2016年8月4日木曜日

★★RANDが予測する米中戦の壊滅的結果

ここにきて米中開戦想定の記事が米側に増えています。中国国内ではなぜかKFCが襲撃を受けたりと民衆はアメリカへの反発を短絡的に示す一方、解放軍は動きを示していません。中国軍は共産党の機関であり、一部が言うような軍の暴走は考えにくいです。党の指示で機能する組織です。その共産党は今後100年の統治を想定しているはずで、今回の法廷決定を無視するのも大計に立った計画をしているからでしょう。西側が短絡的な動きを示せば北京の思う壺では。


New Report Details Why a War between China and America Would be Catastrophic



August 1, 2016


  1. 米中両国が開戦すれば両国に相当の被害が発生するが、今開戦となれば中国の損失の方が大きい。ただし中国が進める接近阻止領域拒否(A2/AD)整備で、中国有利が2025年に生まれる。それでも中国は米側より相当大きな被害を被るとRANDコーポレーションの最新研究成果が述べている。勝者は誰なのかあいまいになるのは軍事衝突は終わりなき人命損失へ悪化していくからだ。
  2. 「米側の軍事優位性が減少する中で作戦案が実現するか米国にも自信がなくなる」とこのたび出た報告書(David C. Gompert, Astrid Cevallos and Cristina L. Garafola)にある。「中国の交戦能力、特にA2ADが強化されると米国は主導権を握れず、中国防衛網の突破が困難になり、決定的な勝利は得られなくなる」
  3. 中国と開戦となれば戦場は海空が舞台となりそうだが、サイバーおよび宇宙装備が大きな意味を有すると報告書は述べる。RANDは通常戦のままと予測している。「両国とも部隊を広範囲に配備し相互に捕捉追跡し攻撃する能力が高いので西太平洋全体が戦闘地帯になり重大な経済的影響が発生する。」「核兵器使用は考えにくい。損害が極度に多い通常戦でも両陣営ともに核兵器の先制使用による放射能のリスクを恐れるはずだ」
  4. RANDは米国が中国本土を重点的に攻撃する前提としたが、研究員は中国の米本土攻撃手段はサイバーだけを想定した。「中国がサイバー除き米本土を攻撃できるとは考えにくい。中国の通常兵器能力に制約がある」とし「対照的に米国は中国国内の軍事施設を広範囲に攻撃するだろう」
  5. 米中戦は短期集中戦から長期にわたる消耗戦まで多様な形で勃発する可能性がある。双方が先制攻撃の誘惑にかられるはずだ。「センサー技術、兵器誘導技術、デジタルネットワーク他の情報技術で敵軍を捕捉できるので米中が相互に深刻な被害を与えられる」と報告書にある。「このため先制攻撃の手段と動機が生まれる。半面、開戦で双方とも深刻な損害を受ける恐れがあり、軍事的損失や経済費用が発生しても両国とも継戦能力が相当ありともに一方的な主導権は握れないだろう」
  6. 今日の時点なら短期戦も米側は相当の損害を受けるが、中国の損害は壊滅的規模になる。「米中いずれかの指導部が軍に猛攻撃を命じれば、きわめて大規模な戦闘となる」とし、「2015年なら米側の水上艦艇と航空機の損害は空母大破、空軍基地各地の能力喪失と甚大だが、中国の損失は本土でのA2AD体制の破壊含みはるかに大規模になる。数日内に開戦当初の低い米側損失も戦闘継続で拡大するのがわかるはずだ」
  7. 2025年までに中国軍事力はさらに拡大し、多大な損失は甘受できなくなる。「2025年までに米側損失規模が拡大するのは中国のA2ADの拡充によるところが大きい。中国側の損失は一定規模に収まるが、それでも米側損害を上回る。戦闘が長引けばどちらが勝利したか微妙になる」
  8. 長期戦なら損害ははるかに拡大し、両国の残存部隊は悲惨な形になるだろう。「2015年時点でも長期かつ深刻な戦闘が続けば、中国有利と予想される。2025年になると初期戦闘の不明瞭な成果から両陣営ともに大損害が発生することを知りながら戦闘を継続するだろう。そうなると米軍が勝利を収める可能性は現在より低くなるとはいえ、そのまま中国が勝利を収めることには結びつかない」
  9. 上記の場合では人命損失と経済被害が相当発生し、両陣営とも軍備を消耗するかもしれず、ともにその他国の脅威に無防備となる。「米中両軍が目標捕捉と攻撃を行う能力は前例がない規模なので、数か月で装備を使い果たす」とし、「当然両陣営とも補充しながら部隊立て直しを国力を賭けて競うだろうが、要素が多すぎ結果予測は困難だ。とはいえ費用だけ確実に上昇する」
  10. RANDは開戦リスクを下げるため以下提言をしている。


  • 米中の政治指導層トップは即時攻撃による相手陣営破壊以外の軍事選択肢を確保すべきだ
  • 米指導層は中国側と意思疎通手段を確保し、紛争激化の前に事態を鎮静させるべきだ。
  • 米国は中国のA2ADへの攻撃が自動的な実施にならないよう戦闘激化の予防策を作っておくべきだ。「フェイルセーフ」の仕組みを整備すれば軍事行動の前に政治面の承認が必須となる
  • 中国のA2AD効果を減らすため、米国は残存性の高い装備(例 潜水艦)やA2AD対抗装備(例 ミサイル)の開発に注力すべき
  • 米国は主要同盟国と緊急対策案を練るべきだ。特に日本が念頭
  • 戦闘に勝利しても破滅的な結果になると中国に認識させる必要が米国にある
  • 大規模戦を想定し継戦能力増強の必要が米国にある。
  • 開戦後に中国が重要資源や技術を入手不可能にする方策が米国指導層に必要
  • 中国から重要製品の輸入が途絶しても影響緩和する方策が米国に必要
  • A2ADに対抗し米陸軍は陸上配備装備を拡充すべきで、東アジアの米側各国(特に日本)へ防衛力増強、相互作戦能力向上を求め、米中軍事組織間の相互理解、協力へも支援を求め誤解や誤算による危険事態発生を防止する


  1. 戦争が米中双方の利益にならないのは自明の理とは言え、一方の防衛力整備が他方を不安にさせる「トゥキデテスの罠」が発生する。高名なハーヴァードの政治学者の権威グラハム・アリソンが著している。トゥキデテスの罠ではごく普通に行うことが大規模交戦のきっかけになる。台頭する側が既存支配に挑戦すれば、通常なら制御できる危機が雪崩のような反応を呼び、双方が望みもしなかった結果が発生する。アリソンは「戦争は不可避」とアトランティック誌で言い切っている。■
Dave Majumdar is the defense editor of The National Interest. You can follow him on Twitter @DaveMajumdar.

2016年8月3日水曜日

北朝鮮がノドンミサイルを発射し、秋田沖に着弾させた狙いは何か


暴走が止まらない北朝鮮ですが、制裁措置に効果がないことは明らかです。もっと効果のある対策が出てくると思いますが、当面何ができるでしょう。ミサイルの効果を否定するTHAADやPAC3の体制強化がひとつ。さらに都知事戦候補の一人が言っていたようにパチンコを規制することも本当に有効なら実施すべきです。日本が同国の資金源になってはならないでしょう。

Latest North Korea missile launch lands near Japan waters, alarms Tokyo

SEOUL | BY JU-MIN PARK AND JAMES PEARSON


北朝鮮は3日弾道ミサイル発射し、一発が日本の経済専管水域内あるいはその外側に着弾し、国連安全保障理事会決議を再度破った。
  1. ミサイル本体は日本の排他的経済水域内に落下したと日本の防衛省関係者は述べ、域内の緊張がさらに高まる。
  2. 発射されたのはノドン中距離弾道ミサイルのようで、1,000キロ飛翔したと韓国参謀本部は発表。
  3. 安倍晋三首相はミサイル発射は日本への「深刻な脅威」で日本政府は「強く抗議する」と述べ、追加発射に備え自衛隊を警戒態勢に置いた。
  4. 米国務省報道官は発射を非難し、「国際社会からの対応措置が一層強化される結果になるだけ」と述べた。
  5. 米戦略軍からはミサイルは二発探知し、うち一発は発射直後に爆発したと発表があった。
  6. 日本海まで到達したミサイルは日本時間午前7:50で平壌南西にある黄海南道South Hwanghae から発射されたと韓国統合参謀本部が発表した。
  7. この発射で北朝鮮に「隣接国を広範囲で直接攻撃する狙いがある」のは明らかで「韓国では港湾、空港等が標的になる」と同本部は述べた。
  8. 今月後半に米韓両国が大規模な毎年恒例の演習を行う。演習自体は防衛的な性格で挑発の意図はないとしているが、北朝鮮は演習の度に抗議するのが通例で、侵攻の事前準備だとする。
  9. 7月19日には北朝鮮は東海岸から弾道ミサイル3発を発射し500キロから600キロを飛翔させた。
  10. また米韓両国は高性能最終段階高高度地域防衛THAADミサイル迎撃装備の韓国内展開で前月に合意し北朝鮮は「物理的対応」すると脅かしていた。
  11. 北朝鮮は1月に第四回核実験と長距離ロケット発射を翌月に行い国連安全保障理事会の制裁措置決議を3月に受けた。
  12. 1月の核実験から朝鮮半島の緊張は高いままになっている。南北両国は1953年の朝鮮戦争休戦後は技術的には戦闘状態のままだ。■

2016年8月2日火曜日

★F-35AのIOC迫る 

IOC Tomorrow? F-35A Kills First Drone: ‘Boola Boola’

By COLIN CLARKon August 01, 2016 at 5:18 PM

F-35 Fires AIM-9X
WASHINGTON:. F-35が真価を発揮し移動目標の捕捉、照準、撃破に7月28日成功した。
「目標を撃墜するまで真の戦闘機ではないといわれるが、今回AIM-9Xを発射してこの関門を通過しました。撃墜に成功して米軍、同盟諸国が導入するF-35の戦闘能力が実証されました」と米空軍テストパイロット、レイヴン・ルクレア少佐の発言が本日午後発出の声明文に出ている。
同声明文では「テストデータおよび観測によりF-35が標的の無人機を搭載センサーで捕捉し、標的の航路情報をミサイルへ送り、パイロットが標的情報をヘルメット搭載ディスプレイ(HMD)で照準外の敵を撃破する能力を実証する形でAIM-9Xを発射し標的無人機を攻撃した」としている。
声明文を発出したJSF推進室は米空軍によるF-35Aの初期作戦能力獲得宣言が早ければ8月2日にも出ると見ている。ただし公式予告は出ていない。■

2016年8月1日月曜日

B-1を10年ぶりにグアムに配備し、中国をけん制する米太平洋軍


B-1 Bombers to Patrol Skies from Guam

The Honolulu Star-Advertiser | Jul 31, 2016 | by William Cole

http://www.military.com/daily-news/2016/07/31/b-1-bombers-patrol-skies-guam.html
A B-1 Bomber sits on the flightline at Ellsworth Air Force Base, South Dakota. (US Air Force/Zachary Hada)
エルスワース空軍基地に駐機するB-1爆撃機。 (US Air Force/Zachary Hada)
The Honolulu Star-Advertiser | Jul 31, 2016 | by William Cole
  1. 太平洋空軍からB-1B爆撃機隊がグアムに10年ぶりに展開するとの発表があった。
  2. 今回の動きは中国が南シナ海に爆撃機、戦闘機を飛行させると公言していることへの対抗策だ。
  3. B-1は低レーダー断面積を有し時速900マイル以上で飛行でき「迅速な地球規模攻撃能力を実現し、抑止力の実効性を高め、同盟各国への安心感、地域内安全保障と安定の強化につながる」と太平洋軍(司令部ハワイ)が発表。
  4. 機数不明のB-1部隊は8月6日にアンダーセン空軍基地に移動し、ミノット基地(ノースダコタ)所属のB-52爆撃機隊と交代する。B-52隊は太平洋軍の連続爆撃機運用体制の一環でグアムに駐留していた。
  5. B-1爆撃機隊には300名がエルスワース空軍基地(サウスダコタ)から随行する。
  6. B-1が太平洋に配備されるのは10年ぶりだ。
  7. グアムからB-52隊は国際空域の飛行の自由を守り、中国による主権の拡大主張へ反論してきた。
  8. 国際仲裁法廷が中国による南シナ海大部分の領有主張を棄却したが中国はこれを無視している。
  9. 2013年末にはB-52の二機編隊が東シナ海上空に派遣され、防空識別圏を設定し侵入時に許可をもとめた中国を公然と無視した。米国は同空域は国際空域としている。また南シナ海上空へもB-52が飛行している。
  10. フィリピンにはA-10サンダーボルトIIの5機、EA-18グラウラー電子攻撃機4機をフィリピンに配備したこともあり、米国はオーストラリアと長距離爆撃機の配備を協議中だ。■

★★★米海軍の次世代戦闘機構想を妨害しているのはパイロット集団の閉鎖的思考だ

UCLASSなど革新的な無人機構想をことごとく廃案にしてきたのは海軍航空士官をトップとする組織内圧力団体であると判明しました。今回の記事の情報源はそのヒエラルキーに煮え湯を飲まされている向きなので多少割り引く必要がありますが、海軍の次期主力戦闘機がスーパーホーネットの焼き直しとなっては意味がありません。米海軍からステルス性重視はもうしないとの姿勢が示されていた背景にはこんな考えもあったのですね。そうなるとF-35Cを継子扱いするのもうなづけるところです。米空軍との共同開発など全く可能性がありません。


The National Interest



US Navy's Sixth-Generation F/A-XX Fighter: Just a 'Super' Super Hornet?

July 26, 2016


  1. 米海軍には2030年代以降の脅威環境の中で空母搭載戦闘機を運用構想で一貫した考えが欠乏しているようだ。National Interestが各種筋に聞いたところ海軍のF/A-XXでは接近阻止領域拒否A2/ADや新世代の敵側軍用機がいる中では対応できないことが判明した。その一方で海軍はF-35Cの効果には懐疑的なままだが、同機が時代の要求内容のほとんどに応える唯一の機体となる。
  2. 「将来の空に高性能地対空ミサイルのS-300やS-400が登場する予想の中で海軍航空兵力でこれまでの流れに固まった思考の先へ進む必要があるでしょう」と新アメリカ安全保障センターの国防戦略評価事業をまとめるジェリー・ヘンドリックスは述べている。
  3. 脅威は確かにあるが米海軍はロッキード・マーティンF-35C共用打撃戦闘機の空母配備は少数に留めて2030年代を迎える。海軍に近い筋の話では単発の同機の性能には海軍はもはや不安を感じていないが、ペンタゴンのN98航空戦部は海軍航空システムズ本部(NAVAIR)とともに同機の価格に高い懸念を示しているという。「あまりにも短絡的な見方だと思いますよ。価格水準が期待通りに下がっていないので気にしているのです」とその筋は語る。「新型機一個飛行隊は10機構成でホーネット飛行隊12機より少なくなるのは予算が足りないからだと言っています」
  4. ヘンドリックスによれば問題は単純だ。空母の予算項目が残っていても新型機が非常に高価になれば機体は多数導入できなくなる。「予算が増えない状況で追加の財源もないと機数を減らすしかないでしょう」
  5. F-35Cの機体価格が高いため、海軍もできることなら共用打撃戦闘機開発から抜けたいところだと消息筋も認める。理想的なのはF-35Cは避けて直接F/A-XX実用化を目指すことだ。「F-35Cが遅れればニーズに合わせて作れるF/A-XXが手に入ると海軍は考えている」と消息筋は語る。「だが今のところF/A-XXは絵に描いた餅で、しかもDOD(国防総省)上層部から却下されたのです」
  6. 外部専門家にはF/A-XXを超音速巡航、ブロードバンド全方位ステルスの第六世代戦闘機あるいは新型長距離無人ステルス爆撃機になるとの意見が多いが、海軍の考えるF/A-XXはもっと平凡だ。海軍はF/A-XXを有人機想定としてだけでなく、F/A-18E/Fと比べてもレーダー断面積、航続距離を除けば大きな性能差は想定していない。「海軍が目指すのはF/A-18そっくりの機体で若干きれいに近代化した機体です。スーパー・スーパーホーネットですね。S-300やS-400の配備地点では運用不可能です。RCSが対応していませんからね」
  7. この妙なF/A-XXコンセプトの背景にスーパーホーネットのパイロット、ウェポンズシステムズ士官の一団がF/A-18ロビー団体になっていることがある。「スーパーホーネット・ロビーは海軍航空隊の伝統を体現しているのです」と前の消息筋は語る。「ボーイングにも近く、結局ボーイング好みの設計に戻してしまうのです」
  8. 海軍の航空部門がDOD上層部のみならず海軍長官レイ・メイバスからも圧力を受けている理由に F/A-XX設計を極度に保守的に考えており、F-35Cより相当低い性能で想定している点があると消息筋は語る。国防総省特にロバート・ワーク副長官はメイバスとともに高性能の長距離ステルス爆撃機を想定していたのだが、スーパーホーネット・グループはこれが気に入らない。
  9. 同じ消息筋によればスーパーホーネット・グループはまず無人空母発進偵察攻撃機(UCLASS)構想を葬り去ったが消息筋は敵地奥深くまで侵攻できる無人機が出現すれば戦闘攻撃機部隊の地位が脅かされるためと解説した。「要は自分たちの地位を正当化しているのです」
  10. だが国防総省と海軍長官は繰り返し長距離攻撃能力整備の方向性えを示し、スティングレイ空母搭載自律給油機という隠れ蓑で結局実現することになった。「海軍航空部門は少なくとも二回、主張を拒絶されている。しかも同じ内容を提案して」と消息筋は語る。「F/A-XXはまるでスーパー・スーパーホーネットにしか見えません」
  11. 国防総省の反対意見を受けて海軍省は海軍航空戦力の将来像の決定をクリントンあるいはトランプ政権誕生後まで意図的に先送りしている。「現政権の任期が終われば予算割り当て増を期待し、F/A-XXを差し出すか、F-35の購入を終了して本当に海軍が欲しいものを手に入れるのではないか」と消息筋は述べる。
  12. その反面、空母航空隊主力は2030年代中盤まで第四世代のボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットのままだ。スーパーホーネットで2030年代の脅威環境に対応できるのかとの問いに海軍航空システムズ本部は「NAVAIRによる分析とNAWCが2030年代のA2/AD想定環境での課題、制約、作戦能力要求を定義しようといています。さらにOPNAVでは将来必要となる性能を優先順位付けしています」との声明文を送ってきた。「海軍は今後も空母航空部隊各機で必要な性能とともに敵装備の性能も併せて検討してロードマップ並びにフライトプランを作成し技術成熟化、導入、展開を目指し有効な戦力を2030年代でも確保します。NAVAIRはOPNAVと連携して機種別の将来投資計画を作成します。F/A-18、EA-18G、E-2C/D、JSFなどが対象です」
  13. ブライアン・マグラスはフェリーブリッジ・グループ海事コンサルタンシーの経営幹部で、空母航空隊は2030年でも現在と大差ない陣容にと述べており、少数のF-35Cが高度防空体制空域で飛行するのが違いと見る。「スーパーホーネットは今と大差ない任務についているでしょう。厳しい環境ではステルス攻撃機F-35Cの出番となり、航空隊はシステムとして機能する必要がありますので、グラウラー隊がジャミングでスーパーホーネット隊に活躍の機会を作るでしょう」「今後15年で精密長距離攻撃兵器が標準となるはずです。スーパーホーネットはスタンドオフ攻撃機になります」
  14. ブライアン・クラークは戦略予算評価センター(CSBA)の主任研究員で海軍統合火器管制対空(NIFC-CA)システムが2030年代以降の空母航空作戦でカギになると見ている。オプションの一つとして「F-35CあるいはBをステルスISR機材として投入しパッシブで敵目標を探り、安全なデータリンクでF/A-18E/Fの『ミサイルトラック』がスタンドオフ地点に待機しているところへ連絡する」ことがあるという。ただ「今日と同様にF/A-18E/FがE/A-18Gの保護の下にスタンドオフ兵器攻撃を行うこともあるが、F-35Cもジャミング機材として使えるだろう」と述べる。
  15. さらに海軍はMQ-21スティングレイ無人給油機を「ISR機材として標的情報を安全にデータリンクでF-35Cへ送り、F-35CはC2センターとして攻撃対象を各機に割り振ることもできるはず」とクラークは言う。もし海軍がF/A-XXをF/A-18E/F退役後の穴を埋める機材として見ているのであれば、スーパースーパーホーネットがNIFC-CAの仕様に適合した形になっていてはじめて意味が出てくる。NIFC-CAではE-2D高性能ホークアイからイージス巡洋艦駆逐艦まですべてを結ぶ。
  16. それでも問題は海軍が将来の空母航空部隊がA2/AD環境でどう戦うべきかの明確な答えをまだ準備していないことだと消息筋はいう。「海軍航空部門は長期的な視野で考えることを拒否し、脅威環境も同様に考えていないのです」と消息筋は述べ、「もう将来の脅威環境ではないですよ。現在の脅威環境です。もしロシアがA2/ADのバブルをシリアに広げたら、もしS-400をシリアに投入したら、F/A-18ホーネットでは対抗できなくなります。つまり海軍は東地中海から締め出されることになりますね」■


Dave Majumdar is the defense editor of The National Interest. You can follow him on Twitter @DaveMajumdar.

もし戦わば① 駆逐艦ズムワルト 対 巡洋戦艦キーロフ

キーロフ級は排水量24千トン、ズムワルトは15千トンです。


Navy Zumwalt Destroyer vs Russian Battleship - Could the US Navy and Russian Wind Up in Combat on the High Seas?

KYLE MIZOKAMI
3:49 AM

  1. ズムワルト級新型駆逐艦とロシアの巡洋戦艦が戦闘したらどちらが勝つか。両艦が公海上で対決する仮定で、それぞれの対艦ミサイルのうち最大射程の300マイルの距離があるとしよう。キーロフ搭載グラニットミサイルの有効射程だ。両艦とも相手の位置は把握していない想定で、その後突き止めるとする。キーロフにはレジェンダ・レーダー衛星システムがあり、ズムワルトはステルスでレーダー上ではちっぽけな漁船のように映る。
  2. まず両艦とも必死に相手を探るだろう。ヘリコプターで水平線の先を探索させる。この状況ではステルスのズムワルトに圧倒的な優位性があり、ズムワルトのヘリコプターがキーロフをまず発見すし、位置データを母艦に送る。キーロフも米ヘリコプターを探知するがズムワルトの位置はつかめない。
  3. ズムワルトがステルス性を保てれば、理論上は主砲射程まで接近できるはずだ。一方、ロシア巡洋戦艦は接近せず長距離からズムワルトを攻撃したがるはずだ。ロシアには不幸ながらキーロフの搭載するシステムは全てレーダー誘導方式である。キーロフはミサイルをズムワルトの推定位置に発射する。グラニットミサイルのホーミングレーダーはズムワルトの僅かなレーダー反射を捉えルノに苦労するだろう。
  4. グラニットがズムワルトを補足しても、ズムワルトの防空装備が相手となる。SM-2中距離対空ミサイルが少なくとも18発あり、さらに改良型シースパロウ短距離防空ミサイルがある。ズムワルトはグラニットの殆どを撃墜する。
  5. ズムワルトが主砲を使う可能性はあるだろうか。状況次第だ。最大射程の83マイル(134キロ)で高性能主砲システム(AGS)が長距離陸上攻撃弾を発射すると161.89秒で標的に到達する。もしズムワルトがキーロフの正確な位置を把握できれば、砲弾の飛翔速度を落とし巡洋戦艦に命中させるだろう。GPS誘導方式によりキーロフの速度と方向が一定でないと修正が加えられない。そこでキーロフはジグザグ航行を開始し、方位を把握されないようにする。

  1. 結局、この対戦は引き分けになる。どちも正確な相手の位置を把握できない。将来に新型の長距離対艦ミサイルが導入されればズムワルトが優位になる。あるいは155ミリ砲の砲弾が無人機から最終誘導を受ければ大きな効果を上げる。
  2. ズムワルトは主砲の標的を合わせるだけの接近できず、キーロフもレーダー誘導兵装を活用できず、両艦は次回対決に決着を預けるだろう。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boringand the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.


2016年7月31日日曜日

SCOローパー室長インタビュー後編 ポケモンGO、グーグルカーと将来の戦場




Google Cars, Pokemon Go, & The Future Of War: Roper Interview Part II

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 19, 2016 at 4:00 AM

A Navy patrol boat converted to operate unmanned as part of an Office of Naval Research experiment in autonomous "swarms."
通常型哨戒艇が無人運用型にされた。海軍研究所の自律型大量同時運用構想の一環。
ウィリアム・ローパーは「ペンタゴン全体に時間を稼いでいる」と貴重なインタビューの機会に話してくれた。率いる戦略能力整備室SCOは近未来で全体を買えそうな効果を既存兵器の手直しで実現することで、アメリカの技術優位を守ろうとしている。一方、DARPAや国防総省の既存研究部門は新世代のブレイクスルー技術を開発中だ。前編に続きローパー取材を元にしているが、後編では個別具体的な内容を聞いてみた。
自動舟艇とグーグルカー
  1. 無人装備はローパーの言う直近の実現案の例であり長期的な第三相殺戦略の一部だ。DARPAは全長130フィートのシーハンターACTUVを完成させた。戦略能力整備室は海軍と「自律キット」の完成を目指しており、既存艦艇に取り付ければ無人運行が可能にする。無人ミッションが終わりキットを外せば、再び有人操艦できる。
  2. SCOは小型艦艇に手を加えようとしており、ローパーは「現在稼働中の艦船から手を付ける」と述べている。
Sydney J. Freedberg Jr. photo
カーター長官と、海軍水中戦センターで。
  1. 最初から無人艇として建造されているシーハンターはじめ設計技術は成熟してきた。一方で海軍は自律キットを稼働中の艦船に装着して新しい用途を模索する。キットをつけても専用無人艇より機能は落ちるが、今すぐ投入できるのが魅力だ。ゆくゆくは完全なロボット艦艇が稼働するだろうが、海軍は自律キットの運用経験をそれまでに十分確保しているはずで、無人艦艇の能力を十分発揮できる人員の厚みが生まれる。
  2. 同じ理屈が無人地上車両にも当てはまる。DARPAが米陸軍ともう十年近くも自律ロボット車両の実現をめぐり苦労しているのは地上経路を自律的に選択して進む機能だ。これは何もない空中を飛行するよりも難易度が高い。グーグル、テスラなどの企業は自律運転車に数十億ドル単位の資金を投入している。
  3. 民間向け車両で高速道路を平時に自動運転できても戦火の下でオフロードを走行させるのは不可能だ。それでも民生部門で大規模な投資があり、情報技術が急速に進んでいることもあり、軍も利用可能なはずだ。「望ましいのは」とローパーはCSIS戦略国際研究所で述べている。「今ある技術で手を付けられるスィートスポットを見つけることで、将来の技術が可能になればオフロード自動運転車両へすすめるだろう」
CSIS photoCSISで話すローパーとアンドリュー・ハンター
ソフトウェアとビッグデータ
  1. 技術すべてが今あるわけではない。ソフトウェアを既存プラットフォームに追加すれば当初の想定を超えた用途が実現する。これがSCOの方法論でその成果に海軍を支援してSM-6ミサイル迎撃ミサイルを対水上艦攻撃用に転用したことがある。見た目は同じミサイルだがソフトウェアが新しくなったことで運用方法が変わり、効果が変わったのが大きい。ソフトウェアの改定だけですむので両用型SM-6は簡単に配備できる。
  2. 指揮統制で今の軍の考え方は物理的な脅威を追尾するもので、戦車、艦船、航空機、ミサイルを個別に対象にする。だが目に見えない政治、社会、経済活動は対象にならないが、実はこれが事態を形成する。幸いに民生部門のマーケティング活動が巨額を投じて「ビッグデータ」ソフトウェアで解明しようとしている。
  3. 「作戦指揮センターに行けば眼に入るのは空の状況、海上、陸上の画面だ」つまり物理的な存在だ。「情報画面はない」と紛争には目に見えない要素があることを言及している。「ソーシャルメディアから定期刊行物まで関連してきます。科学記事から社会面、株式市場まで」
  4. SCO自身で技術開発の必要がない。手を入れればいい。民生部門では個人の支出傾向やソーシャルメディアの活用法を24時間把握している。(ローパーは収集した情報は匿名扱いにして個人情報を保護すると述べている。)「マーケティングの世界では活発にデータを解析し、合成し、パターンを見つけようとしています。リアルタイムで商機が生まれるからです。これは当方にも当てはまる考え方です」
Navy photoAITT(拡張没入技術チーム訓練)用のヘルメットをで試す海兵隊員
ハイテクを地上部隊へ
  1. ビッグデータを巨大司令部に導入するのは第一歩にすぎない。もう少し長い目ではローパーは民生部門の拡張現実技術(例 ポケモンGO)でビッグデータを最前線の地上部隊用に表示することを考えている。
  2. 海兵隊隊員がハンドヘルドデバイスを使う、あるいは引き下げ式ヴァイザーでどの建物に友軍がいるのか、安全が確保されていない建物はどれか、どの地区に反米感情が強く現れているのか、さらに怪しい電子信号が発信されている場所を把握できる。ネットワークで情報を各所のセンサーから集め、ビッグデータ・ソフトウェアで関係分だけを選別し、隊員のディスプレイにわかりやすく表示するだろう。
  3. 「拡張現実ですべてが変わると見ています」とローバーは述べている。「まだ成熟化していない技術ですが、ゲーム業界ビデオ業界の応用事例では大量の複雑な情報を直感的に把握できる画面に表示し、アクションにつなげています。わざわざ新しく方法を模索しなくてもにこの流れを利用するほうが賢いでしょう」
  4. 拡張現実でビッグデータを示すのは特に市街地で有効で、住民、建築物、技術が多様に詰まった環境で社会、物理、電子的にも複雑な状況で危険が高いからだ。「市街地戦の難易度は一番高いと言っていいでしょう。これがビッグデータを重点的に使おうとする理由です」(ローパー)
Army field manual urban objectives image080

  1. 同時にこれがローパーが陸軍へ注目する理由でもある。SCOの高度技術案件はこれまで空軍、海軍向けが主だった。SM-6の対艦攻撃への流用もその例で、空軍には「重武装機」があり、ミサイルを有人無人の偵察機データと連結して長距離から攻撃を加える構想だ。さらにその先にローパーはローテク装備で知られる地上部隊にこそ大きな可能性があると見ている。
  2. 「陸軍、海兵隊には大きく飛躍する可能性があると見ています。民生技術を応用しながら、どうしても完璧な仕組みを作ろうとする欲求を抑えればですが。そこそこの性能でもすでに完成している技術を買ってこればいいのです」
  3. 陸軍、海兵隊には民生技術から恩恵を受ける大きな可能性があるとローバーが述べる理由は何か。各社ともより良く強力な技術をどんどん進めているので、隊員が簡単に背負ったり身に付ける技術の実現が期待できるからだという。「地上部隊にこそ新技術の効果が最大に期待できるのです」■

南シナ海: 中国の動きは9月以降が要注意


今年の秋に何らかの軍事行動に中国が出るだろうということですか。人民解放軍が党の軍隊であるのは事実ですが、棒給引き上げがないまま民間との給与水準の乖離で人員に不満が高まる中で、下手に部隊が実弾発射してリスクを増やす命令をそのまま実行に移すでしょうか。中国の最大の弱点は「人財」だと思います。

 China Will Hold its Fire in the South China Sea — Until September

Creative Commons
July 30, 2016

  1. ワシントン・ポスト紙上で著名コラムニストのデイヴィッド・イグナティウスが波荒い南シナ海を取り上げている。国際法廷判断でここまでひどく中国が負けるとは世界は思っていなかった。「法の支配の下の国際秩序」にまず一点入ったということか。
  2. だがこれから発生することが重要だ。中国がこのまま黙っているはずがない。復讐心に燃えた対応を出してくるはずだ。
  3. ただしイグナティウスが指摘するように北京政府は言葉の応酬や南シナ海で爆撃機を飛ばして自分撮り写真を取ることで今のところ終始している。飛行地点はこれから埋立工事を狙うスカーボロ礁上空だった。現時点で中国は反応をしていないが、9月になればタイミングが絶好となり大きな動きがでてきても世界が注意を払わないかもしれない。
G-20 サミット+ 大統領選= アジアでトラブル発生
  1. なぜ反応がすぐ出ないのかと聞かれるがタイミングは理想どおりには実現しないものだ。
  2. 中国はG-20サミットを9月4-5日に杭州で開催する。台頭する超大国としての地位を示す機会を絶えず狙う中国は理想的な協調的態度でトラブルは全く起こさない国として演技し、南シナ海でも注意深く筋書きを書いているはずだ。確かに発言や行動の暗示は激しくなるが、当面はエスカレーションを自制する。中国は国際会合の檜舞台で舟を揺らすことはしないはずだ。サミットが終わるまで中国が軍事力行使に向かわないことは賭けてもいい。
  3. だがそのあとで事態は急展開するはずだ。米大統領戦で報道が加熱して南シナ海問題への関心が薄れる状況を利用するのだ。
  4. その時が南シナ海で一悶着起こす最良の機会となる。中国を抑止できる唯一の国米国が次期最高司令官選びに夢中になって米国並びに各国の報道も大統領選挙一色で、討論会あるいは別のスキャンダルが見出しを飾っているはずだ。
  5. 中国が南シナ海で防空識別圏 (ADIZ) を設定したり、スカボロー礁で埋立工事を開始しても世界がホワイトハウスを目指す両陣営の一言一句に関心を寄せる中、さほど関心を集めないだろう。中国には絶好のタイミングとなる。
  6. もう一つ考慮すべき材料がある。次期大統領次第でアジアへの姿勢がどう変わるか見えない間が行動の好機だと中国は賭けに出るかもしれない。オバマ政権も任期の終わりに近づきアジア危機の発生は望まないはずで中国が揺さぶりをかけても米国の妨害は受けないと思うかもしれない。中国のいいぶりではないがタイミングが全てなのだ。
今は準備期間か
  1. そうなると南シナ海で緊張を高め自国主張を固める絶好の機会となる。中国はどんな行動に出るだろうか。その答えにはこう聞けばいい。南シナ海周辺国さらにインド太平洋各国は準備できているのか。■

Harry J. Kazianis is a Senior Fellow for Defense Policy at the Center for the National Interest and Senior Editor at The National Interest Magazine. You can follow him on Twitter: @Grecianformula.

2016年7月30日土曜日

戦略能力整備室は何を目指す部署なのか 前編


オバマ政権で唯一評価できるのがカーター長官率いる国防総省の技術政策で、その中でもスカンクワークスのようにこれまでの官僚制度、慣例から自由に動いている観のあるのがSCO戦略能力整備室です。Breaking Defenseが室長のローパー氏に貴重な取材を行い概要を限定的ですが明らかにしています。これは前編です。

Strategic Capabilities Office Is ‘Buying Time’ For Offset: William Roper

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 18, 2016 at 4:00 AM
WASHINGTON: ウィリアム・ローパー率いる戦略能力整備室 Strategic Capabilities Officeは米軍向けに最先端イノヴェーションを模索しているポケモンGOの軍事版で陸軍兵士が脅威の所在を探る姿が想像できるだろうかあるいはロボット頭脳の箱を海軍水兵が哨戒艇に取り付け無人航行させる様子を想像してほしい海兵隊がマーケティング用ソフトウェアの「ビッグデータ」から反米感情の傾向を探り危険な段階に発展する可能性を予測する姿を想像してもらいたい
「ビッグデータ用のツールはベータテスト中ですが1年以内に実用化するでしょう」とローパーは記者に珍しい単独インタビューで語ってくれた。戦闘用の拡張現実augmented reality(ポケモンGO)はもっと早く出現する。
ただしローパーは自分自身を革命家とは見ていない。むしろ冒険野郎マクガイバーのようにそばにあるものからガジェットを作り、悪者の動きを止めようとしている。アメリカの敵が急速に実力をつけており米軍の優位性が消えつつある中で、広く利用可能な技術でローパーは時間を稼いでいるとも言える。
Sydney J. Freedberg Jr.Defense Secretary Ash Carter talks to Strategic Capabilities Office director William Roper at Submarine Base New London.
相殺戦略に時間を稼ぐ
DARPAや国防総省の実験部門は第三相殺戦略の一環でブレイクスルー技術を開発中だ。中心テーマは自律人工知能で、現実世界のロボットから仮想空間まで広く応用され、極超音速ミサイルや3-Dプリント技術など有望分野もある。問題が一つある。時間だ。
「各チームが取り組んでいる技術は感動的といえるほどですが、実用化が早くなるのも事実です」とローバーは記者に語ってくれた。敵に回る可能性のある側もすぐ追いついてくるだろう、とし、「SCOは省の前面で時間を稼いでいるのです」
米軍の優位性の源泉は1970年代技術であるステルス、スマート爆弾、ワイヤレスデジタルネットワークにあり、次世代の革命的技術の開発に取り組むべき時はとっくに終わっているというのが第三相殺戦略の考え方だ。戦略能力整備室は現時点の技術に多大の改善余地があることと認識する。
「一兆ドルを超える隠れたコストが運用中の各システムに潜んでおり、改良の余地は大きいのです」とローパーは説明した。「まだ出現していない未来技術ではなく、今使っているシステムを遡って検討しているところです」
「この2つはピッタリと合うのです」とローパーは続けた。「国防総省が10年から15年の期間で調達するとしましょう。現有装備はその後も十分な効果があり将来の戦争でも勝利につながる想定外の性能があるとします。でも15年間にわたる技術調達の間に敵も急いで開発して第一線に投入してくるでしょうから、それまでにこちらの発想は追いつかれてしまいますね、そこでまた新しい発想が必要になります」
ローパーは第二次大戦の例が好きなようだ。当時の主力装備は航空機、戦車、潜水艦、無線とそれぞれ20年前から登場している。ドイツがヨーロッパを席巻したのは各技術が優秀だったというよりも技術組み合わせに成功したためだ。ロシアもドイツのやり方を真似て逆に電撃戦を仕掛けドイツを撤退させている。
主要国で基礎技術には大差なかったとローバーは主張し、米国が原子爆弾を開発するまで基本的に動きはなかったとする。それでも1939年から1945年にかけて戦闘力が飛躍的に進歩したのは苦労して手にした実経験や技術面の試行錯誤から同じ基本技術で効果的な使用方法がわかったためだとする。
「第二次大戦でほぼすべての発想が試され優位を確保しようとしていました」とローパーは述べる。ただし1945年以降の米軍事技術はそこまでの試練を経験していません。そこで成功の副産物が問題で、ソ連と戦うのではなくソ連を抑止してきましたが、ソ連が消えてから米国の存続を危うくする敵がまだあらわれておりませんがそれでも問題であることにかわりありません。
「第二次大戦では技術淘汰が自然に行われましたが、今は機能していません」とし、SCOの役目は各軍に「現有装備の細部までメスを入れ有効活用をすすめる一方で新技術の必要性を訴えること」なのだという。
SCOはどう機能するのか
スピードが優先項目になれば既存技術の新用途への応用が可能だ。急速に進歩している民生技術を動きが遅い軍事技術に投入することができる。
SCOが手掛けるプロジェクトは23あり、多くが極秘だが、ローパーは多くが着手から完成まで三年だという。これはペンタゴンがこれまで手がけてきた主要開発事業から見れば光速といってよい。
「当室で扱う内容はほとんどが一年から4年で完成しています。5年でもとんでもなく長い感じはしません」とローパーは記者に語る。「素晴らしい発想があり六年かかったとしましょう」、国防総省では誰も手がけていない内容だとして「実施にとりかかってもいいが、実証は大変でしょう」
SCOには対象プロジェクトの厳格な定義を決めた取り決めはないとローパーは強調する。またペンタゴンでは権威あるとされる正式な仕様要求文書も発行しない。
「一年目は500回も同じ質問に答えていますよ。『要求仕様は何ですか』というものです」とローバーは戦略国際研究所(CSIS)で述べている。「この部署を一番効率的に運営するために要求内容は作成されていないのです」
要求内容が重要となるあまり拘束条件となり、知的な、知的な条件検討を妨げることになる。
「失敗で多いのは願望で数字を書くことですが、『要求』ならその通りに実現しないといけません」とローパーはCSISで語っている。現行制度ではスペックを初期段階で下方固定する傾向がある。航続距離、速度、精度などだが、実は何かを犠牲にすれば実現できるのだ。
ローパーには予算枠もない。SCOは年間16百万ドルを一括受け取り、解析とテスト統括を行うが、個別プロジェクトは都度ペンタゴン予算から獲得しているとCSISで語っている。「新しいコンセプトが入っていないと、結果として実施できずそのまま消えてしまいます」
ではローパーはどんな新コンセプトを希求しているのだろうか。ロボットボート、ビッグデータ、拡張現実を次回お伝えしたい。■