2017年9月5日火曜日

朝鮮戦争2.0で株式債券市場にどんな影響が出るのか、過去の戦時実績から予測


米朝開戦がここにきて現実味を帯びてきました。読者の皆さんは株式投資をされているのでしょうか。であれば昨今の状況を見て心配もされているでしょう。以下の分析を見ると必ずしも悲観する必要もないこともわかりますね。ただし本ブログはいかなる投資上の損失に責任を負わないことを明記しておきます。


Here's how the market responds when the US goes to war

米国が戦争に入ると市場の反応はどうなるのか
CFA Institute
株式市場は不確実性を嫌う。北朝鮮を巡る緊張でその不確実性が多分にある。
本稿は2013年9月13日に発表し、中東特にシリアの争乱状態を念頭に置いて米国が紛争介入した場合に市場にどんな影響が出るかを論じた。ここにきて北朝鮮の活動を巡る状況にかんがみ、CFA発行のEnterprising Investors読者の要望に応え初稿に手を入れてみた。
まず今は株式市場から手を引くべきなのか。答えは状況次第ということになる。
今月までの北朝鮮ミサイルテストに呼応して市場の動きを見てみよう。
「今週のダウ工業株での1.1%下落を北朝鮮指導者金正恩と米大統領ドナルド・トランプの言葉の応酬のせいにしたくなるのはわかる。だが北朝鮮を巡る国際事件や1993年以降の核開発関連80件を調べると朝鮮半島の緊張と金融市場のつながりはほとんどないことがわかる」(アナリスト、スペンサー・ジェイカブSpencer Jakab)
プラシャント・S・ラオPrashant S. Rao は別の見方だ。世界規模の市場動向では両国間の緊張増加から売り逃げを強める傾向がある。「アジア各地の株式市場は安く終わり、ヨーロッパの各種インデックスも開幕時に低く始まったのはワシントン、平壌の言葉のやり取りが実際の戦闘に移行すると心配しているからだ」
ロドリゴ・カンポスRodrigo Camposとルイス・クラウスコフLewis Krauskopfも世界規模で株価下落が始まったのは地政学的な緊張状態の反映と指摘する。
ウォーレス・ウィトコウスキWallace Witkowskiとマーク・デカンバーMark Decambreはこう見る。「主要指標三つで5月以来の安値を8月30日に付けており、三大指標が連続下落するのは4月以降のことだ。これは米朝間の言葉の応酬を反映している」
トランプ大統領が繰り返しツィッターでこれ以上米国を脅かすと「世界が見たことのない炎と怒りを降らせる」と北朝鮮をけん制し、「武力解決策が今や完全に準備できている。照準を合わせ装備を詰め込み、北朝鮮が不穏な動きをした場合に備えている」とまで述べているが、これが市場が神経質になっている理由なのだろうか。
では戦時の資本市場がどう推移したかの過去事例を見てみよう。
第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争での乱高下と利回りを比べてみた。イラク戦争はここに入れなかったのは期間中に大規模好景気とその反動の不況があり、戦争への国家経済の関与度が低いことが理由だ。
下表に示したように戦争があっても国内株が必ずしも低迷するわけではない。むしろ反対に長期平均より高い実績を株価が戦争中に示すことがある。反面、債権は不安定時に安全選択肢と言われるが戦時には全期間平均より成績が悪くなっていることがわかる。
Capital Market Performance During Times of War 戦時下で資本市場はどう動いてきたか
Capital Market Performance During Times of Warここで使った指標は次の通りだ。S&P500指数を大企業株価として、CRSP Deciles6-10で中小企業株価を、長期米国債、5年物財務省証券、消費者物価指数をインフレーションの把握に使った。戦時下の利益については開戦四か月前と戦争中の数字を使った。表中All Warsとはすべての戦時下の数字を表す。ただし過去実績は将来の結果をすべて示すものではない。CFA Institute
上記検討では1926年から2013年を対象に青の背景色で「管理機能」を示している。戦時は赤で示した。一つ一つの戦争を個別に下に示した。興味深いことに大企業・中小企業それぞれの株価は戦時の方が変動が少ない。ベトナム戦は例外で、株価が総平均を下回る。それでも全体として上がっており、債権や現金より利回りが良い。
また株式変動幅が戦時に低くなるのは興味深い。直観では地政学環境の不確実性が株価にも影響するはずと思うが、実際にはそうなっていない。例外は湾岸戦争で株価変動はほぼ全体平均に沿っていた。
資本市場の結果はやはり湾岸戦争時に他と違う動きを示していた。湾岸戦争は一年未満と極めて短期に終了している。この時期と原油価格急騰の時期が一致し、経済は短期の景気後退に入った。戦時下で不況になるというのは新しい見方で米経済の変貌ぶりを反映している。それ以前の戦争では経済は資本財、天然資源で大量の物資が戦闘行為継続に必要だった。しかし1990年代になると経済は重工業から「知識ベース」の経済に移行し、軍事需要が経済に与える効果も減少している。
債権は戦時下で成績が悪い。この理由としてインフレーションが戦時中に高くなることがある。債券利回りがインフレーションと逆相関関係にあることは歴史が証明している。もう一つの説明として政府が戦時中に借入れを増やすため債権利回りは上がるが、債券価格は下落する。さらにインフレーションが高くなり、政府借入が戦争関連で増加すると投資家は安全を求め株式から債券への資産移動に慎重になる。
株価に影響を与える経済要因やファンダメンタル要因は多い。単独イベントだけで他の要因を上回る影響を資本市場に与えることがある。ただし、過去を振り返ると戦時下ではこうならないことが多い。
「だからと言って北東アジアでこれから起こることが無関係なままではない。開戦の恐れは本当で現在の安値株を買う動きに対して軍事衝突が株価、企業債券に良い効果を与えるか不明だ。現時点の水準がすでに高どまりと見る向気が一般的」と言うのがジェイカブの結論だ。「今のところ、対立の構図では言葉の段階にとどまっているが...突然現在の強気市場を終わらせる何かがいつ起こってもおかしくない。北朝鮮から出てくる発言以外のものだ」
経済成長、収益、金利、インフレーション、その他の要因により将来の株式市場、債券市場の方向が決まる。仮に米朝間で開戦となればお決まりの低落は十分可能性があるが、歴史を見ると下降気味の市場は短期間しか続かないこともわかる。■
Read the original article on CFA Institute. Reproduced with permission from CFA Institute. Copyright 2017. Follow CFA Institute on Twitter.

THAAD追加配備を認めざるを得なくなった韓国政府のジレンマ


韓国現政権が大変なジレンマに陥っているようです。自らまいた種であるのですが。今回慌てて配備を許しながら最終環境調査結果はこれから出るのでそれで決定するといっているようです。対話ありきでスタートしても肝心の相手が全く相手にしないため文大統領のストレスは高まる一方でしょうね。しかしもっと問題なのは背後にいる国民の「感情」でしょう。自分の都合の良い構図は実は存在しないとわかったときの精神的混乱はもっと恐ろしい絵図になります。
Ministry: Four more THAAD launchers all set for deployment

米軍ヘリコプターがTHAAD基地への補給を行っている。 Sept. 2, 2017. (Yonhap)

Published : Sep 4, 2017 - 16:05
Updated : Sep 4, 2017 - 16:19


9月4日韓国国防部は在韓米軍がTHAADミサイル防衛発射装置追加分4基を韓国南部の基地に追加配備すると発表した。

星州(ソウル南方300キロ)の元ゴルフ場で部分供用中のTHAADに関する環境評価調査結果を国防部が受け取ったことでこの発表となった。


THAAD発射機は現在2基が稼働中で4基追加を待つ状況が続いていた。
「残る発射装置も近日中に韓米協議を通じ配備し、北朝鮮の核ミサイル脅威の増大に対応する」と国防部は声明を発表した。

韓国政府は環境調査を小規模ながら昨年末に開始していた。

THAAD配備を巡って国内世論が騒然となる中、政府は追加環境調査で最終決定とする予定だ。

現地住民は朴槿恵前政権が民主的手続きによらず急いだと配備に激しく反対する。■

2017年9月4日月曜日

★北朝鮮の水爆開発は日本へのEMP攻撃が狙い?



EMP攻撃が一番恐ろしいシナリオであることは何度もお伝えてしているつもりです。電力網、コンピュータ通信、自動車等の点火装置が作動しなくなった社会では水道供給も止まり生存が厳しくなり、経済も崩壊するからです。ミサイルの破片がどうのこうのと言っている人にとっては想像もつかないでしょうが、これが実施されれば日本は江戸時代に戻るといってもいいでしょう。北朝鮮は韓国を併合するつもりでしょうから韓国にはEMPのスピルオーバーは与えないでしょう。そうなると狙いは本州中央部より東でしょうか。日本は途上国以下の状態に一夜にして転落することになります。


North Korea Shows H-Bomb Warhead Design, Says It Will Use It In EMP Strike 

北朝鮮が水爆弾頭部を公開し、EMP攻撃に使用すると公言

North Korea with a thermonuclear bomb would be a very alarming development, but is it possible?

NORTH KOREAN STATE MEDIA
BY TYLER ROGOWAYSEPTEMBER 3, 2017
  1. 金正恩は米国の労働者休日の週末をのんびりすごさせてくれなかった。北朝鮮のアメリカおよび同盟国への脅威をあらためて思い知らせてくれた。このたび発表された写真数点を見ると熱核兵器弾頭部分の設計が完成の域に達しており、長距離弾道ミサイルへ装着が近づいているのがわかる。
NORTH KOREA STATE MEDIA
北朝鮮が水爆と称する装置。背後に見える先端部は火星14型ICBMのもの。
  1. 「水素」爆弾または「熱核」爆弾は核「分裂」または「原子」爆弾より相当強力な威力を発揮する。
  2. Livescience.comが両者の違いをうまく説明している。
  3. 「熱核爆弾と核分裂爆弾の違いは原子レベルから見られる。分裂爆弾の例が広島、長崎に投下されたもので原子の核を分割することが原理だ。中性子が原子核から出て分離するとそばにある原子の核にあたり、それぞれの核を分裂させていく。広島、長崎の爆弾はそれぞれ15キロトン、20キロトンのTNT換算と憂慮する科学者連盟がまとめている。
  4. これに対して熱核爆弾(水素爆弾)のテストは1952年11月に米国が実施し、10千キロトンTNT換算だった。熱核爆弾の原理も最初は分裂反応で原爆と同じだが、原爆ではウラニウムまたはプルトニウムは大部分を活用していない。これに対して熱核爆弾では爆発効果をより多く利用可能とする工程が加えられている。
  5. まず点火材となる爆発でプルトニウム239の球体を圧縮する。プルトニウム239が分裂の際に活用され、水素ガスを封入している。高温高圧がプルトニウム239分裂を生み、水素原子が溶解する。この溶解課程で中性子が放出され、プルトニウム239に戻り一層多くの原子が分割され分裂の連鎖反応を加速する」
WIKICOMMONS
  1. 今回公表された写真から何がわかるかは専門家による十分な分析を待つしかないが、外観には警戒の念を持たざるを得ず、つくりは相当完成度が高いよ鵜に見える。小型化した熱核爆弾弾頭は弾丸の形のようなテレアー・ユラム形状あるいは砂時計状の形となり二段式の球状の外観となるものだが北朝鮮の写真がまさしくこれだ。
NORTH KOREA STATE MEDIA
  1. 金正恩の隣にある写真の形状でミサイルの先端部への取り付け状態が分かる。以下は米製W80熱核爆弾の弾頭部だ。
WIKICOMMONS/PUBLIC DOMAIN
  1. 北朝鮮が発表した写真から平壌が言う通り原子爆弾部を小型化に成功したことがわかる。北朝鮮の長距離核抑止力が実効力を発揮するためには核弾頭小型化とともに再突入が確実に行われることが必要である。
  2. 今回の公表写真を宣伝目的と揶揄する向きには単なる可能性だろうが、事実は北朝鮮はこの18か月で言った通りに実現して本当に武器として実現しているのだ。例として4月15日の軍事パレードに出展された軍事装備で実証済みは一部だったが、いまや全装備のテストが完了しているのであり過去から大きな変化が生まれている。
  3. 端的に言えば、核・ミサイル開発での平壌による恐ろしいくらい包み隠さない発表ぶりは一貫したものがあり、一年半前には下の写真で笑いの種だったものが今や北朝鮮の核弾頭開発開発はその時点でめざしていたとおりに実現しているのだ。
NORTH KOREA STATE MEDIA

  1. 2016年1月6日の第四回核実験を経て北朝鮮は水素爆弾テストに成功したと主張していた。ただし裏付ける地震や大気中の放射能が見つからず主張は斥けられた。ただし北朝鮮が当時テストしたのは「ブースト型核分裂兵器」だったのだろう。これは原爆だがトリチウムと重水素のガスを点火時に圧縮するものだ。これにより核分裂兵器としての威力が相当大きくなるものの、水素爆弾には匹敵しない。だが当時のテストと北朝鮮の説明内容から核分裂爆弾ではなく熱核兵器が真の開発目標だったとわかる。
  2. これらをすべて配慮すると可能性はひとつで現状の北朝鮮水素爆弾開発で第六回目がなかなか実施されなかったことが説明できる。安全保障専門家は第六回目テストは必至とみて、北朝鮮も準備態勢出来次第六回目の試験を実施すると公言していた。豊渓里Punggye-ri地下核実験施設で「不審な動き」があるとほぼ毎週指摘されており、しかも前回核実験が一年以上が経過したところで信頼性のある中距離長距離弾道ミサイルが手に入ったが第六回目テストの実施はまだだった。次回テストが原爆ではなく水素爆弾のため北朝鮮は実施を待っていたと説明できる。
  3. 原爆の小型化から熱核兵器への移行、ならびに熱核兵器自体の小型化は北朝鮮のように貧しく孤立した国では簡単に実施できないはずだ。だが外部の援助があるようで普通な不可能な芸当を18か月で実現している。そこで北朝鮮の核兵器開発が同様の急進展を再び見せないという保証はない。
  4. 北朝鮮の水素爆弾実験がいつどこで行われようと、同国はその効果を使用すると公言していることにかわりない。同国国営通信は本日以下誇らしげに発表した。
  5. 「水爆の効果はキロトン級から数百キロトン級に変更可能であり、多機能熱核兵器として巨大な破壊力を高高度で強力なEMP(電磁パルス)による攻撃にも転用できる」
  6. また金正恩が以下発言したという。
  7. 「水爆の構成部品はすべて国産であり製造は主体思想により強力な核兵器を好きなだけ製造できるのだ」
  8. 高高度で生まれる電磁パルス(HEMP)の脅威が北朝鮮により生まれることは長く恐れられてきており、今や運搬装備が手に入ったため米本土攻撃も以前よりも可能性が高まっていると言えよう。だが北朝鮮によるHEMP攻撃の実現性が高いのは日本やハワイであり、米本土ではない。米本土送電網を破壊するサイバー攻撃の方が本土では高い。ただし北朝鮮が近い将来水爆を実用化すればEMP脅威は一層現実のものとなるだろう。
  9. 一年かけて兵器開発を相当進めたうえ、核実験からもちうど一年たち、次の核地下実験が注目される。いつ実施になるのか予想が並ぶだろうが、実施は意外に早いのではないか。■
原著者注 本稿は北朝鮮による第六回核実験の前に執筆したもの。


極秘宇宙機X-37B第五回ミッションの打ち上げは今週木曜日



X-37B軌道試験機(OTV)は米空軍の無人再利用可能宇宙機。写真は2014年10月17日にヴァンデンバーグ空軍基地で三回目ミッションを終えて帰還した同機。空軍迅速装備整備室が統括するX-37Bは無人宇宙機でリスク低減策、技術実証、作戦コンセプト開発を進めている。(Photo credit: Boeing)

Air Force’s Mysterious X-37B Space Plane to Launch Next Week

米空軍の謎の宇宙機X-37Bの打ち上げ近づく
POSTED BY: ORIANA PAWLYK SEPTEMBER 1, 2017Defensetech


  1. 米空軍の秘密機体X-37B軌道上試験機が9月7日打ち上げの予定だ。
  2. 今回は初めてイーロン・マスク率いるスペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられると空軍が8月31日に発表していた。従来はロッキード・マーティンボーイングの共同事業体ユナイテッドローンチアライアンスがアトラスVロケットで打ち上げてきた。
  3. 第五回目ミッションとなるX-37BOTVは「従来より深い傾斜角軌道に乗せ軌道上飛行性能を拡大する」と空軍は声明で述べていた。
  4. 空軍の迅速装備整備室がX-37Bの実験活動を統括しており、同機の性能と柔軟運用を進めて「宇宙技術実証とともに実験ペイロード搭載機として活用を進める」とある。
  5. X-37Bのペイロードならびに軌道活動の大部分が極秘扱いだが、空軍によると今回のミッションでは「空軍研究本部が製作した高性能構造組み込み式熱拡散装置(ASETS-II)ペイロードを搭載し試験電子装置ならびに振動熱パイプ技術を宇宙空間で長期間使用実験する」という。
  6. 「今回のミッションでは初の実施項目が多く、同機事業で大きな進展となるはず」と空軍迅速装備整備室長ランディ・ウォルデンが述べている。「目指すのはX-37Bをさらに進展させ増える宇宙利用の支援にあてることだ」
  7. 前回の第四回ミッションは2017年5月7日に軌道飛行718日後に完了しており、累積軌道飛行は2,085日になったと空軍は公表している。■

2017年9月1日金曜日

★★次世代ティルトローター機V-280も姿を現す 初飛行まじかか



なるほどオスプレイと比べると新型機は機構が相当簡略化されそれだけ無理がないということですか。しかしオスプレイでティルトローター機にケチをつけられるとこの機体が採用されたときに面倒ですね。オスプレイでは湖南なんな課題がありますが確実に信頼度を上げていってもらいたいものです。しかしデイヴィッドは情報源に恵まれていますね。


 

Here Are The First Images Of The First Bell V-280 Valor Next-Generation Tilt-Rotor Aircraft Prototype

ベルV-280ヴァラー次世代ティルトローター機の試作型初号機が姿を表した


N280BH がアマリロでエンジンテストに臨もうとしている。

 Aug 30 2017 -

 

  1. ベルV-280ヴァラーは第3世代ティルトローター機でベルヘリコプターが米陸軍向け次世代垂直離着陸機の候補として開発中の機体だ。初の実証用機材が初飛行の準備に入っている。
  2. V-280ヴァラーは米陸軍の共用多用途技術実証機(JMR-TD)としてシコースキーUH-60ブラックホーク、ボーイングAH-64アパッチの後継機となる次世代垂直離着陸機(FVL)の前段階と位置づける機体だ。
  3. V-280は乗員4名(うち2名がパイロット)で最大14名の兵員を輸送する。巡航速度は280ノットで(ここからV-280の名称がついた)、最高速度300ノット、航続距離2,100カイリで先頭有効半径は500から800カイリとなる。ただし陸軍の要求性能は高高度ホバリング(高度6千フィート、温度華氏95度)および最低230ノットで2,100カイリの飛行距離だ。
  4. 三重に冗長性を持たせたフライトバイワイヤ飛行制御システムと最新鋭エイビオニクスを備えた試作機は数か月以内に初飛行する模様だ。8月30日時点で機体は100パーセント完成しているようでN280BHの登録番号を付けベルヘリコプターのアマリロ機体組立施設に姿を現した。早ければ9月の初飛行前にエンジンテストをしているのだろう。
  5. T64-GE-419にギヤボックスを組み合わせ左右ナセルに搭載した姿がわれわれの友人スティーブ・ダグラス撮影の画像で見られる。興味を引くのはV-22のエンジンはギヤボックスとともに回転するが、V-280ではギヤボックスだけ回転する構造になっていることだ。ベルによれば「出力シャフトは駆動系にらせん状傾斜したギヤボックスを介して接続し、動力を固定ギヤボックスとプロップローターのギヤボックスに伝達し、後者が巨大な球状ベアリング上で回転する。ベアリングを動かすのは変換アクチュエータ機構だ」という。ヴァラーのギヤボックスが傾斜していることでオスプレイのティルトローター用複雑な油圧機械式機構を大幅に簡略化している。
  6. 米陸軍は汎用ヘリコプター、攻撃ヘリコプターとして採用を期待する。このため別途V-280と呼称される機体がロケット弾、ミサイル他小型UAVを機体前後に搭載するはずで、ローターの影響を考えなくてもよいのでレイアウトは自由だ。
  7. ベルヘリコプターのアマリロ施設では日本向けV-22オスプレイの一号機も最近目視されたばかりだ。■

2017年8月31日木曜日

8月29日の今回の北朝鮮ミサイルを迎撃しなかった理由


自分の選挙区にPAC3がないのは不安と防衛当局を動かした議員がいましたが、集中配備してこそ効果を発揮するのが現在のミサイル防衛ならこの議員は明らかに防衛効果を減らす方向、つまり北朝鮮の喜ぶ方向にもっていったことになりますね。お伝えしているように通常兵力では勝ち目がない北朝鮮のカードがはったりの核兵器であり、今回ご紹介の論調だと「悪の体制」と今後共存しなければなりません。これはナチドイツと宥和を図った欧州各国と同じ過ちになりませんかね。結局北朝鮮の思い通りになっていく気がしますがいかがでしょうか。

 


Would America Have Been Able to Shoot down North Korea's Missile? 今回の北朝鮮ミサイルは撃ち落とせたのか

August 30, 2017

  1. 北朝鮮は中距離弾道ミサイルを8月29日発射し、米国及び同盟国に対する新たな挑発行為に出た。
  2. 今回のテストでは日本上空を通過した。だが米国・日本にミサイルを撃破する選択肢はあったのだろうか。専門家の答えはNoのようだ。
  3. 米太平洋軍司令部は「米国防総省は北朝鮮からの弾道ミサイル一本発射を東部標準時間8月28日午後4時57分に探知した。初期分析では中距離弾弾道ミサイルと判定」と発表した。「発射地点は順案航空基地で飛翔方向は東。弾道ミサイルは日本北方上空を飛行し日本から東方500カイリの太平洋に着水した。現在関係機関と詳細評価中で追加発表していく」太平洋軍司令部の声明文では同盟国の防衛に米国が責務を果たすと強調している。
  4. だが米国、日本に飛来する北朝鮮弾道ミサイルを撃破する能力はあるのか。その答えは、可能性はおそらく少ない、となるだろう。「今回は日本上空の宇宙空間を飛翔したためミサイル迎撃はしていないはず」とジョシュア・H・ポラック(ジェイムズ・マーティン核不拡散センター研究員)は述べる。「イージスでは上昇中のミサイルには対応できません。イージスでは艦を発射地点と目標の中間地点より標的に近い地点に配備して飛翔後半で迎撃するはずです。そのため日本海に展開しているはずです」
  5. 軍縮専門家ジョセフ・シリンシオンは日本が北朝鮮ミサイルを撃破できた可能性はないと断言する。「ペイトリオットは局地防衛用の短距離ミサイルです。海上イージスも似たようなものです。THAADが韓国にありますが距離が遠すぎます。結局、現在配備中のミサイル防衛装備では迎撃は不可能でしょう」
  6. 日本がミサイル防衛に追加支出していたとしても今回の北朝鮮IRBMテストの破壊は不可能だっただろう。「THAADを札幌に配備しなければ北を飛翔するミサイル迎撃は不可能だったろう」(シリンシオン)
  7. さらに実戦になると信頼性に足りる防衛体制の実現は困難だろう。「北朝鮮が多弾頭ミサイルを発射した場合に信頼度が高い防御は不可能だ。北朝鮮はミサイル防御対策をしてくるだろう」(シリンシオン)
  8. ボラックは防衛用迎撃ミサイルは高価なうえに数が少ないので北朝鮮のミサイルテストで無駄に発射するのは賢明ではないと指摘。「発射したからと言って必ず対応する必要はない」とポラックは言う。「防衛装備は少量となるので防衛用には集中配備することになる。そもそもそういうものだ」
  9. 北朝鮮問題の行き詰まり状態を打破するのだろうか。専門家は悲観的だ。「双方で受け入れられる解決策があるとは思えなくなりました」とポラックは言う。「危機管理の仕組みがあればいいのですが、軍同士のホットラインで誤解を解消するとか」
  10. シリンシオンは唯一の可能性は最良でも一時しのぎだがテストの凍結交渉だという。「各国と一緒に厳しい制裁を実施しつつ外交をうまく使い核開発の上限を模索することで、テスト凍結はその第一歩です」「うまく行かない可能性がありますがこれが唯一の可能性であり、以前はうまく機能したのです。ただちに北朝鮮と対話を始めるべきで、新規かつ正式な交渉を開始する可能性を模索すべきでしょう」
  11. 核兵器保有国であり長距離ミサイル技術を手に入れた国として北朝鮮の事実に目を向けるべきなのか。核保有国としての北朝鮮との共存を米国は図るべきか。一度瓶から出した悪霊は元は戻らない。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.
Image: Reuters

ハリケーン被害甚大なテキサスに米軍機材多数が展開中


21世紀の軍部隊の重要な任務に災害救援人命救難活動が加わっています。今回の暴風雨による記録的な雨でテキサス南部から湾岸地区に甚大な被害が出ているようで米軍、州軍が大規模な支援を展開しています。確かに現地上空の航空管制は必要ですね。

US Military Begins Surveillance Flights Above Houston

米軍機材がヒューストン地区で上空支援活動を開始

E-3 セントリーAWACS。2014年グアム島アンダーセン空軍基地にて。空軍はE-3、海軍はP-8ポセイドン各1機をハリケーン・ハーヴェイの被害を受けたテキサス州の支援用にヒューストンに派遣中。 (U.S. Air Force photo by Lt. Col. Frederick Coleman/Released)
POSTED BY: ORIANA PAWLYK AUGUST 30, 2017

  1. ハリケーン・ハーヴェイの被害広がる中、米軍もテキサス州ヒューストン地区に偵察情報収集機含む航空機多数を派遣し救難活動を展開中だ。
  2. 海軍はP-8ポセイドン海洋哨戒偵察機、空軍はE-3早期警戒管制機を各1機派遣し、航空管制とともに洪水地区の状況把握データを第一空軍(AFNORTH北部方面隊)作戦センターに送っている。
  3. ミッションの指揮統制はティンダル空軍基地(フロリダ)の第601航空作戦センターがとる。同基地には航空救難統合調整センターも併設されている。
  4. 作戦センター隊員は24時間体制で現地当局の能力不足を埋め行方不明者の捜索救難にあたっている。
  5. AFNORTH報道官メアリー・マクヘイルによれば作戦センターはHH-60ぺイヴホーク11機、HC-130J長時間捜索救難機7機の運用を統括している。後者は給油機としても運用中。さらにセスナ数機を監視用に使っている。「MQ-1は現時点では使っていない」とマクヘイルは問い合わせに答えている。
  6. 8月30日早朝に空軍はHC-130JコンバットキングIIおよびHH-60G ぺイヴホークの乗員、支援要員を第23飛行隊をムーディ空軍基地(ジョージア)からカレッジ基地(テキサス)に移動させた。
  7. これとは別に第90救難航空団所属のぺイヴホークとHC-130P/Nコンバットキングがパトリック空軍基地(フロリダ)からフォートワースの海軍予備基地に8月28日に移動している。
  8. C-17グローブマスターIIIの2機が29日にチャールストン共用基地(ノースカロライナ)から救難物資30.6トンを搭載しアレクサンドリア国際空港(ルイジアナ)に到着している。
  9. オレゴン州軍航空隊のC-130ハーキュリーズ二機も救難活動に加わっている。
  10. アラスカ州軍からは第176飛行隊のC-130がエルメンドーフ・リチャードソン共用基地を28日に離陸し、パラシュート救難員等を運んできた。カリフォーニアの第129救難飛行隊HH-60ヘリコプターと共同作戦をする。
  11. ケンタッキー州軍航空隊の第123特殊戦術飛行隊も捜索救難に加わった。
  12. テキサス州軍は地上部隊、航空隊12千名を呼集し、その他常備部隊とともにハリケーン・ハーヴェイによる豪雨洪水の被害に対応させる。ハーヴェイは巨大ハリケーンとなりテキサス沿岸地区をまず8月25日に襲った。
  13. 犠牲者の数は増える一方で、テキサス史上最悪の自然災害になったといわれる。■

B-1Bを麻薬密輸対策に投入する意味とは




日本には麻薬密輸の流れを常時空中から行うニーズがないので自衛隊機にはこうしたミッションは縁遠く映るでしょうね。しかし米空軍は中国を視野に入れて海上ミッション経験を確保する手段に使っているのですね。最大の麻薬製造国といってよい北朝鮮が海の反対側にある日本も安心しいられません。あるいは朝鮮半島からの難民の流れを空中で捕捉監視する必要がいつ生まれてもおかしくありません。


US Air Force B-1 Bombers Are Hunting Drug Smugglers From Key West 米空軍B-1爆撃機がキーウェストを発進し麻薬密輸業者を摘発中

The obscure flights give bomber crews real-world experience while helping make up chronic intelligence shortfalls.

爆撃機乗員には実際任務の経験機会となり同時に情報収集機材不足も補える

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 29, 2017
GOOGLE EARTH
B-1が3機キーウェスト海軍航空基地で2017年3月に視認されている

  1. Google Earthでキーウェスト海軍航空基地(フロリダ)の衛星画像を見る機会があれば、妙な点に気付くはずだ。第七爆撃航空団(テキサス、ダイエス空軍基地)所属のB-1 ボーンズ 三機が見られるのはキューバの空爆用ではない。世間には知らていないミッションに従事しているのだ。つまり麻薬密輸業者の監視である。
  2. 米空軍はかれこれ10年以上にわたりB-1の他B-52Hストラトフォートレス、E-3AWACS、E-8CJSTARSを投入し、支援用にKC-135給油機も展開しカリブ海、メキシコ湾から東太平洋上空で麻薬密輸取り締まりを行なっている。各軍横断体制の任務部隊の西部任務部隊 (JIATF-W) がハワイから各省庁を巻き込んだ作戦を統合調整している。米軍、米情報機関、法執行機関ならびに関係各国代表を巻き込んだ司令部になっている。
  3. 「ボートを見つけるのは爆撃機の本来の仕事ではないと思うでしょう」と米空軍ニック・イエィツ中佐(第9爆撃飛行隊指揮官、ダイエス空軍基地)が2016年取材で語っていた。「洋上飛行はテキサス西部ではできませんので、海軍沿岸警備隊との連携機能を試せるチャンスでもあります」
  4. 「現在のミッションとしてあらゆる種類の標的を捜索することがあります」と米空軍少佐マイケル・フリック(第9爆撃飛行隊兵装戦術主任)が説明している。「通常とは違う場所での捜索となりますが戦闘能力を試す機会となり即応体制も確認できますが、こういう機会はななかなかないんですよ」
  5. 両名は2016年に行われたビッグウィーク作戦での取材で発言している。同作戦はJIATF-S並びに米南方軍(SOUTHCOM)を支援して一週間にわたり実施された。米空軍は有人無人偵察機材、地上レーダー基地をカリブ海沿岸やラテンアメリカから運用し、関係各国とも協調した。
  6. 米軍及び関係各国はこの作戦で合計6トンものコカインを押収あるいは「放棄」させた。放棄とは密輸業者が海中に麻薬を投棄し脱出することだ。一週間で6トンとはJIATF-Sが2016年に収した合計282トンの2パーセントに相当する。
  7. 目標は密輸業者の逮捕であり殺害ではないので、爆撃機は密輸ボートを捜索し、動きを監視し、情報を海軍沿岸警備隊に流すことが任務だ。その後、各部隊が密輸業者を阻止したり逮捕に動く。
  8. 米空軍やその他群所属の航空機による密輸業者の捜索は以前から行われている。麻薬戦争の初期段階からスパイ機他偵察機が大きな役割を果たしてきた。
  9. 米国は各国と「協力保安地点」や「前方作戦地点」と呼ぶ拠点をカリブ海、中央・南アメリカで構築し偵察機の離着陸場所を確保している。RC-135V/WリヴェットジョイントやC-130シニアスカウト情報収集機材、U-2ドラゴンレイディ、RQ-4無人機が「国境の南」で麻薬対策に投入されており、各フライトにはパルメットエメルド、セミノールウィンド、シャークアックスといった派手な名称がついている。
USAF
E-3 AWACSが2機, RC-135V/W Rivet Joint1機, and two KC-135給油機二機がオランダ領アンティルのキュラソー基地ランプに駐機中。
  1. 各機材へは出動要望がひっきりなしで情報収集の求めは増える一方だ。特に夜間の広範囲海洋監視でこの傾向が強い。麻薬密輸業者は探知を逃れ、半潜水式「麻薬サブ」他特殊改装舟艇を使うことが多くなっている。
  2. 「ここ数年、情報収集監視偵察(ISR)等の要望に答え切れていないのは世界各地で高い優先順位があるためです」と米海軍カート・ティッド大将SOUTHCOM司令長官が2017年4月に述べている。「特に探知監視活動で制約を強く感じており、海上空中要望の四分の一しか実現できていない」
  3. そこで通常と違う形のISRが重要となり高性能多用途戦闘機含む戦闘機材を偵察任務に投入し、搭載する電子光学式、赤外線装備やレーダー等各種センサーを利用するのだ。F-16ヴァイパーやF/A-18ホーネットの目標捕捉用ポッドなら従来型の監視偵察機能を一気に二倍にできる。
SOUTHCOM
SOUTHCOMの監視行動はここまで広範囲だ
  1. 1990年代には州軍航空隊がF-15やF-16をハワード空軍基地(パナマ運河地帯)に定期的に交代配備されこの用途にうついていた。このミッションにはコロネットナイトホークの名称がつき密輸業者では高高度を飛行する機材には手が出ないことから効果的かつ現実の訓練を行うことができた。
  2. だが1999年11月に米国はパナマ運河をパナマに返還し、同国内の軍事施設を閉鎖した。米本土やプエルトリコからの運用では戦闘機の航続距離が不足し洋上監視ミッションに困難をきたすことが多くなった。
  3. そのため州軍航空隊はコロネットナイトホーク運用を2001年8月に終了した。9-11後は米国内で戦闘機飛行隊への出動要請が増えたのはそれだけ警戒態勢が重要になったためだ。
USAF
B-52がUSNS2nd Lieutenant John P. Bobo を2007年演習で海上捕捉した
  1. それでも爆撃機など大型機はKC-135の支援を受け、洋上待機時間が大幅に伸びるため米本土基地から離陸しても十分に有効だ。近接航空支援任務が増えたためB-1BとB-52Hはともに小型機と同じ目標捕捉ポッドを搭載している。
  2. 特に米爆撃機部隊に対艦攻撃、海洋阻止任務がふたたび求められるようになってきた。西太平洋で中国に対抗するためだ。
  3. 2014年6月に空軍はAN/ASQ-236ドラゴンズアイ・アクティブ電子スキャンレーダーポッドをB-52で試験運用中と発表し、艦船の探知追跡能力が引き上げられる。最近では2017年8月にB-1がAGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)発射に成功し、爆撃機の海上運用効果の進展を実証した。
  4. フリック少佐の発言にあるように爆撃機をJSTARS含めマヤ雨密輸阻止に投入するのはカリブ海であれ別の場所であれ乗員には脅威のない世界で実際の任務で必要な技能を磨く絶好の機会となる。また他に選択肢のない場合にすぐ投入できる手段にもなる。
  5. 「一回のJSTARS飛行で他の海洋監視機材10機がカバーする海面を監視できます」と米海兵隊ジョン・ケリー大将’(前SOUTHCOM司令官)が2015年に述べている。「こうした機材を投入すれば『ウィン・ウィン』となり米南方軍と各部隊で良い結果が生まれます。こちらは必要と考えていた機材が利用でき、各軍は任務投入前に『多数目標がある環境』で腕を磨ける、ということです」
  6. 恒常的に機材不足する環境でB-1やB-52爆撃機の運航経費を考えるとこれが費用対効果が最大の解決策ではない。小型ビジネスジェット機や双発ターボプロップ機で同様の装備を搭載すればはるかに低い運航経費で効果をあげられる。
USAF
B-1がスナイパー高性能標的捕捉ポッドを搭載すると視偵察機能が向上する。
  1. そうなると、ティッド大将が2017年版の総括報告で空軍が委託業者により海上監視機材を確保し機材不足の対策としていると述べていることが理解できる。空軍はシエラネヴァダコーポレーションと一緒にボンバルディアのダッシュ-8を偵察機として運用しており、ペイルエイルの名称を与えている。うち一機が2013年10月にコロンビアとパナマの国境で墜落し4名の命が奪われる悲劇が生まれている。
  2. ただし、ティッド大将の指摘する偵察機材に新型機が投入されても需要すべてが満足できるかは不明だ。一方で2017年3月の衛星画像を見ると空軍爆撃機は引き続き重要な選択肢のようだ。■
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2017年8月30日水曜日

★★米駆逐艦事故は中国の電子攻撃が原因との見方広がる



ついに中国の名前が出てきました。ハッキング説はトンデモ理論として日本では黙殺されていますが、米軍を「危険」としておく方が都合がよい勢力にとって良い状況です。米軍艦をハッキングしなくても防御の緩い民間船を乗っ取れば旅客機や大型トラック同様に恐ろしい攻撃が可能となるのですが。


The US Navy guided-missile destroyer USS John S McCain is seen after a collision, in Singapore waters August 21, 2017. Photo: Reuters/Ahmad Masood
事故直後のUSSジョン・S・マケイン。August 21, 2017. Photo: Reuters / Ahmad Masood

Ship collisions raise specter of Chinese electronic warfare

衝突事件に中国電子戦の関与の疑い

By BILL GERTZ AUGUST 29, 2017 12:39 PM (UTC+8)
  1. 中国は艦船、航空機、ミサイルの機能を電子的に妨害する高度能力を整備し、人民解放軍(PLA)が将来の対米戦でこれを利用するのは確実だ。
  2. 立て続けに発生した米海軍艦船と民間商船の衝突事故で背後に中国がいるとの観測が生まれており、電子手段でレーダー・航法装置を妨害し衝突させたと主張する軍事専門家がいる。
  3. ジャマー、妨害装置、サイバー手段で中国は世界最先端の装置を開発しており、電子装置で原因不明の誤作動や自損事故を起こさせられる。
  4. 今年7月30日、最新鋭電子戦装備が内蒙古でのPLA軍事パレードに参加した。中には敵防空網のレーダー、通信の妨害、地上通信かく乱用の装備があった。
  5. 「電子戦は今や戦闘の中核手段だ」と新華社で中国電子戦の中核主導者Wu Yafeiが語っている。「新型電子戦装備導入でPLAの作戦能力は大幅に引き上げられた」
  6. 2015年にはPLAは電子戦部隊、サイバー戦部隊を統合し戦略支援軍を編成した。
  7. 中国の軍事文献では電子戦関連が多数あり、2012年の論文ではPLAの「海上狼群」整備を分散型電子戦体制として敵の戦闘群攻撃に使うとしている。
  8. 2011年の中国航空宇宙科学工業公司の論文では「イージス艦対抗装備」を取り上げている。フィッツジェラルド、マケインはともにイージス艦であり、日本、韓国もイージス戦闘艦を運用している。同論文では大量の極超音速ミサイルと電子装備の併用でイージス艦を攻撃すると述べている。
  9. 「イージスへの攻撃は極めて困難だが、精密誘導技術の急速な進展とミサイル技術によりイージス防衛システムも万能とは言えなくなっている」とあり、最後には「イージスシステムが高性能装備であっても無敵の防御手段はありえない」としていた。
  10. 中国は近年では自国周辺の海域すべてでの覇権確立を目指し南シナ海、東シナ海他の周辺海域は中国の海洋主権の適用範囲だと主張し米海軍をアジアから追い出したいのだ。
  11. 連続発生した艦船衝突事故で米海軍関係者から両駆逐艦の電子機器がハッカーで妨害されたのではとの疑いが表明されていたが、実際に妨害があったのか判明していない。調査部門の主流の見方は機械的な故障あるいは乗員の人的ミスだしている。
  12. ただし米海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将は電子防御装備が妨害または欺瞞されていたかも調査するとしている。
  13. 両艦はともに側部を衝突されている。USSジョン・S・マケインは8月21日に石油タンカーとマラッカ海峡で衝突している。USSフィッツジェラルドは日本近海で6月21日にコンテナ船に衝突された。二件で17名の乗員が死亡し、第七艦隊司令長官が罷免された。
  14. まずフィッツジェラルドで疑問が呈された。海軍の中間報告では事故原因の言及がない。フィッツジェラルドは照明を落とした状態で航行していたが最小限の艦内照明はつけていた。当時は「月が比較的明るく」「視認距離は制限なかった」とある。
  15. レーダーも見張り員も衝突前に貨物船を確認できなかったことから電子妨害説が出てきた。そのひとつが貨物船の自動操艦の乗っ取りで衝突コースにさせられたとする。
  16. マケインも同様に衝突時点でレーダー数種類を使っており、当直将校が艦橋にいた。
  17. さらに疑義が出ているのはマケインが数日前に航行の自由作戦でスプラトリー諸島ミスチーフ礁の12カイリ地点を航行し中国の主張に立ち向かっていたことだ。
  18. マケイン事件後に中国外務省報道官Hua Chunyingは米海軍の操艦が危険だと批判していた。「たびたび米軍が発生させている事故で懸念が広がっている。米国は事故を深刻にとらえて適正な措置を取るべきだ」
  19. 米海軍が中国の電子妨害をマケイン衝突事故で疑う背景に事故直前に中国籍船がそばにいたことがある。民間商船の航路追跡データでみると同中国船はマケインに衝突した貨物船に追尾しており衝突寸前に離れている。
  20. 空軍大学で戦略安全保障論の教授デイビッド・ベンソンは中国が軍艦を電子攻撃するリスクを冒すか疑問と述べている。「中国にせよ他国にせよ海軍艦艇をハッキングする明白な動機がない」とWar on the Rocksのブログで述べている。「サイバー攻撃技術は極めて不安定であり、仮に実行犯が駆逐艦を邪魔したとしても平時に実施すれば代償は大きい」
  21. 国際評価戦略センターの上級研究員リック・フィッシャーは中国の動向を研究しておりベンソンに同意しない。
  22. 「中国に米軍をアジアでハッキングしたり事故を起こさせる同機が一切ないとは笑止千万だ。一連の事故で中国が裏で手を引いていたのかいなかったのかと関係なく中国国営メディアは事故を利用し米海軍に『無能』とか『危険』のレッテルを貼り、米海軍への敵意をあおりアジアからの米軍一掃をねらってくるでしょう」
  23. 調査の進展次第で海軍の業務執行状態の改善や訓練増強が必要となるだろうが、軍の立案部は引き続きサイバーや内部反逆者含む中国の各種脅威に備える努力を怠ってはならない。そのほか、新型潜水艦、対艦弾道ミサイルさらに原子力空母戦闘群の出現に備えるべきだ。■