2019年10月8日火曜日

ベルが米陸軍向け新型偵察ヘリ ベル360 を発表


Bell Unveils Army Scout Helicopter — With Wings

ベルが新型陸軍用偵察ヘリコプターを発表、主翼を搭載

With its trademark tiltrotors too big for the Army’s FARA requirement, Bell is squeezing every ounce of performance out of a helicopter. Will it be fast enough?

お得意のティルトローターでは陸軍のFARA要求水準には大きすぎるため、ベルは小型化で性能を引き出す構想とした。だが十分に高速なのか。
on October 02, 2019 at 5:00 AM

Bell Flight graphic
Bell 360インヴィクタス Invictus の概念図

陸軍の将来型攻撃偵察機材構想Future Attack Reconnaissance Aircraft へのベル提案には驚くべきパラドックスが見られる。ベル360インヴィクダス(ラテン語で征服されざるもの)の名称がつき、各社提案の中でもっとも強力に見える一方、高速飛行性能と引き換えに低運行費用は劣る存在になっている。
前方に機関銃を配備し、薄い主翼をつけ、非対称型テイルローターのベル360の機体には数々の革新的技術が詰まっている。目には見えないが、性能の発揮に欠かせないのが完全デジタル制御システムで民生用ベル525リレントレスからの流用だ。525は現在FAA型式証明の取得中で初のフライ・バイ・ワイヤ操縦のヘリコプターとなる。電子制御の最高速度200ノットが実現する。ベルは360でも同程度の速度になるのか言明していないが、コンピュータモデリングと風洞テストで抗力の低減に相当努力しているのは事実だ。
だがベル360は通常型ヘリコプターの一種である。大型ローターで揚力と推進力を稼ぐものの、飛行距離と速力で制約から逃れられない。この壁の突破にベルはV-22やV-280の両ティルトローター機を準備した。
対照的なのがシコースキーS-97レイダーで、ヘリコプターと航空機のハイブリッドとして超硬度主ローターを主翼のように使い推進プロペラで推力を稼ぐ。ベルのティルトロータ同様にシコースキーの複合ヘリコプターは従来型ヘリの性能上の限界を突破する狙いがある。
その他競合相手には実機が未完成だが、ボーイングケイレムAVX/L3チームがある。だがシコースキーとベルの先行はあきらかだ
革新性ではS-97がベル360の相当先を往く。だがS-97も実証済みの設計となっており、すでに飛行テスト開始から数年がたち207ノットを達成した。これに対しベル360は縮小モデルが風洞内でテストしただけだ。では2022年末に実機が飛ぶとどこまでの速力となるのか。
「180ノット超となります」とベルの高性能回転翼機担当副社長キース・フレイルが一部記者を招いた特別説明会で述べた。180ノットはべ陸軍の巡航速度要求で機体は長時間に渡りこの性能を維持する内容だ。
では陸軍要求のダッシュ速度205ノットはどうか。「この機体は180ノット超」とフレイルは繰り返す。「陸軍要求は180ノットで当社は絶対に180を超えてみせます」
だが205ノットはどうか。「205要求はありません」とフレイルは述べた。
フレイルは記者会見後、筆者に認めた。陸軍がFARAに求める180ノット超は必要なとき短時間に限られるという。だが陸軍は「ダッシュ速度」での厳しい性能要求を設定していない。
「巡航速度180は譲歩の余地なしでの最低水準」と陸軍でFARA事業を統括するダン・ブラドレーは電子メールで筆者に伝えてきた。「ダッシュで205は望ましい性能」とし、陸軍はダッシュ速度は採択の条件ではなく、「最適条件」で実現可能かを評価するだけだという。
これは最近の陸軍の特徴たる柔軟かつ実際的なアプローチの一例であっり、これまでの硬直した要求内容と業界にリスクを無視してまで実現を共用してきた流れと好対照だ。とくにFARAでは速度、信頼性、価格などでのトレードオフを認めており、異例ともいえる許容度を業界に認めている。
Bell photo
ベルV-280ヴェイラー・ティルトローターが水平飛行中。V-280は将来型長距離強襲機(FLRAA)の最右翼候補とみなされるが、この基本設計はFARA向けの小型化は不可能だった
陸軍も現行機種より高速性能を求めており、FARA偵察ヘリには対空砲火をくぐり抜ける性能を想定している。だが機体の生存を決めるのは速力だけではない。陸軍は小型かつ機動性の高い機体を望んでおり、丘陵地や建物の影に隠れる性能を重視している。事実、回転翼の最大直径を40フィートにしたのは陸軍として譲ることができない要求となっている。このためベルお得意のティルトローターが使えなくなった。
FARAは過酷な条件で昼夜問わず飛行する必要があり、十分な整備基地がない条件も想定する。イラクではこのような基地が長距離ミサイルの標的になったこともある。「一日の終りに機体をほこりだらけの環境で整備する必要があるでしょう」(フレイル)
ベル360は速力ではシコースキーS-97にはかなわないが、ベルはセールスポイントは他にあるとする。「価格には細心の注意を払っています。ベル360は妥当な価格でリスクを最小にしながら、複雑な機構にしなくてもFARA要求性能を実現できます」”
「コーヴェットがほしくて買う予算もあるのにわざわざフェラーリを買いますか?」と在ワシントンDCのベル執行副社長ジェフ・シュレーザーが問う。「本機は高機動性の機体でお手頃な価格で米陸軍の要求内容をすべて満足させます。これ以上の機体では維持が大変でしょう」
だがフレイル、シュレーザーともに筆者が他にも低価格低技術内容の提案があると指摘するとみるみる興奮を示した。
「エキゾチックさを犠牲にしないエレガンスが手に入るのです。ここまで簡単には普通行きませんよ」(フレイル)
ベル360は高性能機軸が多数盛り込み、通常の回転翼機から一線を画すもので一部は民生用ベル525の流用だが、多くは独特の性能だ。
  • まず目につくのが主翼で揚力を稼いでいることだ。特に高速になればそれだけ多くの揚力を生む。つまり主ローターは高速度域では揚力の50パーセントしか産まず、残りの出力を加速に使えることになる。
  • ベル360はエンジンが複数装備される。GEが改良したタービンエンジンは低速域で推力を有無が、高速度になると補助出力ユニット(SPU)が起動する。これも可能な限りの出力を手に入れるためだ。
  • 主ローターのブレイドは4枚で、ベル525のものを縮小しているが、整流化ハブにつけ、抗力を最小化し、「完全関節接合」で最高の空力効率の確保のため屈曲したり原型に戻したりする。
  • 降着装置とミサイルラックはともに引き込み式で高速飛行で格納して抵抗力飛行が実現し、低速になり機体から伸長される。
  • 機体後部は意図的に非対称形になっており、右側に排気口とテイルローターがつく。フレイルからはこの設計にした理由の説明はなかったが、通常のヘリコプターではテイルローターから不均衡な力が生まれており、ベル360は非対称形にすることで戦闘機同様に「力学的に不安定」にすることで機動性を確保しているのかもしれない。
  • 機体は全電子フライ・バイ・ワイヤ制御で米戦闘ヘリコプターでは初となる。空力上で不安定な機体の制御には不可欠である。またコリンズエアロスペースがプラグアンドプレイ方式のアーキテクチャを提供しており、電子関連の交換、アプpグレードが容易に実施できる。ただし、ベル含め全社は陸軍が手動するFACE標準に準拠する必要がある。
微妙な操作が必要となるのはローター角度のみならず設計全体に及ぶ。ベルは信頼性を高めた低リスク提案をめざし、実証済み設計を基本に採用しており、シコースキーS-97のような革新性は追求していない。一方でベルは通常型設計から機能性能を引き出そうとし、機内に多くの新機軸も搭載している。ベル525の設計をさらに洗練させて新技術を採用している。ただしベル525は2016年に墜落事故を起こしFAA型式証明がまだ下りていない。
ベルは360を純粋に訴求力のある選択肢と位置づけし、シコースキーがフェラーリなら同社はコーヴェットをめざす。その真価は実機が完成して飛行性能を証明しないとわからない。■

2019年10月7日月曜日

中国の新型無人ISR機材 WZ-8 は台湾、日本をカバー

Images suggest WZ-8 UAV in service with China’s Eastern Theatre Command

Andreas Rupprecht, Mainz - Jane's Defence Weekly
04 October 2019


10月1日北京の軍事パレードでWZ-8UAV2機の機体番号は抹消あるいは隠されていた。Source: Greg Baker/AFP/Getty Images

10月1日の軍事パレードに登場したWZ-8高高度高速偵察無人機(UAV)が人民解放軍空軍(PLAAF)の第30航空連隊に編入され、江蘇省首都の南京近郊の六合航空基地に配備されていると示す写真がある。

画像は中国国営メディアが10月1日の北京パレードの予行演習で公開したもので三角形主翼のUAVに21311、21312の番号がついている。
番号が5桁で21x1xの配列はH-6M戦略爆撃機とともに東方戦域司令部の隷下にあることを示す。同司令部は台湾、日本を担当する。

ただし、10月1日のパレードでは機体番号は消去あるいは覆いをつけ判読できないようになっていた。

WZ-8はエンジン双発構造だが空気取り入れ口が見当たらず空気吸い込み式ではないようだ。機体上部の構造からは母機が運び、その場合はH-6の可能性が高く、通常型の降着装置がついている。


H-6Nの機体下部は改修されており空中発射式弾道ミサイルの運搬用との観測があった。ただし、そうではなくWZ-8搭載用途見るべきだろう。ただし、確認のための情報はまだない。■

2019年10月6日日曜日

新装備、新戦術で米海兵隊は今後どう変化していくのか、新任司令官が解説

The Future of the Marines Is Smaller, More Robotic, More Naval 

海兵隊の将来は規模縮小ながらロボット化、海軍化を進める

ENDLETON, Calif. (Apr. 25, 2017) A unmanned vehicle, part of the Multi-Utility Tactical Transport (MUTT) family of systems, operates on Red Beach during the Ship-to-Shore Maneuver Exploration and Experimentation (S2ME2) Advanced Naval Technology Exercise
  • BY PATRICK TUCKER
  • TECHNOLOGY EDITOR
OCTOBER 3, 2019
U.S. NAVY PHOTO BY JOHN F. WILLIAMS/RELEASED 

新しく就任した海兵隊総監がハイテク部隊への道筋を示している。それによれば今後は特殊部隊同様の働きとなるという。

海兵隊は今後縮小することはあっても拡大はない。海、空、陸で無人機への依存度も高まり、強襲作戦や艦艇防御にあたる。小規模分散型の集団として探知されずに行動し、現在の特殊作戦部隊に似てくるだろうと就任後わずか10日の海兵隊総監デイヴィッド・ヒルベリー・バーガー大将が述べている。
バーガー大将はヘリテージ財団で7月に発表した総監計画ガイドラインを紹介していた。バーガーが求めるその他変革には海軍とより密接に協同して艦船の防御活動がある。
「この分野には注目してこなかったのですが、今後は海兵隊が陸上、あるいは艦上で長距離対艦ミサイルの運用にあたり空や海上で火力を提供するところを想像してください」
これは同時に海兵隊が陸上や艦上で火砲を扱うことを意味するが、すでに実現している。7月にUSSボクサー艦上で小型海兵隊防空統合システムLMADISの名称でジャマー試作型を運用しイランの無人機を艦から1000フィート地点で撃墜している。「今後はこのような仕事が増えるだろう」(バーガー)
海兵隊では無人機運用の経験値も高めているとバーガーは述べている。その例が2017年にカリフォーニア州レッド・ビーチでの揚陸演習だという。
だが演習と新構想には大きな違いがあり、新型無人機の大幅導入すなればなおさらだ。「無人装備を作戦に組み込む当初の推進役は人員ではなく機械を送る構想で人へのリスクを下げることだった。今や無人装備の追加で部隊の威力を大きく見せ、さらに無人有人の組み合わせをいかに有効活用するか。ウィングマンが無人機にできるのか、あるいはともに無人機にできるか。これでミッション効果を引き上げられるか、が現在の問題意識だ」
バーガー大将からはさらにトップダウンでの大きな変化について言及があった。「あえて目標を設定しないと前進は実現しない。気にいるいらないの問題ではなく、今はすべてが有人を前提になっている」
無人装備が配備されると戦闘の様相も変わってくる。海兵隊は「遠征前線基地で分散型機動性の小部隊に補給、給油し、前進させ敵を撃破して移動させる作戦をすべて低探知性を重視して行われる」とバーガー大将は述べた。
さらに一層多様な艦船を使用する。民間商船の利用も含まれる。「民間商船でもすべてが無人装備運用に適していない。L型商船はだめだ。標的になる。必要な商船だが不十分だ。E型では利用の仕方でもっと工夫が必要だ。今後の部隊展開でLPD-17級やLHA-LHD型強襲揚陸艦がいつも利用できるとは限らない。利用方法の検討は必要だ」
だがそれより大きな変革が進んでいる。海兵隊の他軍の例にもれず交戦規則の見直しにかかっていると大将は紹介し、開戦寸前の状態の場合に実際の状況にかなっているかを点検しているとする。特に敵と友軍が区別しにくい状況を念頭に置くという。
「こちらの交戦規則ではグレイゾーン状況には対応できていない....だがそれこそ現在の世界の現実だ。現行の交戦規則が試されており、今道筋を正そうとしている」とバーガー大将は述べた。■
Patrick Tucker is technology editor for Defense One. He’s also the author of The Naked Future: What Happens in a World That Anticipates Your Every Move? (Current, 2014). Previously, Tucker was deputy editor for The Futurist for nine years. Tucker has written about emerging technology in Slate, ..

コメント 従来の海兵隊像を打ち破る構想が必要なほど、現実が変化しているということですか。対艦ミサイル運用などは陸上自衛隊がずっと模索して装備を開発してきた分野で、ここは日本が先進性を示していたということでしょうか。

2019年10月2日水曜日

中国の新型極超音速兵器DF-17は完成した装備ではない可能性



Check Out China's New DF-17 Hypersonic Glide Vehicle: A Real Killer? 中国の極超音速滑空ミサイルDF-17が要注目、威力はどこまであるのか。

Can the U.S. military match it? How capable is it? 米軍に匹敵する装備はあるのか。どこまでの性能があるのか
by David Axe 
October 1, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaMillitaryTechnologyWorldDF-17HGV
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国人民解放軍が2019年10月1日公開した新型極超音速ミサイルは太平洋に展開する米軍に新しい脅威となりそうだ。
DF-17極超音速滑空飛行体(HGV)は15千名を動員した人民共和国体制発足70周年を祝うPLA軍事パレードで初公開された。
極超音速兵器の開発に取り組む各国が、音速の5倍超の速度で移動する動力付きあるいは滑空方式の精密誘導攻撃手段の実現をめざす中で、DF-17は初の、または二番目の極超音速滑空体として配備される装備となる。ロシアはHGV配備を2019年に発表している。
パレードにはDF-17が16本登場し、DF-16中距離弾道ミサイルと思われるものの上に搭載されていた。DF-16がDF-17をマッハ5超まで加速し、DF-17が分離されて標的に向かい飛翔経路を変更しながら敵の防空網を回避する。
DF-17が弾頭を搭載しているか不明だ。「DF-17は通常弾薬を装備しHGVの運動エナジーから破壊力を発生する構想だろう」とJane’sのアンドリュー・テイトがコメントしている。
推定射程が1000マイル程度なのでDF-17は西太平洋に展開する米軍に脅威となる。
元陸将の日大の吉富 望教授はDF-17の登場で既存の防衛体制は陳腐化するとロイターに述べている。「もっと高性能の弾道ミサイル防衛体制がないと日米両国は対抗できなくなる」
「こんな兵器が配備されれあば対応できる装備がない」とジョン・ホイテン米戦略軍司令官(当時)は上院軍事委員会で2018年3月に発言していた。
極超音速兵器は拡散しつつある。2018年12月にロシア大統領ウラジミール・プーチンがロシア軍が高性能極超音速滑空体をテスト中と認め「技術面ではすべて実証に成功した」と国営TASS通信が報じていた。
他方で米国は初のHGV部隊を発足させようとしている。ペンタゴンは2018年末にダイネティクスおよびロッキード・マーティンにあわせて7億ドル相当の契約を交付しており、「共通型の」極超音速飛翔体20基、誘導装置8式、発射台4基の製造をさせる。米陸軍がHGV発射部隊をはやければ2023年に発足させる。
米海軍、米空軍も同じHGVの導入を予定している。このうち海軍はトマホーク巡航ミサイル同様に潜水艦から垂直発射させるとする。
空軍は爆撃機に搭載する。B-1爆撃機を発射母機とする意向だが、B-1では信頼性が引き続き問題となっている。
一番乗りを競うロシアと中国は信頼性が低いままで配備することになるかもしれない。米国防次官(研究開発)マイケル・グリフィンが2018年にライバル国が進展をみせているものの、極超音速兵器研究では米国が世界のリーダーであることに変わりないと2018年7月に述べている。
ペンタゴンとしては未完成の装備品を第一線配備する必要はなく、焦る必要もないと達観している。「その必要もない」
米国の極超音速兵器の成熟化には「2020年代をかけて」かかるとグリフィンは述べる。「今後はテストのペースが加速し、2020年代初めに装備品が実現し、2020年代通じて成熟化する様子が今後見てもらえますよ」とグリフィンは語っている。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

2019年9月30日月曜日

冷戦時のソ連核攻撃計画の概要が情報公開されました。実施されていれば我々は存在していないかも。



This Was America's Secret Cold War Strategy to Nuke Russia Back to the Stone Ageこれがロシアを核攻撃で石器時代に戻す冷戦時の米秘密戦略構想だった

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戦が熱核戦争になっていたら、米国とソ連は相互に破壊され尽くされていただろう。
今回初めてロシアのどの都市が標的になっていたのか、その理由が明らかになった。米政府が1950年代の戦略空軍(SAC)資料を機密解除し、米爆撃部隊とミサイルが共産圏を広く攻撃対象にしていたことが判明した。
「SACは東ドイツから中国まで都市1200箇所をリストアップし優先順位も決めていた」と今回情報開示を求めたNGO団体ナショナルセキュリテイアーカイブは解説。「モスクワ、レニングラードがそれぞれ第一位、第2位で、モスクワには179地点を爆心地に指定、レニングラードは145地点で人口高密度地点も含まれていた」
だが狙いは単なる破壊にあったわけではない。SACではソ連空軍力を一掃し爆撃機の発進阻止を優先していた。ICBMが実用化となる前の話で、米本土や西欧の爆撃を恐れていた。標的に指定された航空基地は1,100箇所で、Tu-16バジャーの基地がリスト上位にあった。ソ連の航空戦力が破壊されれば次はソ連工業力が次の標的となるはずだった。
だがその過程で多くの無関係な生命が犠牲になっていただろう。SACの標的リストは1956年の作成で1959年版の核攻撃案では一般都市も当然ながら含まれていた。
SACの戦争計画はソ連圏の都市工業の「系統的破壊」であからさまに都市部の「住民」を標的とし、北京、モスクワ、レニングラード、東ベルリン、ワルシャワがリストにあがっていたことが判明した。「意図的に民間人人口稠密部を標的とすることは今日では国際規範に反し、軍事施設への攻撃と都市部への攻撃は明確に区別されている」と研究者は述べている。
800ページにおよぶ文書には標的一覧と関連情報が載っている。SAC立案部門は1959年にB-52、B-47爆撃機の他RB-47偵察機、F-101援護戦闘機合計2,130機の動員を想定していた。また核搭載巡航ミサイル、爆撃機搭載ミサイルが376発あり、初期段階の中距離弾道ミサイルも使えた。1959年の研究ではミサイルは標的に命中する確率が低く(ICBMの実用化は1960年代以降のこと)、有人爆撃機が攻撃手段の中心だった。
SACにはソ連空軍力を早期に破壊するねらいがあり、水爆は地上爆発の設定だった。空中爆破だと熱、放射線ともに出力が増大するが、爆風でソ連の空軍機材や基地を破壊する狙いだった。ただし想定外の副作用もあっただろう。「地上爆風とともに放射性降下物が友軍や陣営内都市にも影響を与えることも考慮されたものの、空軍力除去がなんといっても最大の目標だった」とSAC検討内容にある。
ただしSACではソ連空軍力のインフラを広く解釈し、指揮命令所、産業集積地もその一部としていた。そのためモスクワは多数の軍事司令部、航空機ミサイル工場、核兵器研究機関、石油精製所があることから上位に来た。
核時代に入っていたのにSACの戦略には第二次大戦のドイツ、日本爆撃を思わさせる要素が多かった。ソ連空軍力とインフラを標的にするのは大戦中のB-17やB-29爆撃隊と同じ狙いで、1950年代のSACは当時の人員が中心となっていたせいだ。その中心はカーティス・リメイであった。ソ連は核の一次攻撃を受けても爆撃機や核兵器の大量生産を行う力を温存し、戦況は長期化する前提だったようである。ミサイルが信頼性に欠け、有人爆撃機しか信頼に足る手段がなかったというのは今日の無人機対有人機の論争を思わせるものがある。
SACの標的リストは機能しただろうか。それを試す機会が生まれなかったのは人類にとって幸運なことだった。■



2019年9月29日日曜日

★F-3はブラックウィドウの生まれ変わりになるとの観測が大...なのか




Japan's New Black Widow Stealth Fighter Could Look Like This  

日本の次期戦闘機はブラックウィドウの新型版になるのか

How does it compare to the F-22? F-22との比較ではどうなるのか
September 28, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-22 RaptorMilitaryTechnologyWorld
Key point: Old, but impressive technology. 時間が経過しても目を引く技術だ。

本が航空自衛隊向けのF-3制空ステルス戦闘機開発で共同開発相手を模索している。もっとも大きな注目を集めたのはロッキード・マーティン提案のF-22ラプターとF-35ライトニングIIのハイブリッド版だった。ただしF-3はF-22のライバルだったノースロップYF-23ブラック・ウィドウIIの復活になるとの見方が一部に根強い。ラプターの性能を凌駕していたと多くが認める機体だ。

1981年、ペンタゴンは高性能戦術戦闘機(ATF)競合でソ連のSu-27フランカーやMiG-29フルクラムにドッグファイトで勝てる次世代ステルス戦闘機を求めた。当時唯一のステルス機F-117ナイトホークには空対空装備も超音速飛行性能もなかったので、同構想は一気に高い次元をめざすものだった。米空軍はアフターバーナーを使わずに超音速飛行を持続するスーパークルーズの実現をATFで目指した。

1986年にはAFT競合はロッキード・マーティンとノースロップに絞られ、YF-22およびYF-23試作機をそれぞれ製造し、4年以内に完成させることになった。その時点で両社ともにステルス機の知見を一定程度持っていた。ロッキードはF-117、ノースロップはB-2ステルス爆撃機である。ノースロップはマクダネル・ダグラスを協力企業にしていた。

ロッキードYF-22は外観が目立っていたが、YF-23は別の世界の機体のように見え、ダイヤモンド形主翼でレーダー探知性を減らし、細長い機体は側面から見るとSR-71ブラックバードを想起させた。2枚の尾翼は50度の外側への傾斜が付き、フライ・バイ・ワイヤによる回転でヨー、ロール、ピッチを制御した。

ノースロップは試作型を2機製造し、暗灰色のPAV-1「スパイダー」が1990年6月に初飛行し、薄い灰色のPAV-2「グレイゴースト」が同年10月に進空した。一号機はプラット&ホイットニーF119をラプター同様に搭載し、二号機はジェネラル・エレクトリックYF120可変サイクルエンジンでターボジェットとターボファンの切替えで低空、高空での最適性能を目指した。空気取り入れ口はSダクトでレーダー断面積の削減を狙い、熱発生の低下のため排気は熱吸収タイルの通路に導いた。

YF-23両試作機のフライトテストは計65時間行った。両機とも空中給油を受けられ、兵装庫はAIM-120長距離ミサイル4本が入った。量産型には20mmヴァルカン砲一門が付き、兵装庫にさらに2本の短距離サイドワインダーミサイルを搭載の予定だった。YF-22、YF-23ともにレーダーはじめとする中核のエイビオニクスは搭載していない。


ただし、YF-23にはラプターが搭載したベクトル偏向エンジンがつかず、ラプターの操縦性が優れていた。YF-23が鈍重だったわけではない。迎え角60度から70度をベクトル偏向式エンジンがなくても実現したが、空軍は25度迎え角しかテストしていない。

実際にはYF-23が大部分の項目でラプターを凌駕したとの報道がある。超音速スーパークルーズの持続時間や航続距離も一部だ。さらにレーダー断面積が低かった。特に側面と後部で低く、レーダー探知距離を短くしていた。

当時の内幕に詳しい筋からはロッキード・マーティン側はYF-22の機動性をうまく訴えただけとの声がある。評価側はドッグファイトを旨とする戦闘機パイロットが大部分だった。別の声はYF-23の高価格とリスクへ懸念があったとする。ラプターも機体単価が150百万ドルと非常に高くなる予測があった。だがペンタゴンにノースロップのプロジェクト管理能力へ疑念があったのはB-2ステルス爆撃機で単価がうなぎのぼりになった事例のせいだ。あるいはロッキードに契約交付したのは同社存続を助けるためだったとの声もある。

皮肉にも、空軍が操縦性と長距離性能、ステルスを今の時点で評価したら、ステルス重視は間違いない。将来の空戦は視界外での戦いとなり、機動性より被探知性が死活的になる。さらに戦闘機が短距離しか飛行できないと前方配備基地での運用となり敵のミサイル攻撃の格好の標的となる。今日の米空軍は広大な太平洋地域での運用を強いられている。

空軍が目指す第6世代ステルス戦闘機事業には侵攻型制空戦闘機の名称がつき長距離性能を機動性より重視しているが、ロッキードからは偶然の一致かもしれないがYF-23構想に似た提案が出ている。

YF-23は中距離ステルス爆撃機としても提案されたが、空軍は長距離のB-21を2016年に採択した。PAV-1はオハイオ州デイトンの空軍博物館に、PAV-2はカリフォーニア州にある西部航空博物館に展示されている。

2018年、日本がF-3開発の共同開発先を求めたところ、ノースロップ・グラマンから意欲的な提案が出てきた。ノースロップとしてはYF-23の復活を目指したいところだが、日本製技術を取り入れた機体、エンジン構成となる可能性が高い。

理由としてノースロップの1980年代の原設計はそのまま使えず、とくにレーダー吸収剤の塗布が旧式化しており、新型のモジュラー化を採用したF-35と比べF-22の高費用化が問題になっている。エイビオニクスも完成の域に達しず終わっていた。航空自衛隊としては全くの新設計より既存で実証済みの機体構造を元に順次改良を加える方法を好むのではないか。つまり、三十年という時間が経過してブラックウィドウとラプターがふたたび相まみえる可能性があるということだ。■

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This first appeared back in September of last year.

Image: Wikipedia.

2019年9月28日土曜日

装備品:JASSM、LRASM両巡航スタンドオフミサイルの調達規模拡大に走る米空軍の狙い

USAF aims to double long-term JASSM production up to 10,000 units 米空軍がJASSM生産を倍増し1万本調達を目指す


27 SEPTEMBER, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 LOS ANGELES
https://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-aims-to-double-long-term-jassm-production-up-to-461148/


国防総省(DoD)はロッキード・マーティン製統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)の生産数を当初の4,900本から最高1万本に拡大する。

米空軍物資本部から生産拡大の意向が9月27日に示され供給先を求めている。調達規則によれば軍はロッキード・マーティンが唯一の供給者でも他の調達先を模索する努力が求められている。

USAFではロッキード・マーティン製の長距離対艦ミサイル(LRASM)の追加調達も求めており、当初の110本が400本にまで拡大する。JASSMの射程拡大版JASSM-ERが原型で、500カイリ (926km)の射程を有する。USAFと米海軍が共同開発した。

JASSMおよびLRASMはともに低視認性巡航ミサイルで亜音速で飛翔するが、射程距離が長く敵の防衛圏外から発射可能だ。

今回のUSAF公告は巡航ミサイルの長期調達へのDoDの関心度を表したものと言える。

2019年5月、需要拡大を見越してロッキード・マーティンは20千平米の巡航ミサイル生産工場をアラバマ州トロイで起工している。工場建屋が2021年に完成すると、2022年下半期からJASSM-ERの増産が実現すると同社は発表。

USAFではロット17でJASSMを360本生産するとしていた。ロット18ではJASSM-ER390本、ロット19ではJASSM-ER360本とJASSM40期を調達するとしており、その後ロット30まで最大550本ベースで続く。

LRASMの生産も2017年のロット1(23本生産)から拡大を続けており、ロット4では50本を調達したいとし、最大96本でロット8まで調達したいとUSAFは述べている。■

北朝鮮ミサイルの軌道を見失う事例が少なくとも2回発生した日本のミサイル防衛体制への懸念


Japan's Failed Twice to Track North Korean Missiles 日本が北朝鮮ミサイル追尾に2回失敗したのは問題だ

We've got a problem.
September 27, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaJapanMissilesICBMsJSDFRadarMissile Defense
Key point: 完璧なミサイル防衛は存在しないとはいえ、ミサイル追尾に失敗したことから実戦での迎撃がさらに困難になると危惧されている。

何が起こったのか。日本の防衛省筋がジャパンタイムズに海上、陸上のミサイル追尾装備が少なくとも2回にわたり北朝鮮が発射の短距離ミサイルの軌道追尾に失敗したと明かした。ともに今年5月以降の出来事と同紙が9月23日に報じた。
何が問題なのか。ミサイルはともに低高度かつ不規則軌道で探知を逃れており、日本国内では北朝鮮の技術水準へ懸念の声が高まっている。韓国軍は同じミサイルの追尾に成功している。日韓軍事情報共有協定が11月24日に失効することもあり、改めてリスクが意識されている。失効で情報交換が不可能になるわけではないが、従来より時間がかかり煩雑な手続きが必要となる。
背景。日本は低空飛翔ミサイルは自国への脅威とみなし、探知能力向上のため部隊配置を変更する。北朝鮮による短距離ミサイルテストは米国でほとんど関心を集めなかったが、日本周辺では大きな懸念の的だ。■
Japan: Radar Systems Reportedly Lost Track of North Korean Missiles is republished with the permission of Stratfor Worldview, a geopolitical intelligence and advisory firm.