実現させるには、頑迷な国民や野党の反対論を打破する必要がありますね。これから原子力動力を支えるインフラや人員を整備するとなれば十年単位の事業となりますが、日本の優れた潜水艦がさらに高性能になる姿に世界も注目するはずです
海上自衛隊の潜水艦「たいげい」と、背景の原子力空母「ロナルド・レーガン」。稲葉義弘撮影。
新防衛相・小泉進次郎は日本が原子力潜水艦(SSN)の取得を検討すべきだと公に呼びかけた。これは、原爆被害を経験した唯一の国であり、国民感情が核兵器に依然として深く反発する日本にとって、重大な戦略的転換となる。日本は現在、通常動力型のディーゼル電気潜水艦のみを運用している。
小泉大臣は11月6日、TBSの番組に出演し、「新たな動きがあり、周辺国はすべて(原子力潜水艦を)保有する方向にある」と述べた。
防衛相の発言は、10月29日に韓国の慶州で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の合間に、ドナルド・トランプ米大統領が韓国による原子力潜水艦の建造を承認したことを受けたものだ。
東アジアでは、中国が原子力潜水艦の艦隊を着実に増強しており、北朝鮮も2021年1月に発表した5カ年防衛開発計画の一環として、原子力潜水艦の開発を計画している。
同番組で、日本の防衛相は次のようにも述べた。
「日本を取り巻く環境は厳しさを増しており、潜水艦の動力源をこれまで通りディーゼルに続けるか、原子力に切り替えるかを議論する必要がある」。
日本の新防衛相・小泉進次郎
小泉はさらに「原子力潜水艦は特に珍しいものではない」と付け加えた。
翌日の記者会見で、日本が原子力潜水艦を採用する可能性について問われた防衛相は「現時点で、次世代潜水艦の推進システムについては何も決定していない」と強調した。
東京では最近、防衛省の専門家チームが9月にまとめた政策提言を契機に、原子力潜水艦(SSN)の取得をめぐる議論が活発化している。この提言は、次世代潜水艦推進システムとして原子力利用(すなわち原子力潜水艦の取得)の可能性を示唆した。
提言では長距離ミサイルを発射できる垂直発射システム(VLS)を装備した新型潜水艦に「次世代推進システム」の採用を検討するよう求め、VLS搭載潜水艦は長距離ミサイルを搭載し、長期間・長距離の潜水航行能力を備えるべきだと述べた。
これを実現するため、専門家チームは「従来の前例に縛られず次世代推進システムの利用を検討する」研究開発の必要性を強調した。
専門家チームは具体的にどのような「次世代推進システム」を想定しているか明示しなかったが、事務局を務めた防衛省関係者は9月18日の記者会見で、次世代推進システムとは全固体電池と燃料電池を主に指すと述べた。
しかし会見では、記者団が原子力推進の可能性について執拗に質問した。これに対し同担当者は「あらゆる可能性を排除していない」「防衛省として決定した事実はない」「現時点で何も決まっていない」などと答えた。
結果として、多くのメディアが原子力推進をあたかも唯一の次世代推進システムであるかのように報じている。
さらに、10月20日に高市早苗首相率いる与党・自民党と日本維新の会が合意した連立政権協定では、有識者会議の提言に基づき、VLS(垂直発射システム)と次世代推進システムを搭載した潜水艦の取得政策を推進すると明記されており、原子力推進を暗に認める内容だった。
しかし10月31日の記者会見で小泉は改めてこう述べた。「現時点で、潜水艦の次世代動力源については、全固体電池や燃料電池など民間で開発中の技術を含め、特定の技術に固執するものではない」
従来型原子力方式のみが「次世代推進動力」なのか?
原子力推進は20世紀半ばから存在し、1954年に米海軍が世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」(SSN-571)を就役させて以来70年以上使用されてきた。果たしてこれが次世代推進動力と呼べるのか?
確かに原子力は20世紀の動力源だが、次世代的な側面もある。例えばマイクロリアクターや小型モジュール炉(SMR)は、安全性や柔軟性を高めた次世代原子力源と見なされ、原子力エナジーの未来として注目されている。
日本、米国、中国など多くの国が開発を進めている。日本では三菱重工業もマイクロリアクターを開発中で、「従来の陸上発電用原子炉と異なる新たな価値を提供する革新的原子炉」と称している。一方、ロールス・ロイス・ホールディングス傘下のロールス・ロイスSMRは、SMRの開発と導入を積極的に推進していることで知られている。
そうなると、新型炉や革新的原子力技術であれば「次世代動力源」と位置付けられ、原発アレルギーが激しい日本を含む多くの国が、その軍事応用を進められるだろう。■
高橋 浩祐
高橋 浩祐は日本を拠点とする防衛ライターである。ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー、ジェーンズ・ネイビー・インターナショナル、モンチ出版に寄稿している。ハフポストジャパン元編集長、朝日新聞社・ブルームバーグ元スタッフライターである。高橋は1993年に慶應義塾大学経済学部を卒業。朝日新聞社とダウ・ジョーンズ社を経て、コロンビア大学ジャーナリズム大学院および国際公共政策大学院(SIPA)に留学し、2004年にジャーナリズム修士号と国際問題修士号を取得した。1993年に朝日新聞社の記者となる前には、川崎市の姉妹都市プログラムの交換研修生としてボルチモア経済開発公社に勤務し、日米間の貿易問題を研究した。その功績により1988年にボルチモアの名誉市民権を授与されている。
Japan Weighs Nuclear Submarines as New Defense Minister Koizumi Signals Break from Postwar Nuclear Taboo
Published on 12/11/2025
By Kosuke Takahashi
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