2022年4月13日水曜日

動き出したB-52エンジン換装事業。76機全機の作業完了は2035年ごろか。B-52は2050年まで供用される。



2050年代までB-52を維持する性能改修パッケージの目玉は、

新しいエンジンだ。


 

空軍がB-52エンジン8基の交換構想を始め40年、作業がついに実現する。エンジン換装で、ストラトフォートレス運用を20〜30年維持する。

 B-52商業エンジン交換プログラム(CERP)の契約は昨年秋に締結され、プログラムは迅速に進められている。新しいF130エンジン2基が製造され、開発と試験が計画通り進めば、最初の再エンジン搭載B-52は約5年後に運用開始となる。  

 空軍爆撃機プログラム主幹のジョン・P・ニューベリー准将Brig. Gen. John P. Newberryは、「2030年代に向けて、B-52の姿を決定付ける要素がすべて整った」と述べた。ニューベリー准将は、性能改修の内容として「新しいエンジン、新しいレーダー、超高周波および超低周波通信の改良、データリンクの更新、暗号の改良、およびいくつかの小さな取り組み」が含まれると述べている。 

 B-52はまた、米空軍初の極超音速ミサイルAGM-183 Air-launched Rapid Response Weapon(ARRW)の最初の搭載機となり、核兵器AGM-181 Long-Range Standoff(LRSO)ミサイルでも唯一の運用機になる。

 F130は、ロールス・ロイスの商用エンジンBR725の軍用化版で、空軍はC-37VIP輸送機やE-11 BACN(戦場空中通信端末)で供用している。ロールスはGEエイビエーションプラット&ホイットニーを抑え2021年9月に5億90万ドルの初期契約を獲得し、B-52搭載用のF130の開発・試験を開始した。ロールスは76機のB-52用にF130を650基提供する。F130エンジンは、プラット&ホイットニーTF33を置き換える。プログラム全体の評価額は約26億ドル。

 ロールスはエンジンを空軍に直接提供し、B-52の製造元であるボーイングが、新エンジンが既存または新規の機器の機能に悪影響を与えない形で、機体にエンジンを搭載する。アップグレードは、補修施設への回航の際に実施される。

 1月、ボーイングはアリゾナ州のデービスモンサン空軍基地の「機体の墓場」から退役したB-52機体をオクラホマシティの航空物流センターにトラックで運び、アップグレードのデジタル設計を検証している。

 オクラホマシティ航空物流センターの「ハイベイ」は、「このプログラムとRMP(レーダー近代化プログラム)のため特別に建設したボーイングの施設です」と、同社の爆撃機担当シニアディレクター、ジェニファー・ウォンは語った。「目的は、実物大のレプリカ、航空機のモックアップををエンジニアリングに利用することです」。

 また、B-52に「触れたり」「這い回ったり」した経験のないエンジニアへの実地体験も含まれ。「ハードウェアに触れることは、非常に大きな価値をもたらす」と、ウォン付け加えた。

 モックアップは、「CERPプログラムの一部である油圧部品の課題を解決する」ために、リスク低減にも使用されるとウォンは指摘している。

 F130は、燃費を約30%向上させ、メンテナンス時間を大幅短縮し、TF33の「ベンダー消失」というサプライチェーン問題を解消できる。燃料効率効果で、アップグレード費用は回収できる。新エンジンで推力や速度の変更はない。

 ロールス・ロイスのB-52プログラム・ディレクター、スコット・エイムズは、「重要なのはスケジュールを守ること」と述べている。最初の重要マイルストーンとなる予備設計審査は今年夏に予定され、地上試験は今年中に行われる。

 ボーイングはF130用の新しいエンジン・ナセルを設計し、エンジンのアップグレードが、横風時の挙動など、B-52の性能に意図しない影響がないことを確認すると、エイムズは述べている。

 現在と同様に、エンジン8基はナセル4つに搭載される。米空軍は大型商用エンジン4基案も検討したが、翼やコックピットなど大幅再設計を避け、リスクと遅延を最小にするため8基に固執した。   

 ロールス・ロイスは、インディアナポリス工場にB-52専用の6億ドルの生産施設を完成させ、雇用を開始している。

 試験エンジン2基は、ロールス・ロイスが屋外ジェットエンジン試験施設を持つ、ミシシッピ州のNASAジョン・C・ステニス宇宙センターで評価される。エイムズは「我々はエンジンをプロトタイプのナセル構成で運転し、操作性と横風効果をテストする」という。

 エイムズによると、次の大きなマイルストーンとなる重要設計審査は、2023年に行われる。それまでに、ボーイングのナセルを装着したF130と装着していないF130の物理テストにより、性能の新データが得られ、ソフトウェアモデルの予測値を更新する。データは、ロールスがボーイングと共同開発する制御システムに反映される。

 ボーイングとロールスはB-52主翼のデジタルモデルを共有し、同じベースラインで作業を行える。


「ボーンヤード」から引き出されたB-52の機体がオクラホマのティンカー空軍基地に移送され、ボーイング技術陣が新型エンジン含む装備の装着を試す。April McDonald/USAF


 デジタル設計と「絶え間ない統合会議」によって、部品同士が干渉せず、最終的な構成の維持が容易だと確認された。エイムズは「ステニスでは、2基のエンジンポッドとナセルをテストスタンドに取り付け、各種の出力設定、気象条件で運転し、エンジンの作動状況を把握するとともに、制御システムへのフィードバックも行う」と述べている。

 ボーイングは、コックピットとエンジンをつなぐ配線や油圧を担当する。

 ボーイングは、2024年に最初の2機のB-52HをF130エンジンで改造し、サンアントニオの改造施設で作業を行う。最初の8機は、カリフォルニア州エドワーズ空軍基地のB-52試験部隊に加わる。

 エンジン交換作業には「物理的な配線、油圧、出力更、冷却の変更」が含まれるとウォンは述べている。 

 制御装置は「機械式とデジタル式のハイブリッドスロットルシステム」になる。コックピットで機体を操作すると、デジタルとワイヤーが混在することになる。

 エンジンのテストに、新型レーダーのテストに、新型ARRWとLRSOミサイルのテストに各2機を割り当てる。

 ニューベリー准将によると、飛行試験は2025年から2026年にかけて行われる。飛行の安全性を実証後に、1機に新型レーダーを搭載し、両者の機能に関するデータ収集を開始する。

 その後、アップグレードを1つずつ追加する予定で、相互依存関係を考慮する。

 ニューベリー准将によれば、「我々は即応能力と一定数の航空機を運用することに留意しなければならないので、あまり長く時間をかけていられない」。 

 低率初期生産とマイルストーンC、つまり本格生産の決定がいつになるかを言うのは時期尚早とニューベリー准将は認めた。これらの決定で、改修作業のスピードが決まる。しかし、年10機から11機のペースとなると、76機すべての完成に2035年頃までかかることになる。

 構造的には、B-52は素晴らしい状態にある。60年前の爆撃機ながら、「素晴らしい整備計画があり、素材は陳腐化していない」(ニューベリー准将)。滑走路で長年にわたり待機していても、機体は摩耗していない。

 ボーイングは「機体構造に非常に自信を持っている」とウォンは言う。B-52は「構造的に余裕を持たせて」設計されている。

 ニューベリーは、B-52のCERPは、オールデジタル・アプローチによる取得を加速するための先駆けであったが、このプログラムは、今年中に標準的な技術・製造開発(EMD)に転換されると述べた。空軍は多くのお役所仕事を省いた。結局、このアプローチでスケジュールが圧縮され、「およそ3年」短縮できたという。

 初期契約では、エンジン24基の開発と生産が行われる。そのうち4基は地上試験用、20基は試験機と予備機用、とエイムズは言っている。この試験用エンジンが最終的にB-52の機体で使用されるエンジンに加わるかは、まだ明らかではない。最初のエンジンは計器類が相当搭載されるので、運用上で取り外すのはコスト的に不利になるかもしれない。

 生産契約は、EMD終了時になるだろうと、エイムズは言う。しかし、その前に、「生産率準備(PRP)という大きなマイルストーンがぶら下がっている」。PRRマイルストーンは、全サプライヤーと材料が生産のサポートで準備ができていると証明するものだ。

 整備要員用のシミュレーターやトレーニング機器については、「まだ早い」とエイムズは報告しているが、「拡張現実と仮想現実のツールを使い、空軍に提供可能なトレーニングパッケージのデモを行った」という。

 ロールス・ロイスは、「他のプログラムを活用し」、USAFに「メンテナンス、サポート、トレーニング用の素晴らしいソリューション」を提供する。2026年までに、同プログラムの生産と配備の姿が「もっと明確になるで」という。

 アップグレードされたB-52Hに新しい呼称B-52Jが浮上しているが、制式名称を論じるのは「時期尚早」で、「将来の話題」だとエイムズは言う。

 「呼称は、運用と訓練に関係する。飛行方法や使用方法に大きな違いがある場合、乗務員は十分に認識する必要がある」ため、呼称が重要になるのだという。

  ニューベリー准将は、B-52試作機の初飛行から4月で70周年を迎えたことに触れ、「B-52が2050年まで飛び続けるよう願う」とし、「B-52の歴史で最大の変更点」と述べ、長寿こそ同機の設計と価値の証だと指摘している。■


New Power for the B-52 - Air Force Magazine

By John A. Tirpak

March 23, 2022


2022年4月12日火曜日

ウクライナ関係のニュース:ドイツがレオパルド戦車を(イタリア経由で)で供与か、米国はウクライナ軍を国内で訓練、マウリポル包囲戦の行方など


 

A German Leopard 1A5 main battle tank. Germany is currently considering approving the transfer of 50 Leopard 1 tanks to Ukraine.

RAINER LIPPERT VIA WIKIMEDIA

 

 

イツの防衛関連企業ラインメタルのトップは、ウクライナ当局が承認すれば、6週間以内に冷戦時代のレオパルド1主力戦車の送付を開始できると述べている。発言は、ドイツ政府に移送を許可するよう圧力をかけている。オラフ・ショルツ首相は、自党や連立政権内でウクライナへの戦車供与を支持する声が高まっているが、計画を保留しているとされる。

 

 

 

 ドイツがレオパルド1の搬送を許可すれば、ウクライナに戦車や装甲車を送った、あるいは送る計画を発表した他国にドイツが加わることになる。ウクライナが同戦車の操作方法や整備をどう訓練するのか、必要なサプライチェーンをどう確立するのかは不明である。いずれにせよ、これは最近ウクライナの国際的パートナーが地対空ミサイルや対艦ミサイル、火砲など、より高性能の兵器を同国に導入する動きが広がっている一部である。

 ロシア軍はウクライナ東部のドンバス地域とその周辺を確保するため、攻勢を強める準備をしているようだ。週末には、商業衛星画像プロバイダーのマクサール・テクノロジーズが、ウクライナの都市ハリキウの東約8マイルの道路上を移動するロシアの装甲車両、野砲、トラックの画像を公開した。車列は、合計数百台の車両で、前線に向かい南下しているように見える。

 

以下の最新ニュースをお伝えする。

 ドイツ新聞ハンデルスブラットHandelsblattがラインメタルCEOであるアルミン・パッペルジャーArmin Pappergerのコメントとして、ウクライナにレオパルド150両を譲渡する可能性を伝えた。パッペルジャーによると、最初の戦車は譲渡の承認後6週間以内にウクライナに移動が可能で、ウクライナ軍が戦車全車両を受け取るのは3ヶ月後になる。

 パッペルジャーは、譲渡が承認されれば、戦車はラインメタルのイタリア子会社ラインメタルイタリア経由で送られると述べ、イタリア軍で供用されていた車両を示唆した。イタリア軍は2008年までレオパルド1を運用していた。ベルリン政府は、ドイツ製兵器システムを外国から第3国へ再移転させるのを厳しく規制している。ドイツのクリスティーネ・ランブレヒト国防相も週末に、ウクライナに直接譲渡できる装備は「限界に達している」と発言していた。

 この計画が実際にいつ動き出すかは不明。ショルツ首相は、戦車やドイツ製歩兵戦闘車「マーダー」(台数不明)のウクライナ供与について、さまざまな理由で最終決定を先延ばしにしているとされる。

 レオパルド1が旧イタリア製であっても、第三国経由の譲渡を認めれば、ロシア当局の反発のみならず、ドイツ国内の政治的懸念も和らぐかもしれない。ドイツ政府は、ロシア産天然ガスからの脱却をめざしているが、現状では天然ガスが重要なエナジー源であることに変わりはない。ドイツはチェコ共和国から旧東ドイツ軍BMP-1歩兵車両をアップグレードするなど、ウクライナへの第三者提供を承認している。

 また、ウクライナ軍がレオパルド1を受領した後、実際に運用できるのかとの懸念もある。ウクライナ軍には同戦車の運用・整備経験がなく、部品や105mm主砲用弾薬のサプライチェーンも未確立だ。

 ラインメタルのパッペルジャーはハンデルスブラット紙で、スキルを有するウクライナ人なら、数日でレオパルド1の操作訓練を受けられると語った。「レオパルド1では、集中的な訓練が必要だ。しかし、ウクライナ人が戦車を欲しがるのであれば、方法は見つかるはずだ」と、現在の連立政権の一翼を担うドイツの自由民主党の防衛政策スポークスマンであるマーカス・フェーバーMarcus Faberが、同紙に語っている。

 

 ウクライナ軍が最終的にレオパルド1戦車を受け取るかはともかく、この2週間で他国から今までより実質的な軍事支援計画が出てきた。今週末には、英国政府がウクライナへの対艦ミサイル供与で詳細を詰めていることが明らかになったが、具体的な兵器システムは特定されていない。英国当局がハープーン対艦巡航ミサイルの輸送を計画しているという噂や、すでに輸送したとの噂があるが、裏付けは何もない。

 興味深いことに、英国製マートレットMartletミサイルがウクライナで地対空ミサイルとして使用されているように見えるビデオクリップが公開された。英国当局は、これまでウクライナに肩撃ち式の地対空ミサイルのスターストリークStarstreakの供与を確認していたが、マートレットの供与は公式発表されていない。マートレットは、スターストリークと同じ手持ち式や発射台から発射でき、構成によっては、海洋や地上の目標にも使用できる。

 米軍は現在、一般に「自爆ドローン」とも呼ばれるスイッチブレードSwitchblade滞空待機弾の使用について、ウクライナ人要員向け訓練方法を模索している。4週間前、アメリカ政府がウクライナ軍に同兵器100基の供給を始めたことが初めて明らかになった。週末には、米国国内でウクライナ軍に同無人機の使い方を訓練したと米国防総省が明らかにした。ウクライナ軍隊員は、ミシシッピ州ビロクシの海軍小型船舶教習所(NAVSCIATTS)で行われた別の訓練コースに参加するため、侵攻開始前から米国に滞在していた。昨日、ウクライナ帰国を前に、オースティン米国防長官が隊員と談話した。

 米国防総省高官は本日、スロバキアが先週ウクライナに譲渡した長距離地対空ミサイルS-300が破壊されたとする証拠はない、と述べた。週末にロシアが南部の都市ドニプロの空港を攻撃した際、破壊された標的の中にS-300が含まれていたとの報告があった。ウクライナの地元当局者は、空港が事実上破壊されたと述べていた。

 ウクライナ当局はここ数週間、戦車や装甲車、その他の高性能兵器システムの追加供与を繰り返し要請している。これは、ロシア軍の主要な作戦の焦点が、同国の東部と南東部の地域に移っているためだ。マクサール・テクノロジーが週末公開した衛星画像では、ドンバスの前線に向かい南下する、ロシア軍の大規模な車列が写っており、新たな大規模攻撃の計画を示している。

 英国国防省が発表した紛争に関する最新評価では、ロシア軍はドンバスのウクライナ支配地域を砲撃し続けているが、これまでのところ攻撃は撃退されているとある。英国政府関係者はまた、ロシア軍がマリウポルを完全確保するために進行中の戦いで、論争の的になっている白リン焼夷弾が使用される可能性を警告している。アゾフ海に面した南東部の戦略的な港湾都市マリウポルは、1カ月以上にわたり包囲されているが、ウクライナ防衛隊は持ちこたえている。この地域を完全確保するのは、クリミア半島への陸橋を確保するロシアの大きな目標のための重要な要素だ。

 米国防省高官は、ドンバスでロシアが新たな攻勢を開始する兆候はまだないが、ウクライナ北部の地域から撤退した部隊がその方向に動いているように見えると述べている。また、ロシア軍がマリウポルで使っている壊滅的な戦術を他のウクライナの都市にも使うことが懸念されるとも述べた。

 また、これまでの戦闘の結果、ロシアの大隊戦術群の一部が完全に戦闘不能に陥ってたとの指摘もある。

 

 ウクライナ東部で激戦が続いているのは確かだ。同地域からは市民数千人が避難している。ウクライナ当局によると、クラマトルスク市から約16万人が避難している。先週、避難拠点となっていた同市の鉄道駅がロシアのミサイル攻撃を受け、子供5人含む少なくとも57人が死亡、さらに114人が負傷した。

 米軍によると、ロシア軍は侵攻開始以来、ウクライナに弾道ミサイルと巡航ミサイル1500発以上を発射している。ウクライナ海軍がこれまでの戦闘で事実上無力であったことを考えれば、ロシア軍は他の対艦巡航ミサイルを陸上攻撃に使用している可能性がある。

オーストリアのカール・ネハンマー Karl Nehammer 首相は、今日モスクワでロシアのプーチン大統領と会談する。ネハンマー首相は、2月のロシアのウクライナ侵攻開始後に、プーチン大統領と会談する最初の西側指導者となる。同首相はキーウでウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とも会談しており、欧州の指導者多数がキーウ訪問をしている。■


Ukraine Situation Report: Leopard Tanks Could Arrive In Six Weeks With Germany's Approval

Ukraine has been asking for tanks as a major Russian offensive in Ukraine's east looms.

BY JOSEPH TREVITHICK APRIL 11, 2022


 

オスプレイ生産が終了になる見込みが出てきたが、2050年代までのティルトローター需要を考えればこのまま終了としていいのだろうか。

 

 

 

 

 

軍の共通機種中で最も革新的な回転翼機の生産が終わりに近づいてきた。

 

 

 V-22オスプレイ・ティルトローター481機のが発注済みか発注間近となり、同機を製造するベル=ボーイングが生産を数年以内に終了する見込みとなった。

 冷戦末期、ディック・チェイニーが国防長官として、くりかえし同機開発を止めようとしたため、不安定なスタートを切ったものの、オスプレイは史上最も多目的の回転翼機となった。

 

V-22 Osprey in flight.

V-22オスプレイは統合部隊で唯一のティルトローター機だ WIKIPEDIA

 

 V-22は従来型のヘリコプターではないので、「ロータークラフト」と呼ばれる。

 翼端のエンジンにより、ヘリコプターの垂直方向の俊敏性とターボプロップ機のスピードと航続距離を兼ね備えており、空中ではわずか12秒で90度旋回する。

 そのため、V-22は他の回転翼機と異なり、時速300マイル以上で巡航し、無給油で1000マイルの航続距離を実現し、さらに狭い場所に着陸可能だ。

 しかし、1988年、ソビエト連邦崩壊により、国防総省が兵器計画100事業を中止する準備を進めると、陸軍は開発を中止した。

 1990年代の「平和の配当」により軍備近代化が停滞する中、同事業を守り抜いたのは、主に海兵隊であった。

 海兵隊はそのコンセプトへの信頼を失うことなく、チェイニー長官の攻撃を議会の力を借り撃退し、オスプレイは揚陸作戦のあり方を一変させるに至った。

 空軍は特殊作戦部隊のために56機を、海軍は空母など洋上の艦艇への補給用に数十機を購入し、海兵隊以外も恩恵を受けている。

 いずれの場合も、ヘリコプターとターボプロップ機の性能を組み合わせた同機で、これまで不可能だった任務が可能になると軍の計画者たちは考えた。

 例えば、海軍の空母艦載機オスプレイは、外洋の艦艇に緊急物資を届け、従来の空母用輸送機と異なり、空母以外の各種艦船に対応できる。

 ボーイングとベル/テクストロンは、生産分担し、この計画の成功から多大な利益を得ている(両社は著者が所属するシンクタンクに寄附している)。

 しかし、海兵隊と海軍が必要とするティルトローターの最後の発注は2023年になりそうで、その時点で両社は他の機会をさらに追求する必要に迫られる。

 ベルは、陸軍ブラックホークヘリコプター数千機を交替する先進的回転翼機の入札で、V-22の性能から力を得ており、ボーイング社は別の競合チームに懸命に取り組んでいる。

 しかし、V-22の生産が終了するまでに、V-22の退役2055年予定まで必要となる機数を確保しておくことが重要だ。

 というのも、オスプレイのユニークな性能のため、退役前に機数を消耗した場合、海兵隊を船から陸に上げたり、長距離の特殊作戦を実行する任務を効率的に遂行する手段がなくなるためだ。

 海兵隊はオスプレイ360機の運用を計画し、今日の遠征作戦はティルトローター技術による柔軟性を前提としている。

 残念ながら、今後数十年にわたる紛争でどこまで消耗となり、ティルトローター機を必要とするどんな任務が発生するか、確実に予測する術はない。

 新規任務には、空中給油、電子戦、戦闘捜索・救助など、多用となる可能性がある。

 そのため、海兵隊が必要とするオスプレイをすぐに全機調達することと、10年後、20年後に十分な機数を揃えられるかは同じではない。

 空軍の特殊作戦部隊ではオスプレイの導入数が少ないため、この問題はさらに顕著となる。空軍当局は、特殊機材少数を維持する高コストで繰り返し警告を発している。

 また、海軍は、空母艦載機に48機のオスプレィを購入予定だったが、分散海上作戦によってティルトローター機体への需要がどこまで増加するかを考えずに44機に減らしてしまった。

 統合部隊は将来の戦争での消耗を回避するよう部隊編成する傾向があるが、国家防衛戦略が中国のような大国のライバルにしっかりと焦点を合わせた今、計画立案部門は相当数のティルトローターが敵攻撃で失われた場合、作戦にどんな影響が出るかを考えるべきではないか。

 というのも、計画通りなら、オスプレイの新規生産は間もなく終了するからだ。

 海兵隊は初期モデルを最新構成にアップグレードし続けるが、42州に広がる請負業者400社のサプライチェーンは、新規生産が完了すれば徐々に姿を消す。

 ラインの停止にどう備えるべきか、ベルとボーイングはすでに各軍へ打診を始めた。

 運命の一歩を踏み出す前に、計画部門は今世紀半ばを乗り切るべく十分なティルトローターの機数と、付随して起こりうる複雑な状況は事前に確認の必要がある。

 オスプレイ生産が終われば、再開はないと断言できる。ティルトローターの機能を発揮する機材は他にないため、今こそ機材整備の規模を正しく把握するべきだ。■

 

Production Of The V-22 Osprey Is Ending. The Pentagon Needs To Be Sure It Has Bought Enough.

Loren ThompsonSenior Contributor

Apr 8, 2022,10:44am EDT

https://www.forbes.com/sites/lorenthompson/2022/04/08/production-of-the-v-22-osprey-is-ending-the-pentagon-needs-to-be-sure-it-has-bought-enough/?sh=3cebec35ad9e

2022年4月11日月曜日

ウクライナ戦では次のドンバスの戦闘に注目。今度はウクライナも補給線が伸び不利に、一方、ロシアは緒戦の失敗を繰り返すことなく今度こそ勝利を収められるかが注目。


主砲を発射するロシア戦車

 Image Credit: Creative Commons.

 

 

シアとウクライナはドンバスの戦いにむけ準備の最終段階に入ったようだ。第二次世界大戦のクルスクの戦い以来、ヨーロッパ最大の戦車戦になると予想される。モスクワとキーウの双方にとって、大きな賭けとなる。ドンバスの結果が戦争全体の行方を左右しかねない。

 

 

 2月24日、ロシア軍はキーウ近郊、ハリキウ、ドンバス、クリミアと、4つの主要な進攻軸でウクライナに侵攻した。ロシア軍指導部は、限られた兵力を分散させるにあたり、戦争の最も古い原則の1つである「質量」に違反した。第一目標を定め、その目標達成に戦闘力の大部分を割く代わりに、兵力を広範囲に分散させたため、ウクライナ守備側は4軸すべてを撃退することができた。

 キーウの西と北の周辺で深刻な戦闘損失を被ったロシアは、失敗を認め、開戦から約1 カ月で全軍を撤退させ、現在進行中のドンバス戦の北側に配置転換し、キーウとスミSumy地域の失敗を抑える決断を下した。ロシアはまた、ウクライナ軍(UAF)がドンバスの戦いに参加するために撤退しないように、ハリキウ北部の軍を限定的に探査攻撃と嫌がらせ砲撃で維持した。

 ドンバスの南側では、ロシアはマリウポルのUAF防衛部隊の撃滅に向け最終段階にあり、ロシアとクリミア軍との間に陸橋が開かれ、ケルソン地域の部隊(ドンバス同様に低いレベルの戦闘が続いている)への兵站やその他支援ができるようになる。

 一方、ドンバスでの戦闘の最前線では、4万のウクライナ軍が防衛に当たっている。ロシアの戦略は開幕戦の惨めな状況から転換し、ドンバス線より東側の部隊を前進させ続け、南部/マリウポル軸からロシア軍を投入しドンバス・ポケットの南側の肩を攻撃し、キーウからロシアの装甲を投入してドンバス・ポケットの北側の肩に攻撃する修正案が見えてきた。

 ロシアがUAFの陣地を北側か南側のどちらかで側面攻撃に成功すれば、ウクライナの全戦闘部隊を切り離し、計画的に破壊または捕捉できる。一方、ウクライナはロシアがドンバスで自軍を包囲するのを阻止しようとする。その作業は非常に難しいが、不可能ではない。

 ウクライナはハリキウやケルソン地区で戦う部隊を撤退させられない。ロシア軍が攻略できる領域を広げないためだ。しかし、キーウ、チェルニヒフ、スミを守っていた部隊を再配置し、キーウにまだあれば戦略的予備軍と合わせ、ドンバスを強化するために送り込むことは可能だろう。

 UAF側には、2014年以降、同地域に相当の防衛施設を建設してきた利点があり、ロシアが前線を突破しようとすれば、甚大な損害を与える。しかし、ロシアの突破を阻止するウクライナの目的は、いくつかの理由で複雑だ。

 まず、ロシア軍のみならず、ウクライナ軍も兵員や戦車多数を失っており、UAFの戦闘力は開戦時より低下している。キーウ政府は自軍部隊の損失に関する情報をブラックアウトしているため、ウクライナ軍がどれだけの死傷者を出し、ドンバス戦線を守る訓練済み部隊がどれだけ残っているのかは不明だ。

 第二に、ロシア側のドンバスへの補給線は短く安全だが、皮肉にもウクライナ側が困難である。ウクライナの援軍や欧米から送られる軍需品は、キーウから前線まで数百キロ移動しなければならない。ロシアは空爆、ドローン、ロケット弾やミサイルによる襲撃で、補給線を破壊し続けている。阻止に成功するたび、兵員、燃料、弾薬、武器が奪われる。

 キーウはNATO諸国に重火器、戦車、戦闘機、長距離防空ミサイルシステムなどの提供を懇願してきた。このような援助は、組み立て、ウクライナへの輸送、前線への配送に相当の時間がかかる。すべては、前線に到着する前に破壊しようとするロシアの有人機無人機の監視下に置かれることになる。しかし、同じく重要な要素として、訓練を忘れてはならない。

 ウクライナは毎日、訓練済み兵員多数を失っており、交替は容易にできない。攻勢に出るには、ウクライナは新しい戦車、自走砲、防空システムを揃えた戦闘集団を創設する必要がある。戦場でロシア機甲部隊に勝てるまでには、個人レベルから、次に小隊単位、大隊規模と訓練に時間がかかる。ウクライナが十分に訓練しないまま部隊と新装備を戦場に投入すれば、効果は低くなり、その結果、ロシア軍の阻止はより困難になる。

 1943年のクルスクの戦いでは、強力なドイツ戦車軍がソ連の防衛戦線の突破を図った。ソ連軍は数ヶ月かけ、精巧な防御陣地を準備し、大量の援軍を投入し、現地での反撃ルートを事前リハーサルし、大量の燃料、食料、弾薬を貯蔵しておいた。ヒトラー軍はズタズタにされ、何万人ものかけがえのない犠牲者を出した。防衛側も大きく損失を被ったが、ここまでの敗北を与えたため、ドイツ軍は攻撃能力を回復することなく、ソ連領から追い出されたのである。

 今回のドンバスの戦いもクルスクの戦いと似た地形で行われ、この戦いの結果に多くのものがかかる。ロシアがUAF戦闘団の周囲に形成されたポケットを封鎖できれば、ウクライナ側がそれを破ることは事実上不可能であり、プーチンが新たな攻撃を行うにしても、キーウに戻る道が再び開かれるが、今回はウクライナ側の防御兵力がはるかに少なくなる。

 もしUAFが戦線を維持し、ロシア軍に十分な損失を与えきれば、プーチン軍は攻撃に戻る能力を失い、防衛的にまわるのを余儀なくされるかもしれない。その場合、戦争は新たな、暗い局面を迎えることになる。

 この戦いにどちらが勝つにせよ、ロシア軍とウクライナ軍の双方が深刻な損失を被り、市民インフラは想像を絶する損害を被ることになる。戦闘が終了すると、両軍とも部隊の再建、交代、再教育のため、おそらく数ヶ月は攻勢に転じることが困難になる。

 最も現実的な解決策は、迫り来る戦いが消耗戦となり、1943年のクルスクの戦い以来、人類が見たことのないレベルの破壊となると認識することだ。この戦いでは、間違いなく勝者は生まれないだろう。むしろ、一方が他方よりひどい負け方をするだけだろう。そして、ドンバスの戦いの展開に関わらず、この戦争に軍事的勝利はなく、交渉による解決で終わるという苦い現実が待つのみだ。

 アメリカの最優先課題は、第一に、戦争がウクライナ国境から拡大し、アメリカやNATO対ロシアの紛争に発展しないようにすること、第二に、戦争を早期に終わらせる方法の模索を支援することだ。戦争が長引けば、より多くのウクライナ人が苦しみ、死ぬことになる。■

 

 

Battle of Donbas: A Massive Tank War Could Decide Ukraine's Fate - 19FortyFive

ByDaniel DavisPublished1 day agoDaniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” Follow him @DanielLDavis1

 

 


ウクライナ空軍の爆撃機Su-24がここに来て姿を消している件について。創意工夫があっても機材の消耗がウクライナ空軍を苦しめている。

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A Ukrainian Su-24 in 2015. PHOTO VIA WIKIMEDIA COMMONS

 

戦時点でウクライナ空軍にはスホイSu-24爆撃機が少なくとも14機あった。各機は戦闘開始から数日間は重要な役割を果たしたが、その後、公式発表、ニュース、ソーシャルメディアから一切姿を消している。

 

 

 ロシアのウクライナ攻撃は7週目に入り、ウクライナ軍の可変翼Su-24に何が起こったかは不明である。ロシアは少なくとも1機を撃墜したようだ。他の機体は訓練されたパイロット、スペアパーツ、燃料の不足のため飛行できなくなった可能性がある。

 いずれにせよ、進行中の戦争でつかの間とはいえ、Su-24がはたした役割は、ウクライナ空軍有人機部隊の厳しい状況を物語っている。日を追うごとに、ウクライナ空軍は機材を損耗し、無人機への依存度を高めている。

 Su-24は、1960年代に流行した可変ジオメトリー翼を採用し、飛行速度に応じ主翼が展開する戦闘爆撃機だ。高速飛行には後退させ。低速で機動力を発揮したい場合は、主翼を伸ばす。

 ソ連のMiG-23、MiG-27、Tu-22M、Tu-160、アメリカのF-111、F-14、B-1などがこの機構を共有する。しかし、旋回翼は重く複雑になるため、最近は人気がなくなっている。

 当時、Su-24は恐るべき戦闘機であった。爆弾3トンを積み低空を高速飛行し、400マイル先に到達する。ソ連空軍は数百機取得し、1991年のソ連崩壊時で約120機をウクライナに残していった。

 ウクライナは数十機のSu-24を近代化し、徐々に規模を減少させる空軍機材の一部として供用してきた。2014年には分離主義者が支配するドンバスで少なくとも1機のSu-24を失っている。

 ロシアが今年、ウクライナ攻撃のために20万人で侵攻した段階で、老朽機のうち14~23機がウクライナ南部のミコライフ空軍基地に残っていたが、その他Su-24は、ほとんどのウクライナ戦闘機と同様に、基地になかった。

 爆撃機と乗員や整備員は、比較的安全なウクライナ西部の空軍基地や小規模な民間滑走路、あるいは高速道路の上に分散していた。スホイ機はロシア砲撃の最初の夜を乗り切った後、行動に移った。

 Su-24がウクライナ上空に初めて姿を現したのは、2月24日だった。ロシア空挺部隊がキーウ近郊のホストメルにあるアントノフ工場の飛行場を襲撃した。ウクライナ軍は猛烈に反撃し、ウクライナに降伏の意思はないことが初めて明らかになった。

 2月24日、ホストメル上空でウクライナのSu-24がフレアを放出し、爆弾投下する様子が撮影されている。当時も今もホストメルはロシア機にとって危険極まりない場所で、1カ月半の戦闘でロシアがSu-24をウクライナに投入した確認はないため、同機はロシア機ではないと確信できる。

 ロシア空軍は新型Su-34を送り込み、大量に喪失している。ロシアではSu-34は徐々にSu-24に代わりつつある。

 キーウの当局者は、ロシアのSu-24を撃墜したとの主張を続けている。しかし、裏付ける証拠はない。

 だが、ウクライナ軍が少なくとも1機のSu-24を失った証拠はある。3月30日、ウクライナの爆撃機がウクライナ西部のリブネ上空で煙を吐いている様子を撮影した動画がソーシャルメディアに出回った。

 リブネは、ウクライナ空軍がSu-24の一部(廃機も含む)を保管するルツク空軍基地から遠くない。2月27日撮影の商業衛星画像では、ルツクでロシア攻撃により大破したSu-24が数機写っている。

 ロシア国営メディアは、ロシア軍が3月13日以前にウクライナ南部のケルソン付近でウクライナのSu-24を撃墜したと主張している。

 4月3日以前に、ウクライナのSu-24と思われる機体の墜落現場を撮影したビデオがある。青い迷彩柄が見え、AL-21エンジンの残骸も見える。

 ウクライナ政府がSu-24について言及したのは3月1日と3月2日が最後で、当局はスホイ爆撃機でロシア軍を爆撃したと主張した。

 その後、何もない。Su-24の飛行を示すビデオや写真は出ていない。同爆撃機が活動しているとの新たな主張もない。

 ウクライナの残存Su-24が戦闘中である可能性はあるが、話題に出てこない。小規模の爆撃機部隊は、消耗が激しく、飛行場、燃料貯蔵所、航空機整備施設へのロシア攻撃でも、損失をわずかに抑えている可能性もある。

 ウクライナはまだ飛行可能な機材(MiG-29やSu-27など)を持っているようだ。しかし、ロシアはウクライナ空軍を消耗させ続けている。戦争が長引けば、遅かれ早かれ、ウクライナで有人機が不足するときが来る。

 同盟国から中古戦闘機が提供されない限り、ウクライナ空軍には無人機が残るのみとなる。キーウが有人戦闘機の追加調達に苦労するのに対し、トルコからのTB-2武装無人機調達には苦労していない。

 TB-2はウクライナに必要な装備なのだろう。TB-2はロシア戦闘機の撃墜はできないが、Su-24より効果的にロシア車両を追い詰め、破壊している。

 しかも、乗員を危険にさらさずに任務を遂行している。■

 

Where Are Ukraine’s Bombers?

David AxeForbes Staff

Apr 7, 2022,08:00am EDT

https://www.forbes.com/sites/davidaxe/2022/04/07/where-are-ukraines-bombers/?ss=aerospace-defense&sh=55b705106e7e