2016年5月11日水曜日

★P-8Aの性能がさらに発展中...空中給油に新型センサー、高高度ASW作戦構想



写真を見ると737-800が大きな機体であるのがよくわかりますね。あるいはKC-135≒B707が小さな機体だったのでしょうか。哨戒機に空中給油というのもにくいですね。高高度攻撃構想というのは従来の哨戒機=低空飛行という概念を変える作戦構想なのでしょうか。詳しい方ご説明お願いできませんか。

P-8A Tests Aerial Refueling, Readies For ASW Shakeouts

May 9, 2016 Michael Fabey | Aerospace Daily & Defense Report
U.S. Navy
JACKSONVILLE, Florida – P-8Aポセイドンの空中給油テストが始まっており、マルティスタティックアクティブコーヒアレント(MAC)潜水艦探知システムおよび高高度ASW兵装コンセプトに基づくMk.54魚雷と高高度センサー改修のテストを控えている。
  1. 「エドワーズ空軍基地に一機を配置しています」とトニー・ロッシ米海軍大佐が4月に述べていた。「現地で空軍のKC-135を使い空中給油をテストしています。これまで9フライトをこなしています。テストは順調で一回で1万ガロンを給油しています」
  2. 米海軍は得られたデータでP-8Aの飛行特性を正確に再現した空中給油練習装置を用意する。
  3. MACでは初回の技術変更提案内容が本日発表されており、技術開発テスト結果を反映している。MACは2015年の夏から冬にかけて各機に搭載されていた。「現在は訓練用途で飛行時に使っています」とロッシ大佐は述べた。
  4. MACのECP2が現在開発テスト中だが「今年夏に実用化の見込み」と大佐は述べた。
  5. ここまでMACテストは予定通り進行している。複雑な問題だとロッシ大佐は表現している。「操作員の作業量を信号処理能力で軽減したいのです。相当のエネルギーを海中に放射して返ってくる数千通りの反応から魚や岩礁と潜水艦を区別します。そこで操作員の負担を減らすのが主眼です」
  6. もうひとつテストで困難な点に潜水艦の確保があるとロッシ大佐は言う。作戦を意識したテストは六か月の予定だ。「これには『目標』の捕捉能力に左右されます。つまり想定する海の状況で正しく潜水艦を見つけねばなりません。日程はすべて潜水艦をうまく調達できるか次第です。潜水艦はあちこちで需要が高い存在です」
  7. マーク54魚雷については「高高度でのASWテストを一部実施中です」とし、別部門で開発中の兵装があり、ポセイドン各機への搭載前の統合テスト中という。その一環でまず安全に機体から投下できるかのテストを今年夏の終わりごろに行うと大佐は述べた。■


2016年5月10日火曜日

指向性エネルギー>(軍)予算足りず研究進みません→(議会)開発促進しろ



戦争の在り方を根本的に変える可能性を秘めた高エネルギー兵器の開発が予算削減されていいのでしょうか。まさかミサイル防衛の既存契約企業が望ましく思っていない?いやいやそんなことはないでしょう。中国やロシアは開発が遅れれば喜ぶと思いますが。こういう分野こそ日本も開発に協力していくべきではしかし予算強制削減策などの一連の対策も議会が設定したものですよね。

Directed Energy Projects Losing in Fight for Research Funding: Officials

POSTED BY: RICHARD SISK MAY 9, 2016



(U.S. Air Force illustration)(U.S. Air Force illustration)

米議会とペンタゴンで指向性高エネルギービームによる敵撃破手段の開発が関心を集めていた。道路わきの爆発物をフライにするとか弾道ミサイルを上昇段階で攻撃するとか。
  1. レーザーや高出力電磁波手段の推進派が熱心に説くのと反対に軍、議会ともに予算が足りないため必要な研究とテストが思うように進んでいないとし、原因を2011年度予算管理法に求める。
  2. 研究は「資金が維持できなくなっている」とウィリアム・E・ゴートニー海軍大将(米北方軍司令官兼北米防空司令部司令官)が4月13日に上院軍事委員会戦略軍小委員会の弾道ミサイル防衛公聴会で語っている。
  3. 同じころペンタゴン中庭では業界と軍研究部門が開発中装備の模型や図面を展示していた。ボーイングの戦略レーザーシステムズはミサイル防衛用で、レイドスの高出力高周波(HPM)は地上で爆発物を無力化すること特に道路わきに置いた即席爆発物(IED)の処理を念頭に置いている。
  4. このうちレイドスの装備は開発が空軍研究所の指向性エネルギー局でメガワット級発電タービンを大型トラックに搭載し同社によれば「爆発危険物を未然に無力化する初の手段」で輸送隊に安全を確保し「地上部隊を爆風と破片飛散から守る」のだという。
  5. レイドスで爆発危険物無力化装置を担当するトミー・カヴァゾスによれば指向性エネルギービームで信管を溶かし不発にする、または地上兵員が近づく前に連鎖爆殺させるという。
  6. カヴァゾスによれば試作品価格は約30百万ドルで、量産に入れば「おそらく6から7百万ドル」に下がり、「百万ドルにするのが目標」だという。
  7. 上院小委員会公聴会では指向性エネルギーやレーザーのシステム構成価格と研究費の不足を制約理由に挙げていたが、アンガス・キング議員(無所属、メイン)は予算不足が指向性エネルギー開発費用の足かせになっていることを憂慮し、開発できれば「命中必殺」の弾道ミサイル迎撃手段より安上がりになるはずとの指摘が出た。
  8. 「予算不足で開発が遅れれば誠に遺憾で、予算を節約しても愚かな結果になるだけだ」とキング議員は発言し、「指向性エネルギーは毎回ロケットを発射するよりずっと経済的だ」とジェイムズ・D・シリング海軍中将(ミサイル防衛庁長官)へ述べた。
  9. これに対しシリング中将は「指向性エネルギー装備開発はこれまで数年度にわたり予算要求で増額していただいているが今年こそご支援をいただきたい。これこそ次世代の技術につながり、はるかに経済的かつ大きな効果を実現する手段」だと強く訴えた。
  10. 今月初めにはジム・インホフェ議員(共、オクラホマ)、マーティン・ハインリック議員(民、ニューメキシコ)が両名で指向性エネルギー兵器の開発配備を加速させる法案を提出している。
  11. 「指向性エネルギーこそ米国が技術優位性を依然として発揮できる分野であり戦場の様相を決定的に変える存在だ」とインホフェ議員は語る。
  12. 「指向性エネルギーによりわが軍部隊は敵性勢力に対し本質的な優位性を確保できるので将来の装備体系の重要な要素だ。法案では変革のスピードアップを狙う」とハインリック議員は述べる。同議員の出身州には空軍研究所があり、高エネルギーレーザー共同技術開発部門、ホワイトサンズミサイル試射場もある。■


2016年5月9日月曜日

★ロッキード・マーティンの小型核融合技術研究はまだ継続中



短くて中身がわからない記事なのですが、投資家向けのPRなのでしょうか。それとも世界が疑った小型核融合炉技術の研究は着実に進んでいるのでしょうか。少なくともロッキードはこの技術に可能性を感じ研究を継続しているようです。

Lockheed Still Supporting Portable Nuclear Generator

Aaron Mehta, Defense News 4:41 p.m. EDT May 3, 2016

Picture taken 16 June 2005 at Le Bourget(Photo: Pierre Verdy/AFP via Getty Images)

WASHINGTON — ロッキード・マーティンは引き続き小型核融合炉へ資金をつぎ込んでおり、事業は一歩先へ進んだと同社スカンクワークス部門の責任者が述べている。
  1. 同社のロブ・ワイスは大西洋協議会においてロッキードが「もう一段先の段階まであと四か月ほど」のところに来ており資金投入を続けていると明らかにした。核融合技術で同社が小型化を発表したのは二年程前のことである。
  2. その時点では同社は出力100メガワット装置の作成を目指すと発表し、大型トラックで輸送可能な大きさだとしていた。その融合炉一基で人口10万人程度の都市に十分電力が供給できると説明していた。
  3. そんな技術が本当に実現すればエネルギー革命といえるが、軍事用途の可能性も秘めている。さらに小型化が進めば、戦闘機の動力源として指向性エネルギー兵器や高性能センサーが実現する。また宇宙船の動力にもなるだろう。
  4. 「当社の創造力あふれる技術陣が繰り広げている仕事の一例ですが、各自が国家安全保障レベルの重要な課題に取り組んでおり、今回も妥当な額の投資をおこなっています」とワイスは述べ、さらに「現段階では温度を上げ融合を発生させようとしており、融合反応の封じ込めで今後さらに温度を上げ、封じ込め理論を試します」とした。
  5. ワイスによれば研究チームは「初期プラズマ現象」を達成し、核融合炉の初期重要段階を通過しているという。■




★トランプ候補に振り回される日米安保はこれを逆手にとって強化発展できるか



サンダース候補はおいておいてもトランプ候補は大統領に当選する可能性があります。トランプさんの場合は既存の考え方の枠にはまらない人なので、記事が取材した日本のエスタブリシュメント層もとまどっているのでしょう。しかし、見ててください。政策の選択の幅はそんなにないはずですし、本人に各方面がご進講していき(すでに情報機関によるブリーフィングが始まっています)、党大会が終わり11月の選挙にむけて時間が進むとトランプ候補の発言も微妙に変わると思いますし、演説に見られる彼の顔とまったくちがう一面がると証言する向きもあります。米国内に既存の政治家に対する不信感が高まっているからこれまでにない候補者が出てきたのでしょうか。

Japan defends U.S. alliance amid worries stoked by Trump, Sanders

David Larter, Navy Times1:22 p.m. EDT May 6, 2016

Democratic Presidential Candidates Participate In Town Hall Meeting In Iowa
(Photo: Justin Sullivan/Getty Images)
常識破りの候補者二名、ドナルド・トランプとバーニー・サンダースが日本へも衝撃波を送っている米国が日本を撤退するのかとの懸念が生まれているのだ、中国が軍事力を拡大しているさなかに。
  1. 日本側の関係者は現役以前の担当者含め予備選での議論から米有権者がグローバルなリーダーシップから身を引こうとしていると解釈している。共和党候補に選出される公算の大きいドナルド・トランプが日本は安全保障では十分に費用負担していないと発言したことに日本側は反発している。
  2. 「米有権者の考え方に構造変化があるのではないか」と防衛相を務めた森本敏は語っている。「トランプ候補の支持者は米国だけが負担させられる世界の警察官の役目はもうごめんだと思っているのではないか」
  3. 森本元防衛相は日米の安全保障取り決めが不公平だとする考え方は否定する。日本は国内駐留の米軍隊員一人当たりでは4万ドルちかく、年間で17億ドルを分担しているという。ただサンダース候補、トランプ候補の支持者の間に懐疑論が出てていることは真剣に受け止めており同盟各国は分担増を迫られるかもしれないと指摘した。
  4. 「米国だけですべて完結できないのです。そのため同盟各国の対応能力を引き上げる必要があります。米国にはリーダーシップを期待しつつこちらは協力していく必要があります。国際法に基づく価値観を堅持し分担して守ってくべきです」
  5. 2015年末にトランプから日米同盟の価値、公平感で疑問が呈された。米国は日本防衛を約束し、日本は米軍に基地を提供するが、在日米軍基地は海賊問題から北朝鮮に至る地域大の脅威に対応する作戦補給両面の拠点になっている。
  6. 「日本が攻撃されれば即座に日本へ行き第三次世界大戦を始めるというわけですね。でもこちらが攻撃されても日本には米国を助ける義務はない」とトランプは述べ、「どうみてもこれは公平ではない」
  7. 同盟各国ではサンダース候補が大統領になればもっと内向きのアメリカになり国内問題が焦点になるが、アジア太平洋やヨーロッパでは米リーダーシップの維持がおろそかになるのではとの懸念が広がっている。
  8. 在米日本大使館でも大使がこの考えで米国に孤立主義の回避を求めている。佐々江賢一郎大使は「孤立主義の傾向が強い候補者がいますが、米国には孤立主義にはなってもらいたくありません。米国はグローバルで強い存在であってもらいたいものです」
  9. 石破茂大臣は日本の農業振興とともに安全保障も担当し、両国は同盟関係の内容をもっと明確に理解すべきと主張する。
  10. 「候補者の一人は同盟関係自体の変更を主張しており、これは日本としても看過できない発言だ」「米国市民には大統領を選ぶ権利があり、当方があれこれいうことではないが、だれが大統領になっても同盟関係の理解を正しくすれば政策も正しく実施されるのではないか」
  11. 森本元防衛相も同意見で、両国が意義を理解することが重要と見る。「日米安全保障条約は決して不公平な内容でなく、両国ともに恩恵を受けているのです。日本が公平な分担をしていないからと言って米軍が日本から撤退すると発言しても米国には良い結果をもたらしません。条約で米国がどれだけ経済面の支援を受けているかがわかってもらっていないようです」■


2016年5月8日日曜日

★ISIS爆撃に投入されたB-1爆撃機が大活躍



Bombing ISIS: US Official Shares Lessons From 6 Months of Airstrikes

Lara Seligman, Defense News 4:21 p.m. EDT May 2, 2016
Refueling Operation Inherent Resolve(Photo: Tech. Sgt. Nathan Lipscomb/US Air Force)
WASHINGTON — イスラム国への空爆開始から一年以上が経過し、米軍と有志連合軍は一定の進展を示しているとペンタゴン関係者は述べている。
  1. だがこの成果は第三十七爆撃飛行隊のB-1Bランサー爆撃機がいなかったら実現しなかっただろう。同隊は半年以上にわたり中東で連合軍を支援してきた。
  2. 昨年7月から今年1月までジョー中佐(本人及び家族の安全のため匿名)がカタールのアルウデイド航空基地で同隊を指揮してきた。隊員350名が連日24時間体制でイラク・シリア上空の監視飛行を行い、地上部隊への支援を提供してきた。
  3. その間ジョー中佐の部隊はイスラム国集団への戦闘で大きな成果を上げて、ラマディ、シンジャールのイラク二地点の奪還を2015年末に達成。このミッションではジョー中佐の部隊は敵部隊が兵器や指揮所を放棄し撤退するのを目撃し、敵の戦術を阻止してきた。
A look at how the Air Force is employing its aircraft
米軍が投入中の各機種の中でB-1が投下している兵器の量が一番多いのがわかる
(Photo: US Air Force)
  1. 六か月の配備中にジョー中佐指揮下のB-1は合計490ソーティーをこなし、爆弾およそ5千発を投下している。かなりのテンポが早い作戦となり、B-1一機当たりの爆弾搭載量の新記録を樹立している。同隊は任務を114パーセント達成し、現地米空軍の5パーセント相当のソーティーを実施し爆弾35パーセントを投下している。
  2. 同隊はISISの収入源を集中攻撃し、石油精製施設や現金貯蔵所の他訓練施設や検問所も狙ったとジョー中佐は述べる。近接航空支援にも投入され、地上部隊をISISの砲撃から守った。
  3. 地形や戦場の環境により空軍は投入機材を変えて地上部隊を敵の放火から守っているとディヴィッド・ゴールドフェイン大将(ホワイトハウスより次期空軍参謀総長に指名されている)が説明している。比較的平たんな地形ではA-10の希望が多いが、山地では長時間滞空できるMQ-9リーパーをCAS機材として要望することが多いとゴールドフェイン大将は述べている。
  4. B-1がイラク、アフガニスタン北部での近接航空支援用に適しているのは同機が多様な兵装を運用できるからで、2,000ポンド誘導式共用直接攻撃弾JDAMSや共用空対地スタンドオフミサイルJASSMを搭載して4時間から6時間を空中給油なしで飛行でき、「連続安定した形で地上部隊支援を提供できる」とジョー中佐は述べた。
  5. B-1が投下した兵装は全数が精密誘導方式で付帯被害を最小限にする米軍方針に沿ったものだという。「計画的かつ精密に最大効果を最小の投下で狙った。これが現地で最大の優先事項だった」とジョー中佐は述べた。
  6. B-1は1980年代の設計製造で当時のロックウェル(現ボーイング)製だが、機体はたえず改修を受け性能を向上させている。各機は最高性能の目標補足ポッドと最新兵器を搭載しており、通信装置でも空軍の他の機材に引けを取らないとジョーは説明。
  7. 常時一機は点検用に任務から離れていたが、展開中の飛行隊では珍しいことではないとジョー中佐は言っている。ときには予備部品の手配など課題にも直面したが、全体としては大きな保全上の問題はなかったという。
  8. 今年一月に同隊は現地を離れ、同機運用史上で最大規模の機体改修ブロック16を受けたという。B-1は完全グラスコクピット化される。各機はエルスワース空軍基地(サウスダコタ)からティンカー空軍基地(オクラホマ)に移動し回収を受ける。
  9. ジョー中佐は次回B-1が現地にいつ戻るかはわからないとするが、現時点ではB-52が交代で現地入りしている。
  10. 連合軍が奪還できた領土を見れば航空戦力の威力がはっきりわかるとジョー中佐は指摘した。■


★南シナ海問題で支持が得られず苦悩する中国外交



面子がすべての中国人の価値観ですから中国の言う通りに動かない各国にはイライラしていることでしょう。いまだに一般中国国民が査証なしで旅行できるのが聞いたことのないような数か国しかない中で大幅に査証条件を緩和する日本の動きはいかがなものでしょうか。逆切れした中国がロシアと悪の枢軸になる可能性が高まっていることには注意が必要ですね。


China Seeks Global Support for South China Sea Policies


Associated Press | May 06, 2016 | by Christopher Bodeen

BEIJING -- 友邦国を巻き込んで南シナ海から米国と同盟国を排除しようとした中国外交だが、強力な経済力と裏腹に限界を露呈している。

  1. 北京の大きな支えはロシア外相セルゲイ・ラヴロフが同地に領土がない各国は口をはさむべきでないと先月発言したことだ。
  2. その後ブルネイ、ラオス、カンボジアから相次ぎ中国を支持する表明が出たことをシンガポール外交官オン・ケン・ヨンが強く批判している。ヨンは中国がアセアンを分断すると指摘。中国はカンボジアと合意形成したと発表したが、カンボジア政府は否定している。
  3. それでも「国際社会は中国の主張を理解し南シナ海問題、国際仲裁裁判所の双方で中国政府を支持している」と中国外務省国境海洋局長欧阳玉靖Ouyang Yujingが6日報道陣に話している。
  4. 欧陽局長は中国の南シナ海領有主張に対抗するフィリピンが国連仲裁裁判所に2013年に審理を求めたことを言及した。中国は法的作業に一切参加せず、裁定結果に従わないと公言している。裁定はあと数週間で出るとみられる。
  5. この中国の動きについて米海軍兵学校で中国政治を専門とするYu Maochunは南シナ海問題で国際社会からの孤立を避けても「わずかな自己満足」が得られるだけだと指摘した。
  6. その意味でロシアの支持は大きな意味があり、反米、反西側世界の共同戦線になるとYuは言う。「世界にとって大きな危険になるのは大国同士が手を繋ぎ、米国が率いる民主国家に対抗することです」
  7. 世界第二位の経済規模の中国が支持を得たのが数か国だけで、しかも民主政治体制ではなく経済的に自立できない国ばかりというのは中国外交の影響力が拡大していないことの証とジョナサン・ホルスタッグ教授(国際政治学、ブリュッセル自由大学)は見る。「あれだけ巨額の財政援助を行いながら支持表明が数か国だけというのは驚くべきことだ。中国の経済外交の限界を示している」
  8. 中国は域外国は中立を守れと繰り返し求めてきたが、逆に中国支持であれば域外国でも歓迎し、これは矛盾しないというのは中国社会科学院の研究員で南シナ海問題で最上級政府顧問を務めるLi Guonquiangだ。
  9. ロシア他は「政治上の立場を表明しているだけで、南シナ海問題に権益を有さない。逆に行動まで起こしている国がある」とLiは北京で語っている。
  10. 環礁、島しょ含む南シナ海全域を実質上自国のものとする主張へ風当たりが強くなって中国は国際的な支持を必要としている。
  11. 米国は艦船航空機の派遣で圧力をかけており、サンゴ礁上に造成した島しょは中国領土であり諸権利を有するとする中国の主張は認められないと強調している。
  12. 米国は日本含む同盟国ともに中国が滑走路や軍事施設を構築して緊張が高まっているとし、戦略的に重要な水路、豊富な漁業資源、石油ガス埋蔵が有望視される資源とともに国際交易が年間5兆ドル規模になっている南シナ海の重要性を指摘する。
  13. 対する中国は平和と安定を海軍力で乱しているのは米国と非難。6日に改めて中国の主権を再確認しフィリピンの提訴には根拠がないとし、裁定内容は「受理せず、関与せず、認めない」と明言した。「フィリピンが持ち込んだ本件は法の衣をかぶった政治茶番以外の何物でもない」と欧陽局長は報道陣に語った。
  14. スカーボロ環礁で中国が埋立て工事を開始すれば緊張はさらに高まる。同環礁はフィリピン本土のルソン島から近く、2012年から中国艦船が実力占拠している。
  15. 中国国防省は予定はないとするが、同環礁は中国に帰属し開発の権利があるとの主張を繰り返した。
  16. 欧陽局長に今後の開発予定の有無で質問が出たが、局長は従来の政府の立場を繰り返し、埋立て工事は昨年6月末ですべて完了していると述べた。
  17. 「これ以上言わなくても意味はわかるはず」と局長は簡単に述べている。■


2016年5月7日土曜日

★世界五大海軍国のリストで日本は五位



日本の海軍力の位置づけは国民の間でも理解されていないのではないでしょうか。その意味では「目立たない」内に世界有数の戦力を整備している事実はもっと知ってもらいたいところですね。さらにロシア、英国がかなり悲惨な状況なのでひょっとすると日本がランクアップして世界第三位になる可能性もあると思いませんか。

Which Countries Operate the 5 Most Powerful Navies in the World

KYLE MIZOKAMI
1:41 AM

古今東西問わず海岸線を有する国が海軍部隊を整備している。規模こそ違え、世界各地で任務の基本も軍事力を隣国やその先に投射することで共通している。

海軍部隊の平時任務も数千年不変だ。領土を守り、通商路を維持し、国威を発揮し敵の侵略を思いとどまらせる。有事には海軍力を投射して敵が同じことをできなくする。このため敵海軍を攻撃し、揚陸作戦を実施し、戦略地点を海上、陸上で占拠する。

世界各国の海軍部隊では新しい任務や課題も生まれている。戦略核抑止力、弾道ミサイルの対抗手段、宇宙空間、人道援助災害救難が加わっている。このことを念頭に現時点での世界五大海軍を順に見ていこう。

米国
  1. 米海軍がリストの最初に来ることに驚く向きはないだろう。米海軍の艦艇数は世界最大だ。またミッションの多様性、行動海域の広さでも匹敵する国はない。

  1. 米海軍に比する活動範囲は他のどの海軍も展開していない。太平洋、大西洋、インド洋、地中海、ペルシア湾、アフリカの角のすべてだ。米海軍はまた日本、ヨーロッパ、ペルシア湾に艦船を配置している。
  2. 米海軍の戦闘艦艇は288隻で、常時その三分の一が各地に展開中だ。航空母艦10隻、巡洋艦22隻、駆逐艦62隻、フリゲート艦17隻、潜水艦72隻である。さらに航空機の3,700機は世界第二位の規模だ。人員は現役323千名に予備役109千名で人員数でも世界最大だ。
  3. 米海軍の特徴はなんといっても空母10隻で、世界各国の空母の合計を上回る。隻数だけでなく大きさもずば抜けている。ニミッツ級空母一隻が運用する航空機は72機と米国外で最大の空母の搭載機数の二倍になっている。他国の空母航空隊が戦闘機中心になのに対し米海軍空母航空隊はバランスの取れた編成になっており、航空優勢確保、攻撃、偵察、対潜戦、人道援助災害救難の各種ミッションをこなす。
  4. 揚陸作戦艦船31隻は世界最大の規模を誇り、陸上部隊を運び、敵地に上陸させる。このうちタラワ級ワスプ級の強襲揚陸艦はヘリコプターを搭載し兵員を送り出すミニ空母構造となっており、AV-8Bハリヤー攻撃機を搭載しているがまもなくF-35Bを戦闘爆撃機として運用する。
  5. 原子力攻撃潜水艦54隻はロサンジェルス級、シーウルフ級、ヴァージニア級の混成で、さらに戦略抑止力部隊をオハイオ級弾道ミサイル潜水艦14隻で構成し、合計336発のトライデントミサイルを搭載している。オハイオ級の四隻で核ミサイルを撤去し、かわりにトマホーク陸上攻撃ミサイル154発を搭載している。
  6. さらに弾道ミサイル防衛任務があり、宇宙活動や人道援助災害救難も行う。2013年10月時点で29隻の巡洋艦・駆逐艦が弾道ミサイル迎撃能力を有し、一部はヨーロッパと日本へ前方配備中。また米軍活動を支援するため宇宙監視を続けており、敵性国家の衛星を追跡している。空母は病院船USNSマーシー、USNSコンフォートとあわせ災害救援任務をインドネシア、ハイチ、日本、フィリピンで展開している。


中国
  1. 人民解放軍海軍(PLAN)はこの25年で大きく変わった。中国経済の驚異的な成長で国防予算は1989年の10倍にまで拡大し、海軍も近代化が進んだ。かつての旧型駆逐艦と高速魚雷艇の編成の沿岸海軍から海洋海軍へと変身した。
  2. PLANは空母一隻、揚陸輸送艦三隻、駆逐艦25隻、フリゲート艦42隻、原子力攻撃潜水艦8隻、およそ50隻の通常型攻撃潜水艦を運用中。人員数は133千名でここに2個旅団各6、000名の海兵隊を含む。
  3. PLAN航空部隊(PLANAF)は固定翼機とヘリコプターを空母に派遣し、ヘリコプターはその他水上艦に展開しているほか沿岸部の基地で戦闘機、攻撃機、哨戒機を運用する。PLANAFの機材は合計650機でJ-15艦載戦闘機、J-10多任務戦闘機、Y-8洋上哨戒機、Z-9対潜哨戒機を保有する。
  4. 中国初の空母遼寧には注目が必要だ。2012年に就航したがもともとソ連海軍用に建造され、冷戦終結後、未完成のままだった船体はウクライナ国内の造船所にあった。PLAが名目上の企業を通じて購入し、中国までえい航し、ほぼ10年をかけ整備した。遼寧は空母運用に習熟するための練習艦の性格が強い。
  1. PLANは揚陸作戦能力の近代化を続けており、071型ドック型揚陸艦を就役させた。071型一隻で500名から800名の海兵隊員を搭載し、ホーバークラフト舟艇(米LCACと同様)やZ-8中型輸送ヘリで上陸させる。また全通型飛行甲板を有する強襲揚陸艦も建造計画中と伝えられ、完成すれば米ワスプ級と肩を並べる艦容になる。071型6隻と新型強襲揚陸艦6隻を整備するといわれる。
  2. 潜水艦60隻では各型が混ざり合っている。中核は商級原子力攻撃潜水艦三隻と元級9隻、宋級14隻ならびに改良型キロ級10隻(ロシアより購入)だ。弾道ミサイル潜水艦部隊では晋級が三隻就航しており、四番艦さらに五番艦が建造中だ。南シナ海を水中核抑止力部隊の聖域として使うのが中国の狙いと思われる。
  3. さらに拡大と経験を得ようとしている。少なくとも空母二隻建造の計画があり、最終的に空母は五隻になる可能性がある。空母以外に国際海賊対策としてアフリカの角まで艦船を派遣中で遠洋運用の経験を積んでいる。これまで派遣は17次に及んでおり、各艦持ち回り派遣で長距離での艦運用技能を磨いている。

ロシア
  1. リスト三番目がロシアだ。ソ連から艦艇多数を冷戦集結後に引き継いだロシア海軍の中核は老朽化する艦艇だが、艦の改良が徐々に効果を上げている。ロシア海軍は国威発揚の効果を各地で発揮している。
  2. ロシア海軍の艦艇数は79隻で、うち空母一隻、巡洋艦5隻、駆逐艦13隻さらに潜水艦52隻である。少数の攻撃潜水艦、巡航ミサイル潜水艦を除くと実質的に現有艦艇すべてが冷戦時代に建造された艦である。長年にわたる予算不足でロシア海軍は慢性的に即応体制が満足に維持できていない。大型艦では空母アドミラル・クズネツォフや太平洋艦隊旗艦ワリャーグがタグボートを同行して長距離航海に出ているのがたびたび目撃されている。老朽艦のうち何隻が実用に耐えるの不明であり、戦闘力を十分に有する艦数も不明だ。
  3. ロシアはソ連から揚陸作戦能力も引き継いでいる。中心のアリゲーター級ロプチャ級の揚陸艦20隻余りは1960年代から建造されており、今日では陳腐化している。そこでミストラル級強襲揚陸艦2隻をフランスから購入し不足を補おうとしたが、クリミヤ介入で実現が困難になった。

  1. ソ連同様にロシア海軍でも中心は潜水艦部隊である。ロシアはリスト上では原子力攻撃潜水艦15隻、通常型攻撃潜水艦16隻、巡航ミサイル潜水艦6隻、弾道ミサイル潜水艦9隻を運用している。ただし一部は長期修理中であり、ほとんど全数が冷戦時の旧型艦でもあり何隻が作戦可能なのか不明だ。弾道ミサイル潜水艦9隻がロシアで貴重な第二次核攻撃任務にあたっており、おそらく艦隊では最高度の作戦態勢を維持しているのだろう。
  2. ロシアは海軍部隊の大幅拡充の案を持つが、大部分は案のままになっている。空母も最低あと一隻、新型名称不明の誘導ミサイル駆逐艦数隻、ボーレイII級弾道ミサイル潜水艦数隻、ヤーセンII原子力攻撃潜水艦、改キロ級、ラーダ級通常型攻撃潜水艦の取得を想定している。潜水艦は建造中だが、空母や駆逐艦の予算確保ができず、構想のままだ。

英国
  1. リストには載るものの英海軍は歴史的な退潮段階にある。英海軍も英軍の例にもれず装備人員を削減されてきた。インヴィンシブル級空母二隻と艦隊航空部隊のシーハリヤーの退役で英海軍戦力は大幅に縮小されている。それでも核兵力と次世代空母の建造案があることで四位となった。
  2. 上位五カ国中で英海軍の規模は最小で、人員は33,400名が現役、予備役2,600名に過ぎない。艦艇は大型強襲揚陸艦3隻、フリゲートおよび駆逐艦19隻、原子力攻撃潜水艦7隻、原子力弾道ミサイル潜水艦4隻で構成。航空部隊は149機で大部分がヘリコプターだ。
  3. 水上部隊の中核はタイプ45誘導ミサイル駆逐艦ダーリング級の6隻で高性能サンプソンレーダーを搭載し、米海軍イージスシステムのSPY-1Dとほぼ同等の性能がある。48発のアスター対空ミサイルも搭載して弾道ミサイル含む広範な対応可が可能だ。
  4. 英海軍潜水艦部隊は十数隻に縮小している。原子力攻撃潜水艦7隻はHMSアステュート級に更改され、陸上攻撃用トマホークミサイルとスピアフィッシュ魚雷が導入されれば世界有数の潜水艦となる。ヴァンガード級弾道ミサイル潜水艦四隻が英国の核抑止力となっており、各艦(潜水時排水量15,900トン)はトライデントD弾道ミサイル16発を搭載する。
  1. 英海軍に間もなく大幅な戦力拡充の機会が訪れるのは、新型空母二隻HMSクイーン・エリザベス、HMSプリンスオブウェールズの建造だ。各満載排水量7万トンで英海軍の歴史上最大の艦となる。F-35Bを36機とヘリコプタ0数機を各艦で運用する。

日本
  1. リスト五番目は異例の存在だ。なぜなら正確に言うと海軍ではないからだ。海上自衛隊(MSDF)は軍事組織ではなく、隊員は公務員であり兵員ではない。目立たないうちに日本は世界有数の高度に発達し訓練を受けた人員で構成した海軍兵力を整備した。
  2. 海上自衛隊は艦船114隻、人員45,800名規模だ。中心は駆逐艦部隊でシーレーン防衛で日本の物資輸送を守ることは第二次大戦から変わっていない。駆逐艦合計46隻は英海軍、フランス海軍を合わせたより多く、近年は新任務に合拡充されている。2000年以降はイージス駆逐艦が北朝鮮弾道ミサイルに対する防御の役目を担っている。
  3. さらに「ヘリコプター駆逐艦」といわれる艦種を建造している。通常の駆逐艦の二倍の大きさがあり、外観(内部も)は空母に類似している。実はヘリコプター駆逐艦とはヘリコプターを発進させる空母そのものであり、将来はF-35Bの運用も可能かもしれない。
  1. 揚陸能力はまだ整備中だが拡大に向かっている。戦車揚陸艦三隻は9,000トンで300名を揚陸させるほかヘリコプターとホーバークラフトで車両も運ぶ。先のヘリコプター駆逐艦も新設の海兵隊機能を有する旅団から大隊単位で搬送し、アパッチヘリコプターで航空支援を行える。
  2. 潜水艦部隊は世界トップクラスだ。16隻ある中でそうりゅう級が最新で、空気非依存型推進方式を採用して通常型潜水艦としては異例に長く潜水できる。また日本の潜水艦部隊は新造艦が多いため平均艦齢が若く、平均18年から20年で退役しているが、隻数を22に増やしてPLANの戦力増強に対応するとの発表があった。

本稿はThe National Interestからの転載。本稿の筆者カイル・ミゾカミはサンフランシスコ在住でThe Diplomat、 Foreign Policy、 War is Boring、The Daily Beastへの寄稿の他、2009年からブログJapan Security Watchを共同運営している。



2016年5月6日金曜日

★イランのRQ-170ハッキング奪取事件(2011年)を受けてサイバーセキュリティ強化を続ける米無人機



Iran–U.S. RQ-170 incident has defense industry saying 'never again' to unmanned vehicle hacking

May 3, 2016

THE MIL & AERO COMMENTARY, 3 May 2016.
unmanned cyber

2011年に発生した米RQ-170事件は米軍の無人機開発でいまだに悩ましい記憶だ。イラン軍はサイバー戦でRQ-170センティネルステルス無人機の操縦を乗っ取り機体を奪取した。同機はイランの都市カーシュマル近郊を飛行中だった。
  1. 米軍はイランのハッキングで同機が奪取された事実はないと事件直後に言っていたが、オバマ大統領はサイバー戦による仕業であることをその後に認めた。
  2. 敵性勢力、テロ集団のサイバー戦専門家がまた無人機をハッキングすれば重大事態となる。米指導部が再発は許さないと決意しているのは明らかだ。
  3. RQ-170事件を受けて無人機ではサイバー面での安全確保がペンタゴンで優先事項のトップに上り、多段階の暗号化や領域横断方式の解決策等の新技術の採用が米国内無人機業界の熱い注目を浴びている。
  4. 無人機の安全を巡る懸念が依然として強いことは今週ニューオーリンズで開催された無人機国際協会(AUVSI)主催の展示会でも感じられた。
  5. UAVの指令操縦機能、状況認識能力やセンサー情報のダウンリンクなどすべて無線通信に依存しており関連企業はサイバー保全関連の自社製品を展示していた。
  6. 民生用暗号技術に国家安全保障庁(NSA)方式の暗号化を組み合わせれば多段階の安全確保対策となるとの提案もある。その他の有望な解決方法としていわゆるレッドブラック方式のネットワーク構成として安全対策のある、ない両方のデータを同時処理するものがある。NSAが認証する方法で民生用暗号技術を採用する動きも現れている。
  7. 米軍無人機の乗っ取り、ハッキングは今後は誰もできなくなるのは確かなようだ。■


中国の軍改革、戦略戦術の変化は要注意 本質を見抜く目を鍛える必要あり



習近平が陸軍兵力を30万名削減すると公言した裏には人民解放軍がどんどん変革を続けていることがわかります。(芸能兵など存在自体が疑問な兵員もいるのですが) 情報化、宇宙、サイバー含む全領域での優位性確保、さらに各軍統合運用などと米国の姿に近づいていくのがわかりますがその実力はいかに。決して侮ることは許されませんが、鄧小平が始めた軍の近代化が現在も着々とと進んでいることには注意が必要です。

What PRC President Is Really Doing; What The Uniform Means

By DEAN CHENG on May 03, 2016 at 4:01 AM

Xi Jinping in military uniform
習近平が軍服を着用して軍事司令部を訪問した姿が公表され、その説明文で「最高司令官」の表現があったことが中国内外で注目を集めている。
  1. 軍服姿は中国の軍事大国化を反映したものなのか。「最高司令官」という肩書は軍との政治的緊張の反映なのか。残念ながらこういった視点では本質が見えなくなる。
  2. 米国の分析は細部にこだわりすぎる傾向がある。習がどんな服を着ているのか、自らの立場をどんな語句で表現したのか等々だ。一方でもっと大きく根本的な変更が進む状態が検討対象になることは少ない。
  3. まず、習は迷彩軍服で今回の視察に臨んだが、2013年の潜水艦、2014年の別の機会にも軍服で写っているので、今回は先例ではない。
  4. また中国語の表現 “zong zhihui”には全体指揮官という意味があり、状況が異なれば別の人物もこう呼ばれる。たとえば神舟宇宙船の船長で同じ表現が使われている。
  5. 習近平の肩書は中央軍事委員会(CMC)の委員長であり必然的に軍の最高司令官であることを忘れてはいけない。中国の報道では本人を中国共産党中央委員会総書記長、国家主席、中央軍事委員会委員長と表現しており「全体指揮官」に先行していた。肩書が加わったのかは別としても、習が軍を掌握していることに疑問の余地がなく、バラク・オバマ大統領が軍の最高司令官というのと大差はない。
  6. むしろ注目すべきは習が視察した施設で、軍事委員会統合指揮所 (junwei lianzhi zhongxin; 军委联指中心)は人民解放軍PLAが各軍の統合運用を重要視している象徴でありPLAで進行中の大改革も反映している。
CSBA graphicPLA Modernization: Getting Ready to Fight “Informationized Wars”
  1. 第一湾岸戦争の終結後に人民解放軍は統合運用重視に傾き、他国の戦闘事例を観察分析したPLA上層部は将来の戦闘は各軍統合運用で高性能兵器を使って行われると結論付けた。
  2. その一環で1999年は「規程の年」と呼ばれ、戦闘用規則や教本が大幅改定されている。その後にPLAの装備や訓練方法が近代化されている。
  3. NATOによるバルカン地方介入、米軍のアフガニスタン侵攻、サダム・フセイン政権の転覆を横目にPLAは演習を通じ統合運用の経験を積み、将来戦の構想を進歩させてきた。以前は「近代的かつハイテクを投入した局地戦」が以前の定義だったが「情報化を前提の局地戦」に変更し、情報や情報技術で戦闘支援を行うことに加え、情報自体が戦闘における中核要素だと定義されるに至っている。「情報優勢」の確保がこれからの戦場で決定的要素になるとの考えだ。
Chinese DF-21 missile launchersChinese DF-21 missile launchers
  1. そこでPLAを将来戦に対応させるべく組織面で三つの大改革を行っている。まず、戦闘部隊の再編があり、従来の軍区7個は5つの戦区に改編された。重要なのは各戦区に統合作戦本部を置いたことで、CMCの統合作戦センターとつなげ各本部を統括するのだろう。これまで統合作戦司令部はその都度臨時に設けられ恒久的組織ではなかった。
  2. 習の視察での政治的な意味を考えると、PLA全体に統合司令機能による共同作戦実施が定着したと示しているのだろう。習が軍事委員会の統合司令センターに姿をあらわしたことでセンターの最高司令官の役割を果たしてと誇示しPLAの新方式は全体司令官である習自身が推進していると公にしたといえよう。
  3. さらに軍事活動全体を統括する中央軍事委員会(CMC)では四つあった総局を15の部門、事務局、委員会組織に改編した。これは兵力動員の準備態勢、訓練水準を引き上げる狙いがあるとみられる。CMCの組織をいじるのは1999年以来のことであり、1960年代の創設以来最大規模の変更になった。
  4. 組織再編の一環として総参謀部は統合参謀部に再編されている。これもPLAが統合作戦で戦闘を行う想定になっていることのあらわれだ。
  5. 最後に軍の数が増えた。かつては地上軍がPLAで政治的組織的に主流だったがCMCの15部門等で陸軍はもはや中心ではなくなっており、CMCでは陸軍出身が多数だが残りの軍とは平等の立場と位置付けられている。
  6. その一方でPLA第二砲兵隊は従来は特別部隊の位置づけが今回独立軍に昇格しPLAロケット軍となった。同時にPLA戦略支援軍 (PLASSF)があり、今回の軍改革の中で最も特徴のある存在となり宇宙軍、電子戦軍、ネットワーク戦部隊がここに含まれる。
  7. ロシアは空軍を航空宇宙軍に変えたが、中国は情報戦軍を発足させている。情報面での優位を情報化戦闘で確保するべく、PLAは電子、ネットワーク(サイバー)、宇宙の各領域で優位性確保に乗り出した。そのため専門組織を作り新しい教義を作り、訓練を統合して任務にあたるよう期待しているのが明白になった。
Graphic courtesy Sen. Dan SullivanGraphic courtesy Sen. Dan Sullivan
  1. 一つ一つの改革は軍組織の地殻変動的な変化につながる。各方面で進行中の改革はかれこれ30年前からあり、習近平は各実施内容を監督するが各施策の実施は指導部の指示をいかにPLAが真剣に受け止めているかの表れで、指導部は戦闘に備え、次の戦いでは勝利をおさめよ、と強調している。■