2019年11月16日土曜日

そろそろオリンピックのセキュリティ対策を考えよう 航空自衛隊に新型ペイトリオット導入

Japan Wants Missile Defenses to Protect the 2020 Olympics (From North Korea)

But is there a real threat?
November 15, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarMissiles.
2020年7月に東京で夏のオリンピック競技が開催されるが日本にやってくるのは世界最高水準の選手たちだけではない。
 同時にミサイルががっちとガードしているはずだ。

防衛省はオリンピックを米製ペイトリオットミサイルでオリンピックを防衛すべきか検討中だ。

 オリンピックが開会する7月24日を控え、第一高射群にPAC-3MSE迎撃ミサイルで待機させ、弾道ミサイル、無人機、その他未確認機に対応させ東京の安全を守る、と共同通信が伝えている。

「性能向上型を装備した迎撃ミサイル部隊で首都の空を守る体制は4月から維持する」という。

 自衛隊が現時点で運用するPAC-3は旧型で千葉、神奈川、茨城、埼玉の各県に配備してある。オリンピックまでに改良型PAC-3MSEが導入される。「現行のPAC-3の有効射程は数十キロ程度であるのに対し、改良型は射程が倍増しさらに探知能力が上がる」(共同通信)「低空飛翔の巡航ミサイルへの即応能力が引き上がる」と航空自衛隊の高官が語る。

オリンピック防衛にミサイルが配備されるのは今回が初めてではない。2012年ロンドン大会ではレイピア、スターストリークの短距離ミサイル二型式が会場を守っていた。スターストリークは共同住宅の屋上に配備されていた。

だがPAC-3MSEはロッキード・マーティンのペイトリオットミサイルで最高性能版で配備されれば事情が異なる。ペイトリオットは移動式長距離対空・対ミサイル迎撃手段である。ペイトリオットミサイルの全長は20フィート近くで巡航ミサイル、弾道ミサイル、航空機のいずれにも対応する。

 ただし、2019年9月にイランとその息がかかったフーシ勢力が発射した無人機、巡航ミサイルの攻撃をサウジアラビアの石油施設が受けたが、サウジのペイトリオット六個部隊は攻撃阻止に失敗している。そのためPAC-3が小型飛翔体や低空飛行する標的には無効ではとの疑問が出た。

 もっと大きな疑問がある。東京オリンピックに対してミサイルを誰が発射するのか。テロ集団なら自殺攻撃を仕掛けるのではないか。あるいは高性能ライフルを使い1972年のミュンヘン大会を襲撃したパレスチナ戦闘員の例がある。アルカイダやISISの様な集団が航空機をハイジャックし9/11のように自殺攻撃を企てる可能性もあり、日本の空軍戦闘機はアラート体制に入るだろう。
 北朝鮮には弾道ミサイル、巡航ミサイル双方がある。(ロシアも同様だが、第三次世界大戦を始めるのを急ぐはずはない)日本はイージス・アショア2箇所分を導入するが、予定箇所は津波の被害も想定され20億ドルを投じるプロジェクトに疑問も出ている。また日本は「2022年度までPAC-3全部隊の性能改修」を行い、令和2年度予算でそのための予算を要求している」と共同通信は伝えている。

 イージス・アショアとペイトリオットの導入は日本にとって合理的な選択である。北朝鮮には核兵器があり、地上発射、潜水艦発射双方の運搬手段がある。また同国は日本沖合に向けミサイルを頻繁に発射しており、世界から迷惑視されても意に介していない。とはいえ、オリンピック期間中にミサイル発射すれば、日本、米国、韓国との戦闘が始まりかねない。

 東京オリンピックでは数々の脅威に対応が必要だ。ミサイル攻撃が唯一の脅威ではない。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

2019年11月12日火曜日

中国PLAに対抗する日本の軍事装備5点はこれだ


These Five Japanese Weapons Are Ready To Take On China's PLA

Japan has been heavily investing in its Self-Defense Forces.
November 11, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanChinaJSDFMilitaryU.S. Military
中関係は2010年以降は悪化の一途だ。最初は日本領海内で創業していた漁民の逮捕からエスカレートし一連の不愉快な事件発生につながり、とくに尖閣諸島をめぐる対立が生まれている。
対立はいまのところは国の沿岸警備隊や軍用機の遭遇にとどまっているものの両国関係は悪化の一途だ。いつの日にか不愉快な事態が軍事行動に一気に駆け上がらないとは言えない。今回は有事に際して中国が警戒すべき日本の軍事装備5点を紹介する。

そうりゅう級ディーゼル電気推進潜水艦
そうりゅう級は通常型潜水艦としては世界最先端の存在だ。潜航時排水量4,100トンの同艦は浮上時13ノット、潜航時は20ノットを出す。スターリングエンジンによる大気非依存型推進装置を搭載した通常のディーゼル電気推進潜水艦より長く潜航できる。
艦首に魚雷発射管6門があり、89式高速ホーミング魚雷と米製サブ-ハープーンミサイル20発を搭載するほか、巡航ミサイルも運用できる同艦は先制攻撃に最適と言える。ただし日本の政界が是認した場合に限られる。
そうりゅう級は12隻建造。中国の人民解放軍海軍で潜水艦部隊の増強が続いているため、日本は潜水艦部隊の規模を従来の16隻から22隻に増強する決定を2010年に下した。
戦後日本では潜水艦を主要侵攻ルート数カ所に集中配備することとしてきた。すなわち津軽海峡、対馬海峡、関門海峡、宗谷海峡の4箇所で、冷戦時代からソ連が有事に日本侵攻に踏み切る事態を恐れていた。これをより中国を意識した体制にすると尖閣諸島や琉球諸島を念頭におくことになり、東シナ海や日本海への前方配備が実現するかもしれない。
中国が日本の潜水艦部隊を恐れるのは対潜戦が中国の弱点であるためだ。中国はASWを有事に体験したことがなく技量装備両面で遅れている。一方の日本は潜水艦運用の体験を長年に渡り維持している。日本の潜水艦乗員はよく訓練を受けており、米海軍の乗組員と遜色ないといわれる。

F-15J戦闘機
次は航空自衛隊のF-15J制空戦闘機で、米F-15イーグルの日本版で細かい差異があり、三菱重工業が国内生産した機体だ。
搭載するAAM-5赤外線ホーミングミサイルは米サイドワインダーに似る。さらにAAM-4B中距離レーダー誘導ミサイルは世界でも例の少ないアクティブアレイレーダーシーカーを備え、中国にはない種類のミサイルで、有効射程とロックオン性能によりF-15Jに中国機と一線を画す優位性を実現している。
F-15Jは200機超生産されたが、製造後30年超の機体で新世代中国機に対する優位性を実現すべく、毎年十数機が改修を受けており、新型電子対抗装置(三菱統合電子戦装備)、前方監視赤外線探査追尾能力を搭載している。
F-15Jは日本の最前線で外国軍事勢力に対抗している。2013年の航空自衛隊は延べ567回も海外機への対応で出撃し、記録を更新した。沖縄には一個飛行隊20機が駐留し、尖閣・琉球諸島を守備範囲としているが、与那国島に小規模分遣隊を置く案が検討中である。
旧式化が進むとは言え、F-15Jは人民解放軍空軍(PLAAF)にとっては強敵である。配備開始から30年が経過しているが、中国の現役戦闘機と互角に立ち向かえる。世界規模ではF-15の威力は伝説となっており、敵機撃墜計104機に対し喪失はゼロである。

あたご級誘導ミサイル駆逐艦
2隻あるあたご級は日本で最高性能の水上戦闘艦で各種ミッションをこなす設計だ。満排水量1万トンのあたご級は第二次大戦中の巡洋艦に匹敵する艦容を誇る。米国が開発したイージスレーダーシステムにより移動防空装備としての性能を誇り、航空機のみならず弾道ミサイルの排除が可能だ。
あたご級が搭載するのはMk.41垂直発射ミサイルサイロ96本でSM-2艦対空ミサイル、SM-3弾道ミサイル迎撃弾またはASROC対潜ロケットを運用可能。対艦攻撃手段としてはSSM-1B対艦ミサイル8本があり、ハープーンミサイルとほぼ同等の存在だ。その他5インチ砲一門とファランクス近接兵器2基がある。潜水艦にはSH-60シーホークヘリコプター一機および73式対潜魚雷発射装置6門を艦上に備える。
あたご級はこんごう級の発展形で、垂直発射セルが6門増加され、ヘリコプター格納庫が加わった。両級ともイージス防空レーダーを備える点で共通するが、あたご級は当初は弾道ミサイル防衛改修を受けていなかった。北朝鮮と中国の弾道ミサイル脅威が強まり、あたご級は更に2隻が建造され、全艦が弾道ミサイル対応のソフトウェア改修を受ける。これで日本には弾道ミサイル対応の駆逐艦が8隻そろうことになる。
改修後のあたご級は強力な防空艦になる。有事には中国は短距離中距離弾道ミサイル多数を日本、米国の艦船・航空基地やその他軍事施設にむけ発射してくると見られる。あたご級駆逐艦には尖閣諸島や琉球諸島に強力な対空防衛を提供する。SM-2ブロックIIIB対空ミサイルは射程90マイルで、あたご級一隻で565平方カイリの空域ににらみを効かせることが可能だ。

いずも級「多用途艦」
満排水量27千トン全長800フィートのいずも級ヘリコプター駆逐艦は戦後日本で最大の海軍艦艇である。公式には「ヘリコプター空母型護衛艦」というのがいずもの呼称だが2015年に就役した。いずも級は2隻建造された。
いずも級は先に建造されたひゅうが級と同様に空母に似た艦容を誇る。ただし海上自衛隊はいずもを多用途艦と位置づける。全長にわたる飛行甲板と機体格納庫を使いヘリコプター14機を搭載する。SH-60対潜ヘリコプターで広範な海域で潜水艦を狩ることができる。
また揚陸任務にも使える。2013年の日米共同演習ドーン・ブリッツでひゅうがは陸自のCH-47チヌーク輸送ヘリやAH-64アパッチ攻撃ヘリの海上航空基地となった。有事にはいずもは第一空挺部隊あるいは西部方面普通科連隊をヘリコプターで陸へ運ぶだろう。
また日本はF-35Bを発注し、「ヘリコプター駆逐艦」から運用する構想がある。F-35Bはいずも、あるいはひゅうがからも飛び立てるが、そのためには全面的改装が飛行甲板に必要で、垂直離着陸で発生する高熱に耐える必要がある。わずか数隻を航空機運用のため海上に送るのは高額な費用を生み、政治的にもリスクとなるが尖閣・琉球諸島の防御には必要と日本は見ている。
中国はいずも級を警戒しているのは強力な多用途艦だからだ。ASWでは中国潜水艦の活動範囲で有効に対応してくる。揚陸艦として遠隔島しょ部への地上部隊の展開手段となる。また空母としてステルス第5世代機の移動基地として東シナ海に出動するからだ。

米軍
リストに他国の軍部隊が出てくることに驚きもあるかもしれないが、日米相互協力安全保障条約により日本には世界最強の軍事力が控えているのだ。
日中軍事衝突に米軍が加わるかは条件次第だ。日本が軍事攻撃で被害を受け米軍の援助を要請する場合が考えられる。条約の要件に合致して一度米軍が介入すれば、米軍の全装備が日本のため動員される可能性につながる。グアムの原子力推進攻撃型潜水艦からミズーリのB-2爆撃機に至る各装備だ。
ここまで同盟国を助けるのは見上げたものといえるが、日米同盟は戦後最も成功した同盟関係である。同盟関係は全面戦争勃発時にソ連に対抗するねらいがあったが、中国との領土紛争で日本を支援する想定はなかった。
米国が日中衝突に介入すれば大国間の戦闘になるのは必至だろう。米中間の軍事対決が現実になれば日中対立など吹き飛んでしまう。グローバル経済への影響が生まれ、なんといっても核保有国同士の対決である。日本の領土問題が明確に解決されないまま、防衛費をGDP1%に制限している中で米国が局地的な危機状況に引きずり込まれれば、結果として大規模戦闘に発展する可能性は極めて現実的となる。■
Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This article first appeared several years ago.

2019年11月11日月曜日

新型戦闘機開発のあり方を根本から変えようとする米空軍にはiPhoneが念頭にあるようです

Aviation Week & Space Technology

USAF Sees Five-Year Window To Invent A New Fighter Aircraft Industry 今後五年間で戦闘機産業の再構築を狙うUSAF

Oct 29, 2019Steve Trimble and Lee Hudson | Aviation Week & Space Technology

るでアップルiPhone各種を製造するように高性能戦闘機各種を迅速に製造したいとする米空軍だが、極秘の次世代航空優勢(NGAD)事業での立案方法を変えることが第一の関門となる。
これまで3年をかけて空軍はロッキード・マーティンF-22の後継機種を2030年までに実現する方法を検討してきた。当初は侵攻制空戦闘機として構想された機種は次世代F-X戦闘機として各種の新技術を搭載するものとして適応サイクルエンジンから高性能兵装や新型センサーを搭載する構想だった。
その後、2年間の期間延長が認められ代替策検討をしてきたが、2018年央に結論の目処がつくと、空軍はアプローチを変更することにした。新戦略ではNGAD事業に計上した132億ドルのほぼ半分を使う。F-Xをゼロから開発するのではなく、現行のロッキードF-35A、ボーイングF-15EXなど既存機種の改修を含めることにした。.
「新しい方法を試す好機と言える。第5世代機向けの生産が佳境に入っており、第4世代機にも多額の予算で近代化改修が進んでいるからだ」と話すのは空軍で調達、技術、補給活動を総括するウィル・ローパー次官補だ。
「つまり新方法を五カ年に渡り試す好機で、Xプレーン一機種二機種の製造と1000機規模の大量生産の中間で新機材を準備できるかを試したい」とローパーは新NGAD戦略についてAviation Week取材で答えている。
ローパー発言から極秘NGAD事業で大きな転換が昨年に発生していたことが伺える。米空軍には五カ年予算執行の形で民間産業界に新しいビジネスモデルを示したいとの意向があり、敵側も同等の技術を有する前提の航空戦の新時代には最適の方法と言える。 
この動きを支えるのが新設された高性能機材事業統括室Program Executive Office for Advanced Aircraft である。同室は10月2日に発足したばかりだ。同室をまとめるのはデイル・ホワイト大佐で以前はノースロップ・グラマンB-21爆撃機開発を迅速戦力開発室で担当していた。
ローパーが思い描くNGAD像は従来の機材調達方法と大きく異なり、単一の主契約企業に機材のライフサイクル全部にわたり責任を負わせ初回契約交付から実践能力の付与まで最低でも10年、15年にわたり契約義務を負うとするものだ。
ローパーが考える理想的なNGADの姿はこれまでの西側戦闘機開発と一線を画すもので、むしろ家電製品の開発に似ている。アップル製品では数年で陳腐化するよう設定されたiPhoneを顧客が購入し、その後は高性能版の新型に買い替えているではないかとローパーは指摘する。戦闘機事業に置き換えると、3,500時間の飛行時間で空軍は機材を10年間程度で更新している。
「次の機種の準備ができれば旧式機材は第一線から退けたい。iPhoneと似ている。新型があるのに旧型iPhoneを手元においておく理由はないはず」
今後五年間で空軍はデジタル技術でハードウェアに対応し、ソフトウェアに対しては共通OS方式でNGAD機材ファミリーに対応したいとする。
めざすところは新規企業の参入を促しながら、既存メーカーの特化設計部門たるロッキードのスカンクワークスやボーイングのファントムワークス、ノースロップ・グラマンのスケールドコンポジッツの実力を併用していくことにある。

「月間数機程度の製造能力がある企業が参入してくるのでは。今後製造の機会が頻繁に生まれるからだ。そうなればクールな設計や抜きん出た性能の機材が実現するだろう」とローパーは見ている。■

2019年11月10日日曜日

F-35やF-22の情報をサイバー活動でハッキングした中国、米大統領選挙の情報を入手したロシアにより西側社会は大きな損失を被っている



How China Stole Top Secret Information on the F-22 and F-35

A terrible hacking.
November 9, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35J-20ChinaMilitaryHackingCyber Attack
Key point: Beijing was able to get detailed information on America's best stealth fighters.
シア中国両国がサイバー戦、サイバー情報収集活動で米国に対抗する場面が近い将来に生まれそうだ。
両国には高度の能力を備えた部隊があり、米国から情報を盗む他、インフラ攻撃が可能だ。例として高度軍事ハードウェアの極秘情報があり、ロッキード・マーティンF-22、F-35やベル-ボーイングV-22オスプレイの情報が海外敵対勢力の手に渡っている。

「サイバー脅威のせいでグローバル体制、統治体制、社会規範への一般の信頼が揺らぐ一方で、米国等の各国に出費が強いられている」とは国家情報長官ダニエル・コーツが今年5月の議会証言で述べた一節だ。「重要インフラでサイバー技術と重要インフラが統合されているため、サイバー脅威により国民の健康、安全、繁栄が危険にさらされる」

 サイバー空間ではロシアが最強の敵対勢力である。「ロシアはサイバー攻撃の分野で相当進んでおり、ことに最近は強硬な姿勢をサイバーで強めている」「その姿勢が2016年米大統領選挙で如実に示され、同年の選挙関連データを盗み取り、把握できたのはロシアの最高位高官だけだったのではないかと見ている」とコーツは述べている。
 脅威は増加の一途で、クレムリンは能力拡大に走っている。「ロシアのサイバー運用は今後も米国や同盟国を標的として情報収集しつつロシアの政策決定を支援し、ロシアの軍事政治的目標の達成を助ける世論操作を行い、将来の有事に備えサイバー環境へ対応していくだろう」(コーツ)
 一方で中国はサイバー諜報活動やサイバー戦で活動をトーンダウンしているようだ。とはいえ、この分野で中国の存在は大きいことに変わりない。「中国は今後も米国政府、同盟国、米企業を標的にサイバー諜報活動を続けると見ている」「民生分野のセキュリティ専門家は中国発のサイバー活動を相変わらず探知しているが、規模は2015年9月の米中サイバー協定の発効後に相当縮小している。中国は海外の標的を狙い撃ちしており、自国の安定を阻害する、または政権の正当性を脅かすと判断する対象を狙っている」(コーツ)
 すでに被害は生じている。中国は高性能米兵器システムの技術情報を入手しており、例としてF-22やF-35等がある。「敵勢力は米防衛産業や民間企業をハッキングし科学技術やビジネス情報を入手している」「例としてF-35共用打撃戦闘機、F-22ラプター、MV-22オスプレイがある。さらに敵勢力は政府関係者や民間企業関係者の個人情報を狙っており、こうした諜報活動により海外勢力の兵器開発が加速化しコスト低減効果が生まれている。またリバースエンジニアリングのみならず対抗措置の開発も進めているので軍事技術並びに民生分野での米国の優位性が危うくなっている」

 こうしたデータ窃盗によって中国は高性能兵器システム開発に成功しているとペンタゴンは見ており、米高度技術を入手した結果だという。中国製の高性能兵器システムに米ノウハウが利用された例として成都J-20・瀋陽J-31両ステルス戦闘機、電磁カタパルト発艦システムがあり、後者はドナルド・トランプ大統領が酷評しているが中国は次期空母に搭載しそうである。米国が対抗策を強化しない限り、問題は時とともに深刻化の一歩となる。■

2019年11月6日水曜日

米空軍の重武装機構想はまだ消えていない 大量の兵装とネットワークで攻撃部隊の後衛となるのか


 USAF Leaders Considering Arsenal Plane Options

11/4/2019
​—RACHEL S. COHEN

デボラ・リー・ジェイムズ前空軍長官が戦略装備整備室主導の重武装機構想を2016年に発表していた。Air Force illustration.


空軍が「重武装機」構想のテストを計画中だ。構想では複数機材に大量の兵装を搭載し、攻撃部隊の支援が可能か試す。
重武装機は遠隔操縦機や戦闘機を引き連れ戦闘区域に進出し、「ネットワーク化で準自律運用可能な兵器」を運用するというのが2016年に公表された空軍ビデオの内容だった。構想はその後国防総省の戦略装備整備室が温めてきた。
「最古参機体をあらゆる種類の通常型ペイロードの発射台にする」構想と前国防長官アシュ・カーターが2016年に述べていた。「重武装機は超大型の空中弾倉となり、第5世代機を前方配備センサーとして照準ノードにしてネットワークでつなぐ」
上層部はこうした機材を運用した場合の効果を引き続き検討中と空軍広報官カーラ・バウジー大尉が11月3日認めている。原型機としてB-52が有望との声があるが、機動力に優れた輸送機も候補にあがっている。
空軍協会が今年9月に開いた航空宇宙サイバー会議で空軍のグローバル打撃軍団司令官ティモシー・レイ大将から空軍が実験を重ねていくとの発言があった。
空軍の調達を仕切るウィル・ローパーは以前は戦略装備準備室長で、9月末に同構想の説明を受けている。
機動性のある機体が重武装機に適しているのか。戦略国際研究所で航空宇宙安全保障プロジェクトをまとめるトッド・ハリソンによれば搭載する兵装の種類により変わるという。
「空対空兵装なら外部搭載兵器が理想的だ。しかし機動力を重視した機材の多くは外部搭載を想定していないので、相当の改装が必要だろう」「一方で対地攻撃手段を搭載するのなら、後部ランプから展開すればいいので大規模改装は不要となる」.
また、B-52が選択肢としてすぐれているのは機内及び主翼下に大量の兵装を搭載できるからだという。
「重武装機でステルス性や高速飛行性能は不要だがペイロードの大きさが必要だ」
AFAミッチェル航空宇宙研究所で将来の航空宇宙構想や性能評価をまとめるマーク・ガンジンガーも輸送機や民生機材が原型では不十分でB-52あるいはB-1を投入すべきと主張する。
「開戦直後にはC-17の需要は高いはずだ。その機材を攻撃任務に転用し、部隊の戦線投入任務から外すのでは賢明とは言い難い。民生用機材を転用して兵装を大量搭載して、兵器の与圧を解除してから無事に機外に放出できるのか疑問だ」■

コメント これも戦闘機の概念を崩すあたらしい構想の一部なのでしょうか。世界があいかわらず単座で機動性に優れた従来構想の延長の戦闘機を模索する中で米国のみが何でもこなせる大型機を戦闘機材の屋台骨に期待して整備しようとしている気がします。それにしても米空軍公表の想像図はC-130とB-52の合いの子の様な奇怪な姿になっていますね。

2019年11月4日月曜日

第6世代ステルス戦闘機は実現できるのか。期待と危惧、新技術の採用が鍵、財政は大丈夫化?



The 1 Thing That Could Crush a Sixth-Generation Stealth Fighter

And it has nothing to do with an F-35, F-22, Russia or China.
September 14, 2019  Topic: Security  Region: World  Blog Brand: The Buzz  Tags: Sixth-Generation FighterMilitaryWarF-35Defense

6世代有人戦闘機の新規開発に乗り出す動きが数カ国で見られる。第5世代機のF-35ライトニングや中国のJ-20の後継機としてだ。
ロシアと日本は迎撃機に焦点を当てており、日本は三菱F-3、ロシアはMiG-41だ。フランス、ドイツは次世代戦闘機を将来型戦闘航空機システム(FCAS)の一部として開発しようとし、英国にはテンペストがある。各機は2030年代ないし2040年代の供用をめざしている。
これに対し米空軍では次世代航空優勢(NGAD)構想があり前身は侵攻制空戦闘機としてB-21ステルス爆撃機に随行し敵領空に侵入する構想だった。
米海軍にはFA-XXがあり、艦隊防空迎撃機に最適化するようで、F-35Cを攻撃任務の中心とするようだ。
2019年初頭に中国航空産業企業も第6世代機開発に乗り出したとの報道がでた。
だが「第6世代ジェット機」とは理論上の存在だ。期待される性能特徴は以下に要約できる。速力と航続距離の重視とともに、レーダー非探知性も重要で、指向性エナジー兵器を搭載し、AIが補助し、無人運用への切り替えも可能、ネットワーク化したセンサー、進化した電子戦装備、さらに無人機編隊の統制も行う。
だが専門家や業界筋と話すと、以上がすべて実現すると見る向きは少ない。少なくとも有人機としては。理由として予算が莫大になることがあり、政治的決断が必要なこともある。他方で無人機ならずっと安価に上記が実現できると指摘してくれた。
F-35戦闘機では開発に二十年以上、開発予算数百億ドルのが使われた挙げく技術面で遅延が発生し、予算超過となり、政治面でも問題となった。それでもF-35は比較的導入しやすい価格で収まっている。ペンタゴンは同じ道はたどりたくないはずだ。
無人機メーカーのクレイトスがヴァルキリー「忠実なるウィングマン」の売り込みを開始し、機体単価はわずか2-3百万ドルと「消耗品扱い」になるとしている。言い換えれば戦闘で数機喪失しても受け入れられる範囲になる。戦闘機のような外見の同無人航空システム(UASs)は一機85百万ドルのF-35Aより性能が劣り脆弱性も高いが、虎の子のステルス機の一機分の予算で20機、30機が手に入る。
2019年9月にタイラー・ロゴウェイがThe Driveに寄せた記事で空軍が有人ジェット戦闘機を断念し無人機に切り替える方針に変更するのではと述べていた。記事全文を読む価値があるが次の二節が特に鍵となる。
「無尾翼、ステルス、長距離飛行可能な戦術機を多くの人が第6世代戦闘機と表現し、空軍構想の中心としてきた....そのような機材を製造する財政支出の現実を見れば、開発の長期化は必至で実現できなくなる可能性もある
「次世代制空機構想は進化し、無人運用が基本で必要な場合のみ有人操縦可能とする構想になり、強力なネットワークを組み合わせ準自律型運用になっている」
空軍は有人機に役目が無くなると見ているわけではない。Air Force MagazineではB-21ステルス爆撃機あるいは同様の機体で制空任務をこなす構想を紹介しており、「母機」として長距離空対空ミサイルを発射し、消耗品扱いの無人機も運用する構想という。確かに長距離UASを多用する戦闘では指揮統制のリンク確保が課題だ。
もう一つ浮上してきたのは「単一用途」の無人機を数百万ドル程度の単価で調達し、最初から帰還しない前提で戦闘投入する構想だ。一見、正気の沙汰ではないように聞こえるが、ペンタゴンが発射してきたトマホーク巡航ミサイルの単価が1.4百万ドルと聞くと納得するだろう。
技術の進展でこれまで明確に区別されてきた境界線が不明確になっている。「戦闘機」「無人機」「ミサイル」が例で同じ形になりつつある。
米空軍がコース変更しても、その他国の空軍部隊も同じ結論にたどり着くだろうか。ヨーロッパでは各国政府、航空企業が第6世代戦闘機事業に政治的な投資を投入する姿勢を堅持しており、すでにモックアップ段階は終了しているようだ
そこでヨーロッパの航空専門家二名に意見を聞いてみた。有人第6世代戦闘機は実現するか。
フランスの季刊誌Opérationnels SLDSの編集者ミュリエル・デラポルテは慎重ながら楽観的だ。
「工程表と予算ともに現段階ではっきりしていない。仏独共同開発のFCASで進展があても、新規性能内容の実現など部分的対応になるのは明らかだ。高度技術の実現も含め政治的な意思決定に依存する。ドイツの国防予算の実勢を見ると十分な水準とは言い難いが国内選挙の結果で変更もありうる。スペインを加えるのは政治面で追い風となるが財政的にもヨーロッパの国防予算の増額傾向もあり、よい傾向となるだろう」
つまり欧州大陸の政治潮流がFCAS事業を推進するというのだ。費用が高額になっても。
「フランス国内ではこれまでの軍事力退潮の流れを止めなくてはとの機運が政治面で高まっており、新ド・ゴール主義で国家主権を見直しつつ次世代航空宇宙産業の主導権を維持したいとしている。第6世代機であろうがなかろうが、第一歩は『次世代』としてラファール戦闘機の改修を進めることで、同機は本来NGF(次世代戦闘機)をリードするべき機体であり、操縦性、ステルス、データ融合に重点を置く機体だ」
デラポルテの主張ではFCASが素晴らしい機体になり、ネットワーク戦で無人機多数を運用する機体にどうしてもする必要はない。FCASとテンペストはともに各種無人機と平行開発されており、ステルスUASではタラニス、nEUROnの二機種がテストに成功している。
「将来の空軍含む部隊は単独作戦行動しないことが認識され。『各種システムのシステム』をつなぐことと各装備単位より戦闘クラウドが基本となることから技術革新の推進が認識され、フランスというよりヨーロッパで宇宙、AI, 電子戦等が重視されている」
「したがって先を見通す視点が必要です。ハイテクへの予算投入は増え、人員や工程面で部隊の見直しが始まっています。完全な形が見えるまで2050年代2060年代までかかるでしょうが、方向性は決まっています。次世代のスタートは今日のラファールF4やフェニックスMRTTにあるのです」
フェニックスMRTTとはA330旅客機を原型とした長距離給油機で監視機および指揮統制機としても使える機材で有人機無人機の利用効果を引き上げる効果が期待される。
クルジツォフ・クスカ博士はポーランドの航空専門家でJane’sはじめ国防関連刊行物へ寄稿しているが経済状況に関しやや悲観的なようだ。
「経済の減速はグローバル規模で明らかで、住宅市場や自動車産業で減速が始まっています。第6世代戦闘機についての質問への答えですが、まず経済の健全性を見ると景気後退は始まっていておかしくない状況と思います。2030年から2040年まで続くでしょう。つまり2030年代に経済危機の到来は必至で同時に解決を迫られそうです。そんな中で第6世代機に予算を重点投入できるでしょうか。一部事業は生き残るかもしれませんが、ヨーロッパで高性能戦闘機を2機種同時開発する余裕があるでしょうか」
クスカは天井知らずのジェット戦闘機開発経費への締付けから空軍部隊の規模で成約が出てくるとの見解も示した。
「観点を変えれば世代が変わるたびに空軍部隊の規模は縮小しています。第6世代機がこの傾向を破るのか、それとも維持するのか。戦闘には一定の機数を投入する必要があります。そうなると無人機は自然な選択でしょう。5G通信革命が見えつつあり、多くの面で変化を生むでしょう。高性能AIも実現しそうです。量子コンピューターは夢ではありません。すべてをパイロットにつなげば第6世代機で無人機多数を運用するのが自然な流れになるでしょう」
クスカが高性能な新型機が高価になり導入できなくなる矛盾が生まれると指摘するのは皮肉な話だ。「このような状況では十分な予算がないと戦費調達できず高性能機材の開発も維持できなくなります」
「将来予測は困難とは言え第5世代機からの進化はどうしても必要でしょう。結局のところ5+世代機に落ち着くかもしれません。ちょうど第6世代機の前に4+機があるのと同じ状況ですね」■
コメント: 戦闘機としての形態の枠組みにしばられたままの流れが多い中で米空軍が一番柔軟な発想をしている気がします。B-21という先行投資があるせいもありますが、B-21はLRS-Bでしたので第6世代戦闘機はB-21と機体を共有するLRS-Fになるのかもしれません。システムにも冗長性が持たせてあるはずなので今後の改良にも対応可能でしょう。翻り日本のF-3はどうか。やはり戦闘機の形状のままですね。それはいいといとしても新技術搭載の想定はどうなっているんでしょうか。気になるところです。