2019年9月25日水曜日

空母の将来を脅かす5つの軍事技術

All of the Reasons America's Aircraft Carriers Are Doomed

September 22, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: Aircraft CarrierMilitaryTechnologyWorldNavy
母の攻略方法は知れ渡っている。あるいは攻撃を試みる方法というべきか。潜水艦発射の魚雷、巡航ミサイル、弾道ミサイルはいずれも空母に最悪の事態を与えかねない。もちろん、現在の空母は各種攻撃への防御手段を備えているが、攻撃と防御のバランスが確保されているかは残念ながら未知数である。
だがこれからはどうなるのか。30年後なら空母への攻撃方法が変わるのだろうか。空母建造者の頭を悩ませそうな5分野に触れてみたい。

水中無人機
空母にとって潜水艦が長きに渡り最も大きな脅威である。第二次大戦時には、ほぼすべての空母部隊で潜水艦による損失が発生した。冷戦時に米海軍はソ連潜水艦の存在を重要ととらえていた。対潜技術が進歩したとはいえ、潜水艦で最大の課題は空母の捕捉であり、攻撃射程内への接近である。しかも空母部隊の対潜機能の餌食になる前にこれを実施しなければならない。潜水艦には脱出経路を見つけることも重要だ。
無人潜水機は以上の問題をいくつか解決できる。接近を予期してほぼ無期限にわたり水中待機できるし、空母捕捉に成功して初めて移動すればよい。またロボット潜水艇には陸上に残した家族を心配する乗組員は皆無だ。武装がわずかでも事前設定した条件で自律運用する無人機は空母にとって厄介な存在になるだろう。

サイバー攻撃
空母は今でも頭が痛くなるほど複雑なシステムの塊だ。艦だけでなく航空団さらに護衛艦艇もある。フォード級空母ではさらに発展しており、ウェポンシステムの一部となりセンサーも同時にシステムを構成し数百、数千マイルの範囲を探査する。ネットワークはデジタル化し防御も厳重だが侵入不可能なわけではない。敵がフォード級のコンピューターシステムへ妨害や侵入してくるかもしれない。
サイバー攻撃を受ければ空母に大きな影響が生まれる。空母がセンサー能力を失えば、艦の運行のみならず航空団の運行もままならなくなる。逆に艦の位置を露呈し、攻撃手段の前に脆弱となる。極端に言えばサイバー攻撃で主幹システムが無力になれば艦は自衛できなくなる。

無人航空機
ピーター・シンガーとオーガスト・コール共著のGhost Fleet(邦題中国軍を駆逐せよ!ゴーストフリート出撃す)では米軍のUAV部隊が空母二隻(ロシアのクズネツォフ、中国の山東)を北太平洋の空母戦の最後に撃破する。無人機は前からあるし、巡航ミサイルとは自殺用の無人機と大差ない。一方で、航空機は1940年代から空母を沈めてきた。だが現在の有人機で空母を捕捉攻撃しようとすると新鋭防空装備の前に自殺行為となる。巡航ミサイルは射程が長いとはいえ、やはり防御突破で同じ問題に直面する。 .
自律運行型UAVにスタンドオフ兵器および近接距離兵器を併用すれば柔軟に防空網を圧倒できる。とくにパイロットの生存を心配しなくて良いとなれば可能性が高くなる。まず遠距離で兵器を放出してから十分に接近して空母に致命傷を与える。生命の危険を感じないロボットほど怖い存在はない。

極超音速兵器
中国、ロシア、米国が極超音速技術の開発に躍起となっており、弾道ミサイル同様の脅威となる予感がある。ただ弾道ミサイルと異なり、極超音速兵器は防御が極端に困難な飛翔経路を取ることが厄介だ。つまり弾道ミサイルや巡航ミサイルの威力と慣性を組み合わせて空母に甚大な被害を与える存在になる。弾道ミサイルには核兵器の運搬手段というイメージがあるが極超音速兵器は政治的には使いやすい兵器となろう。

軌道爆撃
空母はステルスになれない。航空機、潜水艦、水上艦艇が姿を隠すのと対照的だ。ただし空母には機動性という有益性がある。航空基地が固定されれば敵は常時その位置を把握できる。攻撃対防御の単純な戦術問題になる。空母は機動性を発揮して有利な立場を作る。
軌道爆撃システム(ニックネーム「神の杖」)はこの問題を解決する。衛星にタングステン棒や運動エナジー兵器を搭載すれば空母の位置を識別すれば即時に攻撃可能となる。ここではネットワーク間の通信といった問題は不要だ。神の杖は運動エナジーだけで水上艦に甚大な被害を与え、空母を撃沈するか、機能を奪う効果を与えるだろう。

空母は生き残れるのか
航空母艦は地政学上の影響力を生む手段だ。このため、そのを無力化を狙う国家が存在する。空母はほぼ一世紀にわたり、その目的を果たしてきた。USSフォレスタル以後の米海軍は超大型空母を運用しており、その役目は1950年代から変わっておらず、21世紀後半も変化はないと見られるが、どこかの時点で大きな変化があれば、空母の攻撃力は効果を失い、脆弱性の正当化もできなくなる。だが実際に米海軍の宝たる空母が一隻でも喪失しないとこれはわからないだろう。

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book.

2019年9月24日火曜日

開発中のMQ-25スティングレイ艦載無人給油機が初飛行に成功

Boeing MQ-25 Stingray Carrier-Based Aerial Refueling Drone flies for the first time



米海軍とボーイングがMQ-25Aスティングレイの試験機T1を9月19日に初飛行させた。MQ-25は契約交付から一年で初のテスト飛行にこぎつけたが、実用化となれば世界初の艦載無人機となる。(Photo: Boeing)

 


海軍とボーイングは2019年9月19日に発表を行い、MQ-25スティングレイ試験機がイリノイ州マスコウタのミッドアメリカ・セントルイス空港で初飛行に成功したと述べた。同空港はスコット空軍基地に隣接する。無人機は初の艦載自律無人機として空母航空団への投入をめざす。
テスト機はボーイングが所有し、T1の名称がついており、N234MQの民間機登録番号で二時間におよぶ自律飛行をボーイングのテストパイロットが地上局から監視する中で実施した。同機はFAA基準による自律タキシングと離陸をへて事前に準備ずみ空路を飛び基本飛行性能と地上局を交えた機体制御を実証したと声明文にある。
MQ-25が9月19日の初飛行で帰還してきた。ボーイング所有の同機はT1の名称で二時間のフライトをこなして着陸した。(Photo: Boeing)


海軍の無人機空母航空部門の事業主管チャド・リード大佐は「本日のフライトは海軍にとって大きな一歩となった。テスト機がMQ-25初号機の納入から二年先立って飛行したことから今後多くを学ぶ機会の最初の一歩となり、空母航空団の様相を一変する機材の実現に役立つ」
テスト機一号は初期開発段階に投入され、その後技術開発モデル(EDM)仕様のMQ-25を4機、805百万ドルで製造する契約が2018年8月に海洋加速化調達(MAA)として交付されており、目的はミッション実施に必須な性能を米海軍艦隊に可能な限り迅速に実現することに有る。
ボーイングによればT1には試験飛行用の耐空証明が連邦航空局から今月初めに出ており、テストは今後数年掛けて行い、初期段階の治験把握と主要装備の技術改良ならびにソフトウェアの整備に供するとある。EDM機材の登場は2021年度で初期作戦能力(IOC)獲得は2024年に予定されている。
MQ-25スティングレイは実用型空母運用UAVとして初の機体となり、空中給油能力および情報収集偵察監視(ISR)を提供する。同機は空母を離着艦するUAVとして二例目となる。ノースロップ・グラマンX-47Bペガサスが2013年に先例を作っているためだ。同機はUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77) 、USSセオドア・ローズヴェルト(CVN-71) でc離着艦に成功している。スティングレイが空母航空団に編入されるとF/A-18Eスーパーホーネットの負担が軽減される。バディタンカーとなり僚機への給油任務に投入されているスーパーホーネットが本来の作戦運用に使えるようになる。

2019年9月23日月曜日

開戦となったら、イラン空軍にどれだけの戦力があるのか



How Well Would Iran's Air Force Actually Fare Against America?

Let's hope we never actually have to find out.
September 20, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyAir ForceIranAmericaUSATrump

界最大かつ最強の空軍部隊の一画だったがイランイスラム共和国空軍(IRIAF)の現況は過去の影にすぎない。戦闘を繰り返し、制裁を長年受けるうちイランのかつては誇り高き空軍部隊は老朽化ばかり進む各国機材の寄せ集めになっている。イラン空軍力は長きにわたりる衰退し、自国領空をかろうじて防衛できる能力しかなく、隣国はおろか米国に対抗すべくもない。
CIAがお膳立てした1953年のクーデタで王位についたシャー・イラン皇帝は頼りになる米同盟国だった。米国はイランを冷戦時の中東で重要な存在と捉え、日本・オーストラリアと同様の域内重要同盟国として親西欧反共体制に取り込んでいた。
そのイランは強力な軍事力整備を必要とし、シャーは大量の米製装備品を導入し、F-5A/Bフリーダムファイター・F-5E/FタイガーIIは179機、F-4はD型E型、RF-4E合計225機、C-130ハーキュリーズ56機、P-3オライオン哨戒機6機、KC-135ストラトタンカー6機を調達した。さらにF-14Aトムキャットを80機購入し、AIM-54フェニックスミサイルを搭載した。米国外でF-14を導入したのはイランのみである。シャー政権が倒れるまで77機が納入された。シャーからSR-71ブラックバード戦略偵察機の導入希望があったが米政府はやんわりと断っている。
これだけの威容を誇る空軍力は米国の意図にそう形で運用されるはずだったが1979年に革命政権が発足し、シャーは国外に追放され、アヤトラ・ホメイ二が権力を掌握した。神聖政治を掲げる新政権は軍部でパージをかけ親シャー勢力を駆逐したため、イラン軍の即応体制はとくに空で大きく低下した。1980年にサダム・フセインがイランを侵攻するとイラン軍の体制が危険なほど未整備であることを露呈してしまう。
イランはあわてて新体制で放逐されていた人員を呼び戻し、制空権の喪失だけは防げた。イラン、イラクの戦闘機部隊の空戦は1000回を超え、両国で数百機を喪失した。それでも新体制でイランは戦争を通じ本来可能だったはずの制空権掌握に失敗している。新政権は米国を「大悪魔国」とし、その後の制裁措置で部品確保もままならずIRIAFの戦闘能力を引き出せなかった。
1993年にはイランイラク戦争終結後5年になり、イラン空軍の人員は15千名と1976年の四分の一になり、ファントムIIで供用可能な機材は60機しかなく、179機あったF-5も60機のみになっていた。残りは撃墜されたか、飛行できない状態か、部品取りに使われていた。トムキャットでは60機が運用可能だった。C-130では20機が残るだけだった。1990年にはSu-24フェンサー攻撃機20機とMiG-29フルクラム30機をソ連から受領した。他に中国から成都F-7(MiG-21のコピー)を25機導入したものの戦中の喪失分の穴埋めには程遠かった。IRIAFは少数ながら戦中にイランへ亡命してきたイラク空軍機材も入手している。
イランは西側世界に敵意を示し核開発を継続したため制裁を受けている。Flight InternationalによればIRIAFの現在の主力機材は当時と変化ない。F-4ファントムII(42機)、F-5(24機)(自国開発のセゲ派生型含む)、MiG-29(20機)、F-7(17機)、Su-24(23機)、旧イラク空軍のミラージュF-1(9機)だ。イラン革命防衛隊空軍は別組織で10機のSu-25フロッグフット対地攻撃機を運用する。これもイラクが運用していた機材だ。
老朽化が進んでも、イラン空軍はISISを相手に相当数の攻撃を試みており、F-14がロシア爆撃機を援護し、シリア空爆を実施している。またイランのF-5、F-4、Su-24がイスラム国制圧に出撃している。こうした機材は30年から50年の機齢となっており、近代的な防空装備の前に簡単に駆逐される。老朽化のためか、2016年にはF-4、J-7、Su-24で4機が相次いで墜落している。
イランは軍用機製造の国産化をめざしたものの期待に沿わない結果が大部分だ。2007年にはセゲSaegheh戦闘機をF-5タイガーの尾翼を二枚にした形でイラン報道陣の前に盛大に披露し「高度の操縦性により以前よりもレーダー探知が困難になる」と内容に疑問が残る説明をしている。操縦性とステルス性は連関がないからだ。2016年にはカヘQaher313「ステルス戦闘機」を公開したが機材はパイロットの膝が見えるほどの小型機だ。その新型が2017年に登場し、機体は大型となったが、本当に空を飛べるのか疑問が残ったままだ。
イラン核開発が停止しても同国への武器禁輸措置は解除になっていない。2010年発効の通常兵器の同国への引き渡しを禁止する措置は国連安全保障理事会が承認すれば回避できる。また禁輸措置は2020年に失効する。イランロシア両国はSu-30戦闘爆撃機を48機イラン国内生産する協議をしており、一時は妥結すると見られていたが今は先に進んでいない。価格と技術移転でイランが強硬な要求をしているためで、制裁措置の延長を想定しているようだ。
長年に渡り冷遇されてきたIRIAFは今やかろうじて存続しているにすぎない。イラン空軍力の近代化の実施は核開発に関する国連の要求を受け入れることに大きくかかっている。仮にこれが実現しても中東各国のみならず、西側やイスラエルと強く対立しているイランには、ロシアを除けば装備輸出の商談がまとまる可能性は低い。敵視してきた各国との関係復活がない限り、イラン空軍の再興はない。その兆候はいまのところない。■

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This first appeared in October 2017.

2019年9月22日日曜日

9月22日のヘッドラインニュース

サウジアラビア防空のため、米駆逐艦が現地到着

アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSニッツェがペルシア湾北端に到着した。直近に発生した前例のない石油施設への大規模攻撃の再発に備えるもの。米軍はサウジアラビア、アラブ首長国連邦の防空体制強化のため新たな装備派遣等を検討中。攻撃を受けたアブカイク付近に展開するサウジアラビア防空体制は今回の襲撃への対応力不足を露呈している。


MQ-25A無人艦載給油機が初飛行に成功

9月19日、MQ-25Aスティングレイがイリノイ州ミッドアメリカ・セントルイス空港で初飛行に成功したと米海軍とボーイングが発表。契約交付から一年後の初飛行はタキシー、離陸含めFAA基準の自律運行で実施された。今後テストを繰り返し、初期作戦能力獲得を2024年に予定。


トライトン大型海上偵察機がグアムへ展開、太平洋の情勢をにらむ

MQ-4Cトライトン2機がグアムに移動し、インド太平洋での海上監視偵察機能を強化すると米海軍が発表。とくに中国が南シナ海で展開する「SAMの長城」に対抗する。MQ-4Cからフルモーション映像をP-8や地上局へ配信する効果は実証済み。とくにP-8は対潜対抗措置に専念しながらトライトンが高高度ISRを担当する。

サウジアラビアの米軍向け未払金が181百万ドルへ

イエメン空爆作戦でサウジアラビアが米軍が提供した空中級支援の対価を支払っていないことが明らかになった。トランプ大統領は同盟国にも応分の負担を求める主義で、現在模索中の対イラン多国間軍事組織でも米国が一手に費用負担することはないと強調。議会ではジャーナリストのカショギ氏殺害事件やイエメンでの民間人を狙った攻撃をめぐりサウジアラビアへの批判が高まっていることもあり、今回の見場以来事実の発覚で一気に態度が硬化しそうだ。


KC-46の稼働開始まで3年かかるとの航空機動軍団司令官の見解

技術問題が未解決のまま、新たな問題も発覚している同機の動向についてマリアン・ミラー大将は「このままでは戦闘地区に送り出せない」とし、KC-10エクステンダーやKC-135ストラトタンカーの退役を先送りしたいとする。KC-46では給油中の映像を伝えるシステムのソフトウェアの不具合等が見つかっている。


2019年9月21日土曜日

日本が核抑止力を整備すればこうなる----必要に迫られれば日本の核武装は検討せざるを得ない

日本が中国に対抗して核戦力を整備するとしたら最適の選択はどれか。

Forget North Korea: Imagine if Japan Built Nuclear Weapons...

Another nuclear weapons power in Asia?
September 20, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldJapanChina
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本の核武装は中国さらに北朝鮮の悪夢となる。アジア本土から離れた位置にある日本が核兵器を配備すれば中国の安全保障環境は今より複雑となり、ついては核運用原則の変更を迫られ、核兵器増強に走らざるをえなくなる。
まず、はっきりさせておきたい。現在の日本に核兵器整備の意向は皆無である。むしろ日本は唯一の被爆国という立場のためか核へ強い嫌悪感がある。大幅な方向転換となれば同国の安全保障環境が大きく変わる場合だろう。
中国としても日本を挑発して核武装に向かわせてもなんの利益にもならない。中国は自国が核兵器の先制攻撃を受けない限り、核兵器は戦闘に投入しないと日本に伝えている。したがって日本に核兵器がない以上、もし中国は言葉のとおりなら日本に杞憂すべき事態はなくなる。ただし、「もし」と「なら」が肝心なことばだ。
核兵器への嫌悪と危急の事態でないことは別にして、世界第三位の経済規模の日本に核武装できないはずがない。
では日本が核抑止力整備に乗り出せばどんな姿になるか。これまでの核兵器三本柱の地上配備弾道ミサイル、戦略爆撃機、弾道ミサイル潜水艦で検討してみたい。日本の置かれた条件で残存性があるのだろうか。ここでは議論のため、日本がこの内一本を集中整備するとしよう。
また核弾頭数は300個と仮定する。日本の人口密度が高いことから主要都市数個が破壊されれば人口の相当部分に損害が生まれる。ロシアや中国を相手に同等の損害を与える能力が日本に必要となる。

地上配備ミサイル 
日本には小規模の地上配備ミサイルを整備する選択肢があり、各ミサイルに弾頭1ないし3を搭載すればよい。ミサイルは強化サイロに格納すれば米ミニットマンIIIと同じになるが、ロシアのRS-24ヤルスのような移動式にする手もある。日本のICBMは小型でよく北米まで届く飛翔距離や燃料搭載量は不要だ。中国全土、ロシアのヨーロッパ部、中東まで射程に押さえれば十分だ。
最終的に日本には中距離弾道ミサイル100本あれば十分だろう。各弾頭は100キロトンとする。ミサイルは北海道東部の硬化サイロに格納するか、移動発射台で運用する。
ただし残存性は三案中で最低だ。日本が中国に近いため、中国が核攻撃を加えてくれば「警告とともに発射」する方針を採用しないかぎりミサイルの残存がおぼつかない。日本の早期警戒でハード、ソフトの誤作動が発生すれば攻撃を受けていると判断し、偶発核戦争の可能性が高まりかねない。
.地理条件からも地上配備の利点は少ない。日本の人口密度が高いことから100本ものミサイルサイロを置く場所の確保が困難で、攻撃を受ければ恐ろしい付随被害が生まれる。移動式発射台で日本各地を移動できるだろうか。専用道路を建設するほうが現実的だ。これでも現在位置を予測されかねない。あるいは日本の鉄道網を利用するかだ。

戦略爆撃機
日本にはステルス爆撃機部隊を整備し巡航ミサイルや落下式核爆弾を運用する選択肢もある。爆撃機は核侵入攻撃ミッションを実施し、敵核兵器や指揮命令施設等の標的を破壊する。核爆撃機があれば日本は飛行中に攻撃対象の変更を指定でき柔軟な運用が可能となる。あるいは任務途中で帰還を命じることもできる。
.各24機の3個飛行隊で十分だ。機体はFB-111と同じ大きさでよい。各機が短距離攻撃ミサイル4本を搭載し、それぞれ100キロトンなら合計72機で核兵器288本を運用できる。
しかし地理条件で爆撃機整備は非現実的だ。爆撃機基地が奇襲攻撃されれば緊急発進の前に機材が消える。給油機が必要となれば、給油機基地の攻撃で爆撃機はまともに運用できなくなる。更に防空技術の進展で爆撃機は危険なほど脆弱になりかねない。
かつての米戦略航空軍団と同様に爆撃機の常時空中待機も可能だが、多額の予算とともに地上に十分な数の機材(給油機も含む)が常時必要となり、現実でその実施は不可能だろう。

弾道ミサイル潜水艦
これが最も有望な選択肢だ。弾道ミサイル潜水艦の残存性が一番高い。常時一隻をパトロールにだせばよい。日本の「ブーマー」は進路を東にとり中央太平洋の安全な海域に待機する。中国やロシアが対潜機材を展開しようとすれば日本を通過する必要がある。
日本は潜水艦技術、ミサイル、弾頭について米国の支援を受けることも可能だろう。英国で前例がある。海を防壁に使う抑止力策なら米国も援助を惜しまないはずだ。場合によっては日本がオハイオ級後継艦建造を資金負担することも考えられる。特にミサイル技術だ。
水中配備案で日本は中国、フランス、英国に続き、弾道ミサイル潜水艦5隻を建造し、各16発の核ミサイルを搭載するだろう。ミサイルは100キロトン弾頭4発を搭載する。一隻がパトロールにでると弾頭64個を運用することになる。
弱点もある。危機状況では弾道ミサイル潜水艦との連絡が困難だ。また5隻中2隻が常時パトロールしても使える弾頭は128個しかない。
現状で日本の核武装を歓迎する向きはない。だが日本も追い詰められれば核武装に走る可能性があることを全員が認識すべきだ。実現までは遠い道のりとはいえ、中国やロシアとの関係が悪化すれば状況はさらに厳しくなる。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This first appeared in October 2015 and is being reposted due to reader interest. 

2019年9月20日金曜日

F-15EX導入はロシア、中国相手では歯が立たず賢明な選択にならないのではないか



How Russia Could Easily Crush America's New F-15EX Fighter Jet

Terrible.
by David Axe 
September 19, 2019  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15 EXF-15F-32RussiaRussian Air ForceU.S. Air Force

Key point: ロシアはF-15EXを200マイル先で探知する能力がある。

ーイングの新規製造F-15EXイーグル戦闘機を導入しロッキード・マーティンF-35ステルス戦闘機の補完で使いたいとのペンタゴン提案に議論がまだ続いている。議会関係者が軍の要望を検討する中、Air Force誌が両機の比較をまとめた。

価格はおよそ80百万ドルと大差ないものの類似点はそこまでだ。F-35はステルス機だがF-15はより高高度を高速ではるか先まで飛び、より多くの兵装を搭載できる。


だが同誌の分析ではロシア製S-400防空システムはF-35は20マイルでないと探知できないがF-15EXは200マイル先で探知してしまうという。

F-35の兵装搭載量は22千ポンドで高度上限は50千フィート、トップスピードのマッハ1.6で行動半径は670マイルだが、F-15EXは29.5千ポンドを積み、高度60千フィートで戦闘行動半径は1.1千マイル、最高速度はマッハ2.5だ。F-35の運行経費は時間あたり35千ドルだが、F-15EXは27千ドルだ。

新造イーグルの利点は既存のF-15飛行隊が迅速かつ安価に機種転換できることとの説明がある。

「USAFの説明ではF-15EXは既存機種の扱いとなる。部品の7割までがF-15CやE型と互換性があり、事実上すべての地上施設、シミュレーター他支援機材がそのまま使える。

「機体価格はF-35とほぼ同じだがF-15飛行隊がF-15EXへの機種転換を数週間で完了できるのに対し、F-35ではパイロット、整備要員、支援装備の転換に数ヶ月を要す」と同誌はまとめた。
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国防総省は空軍に対しF-15EX計8機を2020年度予算要求に盛り込むよう求めている。合計で12億ドルとなる。

空軍はこれと別に136機のF-15EXを2020年代中頃までに調達するといわれている。新造イーグルは1980年代製のF-15Cを運用する9個飛行隊に導入され、米国上空で防空任務につく。

F-15EXが搭載するセンサー類・エイビオニクスはF-15Cの性能を凌駕し、旧型より兵装搭載量も多い。金属疲労の進行で旧型F-15Cは「2030年まで持たない」と空軍少将デイビッド・クラムが同誌に語っている。

しかしながらF-15EXに批判的な筋にはロッキード事業に相当依存する選挙区出身の議員も顔を揃えている。空軍は2020年度にF-35をロッキードから48機調達したいとする。これまで毎年80機から100機を導入してきた空軍は例年通りの調達規模としたいのだが予算がないという。

空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将はDefense Newsに対し、F-15EX調達でF-35の1,700機調達に影響はないと述べていた。「両機種は補完性があり、それぞれが相手をもり立てる」

だがステルス性がないF-15では「国家防衛戦略で最大の懸念となる脅威環境で生存は期待できない」とデイヴィッド・デプチュラ退役空軍中将で以前はF-15パイロットで今はミッチェル研究所を主宰し、2019年2月11日にForbesの論説欄に寄稿している。

「中国、ロシアが急速に軍事力を整備し米国の戦略的優位性を脅かしている」とデプチュラは続け、「国防総省内に費用対効果だけを旗印に旧型機の調達を主張する声がある。だがこの機体は1960年代の原設計で1970年代に生産開始された機体だ。博物館行きと言って良い機体を導入して21世紀の軍事対決に臨むのは決定的な間違いではないか」

「空軍はF-15EX導入に頑なな態度だがF-35の調達規模1,763機が減るわけではない。しかるに空軍の予算要求はこれと別の考えのようだ」と専門家も論評している。「2020年度予算要求で空軍はF-35調達を今後5年間で24機減らすとしている」■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This first appeared in April 2019.
Image: Boeing.


コメント: この論争の決着は次の戦場がどこになるか次第でしょう。技術の進展で戦闘機サイズのステルス機では早晩限界を露呈するでしょうが、一方F-15では新装備の捕捉性能に追随できなくなるのも事実です。ただし、中国、ロシア以外が相手となれば話は大きく変わります。みなさんはどう思いますか。それにしてもデプチュラ元中将は自身の過去と無関係に見事なまでのロジックで意見を主張していますね。さて、日本はこの動きをどう見るべきでしょうか

2019年9月19日木曜日

忠実なるウィングマンXQ-58Aヴァルキリーの開発現況について



Payload tests for XQ-58A set for early 2020

19 SEPTEMBER, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 WASHINGTON DC
https://www.flightglobal.com/news/articles/payload-tests-for-xq-58a-set-for-early-2020-460947/

レイトスKratos Defense & Security Solutionsは通信および自律運用ペイロードを自社開発のXQ-58Aヴァルキリー無人機(UAV)に搭載する契約が2019年9月末までに成立すると期待している。
   忠実なるウィングマンとなる同機は米空軍研究本部(AFRL)と共同開発で2020年第1四半期にテストを開始する予定。今回のペイロードはAFRL事業ではなく、別の米国防関係機関による契約案件と同社社長スティーブ・フェンドレーが説明。
   同社はXQ-58Aを3機製造しており、全機が飛行可能とフェンドレーが述べている。一号機は2019年3月の初飛行以来2回飛行しており、米空軍が運用している。残る2機は同社が保有し、うち1機は年内に飛行の予定。
   「同機が機能することは判明している。今度はセンサー他システムを搭載し、航空機としての機能を試したい」「装備はウェポンベイに搭載する。ベイが機体前方に二箇所あり、全てを統合する」(フェンドレー)
   ヴァルキリーの前方はモジュラー構造のノーズコーンと機首の構造でプラグアンドプレイ方式のインターフェースを採用し、センサー類のハードウェアを簡単に入れ替えられると社長は説明。
   今後の可能性だが、とフェンドレーは前置きし、最近になり公開されたレイセオンのペレグリンPeregrine(従来の半分のサイズの中距離空対空ミサイル)をXQ-58Aで運用する構想があるという。ロッキード・マーティンのクーダCudaも空対空ミサイルの候補だという。
   同機のウェポインベイは小口径爆弾4発が入る大きさだがペレグリン空対空ミサイルなら2本収容可能とフェンドレーは述べた。XQ-58Aが空対空ミサイルで武装すれば有人機を援護するウィングマンの役目が実現し、ロッキード・マーティンF-35ライトニングIIやボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットとの運用が想定される。■