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金正恩の一言は緊張緩和への第一歩なのか?



ゲームは高度化しています。金正恩対トランプのレトリック勝負は金正恩がリードしているようですが、米政権がこのまま劣勢を甘んじるはずはなく、いつどんなどんでん返しが起こってもおかしくないと思います。むしろメッセージを読み間違えることの危険の方が怖いのですが、日本はこの点ナイーブな受け止め方をしがちなのでリスクがあります。またいくら北朝鮮が悪の態勢だとしても存在を認めざるを得ない状況になってきたらどうするのか、いまからしっかり考えておく必要があると思いますが、読者諸賢のご意見はいかがですか。


Kim Jong-un Leaves an Opening for De-escalation. Should the United States Take It?

金正恩が示す緊張緩和の選択肢を米国は受け入れるべきだろうか
A B-1B Lancer aircraft sits in the aircraft parking area at Ellsworth Air Force Base, S.D.
August 19, 2017



  1. 「炎と怒り」の一週間で北朝鮮がグアム攻撃をちらつかせたが、平壌とワシントンが緊張緩和に向かう好機が来ているのかもしれない。
  2. 国営朝鮮中央通信(KCNA)によれば金正恩は火星-12中距離弾道ミサイル数発をグアム島周囲に射撃する案の説明を受けたが実施命令を下さず「ヤンキーがさらに愚行に走るのを静観」し将来の実施に含みを持たせることにしたという。
  3. 今回のKCNA報道の第一報はいつもの米朝二国間の言葉の応酬の延長に写ったが、米政策決定層も最高指導者が延々と続ける空虚な発言の真意を理解できれば緊張緩和の機会がきたとわかるはずだ。
  4. 最新のKCNA報道や先週発表の北朝鮮戦略軍報道官の声明を見ればグアム島周囲にミサイルを撃ち込む目的は北朝鮮へ対する米軍軍事行動に先手を打つことだとわかる。B-1B爆撃機がグアムから出撃すれば、金はグアム島周囲にミサイルを撃ち込み、その気になれば同島を制圧できる力を誇示する。ただしこの戦術の欠点は米軍が爆撃機運用を停止すれば北朝鮮はミサイルを発射できないことだ。さらに北朝鮮は米国へ韓国との大規模合同軍事演習の中止も求めている。予定では8月末に始まる。高圧外交の典型例だ。
  5. 今やボールは米側にあり、トランプ政権に選択肢はふたつある。まず、北朝鮮の脅威はこけおどしで政策変更に値しないと判断し爆撃機、演習は予定通り実施する。もうひとつは軍事行動を変更し、北朝鮮を宥和し緊張緩和の機会ととらえ利用することだ。いずれもリスクを伴うが、後者の方が損失は低く手に入る効果は前者より高い。
  6. 方向転換よりも倍掛けを好むトランプの気性から北朝鮮脅威に強硬策を取る可能性が高い。北朝鮮が挑発に出れば米軍が圧倒的な報復攻撃を実施できるので、北朝鮮もグアムに手を出して支払う代償を考えれば行動しにくくなるはずだ。さらに北朝鮮に恭順な態度を示せば同国を勇み足にしてさらに高圧的な脅迫を将来してくるだろう。
  7. 北朝鮮の高圧的態度を拒否すれば比較的低リスクのオプションとなるがあくまでも北朝鮮がグアム包囲ミサイル発射策を追求しない限りにおいての話だ。脅威の効果を信用させるには能力と意思のふたつの要素が必要だ。北朝鮮ミサイル技術がここにきて進展を示しており脅迫の実行能力があることを意味する。だが実行を貫徹する意思があるのか見極めるのは困難だ。トランプ政権はまさか米国の報復攻撃を招く事態を北朝鮮が招くはずはないと考えている様子が明白にわかる。しかし、この計算が間違っていれば米国を一層のエスカレーションに走らせ、米国の権益に逆効果になる。
  8. もし米国にとって軍事行動を変更しても失うものより得られる結果が大きいければ、北朝鮮を是認する政策選択が妥当となる。平壌が米国に中止を求めているのはB-1Bのグアム島からの運用と大規模米韓軍事演習のふたつだ。双方とも中止しても米国の負担はわずかなですむ。
  9. 北朝鮮がB-1Bを恐れる理由の中心は核兵器運用機材とみているからだ。この脅威論はいかにも現実的のようだが、実は北朝鮮の高圧外交に妨げとなる。米国は北朝鮮の恐怖を逆手に取ればよい。B-1B運用を一時的に停止すれば平壌に大きな貸しを売ることとなるが、その他の装備で北朝鮮への抑止効果が維持でき米側に損は少ない。B-1B飛行停止に同意すれば北朝鮮が本当に緊張緩和に真剣なのか低コストで確認できる。
  10. 毎年恒例の米韓軍事演習を中止することも北朝鮮の高圧外交の目標のひとつだが、実現性は少ない。演習の一部でも変更すれば平壌の勝利となり、完全中止でなくてもいいのだ。たとえば今年前半のフォールイーグル演習でF-35と米韓特殊部隊が北朝鮮核ミサイル施設強襲作戦を実施したが、この部分だけでも次回演習から中止すれば米韓両国は将来の北朝鮮核兵力破壊の実施に困難をきたす。だが現在の北朝鮮は核兵器が有事の初期段階で「使うか、破壊されるか」の悩みがあり、この措置で悩みを減る。
  11. 北朝鮮の高圧外交は米国にリスクのある選択になる。ただし一部にせよ北朝鮮の要求に応じれば逆に同国の交渉態度や真剣さが分かる貴重な情報が得られるし、米国は恭順さの代償も最小限にできる。
  12. 北朝鮮の要求への譲歩を拒絶すれば平壌は引きさがるざるはずと考えるのは間違っている。むしろ米国は今以上の緊張を生み出すエスカレーションへ進まざるを得なくなる。金正恩からトランプ政権に危機状況をこれ以上エスカレートさせない機会が提供されているのだ。それを真に受けてもリスクはあるがいまのままの道を進むことで勝利実現しそうもない。■
Eric Gomez is a policy analyst for defense and foreign-policy
studies at the Cato Institute.
Image: Department of Defense

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