2019年10月29日火曜日

B-52を100年飛ばせ続けようとする米空軍のねらいと新制式名称B-52J


100 Years Flying: Meet the Air Force's Plans for the B-52J

An impressive upgrade.
October 28, 2019  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: B-52MilitaryTechnologyWorldAir Force

by David Axe 
Key point: The Pentagon wants to keep its B-52s operational for the foreseeable future.

空軍は改修型B-52を「B-52J」の制式名称で運用する予定だ。改修対象のB-52Hは1960年代初頭に稼働開始している。Air Force magazine のジョン・ターパックが以下伝えている。

「空軍は大改修を終えた機体にB-52Jの名称をつけるようだ」とヒース・コリンズ准将の発言を引用した。

今後10年かけてB-52は新型エンジンに換装する。これだけでも機体呼称の変更に十分であるが、同時にデジタル装備、通信装置、新型兵装、新型レーダー他数多くの改良を施す。

コリンズ准将は航空戦闘軍団がB-52乗員の削減も検討しているとし、現在は兵装担当士官が担当する業務を自律化させたいとする。ただし、これは決定事項ではないという。

Air Force magazine は2019年1月号でエンジン換装について深く伝えた。

「空軍の思惑どおりならB-52は2050年までにほぼ一世紀空を飛ぶことになる」とターパックは伝え、「今後も同機を飛行させるべく、空軍はB-52に新型エンジンを導入し、整備業務をやさしくし、飛行の効率を上げるべく10年足らずですべてを実施する」

2018年に空軍から1980年代機材のB-1B全62機およびより新しいB-2全20機足らずを2040年までに退役させる方針の発表があった。だが改修型のB-52Jは少なくとも100機製造するB-21ステルス爆撃機と併用する。

空軍はアリゾナの機体保管施設からB-52H2機を現役復帰させており、墜落事故で全損した機材の穴埋めとし、76機体制を維持している。

「高機齢ながら高い稼働率を誇り、各種大型兵装を運用し、しかも効率よく運用できる、少なくとも敵の防空体制が完璧でない箇所で」とターパックは記事をまとめた。「ハイエンド戦になってもB-52は敵防空体制の外側からミサイルを発射できる。核巡航ミサイルを空中発射できる爆撃機は同機だけだ。新型長距離スタンドオフミサイルの運用も同機から始まる」

B-52改修構想の議論は20年に渡り、やっとこの段階に至っている。1996年に空軍は13通り以上の検討を行い、機体重量240トンの重爆撃機向けの新型エンジンの選択肢を研究した。2019年時点でB-52エンジンは1962年当時と同じプラット&ホイットニーTF-33エンジンのままだ。

2018年に空軍が作成した資料ではTF-33を「効率は悪く現時点の民生エンジンと比べ性能も見劣りする」としていた。プラット&ホイットニー製エンジンは「高費用かつ整備工数も多くかかり、部品の陳腐化に対応が大変」とあった。

「現時点のエンジン各種はTF-33より信頼性も高く新型エンジンなら一度搭載すればおそらく脱着の必要はない」とターパックは述べていた。「大修理までの平均期間は30千時間程度が普通で空軍が同機の稼働期間として想定する時間よりずっと長い」

エンジン換装によりB-52の燃料消費効率は少なくとも2割伸びつつ、現状の性能水準を維持できる。B-52HがTF-33エンジン搭載しているが、爆弾ミサイルを35トン搭載し、4,500マイルを空中給油無しで飛び、最高時速650マイルを維持できる。新型エンジン換装により同機の性能を引き上げる狙いは空軍にないようだ。

2018年の空軍試算ではB-52の供用期間延長に要する費用を320億ドル程度としていた。

2011年から2016年にかけて空軍は76機のB-52を稼働させるべく年間12億ドル程度を支出していることが政府資料で明らかになっている。

エンジン換装により節約となる燃料、整備費用は2040年にかけて100億ドル相当になるとの空軍資料をターパックは引用していた。各機8発なので合計608基のエンジンが必要となる計算だ。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. (This first appeared in June 2019.)

Image: DVIDShub

台湾危機、南シナ海で中国は米海軍相手にどんな作戦を展開するか



How China Would Fight the U.S. Navy (And Sink It) During a War 中国は米海軍相手にどんな戦闘を展開するのか

Sea mines, missile and much more. 機雷、ミサイルの他多数がある

October 14, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaMilitaryTechnologyWorldWarMissiles
国軍が一番恐れる事態とはなんだろうか。
これだけ懸命に努力し、大規模予算を投入しても中国海軍は米海軍との対決を望んでいない。ある退役中国国防高官が2014年に語っている。「深夜に米海軍と戦闘に入ったとの報告だけは受けたくない」
ペンタゴン関係者の心をくすぐりそうな発言だが、以下を理解する必要がある。恐怖心もうまく使えば、人智を尽くし複雑な軍事課題の解決に繋がり、不可能と思われたことが可能となる。
例として、1995年から1996年にかけての台湾危機で中国の「悪夢」が現実になりかけた。強力な米海軍艦艇多数が動員され、中国では対抗の余地がないほどの事態になった。当時の指導部、特に江沢民主席は米空母戦闘群を恐れ、中国の台湾への圧力が無効になることを危惧した。中国が米空母の位置を把握できていないと判明したこともあり、大きな問題になった。その際の危機から中国は一方的に有利な状況を生み出せる兵器群の開発に真剣に乗り出した。
では米海軍を相手にどんな兵器を中国は投入するだろうか。一部はNational Interest の読者なら承知しているだろう。その他今回取り上げる装備はそこまでの知名度はないが米海軍に対応が必要なものだ。台湾危機シナリオでは最大規模の軍事課題となるはずで、以下の装備は米戦略思考家にとって真の恐怖の対象となっており、現時点では効果的な対応策がみつかっていない。

大量の機雷
知られていないが、中国は世界最大の機雷運用国である。8万から10万個という試算がある。ただし、中国にこれだけの機雷を全部一度に展開する能力はないものの、重要な海面に敷設し、例えば台湾や南シナ海で、民間船舶少数を動員し探知されずに展開するかもしれない。歴史に見られるように高性能機雷や多数を敷設しなくても大きな損害を与えることができ、中国は過去の歴史を熟知している。TNIでライル・ゴールドスタインが次のように警告している。

「中国の軍事雑誌兵工科技に興味深いインタビュー記事が載っており、米海軍のフリゲート艦サミュエル・B・ロバーツが1988年にイランの機雷に接触した事例を取り上げている」

この際の機雷は「安価なロシアの原設計機雷でイランがつかったもの」だったが竜骨が折れて、機関出力を失った。90秒で艦の排水量の半分近くの浸水した」という。


大量のミサイル
中国の保有するミサイルは多様で有効射程や性能も幅広い。台湾シナリオで重要なのは米海軍を標的とするミサイルの本数だ。ミサイル防衛が最大に機能しても十分に対抗できないほどの量だ。
これは容易に克服できる脅威ではない。中国はミサイル多数を発射すればよいのであり、巡航ミサイル弾道ミサイルといった種類や発射地点を問わず、米海軍の防御態勢を圧倒できる。仮に米側のミサイル防衛がすべて成功したとしても艦が搭載する迎撃ミサイルの本数には限りがあり、すぐに限界を露呈するはずだ。
The Diplomat誌に単純な算数の問題として掲載されていたのが以下の内容だ。: 
米艦艇が搭載する対抗手段の本数に限界があり、敵が大量のミサイルを発射して飽和状態になったらどうなるのか。敵はまず旧型装備を発射し、精度に限界があるのを知りながら防御側が対応して持てる対抗措置を消費すれば、敵は高精度ミサイルを発射して確実に艦艇を仕留めるのではないか。突き詰めれば数の多いほうが勝つはずだ。


米海軍は「目隠し状態」で戦闘ができるのか
中国は衛星攻撃兵器(ASAT)を米衛星群に向け発射するはずだ。この話題は報道番組で知られるようになった。米海軍もこの事態が現実になったときの影響を測りかねている。ではもし中国が上空に向けてミサイル発射し、軌道上の米衛星多数を破壊したらどうなるか。GPSや通信用衛星の助けを借りずに米軍は有効な反撃ができるだろうか。中国の対衛星攻撃手段への警戒心が急に高まっているのは当然だろう。
米国にも同等の能力があるが、実施に移せばエスカレーションが一気に進む。緊張が高まる中、台湾シナリオで敵の衛星を叩けば一方的に有利な状況が生まれるとすればどうなるか。中国、あるいは米国はどの時点で実力行使に踏み切るだろうか。敵側は壊滅的な破壊を受けてからどう対応してくるだろうか。以下に留意してほしい。米中両国は核兵器を保有しているのである。

肯定的に見てみよう
米国や同盟国が中国と武力衝突する局面に至る可能性は少なからずあるものの、実際に開戦となるかと言われればそのチャンスは低い。今のところは。ただし中国が東シナ海南シナ海で強硬な態度を続けた場合、あるいは習主席が台湾問題の解決を強行した場合は状況が変わる。望むらくは危惧が現実にならないことだ。■

Harry Kazianis (@grecianformula) is a Senior Director at the Center for the National Interest. This first appeared several years ago. 

2019年10月28日月曜日

速報 バグダディ殺害:イスラム国は本当に崩壊するのか

最高指導者の死亡で組織は崩壊と、能天気なことを言う向きがありますが、世界は警戒を解くべきではない、ということでしょうか。今回は速報としてお伝えしますが、まもなく作戦実施の情報が出てくると思いますので別途お伝えすることにいたしましょう。


Abu Bakr al-Baghdadi Is Dead (But His Legacy Lives on) アブ・バカ・アル-バグダディは死んだがその遺産は生き続ける

October 27, 2019  Topic: Security  Blog Brand: Middle East Watch  Tags: Abu Bakr Al-BaghdadiBaghdadiIraqSyriaISIS

ナルド・トランプ大統領は米軍がイスラム国指導者アブ・バカ・アル-バグダディを土曜日早朝に強襲したところ本人が自爆し、配偶者数名と死亡したと発表した。自身の子どもたちは生存しているという。
バグダディの排除は一つの勝利であることは確かだが、それをもってシリア北東部からの米軍撤退とシリア民主軍(SDF)との協力関係を放棄する大統領判断の裏付けにはならない。事実、SDFを指揮するマズロウム・アブディはバグダディ死亡の報をうけて発信したメールで今回の作戦は五ヶ月に及ぶ米軍とSDFの「共同情報収集」で実現したと述べている。
ましてやバグダディの死でイスラム国の脅威が終焉したわけでもない。
2006年に当時ニューズウィーク特派員のマシュー・フィリップスはブッシュ大統領が最高権威者カリフの用語を歴史的な背景を理解せずに口にしていると報じた。
カリフを自称したバグダディだがその死後にイスラム国はどうなるのか。イスラム国は最盛期にイラク、シリアの三分の一の地域を支配し、世界各地のイスラム過激派を刺激した。ヤジディ族や非イスラム教徒を奴隷にし、イスラム世界でも数世紀前に消滅した奴隷制を復活させた。従来の夢想を現実化した本人の実績は今後数世代にわたり共感を与えそうだ。
だが今回の殺害で本質的な変化は生まれるのか。アルカイダ指導者だったオサマ・ビン・ラディンの発言が有名だ。「強い馬と弱い馬を目にすれば、強い馬を気にいるのは当然だろう」 たぶん、このためトランプ大統領が「本人は犬のように死んだ、臆病者のように死んだ」と述べたのだろう。
問題はバグダディの死亡は最初から想定ずみのイデオロギーとしてイスラム国が広げたことだ。イスラム神学者ツルキ・アル-ビナリ(イスラム国の教理を支えた)は世界の終焉までにカリフは12名登場し、バグダディは8番目とした。
ということはバグダディを権力の座につけたのと同じ力と情熱を後継者が現実に移す可能性があり、第九番目のカリフとして正当性を主張することになる。これに失敗すれば、信心が足りなかったと解釈される。いずれにせよ、バグダディの抱いた夢は今後も続く。
筆者は先週の大部分をアフガニスタンとパキスタンで政界、軍部の関係者と話をしてきた。アフガニスタンが見出しに出ることは最近は殆どない。その少ない例はタリバンのテロ攻撃であったり米特使ザルメイ・ハリザドがめざすタリバンとの合意形成の報道だ。いずれの場合でもアフガニスタン、パキスタン両国の関係者に危惧の対象となるが、実は最大の懸念はイスラム国が両国にまたがった存在意義を構築していることだ。例として10月18日、自爆攻撃でアフガニスタンのナンガハール村の金曜日礼拝で数十名が死亡した。アフガニスタン当局はタリバンよりイスラム国の犯行らしいとする。その理由として同村のモスクにイスラム国から事前に脅迫が届いていたからという。
トランプ及び米軍部隊には血にまみれたカリフを自称する人物の排除成功したことで称賛を与えて良い。だが本人を最高地位に登らせた力学が本人の死亡で終焉したと考えるとすればあまりにも単純すぎる。トランプは序章を終えただけにすぎず、バグダディの描いたイスラム帝国構想の第二章がこれから始まり、数年間、数十年間あるいは数世紀にわたり展開すると見るべきだろう。■

Michael Rubin is a resident scholar at the American Enterprise Institute (AEI). You can follow him on Twitter: @mrubin1971.

2019年10月27日日曜日

F-15EX、F-35のどちらが米空軍の今後に役立つ機材になるのか


Fighter Faceoff: Should The Air Force Buy More F-35s Or The F-15EX? 戦闘機真っ向勝負。空軍はF-35、F-15EXのどちらを導入すべきなのか。

Which is right for the Air Force of the future? どちらが空軍の将来に有益な機種なのか
Key point: Both are capable jets, but are tailored to exceed at specific missions.
軍の予算7,380億ドルは前例のない規模だが、事業受注をめぐる争いは熾烈を極めている。
中でも注目を集めているのが空軍が旧式戦闘機F-15イーグルの新型機種の調達に向かい、最新式F-35ライトニングの予算を流用する動きの去就だ。
話をややこしくしているのは両機種の想定任務が異なることだ。
単発のF-35Aは強固な防御体制の敵領空にステルス性で侵入し攻撃を加え、強力なセンサーで敵軍の追撃を逃れる設計だ。 A
これに対し退役が近づいてきたF-15Cは双発で空対空戦専用機材で米国周辺や海外基地付近の空域を哨戒し、敵の侵入を撃退するのが役目だ。F-15にはステルス性はないが、最高速度はマッハ2.5とF-35より33%高く、航続距離も長い。
ここ数年で海外からF-15の強化改修型への発注が続いており、ボーイングはF-15EXとして新技術を盛り込んだ機材を提供する。その中にはF-15Cでは不可能だった多任務能力もある。
F-15EX推進派からは調達はF-35予算を使うものではないとの主張があるが、ロッキード他空軍将官は別の見解で、激しく同機に反対意見を展開してる。国防総省はボーイングに有利な結論を出すことが続いており、実際に長官代行にはボーイング元役員が就任していた。
現時点でF-15EXは8機を11億ドルで初回発注されており、さらに144機が加わる可能性がある。
では両機種は実際のミッションでどこまでの効果を見せるのだろうか。

侵攻攻撃
ロシア、中国や機材輸入国は一層強力なレーダーや地対空ミサイル装備の導入に向かっており、F-15EX含む通常型戦闘機なら100マイル地点から探知し攻撃できる。
防空体制で生き残るため、第4世代機はSAM対抗手段各種を駆使せざるを得ず、ジャミング機材、HARM対レーダーミサイルやワイルド・ウィーゼル攻撃隊や高価な長距離スタンドオフミサイルも必要だ。こうした集中運用をしても脆弱性が消えるわけではなく、数日数週間に渡る実施で防空ネットワークを弱体化させるねらいだが、初期段階で全日の攻撃は実施できないだろう。
比較すると、ステルス機はレーダー断面積が小さく、ごく短距離で標的捕捉レーダーに捕まるだけで、敵レーダー網の「バブル」の間に容易に侵入し、短距離誘導兵器を発射できる。つまり、F-35は開戦日に敵の領空内を自由に飛び回れる。
さらにF-35推進派からはステルス機により多数の機材を動員する大規模攻撃は不要になると、1991年湾岸戦争時の空軍作戦を念頭にした発言が出ている。

制空権を確立した空域での航空支援・阻止作戦
タリバンやISISが相手の戦闘で高高度対応の対空装備がない環境なら、ステルス性能は無用の存在となる。代わりに戦闘地区上空で滞空し、正確にペイロードを投下する性能が鍵となる。
F-35だと機内兵装庫に4発ないし6発しか搭載できない。ステルスが不要で有利な状況の戦闘シナリオでは「ビーストモード」のF-35は機体外部にさらに4発から6発を搭載できる。だが前口上ばかり先立つこの機能はまだ開発が終わっていない。
旧型F-15Cは地上攻撃は想定していないが、F-15EXは想定しており、より多くの地上攻撃兵装を主翼下に搭載できる。
それでもF-35には別の利点がある。同機のネットワーク対応センサー一式は敵の位置を探知し、友軍と情報共有できるのだ。

迎撃・領空防衛
F-15EXとはF-15Cが行ってきた空中哨戒任務を肩代りするのが主な役割だ。中国やロシアはひんぱんに空域に接近しており、インターセプトの回数は増えている。
そのためF-15C後継機には平時、有事ともに効率よく任務を達成できるかが問われる。
F-15は平時の航空哨戒に適した機材で1,200マイルの戦闘半径により長時間の哨戒ができ、空中給油機の出番も少なくなる。これに対し、F-35Aでは770マイルしかない。さらもイーグルが双発なことからエンジン一基が不調となっても無事生還できる可能性が高い。実際に単発のF-16の事故率はF-15より高いる。
打ち合いの戦闘になれば最高速度とミサイル搭載本数の多さでF-15は特殊4発搭載ラックまで使えば20本とF-35の六本より多く、F-15なら爆撃機の迎撃に適しており、多くのミサイルで有利となる。
ただしF-35推進派はステルスにより同機は敵爆撃機を奇襲攻撃でき、撃墜の可能性は十分あると主張し、敵援護機の攻撃から逃れるともいう。

航空優勢Air Superiority
航空優勢の概念は敵戦闘機を有利な形で排除し空域を制圧することを指す。航空優勢戦闘機は有視界距離(WVR)での戦闘で操縦性の高さが必須とされてきた。敵戦闘機は視界外(BVR)ミサイルの攻撃を恐れて避難すると言われてきた。
F-15EXはBVRだと敵戦闘機の攻撃に脆弱度が高い。とくに改良型4.5世代機のSu-35や中国ステルス機の成都J-20が相手だと歩が悪い。端的に言って、F-15でも敵の4.5世代機を遠方から撃破できるし、大量のミサイルを運用できるが同時に脆弱でもある。
近距離ではF-15はF-35より有利だ。F-35は赤外線やレーダー探知を受けやすい。高度の機動性を誇るF-22ラプターとの比較ではF-35はWVR戦には適合していると言い難い。.
だが空軍によればレッドフラッグ演習でF-35は非ステルス機に対し圧倒的有利で20対1で勝っている。

納税者負担と官僚制度の判断は
予想に反しF-35Aは決してF-15EXより高価ではない。ともに85百万ドルの機体単価だ。これはF-35でペンタゴンの想定する2千機もの生産規模を反映し単価切り下げが効果を上げていることを意味する。
ただし、F-15EXに価格優位性が生まれるとすれば、運用経費の分野だ。F-15EXの一時間あたり経費は27千ドルになる予想で空軍は40年間供用しているF-15の構造を熟知しているため、F-15EXの稼働率は高くなるだろうが、現時点でF-35では恐ろしく低い。
とはいえF-15EXの命運は政治部門に大きく左右される。あくまでも同機調達は文民が主張したもので軍人の支持は少ない。そうなると政権交代になればF-15EXは生き残れなくなる可能性もある。
仮に空軍がF-15EXを不採用としたら、F-35を迎撃や航空哨戒に投入すべく航続距離延長型の検討を迫られるだろう。2019年の空軍は完全新規の第6世代有人機開発にますます消極的になっている。■

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This article first appeared earlier this year.

新型ISR機材RQ-180は極秘のうちにすでに供用開始か

ブログ主の好きなISRのブラック機材の話題です。Aviation Weekでも「らしい」「と思われる」と書かざるを得ないくらい情報が限られているのですね。

Aviation Week & Space Technology

USAF Unit Moves Reveal Clues To RQ-180 Ops Debut

米空軍部隊の動きからRQ-180の運用開始へ向けた推移がわかってきた

Oct 24, 2019Guy Norris | Aviation Week & Space Technology

ースロップ・グラマン開発による大型・極秘無人機の存在をAviation Weekが真っ先に報じてほぼ6年になる。現時点で同機が米空軍で通常に運用されていることが明らかになってきた。同機は敵領空を突破できる情報収集監視偵察(ISR)任務に投入されていると思われる。
RQ-180の制式名称といわれる同機の設計は先端的で2010年に初飛行したと見られ、2014年から飛行テスト評価に入っていた。Aviation Weekが入手した資料では同機は今年になり再編された第427偵察飛行隊のあるビールAFB(カリフォーニア州)で供用を開始している。米空軍は同期に関し一切の論評を拒んでいる。
同機の画像そのものが限られているが、新たな情報から飛行テスト初期段階、開発過程、初回配備に至る全体像が明らかになってきた。公開情報で同機の存在が明らかになった2013年以前の足取りが明らかになり、同時にその後のテスト、運用評価がカリフォーニア、ネヴァダ両州で主に展開されたこともあきらかになった。
敵領空内に侵入するISRミッション用に開発が始まったRQ-180はロッキードSR-71の退役(1999年)が経緯で、ノースロップ・グラマンが米空軍に提示した2005年の大型無人戦闘航空機材(UCAV)設計提案から生まれた。当時、同社はボーイングを相手に小型無尾翼設計案で米空軍米海軍向け共用無人戦闘航空システム(J-UCAS)の売り込みを図っていた。
だがJ-UCASは2006年に事業中止となり、海軍専用のUCAV空母運用適合性実証事業に変貌し、239百万ドルの予算要求で空母搭載長距離UCAV実証事業になった。
同時に空軍予算は極秘高高度長距離 (HALE) 事業に流用され、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの三社競合になったと見られる。ノースロップは主翼を延長したX-47Cを同時期に公表した。そのうち最大の機体寸法となる型では翼幅172フィート、ジェネラル・エレクトリックCF34双発で兵装ペイロード10千ポンドというものだった。
Aviation WeekはRQ-180の存在を初めて報じ想像図を掲載したが、業界筋は当初から実機は公表されたコンセプトとは異なるとの指摘していた。追加情報では最終形は同社の全翼機形状に近く、空軍が進めるB-21レイダーにも似通っている。ノースロップ・グラマンは当初はB-2同様の後縁部構造を想定していたが、空軍が低空侵入任務を追加したためより強固なノコギリ歯構造に変更した。
RQ-180には空軍研究本部(AFRL)向けに次代のステルス高高度無人偵察機として同社が手掛けたセンサークラフトSensorCraft 事業の影響が見られる。2002年にAFRLはセンサークラフト構想数点を公表し、中にノースロップ・グラマンの全翼機設計案も含まれていた。その二年後に、同社からAFRLに協力し先端的一体型アンテナ技術をセンサークラフト向けに12百万ドル5カ年契約で作業中との発表があった。これは低帯域構造アレイ(Lobstar)と呼ばれ、「複合材製主翼にアンテナ類を組み込むことで偵察能力が向上する」と同社は評していた。
2007年に、同社幹部は大型秘匿案件の受注見通しを明らかにし、空軍向けHALEの受注を示唆していた。同年6月までにネヴァダ州グルーム湖にある空軍の極秘施設エリア51のウォッチャーが基地内「サウスエンド」で大型格納庫の新規建設を伝えてきた。建屋の大きさと外寸から翼端サイズの大きい機体向けと見られた。
新格納庫は2008年に入ると完成に近づき、ノースロップ・グラマンの会計報告では同社が大型極秘機材開発契約で20億ドルでISR用UAVを画期的な低視認性(LO)と空力性能の効率化を実現するとあった。業務を担当したのは同社社内の先端技術開発センターで、ロッキードマーティンのスカンクワークス、ボーイングのファントムワークスに相当する部門だ。
2009年には同社は定率初期生産をRQ-180で開始し、空軍は機材評価の準備としてフライトテスト用の組織をグルームレイクで「マッドハッターズ」との名称で発足させた。空軍は無人航空システム(UAS)のロードマップを公表し、LOで上空侵入可能なISRを「特別型」UASと位置づけた。
Aviation Weekが新たに入手した情報では2010年が同事業の分かれ目だったとわかる。試作一号機V1が2010年8月3日に初飛行したらしい。初飛行に先立ち、ノースロップ・グラマン社有機のビーチ1900D支援機が頻繁に施設へ飛行しており、2010年5月にサウスエンド格納庫に駐機している様子が衛星写真で確認されている。
試作一号機V1は14ヶ月にわたり飛行テストを実施し、二号機V2も2011年11月からテストに加わった。さらに3機が15ヶ月の評価テストに投入された。
第5号機が初飛行するとRQ-180のテストはエドワーズAFB(カリフォーニア州)に移り、第53試験評価グループ分遣隊1が2014年3月に現地入りした。分遣隊1の任務の運用テスト評価はビールAFB駐留の分遣隊2が適役だった。ロッキード・マーティンのU-2R/Sおよびノースロップ・グラマンのRQ-4グローバルホークの評価で実績があるためだ。
同年後半に活動が強化され、V6初飛行が2014年9月に実施された模様だ。2014年末から2015年初めにかけ、第15テスト飛行隊の分遣隊2とされる部隊がエドワーズAFBに現れ、新型機の性能評価に加わり、作戦投入が近づいた。
第15テスト飛行隊はエグリンAFB(フロリダ州)に本拠を置く第53航空団の隷下にあり空軍の高優先順位機材の迅速調達むけテストの統括が任務だ。2014年公表の第53飛行団広報資料によれば第15飛行隊は「指定システムの開発で運用テスト管理業務を行い、第一線への機材引き渡しを加速化する」のが任務とある。分遣隊2に近い分遣隊1が当時はロッキードのR-170センティネルのテスト業務をクリーチAFB(ネヴァダ州)で実施していた。
2018年11月は7号機が初飛行したと見られ別の転機となった。更にその8ヶ月後に、第一線部隊での供用に向け別の一歩がやってきた。第9作戦グループ分遣隊2がエドワーズ南基地にした。第9作戦グループはビールに本拠を置く第9偵察航空団の飛行担当部門で、U-2R、RQ-4やビーチクラフトMC-12Wリバティの訓練や機体準備にあたる。
分遣隊2の発足は2016年でその後は初期運用に向けた準備が最終段階に入り、長距離最終試験ミッションがエドワーズを起点に極秘に展開されたのは2017年早々のことらしい。詳細はあきらかになっていないが、自律航法装備の有効性を高高度で試したものと思われ、北極上空を利用したらしい。
このミッションを実施してからRQ-180は2017年に初の配備となったようだ。同年8月に第9作戦グループに支援隊が2つ加わった。ビール基地の分遣隊3と、アンダーセンAFB(グアム)の分遣隊4で運用に備えたテコ入れだ。このうち分遣隊3配膳はグアムでRQ-4を運用した実績があり、分遣隊4はシゴネラAB(イタリア)でグローバルホークを運用していた。
その翌年2018年にもう一つの部隊がビールに生まれ、機体のテストとともに運用前準備の評価を任務とした。第605試験評価飛行隊に分遣隊3が生まれ、第53試験評価グループの分遣隊1はエドワーズAFBで解隊された。
同隊の装備人員は新設の第417試験評価飛行隊に引き継がれたとされる。同隊配膳はC-17およびYAL-1空中レーザー装備のテストを担当していた。ただし、同隊の本当の任務はB-21テストの準備にある。だが同年の空軍協会会合では新型爆撃機のテストは第420試験評価飛行隊が担当と案内されていた。
RQ-180供用に対応すべく支援体制強化は2018年から2019年はじめにかけ進み、第9作戦グループの分遣隊9がビールで同機の教導を開始した。同グループの任務がをU-2のISRミッションの訓練、立案、実施、およびRQ-4関係者の訓練にあることから同隊がRQ-180運用の支援、訓練にあたっていると考えるのが自然だ。
今年は最終調整の段階でビールを中心に第9作戦グループ分遣隊3が4月に解隊され、人員装備はここでも第427偵察飛行隊に移転された。同隊はMC-12Wを運用する影の部隊で同機が米陸軍に移譲されたため2015年11月に一度解隊していた。ただし公開情報を見ると427偵察飛行隊の司令は2015年から在籍しており、その間は同隊は公式には存在していないことになっているのだが。
米空軍は同隊がどの機種を運用しているのか開示していないが、427偵察飛行隊は第9作戦グループ分遣隊5、および605試験評価グループ分遣隊3とともに共通ミッションコントロールセンターを4月23日開所している。同センターは「戦闘指揮官に自由に拡大縮小でき、ニーズに合わせた情報業務を制空権が確立されていない空域で提供すること」にあると空軍は説明している。「ソフトウェア、ハードウェア、人員、機材を駆使し同センターはC2で生産性を引き上げ、タスク実施の連鎖を短縮し、ヒト中心の通信活動を削減する」という。■