2016年5月31日火曜日

北朝鮮の核兵器ミサイル開発を支えるのは鉱山強制労働だ---歪んだ社会構造



北朝鮮の正式国名はDPRK 朝鮮人民民主共和国ですが、3つのウソD P R があるといわれますね。労働者の天国のはずが60年以上続く地獄だというのは人類史上類まれな虚偽ではないでしょうか。核兵器、ミサイルの開発を止めるには同国の社会構造そのものにメスを入れない限り無理だということですか。当然、同国の支配階級は既得権益を守りますからこれに手を入れるのは外部から出ないと無理、つまり同国を解体しない限り無理ということでしょうか。そうなると論理的に結論はあきらかですね。

North Korean Nuke Program Built With Earnings From Slave Labor

New report documents forced labor in state-run mines that provides Kim regime with foreign cash
May 30, 2016 4:59 am

北朝鮮は「強制労働・奴隷労働」で調達した資金を核兵器・ミサイル開発など重要事業に投入していると同国の労働事情を研究した報告書が指摘している。
  1. 報告書題名は「収容所企業」Gulag, Inc.で北朝鮮の人権を考える委員会Committee for Human Rights in North Korea (HRNK)がワシントンDCのナショナルプレスクラブで発表し、金正恩率いる当局が北朝鮮国民に最低限の経済見返りしか与えず搾取している実態を伝えている。
  2. 「生まれた瞬間から人生が決まっている社会は想像できないだろう。何を食べ、どの学校へ行き、どこに移動してどこで働くか、全部指示される。どれだけ夢や才能、実力があっても関係ない」と報告書は述べている。
  3. 「社会身分の最下層に生まれた場合は成分songbunと呼ばれる差別の下で残酷危険きわまりない国営鉱山の闇の中に暮らし、かつ短い一生を送ることになる。これが金三代にわたる統治のもと変わることのない北朝鮮の実態だ」
  4. 報告書をまとめたのは脱北者Kim Kwang-Jinで秘密非合法の国際財務活動に携わっていた人物で現在はHRNKの研究員だ。
  5. 強制労働が北朝鮮の鉱山開発を支え、石炭、銅他の採掘で「外貨稼ぎ」をしている。北朝鮮の輸出で鉱物は大きな比重を占めているが、一次産品価格が下落しても変わりはない。2013年には鉱物輸出が全輸出の半分を占めた。鉱物資源の買い手は中国が最大だ。
  6. 「2013年には中国が北朝鮮鉱物輸出の97%を買い上げている。石炭、鉄鉱石の対中国輸出は16.8億ドルで北朝鮮の全輸出の44%相当だった」鉱物資源はすべて国営企業が管理している。
  7. 北朝鮮社会は三つの階層で構成される。基本階級、複雑階級、敵対階級だ。下層の二階級は「北朝鮮で難易度が一番高く人気のない職業に強制的につくよう求められる。鉱山と農業が該当する」 最底辺が敵対階級で就業する職種は出生時の両親あるいは祖父母の職業で事前決定される。
  8. また政治収容所が鉱山とつながっていると報告書が紹介している。
  9. 「下級階層は分断され差別され権力の座に近づけず党、政府、軍に入れない。極めて不利な条件に置かれており、その労働は不当に利用されて同国の地下資源の開発、輸出に利用されている」「鉱物資源開発分野の暗い現実から不法な投獄、強制労働、人権侵害が見えてくる」
  10. 鉱山が生む歳入が「権力基盤を強固に」している。つまり強制労働が国家権益を支えている。
  11. 「北朝鮮が輸出する地下資源を採掘しているのが強制労働や人権無視だ」「鉱物資源が国家優先政策の裏付けとなり、金正恩やエリート層の豊かな暮らし、核兵器ミサイル開発、先軍政策、社会秩序の維持を支えている」
  12. 3月の国連安全保障理事会決議で北朝鮮の輸出は打撃を受け、石炭、鉄鉱石、金他の鉱物資源は例外除き輸出を禁じられている。この決議は1月に核実験を同国が強行したことで可決された。ただし対中国輸出は続いていると報告書は指摘する。
  13. 「安保理第2270号決議は前例のないほど実効性ある決議と見られているが、北朝鮮地下資源の対中国輸出を大きく減らす効果は生まれていない。『生活必需品』の名目で中国に資源が流れている」
  14. 「北朝鮮からの鉱物資源輸出を直ちに強く抑制する必要がある。単に制裁強化で核開発を遅らせるのではなく各地の鉱山で強制労働につく多数の北朝鮮国民の人権保護が求められる」
  15. 報告書をまとめたKwang-Jinとともに発表の席上に現れたのはデイビッド・アッシャー(前国務省)、ウィリアム・ニューコム(経済学者)、ロバータ・コーヘン(ブルッキングス研究所、人権人道問題専門家)だ。
  16. このうちアッシャーはブッシュ政権で国務省北朝鮮作業班の東アジア太平洋問題の諮問役を務めた経験から北朝鮮からの脅威を減らすためには同国内の強制労働を中止させる必要があると指摘した。
  17. 「奴隷あるいは農奴同様の扱いを受ける労働人口が北朝鮮の財政を支え、大量破壊兵器開発を支える中心になっているのは間違いない」
  18. 「北朝鮮が強制収容所で運営されている実態は世界経済全体や文明社会の安定を損なうものだ。同国が自らの国民を家畜同様に搾取していることが核兵器開発能力につながりミサイルとともに拡散する効果を生んでいる」■
Morgan Chalfant   Email Morgan | Full Bio | RSS
Morgan Chalfant is a reporter at the Washington Free Beacon. Prior to joining the Free Beacon, Morgan worked as a staff writer at Red Alert Politics. She also served as the year-long Collegiate Network fellow on the editorial page at USA TODAY from 2013-14. Morgan graduated from Boston College in 2013 with a B.A. in English and Mathematics. Her Twitter handle is @mchalfant16.


2016年5月30日月曜日

韓国がSLBMを開発中 中央日報記事より



下の中央日報記事を読む限りでは戦略抑止力というよりも先制攻撃の手段としてSLBMを想定しているようです。しかし通常弾頭で精度が低いとどこを狙うつもりなのでしょうか。また艦体が小さいことから想定するSLBMは相当小型のようです。北朝鮮を狙うのであれば近距離で事が足りるせいでしょうか。そのまま順調に整備できるかは不明ですが、完成し戦力化に成功すればこの地域の戦力バランスでまた一つ考慮すべき要素になるでしょうね。それにしてもいつの間に韓国はロシアからS400を入手していたのでしょうか。


South will develop its own type of SLBM: source

May 30,2016
BY JEONG YONG-SOO [jeong.byungki@joongang.co.kr]

韓国が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を開発中と軍高官が発言した。
  1. 「建造中の排水量3,000トンの張保皐級Jangbogo-III に垂直発射管が付く」と同高官は匿名を条件で発言している。「発射管を付けるのはSLBMが開発中だということだ」とし、国防開発庁が主導して開発中のミサイルは2020年までに完成するという。
  2. 韓国海軍の潜水艦には潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)があるが、北朝鮮がSLBM技術の完成に近づいていることから韓国軍内部で迅速に対応すべきとの声が高まっている。
  3. 「SLBMはSLCMの精密攻撃能力は期待できないが、速力と破壊力はずっと大きいものがある」と潜水艦部隊司令を務めた退役少将Kim Hyeok-sooは述べている。「スピードがありステルスのSLBMが手に入れば事態が緊急水準にエスカレートする前に北朝鮮を攻撃する能力が韓国海軍に生まれます」
  4. 別の関係者は「軍は地対空ミサイルで冷間発射方式を採用しています。これをSLBMに応用してミサイルは水中発射したあと、エンジンはある程度の高度に達して点火します」という。
  5. 「北朝鮮はロシア製地対空ミサイルS300で使っている技術をSLBMに応用しました」と韓国科学技術院の主任研究員Lee Choon-geunは述べている。「韓国はロシアから入手したS400で使っているより成熟した技術を利用します。S400は債務支払いの一部として入手しました」S400は技術的に先端を行くミサイルで冷間発射技術が使われている。
  6. 開発が予定通り進展すれば、張保皐-III級潜水艦が引き渡される2020年までに艦にSLBMが搭載できると軍は見ている。
  7. 他方で張保皐-III級の次期艦は3,400トンに拡大すると決まっている。■

2016年5月29日日曜日

★カーター長官の考える国防技術イノベーションの方向性「旧式装備で新性能を」



 任期が残り少なくなってきたオバマ政権でこの人が国防長官でいることが大きな意義があります。技術を理解できる人物であることが大事なのでしょうね。問題は次期政権の長官人事でせっかくカーター長官が示した道筋がどうなるかですが。長官の考えには分断、個別専門性の追求より全体像として国防目的を意識した発想が垣間見えます。

‘Give Surprising New Capabilities to Old Platforms,’ Carter Tells Engineers


国防長官が海軍のR&D施設で「イノベーション」構想の深みを示し、また技術オタクとしての側面もあらわにした。

MIDDLETON, R.I.— アシュ・カーター国防長官が視線をこらす中、全長20フィートの無人監視用舟艇はナラガンセット湾でマウスクリックで航路を決め、長官の操作で衝突防止警告音が鳴り海軍水中戦研究センター専用ふ頭に一般船舶が近づかないようにした。長官はにっこりと笑った。

  1. 趣味で心電図を読んでいた物理学博士のカーター長官にとって海軍の研究実験現場訪問は技術オタクとして興奮するとともに戦略面でもおおきな満足を感じる場になった。長官は「イノベーション」を合言葉にしたが、優秀で創造性あふれた研究技術職とともに過ごしたこの午前で長官が望む方向性があらためてあきらかになった。
  2. 国防軍事筋は「旧式装備に驚異的な新性能を与える」のを目標とすべきだとカーター長官はこの訪問時に訓示した。試作製造で発想が実験研究段階と調達業務が乖離する「死の谷」を超越すべきだ。特殊装備は少数配備で十分だと認識する必要がある。また「接続領域」つまりバラバラだった作業を統合して空陸海さらに宇宙やサイバー、海中で大きな成果を発揮する方法を模索すべきだ。
NUWC-4無人舟艇をカーター長官はナラガンセット湾内で操作した。(Bradley Peniston / Defense One)


  1. 国防長官は研究施設の視察中に方針の実現例となるプロジェクト数例に目を向けた。無人舟艇がそのひとつで、第五艦隊が中東ですでに機雷対策で投入中だと海軍水中塩研究センター関係者が説明した。
  2. 「ここで進行中の研究の本質は発想を実用化に変えることといってよい」とカーター長官は述べ、「ここから生まれる装備はたとえ少数配備であっても決定的に大きな違いを与えるものだ」
  3. 長官がさらに夢中になったのがブラックウィングで、これは全長18インチの無人機で潜水艦から発進し、周囲の偵察や通信用途に使うものだ。長官は同機を試験所内で飛行させたとNUWCが述べている。
カーター長官はブラックウィングUASの操作を自ら体験し、海軍水中戦研究センターの施設内を飛行させた。(DoD / Senior Master Sgt. Adrian Cadiz)



  1. 「かつて水中戦とはそれ自体で完結する場だったが、海軍は水上艦艇とつなぎ、さらに陸上部隊や空軍とも接続し、統合領域として海中、水上を一体のものとしているのが重要な点だ」と長官は述べた。だがなぜこれが重要なのか。
  2. 「わが潜水艦部隊は敵に探知されず対抗する敵がいない点で水上艦艇や航空機にない強みがある。これをどう優位に活用できるか。ここに10年前に来ていたら研究対象は水中領域だけだっただろう。だが今や水中戦が他領域での戦闘に貢献することが増えている」
  3. 「これは新しい展開で、戦略的に有意義な構想であり、実行に向け努力している中で、これまで個別に投入してきた投資をまとめて大きな効果を実現する。旧式装備で新しい性能を実現する、あるいはこれまで長期間稼働させてきた装備でも新しい性能が実現するのだ」
  4. そこで長官は施設を称賛した。正式名称は海軍海洋本部の海軍水中戦研究センターのニューポート支部で、国防技術開発の模範だとする。「国防総省にとって当施設の革新性と戦略的な意義は大きな意義がある」
  5. だが視察は楽しいものだったのか。「その通り」と長官は微笑みながら答えた。「トップとしての面倒な仕事を代行させて今日は技術を視察に来ました」
当日は長官から自然な微笑が数回となく見られた。長官は無人水上艇の実証を見ている。(DoD / Senior Master Sgt. Adrian Cadiz)


AUTHOR

Brad Peniston Manag, ... ]
Bradley Peniston is deputy editor of Defense One. A national-security journalist for almost 20 years, he helped launch Military.com, served as managing editor of Defense News, and was editor of Armed Forces Journal. He has written two books about the U.S. Navy, including No Higher Honor: Saving the ... Full Bio


★有人戦闘機が無人機多数を運用する日がやってくる----AIと自律運航の技術開発の動向




SHARE & EMBED

Air Force Fighter Jets Will Control Drones

KRIS OSBORN
Friday at 5:14 AM

無人機多数が戦闘機と一緒に飛行して偵察、武器輸送、電子戦、目標補足で支援を提供する日が来そうだ。
  1. 米空軍科学主任によればF-35パイロットが無人機編隊を統制し、機体の周りを飛行させながら敵探知、偵察、目標捕捉を行わせるようになる。
  2. 現時点では無人機の飛行経路、センサー操作、兵装放出は地上で操作しているが、将来は戦闘機のコックピットで無人機の制御が可能になるとグレッグ・ザカリアス博士がScout Warriorの取材で述べている。
  3. 「自律性と人工知能で無人機の価値もあがります」という。
  4. 実現すればミッション概念、柔軟性、効果が大幅に引き上げられ、ジェット戦闘機のミッションで兵装、センサー、目標捕捉技術が今より多く利用可能になるとザカリアスは述べる。
  5. 例えばプレデター、リーパー、グローバルホークの各無人機が送るリアルタイム画像がF-35のコックピットで見られれば戦闘機パイロットは目標捕捉や戦術データ処理を迅速に行える。変化が速い戦場環境で処理が早くなれば大きな差が生まれる。
  6. 「現場からは『ミサイルをもっと多く搭載しないと防衛網を突破できない。EW対抗措置のペイロード余裕がない』との声は必至でしょう」とザカリアス博士は述べ、「高出力マイクロウェーブ技術はゆくゆく専用機材を必要とするはず。問題はパイロットへの過重な負担をどう回避するかです」
  7. 敵の防衛線やハイリスク地帯で無人機を先行させれば防空体制があらかじめ把握できパイロットの負担を減らせる。
  8. 「決定支援機能がコックピット・地上双方で使えるほか自律運航のシステムが利用可能になります。例えばウィングマンとして兵装を搭載するとか、ISRを実施するとか、あるいは局地防衛が可能になるでしょう」
  9. コンピュータ技術の向上で「人工知能」が実施できる任務内容が急速に変貌している。なかでもザカリアス博士が「意思決定支援」と呼ぶ分野で変化が大きい。これは情報の解釈、整理、解析、通信でマシンが大きな役割を果たすことで、人員は個別タスクすべてを担当する必要がなくなる。
  10. この技術の初期段階がF-35のコックピットで「センサー融合」の名称で取り入れられている。こレはエイビオニクス技術と機内コンピュータにより瞬時に各種センサーの情報を統合してパイロットに表示するもので、パイロットは多数の画面を逐次眺める必要がなくなる。
  11. さらに技術進歩でパイロットが無人機編隊を制御し各種任務を実施させることが可能となるはずだ。センサー操作、目標捕捉、兵器輸送や電子戦機能が想定される。
  12. 現時点では無人機一機の操縦には複数の人員が必要だが新型アルゴリズムによる無人機自律運用ではこの数字は大きく変わるだろう。ザカリアス博士は近い将来に一人で10機あるいは100機の無人機を運用する可能性を説明してくれた。
  13. アルゴリズムの進歩でプレデターやリーパーが戦闘機と編隊飛行し、地上からの指示管制が不要になる日が来るという。
  14. 地上装備では想定外の事態進展や移動目標に対応した迅速な修正がアルゴリズムで不可欠だが、飛行誘導アルゴリズムの構造は単純で実現は十分可能性がある。無人機に設定済みの地点「ウェイポイント」を経由しての飛行をプログラムするのは十分可能だ。
  15. だが空でも予想外の事態、障害物の発生や戦闘状況は簡単に変化するとザカリアス博士は言う。
  16. 「一番難易度が高いのは地上のロボット装置です。これは本当に厳しい。これに対して空は基本的に解決策が見つかっている環境と言えます。問題は脅威がこちらに向かってくる時にどう対応するかです」
  17. そのため、科学陣は自律性をさらに高めた無人機によりレーダーを欺瞞し、脅威対象を探知し、目標捕捉を迅速に独自に行うなどが可能になるプログラムの実現に向けて努力を重ねている。
  18. 「単なる誘導制御の域を超えた戦術実行を目指します」とザカリアス博士は述べた。
  19. 演習やシミュレーションを通じ空軍は自律運用技術を高度化しようとしている。
  20. 「多様な帯域を使ってリアルタイムでビデオ画像を送っています。搭載するプロセッサーのスマート化で学習を積み重ね、大きな効果を発揮します。
  21. 例えばコンピュータ技術、自律運航、人工知能の発展で無人機は特定地点の上空で特定の目標を特定の時間で捕捉することが人の手を借りずに可能になるだろうとザカリアス博士は言う。
  22. 「画像処理、パターン認識技術で目標を探知し信号を送ればそれで終わりです。『30秒前に何か見つけたからビデオを見てくれ、今から送る』なんていわなくてもいいわけですよ」
  23. 米陸軍はヘリコプターで有人無人機材の一体運用に成功しており、アパッチ、カイオワの乗員がUASの飛行経路やセンサーを操作している。陸軍によればこの方式はアフガニスタンで効果を発揮しているという。
  24. 空軍上層部によれば新型爆撃機となる長距離打撃爆撃機LRS-Bは有人操縦、無人操縦の双方に対応する機体になる。
  25. 海軍長官レイ・メイバスは海軍仕様のF-35Cは最後の有人戦闘機になると発言し、自律飛行とアルゴリズムの発展を理由としている。空軍から同様の発言はまだ出ていないが、空軍がこの分野に関心を有しているのは明らかだ。また2013年9月に空軍はボーイングとともに無人のF-16ファルコンの超音速飛行にティンダル空軍基地(フロリダ)で成功している。離陸、飛行、着陸を全部無人で行っている。■


2016年5月27日金曜日

★F-22生産再開に米空軍で初めて前向き発言したウェルシュ参謀総長に注目



もし本当にF-22を生産再開すれば、当然日本はイスラエルと並んで購入を期待されるでしょうが、参謀総長の言うように第六世代機(まだ概念も完成していません)の実現を差し置いて実現するのであれば考えてしまいますね。F-35が予算拠出元となればそれはそれでいいのですが、これは議会対策含め老獪なウェルシュ大将流のレトリックで次世代機の開発に向かった方が得策ですよと言っているのではないでしょうか。


Welsh: F-22 Restart for US Air Force Not 'A Wild Idea'


Lara Seligman, Defense News3:14 p.m. EDT May 26, 2016
635998586198304202-F-22-assembling1.jpg(Photo: John Rossino/US Air Force)
WASHINGTON — ロッキード・マーティンのF-22生産ライン再開をめぐり米空軍や産業界から非現実的との声がある中、退任近づく空軍参謀総長から突飛な思い付きではないとの声が26日木曜日に出てきた。
  1. マーク・ウェルシュ大将の発言は議会の申し出に空軍上層部がF-22生産再開は絵に描いた餅とけんもほろろな中で初めて空軍から出た前向きな反応となった。
  2. 議会はかねてから生産ラインを閉鎖した五年前のロッキード決断を批判してきた。しかしF-22生産再開が勢いをつけてきたのは今年に入ってからで、下院は本会議で議決済みで上院が可決すれば法案が晴れて成立し、空軍に正式に生産再開の検討を求めることになる。
  3. 議会の求めに応じて空軍はすでにF-22生産再開の場合を想定した検討は始めているとウェルシュ大将は述べた。再開の場合は第六世代戦闘機の代わりにF-22を生産するかもしれないという。ウェルシュ大将は空軍協会主催の会合で発言している。
  4. 空軍幹部は生産再開はけた違いの費用になると述べてきたが、ウェルシュ大将は「とんでもない案ではない」と述べた。
  5. 「突飛な発想ではないでしょう。F-22は成功した機材であり、性能と操縦する乗員の技量は突出しています。期待通りの仕事をしてくれることは実証ずみですよ。投入方法も変わってきましたが、素晴らしい効果を上げており、すごい性能を秘めています。そこで生産再開はとんでもないことではないでしょう」
  6. ウェルシュ大将は空軍がロッキード・マーティンと生産再開の場合の費用面の検討をしていることを認めた。
  1. ただし空軍は生産再開の費用検討を先に行っている。2010年に空軍から受託したシンクタンクRANDによる調査では75機で170億ドル(2008年ドル換算)との結論が出ていた。生産再開の場合、旧型をそのまま生産する代わりに新技術を導入すれば価格はもっと上がるだろう。
  2. これ以外にも障害になりそうなのがロッキードの事情だ。同社がF-22生産再開をそのまま実施できないのはF-35に全力投入しているためで、F-22が加われば共用打撃戦闘機の執行予算が減ることになるためだ。■


韓国がGEエンジンをKF-Xに選定



S. Korea Picks GE to Provide Engines for Fighters

Agence France-Presse9:50 a.m. EDT May 26, 2016
635998517785930305-KF-X-fighter.JPG(Photo: KAI)
SEOUL, South Korea — 韓国は戦闘機開発事業で米ジェネラルエレクトリックのエンジン採用を決定したと政府関係者が明らかにした。
  1. 国防調達事業庁DAPAの広報官はAFPに「6月に正式契約を調印したい」と述べた。.
  2. GEエイビエーションがユーロジェット共同事業体(ロールスロイスホールディングsとMTUエアロエンジンAGなどが構成)を下す形で選定された。
  3. 韓国はこれから十年間で「国産」次世代多用途戦闘機を(韓国向けに)120機生産し、F-4、F-5の後継機とする構想だ。
  4. 韓国戦闘機実験機(KF-X)には18兆ウォン(152億ドル)の予算が付き、インドネシアも一部費用を負担することで今年初めに調印している。
  5. インドネシアは(50機の調達をめざし)費用の二割を負担し、最高で100名を開発生産に参画させる。
  6. DAPAは政府官庁で事業統括の立場だが、産業界では韓国航空宇宙工業(KAI)がまとめ役として事業を推進していく。
  7. KAIは昨年三月にロッキード・マーティンと組み契約を獲得している。
  8. 韓国はロッキード・マーティン保有のジェット戦闘機関連技術25件を利用したいとして居tが、米政府がこのうち4点の移転を禁じている。その機微技術にはアクティブ電子スキャンアレイ(AESA) レーダーが含まれている。■
なお対象のエンジンはF414-GE-400とのことでユーロジェットEJ200を性能、価格、現地生産化、事業管理のすべてで上回ったのが選定の理由と調達事業庁は発表しています。


ペンタゴン報告書から中国の核戦力整備の最新状況を読み取る


アメリカ科学者連盟と言いながらしっかりとした情報分析をしているのはさすがです。中国の核関連では進んでいるようで進んでいない開発配備状況が見えてきますが、引き続き日本としても状況を注視していく必要があるでしょうね。ミサイルの中には日本に照準を合わせているものがあるはずですから。

Pentagon Report And Chinese Nuclear Forces

By Hans M. Kristensen
Posted on May.18, 2016 in China, Nuclear Weapons by Hans M. Kristensen

china-DOD2016
ペンタゴン発表の中国軍事開発状況の報告書最新版は通常兵器を多く取り上げているが、核兵力の最新状況でも重要な内容が含まれている。
  • ICBM配備数はこの五年間ほぼ同じ
  • 新型中距離弾道ミサイルの供用を開始した
  • 新型中間距離弾道ミサイルは未配備のまま
  • SSBN部隊が抑止力任務をまもなく開始する
  • 爆撃機の核運用能力の可能性
  • 中国の核政策の変更あるいは現状維持

ICBM開発の動向
中国のICBM部隊の整備状況が関心を集めている。新規開発もあるが、今回のDOD報告書ではICBM配備数はこの五年間に伝えられたものと同じ水準で60発程度とする。DF-31の配備は停滞しており、データからDF-31Aの導入も20から30基と少数と見られる。
china-icbms-gr

2012年度報告では2015年までに「中国はさらに道路移動型DF-31A発射台を配備する」としていたが、その通りに推移していないようだ。
china-icbm-nos
DOD報告が伝えるICBM発射台の数は大幅にばらついており、2003年は30基程度としていたものが2008年以降は50から60程度としている。2011年から2016年の間に25基もの差異がが出ている。これは40パーセントにのぼる誤差でそれだけ不確実だということだがここ数年は10パーセントに落ち着いている。とはいえ中国ICBM本数が大幅に増えていないのは確実だ。
発射台の数は安定しているといえるが、DOD報告書ではミサイル数は増えているとし、発射台50から75に対しミサイル75から100本だとする。これはこれまでのDOD報告と一貫性を欠く。これまで発射台の数とミサイル本数が一致するかわずかにミサイル本数が多かったのは旧型DF-4を再装填するためだった。
2016年度報告が突如としてミサイル本数を発射台数より25本以上多いと述べる理由は不明だ。DF-5ないしDF-31/31Aは再装填型と見られる。これまでのDOD報告ではDF-4のみで再装填すると想定していた。DF-4の発射台はわずか10基しか残っておらず、2016年度版報告での超過本数は10本のはずで、25ではないはずだ。(DF-4で再装填を二本と想定するとつじつまがあう) わかっている範囲での中国のICBMの全体像は下表のとおりである。
china-icbms-tbl
噂では中国が鉄道軌道で移動するICBMを配備済みあるいは開発中といわれるが、DOD報告では鉄道を利用する装備の言及はない。7月に加筆訂正版が公表される。

DF-26は核精密攻撃ミサイルか
最新の核ミサイルがDF-26(ペンタゴンはまだこの新型ミサイルのCSS呼称は明らかにしていない)で昨年9月の北京軍事パレードで初公開されているが、ミサイル部隊に展開していない模様だ。
DF-26
北京軍事パレードに6車軸の打ち上げ車両が登場し、核運用可能との説明があった。ミサイルはまだ供用開始されていない。Image: PLA.
DOD報告では核非核で共通の誘導方式を使うとし、「中国初の核精密攻撃能力が戦域内で利用可能になる」と述べている。
この書きぶりからこれ以外の中国核ミサイルには精密攻撃能力はないとDODが見ていることがわかる。

DF-21で新型登場か
DOD報告は中距離核ミサイルDF-21の新型を取り上げているが、詳細は述べていない。新型はDF-21 Mod 6あるいはCSS-5 Mod 6として報告書に記載されている。
DF-21_ex2016
DF-21が核攻撃演習に参加している。2015年撮影. Image: PLA via CCTV-13.

以前の報告書ではICBM部隊に「道路移動型固体燃料方式CSS-5(DF-21)MRBMを域内抑止ミッションに投入して補完する」としていたが、2016年度版ではICBM部隊は「道路移動型固体燃料方式CSS-5 Mod 6 ‘(DF-21) MRBMで域内抑止ミッションに投入して補完する」と述べ、初めてMod 6の名称が使われた。
DOD報告ではMod 6に関し詳細についても、その登場で既存型 (Mod 1、Mod 2)がどんな影響を受けるかでも言及はない。既存型は老朽化しつつあるのでMod 6が更改用の可能性があるが、実態は不明だ。
DF-21が中国軍で特別な意味があるのは、初の移動式液体燃料ミサイルとして登場したためだ。Mod 1は1980年代後半に配備開始されたが、戦力化は1992年だった。Mod 2が1998年時点で「配備ができていない」状態だったのは両型式で相違点が相当あったのか、両型式をミッションの性質の違いから並列配備しておく必要があったためだろう。
DF-21各型を巡っての議論では混乱が大きくみられ多くの論者が二次資料を引用しているが、原資料を使う向きは少ない。中でも最も多い誤りはDF-21C通常型陸上攻撃版をCSS-5 Mod 3とし、DF-21D対艦攻撃版をCSS-5 Mod 4とするものだ。ここ数年にわたりDODや情報各機関からはDF-21に以下の型式があるとしてきた。
DF-21 (CSS-5 Mod 1):核
DF-21A (CSS-5 Mod 2):核
DF-21C (CSS-5 Mod 4): 通常弾頭対地攻撃
DF-21D (CSS-5 Mod 5): 通常弾頭対艦攻撃
DF-21 (CSS-5 Mod 6): 核 (新登場)
DF-21B(CSS-5 Mod 3)がどうなったのかは不明だ。DF-21は旧型液体燃料方式DF-3Aに替わり中国の地域内核抑止力の中心となっている。DF-21へ変更をした最新の部隊は遼寧省の第810旅団だ。

海洋配備抑止力
各種報道が伝える公式発表は誇張気味あるいは拙速であり、中国潜水艦の作戦能力を高く買いかぶりすぎの観がある。新型の晋級SSBNが抑止パトロールを開始したとの報道があるが、米エネルギー省報告では潜水艦あるいはミサイルの問題で作戦実施可能になっていないとしている。
2015年2月に米海軍作戦部長の議会向け報告ではSSBN一隻が95日間に及ぶパトロールに出港したとあるが戦略軍司令官セシル・ヘイニー大将はSSBNが海上に出ることがあるが核装備しているのか判断できないと述べた。
今回のDOD報告書では晋級SSBNはJL-2SLBMを「ゆくゆくは搭載することになる」と言及しているのは明らかに現時点では未搭載であるということで、「中国は初のSSBNによる核抑止パトロールを2016年中に行う」と述べている。つまり実施実績がないということだ。
この「未実施」評価の背後には国防情報局が「PLA海軍部は晋級原子力弾道ミサイル潜水艦を2015年に就役させJL-2を搭載すれば中国初の海洋配備核抑止力が完成する」と述べたことがある。
一隻あるいは複数のSSBNが何らかの任務で外洋にでたことがあるが、核兵器が搭載されていなかった可能性があることになる。晋級SSBN四隻はすべて海南島の榆林海軍基地に配備されており、五隻目が建造中だ。
Jin-ssbns_yulin2015晋級SSBN三隻、商級SSN2隻が榆林海軍基地に見られる。
DOD報告書では晋級SSBNの五隻追加建造との噂は誤りとする。米太平洋軍司令官は2015年に議会に「最大5隻が追加建造され2020年までに部隊に投入されるかもしれない」と発言しているが、確証はなかったようだ。DOD報告書では5隻目の晋級が建造中だがその後は新型ミサイルJL-3を搭載する次世代SSBN(タイプ096)へ移行すると見ている。

核爆撃機
今回のDOD報告書は爆撃機の核任務の可能性を初めて取り上げている。各種中国国内の資料を論拠にしつつ米情報機関の推論は示していない。
china-bomb1967H-6爆撃機が投下した熱核爆弾。1967年6月
「2015年に中国が長距離爆撃機を開発していると明らかになった。中国軍事アナリストが『戦略抑止任務を実施能力がある』と、PLA空軍部に2012年に与えられた任務に言及している。また中国国内文献では『戦略級』ステルス長距離爆撃機の実用化を目指しているともある。各種報道や文献を総合すると中国が核爆撃機を開発する可能性があり、実現すれば、中国は核運搬手段の『三本柱』として陸上、海、空の整備を完成し、冷戦後にふさわしい残存性と戦略的抑止力を実現するかもしれない」
中国の爆撃機では改修型H-6K爆撃機があるが通常弾頭の対地攻撃巡航ミサイルを搭載し、核任務や「戦略抑止」ミッションは中心ではない。ただし米空軍のグローバル打撃軍団の説明資料では新型CJ-20空中発射対地攻撃巡航ミサイルを核搭載可能としていた。
過去においては中国は核兵器を爆撃機から投下する能力を展開していた。1965年から1979年まで続い板核実験では少なくとも12回が爆撃機による投下であった。実験は核分裂型と核融合型で威力は最大2から4メガトンまでと推定される。投下したのはH-6爆撃機(現在も近代化改修して就役中)、H-5爆撃機(退役済み)、Q-5戦闘爆撃機(全機退役済み)だった。

china-bombs
核爆弾の模型二つが北京で展示されている。左は核分裂爆弾第一号の模型で、右が熱核爆弾だ。右の模型に書かれているH639-23は1967年6月17日の水爆実験で投下された番号H639-6と類似。mage: news.cn

核戦略と核政策
最後にDOD報告書は中国の核政策・戦略について米側の理解する内容をまとめている。
まずPLAが核運用部隊に対する指揮命令統制通信機能を新型に切り替えて、戦場で多数の部隊を統制する能力を引き上げている。「通信能力の改良でICBM部隊はこれまでよりも戦闘状況をよりよく把握し、妨害されにくい通信手段で接続されている。部隊指揮官も命令を同時に複数部隊に下し、これまでのような順々方式ではなくなった」
これは部隊への指揮命令行為の効率性向上を目指したものだが、同時に危機的状況での戦闘効率を上げるる狙いもある。DOD報告書では中国が「平時での即応体制を引き上げようとしている」との報道内容を引用している。この点で中国軍の文書を引用して核部隊が「警告あり次第発射」する体制にあり、敵の攻撃を受けて全滅する前に発射する方式になったとの報道もある。
これが進展すると新たな問題になるが、DOD報告書の結論は今のところ中国が堅持してきた先制攻撃をしないとする安全保障政策に変化の兆しはないとする。
言い換えれば、中国の核政策事態に変化はないようだが、核部隊の運用・作戦方法は大きく変わりつつあるということになる。
さらに以下から追加情報が得られるので参照されたい。
本記事の発表の下となった研究はNew Land 財団およびPloughsharesファンドの助成金により実現した。ここで表した見解は筆者個人のものである。

★KC-46Aで再度遅延が発生、契約不履行になる公算大へ 事業体制見直しは必至か



なぜここまで開発が手間取るのでしょうか。そもそも767があるから簡単に給油機ができると楽観的だったボーイングも自社負担が増える一方のため、青ざめているのかも。その分は日本が負担することになるのでしょうか。今のところKC-46に手を挙げているのは日本だけではないでしょうか。

Aerospace Daily & Defense Report

KC-46A Tanker Program Braces For Another Delay

May 26, 2016 Jen DiMascio | Aerospace Daily & Defense Report

KC-46: Boeing
ボーイングのKC-46A空中給油機開発でまたもや遅延が発生、今回は最短でも六か月にわたる規模で、サプライチェーンと技術上の問題に直面している。
  1. 今回の遅延で事業推進体制の見直しや資金投入の削減を議会あるいはペンタゴンから申し渡されるかもしれないと上院のある補佐官は述べた。「誰かが責任をとらないとね」
  2. ボーイングは2017年8月までにKC-46Aを18機引き渡す予定で三機をテストに投入していた。だがC-17相手に空中給油テスしたところブームで安定性の問題が見つかり、その解決方法としてソフトウェア改訂でフライバイワイヤのブーム制御を改善しようとした。だがハードウェアの改良策はまだ決まっていない。またサプライチェーンの問題のため15機分の部品が全部そろうのは2018年になると判明した。
  3. 上院歳出委員会は5月26日に2017年度国防支出法案原案を可決し、ブラク・オバマ大統領が求めていた15機購入分29億ドルでを承認した。しかし法案に合わせまとめられた報告内容から議員の間にKC-46の将来に懸念が広がっているという。
  4. まず2017年は量産開始の年で、15機を生産する予定だったと報告書は指摘。だが量産開始を決定するマイルストーンC判定は先送りされたままで、このままでは生産数は同じでも低率生産になると報告書は伝えている。
  5. また開発段階の飛行テストが2割しか完了していないのは、ブーム問題が原因だと報告書は指摘する。
  6. 委員会は数回にわたる遅延の発生を指摘している。マイルストーンCで10ないし11か月遅れ、初期作戦能力テスト評価も11か月遅れており、一号機納入は9か月遅れる。この結果、重要な段階すべてで契約履行は不可能で、結果として2018年8月の目標達成はほぼ絶望的だという。
  7. ペンタゴンで調達全体を取り仕切るフランク・ケンドール副長官は同事業が既存機種を改装するため固定価格制契約になったと指摘する。だが開発費用の高騰から政府は無関係でいられる内容のため、付けはボーイングが支払っている。同社はすでに税抜きで12億ドルを負担している。この数字は今後増えるだろう。■


2016年5月26日木曜日

★RC-135が日本海上空でKLM,スイス航空機と空中衝突寸前だった(ロシア発表)



この記事は発生日を明示していません。ロシア側発表ということもあり信憑性が欠けると言いつつ、KLM、スイス両社は事実を把握しているはずです。日本海上空で東京発の便ということもあり、発生していたら大変なことになっていたでしょうが、だからといってISR活動をやめるわけにもいきません。今後もリスクは発生するでしょう。今や冷戦は再び始まっているのです。

“U.S. spyplane almost hit two passenger jets over the Sea of Japan” Russia MoD says

May 25 2016



ロシアによればRC-135一機がロシア太平洋沿岸近くを飛行中に民間機二機と空中衝突寸前だったという。
  1. ロシア国防省声明では米スパイ機は日本海の国際空域を飛行中に二機の旅客機と空中衝突を辛うじて回避したとする。
  2. 国家統制のメディア、スプートニクニューズおよびインターファックス通信によれば、国防省報道官イゴール・コナシェンコフ中将は米スパイ機がロシア東部を毎日飛行していると認めたが、「今回は国際航路を通過した米スパイ機は民間旅客機への衝突の危険を冒し、衝突していたら壊滅的な結果になっていただろう」と述べた。
  3. ロシア報道官は米機乗員が「プロらしからぬ行為」だと非難し、米大使館付け武官を呼び説明を求めたという。
  4. ニアミスに遭遇したのはスイス航空KLM航空の機体だった。
  5. 第一回目はRC-135リヴェットジョイントが嘉手納基地を離陸し日本海上空を高度33千フィートで飛行中にトランスポンダーを切り、民間レーダーにほぼ姿を消したまま国際空路を飛行しKLMとスイス航空(東京発チューリッヒ行き)を横切った。
  6. 現地時間午前5時41分、ロシアのウラジオストックのレーダー局が「スイス航空旅客機に直ちに高度を下げ衝突を回避せよ」と指示し、スイス航空機から四発機が向かうのを目視確認したと交信が入ったという。
  7. 二回目のニアミスはボーイング777で東京アムステルダム線の旅客機に進路変更の指示が入ったのは「正体不明の航空機」が同機に向かっているのが探知されたためで、のちに同一のRC-135だと判明した。
  8. ロシア航空管制局はスパイ機を高度36千フィートで探知し引き返すよう指示したが返答はなく、識別信号も発しなかったとインターファックスは伝えている。このためKLM機は1,600フィート高度を下げ「辛うじて衝突を回避した」という。
  9. 米ロ間で偵察機と迎撃機の遭遇は日常だが、ELINT電子情報収集機と民間ジェット機の空中衝突寸前の事態は極めてまれである。
  10. 2014年3月3日にSASのボーイング737が退避行動をとり、ロシアのIl-20クート情報収集機との空中衝突をスウェーデン沖合で未然に防いだ事例がある。
  11. スパイ機がトランスポンダーを切り、ATCと無線交信せずに、パイロットの目視飛行で空中衝突を回避しつつ飛行するのは普通だ。民間航空の妨害を避けるのが普通だが、危険な接近飛行が懸念を呼んでいる。
  12. ペンタゴンはロシア側がRC-135に危険な接近飛行をバルト海で行った「無謀さ」を非難しているが、今回はロシア国防省が「プロらしからぬ行為」を非難しているのは状況に変化がなく、実は第二次冷戦が進行中であることを思い起させてくれるものだ。■