2021年10月19日火曜日

軍事用極超音速ミサイル試験を平和目的の宇宙機実験だったと虚偽発言する中国外務省の情報操作をうのみしている日本メディアのおめでたさ。

 中国政府はテストそのものがなかったといい抜けようとしているが、記者会見で触れた宇宙機テストは7月のものでまったく別個のもので、そのまま伝えたNHKなど国内メディアは中国の情報操作に手を貸したことになりました。


An artist's conception of a notional hypersonic boost glide vehicle in flight.

LOCKHEED MARTIN

 

国政府は中国が極超音速滑空体を軌道に乗せたのちに大気圏再突入させ標的に向け飛翔させたとの報道内容を否定した。中国外務省は再利用可能宇宙機だったとし、武器ではないと述べた。しかし、公式声明で宇宙機打ち上げは7月とあり、フィナンシャルタイムズ記事では軌道上爆撃手段のテストは8月とある。

 

 

中国外務省報道官趙立堅は2021年10月18日記者会見でブルームバーグ、AFPからの質問に対し、同記事を否定した。

 

「今回は通常の宇宙機の試験で再利用の可能性を試したものである」「地球帰還に先立ち切り離した後、大気圏内で支持部門が燃え尽き、破片は大洋に落下した」同報道官はこの宇宙機がフィナンシャルタイムズ記事にある飛翔体と同じなのかと尋ねられこう答えた。

 

ブルームバーグのジェイムズ・メイがー、BBCのスティーブン・マクダネル両名がこれを受けて中国外務省から趙報道官の発言は7月の宇宙機の件だったと確認したと伝えている。軌道上爆撃手段システムのテストは8月実施だったことが判明している。

 

国営企業中国航天China Aerospace Science and Technology Corporation(CASC)は7月に再利用可能な宇宙機テストに成功したと発表しているが、その際は準軌道飛翔だったとしている。CASCは同宇宙機の飛翔方式について説明しておらず、内モンゴルの酒泉衛星打ち上げ場Jiuquan Satellite Launch Centerから発射したと述べていた。2020年にも同打ち上げ場から長征2Fロケットが打ち上げらており、「再利用可能試験宇宙機」だったとの説明があった。

 

フィナンシャルタイムズ記事では長征2Cロケットが軌道爆撃システムのテストに使われたとあり、長征ロケット第77回目打ち上げとなったが、非公表のままだ。76回目78回目は7月19日、8月24日に実施されている。

 

趙報道官が言及したCASCによる宇宙機テストはこの売り7月16日にものだろう。さらにフィナンシャルタイムズの取材源によれば今回の軍事装備は標的突入含むすべての飛翔段階を実行したと言い、標的から数マイル外れている。CASCは宇宙機は飛翔実験ののち、空港に着陸したと発表したが、報道通りにともに実行されたとすれば、米情報機関が混同した可能性もある。

 

とはいえ、専門家筋から先に発表のあった再利用可能宇宙機と今回話題に上った軌道爆撃システムがどう関係しているのか疑問点が提示されている。民生用航空宇宙事業が中国で軍用装備とつながっている例はこれまでもあり、軍民両用の開発が展開していることはよく知られている。また、中国が極超音速滑空飛翔体兵器を実際に配備していることも知られている。

 

「今回は米側がX-37Bは兵器ではないと主張していることへの中国の反応なのか」と Secure World Foundationのブライアン・ウィーデンがツイッター投稿しているが、中国のテストに対し数多くの疑問が出ている。X-37B小型宇宙シャトルが宇宙軍が運営しており、実は何らかの軌道爆撃任務を行うものではないかとの噂がこれまで長くありながら実態は不明のままとなっている。

 

「宇宙機はすべてFOBSになるのか」とウィーデンは部分軌道爆撃システムに言及した。

 

FOBSの基本概念は1960年代のソ連にさかのぼる。通常の大陸間弾道ミサイル(ICBM)との比較で、準軌道上に配備するFOBSは射程距離の制約がなく、標的の割り出しが不可能ではないが困難となる。さらにFOBSの低高度弾道は地上配備レーダーでは探知が困難で、敵には対応が課題となる。

 

極超音速飛翔体をFOBSの弾頭部分に組み合わせれば予測不可能な攻撃手段となる。飛翔体は飛行制御性を高くしたままで弾頭を標的に命中させ、敵の防空ミサイル防衛体制を突破する。南極越え攻撃の場合、米ミサイル防衛の想定の裏をかくことになる。極超音速飛翔体の迎撃が極めて難しいことは米国含む各国政府が率直に認めている。

 

そうなると、報道されているような中国版FOBSと宇宙機の関連があるのかないのか不明だが、防衛能力を突破する性能をFOBSにあり、極超音速滑空体を利用することが中国が開発に励む理由なのだろう。また北京政府がFOBS開発を1960年代1970年代から手掛けたが中止されていたのは技術問題が解決できないためだったことが知られている。だが現在の中国航空宇宙産業界は当時より高度技術の実現能力が飛躍的に伸びている。

 

空軍長官フランク・ケンドールは中国軍がFOBSに準じる兵器開発にあたっていると9月の空軍協会イベントで発言していた。「これが実用化されれば従来のICBM軌道は無用の存在になる。ミサイル警報システムや防衛体制が突破される」

 

フィナンシャルタイムズ報道が出ると米空軍のグレン・ヴァンハーク大将(NORAD北米防空司令部司令官)から中国が「非常に進んだ極超音速滑空飛翔体能力を最近実証した」との発言が8月にあり、「NORADの対応能力では早期警戒及び攻撃地点の割り出しが困難となる」としていたことが改めて注目された。

 

米海軍のジョン・ヒル大将は議会で6月に「左右に曲がる飛翔制御は飛翔距離を延ばす意図があるため」と証言しており、各国の弾道ミサイルで飛翔制御能力が向上している様子に触れた。「大気圏再突入すればすべて極超音速になる」

 

中国のFOBSは開発初期段階で実戦化には遠いものの、同国が進める戦略戦力整備の一環でその他にもICBMサイロの整備、弾道ミサイル運用原子力潜水艦部隊の建造もある。米政府は繰り返し、情報から中国が核弾頭の貯蔵を増やしていることが判明していると述べている。

 

北京政府の戦略装備では透明性が一貫して低いままだ。中国との経験が豊かな元国防総省のドリュー・トンプソンは中国がいわゆる「非先制攻撃」方針で柔軟な姿勢を強めており、非核兵器で攻撃を受けても核兵器で対応することを自制してきたのを改めるのは明白としている。

 

FOBS含む技術開発で米側のミサイル防衛体制への対応で自信がつき、各種装備品が充実している。とくに現行の米ミサイル防衛体制では中国が保有中の核兵器を全弾発射した場合に対応できなくなることが重要な点である。

 

米中関係は領土問題、貿易面での意見対立でここ数年冷え込んでいる。米政府はCOVID-19パンデミックでの中国政府の処理を批判しており、ウイグル少数派の新疆での弾圧、香港民主派の取り扱い、台湾への圧力が関係悪化をさらに加速化している。一方で中国国内では強硬派の声が大きくなっている。米中台から有事発生の可能性が高まっているとの懸念が強まっている。

 

「米ミサイル防衛では中国核戦力の技術水準向上を懸念している」が、「米国が台湾とのつながりを強化し、新疆問題で中国を指弾していることが中国の核戦力増強を生んでいる」とカーネギー精華グローバルポリシーセンターのTong Zhao主任研究員がツイッターに投稿し、中国の戦略兵力整備の理由を解説している。

 

こうしたことを念頭に米政府は中国との軍備管理交渉を新たに始めたいとしており、ロシアも含めた三者協議も視野にしている。だが中国からは早くもこの動きを否定する姿勢を示している。

 

まとめると中国のFOBS整備に戦略兵器開発での透明性欠如が加わると今後の地政学上の環境で不確実性がさらに高まりそうだ。

 

Updated 5:45 PM EST:

 

NPRのジョフ・ブルームフィールから軌道爆撃システムに関し興味深いデータが提示された。フィナンシャルタイムズ記事では中国宇宙打ち上げ技術アカデミー(CALT)から長征2Cロケットの77回目と79回目の打ち上げについて公表したものの、78回目の発表がなかったとしていた。ブルームフィールはCALTは76回目打ち上げについても公表がないと指摘。

 

ブルームフィールからはCASCが7月の宇宙機打ち上げでロケットを投入したかで発表をためらっているため情報が錯綜していると指摘。CASCとCALTの間で食い違いがあるため準軌道上の宇宙機と軌道上爆撃システムの両テストの実施時期に関し一層の疑問を生んでいる。■

 

 

China's Claim That Its Fractional Orbital Bombardment System Was A Spaceplane Test Doesn't Add Up

The system could give China the ability to strike any target on Earth unpredictably, but so far Beijing is acting like the test didn't happen.

BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 18, 2021

 



2021年10月18日月曜日

環球時報社説 「岩のように堅固」とする米国の台湾公約は中国の鉄の意志が砕いてやる

 CPPの息がかかった環球時報社説のご紹介です。うーん、相変わらずえぐい内容の主張ですね。文中で部分はThe Editor(自分)がつけたものです。目には目を。理屈には理屈を。日本も中国共産党の思考のどこが間違っているのか説明できるよう準備が必要です。軍事行動を正当化する作戦が今後も続くでしょうが、PLAが現時点で海峡横断の揚陸作戦を展開する能力には疑問がついたままです。

   

The Economist

 

国の台湾島への公約は「岩のように固い」としながら中国人民解放軍(PLA)による台湾海峡での軍事演習は「安定を損ない誤解リスクを増やすだけ」と米関係者の発言が続いている。▼台湾島の軍司令官が米国を訪問しており、フェルナンデス米国務次官は在米の台湾代表蕭美琴Hsiao Bi-khimと会談している。▼「岩のように堅固」とはいかにも台湾島の急進派になびこうとする欺瞞に満ちた表現だが、中国本土の抑止は絶対に実現できない。▼本土は断固として軍事行動の準備を進めており、台湾問題の最終解決を決定的かつ圧倒的に有利に進める。▼台湾島社会に警告したい。▼米国の「岩のように堅固」との約束に耳を貸すべきではない。▼なぜなら、ワシントンが米国人の犠牲を甘受してまで同島の分離をめぐり中国本土と戦う事態は発生しないからだ。▼米国のねらいは「台湾カード」で中国の台頭を防ぐことだが、このカードは自国民の犠牲を払ってまでも米国が死守するものではない。

 

中国本土は国家主権及び領土保全を守る固い決意のもと、国土再統一を進める。▼これに異議を唱え、妨害する国とは徹底的に戦い、死もいとわない。▼妨害がなければ、再統一は達成されるが、そうでなければ妨害勢力に立ち向かい撃破する。▼本土から見れば、再統一とは簡単だから進める、あるいは困難だから断念できるものではない。

 

ご注意 この記事は環球時報社説のご紹介です。本ブログの意見ではありません。

 

分別ある人物なら中国の決意の強さと台湾海峡問題への米国の意識に大きな差があることは容易に理解できるはずだ。▼これまであらゆる種類の協力を進めてきた両国は台湾海峡政策でも共通点を模索する必要がある。▼同島をめぐる北京とワシントンの相違点は本来衝突するようなものではなかった。▼だが米国の対中政策が大幅に変化し、台湾問題が最大の対立点になっており、中米間の意識の衝突は回避できなくなっている。

 

率直に言おう。台湾への「岩のように堅固」な約束を実行する国力は米国にない。▼台湾海峡含む近隣地区はPLAの攻撃射程内で、中国が台湾問題解決を決定すれば外部の軍事介入を排除する戦力がPLAにあり準備もできている。▼米国が海軍空軍を台湾へ派遣すれば米軍は悲惨な結末を迎えるだけだ。▼さらに中国は核兵器保有国で二次攻撃力にDF-41やJL-3といった大陸間弾道ミサイルがある。▼この現実が核兵器投入も辞さないとする米国の邪悪な思惑を封じ込める。▼端的に言って、米国に中国を脅かすだけの軍事力はない

 

同島の民進党(DPP)は状況を見誤ってはならない。▼米国に台湾防衛の能力がない事実を冷静に理解すべきだ。▼米国が台湾島を見捨てる事態になるはずがない、本土を遮断すべく一緒に戦ってくれると偏った考えをしている。▼本土が台湾問題を武力で解決する政治決断を下せば、解放戦争(1946年-49年)の南京解放の現代版が実現し、米国は台湾放棄に走らざるを得なくなる。

 

米国と台湾島は中国本土への脅かしを中止し、力による再統一は深刻な政治経済上の結果をもたらすとの主張を引っ込めるべきだ。▼米国はその場合は全面的な中国封じ込めになると言っている。▼中国人民全員がその事態を体験しており、抑止効果は皆無である。▼台湾海峡をめぐる緊張が高まっている原因はDPPが1992年合意を撤回したことにある。▼米国はDPPへ圧力をかけず同合意の復活は実現してない。▼逆にワシントンはDPPの危なっかしい動きを利用し台湾海峡の危険モードを加速化しており、本土封じ込めや弱体化を図っている。▼その結果、海峡情勢は対決に向かっている。

 

中国本土はDPPの傲慢さを引きずり降ろしてやりたい気持ちでいっぱいだ。▼さらに米国がいう「岩のような堅固」な約束は鉄の意志で粉砕してやる。▼中国は台湾問題の平和的解決策の希求を止めないものの、再統一で平和的解決は完了するのであり、「二つの中国」や「一つの中国、一つの台湾」等は認めるわけにいかない。▼中国分断を狙う勢力に平和的な実現方法はありえない。■


ご注意 この記事は環球時報社説のご紹介です。本ブログの意見ではありません。

 


China's iron will stronger than US' 'rock solid' commitment to Taiwan: Global Times editorial

By Global Times

Published: Oct 14, 2021 09:12 PM


2021年10月17日日曜日

再び嘘をついているのはどっち。今度は日本海で米ロ海軍の言い分が食い違う事態が発生。

 

 

米駆逐艦チャフィーをロシア駆逐艦アドミラル・トリブツが日本海のロシア領海内で2021年10月15日撮影した。Russian Ministry of Defense


  • ロシアから10月15日に太平洋ロシア領海で米海軍軍艦を排除したとの発表が出た

  • 発生場所は日本海で米国は以前もロシアの領海主張に挑戦したことがある

  • 同日にロシアと中国は同海域で共同演習を実施していたEmail address




シア国防省は10月15日ロシア、米両国の艦艇が日本海で接近遭遇した際の映像を公開し、ロシア艦が米駆逐艦のロシア領海侵入を阻止し排除したと主張している。


米海軍は同日夜にロシア見解に反論し、駆逐艦チャフィーは事件発生時に公海上にあり、安全かつプロ精神で行動したと述べた。


映像ではUSSチャフィー (DDG-90) が日本海でロシア駆逐艦アドミラル・トリブツから数百フィートで航行している様子が映っており、チャフィー搭載のヘリコプターのローターが回転しているのがわかる。


ロシア国防省は現地時間午後5時ごろ米艦が「ロシア連邦領海に接近し、国境線を越えようとした」ためアドミラル・トリブツが「警告した」と説明している。チャフィーは「承認しがたい行動をとろうとした」ため、該当水域は実弾射撃のため進入禁止だと通告された。ロシア中国の共同海軍演習が今週展開されていたためだ。


ロシア側発表ではチャフィーは航行を続け、ヘリコプター発進を告げる旗を掲げ、進路速度の変更ができないと伝えてきた。そのためロシア艦は米艦を排除する進路をとった。結局チャフィーは進路変更したが、両艦の距離は200フィートまで接近したとロシア側発表にある。ロシアは海上衝突を回避する国際取り決め、ならびに1972年の両国間の海上空中事故防止合意に「はなはだしい違反」だったと批判している。


これに対し金曜日発表の米海軍声明文ではロシア発表を「虚偽」と呼んでいる。


ロシア艦はチャフィーから65フィート以内まで接近して来たが、チャフィーは国際公海上にあり、ヘリコプター発艦準備中だったとし、さらに「両艦は安全かつプロ意識を発揮した」とあり、その時点で演習は実施されていなかったと述べている。


「USSチャフィーは一貫して国際法・慣習に則り行動した。米国は今後も国際法が許す範囲で飛行、航行、作戦を継続する」と米海軍は発表。


米駆逐艦チャフィー艦上のヘリコプターをロシア駆逐艦アドミラル・トリブツが日本海のロシア領海内で2021年10月15日撮影した。Russian Ministry of Defense



米ロ艦艇の遭遇事例は今回が初めてではなく、両陣営はそれぞれの主張で食い違いを示している。


2020年11月には米駆逐艦USSジョン・S・マケインが航行の自由作戦を日本海近くのピョートル大帝湾付近で実行し、ロシアの過剰な海上領有主張に挑戦した。ロシア駆逐艦が出動し米艦を排除したとロシアは発表し、警告ののちに衝突も辞さない行動を示したところ米艦は国際公海に戻っていったとした。


だが米海軍はこの説明を否定し、ロシア発表を「虚偽」と断じ米艦艇が「排除された」事実はないとし、作戦は「国際法に則り」実行されたと発表していた。


米国、NATO加盟国、ロシアは海上での挑発行動を非難しあうことが多い。今夏もロシア軍から英海軍駆逐艦がクリミア付近の航行を続けたため警告射撃と爆弾投下を行ったとの発表があった。クリミアはロシアが2014年に占拠している。


英国はロシア説明を否定し、「偽情報」と断じた。英国防省は当該艦HMSディフェンダーは「ウクライナ領海内で国際法に則り無害通航を実行中だった」とした。


金曜日発生の事態はロシア、中国が共同海軍演習を同海域で始めた翌日のことで、演習は17日日曜日までの予定で、通信業務、共同運用、海上実弾射撃、対機雷戦、対空、対潜戦を試すと両国発表にある。


ここにきてロシア軍中国軍は軍事協力を拡大しており、共同演習もその一環だ。両国の爆撃機が日本海を二回パトロール飛行し周辺各国が警戒した。


米軍関係者は両国の軍事協力を「表面的」とするものの、西側各国は懸念をもって情勢を見ている。■



Russian Video Shows Close Encounter With US Warship in Pacific

Christopher Woody 

.

 

中国が大気圏再突入型極超音速ミサイル実験を実施。従来型ミサイル防衛の不備がつかれる事態を恐れる。中国との戦略兵器制限交渉は可能なのか。

 

  •  

LOCKHEED MARTIN

 

国が核運用可能な極超音速滑空体を宇宙空間に打ち上げ、周回軌道に近い形で移動させて大気圏へ再突入し標的に移動させたとフィナンシャルタイムズが伝えている。この装備が実用化されれば影響は大きいと同紙にあり、関係者5名に意見を聞いたところ、米国はこの事態に虚を突かれた形だという。

試験実施は8月ごろで加速滑空体は長征2Cロケットが打ち上げた。同ロケットは77回目の発射となったが、北京は公表していないが、8月の76回78回の発射は公表している。フィナンシャルタイムズ記事では滑空体は標的から数マイル外れたとあるが、開発中の技術内容のほうが重要だ。

宇宙空間からの爆撃構想は冷戦時代からあり、部分軌道爆撃システムFOBSと呼ばれるが、当時は核兵器を再突入体から投下する構想だった。今回の中国装備では極超音速滑空体の膨大な運動エネルギーを使う。大気圏内で長時間の飛翔制御を行いつつ膨大な速度で標的に向かうのが特徴だ。

FOBSへの懸念が生まれたのは、ミサイル防衛の網をかいくぐるだけでなく早期警戒網で探知できなくなるためだ。通常の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と比べるとFOBSは予測不能の攻撃手段となる。飛翔距離の限界もなくなる。だがこれまでのFOBSは弾道ミサイルの延長で中間段階で追跡すれば飛翔経路は予測ができないわけではなかった。

今回テストされたとされるハイブリッド設計では全く予測不能となる。

CHINESE SPACE AGENCY

長征2Cロケットの打ち上げ

制御可能な極超音速滑空体が高高度から超高速降下すると通常の弾道追跡では対応できない。さらに事態を複雑にするのが、南極経由の攻撃を実施することで、米国の弾道ミサイル早期警戒網は北極越え軌道を想定しているためで、防衛手段も同様だ。この装備への対抗が極めて困難になる理由は、米国の中間段階での迎撃は通常の弾道ミサイルに特化した放物線軌道対応が中心なためだ。

滑空体とFOBSが一緒になれば、大気圏再突入時に防衛側の中間段階対応能力外の距離を方向を替えながら飛翔し標的にむかう。通常の地上配備レーダーの有効範囲では対応できない。そこに超高速が加わり、防衛側の現行装備では対応不能となる。

現時点では極超音速滑空体への対抗は極めて難しい。対抗策の開発が進んでいるものの、迎撃解が得られるかは対象の飛翔速度、飛翔制御、数量、支援にあたる探知機能の効果に左右される。運動エナジーと極超音速の組み合わせで撃破が最大に困難な攻撃手段になる。

フィナンシャルタイムズ記事では米国防総省関係者の驚くべきコメントも伝えており、「非通常型」運搬システムは米国の戦略防衛能力をかいくぐるとしている。

先月だが、米空軍長官フランク・ケンドールは中国が新兵器を開発中とほのめかした。長官によれば中国が大きな進展を示しており、「宇宙からのグローバル攻撃の可能性」があるという。詳細には触れず、中国が「部分的軌道爆撃システム」として旧ソ連が冷戦中に配備しようとして放棄した装備に近いものを開発中だという。これを投入してきたら通常型のICBM想定の防衛手段では探知対応ができないとケンドールは述べている。

北米航空宇宙防衛司令部のグレン・ヴァンハーク大将は8月の会議席上で中国が「高度な内容の極超音速滑空飛翔体運用能力の実証を最近行った」と述べた。中国が示した能力は「わがNoradの対応能力では警戒および攻撃評価が大きな課題となる」

DoDにはかねてから中国の核兵力整備に懸念の声があり、中国が米早期警戒防衛能力をかいくぐる兵器運搬システムの整備に走ることを想定していた。中国が砂漠地帯に数百ものミサイルサイロを構築しており、新型弾道ミサイルを格納し、今回のような滑空飛翔体を搭載する日が来れば、懸念が現実になる。そこでペンタゴンは新型宇宙配備早期警戒・追尾システムをは展開し、極超音速弾道ミサイルへの対応を急ぐとしており、とくに中間飛翔段階でミサイル監視をおこなう「コールドレイヤー」の実現をめざす。

このレイヤーがFOBSに効力を発揮するのは、防衛手段が実行可能かつ戦略的に意味がある場合に限られる。ならず者国家が高性能弾道ミサイル数発を運用する場合を論じているのではない。中国は数十発あるいは数百発もミサイルを同時発射してくるかもしれない。こうした想定では物理的な防衛体制の整備は非常に高額となりながら実効性がないものになりかねない。

とはいえ、今回のテストは宇宙開発用ロケットを使った初期段階のものだった。中国がこの技術を実用化するまでは時間がかかるだろう。高温対応や大気圏内の摩擦問題も解決が必要だ。とはいえ、中国は極超音速加速滑空飛翔体の実現を目指しここ数年精力的に開発努力を展開しているのが現実だ。

今回のフィナンシャルタイムズ記事が正確だとすれば一つ確実なことがある。超高額になっても有効なミサイル防衛能力を求める声が議会筋でも大きくなっている一方で、中国を交渉の座につかせ戦略兵器制限条約を実現するべきとの声も広まっている。

この問題は事態の進展とともに続報をお伝えする。今回のフィナンシャルタイムズ記事China tests new space capability with hypersonic missileはクリックすると読める。■

China Tested A Fractional Orbital Bombardment System That Uses A Hypersonic Glide Vehicle: Report

Such a capability could potentially allow China to execute a nuclear strike on any target on earth with near-impunity and very little warning.

BY TYLER ROGOWAY OCTOBER 16, 2021


2021年10月16日土曜日

注目のニュース 米海軍がイスラエル海軍に接近。イランをにらんだ共同連携の強化以外にイスラエルのミサイル技術が目当てでは

 



スラエルを先週訪問した米海軍第五艦隊司令官ブラッド・クーパー中将が米イ両国海軍の共同作戦の詳細の一部を明らかにした。


クーパー中将はイスラエル国防相ベニー・ガンツ、IDF参謀総長アヴィヴ・コハヴィ中将、イスラエル海軍司令デイヴィッド・サアル・サラマ中将他イスラエル海軍高官と会談した。


会談で中心になったのは湾岸地方や紅海でのイランによる脅威の高まりに対応する両国間調整だったと軍事筋が述べている。両国海軍は共同行動をイラン脅威に対し展開する構想を温めているとされ、イランの有人無人高速襲撃艇への対応もそのひとつだが、詳細は漏れ伝わってこない。


イスラエル筋からは会談の結果として「オープンチャンネル」が米イスラエル両国の海軍部隊間で開設され、共同作戦の実をあげるという。


「調整作業は日常レベルで必要となって来た。常時事件が発生しているためだ」とエイモス・ジリード退役少将が解説している。同少将はイスラエル国防軍で軍事情報調査部門の長も務めた。


今回の第五艦隊司令官訪問はイスラエルがこれまでの米欧州軍(EUCOM)から米中央軍(CETCOM)へ管轄が変わった事への対応でもあり、イスラエル海軍の海軍作戦部長ダニエル・ハガリ少将によれば、CENTCOMへの移行は「イスラエル海軍活動へ大きな影響を及ぼし、海洋ドメインでの責任分野を広げている」という。


クーパー中将の訪問と時をあわせ、イスラエル海軍と第五艦隊の新しい二国間協力としてUSSオケインがハイファ港に寄港した。


USS オケインが10月にハイファに寄港した (Port of Haifa)



米海軍報道部は今回の会談について以前発表以上の詳細は明らかにしていない。


注目されるイスラエル製装備品


イスラエル海軍はここにきてイスラエル国防費でのウェイトが増えている。ドイツからサール6型海防艦やドルフィン2高性能潜水艦を調達している。


このうち潜水艦は極秘扱いだが、サール6海防艦に搭載の装備品について詳細の一部が明らかになっている。合同防空装備としてバラク-8およびC-ドーム(アイアンドームの海軍仕様)が搭載されている。「両装備を発射するシナリオもある」とイスラエル海軍筋が述べている。


サール6海防艦 Middle East Online


サール6海防艦はイスラエルのEEZ防衛を主眼に導入されている。EEZは地中海にあり、大規模なガス埋蔵量が確認されており、レバノンのヒズボラ勢力の格好の標的になるとされる。だが、紅海やアラビア海ではイラン支援を受けた貨物船襲撃事件が7月にあり、高性能の威力を誇る同海防艦を展開する可能性もある。


バラク-8はイスラエル航空宇宙工業(IAI)が製造し、航空機、ヘリコプター、無人機、シースキミングミサイルを標的とする。フェイズドアレイレーダーを搭載し、二方向データリンクで指揮統制機能を柔軟に実行する。


IAIは同装備を搭載した艦艇間の「相互接続性」を強調する。バラク-8の射程は現在43マイルだが、同社は拡大射程版を開発中で93マイルをめざす。サール6に垂直発射管が6本あり、各8発のミサイルを運用すると消息筋が述べている。


これに対しC-ドーム防御装備はラファエルの製品で陸上仕様のアイアンドーム同様に迅速な連続発射で飽和攻撃に対応する。発射装置は甲板下に搭載される。


C-ドームは艦の監視レーダーを利用し、専用の火器管制レーダーは不要だ。ラファエルによれば迎撃ミサイルは保守管理が不要で、密閉キャニスターに格納し、垂直発射装置で迎撃ミサイル8発を運用できる。■


Israel, US Navies Set Up New Coordination Efforts On Iran: Sources

By   ARIE EGOZI

https://breakingdefense.com/2021/10/israel-us-navies-set-up-new-coordination-efforts-on-iran-sources/?_ga=2.24005946.166066542.1633946828-1925073808.1616110789

防衛予算GDP1%キャップを廃止し日本の防衛体制はこうなる。ホームズ教授の提示する新しい日本の防衛の姿。NATO加盟国にはGDP2%の支出が求められているが....

 

 

 

イターがティム・ケリーおよびジュミン・パークの解説を記事にしており、それによると日本で政権を握る自民党が防衛費を現行のGDP1%相当から2%に増額する案を練っているとある。実現すれば、1,000億ドル相当になる。第二次大戦後の日本は非公式に防衛費上限を設けることで日本が再び軍事大国になるとの周辺国の懸念をおさえてきた。

 

戦後直後には上限に意味があった。まだ戦時中の記憶が生々しかったからだ。だが、今日の日本は実績で悪名を償った。さらに中国の台頭で領土保全や天然資源の帰属が危うくなっており、中国は既存体制の変更を狙いながら、日本の軍事力整備をけん制している。

 

そこで自民党内に大胆な動きが出てきたのは、従来の平和主義へ大きな抵抗となる。日本は海洋大国となる素質があり、自民党は公約としてこの実現を主張している。また自衛隊(JSDF)強化への世論支持を図っている。

 

米国との長きにわたる安全保障面の同盟関係のバランスを再調整すれば同盟各国や域内に健全な結果を生む。日本は中国と力のバランスも図ろうとするだろう。

 

防衛費1,000億ドルの日本軍事力はどんな姿になるか

 

自民党構想が現実となれば日本は巨額予算をどう使うだろうか。まず、既存部隊向けに調達装備品を追加するはずで、ステルス戦闘機や水上艦艇が対象だ。筆者としては日本に戦略を意識した動きを期待したい。政界トップはまず域内や世界で果たすべき日本の役割を考え、その実現につながる戦力整備を目指すべきだ。

 

その結果生まれる戦力は現行の自衛隊を拡大した姿とは大きく異なるはずだ。まず、日本や同盟国の戦略に呼応した形で領土、水路、空域へのアクセスを守る、あるいは否定する戦力となる。新編成の自衛隊はこの任務をどう実現するだろうか。以下の原則を守る必要がある。

 

1,000億ドル予算の自衛隊に必要な原則4点とは

 

まず、日本部隊は機動性、適応力を発揮し、島しょ間を移動したり、尖閣諸島・琉球諸島のような地点を防備する能力が求められる。自衛隊の人員・装備品は問題地点へ急派され、中国の攻撃に耐えこれを死守する。軽武装部隊輸送手段が必要だ。戦術防衛策が最強の戦闘形態になる。

 

日本の防衛方針では島しょ部を侵攻勢力に占拠されたのちに奪回するシナリオが主流だ。敗北主義ではいけない。日本は地理的優位性を生かし、領土を保持する部隊を配備すべきだ。

 

二番目に、自衛隊増強は米海軍が「分散型」部隊と呼ぶ流れに呼応すべきだ。部隊を広範な地域に分散配備することを意味する。分散作戦の裏にある考えは単刀直入だ。中国の航空兵力やミサイル部隊は本国から第一列島線まで十分に到達できる。人民解放軍は緒戦で戦闘効果を上げるだろう。これに対し同盟国側には装備品の数が足りず、しかも高価な装備となっている。ひとつでも喪失すれば、総合戦力が失われる。

 

だが、そもそも大部隊を細かく小規模に再編成すれば、装備品の集中度を減らせる。艦艇一隻や航空機一機を喪失しても全体戦力に影響は少ない。これが現在の作戦戦略構想だ。日本も小さく、安く、さらに適応力豊かに考えていく必要がある。

 

三番目に、日本の戦略立案部門は日本周辺の水域・空域のアクセス制限を基本に考えるべきだ。自衛隊はPLAの封じ込めを実施する一助となり、中国の侵攻部隊を第一列島線に止めることで、同盟国側の作戦実施を必要以上に複雑にするのを避けられる。そうなると、第一列島線で敵の航行・飛行への攻撃手段がカギを握る。島しょ上で分散する部隊の防衛力が優れれば良い結果を生む。有人無人の潜水艦、航空機、哨戒艇がその他合同部隊と連携し効果を発揮し、島しょ部に残る海兵隊部隊がPLAにミサイルを発射する。各部隊はこうして西太平洋や日本本土へのアクセスを阻止できる。再び、小さく考えるべきだ。

 

そして四番目に、予算が潤沢となっても自衛隊には回復力が必要だ。分散作戦がここで威力を発揮する。また基地のインフラも列島線上で大きく変化する。PLAロケット軍や空軍部隊が横須賀、佐世保、嘉手納といった主要基地を攻撃するのが開戦直後の状況となる。同盟軍は基地の防御力を引き上げつつ、機能を分散させる対策も迫られる。基地機能の一部を地下化するとか、あるいは対空対ミサイル防衛体制を強化する必要もある。第二陣となる基地群の整備も必要だ。被害が深刻な場合に前線基地の装備、機能を一時的に展開する先とする。

 

そうなると日本の防衛費増大は必ずしも派手さをかもしださなくてもよいことになる。航空基地や建屋のひとつひとつもイージス駆逐艦果ては空母と同様に重要となる。日本政府は国力の象徴を目立たせるだけの装備品調達の道は選ぶべきではない。

 

第一列島線へのアクセスを制することで日本の国土は防衛でき、中国に抑止効果をあたえつつ、必要なら中国を敗退させる。日本政府はノーススター戦略、つまり目指すべき姿を明確にしこの実現を目指しつつ、適正な予算手当と調達を進めるべきだ。

 

急ぐべきだ。■

 

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

What Should A $100 Billion Japanese Military Look Like?

ByJames Holmes

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfighting, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.