スキップしてメイン コンテンツに移動

B-1Bを麻薬密輸対策に投入する意味とは




日本には麻薬密輸の流れを常時空中から行うニーズがないので自衛隊機にはこうしたミッションは縁遠く映るでしょうね。しかし米空軍は中国を視野に入れて海上ミッション経験を確保する手段に使っているのですね。最大の麻薬製造国といってよい北朝鮮が海の反対側にある日本も安心しいられません。あるいは朝鮮半島からの難民の流れを空中で捕捉監視する必要がいつ生まれてもおかしくありません。


US Air Force B-1 Bombers Are Hunting Drug Smugglers From Key West 米空軍B-1爆撃機がキーウェストを発進し麻薬密輸業者を摘発中

The obscure flights give bomber crews real-world experience while helping make up chronic intelligence shortfalls.

爆撃機乗員には実際任務の経験機会となり同時に情報収集機材不足も補える

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 29, 2017
GOOGLE EARTH
B-1が3機キーウェスト海軍航空基地で2017年3月に視認されている

  1. Google Earthでキーウェスト海軍航空基地(フロリダ)の衛星画像を見る機会があれば、妙な点に気付くはずだ。第七爆撃航空団(テキサス、ダイエス空軍基地)所属のB-1 ボーンズ 三機が見られるのはキューバの空爆用ではない。世間には知らていないミッションに従事しているのだ。つまり麻薬密輸業者の監視である。
  2. 米空軍はかれこれ10年以上にわたりB-1の他B-52Hストラトフォートレス、E-3AWACS、E-8CJSTARSを投入し、支援用にKC-135給油機も展開しカリブ海、メキシコ湾から東太平洋上空で麻薬密輸取り締まりを行なっている。各軍横断体制の任務部隊の西部任務部隊 (JIATF-W) がハワイから各省庁を巻き込んだ作戦を統合調整している。米軍、米情報機関、法執行機関ならびに関係各国代表を巻き込んだ司令部になっている。
  3. 「ボートを見つけるのは爆撃機の本来の仕事ではないと思うでしょう」と米空軍ニック・イエィツ中佐(第9爆撃飛行隊指揮官、ダイエス空軍基地)が2016年取材で語っていた。「洋上飛行はテキサス西部ではできませんので、海軍沿岸警備隊との連携機能を試せるチャンスでもあります」
  4. 「現在のミッションとしてあらゆる種類の標的を捜索することがあります」と米空軍少佐マイケル・フリック(第9爆撃飛行隊兵装戦術主任)が説明している。「通常とは違う場所での捜索となりますが戦闘能力を試す機会となり即応体制も確認できますが、こういう機会はななかなかないんですよ」
  5. 両名は2016年に行われたビッグウィーク作戦での取材で発言している。同作戦はJIATF-S並びに米南方軍(SOUTHCOM)を支援して一週間にわたり実施された。米空軍は有人無人偵察機材、地上レーダー基地をカリブ海沿岸やラテンアメリカから運用し、関係各国とも協調した。
  6. 米軍及び関係各国はこの作戦で合計6トンものコカインを押収あるいは「放棄」させた。放棄とは密輸業者が海中に麻薬を投棄し脱出することだ。一週間で6トンとはJIATF-Sが2016年に収した合計282トンの2パーセントに相当する。
  7. 目標は密輸業者の逮捕であり殺害ではないので、爆撃機は密輸ボートを捜索し、動きを監視し、情報を海軍沿岸警備隊に流すことが任務だ。その後、各部隊が密輸業者を阻止したり逮捕に動く。
  8. 米空軍やその他群所属の航空機による密輸業者の捜索は以前から行われている。麻薬戦争の初期段階からスパイ機他偵察機が大きな役割を果たしてきた。
  9. 米国は各国と「協力保安地点」や「前方作戦地点」と呼ぶ拠点をカリブ海、中央・南アメリカで構築し偵察機の離着陸場所を確保している。RC-135V/WリヴェットジョイントやC-130シニアスカウト情報収集機材、U-2ドラゴンレイディ、RQ-4無人機が「国境の南」で麻薬対策に投入されており、各フライトにはパルメットエメルド、セミノールウィンド、シャークアックスといった派手な名称がついている。
USAF
E-3 AWACSが2機, RC-135V/W Rivet Joint1機, and two KC-135給油機二機がオランダ領アンティルのキュラソー基地ランプに駐機中。
  1. 各機材へは出動要望がひっきりなしで情報収集の求めは増える一方だ。特に夜間の広範囲海洋監視でこの傾向が強い。麻薬密輸業者は探知を逃れ、半潜水式「麻薬サブ」他特殊改装舟艇を使うことが多くなっている。
  2. 「ここ数年、情報収集監視偵察(ISR)等の要望に答え切れていないのは世界各地で高い優先順位があるためです」と米海軍カート・ティッド大将SOUTHCOM司令長官が2017年4月に述べている。「特に探知監視活動で制約を強く感じており、海上空中要望の四分の一しか実現できていない」
  3. そこで通常と違う形のISRが重要となり高性能多用途戦闘機含む戦闘機材を偵察任務に投入し、搭載する電子光学式、赤外線装備やレーダー等各種センサーを利用するのだ。F-16ヴァイパーやF/A-18ホーネットの目標捕捉用ポッドなら従来型の監視偵察機能を一気に二倍にできる。
SOUTHCOM
SOUTHCOMの監視行動はここまで広範囲だ
  1. 1990年代には州軍航空隊がF-15やF-16をハワード空軍基地(パナマ運河地帯)に定期的に交代配備されこの用途にうついていた。このミッションにはコロネットナイトホークの名称がつき密輸業者では高高度を飛行する機材には手が出ないことから効果的かつ現実の訓練を行うことができた。
  2. だが1999年11月に米国はパナマ運河をパナマに返還し、同国内の軍事施設を閉鎖した。米本土やプエルトリコからの運用では戦闘機の航続距離が不足し洋上監視ミッションに困難をきたすことが多くなった。
  3. そのため州軍航空隊はコロネットナイトホーク運用を2001年8月に終了した。9-11後は米国内で戦闘機飛行隊への出動要請が増えたのはそれだけ警戒態勢が重要になったためだ。
USAF
B-52がUSNS2nd Lieutenant John P. Bobo を2007年演習で海上捕捉した
  1. それでも爆撃機など大型機はKC-135の支援を受け、洋上待機時間が大幅に伸びるため米本土基地から離陸しても十分に有効だ。近接航空支援任務が増えたためB-1BとB-52Hはともに小型機と同じ目標捕捉ポッドを搭載している。
  2. 特に米爆撃機部隊に対艦攻撃、海洋阻止任務がふたたび求められるようになってきた。西太平洋で中国に対抗するためだ。
  3. 2014年6月に空軍はAN/ASQ-236ドラゴンズアイ・アクティブ電子スキャンレーダーポッドをB-52で試験運用中と発表し、艦船の探知追跡能力が引き上げられる。最近では2017年8月にB-1がAGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)発射に成功し、爆撃機の海上運用効果の進展を実証した。
  4. フリック少佐の発言にあるように爆撃機をJSTARS含めマヤ雨密輸阻止に投入するのはカリブ海であれ別の場所であれ乗員には脅威のない世界で実際の任務で必要な技能を磨く絶好の機会となる。また他に選択肢のない場合にすぐ投入できる手段にもなる。
  5. 「一回のJSTARS飛行で他の海洋監視機材10機がカバーする海面を監視できます」と米海兵隊ジョン・ケリー大将’(前SOUTHCOM司令官)が2015年に述べている。「こうした機材を投入すれば『ウィン・ウィン』となり米南方軍と各部隊で良い結果が生まれます。こちらは必要と考えていた機材が利用でき、各軍は任務投入前に『多数目標がある環境』で腕を磨ける、ということです」
  6. 恒常的に機材不足する環境でB-1やB-52爆撃機の運航経費を考えるとこれが費用対効果が最大の解決策ではない。小型ビジネスジェット機や双発ターボプロップ機で同様の装備を搭載すればはるかに低い運航経費で効果をあげられる。
USAF
B-1がスナイパー高性能標的捕捉ポッドを搭載すると視偵察機能が向上する。
  1. そうなると、ティッド大将が2017年版の総括報告で空軍が委託業者により海上監視機材を確保し機材不足の対策としていると述べていることが理解できる。空軍はシエラネヴァダコーポレーションと一緒にボンバルディアのダッシュ-8を偵察機として運用しており、ペイルエイルの名称を与えている。うち一機が2013年10月にコロンビアとパナマの国境で墜落し4名の命が奪われる悲劇が生まれている。
  2. ただし、ティッド大将の指摘する偵察機材に新型機が投入されても需要すべてが満足できるかは不明だ。一方で2017年3月の衛星画像を見ると空軍爆撃機は引き続き重要な選択肢のようだ。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...