. より詳しく知りたい向きはモリウチがRecorded Futureのポッドキャストに出演して詳しく説明しているので聞いてみてはどうか。

2017年8月18日金曜日

スペインが13年ぶりにテロ襲撃の標的になったのはなぜか


こんな無茶苦茶な理屈はないですね。これでは未来永劫に子孫に罪があることになり、某半島部の国民の言い分と同じです。イスラム世界ではISISはじめテロリストとは無縁と主張しながら自浄努力が見られないのはどうしたことでしょう。犠牲者のご冥福を祈りましょう。

Why Spain has become a target for terrorists スペインがテロ襲撃に狙われた理由

バルセロナを襲った木曜日のテロ攻撃でスペインは13年不在だったイスラム過激派の襲撃の洗礼を受けた。
13名死亡100名超が負傷したヴァン暴走は旅行者にも人気の高い歩行者が多数集まるラスランブラス地区で発生。身柄を拘束された二名とは別に逃走中の運転者を警察が捜索中。
昨年からスペイン公安当局は市民を巻き込むところだった襲撃事件少なくとも三件を未然に防いでいる。
  • 2016年11月、モロッコ人一名をマドリード近くで逮捕。「一匹狼」」型の襲撃を企んでいた。「切れ目なくインターネットでテロ行為をすると伝えていた」
  • 2016年12月、テロリストの疑いで一名をスペイン北部で逮捕したが、タンクローリーを使いニース事件6名458名負傷((86名458名負傷)の模倣を企んでいた。
  • 2017年5月、モロッコ人二名をマドリードで逮捕、タンクローリー襲撃を計画し、オンラインのテロリストネットワークの一部と判明。
スペインではイスラム原理主義者による襲撃は2004年3月が最後だった。同事件ではアルカイダ工作員がマドリードで通勤列車を爆破し191名を死亡させた。
その後スペインは公安警察や情報収集能力を増強しテロ活動やISIS関連ありとみられる千名を監視追跡している。
だがロンドン・タイムズが伝える情報分析専門家によればイスラム系住民の「統合が進んでいる」スペインはフランス事例と同様の規模の襲撃から免れていると見られていた。「フランスにあるような隔離地区がなく、イスラム系住民と統合が進んでおり、急進思想はさほど見られない」(同専門家)。
タイムズ記事ではスペインが聖戦主義の標的になったのは711年から1492年までイスラム圏であったことが大きいという。
ISISの宣伝機関はイスラム戦闘員にスペインが1212年のアルユカブの戦いでイスラム教徒60千名を虐殺した史実を思い出させ、スペイン人への復讐としてバルセロナのラスランブラスはじめ観光スポットを襲撃し爆発物やトラックで「スペインがイスラムに対して行った犯罪行為」のツケを払わせろと主張していた。
Read the original article on Business Insider Australia. Copyright 2017. Follow Business Insider Australia on Twitter.

温故知新 朝鮮戦争1.0での米軍空爆規模の恐ろしさ


今回開戦となればどんな空爆作戦になるのでしょうか。トマホークが切り込み部隊となりB-2が核ミサイル開発拠点をバンカーバスターで攻撃したり、通信網配電網をずたずたにするはずですが、都市攻撃までは想定しないのでは。その意味では1950年の再来にならず、前回の戦争が第二次大戦型の戦略爆撃の最後の実施になったのかもしれませんね。


How American Air Power Destroyed North Korea

米航空戦力は北朝鮮をここまで破壊した

The National Interest August 12, 2017


  1. 米朝間の緊張が高まる中、その根源となった朝鮮戦争の実相を見直す価値があるだろう。
  2. 戦闘の概況はよく知られている通りだ。金日成の軍が1950年6月韓国に侵攻して幕を開け、スターリンと毛沢東が背後についていた。北朝鮮軍は迅速に南方へ進軍したところ米軍が国連軍として介入をはじめ北朝鮮軍は38度線の北へ追いやられる。そこで中国の「志願軍」が大量に戦線に現れ米韓軍を38度線へ押し戻す。戦況は膠着状態になり1953年に休戦合意した。
  3. 一方で米空軍力による無慈悲な北朝鮮空爆作戦の実際は少なくとも米国内で知られていない。朝鮮戦争の戦史研究家ブルース・カミングスは「米軍が北を三年間にわたり絨毯爆撃し民間人の死傷など気にかけなかったことを米国で覚えている人は皆無に近い」という。
  4. 事実、エメット・オドンネル少将は当時の極東爆撃軍団を率い、B-29を空爆に投入したが、「北朝鮮の五大都市を灰燼に帰しその他戦略拠点18地点を完全破壊する」のが任務と述べていた。カーティス・ルメイ将軍は戦略空軍が「南北朝鮮の各都市を焼き払った」と自慢し、「三年間で...人口の2割を殺害した」と述べた。のちの国務長官ディーン・ラスクは当時トルーマン政権下で国務省で勤務し米軍の爆撃について「北朝鮮国内で動くものすべて、立っているレンガをことごとく」目標にしたと語っている。
  5. 投下された爆発物の総量は驚くべき規模だ。トム・オコナーはNewsweekで「北朝鮮へ635千トン投下しうちナパームが32,557トンだった」とする。第二次大戦に太平洋各地で投下した爆弾の総量が503千トンであり、それを上回る量が日本の三分の一の面積の北朝鮮に集中した。歴史家チャールズ・K・アームストロングがこう著したのは驚くに当たらない。「北朝鮮国内の破壊程度は第二次大戦時の日本より大規模と米空軍は推定した。大戦中は日本都市64か所が灰燼に帰しさらに原子爆弾で二都市が破壊されている」
  6. 北朝鮮の工業基盤が小規模のため戦略爆撃の標的探しが大変だった。アームストロングが指摘しているように「1952年秋には米軍機の攻撃対象がなくなった。都市、工業施設はすべて空襲されていた」というがこれは決して誇張ではない。平壌の75パーセント、元山の80パーセント、興南の85パーセント、沙里院の95パーセントが破壊されている。 .
  7. その後米軍および連合軍航空部隊は水力発電施設さらにダムを標的にした。各ダムは北朝鮮国内の治水75パーセントを管理し、農業特に米作で必要だ。1953年5月だけで米軍がダム五か所を破壊し、大規模洪水が発生した。同時に北朝鮮国民数百万人が飢餓の一歩手前になり、ソ連中国の大規模食糧援助に頼らざるを得なかった。空爆で大規模停電が発生し、鉄道網は95%が壊滅的被害を受けた。
  8. 米空軍公式戦史ではこの時期について「朝鮮戦争の最終年に米空軍力は米軍、国連軍の軍事目的の達成の中心的手段になっていた。灌漑用ダム二か所の破壊以上に共産主義者へ深刻な影響を与えたものはなかった。北朝鮮農業経済がここまで深刻な影響を受けたことはなかった」と記している。
  9. 外部研究者には空爆作戦が戦争の行方を左右したとは信じない向きがある。政治学者ロバート・ぺイプは北朝鮮・中国が1951年時点で勝利できなかった理由は部隊が空爆による被害を受けたためで戦略爆撃ではないと説明している。航空戦力の最大効果は敵補給路の遮断とくに鴨緑江付近の橋梁破壊で中国・ソ連の支援を止めたことと主張する向きが多いが、問題の橋梁は強固に防御され、当時の航空機の活躍は大きく成約され、航空作戦は限定的な成功しかおさめていない。
  10. 北朝鮮は戦争被害を韓国より早く修復している。韓国の方が被害は少なかったのだが。一方で空爆の影響はその後も残った。金一族がプロパガンダに使い、幼少期から米国への憎悪を植え込んでいる。ブルース・カミングスは「北朝鮮国民全員がこれを知っており、心に刻まれている」と解説している。■
Zachary Keck is the former managing editor of the National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.

2017年8月17日木曜日

米エアライン機材が緊急時に軍事輸送に供用される仕組み


(T1,T2共通記事) 朝鮮戦争2.0が湾岸戦争規模の全面戦となれば民間機利用も視野に入ります。米系エアラインが機材を使えなくなればその他国のエアラインが漁夫の利でシェアを伸ばすのでしょうか。いえ、そもそも西太平洋の有事となれば需要そのものが大幅に減退するはずですね。ところで日本では有事に自衛隊の空輸能力不足を補う手当はしてあるのでしょうか。韓国には5万名超の邦人がおり、エアライン機の利用はまずこの朝鮮半島有事の場合でしょうか。

This is the Pentagon's not-so-secret civilian 'ghost' aircraft fleet

これがペンタゴンの「幽霊」輸送機部隊だ
  • http://www.wearethemighty.com/articles/this-is-the-pentagons-not-so-secret-civilian-ghost-aircraft-fleet
Pan Am 747 used for military
CRAFが1986年に行った演習でパンナムのボーイング747が傷病兵輸送用に投入された。 US Air Force
  1. 第二次大戦時に米政府は民間航空機多数を徴用し人員貨物輸送に投入した。
  2. この制度は民間予備航空機部隊 Civil Reserve Air Fleet と呼ばれ現在民間旅客機・貨物機数百機が登録され、ジェットブルーUPSユナイテッドエアラインズなどが国防総省の求めに応じて随時提供することになっている。
  3. CRAFの正式発足は1951年12月のことで国防総省と商務省間の合意で民間機の軍用利用方法が整理され軍で輸送能力が不足する緊急事態、危機状況または戦争への投入に道が開いた。
  4. 必要とされればCRAF契約加入の民間エアライン、貨物航空各社は機材、乗員を米輸送軍団USTRANSCOMに提供し、兵員や貨物の輸送から傷病兵の搬送まで各種輸送ミッションに投入される。
  5. 現時点で全米の大手民間航空会社ほぼ全社がCRAFに加盟しており、USTRANSCOMは必要に応じ機材を利用できる。加盟企業には短距離専門エアラインから長距離路線運航エアラインまで含まれ貨物機は機内に手を加え装備人員輸送にあたる。
  6. FedExアメリカンエアラインズデルタエアラインズ等により運航中の長距離機のボーイング747,777、エアバスA330、マクダネルダグラスMD-11の相当数がされているがこうした機材はCRAFの基本方針によれば空軍のC-17グローブマスターIIIやC-5Mギャラクシーを補完する長距離輸送機能が期待される。
  7. 小型機のボーイング737やエアバスA320各機もUSTRANSCOMがCRAF機材に想定する。こうした機材は航続距離や輸送力が劣るので国内移動に投入される。
civilian Boeing 747 offloading troops in Saudi Arabia during Operation Desert Shield
CRAF制度で民間747がサウジアラビアに到着し砂漠の嵐作戦に参加する兵員が到着した。.US Air Force
  1. CRAFが発動されたのは第一次湾岸戦争が最後で当時は砂漠の嵐作戦で兵員装備多数を中東へ運んだ。
  2. パンナム、ユナイテッド、TWAの各社が大型機を提供し米本土からサウジアラビア等まで人員多数を輸送しイラク軍への攻撃に備えた。
  3. この事件以降米軍が自前輸送機で需要が賄えない事態は発生していない。だが、必要となれば軍は契約をもとにオムニエアインターナショナルはじめ民間チャーター専門会社を利用する。
  4. 民間エアライン各社はCRAF脱退はいつでも可能だが、そうしない企業が多いのは有事の際の軍要員輸送で契約民間会社に有利な契約条件が生まれるからだ。■

米本土ミサイル防衛に自信を見せるMDA(ミサイル防衛庁)



New MDA director: US prepared to defend against North Korean nuclear ICBM threat

MDA新長官:米国は北朝鮮核ICBM攻撃の防御の準備ができている



写真 米空軍中将サミュエル・グリーヴス(宇宙ミサイル装備センター長兼宇宙分野事業統括者)が第103回ロウズボウルの観衆に手を振る。カリフォーニア州パサデナ, Jan. 2, 2017.

HUNTSVILLE, Ala. — ミサイル防衛庁長官に就任したサミュエル・グリーヴス空軍中将は米国の本土防衛体制に自信をもっており、北朝鮮の核ICBMに対応する装備の準備態勢ができていると語った。
  1. 宇宙ミサイル防衛シンポジウムで質問を受けたグリーヴス中将は「現在配備中の弾道ミサイル防衛システムで脅威に十分対応できる」と述べた。
  2. ただしミサイル防衛庁は変化し続ける脅威に対応しようとしており、ICBM同時発射や対抗措置やおとりの放出に対抗すべく脅威の「緩和」に「しっかりと」取り組んでいると付け加えた。
  3. グリーヴス中将はデータの裏付けが十分にあってはじめて自信が持てるとし、「解析を完了し、各種システムを構築し、モデリングやシミュレーションを実施し、テストも厳しい条件で行い、総合的に行った。裏付けデータもある」と語った。
  4. 長官はDefense Newsに対しMDAは脅威の深化に対応する整備大日程表に従っていると述べた。
  5. 金正恩になってから北朝鮮はミサイル試射回数を急増しており、呼応して朝鮮半島での開戦の危機も大きくなってきた。
  6. 先月のICBM発射ではじめて射程1万キロ超の性能を有するとの解析結果が出た。サンディエゴはもちろんニューヨークにも届く可能性が出てきた。また核弾頭の小型化にも成功したとの報道がある。
  7. 一方で北朝鮮発表の論調は一層好戦的になっており、8月9日にはグアム核攻撃を公言。
  8. これに対抗して注目されるのが5月に北朝鮮やイランからのICBM攻撃を想定して実施された本土防衛システムの作動試験だ。
  9. このテストではじめて地上配備中間軌道防衛システムが供用されICBM級の目標を狙った。以前のテストでは中距離弾道ミサイルしか標的になっていなかった。
  10. MDAはTHAAD超高度広域防衛システムの先月のテストを成功と判定した。THAADは2013年からグアムに配備が始まり、韓国にも導入がはじまった。■

★★朝鮮戦争2.0開戦の兆候はこう読み取れ





開戦は近づいているのか遠ざかっているのか。今の段階は政治上のレトリック合戦ですが、以下指摘するような事象が認められれば開戦はまじかでしょう。北ICBM実験を迎撃する構想は面白いですね。事前警告の上実施すれば先制攻撃にならないでしょうが、失敗のリスクが怖いのも事実なのでしょう。

Korean War 2.0? The Signs To Watch

これが朝鮮戦争2.0の兆候だ

 By MARK CANCIANon August 15, 2017 at 1:45 PM

グアム島周囲にミサイル四本を打ち込むぞと脅かしをかけた北朝鮮の太っちょ指導者金正恩は今日になって一歩引き下がったようだ。北朝鮮通信社が以下すばらしいツイートをしている。「卓越した将軍様金正恩は米植民地グアムに執行猶予を海中生物の懸念を理由に与えることとしたがロサンジェルスの運命は未定のままだ」
LAは北の脅威にさらされたままのようなので以下戦略国際研究所のマーク・カンシアンによる優れた原稿を掲載し、開戦の兆しの読み取り方をお伝えすることとした。編集部
ランプ大統領と金正恩の言葉の応酬から開戦が近づいているとの観測が強まっている。
ただし戦争は可能性が低いようだ。在韓米軍はじめ太平洋各地の米軍は平時体制のままだからだが、本当に戦争が近づいてきたらどうやってわかるのだろうか。
情報機関は攻撃の兆候と警戒(I&W)を見逃さないと目を光らせている。機密情報に触れる資格がない私たちは開戦が近づく様子はどんな形のI&Wとしてあらわれるのか。以下は過去の米国における戦闘前準備から引き出した要注意事象のリストで、1991年の砂漠の嵐作戦、1999年のセルビア内戦、イラク侵攻(2003年)に加えOPLAN5027と呼ばれる朝鮮半島内戦闘構想で判明している事柄をまとめた。
いかなる紛争の前にも五種類の行動が先行する。最初が外交攻勢で北朝鮮対抗連携を形成する。政治的団結を示す声明文を出すことが米国内の支援とともに国際的に理解されるため必要だ。近年の軍事衝突ではいずれも何らかの形で軍事連合が成立しており、各国をつなぐ目に見える努力が米国には必要だ。
韓国国内で休暇を取り消され配置先に呼集される隊員が増えれば開戦はまじかだろう。海軍部隊が増強され、太平洋上の配備が延長されたり、あらたな派遣艦船が増える。
韓国内に暮らす米軍属20千名は国外退去が必要となる。米国は韓国に60年以上駐留する間に学校、売店ふくむ地域社会そのものを持ち込んでいる。これを閉鎖するのは目立つ。最後に北朝鮮の対応への準備態勢がある。このうちミサイル防衛の強化があり、ペイトリオットミサイルとTHAADが陸上で、海上では海軍が弾道ミサイル防衛艦の配置地点を変更するはずだ。また韓国民間防衛拠点の活動状況も目に入ってくるはずだ。
軍事衝突の種類でI&Wも変わる。
空戦: 理論上米韓連合軍は開戦と同時に北朝鮮の標的を空爆・ミサイル攻撃するはずだ。米軍は韓国に100機を待機させており、韓国空軍には戦闘爆撃機が500機以上あるので相当の戦力だが第五世代機は皆無だ。米軍は日本にトマホークミサイル運用可能な艦船を配備しており、ミサイル攻撃はシリアの例のように事前警告なしではじまるかもしれない。艦船は日本が攻撃対象にならないよう日本近海から離れた地点まで進出の必要がある。
しかしながらこの攻撃は繰り返し実施できないことが多い。備蓄に限度があることと一部標的は強固かつ隠蔽されたりミサイルでの破壊が困難だからだ。このため航空機による反復攻撃が必要となる。米軍はステルス機を開戦段階で投入しリスク最小限で敵防空網を撃破することが多い。そうなるとF-22が米本土から移動すればすぐわかるはずだし、海兵隊のF-35Bが揚陸強襲艦へ移動するのが開戦近しと分かる目安になる。
B-2爆撃機を朝鮮半島上空に飛ばす必要はないだろうが、平時はホワイトマン空軍基地(ミズーリ州)から長時間をかけているのでグアムまで前方配備され移動時間を短縮することはありうる。が、奇襲効果を上げるべく投入されるかもしれない。
核攻撃:米国が核兵器を投入するとしたら北朝鮮の使用後に限られるはずなのでその動静で開戦は占えない。米国が核兵器を使うとすれば無警告発射となるだろう。核兵器は奇襲攻撃を受け迅速投入する前提だからだ。ただし条件はロシア、中国が米国の核攻撃を自国に向けたものと誤解しないことだ。このため、ICBMを米本土から発射する可能性は少なく爆撃機を使うだろう。その場合米本土を発進させるはずで外部から兆候を知ることは困難だ。
ICBMの迎撃破壊:北朝鮮のICBMテスト発射を撃破する可能性を専門家が検討しているのは北朝鮮本土を攻撃せずに金正恩の核開発をとん挫させられる効果があるからだ。その場合に韓国内配備のTHAADを使う可能性は低い。韓国から攻撃を加えたと北がとらえる危険があるためだ。かわりに弾道ミサイル迎撃能力のあるイージス駆逐艦を使うだろう。米海軍の駆逐艦の半数がこれに該当する。駆逐艦は北朝鮮沿海を遊弋しICBM発射の瞬間を待つ。北朝鮮の行動を予期し護衛部隊をつける。(1968年に発生したUSSプエブロ捕獲事件はいまだに米海軍の悪夢であり、北朝鮮沿岸で単独行動は許されない。)国際公海上に位置するため米海軍は自由に艦船を進出させられるが、艦船数隻の行動や出港準備は通常と違うと受け止められるはずだ。
全面的侵攻あるいは防御: 全面戦となると50万名の米軍兵員が北朝鮮を攻撃することとなり事前準備が相当必要となり目に入ることとなる。その場合の行動の一部は以下の通りだ。
  • 空輸輸送機の活動が増える:C-17、C-5あわせ270機が遠距離空輸用にあるが韓国への配備用に普段使わない機材が現場に呼び戻される。
  • 事前集積物資の出荷:米軍は戦闘継続用の物資を海外各地の貯蔵施設や艦船に備蓄しており緊急時に迅速な供給を狙う。このうち韓国内の物資は多数が大邱の集積場にあり、到着部隊用に払い出しが忙しくなる。事前集積船はグアムに停泊することが多く、韓国へ向け出港するはずだ。
  • 予備役の呼集:ベトナム戦終結後の米陸軍は方針を変え第一線部隊を多数とし、支援部隊を予備役に回している。当時の陸軍参謀長エイブラムズ大将はこれを意図的に行い将来の戦闘で予備役隊員の平時の生活を中断する政治的に微妙な措置を大統領が確実に行えるようにしたのだろう。このため師団規模以上の作戦遂行となると陸軍は一部予備役も呼集することになり、大規模戦になれば数十万名が呼集されるかもしれない。
  • 筆者の考える先行事象はこれだ:戦争捕虜を扱う警務隊。捕虜対応を任務とする部隊が展開しても敵を怯えさせる効果はないが実際の戦闘開始に備えて必要な措置だ。米陸軍には警務旅団二個が予備役部隊として準備されている。第300および第333警務旅団だ。
結論:米軍事行動は始まるだろう。(北朝鮮の動きは予測不可能) そのため上記を参考に報道を追ってもらいたい。上記のI&Wのいずれかが目に入れば、緊張して注意すべきだ。そうでなければ安心してよい。■


2017年8月16日水曜日

米海兵隊、陸上自衛隊合同ノーザンヴァイパー演習始まる



U.S. Marines, Japan Self-Defense Force Troops Begin New Ground Exercise Series Northern Viper 

米海兵隊、陸上自衛隊が新規地上戦演習ノーザンヴァイパーを開始

 By: Ben Werner
August 14, 2017 7:15 PM

米海兵隊第三軽装甲偵察大隊が実弾演習のため北海道大演習地に入る。.SAug. 14, 2017, in Hokudaien, Japan, during Northern Viper 2017. US Marine Corps Photo

  1. 米海兵隊2千名、陸上自衛隊1.5千名が参加しインドアジア太平洋を想定した新演習ノーザンバイパー2017が始まった。
  2. 三沢航空基地で米海兵隊が自衛隊と平和維持活動、人道援助、災害救援活動など多彩なミッションをこなす。会期は8月10日開始で8月28日に終了する。
  3. 「第一海兵航空団、第三海兵師団と自衛隊が共同訓練する」と海兵大佐ジェイムズ・F・ハープ(海兵隊航空集団36指揮官)が声明を発表。「今回の演習で戦略面で日本との関係を構築する」
  4. 海兵第一航空団は北海道で各種訓練を行う。強襲支援、航空攻撃、負傷者搬送を想定した訓練を実施すると海兵隊は発表。
  5. 「今回の演習が極めて重要なのは日本側と大規模訓練を行う機会はそうないからだ」とハープ大佐は述べる。「今回のような訓練は今後も続けて敵から地域を守る兵力投射を効果的に実施できるようにしたい」
  6. 今回の演習は日本北方で行われるため沖縄では不可能な演習環境が利用できる。「北海道演習地を使い沖縄では不可能な演習を行います」と第36海兵航空集団付の上級兵曹マーヴィン・M・マグケイルが語る。「実弾発射できる演習地が使えます」■

F-35を防空センサー機材として注目する米陸軍


ついにF-35はセンサー機材になってしまうのでしょうか。米海軍は最初からそのつもりですよね。面白いのは米陸軍が注目している点で、まさか陸軍が同機を保有することはないと思いますが、今後の動向に目が離せませんね。

U.S. Army Eyes F-35 As Missile Defense Sensor

米陸軍がF-35をミサイル防衛用センサーとして注目している


Aerospace Daily & Defense ReportAug 8, 2017James Drew | Aerospace Daily & Defense Report


Lockheed Martin
HUNTSVILLE, Alabama—米陸軍がロッキード・マーティンF-35ライトニングIIに関心を深めるねらいは対地攻撃、近接航空支援、ドッグファイトのいずれでもない。
  1. 陸軍はF-35の空中センサー機能を統合防空ミサイル防衛の要にしようというのだ。
  2. 陸軍はF-35で米海軍のノースロップ・グラマンE-2D高性能ホークアイが米海軍と同様に空を飛ぶ脅威の早期探知追尾を期待する。目標情報を陸上の迎撃部隊に提供しペイトリオットミサイルで地上レーダーが探知するより早く撃破する構想だ。
  3. 米陸軍宇宙ミサイル防衛司令部/陸軍戦略司令部(USASMDC/ARSTRAT) の関係者によれば秘密会合でF-35部隊で防空ミサイル防衛ミッションの支援が可能か検討したという。
  4. USASMDC/ARSTRATの将来戦闘センター長リチャード・デ・ファッタによれば共用打撃戦闘機を弾道ミサイル・巡航ミサイルへの対抗策にどう活用するか検討中だという。
  5. 検討にはF-35事業推進室や米空軍など同機の運用側も加わっている。
  6. 米陸軍がF-35に関心を示したのは2016年に海軍が行った実証がきっかけで海兵隊F-35Bがレイセオンのスタンダードミサイル-6の誘導に成功した。テストはホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ州)で行われている。
  7. ロッキードによれば標的の質量中心に初回で命中した。テストではF-35とイージス戦闘システムというロッキードの重要装備二種類が使われた。
  8. F-35は標的情報をアクティブ電子スキャンアレイレーダーで得られ、イージスの「砂漠艦船」施設へデータ転送を安全に行った。妨害の可能性が低い多機能高性能データリンク(MADL)を使った。
  9. 海軍の最終目標はF-35やほかの機材の搭載センサーを次世代ネットワークである海軍統合防空火器管制システムに統合することにある。E-2Dと同じ機能はないが低視認性のF-35は飛行速度が速く残存性が高くなる。またステルスにより敵にそれだけ接近することも可能だ。
  10. これまで陸軍は係留気球としてJLensなどで空中の敵探知追尾をめざしてきたが、気球、飛行船、風船は戦闘機と同じ対応は無理であり運航費用が低いものの機能が異なる。■

2017年8月15日火曜日

北朝鮮の化学兵器は現実の脅威、しかも戦闘投入の可能性が高い


核兵器は使えない兵器になるとしても化学兵器は先手必勝で投入の敷居が低いようです。日本もこの脅威に立たされているのですね。北朝鮮が化学兵器放棄の交渉に応じるとは思えないのですが、筋道としては当然なのかもしれません。確かに核兵器には関心が集まっても北朝鮮の化学兵器には不思議なほど世間は無知ですね。ここまでのさばらせてしまった責任を誰がとるのか。これから考えるべき課題ですよね。

 


Everything You Need to Know: North Korea's Chemical Weapons Are No Joke
北朝鮮の化学兵器備蓄は本当の脅威だ

August 10, 2017

  1. ここ数年は北朝鮮化学兵器は核兵器の陰に隠れている観がある。ただし危険がなくなったわけではない。朝鮮人民軍(KPA)は化学兵器投入は勝利の条件と強く認識している。北朝鮮が化学兵器を使用するのはほぼ確実であり、騒擾鎮圧から致死性神経ガスまで多様な使用をするだろう。
  2. 化学兵器は戦線で局地的な戦術優勢を生み、敵の航空兵力優位性を中和する効果を生む。北朝鮮が大量保有するミサイルや火砲で化学兵器を戦線をはるか超えた地点に発射できる。韓国にむけ非武装ラインから釜山まで広範囲に化学兵器を打ち込むだろう。
  3. KPAには運搬手段が多数あり開戦となればすべての制圧は不可能だろう。
北朝鮮は化学兵器をどう使うのか
  1. 北朝鮮は大量破壊兵器の分類を説明している。核兵器は戦略抑止力として金王朝の存続のためという位置づけだ。核兵器を有事に投入するシナリオは北にはない。使用すれば韓国、米国が北朝鮮体制を転覆する動きにでるためだ。
  2. その反面、化学兵器は作戦投入を想定している。北朝鮮軍は化学兵器環境での作戦を日常から訓練しており、防護装備や探知機を備えている。一部がシリアに送られている。
  3. 化学兵器は各種使うはずだが、主目標は敵防衛体制の制圧でKPAが米韓軍の突破を狙う。化学防護装備を身に着けると兵員の動きは制約され化学攻撃の効果を下げようと防衛体制は分散される。
  4. 戦場で何が起こってもおかしくなく、化学兵器の場合は特に予測困難だが北朝鮮の投入開戦直後のはずだ。戦況が不透明になれば化学兵器の投入効果は減り、逆効果を生むかもしれないからだ。
どんな化学兵器を使うのか
  1. 化学兵器で北朝鮮には選択が多数ある。また任務に応じ選択し一時的なマヒから死亡まで調整可能だ。
  2. 韓国国防省の2012年推計では北朝鮮の化学兵器備蓄は2,500トンから5,000トンの間で年間生産量は平時に4,500トンで戦時には12,000トンに上る。
  3. 北朝鮮の化学兵器は騒擾鎮圧、呼吸停止、出血、水泡、神経作用と用途別に分類している。このうち暴動鎮圧用にアダムサイト(DM)、CN、CSの各ガスや催涙ガスで群衆を解散させるが通常は生命の危険は発生しない。
  4. また呼吸器系に作用するガスも北朝鮮は保有していると思われる。ガスに短時間触れただけなら入院ですむが長く触れると死に至る。KPAは塩素ガス、ホスゲンガス双方を備蓄している。
  5. 血液に悪作用を起こすシアン化水素や塩化シアンも準備している。
  6. その他マスタードガスは皮膚を刺激し眼球や鼻腔内に粘液を分泌させる。
  7. さらに致死性の高い神経ガスがあり、神経系統の機能を損なうものとしてサリン、ソマン、タブン、VM、VXの各化学品を貯蔵している。
運搬手段
  1. 北朝鮮には多様な化学兵器運搬手段があり、長距離ミサイルから決死隊まで選べる。平壌の攻撃範囲は韓国にとどまらず中露国境まで広がる。
  2. ここで問題になるのが距離だ。朝鮮半島は短く中国国境から韓国南端までは500マイル未満しかない。平壌から非武装地帯までが100マイル、ソウルまではわずか120マイルしかない。
  3. ロケットやミサイルで北朝鮮は遠距離まで化学兵器を投入できる。米国防総省は2014年の推計では短距離ミサイル発射装置は100基未満とし、トクサ/KN-02ヴァイパー(ロシアSS-21スカラブ派生型)が射程75マイル、スカッドが最大185マイルから625マイルとする。ともに国境付近に配備されている。
  4. またノドンミサイルの発射台が50基ほどあり、スカッドをもとに開発したノドンは800マイル飛翔し、韓国や日本を北朝鮮内陸部から狙う。
  5. 砲兵隊が圧倒的に多く、多連装ロケット弾発射機5,100門、その他火砲が4,400門ある。ロケットでは122ミリ以上、火砲では152ミリ以上あると化学砲弾を運用できる。北朝鮮砲兵隊の多くは化学攻撃の能力がある。
  6. 北朝鮮人民空軍も化学攻撃能力があるが、機材が老朽化しており、韓国防空網の突破はほぼ不可能とみられる。通常戦で出動を求められることが多いだろう。とはいえSu-7BMK「フィッター」18機とSu-25「フロッグフット」32機に化学攻撃弾を搭載するだろう。
  7. 大規模な北朝鮮特殊部隊は確実に化学兵器を運用するはずだ。敵潜入訓練を受けており化学兵器投入後の混乱に乗じるだろう。
  8. 北朝鮮は化学兵器を隠匿するだろう。化学剤は潜水艦や無人機でも運び、地下トンネルも使い化学攻撃を韓国国内で展開するかもしれない。
どこが標的か
  1. 北朝鮮の狙いはハイテク兵器を運用する他国軍の動きを化学兵器で鈍らせることだ。なかでも韓国軍がまず標的になる。地上攻勢の突破口を開きソウルさらにその先への進軍をめざすはずだ。
  2. 化学攻撃の標的には空軍基地が選ばれるはずで基地機能を奪い、米韓軍の空軍力の優位性を奪おうとするはずだ。大邱航空基地は韓国空軍F-15K戦闘爆撃機の本拠地であり、米空軍はオサン、クンサン両基地を多用するがともに北朝鮮ミサイルの標的になる。
  3. 米増援部隊が到着する釜山など韓国の港湾各地も攻撃の標的になる。韓国軍予備役の拠点も化学攻撃を受ければ人員増派が困難になる。
  4. 北朝鮮特殊部隊は民間人相手にも化学兵器を使うはずだ。政治家を襲撃し、インフラ等価値が高い民間標的を狙えば社会はパニックになり政府への信頼も揺らぐ。1995年の東京サリンガス襲撃事件と似た事件が発生すれば、民間の士気が下がり社会が混乱する。パニックになった社会で深刻な問題が発生する。民間人が道路にあふれ脱出しようとするはずだ。
  5. さらに韓国国外の米軍施設も化学攻撃を受けるだろう。嘉手納空軍基地、三沢空軍基地、横田空軍基地が朝鮮半島の航空作戦の本拠地となるが(攻撃兵器を保有していないので日本攻撃で心配する要素は皆無に近い)化学攻撃の標的になる。さらに横須賀、厚木、佐世保に駐留する米海軍も標的となり、グアムの潜水艦基地、爆撃機基地も北朝鮮の長距離ミサイルの射程内に入っている。
結論
  1. 北朝鮮が化学兵器を投入する可能性は本当にあるのだろうか。北朝鮮通常兵力の敗色が濃くなればガス使用を必要と感じるだろう。KPAには戦場での勝利を確実にする手段は少なく、化学兵器を投入しても一気に戦況は好転しない。
  2. 化学兵器を投入すれば米韓両軍の「大量報復攻撃」が即座に実施される。米韓両国は核兵器以外の投入可能なすべての手段でKPA侵攻部隊の動きを封じようとするはずだ。北朝鮮の視点から見れば核兵器がでてこないのであれば化学兵器投入を政治的に恐れる必要はなくなる。
  3. シリアでの化学兵器使用に西側世界がしっかり対応しなかったことで「レッドライン」やガス使用への対応は空虚であると判明してしまった。シリア国民へのガス攻撃と米軍隊員へのガス攻撃では大きな違いがあるが化学兵器使用のタブーが消えていることは明らかだ。
  4. 北朝鮮の化学攻撃の脅威は現実であり、戦時に投入の可能性は高い。開戦となれば米韓連合軍は北朝鮮の指揮命令系統機能を低下させながら攻勢をかけないと化学兵器の影響を下げられない。北朝鮮軍令部が正しい情報を受け取れなければ命令を出せず化学攻撃の実施が困難になる。国連軍が迅速に攻勢をかければ鈍足の砲兵ミサイル部隊を捕捉できるはずだ。
  5. 北朝鮮の化学攻撃の脅威を緩和する最善の方法は時間をかけて化学兵器放棄を交渉することだろう。北朝鮮の化学兵器の放棄を説得できれば朝鮮半島や海外で被害が減るはずだ。このため米オバマ政権は全く関心を払ってこなかった北朝鮮への対話が必要で。世界が北朝鮮に化学兵器放棄を望むのであれば対話機会を作る必要がある。
Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
This first appeared in 2015 and is being reprinted due to reader interest.
Image: Reuters.