2016年6月7日火曜日

★米海軍がP-8をシンガポールから運用する意味



P-8の機内の様子など初めてわかる内容もありますが、そうですかP-3Cは乗員には優しくない機体だったのですね。ゼロから作ったP-8Aですが、わがP-1はどうなのでしょうか。そのうちに機内の様子などわかってくるとは思いますが、海外へのアピールをもう少ししたほうがいいのではないでしょうかね。それにしても中国は大変ですね。周囲に味方が皆無でこんな高性能機に見張られていては。

The P-8, Singapore & South China Sea Strategy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 06, 2016 at 4:01 AM

Sydney J. Freedberg Jr. photo
Singaporean Defense Minister Ng Eng Hen and US Defense Secretary Ash Carter pose in front of a US Navy P-8 Poseidon operating from Singapore.
OVER THE MALACCA STRAIT: アシュ・カーター国防長官はシンガポール国防相ン・エン・ヘンともにシャングリラ対話開会前に中国へ鋭く明瞭な声明を出した後、米軍が誇る対潜哨戒監視機P-8ポセイドンに乗り込んだ。
「この機はどんな感じなの」と長官がP-8搭乗員に尋ねるとトリー・プラム中尉は「大好きです」と答えた。
Sydney J. Freedberg Jr.
米海軍トリー・プラット中尉がアシュトン・カーター国防長官、ン・エン・ヘンシンガポール国防相を自らが機長をつとめるP-8に迎え入れた。
ボーイング製の同機に夢中なのはプラム中尉だけではない。米、オーストラリア、英国、インドの各軍に共通した受け止め方で各国が同機を配備しようとしている。
米海軍の最新鋭機P-8が真っ先に太平洋に配備されたのはとかく疑念を持たれる「アジア再バランス」が本物だとの証拠だと国防関係者や海軍上層部はいう。
国防戦略の担当者にとってはP-8がシンガポールを基地にしていることは興奮を呼ぶ事実だ。同国は昨年9月に同機の常駐を受け入れた。シンガポールに恒久的な米軍基地はないが、この事例はアジアにおける米国の新しい同盟関係のモデルになっている。世界有数の海洋ハブから最新鋭海上哨戒機が展開するのは中国にはうれしい話ではないだろう。
シンガポールから運用することの意味
まず地理だ。この地域は「スーパータンカーのスーパーハイウェイだ」とカーター長官はシンガポールへ向かう機内で報道陣に語った。
P-8体験飛行を終えてから「マラッカ海峡上空を飛行しましたがいつ見ても奇跡のような場所です。国際海上通行の混雑度、あらゆる国の船籍、すべての主発港、仕向け地と、まさしくグローバルコモンズの生きた証明であり、これこそ軍が守ろうとしていることです」
「シンガポールと比較できる国も立地条件も世界に存在しません」と長官はフライトの後でパヤ・レバ空軍基地で記者団に語った。
シンガポールはマレー半島先端で戦略的な位置にあり、マラッカ海峡につながり、同海峡を通り原油その他経済活動に不可欠な物資が韓国、日本、中国に輸送されている。逆に製品が今後は西方へ運ばれる交通の要所だ。
P-8配備は「この海域の重要性への共通認識のあらわれ」とン国防相がカーター長官の隣で発言している。「13百万バレルの原油が輸送されているのはホルムズ海峡に次ぐ規模。不安定要因が発生すればASEAN各国のみならず世界規模で経済活動が影響を受けます」
ロイドが海賊活動を理由に同海峡通過の保険料を数年前に引き上げが域内各国は2005年シャングリラ対話で海賊撲滅で合意し、米国など外部関連国が支援を約束した結果、共同パトロールが海空で始まり、保険料の高止まりは解消したとン国防相は説明している。
各国協力で海上通商の安全を守ればすべての国の利益につながるのであり、中国も例外ではない。「特定国だけが対象ではなく、むしろ中国も含めすべての国が対象なのです」とカーター長官は述べた。
だが作戦運用で問題がないわけではない。通過するのはタンカー、貨物船、漁船以外に中国の軍艦、潜水艦もある。海南島の軍事施設が出発地で、同時に中国の南シナ海進出の本拠地であり、人工島は海南の外縁部となる。そこで海南島の諸施設は中国が何としても秘密を守りたい対象で米軍が接近するたびに迎撃含め何らかの反対行動をとってくる。特にP-8のような長距離監視偵察機に敏感に反応する。
Navy photo
2014年8月に海南島沖合でP-8ポセイドン偵察機に嫌がらせをする中国海軍のJ-11戦闘機。
P-8の機内様子他
「高性能偵察機が海南島付近に来るのは中国には気に障ることです」と解説するのはブライアン・クラーク(退役海軍中佐、海軍作戦部長の上級補佐官を務めたあと戦略予算評価センターで主任研究員)だ。シンガポールのような戦略地点から運用するP-8は「水上活動を監視記録でき、フィリピンやヴィエトナムといった中国の南シナ海進出に反対する勢力に対する行動の記録も例外ではありません。またP-8が海南島から展開する中国潜水艦を監視していることにも懸念しているはずです」
P-8には対潜戦(ASW)能力もあり、浮上式ソナー(ソノブイ)を投では1960年代のP-3Cオライオンと比較すると二倍以上を投下できる。誘導式魚雷も運用する。現時点でソナー信号のプロセッサはP-3と同型式だが今後アップグレードし性能を引き上げ潜水艦探知能力は向上する。また水上艦探知能力も向上しており、ハープーンミサイルで攻撃も可能だ。
さらにP-8は高性能電子センサー類が搭載できるとクラークは指摘する。レーダー基地の位置を突き止め、無線交信を傍受すると、従来のEP-3の性能をしのぐ。中国がEP-3を海南島沖合で迎撃して戦闘機と空中衝突したことがあったが、EP-8としてシンガポールから飛来するのを中国が気持ちよく思うはずがない。
P-3やEP-3がシンガポールから飛来しても中国はここまで憂慮しないだろう。プロペラ推進の両機は空中給油を受けられないが、P-8は可能だ。速度と飛行距離からP-8は広い地域をカバーでき迅速に行動できる。高性能センサー類がすべてを探知できる。また新型機のため整備時間は短くその分飛行時間を多く確保できるのだ。
Sydney J. Freedberg Jr.
カーター長官とン国防相がP-8機内のセンサー操作員の仕事ぶりを視察した。
乗員の受け止め方
プラム中尉は記者に「P-3と比べてずっと新しい機材です」と離陸前に手短に取材に答えてくれた。パイロットとして中尉は「完全グラスコックピット」のデジタル表示の利点を挙げ、「飛行計器が全面的に新しくなり、今までなかった状況認識手段がつき、航空路の状況や気象状況がよくわかります」
「オートパイロット機能もあるね」とマーク・バーデン中尉(戦術調整士官(TACCO))が口を開いた。TACCOは機内のセンサー操作員を取りまとめる。
「そうね、オートパイロットはP-3でもあったけどうまく機能していなかった」とプラム中尉も述べた。
「機内で後ろから見ているとソフトウェアのインターフェイスがセンサーすべてで改良されていますね。無線装置がたくさん搭載されており、各システムの作動で正確度が上がっていると思います」(バーデン中尉)
「P-3も高性能でした」とバーデンは急いで付け加えた。「でもインターフェイスはここまでよくなかったですね。なんといってもP-3は1960年代のアナログ機で40年間にわたりアップグレードを重ねましたが、P-8は思い切って新しくスタートした全面デジタル機です」
「搭載機材の多くが前と同じで性能でもよく似ています」とバーデン中尉は述べるが、P-3の旧式装備は機内スペースをたくさん必要とし、操作員はかがみこむように対応していた。対照的にデジタル技術の恩恵でP-8機内はすっきりしており、乱雑ではない。センサー操作員とTACCOは一列に座り、高解像度の画像を共有したりメモの交換が簡単になった。
「替わってくれるかな」と操作員の一人が隣の同僚に気軽に頼み、センサー操作を任せてカーター長官、ン国防相への説明に専念した。P-3では機内配置の関係でここまで簡単にはいかなかっただろう。
P-3では乗り心地が悪く乗員がよく嘔吐する悪評があった。P-8はこれがない。「滑らかな飛行をしてくれます」とプラム中尉。確かに民間で多用される737が原型だ。「乗り心地が良くてずっと静かです」
結語
滑らかで静か。これこそシンガポールがP-8配備で望むことで、中国を怒らせることは避けたいのだ。「米国のプレゼンスは過去70年間にわたり安定の条件となってきた」とン国防相は述べている。「同時に状況の変化も認識している。中国が国力を伸ばし、われわれはこれがゼロサムゲームではないと理解している。封じ込めるかどうかの問題ではないのだ」
とはいえ南シナ海で緊張が高まる中でP-8は状況が円滑さを欠けば本領を発揮する機材だ。■
Sydney J. Freedberg Jr.
飛行後にクルーに感謝するアシュトン・カーター国防長官。左端はペンタゴン報道官ピーター・クック。


2016年6月6日月曜日

★米中もし戦わば 中国空母をどう攻撃すべきか




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How The US Navy Would Attack Chinese Carriers

JAMES HOLMES
12:24 AM


海軍大学校教授が中国空母を撃破する必要が生れたら攻撃潜水艦、空母搭載戦闘爆撃機、ミサイル他をどう投入するべきかを説明している。

  1. 中国は「空母キラー」誘導ミサイル各種で米海軍の原子力空母を猛攻撃すると喧伝をやめる兆候はないが、なかでもDF-21DとDF-26対艦弾道ミサイル(ASBM)は人民解放軍(PLA)が接近阻止領域拒否 (A2/AD) の要と期待する装備だ。
  2. 中国は自国の装備の威力を各方面に信じ込ませることに成功し、ペンタゴン取材の報道関係者も例外ではない。ペンタゴンはDF-21Dで「空母含む艦船攻撃」がPLAに可能で中国沿岸から900マイル離れても可能とあたかも事実のごとく記載した中国軍事力分析報告書を刊行している。
  3. 恐ろしく聞こえる。だが米海軍にも空母キラーがある。正確に言えば艦船キラーか。空母を機能不全にし沈没させのが可能なら小型艦にも同じ効果が生まれる。対艦兵器は数の威力で効果が増大し、有効射程距離、破壊力でも同様で米海軍は冷戦後の休日状態から目覚めている。どちらの陣営の空母キラーが勝利するかは海戦の発生場所で変わる。
  4. 空母キラーのイメージに西側はもう慣れっこになっており、中国のロケットが米海軍の誇りを海底に沈め、同時にアジア域内の同盟国への米支援も葬るというものだ。もっと悪いのはPLA指導部はわざわざ艦船や航空機をはるか沖合に送らずに世界の歴史に残る戦績をあげることが可能なことだ。ASBMの発射キーを回せばいいのだ。
  5. その可能性はある。有効射程など技術面になぜ執着するのか。DF-21Dは900マイルの射程があることになっているが空母艦載機の到達範囲をはるかに超えている。そうなれば空母打撃群はアジアの戦闘区域に到達したら大打撃を受けてしまう。さらに射程距離が食い違うのが恐ろしい。昨年9月の北京軍事パレードではDF-26の最大射程は1,800から2,500マイルだと伝えていた。
  6. 技術開発がうまくいけば、PLAの弾道ミサイルはアジアの第二列島線付近を航行する米海軍、同盟国軍側の艦船にとって脅威となる。DF-26の射程上限はASBMが列島線を超えた地点にも到達することになるからだ。
  7. これを大西洋に例えるとグアム東にいる艦船を中国沿岸から攻撃して沈没させるのはワシントンDCからグリーンランド東にいる艦船を狙うのと同じだ。グアムまで届くミサイルがあればハワイや米本土からかけつける部隊には危険状況を意味するが、グアム、日本、その他西太平洋各地での船舶運航はたえずミサイル攻撃の恐怖がつきまとうことになる
  8. ただしPLAがDF-21Dを供用開始して5年以上たつが洋上に向けたテストを一回も実施していない事実に注目すべきだろう。さらにDF-26では実戦想定テストをほとんど実施していない。平時の未完成技術は有事には失望させる結果しか生まない。

  1. それでもASBM技術を中国が成熟化させれば有効装備になる。米軍は相当する装備を有しておらず、今後も整備に走らないだろう。米国は中距離弾道弾開発を条約で禁じられており、かりに米政府が条約を反故にしても十年とまでいかなくても数年かけないと兵器体系としての開発、試験、配備は実現しないだろう。
  2. だからと言って米海軍に選択肢がないわけではない。米海軍は敵空母にどう対応するだろうか。答えはニューポートの海軍大学校で用いる標準的な内容にある。つまり、時と場合次第だ。
  3. まず交戦場所がある。空母同士の海戦となればはるか遠隔地の海上が舞台となりPLAの不沈空母たる中国本土から離れることになると、沿岸基地のASBM、巡航ミサイル、航空機が到達できない。
  4. これは艦体対艦隊の想定だ。事態はいつも投入する火力により決まるし、将兵の資質、戦術判断力、生への執着も作用する。PLA指揮官は陸上配備の兵器を大量投入してくるだろう。同時に米海軍も日本、韓国、オーストラリアの同盟軍とともに沿海部での戦闘を試みるだろう。そうなると中国同様に同盟各国の陸上配備装備が艦隊の戦闘力を補強することになる
  5. 戦術戦の舞台二つは大きく異なる。後者はより混乱を極め戦争の霧に包まれる可能性が高い。さらに敵が大胆な動きをすれば予測は一層困難だ。
  6. 米海洋戦略と沿海部近くの海戦で共通するのは潜水艦戦の重要性だ。原子力推進攻撃潜水艦(SSNs)には米ヴァージニア級、ロサンジェルス級があるが水上通商路の遮断が可能だ。あるいはA2/AD防衛網を突破して敵船舶を強襲し、敵の領海内で空母でさえも攻撃できる。
  1. つまりSSNsが米海軍の主力戦力だ。だからこそ議会がSSN部隊の規模縮小で現在の53隻を2029年に41隻体制にしたら大きな誤りとなる。これは23パーセントの戦力ダウンになり、一方で中国は2020年に潜水艦78隻を稼働させようとしている。ロシアも静粛化が進んだ潜水艦の復活に入っている。
  2. そうなるとアメリカの空母キラーは潜水艦になる。そこで近未来の対中国空母の戦闘を語るのは未来予測の様相を示してくる。現時点のPLA海軍は空母一隻しかない。ソ連時代に起工したものを完成させた遼寧で同艦は練習艦のままの公算が大きく、遼寧を改良した実戦用の空母数隻が建造中と伝えられる。

  1. 中国が二隻目の空母を完成させたと仮定しよう。初の国産空母となる。ニューポートニューズ造船所がほぼ同寸の初のスーパー空母かつ通常動力のUSSフォレスタルを起工から就役まで三年で完成させている。
  2. さらにPLA海軍が空母任務部隊を洋上で運用する技術を確立したと仮定しよう。そうなると中国は新型空母を切れ目なく就役させ迅速に艦隊に投入することになる。想定する遠洋公海上の衝突は2020年ごろとしている。.
  3. 2020年でも米海軍水上部隊の空母キラーの主役は空母航空隊で今と変わらない。原子力空母は戦術航空機をおよそ85機搭載する。将来登場する中国空母の航空隊規模の予測はばらついているが、固定翼機・ヘリコプター50機とすの上限を採用するとしよう。これだと米海軍の空母搭載機数はPLA海軍空母より70パーセント多くなる。
  4. また米艦載機が中国機より優れていることはほぼ確実だ。次に登場するPLAN空母は遼寧と同様にスキージャンプ式構造のようだ。このため機体重量に制約が生まれ、搭載燃料や兵装量でも中国機には不利に働く。
  5. 米海軍のCVNは蒸気式あるいは電磁式カタパルトで大重量の戦闘攻撃機を発進させる。兵装量が多いということはそれだけ打撃力も多くなり、燃料搭載量が増えればそれだけ長く飛べることになる。
  6. F-18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機はおよそ400カイリ先の敵を攻撃できるが、武装を投下した後はより長く飛行できる。中国がJ-15が同等の航続距離があると喧伝すしているが、ここでも米軍機が数の上で有利で、一機あたりの攻撃力も上だ。そこで米海軍が優勢と判定できる。

  1. さらに2020年には対艦兵器が性能を向上させているはずで搭載も始まっているだろう。現在の水上部隊の主力対艦兵器はハープーンミサイルで1970年代の産物で射程は60マイルを超える程度だが、PLA海軍の最新装備YJ-18は290カイリといい、影が薄くなる。
  2. そこで米兵装開発部門は射程距離の不足を大急ぎで解消しようとしている。ハープーンのメーカー、ボーイングは射程距離を二倍にしようとしている。ペンタゴンの戦略能力整備室はSM-6対空ミサイルを対艦攻撃用に転用し、水上部隊の攻撃範囲は一気に三倍になる。その他にトマホーク巡航ミサイルを対艦型に改装したものを昨年にテストしており、冷戦時代並みの超長距離攻撃能力が復活する。別に新型長距離対艦ミサイルが開発段階にある。
  3. 海軍にとって新型兵器の投入配備には重要な意味がある。「分散攻撃力」構想の下で海軍は各艦に火力を確保しつつ目標に集中させようとする。つまりこれまでより多くの艦船に対艦ミサイルを搭載し、補強策として電磁レイルガンや艦載レーザー兵器を投入して目的を実現する構想だ。
  4. だが米海軍には空母キラー専用の兵装は多数ある。潜水艦、艦載機、新装備の投入で米海軍は2020年でも大洋海軍力を十分確保しているだろう。問題は公海での交戦は対中戦で最も可能性の低いシナリオなことだ。たとえば太平洋中央部分で中国が沿岸火力支援が届かない状態で戦闘を挑んでくるとは考えにくい。
  5. 可能性が高いのはPLAの接近阻止兵器の有効範囲内での交戦だ。中国は自国領土に近い列島線付近の海域を一番心配する。同海域はアジア同盟各国の安全を守り航行の自由を保障し、海上パワーを確保する米国にも重要だ。そのため米中の対立が熱くなればこの海域や上空で交戦が始まる可能性が高くなる。
  6. 交戦が始まれば究極の面倒事になるかもしれいない。米軍がアジア本土に近づけばA2/AD防衛網に高い代償を払うことになる。空母キラーのASBMが西太平洋各地で発射されれば交戦一日目で西太平洋へ向かう艦船にミサイルの雨が浴びせられる。ミサイル搭載の小艦艇やディーゼル潜水艦が歩哨の役割となり、対艦巡航ミサイルを発射してくるだろう。
  7. 沖合警戒ラインでは不十分とばかりに沿岸から対艦兵器が発射される。ASBMだけでなく巡航ミサイルやミサイル搭載航空機が投入されるはずだ。原子力空母は浮かぶ飛行場だが各地の陸上航空基地や各種ミサイルと対決になる。総じてA2/ADは米側の艦艇指揮官にとって面倒な戦術作戦上の問題になるだろう。
  8. PLA海軍艦艇は西太平洋を航行する限りは太平洋の真ん中やインド洋他遠隔地より威力を発揮するはずだ。要するにPLA海軍とは砦防御を固める兵力なのだ。危険になれば容易に陸上防御網の有効範囲内に逃げ戻ることができ、自艦火力に陸上防御網を追加して強力な敵に対抗する
  9. 要塞艦隊には暗い運命が洋上はるか沖合で待っている。防御の傘は使えないからだ。母国近くでは沿岸火砲支援の元でうまく機能する。中国はここに期待している。

  1. 歴史の教訓を見てみよう。要塞艦隊構想は前からあり、海上権力の主導者アルフレッド・セイヤー・マハンがこの用語を生み出したと思うが、帝政ロシア海軍の例がある。ロシア艦隊は要塞砲の有効射程範囲内に残る傾向があり、火力で勝る敵に対抗していた。こうして艦隊は要塞の前方防御網となったが、艦隊は要塞砲を防御網に使っていたことになる。
  2. 要塞艦隊の背景としてマハンには旅順口の火砲が念頭にあったのだろう。渤海への入り口であり首都への侵攻経路にあたる旅順は日露戦争1904-1905年では東郷平八郎が指揮する日本帝国海軍連合艦隊が一貫して砲撃を加えていた。
  3. 旅順港のロシア分遣隊は要塞砲の射程内にいる限りは安全だったが、成果はほとんどあげていない。東郷長官以下の日本部隊はロシアと1904年に公海上で短い交戦をしている。1905年5月にも再び対決の場面が生まれ連合艦隊は対馬海峡でロシアバルチック艦隊と海戦をした。
  4. ロシア艦隊は簡単に日本海軍に圧倒された。だがもし旅順港の要塞砲が日本艦隊に正確な砲撃を加えていたらどうなっていただろうか。マハンの要塞艦隊構の有効範囲が拡大されていることがわかる。長距離かつ有効な火力支援があればロシアは逆に勝利をおさめていたかもしれない。劣勢な側が勝ちを収める場合もある。
  5. この例が現在でも通用するかは疑問だ。要塞としての中国は飛行基地や移動対艦兵器多数で数百マイル沖合の敵艦隊を標的にする。確かに大洋の真ん中では米海軍はPLA海軍に対してはるかに強力だ。艦隊対艦隊の対決で陸地か支援がなければアメリカの優位に動くだろう。だが仮説上ではアジア本土に近い場面での交戦では一方的な米優位は難しい。
  6. 米海軍が想定する大青原での交戦は発生の可能性が低いにもかかわらず装備作戦面がこれに特化しているようだ。一番脅威度が高く、発生可能性も高いシナリオはどちらなのか疑問は残る。空母攻撃兵器により要塞艦隊がマハンの死後何十年もたって懸念対象として復活している。中国にとっては優位な状況だ。

----本稿はNational Interestが最初に掲載した。
著者ジェイムズ・ホームズは海軍大学校で戦略論を教え、Red Star over the Pacificを共同執筆している。見解は本人のものである。

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2016年6月3日金曜日

シャングリラ対話へ向かう機内でカーター長官が語った内容に注目


精彩を欠く末期のオバマ政権でこの人だけが光を出しているように思えてなりません。中国からは冷戦時代の思考だと批判されているようですが、むだに緊張を作り出し結果自らの首を絞めているのは中国でしょう。次期政権にも現行路線が継承されることを強く望みます。

US Won’t Back Off On Korean Missile Defense, South China Sea: SecDef

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 02, 2016 at 10:06 AM

Sydney J. Freedberg Jr. photo
Defense Secretary Ash Carter speaks to reporters en route to Singapore.
ABOARD SECDEF1:  アシュ・カーター国防長官はシンガポールのシャングリラサミットへ移動する専用機内で報道陣に太平洋での連盟づくりに向かう米国を批判する中国に全く動じていないと述べた。
  1. カーター長官は土曜日に行うスピーチで重要点二つに触れるだろう。
  2. まず今月中に韓国と米国はTHAADミサイル防衛装備の韓国配備を発表する公算が大きい。中国がTHAAD配備に反対を表明しているのはTHAADが北朝鮮ミサイルよりも中国領空内での迎撃を行うと危惧しているためだ。カーター長官は報道陣に「これは同盟国同士で決めたこと」と繰り返し発言しており、あくまでも自衛のためと強調、つまり中国政府の関与すべきことではないと述べている。
  3. 7月にはハーグで国連海洋法条約にもとづき南シナ海を巡る中国-フィリピンの意見対立で裁定が出る見込みだ。(これ以前に出る可能性もある) 中国はかねてから裁定に従うつもりはないとしており、逆に防空識別圏(ADIZ)を一方的に設定する可能性を示唆している。一方的に同地区での航空航行の権限を主張すると挑発行為と受け止められかねないが、「仮に宣言があっても東シナ海でのADIZ設定の時と同様に軍の活動に影響は出ないだろう」と国防高官は述べている。
Ryan Lim - Malacañang Photo Bureau (Public Domain) via WikimediaPhilippine president-elect Rodrigo Duterte
フィリピン
  1. 南シナ海情勢を複雑にするのがフィリピンの大統領当選者、大衆迎合主義のロドリゴ・デュテルテで、アメリカとの同盟関係に疑問を投げかけている。現政権は退任間際になり米国との同盟を強化し、強化防衛協力合意(EDCA)によりA-10ウォートホグがフィリピンから南シナ海のパトロール飛行をしているが、あくまでも短期展開で今後の予定は発表されていない。
  2. カーター長官は報道陣に戦略的に重要な位置にありながら軍事的に脆弱な同国との同盟強化に疑問の余地がないと述べ、「EDCAに基づく活動は順調に推移している。方針変更は全く考慮していない。フィリピン新政権ともこれまで同様に共同でことにあたり民主的に成立した同盟国として処遇する」と語っている。
  3. 「フィリピンが『自らの進路を選択する』ことは理解できる」と国防高官がドゥテルテ自身の言い回しを引用して述べている。「フィリピンとの同盟関係すべてでフィリピン自身に選択の余地を残しているのは事実」
  4. カーター長官は今回のシンガポール訪問でフィリピン、中国それぞれの代表と会見する予定はなく、フィリピンの新国防大臣はまだ指名もされておらず、中国国防相はシャングリラに参加しないので、長官に同格の相手はいないことになる。ただし意見交換の機会はたくさんあり、カーターの部下は途中から今週土曜日に北京に飛び、第六回戦略安全保障対話(SSD)に臨む。
  5. SSDは米中高官会議の一環だ。会合に先立ち、関係者はワシントンで5月19日に戦略的安全保障の議論点を整理している。そのひとつに「忌憚のない、建設的な議論を双方が行い戦略的安全保障を論じる。海洋問題も含む」とある。外交的な表現だが米中が向かい合い強硬発言をしてにらみ合う(忌憚がない)様子が南シナ海の航行の自由を巡り想像できるだろう。建設的とは大げさに反対せず今後も会合を継続するが意見一致を見なかった内容を確認書あるいは論点として残すことだ。
  6. いかにも米中の安全保障議論の実態を表す話だ。

Missile Defense Agency photoTHAAD missile launch.
韓国のミサイル防衛
  1. 「中国とは競合の一方で協力の余地は十分ある」とカーター長官は述べ、北朝鮮へ中国が圧力をかけていることを評価する。「北朝鮮の行為には各国が不満を覚えている」
  2. だが記者の一人が尋ねた。(失敗したとはいえ)北朝鮮がミサイル試射を五回連続実施しており脅威対象としての再評価が必要ではないのか。
  3. 「テスト結果に関係なく、同国がミサイルを運用しようとしているのは明らかだ」とカーター長官は答え、「結果に関係なく、挑発行為である。安定を損なう行為であり、国連安全保障理事会決議に違反している」
  4. ミサイル実験を脅威と受け止めた韓国が米THAAD装備の展開を求めてきたのは事実だ。THAADは短距離用のペイトリオットミサイル防衛を補完できる。(ともに米陸軍の装備であり、太平洋で陸上兵力が軽視されがちな中で重要な存在だ) カーター長官はシンガポールで韓国国防相と会い、「当然この話題が出るだろうが、多く議論することにならないだろう。すでに実施に向けて動いているからだ」と述べた。
  5. 「これは同盟国同士で決めることで、米国と韓国間で北朝鮮ミサイル攻撃に対応する動きだ」とカーターは述べ、「同盟国による決定であり、両国が決めることだ」とした。
  6. 「まだ技術的な課題はある」と国防高官が述べている。つまり政治面、戦略面で今やTHAAD配備は実施すべきかの問題ではなく、どう実施するのかの問題だという。「まもなく公表するが、時期をお伝えできる立場ではない」
Navy photoP-8 Poseidon
「節度ある安全保障ネットワーク」
  1. 米国は韓国、フィリピンと正式な同盟関係を長期間にわたり維持し強化しているが、その他条約関係がない国とも軍事的つながりを強化する段階にきている。かつては非同盟を標榜したインドが米国との関係を強化している。かつては米国に敵対したヴィエトナムで米国は人道援助用装備を配備し、強力な武器の輸出でも制限を解除している。
  2. シャングリラ対話を主宰するシンガポールは沿海戦闘艦のローテーション配備を受け入れ、P-8ポセイドン部隊も受け入れた。カーター長官はシンガポール国防相とP-8に搭乗する。P-8は軽武装だが監視装置の性能は高く中国は警戒しており、中国戦闘機が数回にわたり危険な接近飛行を企てている。
  3. 「節度ある安全保障のネットワークが着実に大きな進展を示している」とカーター長官は総括した。「特定の相手は想定していない。特定の相手を孤立化させる意図もない」
  4. 特定国は孤立化させないかもしれないが、中国に圧力をかけることで行動を変えさせ法の支配による国際秩序を受け入れさせようとしているのは明らかだ。■

6月2日、ブルーエンジェルス、サンダーバーズがそれぞれ機体喪失



Two jets from elite U.S. military squadrons crash, one pilot dead

World | Thu Jun 2, 2016 8:50pm EDT
コロラドスプリングスから4マイル南の墜落現場のF-16.同機は空軍士官学校の卒業式典で上空通過飛行をした後で墜落している。REUTERS/JOHN WARK

米海軍と空軍の飛行展示隊所属の二機が同日中に墜落する珍しい事態が6月2日発生した。うち一機は空軍サンダーバーズで空軍士官学校の卒業式典を祝賀しコロラドでオバマ大統領が式辞を述べる上空を飛行していた。
  1. もう一機はテネシー州で海軍ブルーエンジェルズ所属F/A-18でナッシュビル南東で墜落しパイロット一名が死亡している。墜落地点はブルーエンジェルズが週末の展示飛行に備え練習中の空港から2マイルのところで海軍が事故原因は調査中。パイロット氏名は公表されていない。
  2. コロラドの墜落地点はピーターソン空軍基地から5マイルの原野だと空軍が発表。パイロット(氏名非公表)は射出脱出し、救難隊に無事回収されている。
  3. ホワイトハウス広報官ジョシュ・アーネストはオバマ大統領一行の支援にあたっていた軍用ヘリコプターが急きょ墜落地点に急行したと述べた。
  4. 同乗していたシークレットサービス捜査官が現場でパイロットの状態をチェックし、ピーターソン基地へ搬送した。ヘリコプターはその後大統領の車列の支援に復帰している。
  5. オバマ大統領はその後、ピーターソン基地でサンダーバードのパイロットを見舞い、重傷ではないと知り安堵したと報道官は述べている。
  6. アーネスト報道官はパイロットが大統領の目の前で立ち上がり歩いていると追加で述べている。大統領はとっさにパイロットを救難し他チームにも感謝の念を伝えたという。
  7. 墜落原因について空軍は調査を開始したと発表。空軍の航空戦闘軍団はツイッターで事故での負傷者はないとし、危険も発生していないと述べた。■

★タイがP-1、US-2導入に関心を示す



今回はうまく成約するといいですね。防衛装備を巡る技術協力は単なる装備の輸出だけでなく運用面での支援や共同作戦能力の向上につながり、高コストの防衛産業構造にも一定の改善効果が期待でき、一層高性能の装備開発のインセンティブにもなります。防衛産業、航空宇宙産業にとってはよい効果を生みますので応援したいところです。


Nikkei Asian Review
Exclusive

Japan, Thailand eyeing arms deal

June 2, 2016 2:00 pm JST
TOKYO -- タイ政府が海上自衛隊の川崎重工P-1哨戒機と新明和工業US-2水陸両用救難捜索機の導入に関心を示している。
成約すればタイ軍事政権と中国の間にくさびを打つ効果が期待できそうだ。
中谷元防衛相はプラウィット・ウォンスワン副首相兼国防相とバンコクで会見し防衛装備案件を協議。
川崎重工とNECは昨年11月のバンコク国際防衛装備展に出展しており、プラウィット副首相も視察していた。
日本が東南アジアで成約した防衛装備契約は一件のみで、フィリピンに海上自衛隊のTC-90練習機を捜索救難用途にリースで提供している。同様の案件はマレーシア、インドネシアと交渉中だ。
欧米各国は現タイ政権が2014年5月の軍事クーデターで誕生したため一定の距離を保っている。中国がこの状況に付け込み影響力を増やすことを日本は警戒しており、ASEAN加盟国に中国と領有権問題を抱える国もある中、中国がASEAN加盟国を分断させようとしているのではと見る向きもある。
ただし日本には防衛装備輸出で解決すべき課題も多い。先に潜水艦受注でフランスに負けたばかりだ。「不調に終わったことからマーケティングの知見不足が露呈した」と防衛省関係者は振り返る。
日本は2014年4月に武器三原則を改訂し、防衛装備輸出に道が開け、国際開発にも参画できるようになった。■


2016年6月2日木曜日

★★F-22生産再開はどうやら実現に向かいそう 日本も静観だけではすまなくなる?



本当にウェルシュ参謀総長はF-22生産再開が望ましい選択と信じているようです。気になるのは改良型開発-生産再開の前提として米議会は海外国の参画を考えている様子があることで、想定される同機の導入国がイスラエルとわが日本ですが、イスラエルはうまく逃げるでしょうから日本が相当の負担を迫られることが容易に想像できますね。そこまでしてF-22改がほしいとしたらF-35はどうなるのでしょう。これまでの投資が無駄にならないことを祈るばかりですが、考えれば考えるほど厄介な機体ですね、F-35は。

USAF warms to F-22 Raptor revival proposal


26 MAY, 2016
BY: JAMES DREW
WASHINGTON DC
予算制約のため新たに導入するロッキード・マーティンF-35より多くの旧型機を退役させざるを得ない米空軍だが、任期が残りわずかになった参謀総長マーク・ウェルシュ大将はF-22ラプター制空戦闘機改良版の生産再開は「突飛な案」ではないとする。
  1. ペンタゴンの最新の装備調達予算案によれば議会が求める作戦機材1,900機体制の実現に必要な予算が2021年度以降に不足する。
  2. 第一線戦闘機と飛行隊の規模は2022年から2026年にかけて「実質的に縮小」し、フェアチャイルド・リパブリックA-10「ウォートホグ」他長期にわたり稼働してきた機体が2031年に退役して最低規模になる。
  3. そこで対策が必要だが、5月26日に空軍協会主催のフォーラムでウェルシュ大将はこの点を問われ予算が課題だと認めた。ウェルシュ自身はF-16およびA-10を操縦した経験がある。グローバル展開できる超大国の地位を今後20年、30年、50年にわたりアメリカが堅持する決意があるのなら空軍に相応の予算配分を講じるべきと述べた。
Asset ImageUS Air Force
  1. 現時点でF-35A多用途戦闘機、ボーイングKC-46A空中給油機、ロッキードC-130J戦術輸送機が空軍の機材調達予算のほとんどを消費しているが、このうちライトニングIIの生産規模は2010年代通じ年間48機のまま推移し、2021年に60機に増える予定だ。空軍には第四世代機のロッキードF-16やボーイングF-15の追加調達予定はなく第六世代機開発も厳しい予算を考慮して減速させている。
  2. そこで解決策の一つがラプター生産の再開で、ロッキードがボーイング、ジェネラルダイナミクスと共同して生産したF-22はマリエッタ(ジョージア州)での生産を195機で2012年に終了している。エンジンにはプラット&ホイットニーF119を搭載した。
  3. 生産を終了させた当時の国防長官ロバート・ゲイツの決定を現在の空軍航空戦闘軍団司令官は「史上最大の過ち」と評している。ウェルシュは空軍長官デボラ・リー・ジェイムズとともにF-22生産ライン再開案は「負担不可能なコスト」になり、「ものの役に立たない」と決めつけてきた。だが空軍は論調を変えたようだ。
  4. 「突飛な発想ではない」とウェルシュは生産再開の功罪検討に加え正確なコスト見積もり作業をロッキードと共同で開始したと紹介し、「同機の性能は実証済みであり、今は新しく別用途に投入しています。そこでも素晴らしい成功を収めており、潜在可能性には大きなものがあります」と述べた。
Asset ImageUS Air Force
  1. 議会は2017年度国防政策法案で空軍にコスト構成と合わせて海外国による事業参画可能性の検討を2017年1月1日までに完了させる旨の追加条項を検討中だが、ウェルシュ大将はコストについて早々に答えが入手できると見ている。
  2. 「突飛な構想ではありません。皆さんも長官の発言はお聞きでしょうし、空軍も実施すれば費用が膨大になると主張していました。そこでもう一度出発点に戻り、詳細を見ることにしました」
  3. F-22は1980年代に構想され、F-15の後継機種として1997年に初飛行している。数々の技術的難題に悩まされ、コストは急上昇し、ペンタゴンの調達要求は当初の749機が、381機になり、最終的に187機になった。
  4. F-35共用打撃戦闘機含む案件の予算を優先するため同機事業は打ち切りとされた経緯があるが、F-35の初期作戦能力獲得は今年後半にやっと実現する見込みだ。
  5. ステルス各機が高額案件になり、ノースロップ・グラマンB-2やロッキードF-22、F-35が空軍予算に構造的な問題になったため戦闘機調達数が減ったのではとの5月24日の問いに国防総省で調達事業のトップ、フランク・ケンドール副長官は2011年度予算管理法および予算強制削減が原因であり、もっと上位の予算問題が発生していると答えている。
  6. 「予算状況の解決策を講じないと米軍事戦略の維持が非常に困難になります。F-35は購入価格に対して戦闘性能が一番高い機材で機数より性能が重要です。F-35を実際に運用している現場から聞いたのですが、第四世代機に対して圧倒的な性能を示しているそうです。同機より低価格だが性能も落ちる機材を導入しても問題解決になりません」
Asset ImageUS Air Force
  1. ロッキードのスカンクワークスはF-X事業を担当しているが、既存のF-22やF-35を性能改修して2030年代の航空優勢を確保する構想を提案している。
  2. 改良型F-22が望ましい選択であり第六世代戦闘機より価格でも有利とウェルシュは言いたいのだろう。
  3. 「第六世代戦闘機の代わりにF-22を改修し生産ラインを再開したほうが費用を抑えつつ機数をもっと確保できるのでは。すでにその方向で作業開始しています。20年先の世界で必要な仕事の実現手段は広く考えるべきです」■


2016年6月1日水曜日

今年のリムパックは27か国参加で最大規模の海軍演習に:中国も招待受ける



27 nations set to join RIMPAC exercise in Hawaii, California



WYATT OLSON/STARS AND STRIPES
Stars and Stripes
Published: May 31, 2016
今年夏のリムオブザパシフィック演習は四か国の初参加で合計27か国による世界最大級の国際演習になる。
  1. 新たに加わるのはブラジル、デンマーク、ドイツ、イタリアで演習は6月30日から8月4日までと米海軍が発表した。中国は前回2014年が初参加で今回も継続して加わる。
  2. 米太平洋艦隊がホストとなる今回の演習は中心を災害援助、海洋安全保障、制海任務、複雑度の高い海上戦闘に置き、合計45隻の水上艦艇、潜水艦5隻、航空機200機、25,000名が参加する。その他参加国はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、インド、インドネシア、日本、マレーシア、メキシコ、タイ、トンガ、英国等である。
  3. 演習では揚陸作戦、砲術、海賊対策、機雷掃海、爆発物処理、ダイビング、海難救助を主眼とし、対ミサイル防衛、対潜水艦・航空機対応も行う。
  4. 演習の大部分はハワイで行うが、揚陸作戦演習は南カリフォーニアを舞台とし、米海軍沿海戦闘艦がハープーンミサイルを試射する。潜水艦救難は今年から追加したと海軍は発表。
  5. 今年のリムパックで大きなスポットライトを浴びるのは「偉大なる緑色艦隊」として米海軍が進めるエネルギー源展開策、代替燃料の使用で燃料経費を削減しつつ軍事行動の即応度を維持する構想で、米海軍によれば参加艦艇の多くで認証済み代替燃料を混合して使うという。
  6. 米議会には中国の招待取り消しを求めているが、、南シナ海での中国の拡張主義でサンゴ礁を人工島に変換する作業を問題視している。中国はすでに一部で施設を完成し、滑走路が整備されているが米側はこれを軍事拠点化だと問題視している。
  7. ハワイ選出下院議員マーク・タカイは軍事委員会に所属し、アシュ・カーター国防長官に中国招へいをこの二年間の中国の海軍活動を根拠に取り消すよう求めている。
  8. 「これだけ好き放題に行動している中国を、もともと同盟各国協力各国のための演習に招待する理由は何かを問いている」とタカイ議員はカーター長官に三月の公聴会で尋ねている。同議員は中国の動きを「米国が同地域において目指す目的の真逆」だと評している。
  9. 4月に入り、中国から空母USSジョン・C・ステニスが予定していた5月の香港寄港を認めない旨の連絡が入った。これは同空母を中心とした打撃群が問題のスプラトリー諸島付近でプレゼンスを示したことへの反発と見られる。
  10. 米太平洋艦隊司令官スコット・スィフト大将は米中軍同士の交流を深めるべきと数回にわたり発言している。
  11. 前回2014年の演習で中国は四隻をリムパックに参加させた一方でスパイ艦一隻を送りハワイ沖合の国際公海上に配置していた。■

2016年5月31日火曜日

★ISIS空爆が想定を超える規模で世界各地から爆弾をかき集める米軍





The US is Raiding its Global Bomb Stockpiles to Fight ISIS

MAY 26, 2016 BY MARCUS WEISGERBER

反ISIS連合は爆弾41,500発以上を投下し、ペンタゴンは他地域の備蓄弾薬を使い始めている

  1. 米軍はスマート爆弾の備蓄を世界各地から確保して二年目に入ったISIS空爆に投入しているとペンタゴン関係者が明らかにした。
  2. 空爆作戦を統括するチャールズ・ブラウン空軍少将は「他地域でどんなリスクが生まれるかを注視していきます」とカタールのアルウデイド空軍基地からビデオ会議で述べている。「どこかから爆弾を引き出した場合、緊急事態が発生したらどう対応できるかが問題です」
  3. 連合軍の空爆は2014年8月から延べ12,453回を数えている。このうちイラクで8,500回、シリアが4,000回近くで米軍が9,495回を実施している。投下爆弾数は合計41,697発で米軍は同盟各国へ爆弾を提供している。
  4. このため爆弾不足が生まれているがペンタゴンの方針でクラスター爆弾の処理が必要となっていることで状況がさらに深刻になっている。
  5. 米軍は弾薬備蓄をヨーロッパ、中東、アジア太平洋で維持しているが、旧型弾薬が多くなっているとシンクタンク指摘がある。本当は新型爆弾に切り替えたいが予算管理法により思うに任せないのが現実だ。
  6. アシュ・カーター国防長官は二月にペンタゴンは議会に18億ドル超で新規製造爆弾45,000発の調達を要求した。米国内弾薬メーカーはこの要望に応えるべく増産体制を整えている。
  7. 爆弾不足になったのは需要をあらかじめ予想していなかったためだ。当時はイラクに米軍は駐留しておらず軍はアフガニスタンからも撤退しようとしていた。だがこれは実現せず、アフガニスタンには米軍は数千名が駐留中で、さらにイラクに数千名が戻り現地軍の訓練助言にあたっている。ブラウン少将は同盟軍が投下する爆弾の大部分は米国製誘導スマート爆弾と指摘する。「空軍が次年度予算で調達を増やす動きに出ていますが、実際に使用可能になるのはあと2年後でしょう」
  8. 爆弾不足は米中央軍以外にも広がっている。太平洋軍司令官ハリー・ハリス海軍大将は議会に対して爆弾備蓄を食いつぶす事態を憂慮していると発言。
  9. ハリス大将は2月23日の上院軍事委員会公聴会で「重要弾薬の不足が最重要事項であり懸念材料」との声明文を準備した。「米太平洋軍USPACOMは今後も着実に予算を付け、追加調達し、性能向上につながる弾薬技術を開発して侵略を抑止し、撃退するよう進言する」
  10. ハリス大将はまたPACOMは「弾薬技術の改良、生産増強、事前配備を求めるが財政圧力がリスク要因」とも指摘している。
  11. 3月10日付下院軍事委員会マック・ソーンベリー委員長(共、テキサス)宛書簡でハリス大将は弾薬追加調達を優先事項上位3項目の一つとし、AIM-9X、AIM-120D空対空ミサイル、SM-6対空ミサイル、MK-48魚雷を列挙したがすべてレイセオンが製造している。
  12. 3月22日の下院軍事委員会公聴会ではジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長から「全方面での即応体制が完成し、消耗分の重要精密兵器の補充が完了するまで数年かかる」との見解が出た。
  13. 2月にはカーティス・スカパロッティ大将(当時在韓米軍司令官)からクラスター爆弾がなくなり太平洋における米軍の備蓄が消耗されるとの警告が出ている。
  14. 同大将は「重要弾薬は適度の備蓄を維持し朝鮮半島での開戦初頭で優位性を確保すべきだ」と下院軍医委員会公聴会で陳述している。
  15. また「問題を複雑化しているのは『備蓄分期限切れと使用禁止によりクラスター爆弾が使えなくなっていることだ」とも述べている。
  16. 2008年に当時の国防長官ロバート・ゲイツがクラスター爆弾の備蓄と使用双方で制限を加えたが、米国はクラスター爆弾制限条約を批准していない。
  17. ゲイツ長官の方針は2019年まで有効で、「クラスター爆弾は今後の装備から外し、使用しない」としている。スカパロッティ大将は2月23日の上院軍事委員会公聴会で「クラスター爆弾には多大な作戦効果をを期待しており、半島で危機状態が発生した場合に使用したい」「クラスター爆弾に替わる装備がないこと、同様の効果を生む通常弾が存在しないことを懸念している」と語っている。
  18. 上院による2017年度国防予算認可法案では国防総省に対して国防長官からクラスター兵器取り扱い方針を議会に説明あるまではクラスター爆弾の処分を禁じている。この文言を追加したのはトム・コットン議員(共、アーカンソー)だった。
  19. 同法案では同時にペンタゴンに別途10億ドル勘定を設定し「同盟各国軍が将来の緊急作戦で使用し米国支援に当てる精密誘導弾薬類の予見できる消費量」の調達備蓄を求めている。コットン議員は上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長(共、アリゾナ)と協議しこの文言を盛り込んだ。

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Marcus Weisgerber is the global business editor for Defense One, where he writes about the intersection of business and national security. He has been covering defense and national security issues for nearly a decade, previously as Pentagon correspondent for Defense News and chief editor of Inside ... Full Bio