2016年5月23日月曜日

★ステルス駆逐艦ズムワルトが米海軍へ引き渡されました



US Navy Takes Ownership of Stealth Destroyer Zumwalt

Christopher P. Cavas, Defense News 2:27 p.m. EDT May 20, 2016
Zumwalt destroyer sea trials(Photo: US Navy)
WASHINGTON — ジェネラルダイナミックス社バスアイアンワークスが正式に新型ステルス駆逐艦ズムワルト(DDG-1000)を米海軍に5月20日に引き渡し、政府所有の軍艦となった。
  1. 海軍海上システムズ本部は「本日はDDG-1000建造事業に携わる当方のみならず米海軍全体にとって大きな前進となった。同艦は最新の設計とともに高度な内容の技術を盛り込み、米海軍に次世代の威力の幕を開くものだ」との声明をジム・ダウニー大佐(ズムワルト級紙事業主幹)名で発表している。
  2. 同艦は1990年代後半に海軍艦艇へステルス性能導入の先駆けとして構想され開発が始まった。当初海軍は32隻建造の構想だったが、28隻にされ、さらに7隻に削減され、2隻にまでなったが、予備艦含め3隻となった経緯がある。
  3. 構想当初は対地攻撃駆逐艦として水上戦闘艦21(SC21)の一種類の扱いだった。2002年にはDD(X)となり、ノースロップ・グラマンとレイセオンが主契約企業に選定され、その後2006年にDDG-1000に名称が変わった。
  4. その後、主契約企業の役割を海軍が担うことになり、ジェネラルダイナミクスのバスアイアンワークスが船体・機械系・技術面(HM&E)を担当し、レイセオンは戦闘装備を担当することになった。
  5. 建造契約の交付は2008年2月でズムワルトの引き渡しは2014年7月予定だった。2011年11月に船体が起工され、2013年10月に進水した。
  6. ズムワルトは初回海上公試に2015年12月に引き出さされ、その後造船所がHM&E関連の公試をし、二回目の海軍による公試が3月に行われ、海軍検査部が二日にわたる受領前の公試を4月21日に完了した。
  7. 引き渡しが終わり、海軍乗組員が同艦に移動してきた。今秋にバスを出港し、まずノーフォーク(ヴァージニア州)に移動し、その後ボルティモア(メリーランド州)にて10月15日に就役式典を行う。その後、正式な母港となるサンディエゴへ移動する。
  8. ズムワルトでは未完成作業が残っている。2017年にレイセオンは海軍とともに戦闘装備を完成させる。レーダー、センサー、兵装が完成する。2017年末あるいは2018年初頭に戦闘装備運用テスト(CSQT)の準備が整い、兵装とセンサーの完全テストが始まる。CSQTが完了次第、ズムワルトは作戦投入が可能となる。
  9. 続く二隻マイケル・マンスール(DDG-1001)とリンドン・B・ジョンソン(DDG-1002)がともにバスで建造中。■


2016年5月14日土曜日

次の戦争はどんな姿になるのだろうか 今わかっていること


Aviationweekの創刊100周年エッセイの一環ですが、二人の著者は中国による米ハイテク奇襲攻撃スリラーGhost Fleetの著者ですので、内容もその方向になっています。戦争を計画する側は前回の戦争のイメージにとらわれ結局事態に追いつけなくなるそうですが、果たして次に全面戦争が勃発すればどうなりますか。心してご一読ください。


Aviation Week & Space Technology

The Next 100 Years: P.W. Singer and August Cole

What We Know Now About the Wars of the Future
May 5, 2016Aviation Week & Space Technology

将来の戦争は偶発的に始まるかもしれない。例えばパイロットが無茶な操縦をして別の機体に衝突し、単なる事故だったものが怒りに変わり戦火につながるかもしれない。あるいは危機状態が限界に達し、新政策もしくは新しく造成した島が問題となり同盟国も巻き込んだ大国同士の戦争になるかもしれない。あるいは新世界秩序の構築のため強くなった経済力、軍事力を活かそうとするかもしれない。
未来の戦闘の原因や進展は予測が難しいが、確実なこともある。空がカギを握りそうだ。ただし米国がこれまで経験したことのない形になりそうだ。米国が制空権確保に苦労した最後の経験で空軍は陸軍航空隊の名称だった。米地上部隊が空爆を受けた直近の事例はラオスに展開した部隊が北ヴィエトナムがソ連のアントノフ貨物機を爆撃に転用した機体から爆弾を受けたものだった。ドッグファイトがあった最後の年に生まれた子供がそろそろ軍務についてもおかしくない年齢になっている。
将来の戦争では空の戦いが重要になるとしても、航空機多数で航空優勢の確保を狙う国家が相手となるか、非国家勢力がこれまで誰も経験したことのない方法で空に進出を狙ってくるかは不明だ。後者は現実のものになっている。イラクシリア戦では紛争当事者双方が無人航空機システム(UAS)を投入している。現地での米軍作戦の成否はUASによる目標補足と攻撃能力にかかっている。イラク軍も中国製UASを使い、自称イスラム国でさえ民生用ドローンを情報収集監視偵察用に使っているほどで、一昔前の正規国家では考えられない能力が現実のものになっている。
未来の戦争は多方面での戦いとなるが、開戦は想定外の場ではじまりそうだ。1914年にはドイツ歩兵がベルギーになだれ込み、1941年には九九艦爆が真珠湾に急降下爆撃をしかけ、「衝撃と畏怖」作戦ではバグダッドに巡航ミサイルがさく裂したが、次の戦争の開始は音もなく始まりそうだ。その理由として第一回目の対戦は低地球周回軌道の真空あるいはサイバー空間が舞台になりそうだからだ。それぞれの場所での結果は決定的な効果を生みそうで、現代アメリカの戦闘行為がその両方の場所に依存し、妨害破壊活動に脆弱な場所になっているためだ。
将来の戦争では長い間優勢だった技術優位性も消えるだろう。多くの国家が第五世代戦闘ジェット機やプレデターのような無人機の導入を急ぐのは戦闘の在り方そのものが変わってきたためだ。将来の航空戦で勝敗を決めるのはその前に発生するサイバー空間での対決の結果であり、主要米航空宇宙産業で発生しているデータ強奪が特に大きな意味を持つ。自国の研究開発成果が相手国にも筒抜けでは軍備競争に勝つのは極めて困難だろう。
だが指導層が現状維持を守り通そうとする際に敵側が単にこちらの技術を盗みコピーしていると考えるのは都合がよすぎる。ワシントンDC在住の既存防衛産業からは満足できず、国防総省はシリコンヴァレーに色目を使い、民生部門の技術革新と同様の変化を期待している。反対に中国の政府と民生分野の研究陣は連携して各種の画期的な国産技術を開発しており、例として重慶の長安自動車 Changan Automobile Co.は自動運転車を開発中で2,000キロの運転を達成しており、世界最速スーパーコンピュータ天河-2 Tianhe-2 もある。
こういった技術が戦闘の様相だけでなく戦闘員や技能も変えるだろう。サイバー空間での戦いでは以前は存在さえしなかった軍の組織、にわか集めのサイバー戦闘員、ハッカー集団も参画するはずだ。かわりにF-22パイロットでさえも戦場のデータ管理者の役目を担い、もはやかつての戦闘機エースの片りんは見つけられない。さらに人工知能がSF小説の世界から抜け出し、すべてを制御する存在として台頭してくるはずで、すでにIBMのワトソンではペンタゴンも契約をしている。
どんな変化が生まれるにせよ、将来の戦争ではAviation Weekが100年にわたり丁寧に報じてきた過去の経験もやはり有効だとわかるはずだ。技術がいかに進歩しようと、戦争の本質は人間で、戦争の原因も進展も人間が作るものだ。戦争につきものの状況が見えない事態はやはり残るし、初回交戦の結果で以前の想定条件は変わらざるを得なくなる。敵側も学び実力を上げてくるし、お互いのOODA(観察予想決定行動)のサイクルを意識するはずだ。また革新、組織化、実施面で優れた方が勝利を収めるはずだ。■

オーガスト・コールとP.W.シンガーはともに国家安全保障の専門家で小説Ghost Fleetを共著している。同作品では第三次世界大戦の開戦模様と戦闘に用いられるはずの各技術を描写している。

ペンタゴン報告書:中国は戦争前提に軍再編を実施、島しょ造成の実態も明らかに



Pentagon: China Restructures for War: Details of island building in S. China Sea disclosed

May 13, 2016 4:30 pm


中国が大幅な軍組織改編に昨年踏み切ったのは軍事対決の準備態勢を整えるためだったとペンタゴンが人民解放軍(PLA)の評価分析最新版で明らかにしている。
  1. 人民解放軍は軍区別に再編され、指揮命令系統とともに戦略方針も地域内紛争、ハイテク戦を視野に入れて改訂されたとペンタゴンが議会に提出した報告書で述べている。
  2. 「各改革の目的は中国共産党の軍統制強化、PLAの各軍共同作戦態勢整備、また短期高度地域内紛争を本土から遠く離れた場所で実施する能力の向上にあった」
  3. 国防次官補エイブラハム・デンマーク(東アジア担当)は報道陣に中国の軍改革は「旧来の軍担当区域を廃止し地理を考慮した共同作戦態勢を強化するのが狙いだった」と解説した。
  4. 軍事戦略の一環として中国の南シナ海で島しょ建設を続け、軍事力で戦略的に重要な通商航路を支配しようといている。
  5. 延べ3,200エーカー(約13平方キロ)の造成地で「中国は恒久的軍事民間基地として長期にわたるプレゼンスを南シナ海で実現できる」と報告書は述べている。
  6. 中国は海米国との対決を慎重に回避しており、自国の主張を押し付ける際も「軍事紛争一歩手前」の戦術を使っていると報告書は述べている。
  7. 報告書では中国軍の課題として蔓延する内部汚職をとりあげ、軍高官40名が摘発済みとしている。
  8. 一方で習近平主席はPLAへ「戦いに勝利を収める」準備を整えるよう命じている。ペンタゴンによればこのスローガンはこの三十年間参戦の経験がない軍部が近代戦で有効に戦えないと中国指導部が懸念していることの反映と見ている。
  9. 報告書では中国が本土から遠く離れた地点で戦闘を実施する能力を拡充していると指摘している。ただしPLAの最優先順位は台湾であることに変わりはない。
  10. 「中国は外国港湾を利用し必要物資を事前集積することで『遠隔地』への配備を常態化しようとしており、インド洋、地中海、大西洋でこれを狙っている」と報告書は伝えている。
  11. 報告書には問題の南シナ海で建設中の軍事施設の詳細写真も入っている。昨年の中国はスプラトリー諸島で島しょ土木工事を加速した。
  12. そして昨年10月に土木工事は完了し、次にインフラ工事が始まり、9,800フィート(約3,000メートル)長の滑走路複数、通信設備、監視哨が完成した。この整備は中国が「事実上の南シナ海支配を軍事民生インフラ整備で強化する意図」の表れだという。
  13. 航空施設、港湾、補給処は中国の領有権に異議を申し立てる国の島しょ部分への接近を「発見、対抗」するためのもので中国軍の活動を増加させる効果が見込まれる。
  14. 報告書では紛糾中のスプラトリー内の7つの島で工事前と工事後の比較写真も掲載している。ここにはフィアリークロス礁も入っており、ここで633エーカー(約256千平方メートル)の土地造成が行われた。
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  1. 中国軍のミサイル装備の拡充も目立ち、新型ミサイルの登場に加え旧式ミサイルも含め多弾頭化が進んでいる。
  2. 報告書では中国が長距離ステルス爆撃機の構想を持っており、実現すれば地上配備ミサイル、水上配備戦略ミサイルと並び核の三本柱が完成するとしている。「新型および派生型の攻撃用ミサイル複数を開発試験中で、極超音速滑空体もここに含まれ、弾道ミサイル防衛対策も開発中」という。
  3. 新型攻撃型潜水艦、弾道ミサイル潜水艦が建造されており、配備が進んでいる。宇宙空間での戦闘能力も整備しており、昨年には2014年にテストした対衛星ミサイルの改良作業で進展があった。
  4. 中国のエネルギー戦略に言及して同報告書では中国が輸入原油に今後も過剰依存する姿を示し、2015年は輸入比率が60パーセントだったが2035年には8パーセントに上昇すると予想している。
  5. また中国の輸入原油の83パーセントが南シナ海、マラッカ海峡を通過しており、エネルギー供給の脆弱性を指摘している。ロシア、カザフスタンから陸上パイプライン建設が進んでおり、供給遮断の危険性を低減しようとしている。
  6. 報告書では中国の長距離精密攻撃能力の拡充を「異常に早い」と表現している。10年前の中国軍には100マイルの幅がある台湾海峡をはさんで攻撃する能力は限定的だった。しかし現在の中国は通常弾頭短距離弾道ミサイル(SRBM)、空中発射・地上発射方式の陸地攻撃用巡航ミサイル(LACM)、特殊作戦部隊(SOF)、サイバー戦実施能力で「域内の各目標を標的に抑えている」とする。
  7. 「日本国内の米軍基地は中国中距離弾道ミサイルの射程内にあり、巡航ミサイルも狙っている」と報告書は指摘し、グアム島もH-6K爆撃機が発射する長距離巡航ミサイルの目標になる可能性を述べている。H-6Kは昨年初飛行している。
  8. DF-26ミサイルでグアムに精密攻撃すれば米軍のアジアでの主要基地が危機に陥る。対地巡航ミサイルも精密に敵航空基地、兵站基地、通信設備、他地上の目標を攻撃できる。PLAは補給基地や兵力投射能力を標的にする作戦計画を立てている。
  9. 報告書では中国の国防支出は1,800億ドルとの推定されだがこれを上回る規模の可能性があり、2020年までに2,600億ドルになると推定。
  10. 報告書では一節を設け、PLAが国軍ではなく「党の軍隊」であると説明している。中国国営メディアが政治的に中立な国軍の概念を一蹴するのはソ連共産党が軍統制能力を欠いたことでソ連崩壊につながったとの認識を中国指導部が持っているためだ。
  11. PLAに政治工作部門を創設したのも党による統制機能を維持するためだろう。「PLAの政治工作機能は共産党による『武力統制』を毛沢東の『銃の詰まった樽から政治権力が生まれる』との言葉に従い実行するものだ」とまとめている。統制の仕組みには政治将校、党の委員会制度、党による調査部門が含まれる。
  12. ペンタゴンは「実質的な協力の深化」を求めながら、両国の相違点を乗り越えようとしており、このため米国へ敵対心を燃やす中国の現状を理解できなくなっているのだと指摘する専門家もある。
  13. 提言では中国軍事力の拡大に対して「監視し適応」をし、中国政府には戦略方針や装備整備で秘密主義の撤廃を求めるべきとする。
  14. 報告書では中国で反米姿勢が国営メディアと公式軍著作物で広がっていることは言及していない。
  15. 2013年には共産党につながる日刊紙環境時報が詳細な記事を掲載し、米西海岸への核攻撃で12百万人の米国民が爆風と放射線の中で死亡する様子を伝えていた。オバマ政権、ペンタゴンともにこの記事に抗議していない。■

「ラピッド・ラプター」で世界各地に展開しすぐ戦闘投入能力を試したF-22の欧州展開




Aerospace Daily & Defense Report

F-22 Deployment Tested ‘Rapid Raptor’ Capability

May 10, 2016 Tony Osborne | Aerospace Daily & Defense Report

RAF LAKENHEATH, U.K. – F-22ラプターがこれまでで最大規模のヨーロッパ展開をしていたが5月9日に米本土に帰還して終了した。
  1. 第九十五戦闘機中隊のラプター十二機がティンドール空軍基地(フロリダ)からレイクンヒース英空軍基地へ米国による欧州再保証構想の一環で4月半ばから展開し、ロシアの軍事活動の高まりの中で欧州米軍の強化に貢献した。
  2. 各機はアイアンハンド16-3空軍演習にも参加し、欧州各国にラプターの性能を見せつけた。演習にはレイクンハースからF-15C、F-15Eストライクイーグルが英空軍のユーロファイター・タイフーンと参加している。
  3. ラプターは二機一組でルーマニアとリトアニアもそれぞれ訪問した。
  4. 「ラプター編隊が加わったことで訓練は全く新しいレベルにあがりました」と第四十八航空団司令ロバート・ノヴォトニー大佐は感想を述べている。
  5. 同時に米空軍はラピッドラプターと呼ぶ迅速展開を試した。これはラプターを戦闘態勢のまま世界各地の作戦地点に送り、到着直後に作戦投入する構想だ。
  6. まず四機が四月十一日に英国に外部燃料タンクなしで到着し、残る八機はその後タンクを装着して飛来した。到着後数時間で最初のソーティーをこなしている。
  7. ラピッドラプターで各機は「予告なしで展開し、到着してすぐ作戦運用できた」とノヴォトニー大佐は言う。
  8. ノヴォトニー大佐はAviation Weekに対して第九十五中隊は英国展開中に計216ソーティーの実施を計画し、215ソーティーを実施して5月8日から9日にかけて帰国したという。同中隊は第四世代、第五世代戦闘機の同時運用の効果も示した。■

2016年5月13日金曜日

★中国は米航行の自由作戦をこんな風に見ている 人民解放軍新聞の論調




うーん、宇宙の反対側から見た論旨のようですね。これでは話し合いになりません。本当にこのように世界を見て意見をまとめているとしたら、今後がすごく心配です。(本ブログは中国政府の意見を代弁するつもりはありません。あくまでも議論のために両者の意見を比較するべきだと考えます。)

PLA Daily: U.S. warships abusing FON operations in South China Sea

Source: XinhuaEditor: Zhang Tao
2016-05-12 16:230

BEIJING, May 12 (Xinhua) -- 米国が軍艦を中国領の島しょ付近へ派遣したことを人民解放軍日報が強く非難し、いわゆる航行の自由(FON)作戦とは国際法の根本精神を無視するものと表現している。
  1. 国連海洋法(UNCLOS)ではFONの原則を掲げてると当時にそれぞれの国家の主権と航行の自由は整合性をとるべきものともしており、他国が海域に侵入する、あるいは海上航路を設定する際には事前許可を求める国があることを紹介している。
  2. にもかかわらず米国がこのような整合性を無視するのは自国の優位性維持に不利だと考えているるためと同紙は解説している。「米国は今日に至るまでUNCLOSを批准しておらず、同国の艦船の運用に制約となるいかなる条件も受け入れようとしていない」(同紙)
  3. 新聞記事ではいかなる国の領海内も軍艦が無害通航する自由はUNCLOSでも保障していないと特記して米国は軍事活動を任意に実施する自由を主張していると非難。
  4. 米国は自国軍は世界平和の維持という善意の存在だと主張し、FON問題を常に持ち出すが、FONは南シナ海では論点にならないと同紙は主張。
  5. それどころかFON作戦は地域の安定に悪影響を及ぼす状況を生んでいると同紙は述べている。「実のところFONとは米国が地域内問題に介入するための手段にすぎず、地域内を取りまとめて自国の海洋優越性を維持するために使っているのだ」
  6. 米国が追い求めるFONは国際社会の方向と違っている。なぜならFON作戦は米国の国益だけに資するものなので、作戦実施により誤解が生まれてしまうからだとしている。
  7. この記事はUSSウィリアム・P・ローレンスが火曜日に不法な哨戒活動を南シナ海の南沙諸島永暑礁付近で実施したことへ中国外務省が「断固たる異議」を表明した後で掲載された。■

★★見えてきた航空自衛隊向けF-35の生産・導入段どりの最新状況



MRJとならんでF-35も生産となるとますます愛知県は航空宇宙産業の主要拠点になりますね。来年が楽しみです。名古屋というのは小牧にある県営名古屋空港に隣接した三菱重工のことですね。

First of Japan’s F-35s will be airborne by year’s end

Stars and Stripes
Published: May 11, 2016


YOKOTA AIR BASE, Japan —航空自衛隊パイロットがF-35AライトニングII戦闘機を初めて操縦する機会が今年末までにやってくるとロッキード・マーティン社関係者が航空自衛隊との協議で来日し発言している。
  1. 日本向け最初の4機がフォートワース(テキサス州)工場の製造ラインで11月にロールオフすると同社のF-35国際渉外部長エリック・W・シュネイブルが述べ、同機関連施設がある名古屋および三沢へも今月後半に訪問するという。フォートワースはF-35組立て拠点として三菱重工業の名古屋工場、アレニア・アエルマッキのカメリ工場と並ぶ存在だ。
  2. 日本人パイロットが同機を初離陸させるのはルーク空軍基地(アリゾナ州)の予定で、オーストラリア、ノルウェー、イタリアが同地でF-35パイロットを養成中だという。
  3. 日本はハイテクの塊の同戦闘機の共同開発にあたる八カ国の一つで、事業は1兆ドルと米史上最高額の軍装備になる。
  4. 日本が調達する残り38機の一号機は名古屋で来年ロールオフするとシュネイブルは述べた。
  5. 新規機体は三沢基地に配備され、米空軍第三十五戦闘機隊のF-16と並ぶ。F-35パイロット訓練はその後日本で実施するという。日本の整備要員はエグリン空軍基地(フロリダ州)に派遣されF-35整備を学ぶ。
  6. さらに韓国向け40機が製造中で、納入は2018年開始の予定だ。機体は清州航空基地(ソウル南方)に配備される。
  7. F-35は技術上の問題やコスト上昇でさんざん酷評を受けたが、シュネイブルによれば課題の多くは解決済みで、事業は上向きに推移しているという。ロッキード・マーティンのウェブサイトではフォートワースで製造するF-35は今年は計43機で2019年に三倍に増やすとしている。
  8. 海兵隊は初期作戦能力段階に到達しており、米空軍も今年後半に同様になる、とシュナイブルは述べた。初期作戦能力とは該当機種が十分な機数になり、兵装、訓練済み要員もそろい有事に投入可能になったことを意味する。
  9. シュネイブルは海兵隊が来年に同機を岩国海兵隊航空基地に配備する準備中と紹介している。「空母と強襲揚陸艦への海上着艦テストを完了しています。日本では能力の一端を見せる展示飛行をするでしょう」
  10. 米空軍のF-35はエリソン空軍基地(アラスカ州)に配備され、西太平洋での紛争事態に備える。「この地域で脅威となる相手には同機配備で事前に抑止効果が生まれることは同盟各国にとって重要なことです」とシュネイブルは述べる。■


2016年大統領選 クリントン候補に国家安全保障政策は期待できるのか不明 各論詳細に触れず


政治的野心の塊のようなヒラリーですが、ここにきて予備選でサンダース候補に勝てないのは若年層はじめ政治に不満を覚える層を拾い上げていないためでしょう。これまでの獲得した党大会代表のリードがありますので、本人は全然気にしていないようです。もともと軍隊が嫌いない人だけに、大統領になった場合には正しく判断できずに悲惨な結果を生みそうな気がします。世論調査ではトランプへの優勢がどんどん減っているのは気になる現象です。

Clinton’s Defense Spending: Vague But More Hawkish Than Obama

By MARK CANCIANon May 12, 2016 at 4:01 AM

hillary clinton campaign 2016
2016年の大統領候補の国防政策を伝えるシリーズはこれが最終回です。マーク・カンシアンは戦略国際研究所からクリントン、トランプ両候補の選挙戦から内容をくみ取り、分析を試みていますのでお読みください。編集部
ヒラリー・クリントンほど大統領職を熱望している人物はいない。21世紀になってほぼ全部の時間を本人はこのために使っている。その結果として各論点で知識が豊富で、バーニー・サンダース候補よりは右寄りだが共和党員より左という微妙な立ち位置に徹している。共和党候補に指名確実なドナルド・トランプとは正反対だ。トランプ候補はごく最近まで思いついたことはすべて口に出し、他人の批評などお構いないしにふるまってきた。
大統領候補指名に向け先頭を行く候補らしく、クリントン候補の国防案は理念は長々と述べるが各論は短い。これまでの演説内容やウェブサイトから同候補がオバマ政権の路線を主な分野で継承すると推測でき、外交では強い姿勢を取り国防重要事業には現状と同程度の予算配分をし、国防予算の国内向け流用も引き継ぐようだ。
クリントン候補の選挙文書や発言から国防では強硬で継続性を求めていることがわかる。
  • 「国土保全」
  • 「ISIS打倒」
  • 「中国に責任を取らせる」
  • 「プーチンに堂々と接する」
  • 「同盟関係強化」
  • 「志願制軍部隊の堅持」
  • イスラエル支持
同候補の姿勢は一部で共和党と一致している。「大統領に当選すれば米国軍を訓練、装備の両面で世界最高水準とし世界最強の軍事力を維持する」とある。ただしその理念の実施案の詳細はほとんど見られない。プーチンと渡り合うというが、オバマ政権が進めてきたヨーロッパ施策(ヨーロッパ再保証構想)を拡大するのか。そうだとしたら、どうやってするのか。詳細が肝心だ。
クリントン候補はオバマ政権よりも強硬な外交方針を匂わせている。たとえば「中東には強力な軍部隊を駐留させ」「情報活動を強化」するというのは軍の活用を増やすことだ。ゲイツ、パネッタ両元国防長官は自叙伝でクリントン候補がシリア、リビアでのオバマ大統領より軍事力行使に積極的だったと回想している。
クリントン候補は軍の規模について意見を表明していないが、強硬なものの言い方や現政権の方向を支持していることから最低でもオバマ政権の国防予算規模を想定していると思われる。つまり予算管理法が求める水準を上回るが、共和党が求める額には届かないレベルだ。これは国防安全保障関係者には朗報だろう。ただしその支出規模では不足かもしれない。ロシア、中国、北朝鮮、イラン、ISISに対抗するにはオバマ政権の想定を上回る部隊規模、予算が必要と見る専門家は多い。
ただし、クリントン候補は国内問題の拡充を訴えており、(例、大学学費、エネルギー、幼少児教育、健康保険、教育などなど)かつ予算赤字が今後拡大するため国防予算が制約を受けるだろう。そうなると戦略構想と実際の予算裏付けの乖離が安全保障問題で続きそうだ。
ペンタゴンに朗報は戦闘継続予算、海外緊急作戦予算の二つが増額になりそうということだ。この二つの予算項目はDoDに重宝な存在となる。オバマ政権はイラク、アフガニスタンの紛争から抜け出すことを目指したが、ここにきての事態進展で挫折感にさいなまれている。紛争が終結すれば戦闘継続予算も終わる。クリントン候補が強硬な言いぶりで軍の投入をためらわないことから戦闘継続予算は温存されるだろう。
クリントン候補の主張からは国防予算の国内問題解決への流用を継承するつもりだとわかる。例として「気候変動は道義や経済問題にとどまらず、国家安全保障上の課題である」と発言している。同様に感染症やサイバーも国家安全保障上の脅威と受け止めている。国家安全保障の課題となれば、国防総省以外の対策も予算手当が可能となる。したがってオバマ政権がバイオディーゼル産業創設で国防総省枠組みを使ったような事例は今後も続くと予想できる。
国防予算を国内問題へ流用することは以前から行われていることであり、特に国内に目配りする民主党政権が多用している。ビル・クリントン政権では巨額予算で自動車産業各社に先進自動車技術開発させ世界市場での競争力確保を手助けした。国防総省は乳がん研究予算も提供しているが、軍の84パーセントは男性だ。これは1992年にハーキン、ダマト両上院議員が乳がん研究事業の資金源を探してDODにたどり着いたもので今日も継続している。予算上限の中で既存事業が予算削減される中で新規国内向け事業がDOD資金に食指を動かすことが多くなっている。
総論が目立つクリントン候補が厳しい選択では高位諮問組織に頼るというのは驚くべきことではない。物議をかもしだそうな各論に触れる必要がなくなる。DODには戦略見直しの課題が与えられており、(旧名称四年ごとの国防見直しは国防戦略見直しの名称になっている)「国防審議会」と呼ぶ外部専門家による戦略・事業の評価も求められている。さらに検討の仕組みを加えるのは問題と言えるが、各論の政策論議を先送りする効果が生まれる。
これまでの通念ではクリントン候補は選挙戦後半で各論を明らかにするはずだったがトランプが共和党候補になる可能性濃厚な中ではそうならないかもしれない。トランプ候補はクリントン候補より各論に触れておらず予備選中の発言は常軌を逸し、とても詳細政策の基礎には使えない内容だ。
トランプ候補は国家安全保障政策でやっと政策づくりの作業に取り組み、テレプロンプターを使って準備済み原稿を読み上げる慎重さで、以前の発言よりは整合性がとれているものの、やはり総論の域を脱していない。そうなるとトランプが大幅に自らの姿勢を変えて詳細について論じない間は、クリントン候補に国防政策あるいは予算確保の方法の詳細について一部でさえも公表する圧力は作用しないだろう。■


2016年5月12日木曜日

★オスプレイの英海軍売り込みを図るベル=ボーイング

なるほど米軍向け生産がこれ以上伸びる要素がないので海外販路に期待するわけですか。真っ先に手を挙げた陸上自衛隊はいいお客さんなのですね。今後さらに購入機数を増やしてほしいとの声がでてくるのでしょうね。



Tiltrotor Touters Hope First Sea Lord Is Easy Prey

By RICHARD WHITTLE on May 09, 2016 at 4:01 AM

V-22_Graphic_Optimizing-Carrier-Onboard-Delivery_150304-R00_no type - Bell Helicopter artist conception 
CMV-22オスプレイCOD機の想像図 ベル=ボーイング
米軍各部隊からのV-22オスプレイ発注が今後は減ることから同機製造元は海外販売に活路を見つけようと海軍連盟主催の海空宇宙展(5月16日-18日、メリーランド州ナショナルハーバー)で各国の軍関係者に働きかけようとしている。その中で英海軍で第一海軍卿に就任したばかりのサー・フィリップ・ジョーンズ大将に照準を合わせる
  1. V-22の生産を平等に分担するベルヘリコプターとボーイングはV-22胴体部分を展示会に持ち込む。当然サーフィリップに見てもらい、英海軍にはCMV-22B(米海軍が空母輸送機として採用決定)が必要と訴える構えだ。
  2. 米海軍は151.3百万ドルで購入予定のオスプレイ44機の技術変更契約を3月末日にベル=ボーイングに交付した。老朽化してきたC-2Aグレイハウンドに代わりCOD任務に投入するCMV-22Bは貨物または人員を6,000 lbs. まで搭載し、空中給油なしで1,150カイリ飛行し空母打撃群の太平洋運用を支援する。このため燃料タンクは海兵隊向けMV-22Bや空軍のCV-22Bより大型化する必要がある。またCODミッションでは民間空港の利用や民間空域の移動も想定し、海軍は高周波水平線越え無線交信機能も必要と考えている。また機内通報装置も機内の搭乗者用に必要だ。
  3. 海軍がV-22を採用する大きな理由がF-35共用打撃戦闘機のエンジン輸送だ。もう一つが海兵隊がテスト中のV-22を空中給油に使う構想。海兵隊はF-35Bへ空中給油を想定しており、英海軍はF-35Bを138機調達する予定でもあり、COD機体も新型クイーンエリザベス級空母二隻の運用に合わせ必要となるはずだ。
HMS Queen Elizabeth CGI image
  1. 「V-22の英国導入はかねてから検討されており、とくに空母建造と関連しています」とニック・チャイルズ(ロンドン国際戦略研究所で主任海軍専門家)は述べる。「V-22は空母輸送機能あるいは英国式の呼び方では戦域内輸送機能により英海軍の空母打撃部隊の戦力を大幅に引き上げ、回転翼機に代わる存在です。さらに空中給油任務に投入すれば英空母搭載のF-35Bの飛行距離を大幅に伸ばすことができます」
  2. 二隻建造する空母のうち一隻は英海兵隊のコマンド第三旅団も搭載し揚陸作戦を実施する。米海兵隊幹部は英国がV-22導入に踏み切れば生産増となり、海兵隊の運用コストが下がる効果とともに施設を共同利用できると期待する。そのため海兵隊所属のオスプレイをHMSクイーンエリザベスで運用できないか検討中だ。同空母は2018年に米東海岸沖で海上公試を行う。実現すればMV-22Bはクイーンエリザベスから運用して揚陸演習に投入する。また海兵隊のF-35Bも同艦に搭載し、英国向けF-35Bの導入に先駆け乗員の同機取り扱い習熟に役立てる。同時にMV-22Bで艦から陸上への輸送任務も演習中に行う案もあり検討中だ。
  3. だが費用が英国には問題だ。「海軍内部でV-22導入支持の声は大きい」とチャイルズは指摘する。「ただし、値段が高いとの懸念があるのも事実で、予算は相変わらず厳しく、V-22を導入すればただでさえ空母建造が予算を食いつぶしているとの声が高い中でさらに批判を呼ぶ。解決策はV-22の役割をもっと広くとらえ、特殊部隊など各種用途にも使える機材として各軍で使えると正当化するのでしょう」■


2016年5月11日水曜日

中国等のサイバー脅威対策に成果少ないオバマ政権 


オバマ大統領が広島訪問を発表したことで日本では評価が急上昇しているのではないでしょうか。しかし、外交安全保障ではかなり低い評価の大統領に終わりそうです。特にリーマンショック後の不況の中で中国が露骨に勢力拡大してきたのを看過した大統領と記憶されるのではないでしょうか。サイバー空間ではすでに戦争は始まっており、オバマ大統領が有効な対策を回避したのは同大統領の平和優先の価値観が原因とこの記事では解説しています。

The Cyber Threat: Obama Policies Toward Hackers From China, Iran, Syria Produce Few Results: President uses symbolic indictments, diplomacy to avoid more forceful action

BY: Bill Gertz May 9, 2016 5:00 am
The National Security Agency's Threat Operations Center in Fort Meade, Md. / AP
国家安全保障局(フォートミード)の脅威対応オペレーションセンター/ AP
イラン人シリア人からの米国ネットワークへのサイバー攻撃が連邦政府により相次いで起訴されたが、海外からのハッキングに有効な対抗策を講じてきていないオバマ政権の実績を浮き彫りにしている。
  1. 三月に司法省はハッカー集団二つを訴追した。一つはイランでニューヨーク州内のダムの運転システムへのサイバー侵入で、もう一件はシリアからコンピュータに不法侵入し損害を与えデータを奪ったというもの。
  2. 両事案とも多分に実質的な意味が薄いのはイラン、シリアの実行犯はともに米法執行機関の手の届かない場所におり、米国裁判所で裁かれる可能性はまずないためだ。
  3. オバマ政権の外交政策と同様に今回の訴追は先に手を打っていると大統領と政権側が言い訳をする意味が強く、大きな影響力は及ぼさない。
  4. 現政権によるサイバー脅威対応は大統領の平和主義に通じるものがあり、なるべく行動をしないこと、軍事力行使につながらないよう何もしないことで共通している。
  5. この政策手法がニューヨークタイムズの好みにあい、国家安全保障分野の副補佐官を務めるベン・ローズの経歴を紹介しホワイトハウスの「天才少年」とまで評した。
  6. レオン・パネッタはCIA長官、国防長官をオバマ政権で務め、なるべく紛争を避けたいとの願望が大統領の海外問題への取り組みを支配していると解説する。
  7. 「大統領は『戦争を終わらせるのは自分だし、最悪なのは戦争を始めることだ』と信じている」とパネッタはオバマ政権のイラン核交渉で評し、「制裁強化は戦争につながる。イランがシリアで求めるものを否定しても戦争になる」と見ているのだという。
  8. 大統領と補佐官は軍と民間の安全保障専門家が2011年から提示してきた中国他サイバー攻撃関与国へのサイバー空間での実力行使案を却下したと内部事情に詳しい筋が解説している。
  9. 民間部門は連邦政府の法規定でサイバー対策が独自にとれず、ホワイトハウスに対してハッカー行為で米情報機関がもっと毅然とした行為を取るよう圧力をかけているが、今日にいたるまで大統領は断固として実施を認めていない。
  10. 単なる訴追や外交措置ではサイバー攻撃は防げていない。FBIは7月にサイバースパイ事件が53パーセントも増えたのを受け対策部門を強化したと発表している。
  11. 国務省から安全保障報告が3月末に発表されており、イラン-シリア案件の主な標的は米民間企業だったとしている。
  12. 「一連のサイバー攻撃は被害者の通信妨害、データ侵害、ならびに巨額の財政損失につながった」とし、さらに「ハッカー集団が米司法訴追を受ける可能性は少ないが、専門家には米政府は今後も海外のハッカー集団には声高に非難を浴びせ次の攻撃を防ぐべきとの意見もある」としている。
  13. 今回の起訴と同様の案件が2014年5月にあり、司法省が中国軍所属のハッカー五名を起訴している。この際も各人は米法執行機関の手の及ばない場所にあり、今後も法廷に引き出されることはないとみられる。
  14. 起訴は中国政府が司法省へサイバー行為を否定し、逆に法的な証拠の提出を求めてきたための措置だった。中国政府は米国が特定したサイバー軍隊員が広範な民間、政府の秘密情報を米国で入手した証拠を見せろと言ってきたのだ。
  15. 国務省の国家安全保障部長ジョン・カーリンは中国政府の開き直りを受けて起訴したと明かしている。「中国からは『証拠があるのなら、確たる証拠があれば、我が国による活動だと法廷で証明できるのなら見せてほしい』と言われましたので、起訴したというわけです」カーリンは述べている。
  16. 起訴直後に中国軍は米医療サービス提供企業アンサムから80百万件の記録を盗み取っている。続いて中国軍ハッカー部隊が公務員人事局のネットワークに侵入して、22百万件のデータを盗みとった。中には安全保障関連の身元調査記録など機微情報が含まれている。
  17. 大量のデータハッキングでオバマ大統領は中国へもう一歩で制裁を課すところだったが、9月に習近平主席のワシントン公式訪問があり実施しなかった。習はサイバー空間での経済スパイ行為は控えると約束した。米情報機関関係者は中国が本当にサイバー攻撃を中止したか確認できなず今もその疑いを示す兆候が続いていると最近になり議会に伝えている。
  18. 上記国務省報告書は官民連携の海外安全保障諮問部会OSAC向けに作成され、中国軍ハッカー集団の起訴は「前例のない発表で中国政府が米民間企業へのスパイ行為を働いていることを公に非難するもの」だったと表現。
  19. 「起訴対象の中国軍関係者五名は今も法廷に連行されていない」と報告書は述べる。「ただし本件で初めて国家による知的財産窃盗の危険性が浮き彫りにされ、OSAC会員の多くが海外で企業活動を展開していることから大きな懸念を呼んでいる」としている。
  20. またイラン人、シリア人の起訴で海外政府、非政府機関のハッキングの「融合脅威」が浮き彫りになったと指摘。またサイバー攻撃の裏には経済スパイ事件があることがPLA事案で明らかになり、サイバーによる業務停止、脅迫恐喝があるとした。「ハッカー集団が組織のためと並び自らの懐を増やす動機で行動していることで民間部門への脅威度はますます高まっている」(同上報告書)
  21. 「従来の分類で見ていた国家、犯罪組織、政治的動機だけでは米民間部門の脅威となる悪意ある組織的行動を説明できなくなっている。『融合脅威』とはハッカー集団が政府等機関の代理となることで探知されにくくした上に各種手段で摘発を逃れることを意味する」(同上)
  22. 国家に属さないハッカー集団が外国政府に代わりハッキング攻撃すると当局は犯人の特定が一層難しくなり、当の国家やテロ集団は民間のハッカーの技能を活用できる効果が生まれる。
  23. さらに代理犯行により外国政府は一見もっともらしい反証とよぶ情報戦術を使い、サイバー攻撃との関連を避けると報告書は指摘している。
  24. 報告書は結語で中国、イラン、シリアのハッカー集団起訴があったが「悪意あるサイバー犯が融合脅威で米民間部門を標的にすることへの抑止効果はなさそう」としている。
  25. オバマ大統領が任期の残りに向かう中、米国の安全保障を大きく脅かしたサイバー攻撃に対抗する手段を講じようとしなかったことが後遺症になりそうだ。
  26. NSA長官だったキース・アレクサンダーがいみじくも言うように中国は自国経済のためなら何でも盗み取る。「知財だろうとあ私たちの未来だろうと。史上最大の富の移転ではないだろうか」■
The Cyber Threat column appears Mondays. It is co-published on Flash//CRITIC Cyber Threat News at flashcritic.com.
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Bill Gertz is the senior editor of the Washington Free Beacon.


北朝鮮のSLBM開発が着々と進行していることは要注意


相次いでミサイル発射実験を行った北朝鮮ですが、いずれも発射直後に爆発したり、弾道飛翔に失敗したりと西側では技術の遅れと冷笑する向きがあるようですが、本当にそうなのでしょうか。北朝鮮の技術が未熟であってほしいという希望的観測が評価をゆがめている気がします。


North Korea Completes Work at Sub Shipyard, Report Says

Agence France-Presse 10:55 a.m. EDT May 4, 2016

SKOREA-NKOREA-MILITARY-NUCLEAR-MISSILE(Photo: Jung Yeon-Je/AFP/Getty Images)
SEOUL, South Korea —衛星画像から北朝鮮が新型弾道ミサイル潜水艦建造用の造船所の改修を終えていると判明したと米シンクタンクが5月4日発表した。
  1. 発表したジョンズ・ホプキンス大の米韓研究所によれば2020年まで完成する艦はないとみられるが、北朝鮮のSLBM建造は明らかに進展している。
  2. 実用に耐えるSLBMを配備すれば北朝鮮の核攻撃能力は新段階に入り、遠隔地に潜水艦を展開すれば本国が核攻撃を受けても報復能力が手に入る。
  3. 北朝鮮は先月試験艦ゴラエ(鯨)級潜水艦の一隻でSLBMを日本海で行い、ミサイル一発が19マイル飛翔している。
  4. 韓国はこの発射は飛翔中に爆発しており失敗とみなしているが、米韓研究所は成功と見る。
  5. 「潜水艦発射装置とミサイル点火、初期誘導機能に的を絞ったテストではないか」としており、今年中に数回の限定的発射テストを経て「全域」飛翔テストに移るとみている。
  6. 4月28日撮影の衛星画像では北朝鮮の進歩南造船所で発射試験を終えた該当潜水艦が整備作業に入っているのが確認できる。
  7. 潜水艦建造建屋の外部が完成しており、建造後に潜水艦を移動する滑り台もほぼ完成と同研究所は指摘する。
  8. 「すべて完成すればゴラエ級を上回る潜水艦建造が可能となり、新型SLBMが登場してくるかもしれません」
  9. 韓国は北のSLBM開発に懸念しており、韓民求国防相は自国の対応があまりにも遅いと不満を述べている。
  10. 「北朝鮮SLBMの脅威への対策を講じるのは待ったなしだと思う」と国防相は議会委員会で発言している。■