水陸機動団ARDBは3個連隊を中核に構成されている。上陸作戦を容易にするため、旅団はAAV-7水陸両用強襲車両を装備している。 写真提供:稲葉義泰
2010年代の日本は中国の海洋進出と軍備増強に対応する必要に迫られてきた。特に重要な課題は、東シナ海に浮かぶ日本の南西諸島をいかに守るかである。この課題に対処するため、初期防衛作戦のための専門部隊である水陸両用急速展開旅団(ARDB)が2018年3月に設立された。
ARDBは陸上自衛隊の部隊で、隊員数は約3000人。 その特徴は、陸上自衛隊がこれまで保有していなかった本格的な水陸両用作戦能力を有していることだ。仮に敵が日本の離島を占領した場合、その奪還には守りの堅い陣地に対する水陸両用攻撃が必要となる。 ARDBは、この目的のための専用部隊として創設された。
ARDBは、水陸両用急速展開連隊として知られる3個連隊を中核部隊として構成されており、上陸作戦を容易にするため、旅団はAAV-7水陸両用強襲車両を装備している。ARDBはAAV-7の人員輸送型、指揮型、回収型の3種類を運用している。標準的な兵員輸送車は、司令官、運転手、後部乗員が搭乗し、後部コンパートメントに10人の兵員を輸送できる。
水陸両用作戦ではARDBはAAV-7を海上自衛隊のおおすみ型揚陸艦戦車(LST)に搭載し、ウェルデッキから発進させ陸上攻撃を行う。 この旅団は、海上自衛隊佐世保基地に近い長崎県佐世保市の相浦駐屯地を拠点としている。同駐屯地は、緊急時に輸送艦への迅速な乗船を可能にするために選ばれた。
ARDBのAAV-7は主に、3つの戦闘上陸中隊からなる戦闘上陸大隊に配属されている。本稿では、戦闘上陸大隊長の佐藤誠一郎中佐に独占インタビューを行った。
AAV-7の特徴と運用上の課題
まず、大隊の主要装備であるAAV-7の特徴と運用について聞いた。 陸上自衛隊はこれまで水陸両用装甲車を運用したことがなく、AAV-7の搭乗員も戦車のオペレーター経験者から選抜された。戦車と水陸両用装甲車の根本的な違いを踏まえ、筆者はAAV-7の運用について見解を求めた。
「装甲部隊では、伝統的に戦車と機動戦闘車(MCV、車輪付き戦車のような装甲車)を運用してきた。これらの車両は、火力、防御力、機動性という3つの主要能力を特徴としていますが、AAV-7は第4の能力である輸送能力を導入している。 兵員を乗せて輸送したり、戦闘工兵を配置して海岸線での障害物除去作戦を行ったりすることができる。 主に戦闘用に設計されたこれまでの装甲車とは異なり、AAV-7は戦闘能力と人員や装備の輸送能力を兼ね備えている点が特徴です」。
ARDBが運用するAAV-7は、左から人員輸送型、指揮型、回収型の3種類。 写真提供:稲葉義泰
水陸両用作戦における訓練の課題
次に、AAV-7を使った訓練での課題について質問した。 佐藤中佐によれば、日本の訓練環境には大きな障害があるという。
「たとえば、カリフォーニアのキャンプ・ペンドルトンで訓練したときは、海からの上陸、内陸への前進、戦闘という一連の作戦を、すべて連続した訓練で行うことができました。しかし日本では、これらすべてのフェーズを一緒に行える場所は1つもない。 海上自衛隊の輸送艦による海上機動訓練、陸上での上陸訓練、内陸での戦闘訓練は、それぞれ別の時間や場所で行わなければなりません。 このような状況下で、いかに部隊の熟練度を維持・向上させるかが、重要な課題のひとつです」。
将来の水陸両用装甲車: AAV-7の限界を超える
現在運用中のAAV-7に代わる次世代水陸両用装甲車についても佐藤中佐に聞いた。 防衛省は三菱重工業(MHI)を中心に国産の新型AAVの開発を進めている。 佐藤中佐は、この新型車両がAAV-7の欠点を解消することに期待を示した。
「何よりもまず、火力の向上を期待しています。 敵が軽装甲車両を装備している場合、現在の火力では不十分です。 AAV-7の武装は40mmグレネードランチャーと12.7mm重機関銃のみ。 さらに、搭載歩兵部隊は対戦車兵器をほとんど携行しておらず、主武装はせいぜい無反動ライフルだけだ。最低でも30ミリ自動砲は必要でしょう。さらに、高速海上での機動性と安定性も重要です。AAV-7は海上で極端なピッチングとローリングを経験し、乗員に深刻な乗り物酔いを引き起こす。 さらに、最大水上速度は時速13キロ程度しかないため、水陸両用攻撃時に船から岸まで移動するのに相当な時間がかかる。これは大きな欠点で、次世代機には高速かつ安定した海上航行が求められると思います」。
基地の能力拡張計画
取材の一環として、筆者はARDBが駐屯する相浦駐屯地を訪れ、第1戦闘上陸中隊が実施するAAV-7の走行訓練を見学した。同駐屯地にはAAV-7専用の訓練コースがあり、水漏れをチェックする検水タンクや、作戦状況を模擬した段差、不整地、坂道などの障害物が設置されている。さらに現在、相浦駐屯地に隣接し新しい桟橋の建設が進められている。この施設が完成すれば、AAV-7が基地から海上自衛隊輸送艦に直接乗船できるようになり、部隊の作戦態勢が強化される。■
Japan’s ARDB Combat Landing Battalion: An interview with its Commander
Published on 04/07/2025
By Yoshihiro Inaba
静岡県在住のフリーライター。現在、日本の大学院で国際法(特に自衛権と武力行使)を研究している。陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に特に詳しい。
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