2016年7月5日火曜日

★★★空対空性能を重視するF-3、国産開発の可能性が濃厚



選挙戦もたけなわと思いますが、相変わらず安全保障では空理空論が大手を振っているようです。スクランブルの現状などなぜ実態を踏まえた議論にならないのか、都合の悪い事実には目をつぶる傾向が見られるのは本当に残念です。
War Is BoringWe go to war so you don’t have to

For Japan, Air-to-Air Fighters Trump Other Jets

Tokyo requests information from industry for next-gen warplane

by JAMES SIMPSON
F-3はX-2技術実証機を元に生まれるのだろうか。Japanese defense ministry photo
  1. 6月末、防衛省は次世代戦闘機の情報要求を各メーカーに出し、これで三菱重工F-2の後継機「F-3」開発の長い工程が始まった。
  2. だが性能向上が目立つ中国の海空兵力の脅威に対抗する必要を日本政府が感じる中、現在入手可能な機種はいずれも日本のニーズにこたえられない
  3. 日本が本当は欲しいF-22は立法措置で購入がままならず、次善の策が新型ステルス機の国産開発だ。
  4. Aviation Weekは6月24日号でX-2戦闘機技術実証機について評価をし、F-3開発につながると見られる同機から日本が狙うのは「大型双発機で長距離飛行性能があり機体内部に大型空対空ミサイル6発を搭載する」と推定している。
  5. 確かに日本のニーズからこの推定はありうるが、その通りなら日本はF-2の攻撃能力は捨て、高速長距離迎撃性能に重点を置くことになる。つまり対地攻撃ミッションから離れ空対空戦を重視することになる。
  6. Jane’s Defense Weeklyでも今回の情報要求を報じておりF-3は100機生産になるとしている
  7. 原稿執筆時点で日本国内報道を伝えているのはロイターだけで日付は6月30日となっている。その記事によれば防衛省はボーイングとロッキード・マーティンにも参加を呼び掛けている。ロイターは新戦闘機開発の予算は400億ドルと試算している。
百里基地から離陸したF-15とF-2 Japanese Air Self-Defense Force photo

F-2から F-35へ

  1. 日本側は研究成果をF-16に詰め込み三菱F-2が生まれた。機体単価171百万ドルはF-16四機分で安い買い物ではない。日本はF-2を94機保有している。
  2. F-2は多用途戦闘機で、恒例の富士総合火力演習では爆弾投下し、地上部隊を支援する姿が見られる。島国ということもありF-2は対艦攻撃任務もこなす。
  3. だが噂通りF-2後継機が双発ステルス戦闘機になればF-2の任務はどうなるのか。答えはF-35にある。
  4. 日本は2011年にF-35Aを42機導入すると決め長年供用しているF-4ファントムの後継機種とする。まず四機がテキサスとイタリアで生産中で三菱重工の小牧南製作所も参加し、2017年に日本へ到着する。
  5. 航空自衛隊はロッキードF-22導入を希望していたが、2006年に米下院が輸出禁止措置を延長し、日本導入の可能性が消えた。
  6. 日本がF-22を調達できていれば旧式ながら非常に価値の高い双発多用途戦闘機F-4を退役させていたはずだ。代わりに日本は第五世代戦闘機で唯一入手可能な機種として性能は落ちるが単発のF-35に落ち着いた。同機輸出はロッキードが力を入れており、議会も海外販売を後押ししていた。
  7. 双発と単発の違いを論じると多分に学術的になる。双発機の方がエンジンが余分にある分だけ残存性が高いとされるが、現実にはエンジン一基が作動しなくなると墜落する。
  8. 双発機でステルス効果が高いのはエンジンの大きさだけでなく同じ推力なら探知されにくい排気を出すためだ。このためF-22のステルス性能はF-35に勝る。
  9. そうなるとF-35をF-2やF-4の後継機種にすることで意味が出てくるが、わずか42機では90機近くのF-4にとって代わることができないし、日本は戦闘機が不足しているのだ。F-35選定が遅れ、稼働開始が遅れている中で既存各機は限界まで使われている。
  10. 日本にはF-15が150機ほどあり、日本の領空を中国の偵察行為の増加から守っているが、F-15は数次にわたる耐用年数延長改修を受けている。F-2も改修されているとはいえ、F-4が消えた後のギャップは早々に埋まりそうにない。Jane's報道のF-3100機が正しくても日本の戦闘機不足は解消しない。
  11. 今のところ日本は数より質を重視するようだ。Aviation Weekの推測通りならF-3はF-15同様の航空優勢戦闘機となるが、わずか42機のF-35はF-4とF-2の役目もこなせるのか。
  12. この場合のF-35は空対空戦に加え戦闘攻撃機の機能も果たす。日本が求めるのは高速ステルス戦闘機であり、F-35やF-15改修型を補完し、中国の高性能機材へ一対一で対決できる機材だ。

中国問題

  1. なぜ日本が空対空能力を重視するかを理解するためには中国が琉球諸島へ脅威になっていることを知る必要がある。
  2. 冷戦時の日本は北方の守りを固めソ連からの防衛を重視していた。だが冷戦後の状況変化へ対応が遅れた日本はロシアと緊張緩和しても北方重点配備を続けていた。1990年代から2000年代にかけ自衛隊は存続意義の説明に苦慮し、平和維持活動や国際災害救難人道援助活動、さらにテロ対策や中東での民生整備事業に活路を見出すありさまだった。
  3. だが2010年に保守派が懸念していた通りに防衛省は新しい脅威対象を発見する。その年の防衛ガイドラインで中国の海洋進出の野望、接近阻止領域拒否の兵器体系と尖閣諸島占拠の可能性を取り上げた。
  4. 日本の懸念を理解するのは難しくない。
  1. 上図は日本の防空識別圏に侵入した中国航空機へのスクランブル回数を防衛省データでまとめたものだ。2008年に航空自衛隊のスクランブルで中国機は全体の13パーセントだったが、昨年実績では65パーセントに増加している。
  2. 中国の侵犯は年々増加し、今年4月から6月だけで航空自衛隊のスクランブル回数は200回近くと、前年同期の114回から大幅に増えている。
  3. 制空防衛任務が日常的になっている現状で高速長距離迎撃機が航空自衛隊で一番活躍する機材になっている。航空自衛隊の主任務は接近してくる中国機への対応になった。
  4. そこで那覇基地にF-15が40機ほど展開し、2010年の24機から大幅増で同基地は緊急配備部隊の本拠地になったが、基地としては完全とはいいがたく、民間空港と同居して沖縄の空を守っている。政府も尖閣諸島に近い地点に基地開設を検討しているが、現行基地の負担は相当大きい。
  5. 那覇基地のF-15は今や一日一回のスクランブル出撃をしており、離陸後のF-15は255マイル先の尖閣諸島まで20分飛行する。
  6. 中国機は高速化しており、ロシアが北方に飛ばす低速の偵察機とは大違いだ。
  7. 中国が焦点を合わせる外縁島しょ部分には双発長距離戦闘機が日本に最適な存在となる。ただし攻撃能力も完全に除外されているわけではない。IHI製XF-5のような高出力双発エンジンでペイロードが増加すると、F-3を揚陸部隊支援として対地攻撃に充てることも可能だろう。

脅威は第五世代機

  1. 武装した航空機が対峙すると緊張も確実に上がる。航空自衛隊航空支援集団の元司令官が6月17日に中国戦闘機がF-15に敵対行動をとったとオンラインニュースで明らかにした。これに対し防衛省は中国機が「異常な行動」はとっていないと報道を否定している。
  2. だが翌6月18日に河野 克俊統合幕僚長から報道陣に「中国は海空で行動をエスカレートしているようだ」とのコメントが出ている。
  3. このままでは中国機と日本機の遭遇が危険な状態を作った2013年の再来は時間の問題だろう。緊張がここまで高くなると一回のパイロットの行為が国際危機につながりかねない。危機が発生した場合、日本は戦闘に勝ちたいと思うのは当然だ。
  4. そこで中期防衛整備計画(2018年まで)から日本の優先順位が見えてくる。「海上優位性ならびに空中優位性の確保を可能とする能力の整備」で日本政府は実現に全力を挙げている。
  5. その表れとして航空自衛隊はF-2のうち49機に三菱電機製のAAM-4B空対空ミサイルを、また91機に新型J/APG-2レーダーを導入た。改修でF-2はF-15をよりよく支援できるようになった。
  6. F-15も二回に分け性能改修を2004年から受けており、68機で完了している。ただしF-15では老朽化の兆候を示しており、部品落下が特に沖縄で増えている。
  7. F-2が2030年までに退役し、F-15は2040年代まで飛行するが、つなぎ機材のF-35が42機では大変なので第六世代のステルス制空戦闘機が数年のうちにも必要となる。
  8. 問題は日本が欲しい機材が今存在しないことだ。日本は今もF-22調達を希望しているが。
  9. 背景に中国のJ-20、J-31の共に双発ステルス戦闘機の存在があり、2020年代に実戦化すると見られる。中国報道では空母に搭載する案もある。
  10. 実際の性能、特にエンジン性能とは別に中国の利点は数だ。およそ8対1で劣勢な日本の武器は地理条件、練度と技術で強力な隣国に対抗しようとする。.
  11. 現時点の日本は第五世代技術の実証機による技術開発を目指しX-2高度技術実証機を作り、初飛行を2016年に済ませている。同機は縮小型で生産機材とはかけ離れた存在だがテストで得られる技術成果は次の国産機の基礎となるだろう。
  12. 防衛省からの情報要求は既存機材の項中、共同生産、純国産のいずれかの選択を目指す日本政府の既定方針の日程に合致し2018年に最終決定を下す。
  13. ボーイング、ロッキードあるいはヨーロッパ企業が極秘プロジェクトを隠しているのでなければ、Aviation Weekが伝えた予想性能諸元ではF-3が国産開発になる可能性が高い。ただF-2のように機体は高額となり期待通りの結果が得られないかもしれない。.
  14. なお、情報要求の回答締め切りは8月。■


F-22は南シナ海でHQ-9ミサイル防空網を突破できるのか



ここにきて中国の動向に関心が集まり、米中軍事衝突の想定での記事が増えています。観念的な内容が次第に兵装レベルに移ってきたのはそれだけ緊張がリアルであることの証拠でしょう。

Visit Warrior Can the F-22 Evade and Destroy Chinese HQ-9 Air Defenses - Now in the South China Sea?

DAVE MAJUMDAR
Wednesday at 10:59 PM

National Interest 誌はF-22戦闘機を南シナ海に投入すれば中国で最高性能を誇るHQ-9ミサイル防空網をかいくぐり勢力均衡が変わるとしている。

  1. 強力なHQ-9ミサイルを中国が南シナ海ウッディ島に持ち込んだことで緊張がさらに高くなっているが、ただちに開戦になる可能性は低い。だが武力衝突が発生すれば米国はHQ-9に対抗してロッキード・マーティンF-22ラプターを投入するだろう。
  2. HQ-9は極めて高性能な兵器でロシアのアルマズアンティS-300P(SA-10グラウラー)と米製MIM-104ペイトリオット(中国はイスラエルから入手済み)の長所を融合させたような装備だ。だが米製、あるいはロシア製の地対空ミサイル(SAM)にない特徴としてアクティブ電子スキャンアレイレーダーを搭載している。HQ-9発射装置一式で同時に6個の目標を最大120マイル射程、高度90千フィートまで狙える。さらに一部のHQ-9迎撃ミサイルでは最大有効射程が150マイルまで延長しているといわれる。同ミサイルには事実上の飛行禁止帯ができるほどの威力がある。
  1. 第五世代ステルス戦闘機F-22ラプターはHQ-9に対抗して米空軍が投入できる最高の機材だ。もともと制空戦闘機の役割を中心に考えてきたが、多様な任務をこなせるのは実証ずみだ。また制空任務にあわせ「ドアを破り」ノースロップ・グラマンB-2爆撃機に侵入経路を開く任務も想定している。イラクとシリア上空ではF-22の強力なセンサー性能が着目され、偵察任務と指揮統制任務もこなしている。
  2. 空軍のラプター遠征飛行隊がエルメンドーフ・リチャードソン共用基地にあり、第三飛行団がアラスカから展開できる。同飛行団の機体は装備アップグレードで最新の3.2A仕様になっている。つまり合成開口レーダーによる地図表示、位置認識能力に加えて小口径爆弾(SBD)の運用能力があり、戦闘識別能力が向上しており、Link-16によるデータ受け渡しで各機のデータを融合できる。.
  3. 現在配備中の機体にアップグレード5仕様のソフトウェアがついているか不明だが、同ソフトは2015年10月にリリース済みで、AIM-9Xサイドワインダー、AIM-120D AMRAAMおよび自動地上衝突回避システムがソフトウェアが先に搭載されていれば運用できる。
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  1. ラプターはインクリメント3.1アップグレードで位置把握性能が付与されており、S-300やS-400相手に強力な威力を発揮できる。合成開口レーダーと位置把握能力でラプターは高機動式SAMの位置を突き止め、スピードとステルスを組み合わせ比較的安全に攻撃を加えることが可能。マッハ1.8超の飛行速度をアフターバーナーを使わずに維持でき、同機のレーダー断面積はおはじき玉ほどになる。つまりHQ-9陣地に接近して250ポンドのSBDあるいは1,000ポンドのJDAM衛星誘導爆弾を敵に機体を長くさらすことなく投下できる。
  2. 中国はウッディ島にHQ-9を持ち込み各国空軍機の接近を困難にしているが、F-22が到着すれば米空軍は南シナ海上空を自由に飛行できる。

Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


2016年7月4日月曜日

★★7月12日を境に中国は「不良国家」になる



尖閣、南西諸島での中国の海空軍の不穏な動き、蔡政権の台湾への露骨な圧力などすでに以下予想するオプションが現実ののものになっています。7月からの南シナ海は荒れた海になりそうです。

The National Interest

A South China Sea Explosion: Why China Might Go ‘Rogue’ on July 12, 2016


July 1, 2016

7月12日に国際仲裁裁判所が中国とフィリピンの係争案件で裁定を出す。中国に不利になるとの見方が大半の中、中国は早くも距離を置こうとしている。だが予想通りきわめて不利な結果が出た場合に中国はどう対応するだろうか。中国には選択肢は多数あり、大部分で悪影響を出しそうだが、アジアのみならず米国にも悪影響が及ぶのは必至だ。

最も可能性が低い選択:何も反応せず裁定を事実上受け入れる

  1. 北京からお決まりの声明文が出て、南シナ海は自国領海と主張したらどうなるか。
  2. 一見悪くない選択に見える、表面上は。中国は今と同様に人工島建設で小規模軍事基地を構築し、最新「空母キラー」対艦兵器を配備し、最新鋭戦闘機、爆撃機を順番で移動させ、南シナ海を究極の接近拒否領域否定(A2/AD)地帯に変えるというシナリオだ。中国は裁定内容に怒りを表明し、今まで通りの行動を続ける。自国主張を固める効果があるといえよう。
  3. この反応なら最近の中国にすれば穏やかな方だ。が実現の可能性は極めて低い。習近平一党は国内に力強く見える形で対応を迫られるだろう。昔通りではだめだ。強硬策を求める国民に外部勢力には屈しないと見せるため南シナ海は兵力投射先として中国の影響圏にしておく。
  4. ここから二つの可能性が生まれるが、どちらも超大国同士の衝突の危険を発生させるはずだ。

可能性が一番高い選択肢:防空識別圏(ADIZ)を設定する

  1. 中国政府はここ数か月にわたりこの動きを予告している。防空識別圏を宣言するかとの問いに中国政府関係者は現時点で予定はないが将来あるとしたら南シナ海の危険度が理由だろうと述べている。中国に不利な裁定内容が出れば中国の公式見解も変わるだろう。
  2. 習近平はじめ上層部が公式見解で変更を正当化するのはたやすい。裁定内容で中国の権益が侵されたと言えばよいのであり、他国の誤った行動や国際圧力でADIZ宣言に「追い込まれた」と説明すればよい。中国はすでに防空装備を配置しており、戦闘機も交代で派遣している。現状でも中国はある程度の騒動を起こす力はある。東シナ海と同様に宣言しながら強制力は行使できないのではないか。だが宣言だけで緊張は相当高まる。識別圏の大きさや範囲にもよるが、アジア各国との危機状態につながるかもしれない。ワシントンとしても今回はB-52を一機か二機通過飛行させるだけでは済まないだろう。

もう一つの選択肢:不良国家になる

  1. ではADIZ設定だけで満足せず、武力衝突一歩手前まで強硬な態度に中国がでればどうなるか。中国はアジアの危険の火種すべてに圧力をかけてくる、つまり悪党の役を演じることだ。例として、
-東シナ海で海空のパトロール回数を大幅に増やし日本の神経を逆なでする。同時に石油天然ガス採掘も大々的に始めて日本政府を大いに憂慮させる

-台湾で危機状況を引き上げる。習主席は台湾渡航を大幅に制限するかもしれない。台湾はすでに中国本土に経済的依存度を高めているが、投資貿易規模を減らすことから始めるだろう。習は台湾を困らせる方法を各種熟知している。アジアの目を台湾海峡に向けさせるのも有効な手だ。

-スカボロー礁でも埋立て工事を開始する。リスクも危険も最高でワシントンは実施の場合は対処するとの意向を示しており、A-10他で示威飛行させている。だが中国がフィリピンからわずか150マイル地点で浚渫工事を開始し南シナ海でもう一か所の軍事基地構築を始めたらアメリカはどう対応するだろうか。

南シナ海対決へ向かうのか

  1. 7月12日の裁定結果前後に世界各地のアジアウォッチャーは多忙を極めるはずだ。アジア太平洋地区には不幸なことだが、その後に発生する事態で南シナ海の緊張はさらに高まるし、中国が選択可能なオプションを考えると、同時に中国の実力とここ数年にわたり中国が国際関係の現状を大きく変えようとしてきたこともあり、今後数か月にわたり緊張が高まることは避けられようにない。

Harry J. Kazianis is a Senior Fellow for Defense Policy at the Center for the National Interest and Senior Editor for The National Interest magazine. You can follow him on Twitter: @grecianformula.



2016年7月3日日曜日

★★歴史に残る機体④ F-4ファントムII




ドイツ空軍 F-4 Phantom 2013.年撮影  U.S. Air Force photo

The F-4 Is a Great Fighter With a Bad Reputation

Phantom jets overcame their flaws

by SEBASTIEN ROBLIN
マクダネル・ダグラスF-4ファントムIIは伝説の域に達した機体で、ヴィエトナム戦の象徴であり第三世代戦闘機の典型と言える。1960年代から供用開始し合計5千機が生産され、現在も数百機が現役で活躍する大型超音速戦闘機だ。
  1. ヴィエトナム戦での空戦実績から同機は大出力エンジン推力と時代遅れの武器技術にあぐらをかいた不器用な大男との印象が生まれてしまったが、これは不当な言い方だ。
  2. ファントムの欠陥は1970年までに修正され、エイビオニクスや兵装は近代的標準仕様に変わっている。この性能改修型ファントムはトルコやギリシャでF-15同様の役目をずっと低い費用で実施している。
スペインの射爆場で爆弾投下演習をする米軍F-4。1986年3月。U.S. Air Force photo

戦火の洗礼

  1. 1958年に登場したF-4は革命的な設計とされ、すぐに航空記録を塗り替える飛行性能を示した。
  2. 巨大なJ79エンジンを双発搭載する同機は今でも優秀な推力性能を発揮し、重い機体をマッハ2、時速1,
  3. 473マイルまで加速する。
  4. 初期型は最大兵装18,000ポンドで第二次大戦時のB-17爆撃機の三倍の搭載量だった。後席に兵装士官が乗りレーダー、通信、兵装システムを扱い、パイロットは操縦に専念できた。
  5. F-4は地上運用型、空母運用型があり、米空軍、海軍、海兵隊に採用された。三軍が同時に使用した戦闘機は同機の後はF-35まで現れなかった。
  6. 軽量MiG-17やMiG-21戦闘機と初めてヴィエトナムの上空で対決するとファントムは被害を受けている。
  7. 朝鮮戦争で米空軍は空対空戦で米側一機損失に対し6ないし10機の敵機を撃墜したが、ヴィエトナムでは2対1近くになっていた。
  8. F-4が最初に遭遇した問題は機関砲がないことで、兵装はすべてミサイルという想定で最新式レーダー誘導方式のAIM-7スパロウと熱感知式AIM-9サイドワインダー、そして旧式AIM-4ファルコンを搭載していた。
  9. 空軍が初期型ミサイルがとんでもない存在だと気づいていなかった。
  10. 研究成果によればヴィエトナム戦時代のAIM-7では45パーセント、AIM-9の37パーセントが発射時やロックオンで不良となり、各機は慌てて回避行動をとっていた。このため撃墜の可能性は各ミサイルで8%、15パーセントしか期待できなかった。ファルコンミサイルはもっと悪く、ペンタゴンはまず同ミサイルを実戦使用から外したほどだ。
  11. 北ヴィエトナム空軍のMiGは機関砲とミサイル(MiG-21の場合)を両方装備し、重いF-4を出し抜く飛行ぶりを示し、全速度域でF-4は敏捷さが不足していた。さらに米パイロットは近接ドッグファイト訓練を受けておらず、空軍は空対空戦はミサイルで長距離から行う前提だったのだ。
  12. さらにJ79エンジンは黒い排気煙を発生し、機体の大きさと相まって遠隔地から位置を簡単に突き止められた。その一方で交戦規則で米パイロットは有視界距離外では未確認機の撃墜が禁じられ、せっかくのミサイル性能を自ら減じていた。
米空軍のF-4GがAGM-45シュライクミサイルを発射。1988年8月。 U.S. Air Force photo

各種改良策

  1. だがそこからF-4の問題は解決されていく。空対空ミサイル技術は大幅に改良され、スパロウ、サイドワインダーともに性能が上がっている。F-4EではM161ヴァルカン砲を最初から機内に搭載した。
  2. 以前はガンポッドで機銃を運用したファントムもあったが射撃時にひどく振動が発生した
  3. 1972年にフィル・ハンドレイ少佐のF-4がMiG-19を機銃で撃墜したが超音速での機銃による撃墜で唯一の例となった。
  4. さらに空軍はF-4Eに主翼スラットを付け操縦性を大幅に改良し速度を若干犠牲にした。新型J79エンジンは初期の黒煙問題を解決している。
  5. これに対し海軍は早い段階で航空戦闘操縦訓練の不足が問題の根源と認識し、トップガン教程を1968年に創設している。海軍パイロットの撃墜記録の方が優秀で7機のファントムを喪失したが40機を空対空戦で撃墜している。
  6. 空軍のファントムは空対空戦で喪失33機で107機を撃墜し、海兵隊も三機を撃墜と公表している。だが三軍で474機が地上砲火で撃墜されたのは大型のファントムに対地攻撃任務も課せられていたためだ。
  7. さらに派生型二機種も登場した。RF-4写真偵察型は速度を武器とし、ワイルドウィーゼルは敵の地対空ミサイル攻撃に特化した機体だ。
  8. 米軍がF-4を作戦投入したのは砂漠の嵐作戦が最後で機体は1996年に退役しており、一部はQF-4標的無人機に改造された。

中東

  1. F-4は世界に広く普及した。イスラエルは同機を広く稼働し1969年からの「消耗戦」でエジプト、シリアを相手に116機を撃墜している。
  2. ヨム・キッパー戦(1973年)の初日にエジプト空軍のMiG28機がオフィル空軍基地を奇襲攻撃し、ファントムは二機しか緊急発進できなかったが7機を撃墜している。
  3. イスラエルのファントムの主要標的で一番恐ろしい敵はアラブの地対空ミサイル陣地だった。SAMでイスラエルはファントム36機を喪失した。
  4. そのイスラエルのファントムも1982年のレバノン介入が最後の戦闘機会となった。F-15やF-16の護衛を受けたファントムはベカー渓谷でシリアのSAM陣地三十か所を一日ですべて壊滅させたが一機も喪失していない。
  5. イランは革命前に米国からF-4を225機供与されている。その後イラクと9年間続いた戦争でイラン空軍の主力装備となった。イラクのMiGに対し優秀な戦績を残したといわれる。またイラク石油施設への長距離空襲を数回実施している。ただしイラン発表の空対空撃墜比率は疑問がついたままだ。
トルコ空軍のF-4E。2014年6月。Royal Air Force photo

21世紀のファントム

  1. ファントムは一部国でまだ供用中だが、いかにも常軌を逸している。F-15イーグルと比較してみてほしい。
  2. F-15は1975年に供用を開始した第四世代戦闘機のはしがけと言える機体で今日でも主要空軍部隊の主力だ。F-15では意図的にF-4との違いが加えられている。やはり大型双発で二名搭乗だが敏捷なドッグファイターになった。
  3. F-15と軽量F-16が初めて実戦投入されたのは1982年のレバノンで両機種でシリアの第三世代MiGを80機撃墜しながら喪失はゼロだった。
  4. 第四世代戦闘機の優越性が再び証明されたのが湾岸戦争で、イラク戦闘機が撃墜できた第四世代戦闘機はわずか一機(F/A-18ホーネット)で逆にイラクは第三世代機33機を失っている。ではF-4に新しい環境で生き残ることができるのだろうか。
  5. 答えは簡単だ。第四世代機と同じ新型ハードウェアを搭載すればよい。
  6. トルコ空軍とギリシア空軍のファントムには共に新しいパルスドップラー式レーダーが搭載され、「ルックダウン・シュートダウン」性能が実現した。これまで高高度からのレーダー観測では抵抗う飛行中の航空機の捕捉は困難だった。レーダー波が地上から反射されるクラッターが原因だ。アクティブドップラーレーダーはクラッターを減らす。
  7. 今のF-4は各種新兵装の運用が可能となり、AIM-120 AMRAAM空対空ミサイルは射程65マイルで、AGM-65マーヴェリック精密誘導兵器やスパロウやサイドワインダーの後期改良型も搭載した。
  8. これでF-4も第四世代機のF-15やSu-27と同等の兵装運用性能を手に入れたことになる。
  9. 電子装備や計器類は旧式なままではない。近代化改修を受けたF-4はヘッズアップディスプレイも搭載しており、パイロットは計器盤をいちいちチェックしなくてもよい。
  10. ドイツは改修型F-4Fを2013年まで稼働させたが、現在は非常時に備え機材を備蓄している。韓国はF-4Eに中程度の改修を加え71機運用中だ。日本はF-4EJ改にパルスドップラーレーダーと対艦ミサイルを搭載した。.
  11. 改修ではイスラエルが1980年代にファントム2000クマス(大槌)で先鞭をつけている。すでにイスラエルでも同機は2004年に退役しているが、イスラエル企業はギリシアのピース・イカルス・ファントム41機にANPG-65パルスドップラーレーダーとAMRAAMミサイル運用能力を与える改修作業を実施した。
  12. イスラエルはトルコ機ターミネーターも改修し主翼ストレーキの追加で操縦性を向上している。.延長20キロの配線を取り換え1,600ポンド減量に成功している。またセンサーと電子装備も近代化している。兵装ではペイヴウェイ爆弾、HARM対レーダーミサイル、また射程48マイルのポパイミサイルの運用が可能となった。
  13. ターミネーターは対地攻撃が主任務で評判の悪い任務にも投入されてきた。クルド人抵抗組織PKK戦闘員をトルコ国内とイラクで空爆している。その間にRF-4偵察機がシリアで撃墜され2015年にはF-4が三機墜落しているため、トルコのメディアでは「空飛ぶ棺桶」の異名がついた。
  14. イラン空軍によれば2009年時点でF-4D、E型あわせて76機が稼働中でRF-4も6機あった。イランはロシアや中国製の対地、対艦ミサイルの運用のため機材を改修したといわれるが、空対空ミサイルではAIM-7スパロウの中古品が中心だ。また補修部品も密輸により確保しているのはF-14トムキャットと同じだ。
  15. イランのファントムもイスラム国の空爆に2014年12月に投入されており、現在もペルシア湾上空で米軍偵察機や無人機と追いかけっこをしている。
  16. だが強化したとはいえF-4が本当に第四世代機と互角に戦えるのだろうか。21世紀に入ってファントムの空戦記録はないがギリシアのF-16とにらみ合いをしたファントムはある。また演習だが中国のSu-27と模擬空戦をし0対8の結果で勝っている。
  17. また主翼スラットを装着したF-4が180度方向転換をする画像を見ると、F-15と比べると両機種とも旋回を終えるのにともに7から8秒で差がないことに気づくはずだ。ただしF-15の方が制御は容易にできている。
  18. だからと言って改修F-4がその後登場した機体より優秀というわけではない。これだけの重量の機体を操る性能として第四世代機並みというだけだ。
  19. ファントムは長年にわたり性能とともに順応性を発揮してきた。初飛行の1958年にまさか同機が60年近くも第一線で活躍すると想像できた人は少ないはずだ。■



2016年7月2日土曜日

★★警戒すべき中国軍の五大装備



中国の兵器体系がどの位正確に機能を発揮するかよりもその配備を進める背景に運用をためらわない意思があること、旧式装備でも数にものを言わせる飽和攻撃をする姿勢、さらに潤沢な資金で着実に新型装備が増えていることに注意が必要です。

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5 Chinese Weapons the US Should Fear

KYLE MIZOKAMI
Yesterday at 12:44 AM


  1. この二十年で中国は世界規模の軍事大国として台頭してきた。三十年前の人民解放軍は時代遅れの装備で人力を豊富に投入する「人民闘争」を主眼としていた。その間に海軍は沿岸部隊から大洋部隊に変身し、空軍は第五世代戦闘機を開発するに至った。陸軍も大幅に近代化している
  2. 多数の新型兵器が中国で開発中で、一部装備は要注意だ。
  3. 周辺国や米国は中国の武力増強に懸念を覚えている。中国は軍事力投射で東シナ海、南シナ海の紛糾を解決しようとする姿勢が顕著だ。装備整備で自信をつけた中国が自国主張を通すため躊躇せず兵力を動員すれば事態は域内危機にエスカレートし、あるいは深刻に拡大し米政府の介入を招きかねない。
  4. 中国も対米戦の可能性を意識して、米軍を照準に入れた兵器体系開発に注力しているが、戦闘は中国本土近辺にとどめたいとの意向がある。この発想が「接近阻止領域拒否(A2/AD)の整備につながり、中国が想定する一番本国寄りの防衛線いわゆる第一列島線の内側に米軍を侵入させまいとする。千島列島から日本、台湾、フィリピン、ボルネオを結ぶ線だ。
  5. 米中戦争の可能性は少なく、双方が戦闘を望んでいないのも確かだが、国益が衝突すれば戦闘になる可能性もある。この事を念頭に米国が最も警戒すべき中国の軍事装備トップ5は以下の通りだ。

DF-21D 対艦弾道ミサイル

  1. アジア太平洋に展開する米軍部隊にとって一番危険なのは東風-21D対艦弾道ミサイル(ASBM)である。DF-21Dは米空母攻撃用に設計され極超音速で米海軍の防衛網を突破する想定だ。
  2. DF-21Dは地上発射式で推定有効射程は1,500 km以上。本体から切り離される再突入体はマッハ10から12で飛翔する。その速度と運動エネルギー、さらに再突入体の弾頭部分が加わり、米海軍最大の空母でも相当の被害は免れない。確実ではないがDF-21Dの直撃を受ければ空母は戦闘能力を喪失するか沈没するといわれる。

  1. 車両式発射台に乗るDF-21Dは道路移動するので発射前の位置探知は極度に困難だ。再突入体の極超音速飛翔速度は迎撃が困難だが不可能ではない。
  2. DF-21Dのアキレスけんはいわゆる「キラーチェーン」のセンサー、中継局、指揮命令所で空母を探知、識別の上追跡するため必要な一連の装備だ。DF-21Dの打ち上げを成功させるためには多くのリンクが必要で、そのうち一つを切れば全体が機能しなくなる。
  3. 空母を沈めようとすれば中国は偵察機材多数を投入する必要があり、海上偵察は中国の得意分野ではない。陸上配備の水平線越えレーダーでは精度が落ち、海上監視機、UAV、潜水艦は空母航空隊の格好の餌食だ。唯一衛星群が空母追跡データを得られるが、妨害やその他機能を停止させる手段はある。
  4. DF-21Dの試射は013年早々に行われたようでゴビ砂漠に描いた空母形状の輪郭内にクレーター二個が見つかっている
  5. DF-21Dは実戦化されているようだが、キルチェーンの完成はまだで、システム全体が機能し始めるにはまだ数年かかりそうだ。それでも5,600名の命、艦載機70機を一度に抹消し、米兵力投射の主柱を奪いかねない最悪の事態をあらかじめ熟考しておく必要がある。

成都J-20戦闘機
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  1. 中国初の第五世代戦闘機J-20は大型双発機でまだ開発段階だ。その任務は不明だが設計上の特徴から各種任務が可能なようだ。長距離高速移動し低視認性の特徴を生かすのだろう。試作用3機が生産されており、2020年ごろの就役と見られる。
  2. デルタ型主翼に前方カナードが加わり双尾翼のJ-20は中国でもっとも野心的な設計だ。AESAフェイズドアレイレーダーや電子光学式目標捕捉システムを搭載すると思われる。機内大型兵装庫は二つあり、空対空、地上攻撃用、対艦の各ミサイルを格納できる。.
  3. J-20で想定する任務の中では航空優勢戦闘機としての役目が一番だ。長距離飛行性能が意味するのは中国沿岸部からさらに遠方に展開して米戦闘爆撃機やB-1、B-2といった爆撃機の迎撃だ。また長距離性能を生かして防空識別圏を設定した地域のパトロールも可能だ。

  1. また米支援機材を狙うことが可能だ。E-3セントリーやE-2CホークアイAWACSやKC-135、KC-130給油機は米軍の長距離作戦実施に不可欠な機材だ。長距離空対空ミサイルを搭載したJ-20は支援機を撃墜し、米軍同盟国軍の作戦能力を低下させるだろう。
  2. もう一つの可能性が米艦船や基地の攻撃だ。レーダー探知を逃れるJ-20に対地攻撃ミサイルを発射させ通常型弾頭付き弾道ミサイル攻撃に先立ち米側の地対空ミサイル陣地を破壊する他、レーダー施設、指揮命令所を攻撃する。この攻撃で米側防衛体制を制圧し続く弾道ミサイル攻撃の道を開くのだ。
  3. 時が来ればJ-20がどの方向に投入されるかわかるはずだ。J-20の使用用途が不明のままというのは戦闘機で20年のリードがあるとはいえこちら側世界では不安を招くため好ましからぬ事態だ。

衛星攻撃手段

  1. 長年にわたり米軍に大きな優位性を与えているのが宇宙配備軍用衛星群だ。アジア太平洋では米大陸部から距離が相当あることからその価値は大きい。
  2. 中国には少なくとも一種類の実用衛星攻撃兵器SC-19がある。DF-21の派生型でKT-2(運動破壊手段)を弾頭に装着して発射し、KT-2は赤外線誘導される。KT-2弾薬を積まず敵衛星に衝突させて破壊する。
  3. 2007年に軌道上の中国旧式衛星に衝突破壊したのがKT-2で、2013年には中国が「観測ロケット」と称し高高度実験装置を搭載したロケットを打ち上げているが、これが実はSC-19/KT-2運用テストだったと米情報機関筋は見ており、SC-19は中地球軌道まで到達可能と見られる。この高度の軌道に米GPS航法衛星群があり危険が生まれる。

  1. 中国のASAT兵器体系は米衛星のうち情報集衛星、通信衛星、航法衛星を狙う。こうした衛星が使用できなくなると中国を上空から監視偵察するのが困難となり、各種航法の精度が落ち、通信効率が低下するほか、GPS誘導兵器が作動しなくなる。
  2. 中国はSC-19を自走車両に搭載し、移動発射させるようだ。中国の舗装道路延長は1.86百万キロで、移動式ASATの捕捉撃破は極めて難しいだろう。
  3. ASATを紛争に投入すれば国際非難が中国へ向くのは避けられないが、米軍が衛星に依存しているため第一撃を宇宙に向ける誘惑は抑えられないはずだ。

071型揚陸艦
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  1. 兵力投射の重要性は中国で増大している。とくに東シナ海、南シナ海で部隊揚陸能力が整備され、尖閣諸島、パラセル、スプラトリーで中国指導部が実施の意を強くしている。
  2. 071型揚陸強襲艦は三隻、長白山、崑崙山、井岡山が就航中だ。各艦は西側が中国版の「ゲイター部隊」として海兵隊を輸送揚陸させ敵前上陸が狙いだとする。さらに三隻の建造が見込まれ、米ワスプ級に匹敵する全通型飛行甲板を有する揚陸艦6隻が続く。
  3. 建造元は上海の滬東中華造船で071型は排水量2万トン、全長700フィートの艦容を誇る。海兵一個大隊400名から800名と装甲車両18台を搭載する。
  4. 飛行甲板でW-9兵員輸送ヘリを二機同時運用し、格納庫にさらに4機を収納できる。ドック型格納庫に揚陸艇とともにLCACと同等の兵員輸送ホーバークラフト4隻も搭載できる。


  1. 071型揚陸輸送艦は南海艦隊に配備され台湾侵攻も狙うが中国海軍は即座に用途を転用することが得意だ。各艦は指揮統制用、災害救難人道援助用にも使える。四隻のうち長白山は現在インド洋に展開中でマレーシア航空370便の機体回収任務についている。
  2. 長白山一隻なら脅威にならないが、遠征展開能力が中国に整備されてきたことから島しょを巡る対立が深刻事態に発展する可能性が出てきた。

サイバー攻撃作戦

  1. 人民解放軍は「電子優位性」を開戦直後に確立すれば勝利につながると考えている。今回取り上げた五つの兵器体系のうち、サイバー作戦が最も謎に包まれた攻撃能力だ。
  2. サイバー攻撃の手段は多様で、心理作戦から敵装備・インフラの攻撃まである。中国の電子部隊は優位性を確保すべく通信を支配したり、有害ソフトウェアを送り、あるいはオンラインで偽情報を発信してくるだろう。サイバー攻撃は典型的な軍事作戦と一緒に実施すると効果が最大化でき戦線の追加につながる。サイバー作戦で敵のコンピュータネットワークを使用不能にしたり、通信妨害が先行すれば次に航空機やミサイル攻撃が続くと考えてよい。
  3. 通常の軍事作戦では有効範囲が制約条件となるがサイバー攻撃では地理と関係なく敵攻撃が軍民間問わず可能だ。また今回取り上げた兵器体系で唯一米本土の攻撃が可能なのがサイバー攻撃だ。
  4. 中国でサイバー部隊の中心は参謀本部第三部のようで米国家安全保障局に匹敵する。第三部の人員は130千名規模と見られ、各軍、各作戦局、研究機関に分散配置されている。また米国内の作戦を担当する31398部隊の存在が判明している。
  5. Project 2049によれば参謀本部第四部門が通常の電子戦情報収集にあたる一方でサイバー攻撃にも関与しているようだ人民解放軍の「統合電子戦ネットワーク」の概念では敵コンピュータの妨害と戦場電子装備のジャミングを想定しているのが明らかだ中国ではサイバーを通常の電子戦と一体で考えるが米国にはこの発想はない
  6. これだけの人員を投入しながら、中国のサイバー能力はまだ低いようだ。例えばスタックスネットのようなサイバー攻撃手の運用能力があるとの証拠はない。中国指導部もこれを意識し「先制攻撃戦略」で洗練されないものの効果的に敵を開戦直後に攻撃する発想と見る専門家もいる。
  7. インターネットやネットワーク技術で米国は最先端だが、開発の速度が速く状況は変化していく。サイバーと電子戦は米軍と米国内に入り込み、将来の戦闘では敵はサイバーを活用するだろう。

結語

  1. 米中開戦の可能性は当時の米ソ開戦よりも低いといってよい。冷戦時よりも超大国間の戦争は発生しないはずで特に米中両国は相互経済依存を高めている。その中国が今回取り上げた兵器体系を開発しているのは偶然ではない。中国の観点では米国戦に今から備えておくのは論理的な選択肢だ。
  2. 今回取り合げた兵器体系五つは戦争の可能性を引き上げる。一方で中国に周辺各国および米国との協調を進めさせるる自信の裏付けとなる。各国は中国が主張を取り下げるよう期待するが、反対に新たな火種が生まれるかもしれない。今やボールは中国側に握られているのだ。■


カイル・ミゾカミはサンフランシスコを本拠に活動する記者でDiplomat,、Foreign Policy War is Boring The Daily Beastに寄稿している。2009年に自身でJapan Security Watchブログを立ち上げた今回はNational Interestで初寄稿となった