2016年7月18日月曜日

2030年のアジア経済上位5カ国は


2020年はもうすぐ先なので予測としては2030年が浮上しているようです。安全保障の環境を考える際にも国力の推移を見通すことが大事です。以下の予測には驚くべき要素がありませんが、それだけ主要各国の方向が定まってきつつあることの裏返しなのでしょう。この経済力を背景とした安全保障の議論が必要ですね。

 Asia's Top 5 Economies in 2030

Who are the winners and losers?
Shanghai's financial district. Wikimedia Commons/@Yhz1221
Shanghai's financial district. Wikimedia Commons/@Yhz1221


July 8, 2016


日本が世界最大の経済大国になるといわれていた時代を覚えているだろうか。予測にはリスクがつきものであるが、最近も中国が二ケタ成長を永遠に続ける、インドが急速に「新しい中国」になるとの予測が流布している。

アジアが世界経済の主役になるのは幻想ではなく、中国とインドの台頭は戦後世界を米国が独占していた時代から歴史的な経済規範が復活してきただけと見る向きが多い。

20世紀半ばまでアジアは世界GDP比で20パーセント相当に甘んじてきたが、日本や韓国の「経済奇跡」、東南アジアの新興勢力、中国の経済好況により今や40パーセントになっている。国際通貨基金は今後数年で世界の経済成長の三分の二を占めると見ている。

2030年アジアの上位五カ国を大胆に占えば、中国、インド、日本、インドネシア、韓国と見る。ただし、リスクは多数あり、地政学や経済上のショックが出現するかもしれない。疾病、革命、テロリズム、戦争がいったん発生すればその国はあるいは地域としてコースを外れることもありうる。

たとえば中国で民主勢力が蜂起し共産党政府を揺るがしたら、あるいは南シナ海で戦争が勃発したらどうなるか。韓国は北と統一を実現するのか。日本が移民制限を撤廃したら。インドではテロ攻撃の他に核戦争のリスクもある。

それにしても可能性のバランスの下に以下の五カ国が2020年代末までにアジアを牽引しているはずだ。

1. 中国
鄧小平が「最高指導者」に就任した1978年当時の中国経済は毛沢東一派の経済政策が数十年続いたための負担でつぶれそうだった。だが画期的な経済改革で共産中国が外資に門戸を開き、国営企業を民営化して中国は前例のない高度成長を数十年継続し、2010年には世界第二位の経済大国の座を日本から奪うに至った。

昨年のGDP成長率6.9パーセントは過去25年間で最低となったとはいえ、一部専門家がいうように従来が水増しだったとしてもこの数字はインド除けば世界のどの国よりも高い。年率10パーセントのGDP成長が続いた幸福な時期は終わったが世界最大の人口を有する同国の経済成長は終わることはない。

経済改革で輸出から内需へ、製造業からサービス業さらに国内需要へ切り替えたが、米農務省(USDA)の最新予測では中国経済は2030年まで年率5.2パーセントで成長する。

予測が現実になるかは成長減速を中国政府がどう乗り切るのか、また急増する債務と生産設備の過剰にどう対処するかにかかっており、投資先導の経済から消費中心の経済にゆっくりと舵を切れるかにもよる。

現時点でエコノミストの大方は中国が各課題に対応できると見ている。もしそうなら中国経済は米国との差を埋めるだろう。USDAは米経済の成長率を2030年まで2.4パーセント近くと見ている。

あとわずかのところで中国が世界最大の経済大国になれないとの予想もあるが、2030年のアジア経済では圧倒的な存在感を示していくだろう。

2. インド
この数十年間で中国が世界経済に躍り出たが、次はインドが同じ立場になる。

経済成長率ではインド経済は中国から第一位の座を2014年に奪い、USDAは2030年まで7.7パーセントで次の世界経済大国になると見ている。

IMFは現在第七位の経済規模のインドが早ければ2019年に第三位になると見ている。この後押しになるのが改革志向の強い政権と若年層が厚い人口構成による配当だ。

一次産品価格の低迷で打撃を受けるBRIC各国のブラジル、ロシア、中国に対しインドは一次産品の純輸入国であり消費国であるため現在の市況から大きな恩恵を受ける立場だ。

原油、石炭、鉄鉱石で低価格水準が続けば、インドの貿易赤字は縮小を続け、消費者の購買力は伸びるが、経済成長の最大の障害であるインフレはここ十年間で最低水準になっている。

課題は国民の不満をどう制御するかだが、世界銀行はインドがこのまま世界最速の経済成長を維持できると見ており、公共部門での投資と適度な規制緩和を背景にあげ、インドがアジアの成長株の座を守るのは確実と見ている。

3. 日本
さほど前でないがアジア経済再復興の象徴は日本だった。米専門家は争って東京へ飛び、日本の産業力の秘密を探り、政府行政官による民間部門の「指導」、勤労好きな日本のサラリーマンを経済力向上の原動力だともてはやした。

日本経済は1960年から30年間に年平均16パーセント成長をとげ、世界第二位の経済大国になったが、今となると予測はかならずしも大胆ではなかった。大規模な経済バブルで資産価格が不条理なまでの高額になり、皇居の土地価格でカリフォーニア州全部を上回るまでになったが、宴は1990年代初頭に終結を迎える。

「失われた20年」を現在まで早送りすると、経済予測がいかにばらばらだったかがわかる。安倍晋三内閣は「アベノミクス」で景気刺激を模索しているが向かい風に立っており、高齢化、労働人口減少、生産性の低下に加え公共部門の負債が増え続けている。

では2030年までにどうなるか。日本は史上最大規模の労働人口減少に見舞われることになり、OECDは政府財政の立て直し、経済構造の再構築、さらに女性や高齢者の労働増加を推奨している。

日本がここまで大きな経済や人口構造の変化に対応できるか不明だ。だがUSDAはインドがあと数年で日本を追い越すとしており、2030年の日本経済は世界第四位になっているだろう。

4. インドネシア
世界最大人口を誇るイスラム国インドネシアは今でもASEANの重鎮だが、多くの予測はこれから更に成長すると見ている。

マッキンゼーはインドネシアで2030年までに90百万人が消費社会に仲間入りすると見ており、中国やインドを除けば最大級の増加だ。JPモーガンはASEAN全体が2030年までに世界四番目の経済規模に成長する中でインドネシアの域内規模を40%とする。

たしかにインドネシアの需要や家計消費の増加は経済成長の大きな要因になるが、障害も多い。たとえば社会インフラの再構築、汚職追放、資源輸出での中国依存の是正などだ。

とはいえ、USDAはインドネシアの改革推進は可能と見ており、2030年まで年率5.1%成長を維持し、韓国を追い抜いてアジア第四位の経済規模になると見ている。

5. 韓国
韓国経済の輸出依存度はドイツに僅かに及ばないものの世界第二位だ。輸出の四分の一が減速傾向の強い中国向けで、韓国の経済鈍化は驚くべきことではない。

現代研究所によれば輸出の低迷と世界需要の低迷で国内消費が振るわず、企業の投資も低下している。製造業での雇用削減に家計部門の負債増加が加わり、韓国経済は問題に直面しているところに人口高齢化と労働力人口減少が追い打ちをかける。

ただし、OECDは韓国政府が堅実な政策をとり、国内支出増に向かい、行政改革、自由貿易協定を各国と締結し、女性の社会進出を後押し生産性の伸び悩みの打開は可能と見ている。

USDAも韓国の問題対処能力を信じ、低率ながらまずまずのGDP成長年率2.8%を2030年まで維持できると予測しており、アジア第五位の座に収まると予測。

また南北統一が実現すれば一気に数百万もの労働人口が加わるが、貧しい北を豊かな南が統一する財政負担を乗り越えることが前提だ。

世界でも有数の変化の激しい地域の行く末を予測することには絶えず読み間違いの危険がつきまとう。エコノミストのおかげで天気予報士が立派に見えるという笑い話もあるくらいだ。アジアの成長の中身と速度には議論の余地があるものの、経済拡大は誰も止めることができないようだ。

アンソニー・フェンソムはオーストラリアで活躍するフリーランス記者でアジア太平洋の金融・メディア分野の経験からコンサルタントも務めている。


★★★F-35の米空軍広報内容を検証---何ができて何ができないのか



そうだったのです。米空軍が公表したデータは都合の良い部分だけのつまみ食いの可能性があり、F-35は今の段階ではあまり期待できない機体なのでしょう。すでに米海軍はF-35Cにはセンサー機材としてしか期待していないような素振りですが、これだけの時間と予算をかけて実現した機体がこんな水準なのかと思うと唖然としませんか。更に同機に西側防衛が依存する事態が今後続くと思うと怖くなります。とは言えすべてを否定するのではなく、問題多い同機をこれからどうやって実戦化させるのか、第四世代戦闘機や無人機との共同運用をどうするのか、建設的に考えていきましょう。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to

Untangling the Claims Behind the Air Force’s F-35 Media Blitz

Here’s what we know and what we still don’t

by JOSEPH TREVITHICK
マウンテンホーム基地上空を飛行する空軍のF-35A 2016年6月 Air Force photo
  1. 歴史がF-35ライトニングIIに下す評価はわからないが、同機を巡る論争が史上最高にまで熱く展開しているのは事実だ。
  2. 米空軍は「第五世代」戦闘機として2016年末の作戦能力獲得宣言を狙い、広報を拡大し、批判派に対し同機は謳い文句通りの機体だと伝えている
  3. 6月にはF-35Aを7機、180名の人員とともにヒル空軍基地(ユタ)からマウンテンホーム空軍基地(アイダホ)へ移動させ、実際の戦闘作戦想定で演習を実施した。
  4. 「どの点から見ても優秀な実績を示しました」と演習後に述べるのはヒル基地の第388戦闘飛行隊を率いるデイヴィッド・リヨンズ大佐だ。
  5. 「機体を昨年秋に受領して数々の通過点があり、大きな進歩を遂げてきました」と第34戦闘飛行隊隊長ジョージ・ワトキンス中佐も語る。
  6. その裏付けで空軍は視覚に訴える広報資料を発表し詳細な点まで自画自賛している。
  7. マウンテンホーム基地ではF-35はミッションを予定通りすべてこなし、模擬空戦では一回も負けず、標的の90%にレーザー誘導爆弾を命中させた。
Air Force illustration
  1. この成果はペンタゴンが四ヶ月前に発表した報告書と大きく対照的だ。ペンタゴンの兵器試験部は同機の深刻な問題をソフトウェアから機体設計まで広く指摘した。
  2. まず旧型機体が相手でも空戦に勝てないとの数字が示されている。2015年6月に本誌War Is BoringはF-35が複座型F-16D練習機より機動性が劣るとの報告内容をリークしている。
  3. そのため空軍広報資料には首をかしげざるを得ないが、空軍は本誌を招き、マウンテンホーム演習の内容についての疑問を受け付けてくれた。
これが空軍から本誌に送られてきた実物である。 U.S. Air Force illustration
  1. そこで本誌はそれに応じた。さらに広報資料に関連した記録5ページを情報公開法で取得した。その一部を上に示した。
  2. それではわかったこと、わからないことを以下整理してみよう。

検証その1 「任務実施率88/88」

  1. F-35の最大の問題点は革命的なコンピューターの「頭脳」で飛行中の脅威の所在から故障の近づく消耗部品まですべてを扱うことだ。
  2. ソフトウェアコードは数百万行におよびバグがあれば搭乗員が身動きできなくなる。実際にパイロットがレーダーを飛行中に再立ち上げする事態が発生している。
  3. 空軍によれば予定ミッションをすべてこなした事自体がコンピューター作動が安定している証拠だという。演習では敵機を想定した航空戦、並びに地上攻撃があった。
  4. 「ソフトウェア問題により実施できなくなった事例はこれまで発生していない」と空軍航空戦闘軍団の広報官ベンジャミン・ニューウェルはWar Is Boringに電子メールで伝えてきた。「任務中止は一回も発生していない」
  5. テストフライト中に新規のソフトウェア問題が発生したのかは知る由もない。仮に発生してもフライト遅延他の影響はなかった。「一行で間違いがあったとしても軽微のソフトウェア欠陥として演習中に手直しは可能だったはず」とニューウェルも認めている。
Air Force photo
  1. だがパイロットが「機械」トラブルで機体を変更する事例が二件発生している。バッテリー不良と航法システムの故障だ。ニューウェルはそれぞれ「無害な種類」で「第四世代機によくある問題」と述べている。
  2. F-35が信頼できる機体で将来さらに信頼度があがるとしても故障は発生するものであり、どの機体にも避けられない。
  3. 今回のマウンテンホーム展開では整備員は常時四機だけ稼働可能にしておけばよかったと6月17日にリヨンズが航空戦闘軍団司令官ハーバート・カーライル大将宛の電子メールで伝えている。
  4. 平均すると第34戦闘機隊は毎日一機で一ミッションを飛ばしていた。
  5. さらにロッキード・マーティン社関係者が現地で待機し、ソフトウェアなど問題発生時にはすぐ手を貸す体制だった。リヨンズ大佐も「必要なときはスペアパーツをタイミングよく提供してくれた」と語っている。
  6. テストが成功したにもかかわらず、リヨンズ大佐はF-35が落雷に弱い問題はそのままだと述べている。もっと心配になるのは燃料タンク内で危険ガスの発生を防ぐ「機体不活性化」手順が空軍にまだないことで、機体爆発のリスクがある。
  7. 空軍はF-35が飛行から戻ると燃料タンクを冷却している。「この手順は面倒だ」とリヨンズ大佐は書いている。「空軍がこの問題を短期間で解決できると期待している」

検証その2「ドッグファイトで損失ゼロ」

  1. シンクタンクRANDのアナリスト二人、ジョン・スティリオンとハロルド・スコット・パーデューがコンピューターシミュレーションでF-35を中国戦闘機と対戦させた。2008年のことだ。報告書の「旋回できない、上昇できない、逃げ出せない」というくだりは有名だ。
  2. 2015年1月のテスト飛行がこの裏付けになった。名前不詳のパイロットの発言でF-35は使用後数年経ったF-16Dとの模擬空戦で「エネルギー面の顕著な不利」を示したという。
  3. 空軍、ロッキード・マーティン、海外導入国はすべてこの主張を否定している。同時に空軍はドッグファイトは過去の遺物に急速になりつつあると強調していた。
  4. 「映画トップガンのような近接航空戦は今日の戦闘シナリオでは非現実的だ」とニューウェルも書いてきた。「F-35およびF-22は『最初に発見、最初に撃墜』ができる第一線機だ」
An F-35A flies with an F-22. Air Force photo

  1. マウンテンホームの演習ではF-35はこの傾向を示していたようで第366戦闘機隊のF-15Eストライクイーグルを圧倒したようだ。
  2. 「大規模演習」が六回あり、毎回四機のF-35が僚機として飛んだとニューウェルは述べている。これだと辻褄があうのはライトニングIIの有利な能力の一つは情報の迅速な共有にあるからだ。
  3. 理論上はパイロットの一人が敵を発見すれば四人は同時に敵の存在を認識できる。
  4. ただちょっと複雑な事情がある。F-15Eは空の一騎打ちより対地攻撃を狙った機体だ。366隊の機体が追加タンクあるいは兵装を機外搭載して機動性を犠牲にしていたのか確認できなかった。
  5. 2015年1月の実験では試作型F-35は追加タンク2つを抱えたF-16でも追随するのに苦労している。「燃料タンク装着でも青軍赤軍ともに性能上は問題ないはずだった」とニューウェルは認めている。
  6. また模擬空戦の相手のF-15Eが何機だったのかも不明だ。実戦の撃墜「キル」に相当する演習の「スプラッシュコーン」の詳細は極秘扱いだ。
  7. また366隊は敵役専門に訓練した部隊ではなく、通常の戦闘飛行隊だ。もちろんパイロットには空対空の実戦経験はあっただろう。
  8. F-35相手の空戦を都合良くでっち上げるのはほぼ不可能だと空軍が主張し「シナリオはしっかりしたものでした」とリヨンズはカーライル大将に伝えている。だが経験豊かなF-16操縦経験者は言っている。「ヴァイパーでは生き残れなかっただろう」

検証その3「爆弾投下の94%が命中」

  1. 米空軍はF-16とA-10ウォートホグ対地攻撃機を全部F-35Aに交代させたいとするがF-35に近接航空支援任務で敵目標を撃破する能力があるのかという疑問が解消していない。これに対し空軍は同機が優れた戦闘爆撃機と証明するのに必死だ。
An F-35A drops a training version of a GBU-12 during a test. Air Force photo
  1. マウンテンホーム演習ではGBU-12ペイブウェイIIレーザー誘導爆弾合計16発が投下され、一発除き全弾命中させている。
  2. 2016年時点で空軍のF-35Aは500ポンドの同爆弾を機内に二発搭載できる。外部にもっと多く搭載できるがステルス性能が犠牲になる。
  3. 「今回のスタンドオフ想定では外部ペイロードの出番はなかった」とニューウェルは説明している。機体内部に爆弾搭載した場合、34隊は目標撃破に最低でも延べ8機が必要となる。
  4. 対照的にイラクでのイスラム国空爆の写真からウォートホグがパイロンひとつでGBU-123発を搭載しているのがわかる。F-16は左右の主翼で2発ずつ搭載が普通だ。
  5. またどれだけ目標に近く投下して命中判定となったかも不明だ。またF-35の高性能カメラやレーダーが目標捕捉に役立ったのかも不明だ。なお、レイセオンはGBU-12爆弾は地上部隊のレーザー照射対象から4フィート以内に命中すると説明している。
  6. 入手資料から空軍はF-35を実戦環境に投入する準備を進めているとわかる。だが同機の「初期」性能が実際に役立つ内容なのか疑問は残ったままだ。
  7. カーライル大将は2010年代の残りで同機をどうか強するのかでやや矛盾する見解を示している。空軍はライトニングIIをイスラム国戦に投入するのはペンタゴンから要請があった場合に限るというのだ。
  8. 「小官が初期作戦能力を宣言した瞬間、現地戦闘司令官がF-35を必要とすれば現地派遣する」とカーライルは今年のロイヤルインターナショナル・エイビエーションタトゥー会場で報道陣に語っている。「現時点の性能で説明し,要請あれば派遣する」
  9. 一方でカーライル大将は「今年F-35が戦闘対応可能となってもイラク、シリア派遣は2017年か2018年だろう」とも取れる発言を会場でしているとDefense Oneのマーカス・ワイスガーバーは伝えている。
  10. ただし空軍がF-35を戦闘投入可能と判断するには空軍自らが妥当と考える要求が満たされればよいのである。2012年にカーライルの前任者マイク・ホステッジは気づかれないうちに基準を切り下げ日程通りに事業がすすむようにした。
  11. 「ウェポンシステムで初期作戦能力宣言の基準は国防総省内に存在しない」とペンタゴン広報官のロバート・キャビネス陸軍少佐はWar is Boringにメールで伝えてきた。
  12. ただし国防総省の作戦能力試験評価部長によればF-35Aの最新版ソフトウェアでは「限定戦闘能力」しか提供できない。
  13. これに対して米海軍はF-35Cの戦闘能力獲得は独自の作戦テスト評価が完了してからという姿勢だ。海兵隊はF-35Bは2015年7月に初期作戦能力を獲得済みと説明している。
  14. 「完成に近づくといえどもF-35はまだ開発段階で、技術課題は残る」とペンタゴンの調達部門トップのフランク・ケンドール副長官はF-35開発室長クリストファー・ボグデン空軍中将と連名で声明文を上院に4月26日に送った。「ただし、両名は政府民間合同チームに問題解決の能力は十分あり、将来の課題にも答えられると信じる」
  15. 直近の懸念は射出座席の安全性だ。体重103ポンドから136ポンド(47キロから62キロ)のパイロットだと射出脱出で確率20%で死亡するとテストで判明した。ボグデン中将の部署は解決可能と説明しているが、すでに空軍は代替装備を探し始めたとDefense Newsが伝えている。
  16. 悩ましい同機で空軍が本当に進展を示したのか別の課題が露呈しただけなのかじっくりと見守らせてもらおう。■


2016年7月17日日曜日

中国はSCSを閉鎖し世界に5兆ドルの損害を与える選択に踏み切るのか



筆者は経済合理性がないから中国が南シナ海をほぼ全域を閉鎖することはないと見ているようですが、面子を潰された中国がどんな手を打ってくるかは正直わかりません。一連の動きは10月の国慶節を前に出てくるのではないでしょうか。国民の不満が自分たちに向かうとまずいので、また狙い易い日本を標的にした示威活動が発生するかもしれません。中国在留邦人の安全が危険になるかもしれませんし、尖閣でも大きな動きが出てかもしれません。資源埋蔵が有望とわかって声高に領有を主張するのは尖閣とも似ていますね

The National Interest


$5 Trillion Meltdown: What If China Shuts Down the South China Sea?


July 16, 2016

中国はミュージックビデオ、論説その他の多様なプロパガンダ手法からPLA海軍艦艇の実弾射撃まで駆使し、国際法廷の下した結果に反発している。法廷は中国の南シナ海支配を「無効かつ取り消し」とした。だが防空識別圏の設定以外に中国が更に一歩踏み込んで「九段線」内海域を立ち入り禁止と宣言したら経済にどんな影響がでるだろうか。
  1. 1947年に当時の国民党政権が曖昧に定義した九段線は南シナ海のほぼ9割を囲んでほぼメキシコの面積と同じで中国本土からは千キロ離れ、マレーシア、フィリピン、台湾、ヴィエトナムがそれぞれ領有を集中する場所を含む。
  2. 中国も航行の自由から恩恵を多大に受けているが、その他各国にも問題海域は通商航路として死活的で、日本、韓国、オーストラリアが行方に気をもんでいるはずだ。
  3. ここを通過する貿易は年間5兆ドルといわれ、世界の貨物船の半分が通過し、交通量も世界の3分の1を占める。
  4. マラッカ海峡とインド洋を通過する原油は南シナ海経由で東アジアに到達し、その量はスエズ運河を通過する原油の三倍、パナマ運河の15倍に達している。
  5. 原油輸入の大部分が南シナ海経由で各国に入る。韓国は三分の二、日本や台湾は六割、中国は8割だ。
  6. タンカー航路をロンボク海峡経由でフィリピン東部通過に変えた場合、日本では6億ドル、韓国は2.7億ドルの追加支出となるとの試算がある。
  7. オーストラリアから南シナ海を通過する貨物の流れは中国向けだが南シナ海が通過できなくなると航路変更で年間200億ドルの追加コストになる。

豊富な石油ガス資源

  1. 中国が南シナ海を狙う理由に石油ガスの巨大な埋蔵可能性もある。ここを「第二のペルシア湾」と呼ぶ専門家もいるほどだ。
  2. 米エネルギー情報庁試算では南シナ海に110億バレル相当の原油があり、メキシコの石油埋蔵量の規模で、天然ガスは190兆立方フィート(約5.4兆立法メートル)で中国のガス需要28年分相当だ。中国海洋石油は200億ドルを投資し1,250億バレル、500兆立方フィート(約14兆立法メートル)の天然ガスの推定埋蔵量を確かめようとしている。
  3. 推定が正しくても商業的に採掘が可能か意見が分かれるが、南シナ海がサウジアラビア除けば世界最大量の石油が眠る場所になる。
  4. ただし埋蔵地点は深海部分が多いことに注意が必要で、採掘は技術的にも経済的にも困難だ。中国にしても現在の原油価格低迷を考えれば安く既存の生産地から入手するほうが近道だ。だがフィリピンやヴィエトナムにとって南シナ海の石油ガスの経済可能性を失うことは深刻だ。

漁業権

  1. 中国沿海部で漁業資源が減少しており中国漁船は遠征漁業を続けており、インドネシア領海まで進出し摩擦が増加している。
  2. 中国は2012年以来南シナ海から他国漁船を排除してきたが、完全閉鎖した場合の東南アジアの被害は遥かに拡大する。商業漁業じゃGDP比でインドネシアで3%、マレーシア、フィリピン、タイランドでもほぼ2%になっている。

中国にとって閉鎖は意味があるのか
  1. 中国は貿易取扱量を武器に実質上すべての東南アジア各国に強い立場だ。ASEAN統計では2014年に中国は東南アジア全体の輸出の5分の一、EUは八分の一、日本は十分の一だった。
  2. マルコム・クックのようにカンボジア、ラオス、ミャンマーを除けば覇権を及ぼす事はできないが、南シナ海を閉じれば東南アジアのみならず周辺の経済大国、日本、韓国、オーストラリアも物流の制限で経済損失を被るとの見方がある。
  3. 仮に危機がエスカレートした場合、最も損失を発生させるのは貿易の中断で世界で唯一経済活動が活発な地域の足を引っ張ることだ。中国にとっても閉鎖の代償は南シナ海を開放して生まれる利益をうわまわるはずだ。

筆者アンソニー・フェンソムはオーストラリア・ブリスベーンでフリーランス記者をしながらアジア太平洋地区での金融・メデイア業界のコンサルタントをしている。

歴史に残る機体⑥ F-111 カダフィをあと一歩で殺害できた骨太爆撃機


ずっとなぜF-111はFなのか疑問に思っていましたが、この記事で疑問が解けました。F-117も同様の理由なのでしょうかね。ずっと期待され甘やかされながら活躍できず厄介者になりそうだったのが人生の後半でやっと真価を発揮したようなものでしょうか。でも人件費が高いので退職においやられた、そんな人生もありそうですね。

War Is Boring
ドロップアンドバーン」をするオーストラリアのF-1112008年 Allan Henderson/Flickr photo

The F-111 Was a Muscular Bomber That Nearly Killed Gaddafi

Aardvarks flew combat missions in Vietnam, Libya and Iraq

by SEBASTIEN ROBLIN
  1. 低空攻撃機ジェネラル・ダイナミクスF-111アードヴァーク(ツチブタ)は別の仕様を想定していた空軍と海軍に当時の国防長官が無理やり押し付けて誕生した機体だ。
  2. 開発中はトラブル続きだったが、高性能ハイテク夜間爆撃機として数十年に渡リ供用され、すっきり優雅な姿が特徴的だった。
  3. 米空軍は1960年代初頭には高高度飛行する爆撃機は低速でSA-2などレーダー誘導式地対空ミサイルから逃げられないと気づく。そこで小型長距離超音速爆撃機で地表すれすれを飛びレーダー探知を逃れる新構想が生まれた。
  4. 米海軍も空母防衛のため高速長距離迎撃機に空対空ミサイルでソ連爆撃機を遠方で排除させる構想の検討に入っていた。
  5. 新任の国防長官ロバート・マクナマラは共通機材にすれば両軍の要求を満足させつつ開発費用を大幅に節約できると信じ、空軍海軍は仕様面の妥協は本意ではなかったが、結局TFX事業へ協力せざるを得なくなる。1962年ペンタゴンはジェネラル・ダイナミクスに契約を交付する。
  6. 機体は空軍が望んだ戦略爆撃機より小さいため海軍が使う「攻撃機」の略称を避け、戦闘機の「F」がついた。

革新的な設計

  1. F-111は強力かつ燃料消費が優れたTF30ターボファン(アフターバーナー付き)双発機で、機体内部に爆弾を31千ポンドと作戦半径2,500マイル分の燃料を搭載し、外部タンクをつければ1,000マイル延長できた。空虚重量は20トンという大型機で完全装備するとこの二倍となった。
  2. F-111設計陣には一つ課題があった。飛行は超高速でも離着陸は短距離にする必要があったのだ。
  3. 主翼を小さくすれば抗力が減り、速度は高くなるが揚力が小さくなり離陸速度を早くする必要から長い滑走路も必要となる。当時の超音速戦闘爆撃機F-105サンダーチーフも主翼が小さく、離陸には1マイルもの滑走が必要で運用基地が制限されていた。
  4. そこでF-111では新技術の可変翼が採用された。離陸時は主翼を広げ最大限に揚力を得て、飛行時には主翼をしまい高速を得る。以前も試行はあったが実用化はF-111が初めてになった。
  5. 搭乗員二名はコックピットポッドに隣り合わせで座る。脱出時はロケット噴射でポッドを射出し、宇宙カプセルと同じように地上へパラシュート落下させた。
  6. 鍵となった技術革新は地形追随レーダーで機体前面の地形を把握し衝突回避できる飛行経路を自動形成するものだった。これによりF-111は地上200フィートを夜間や悪天候でも安全に高速飛行でた。
  7. 暗闇を物ともせず長い機首を地上スレスレに飛行することからツチブタの愛称が生まれた。
  8. 初期型は期待通り低空をマッハ1.2で、高高度ではマッハ2.5を出しながら着陸滑走路長はわずか2,000フィートで十分だった。また戦術機で初めて米大陸からヨーロッパまで無給油で横断飛行できた。
  9. だがF-111の基本設計は空軍の要求内容を重視していた。空母搭載迎撃機モデルF-111Bの公試結果はひどい有様でマッハ1を超えるのに苦労するほどだった。多額の出費の末の妥協の挙句、海軍型はスクラップにされた。ただし一部の機構はF-14トムキャットに引き継がれている。

  FB-111s. U.S. Air Force photo

アジアへの展開

  1. 空軍のF-111戦闘デビューは幸先悪いものだった。F-111A分遣隊がヴィエトナムに展開したのは1968年でうち3機がわずか55回の出撃で墜落喪失したのは主翼の安定機構の不良のためだった。空軍はF-111全機を飛行停止とし、解決に100百万ドル支出した。
  2. 1972年にラインバッカー空襲が始まるまで実力発揮の場がなかった。北ヴィエトナムのレーダー網をかいくぐりF-111は夜間空襲で飛行場や対空陣地を粉砕し、その後に続くB-52用に防空体制を弱体化した。
  3. アードヴァークは護衛戦闘機、電子支援、空中給油機が不要で悪天候でも稼働可能だった。ヴィエトナム戦で延べ4千回ミッションをこなしたが戦闘中喪失はわずか6機と当時の全機種で最低水準だった。
  4. F-111の東南アジア最後の実戦はカンボジアでクメール・ルージュがコンテナ船S.S.マヤゲスを拿捕した1975年5月だった。アードヴァーク2機が訓練飛行中で同船を発見し、その後1機のF-111が同船に随行していたクメール・ルージュ哨戒艇を撃沈した。
リビア空爆の準備をするF-111F,1986年4月 U.S. Air Force photo

派生型各種

  1. F-111は各型あわせ563機が製造され、A型に続くD型、E型は電子装備が充実し、エンジンの空気取り入れ口の変更と、推力がを増加した。
  2. FB-111は戦略爆撃機でエンジン性能を引き上げ全長を2フィート延長し燃料を追加搭載した75機が戦略航空軍団で稼働した
  3. F-111Cはオーストラリア専用に米国が売却したもので、FB-111とF-111Eの特徴を併せ持っていた。
  4. 決定版がF-111Fで推力35パーセント増のエンジン、性能向上型レーダー、ペイヴトラック赤外線目標補足ポッドで地上目標を捉え、精密誘導弾薬で攻撃可能だった。
  5. 1970年代中頃から42機のF-111Aが無武装のEF-111Aレイヴン(大カラス)電子ジャミング機に15億ドルで改装された。EF-111の中核装備はALQ-99Eジャミングポッドでレーダーを放射線で妨害し、味方機の探知を不可能にした。
  6. ジャマーの電流は機内に漏れて搭乗員の毛髪が立つほどでだった。このためレイヴンは「スパークヴァーク」の異名がついた。EF-111は尾翼上の受信用ポッドで識別が可能だ。
F-111F がマーク82爆弾を訓練投下している。1986年、 U.S. Air Force photo

エルドラドキャニオン急襲作戦

  1. F-111が世界史に再び現れたのは1986年でリビア工作員がベルリンのラ・ベルナイトクラブを爆破し米軍人2名が命を落とした事件の直後だ。
  2. レーガン大統領はリビアの独裁者ムアマール・カダフィの住居をトリポリ郊外で攻撃する命令を下した。作戦名はエルドラドキャニオン作戦とされ、国家元首を空爆で初めて暗殺する先駆けとなった。
  3. トリポリはSAMの25陣地で守られていた。F-111F一個飛行隊18機が攻撃の中心となり、4機のEF-111レイヴンが防空レーダーを妨害した。別に海軍がベンガジ付近を空襲した。
  4. ヨーロッパ各国が上空通過を拒否したためアードヴァーク各機は英国を離陸後、スペインへ迂回しフライトは13時間に及び空中給油を往復で6回行った。戦闘機の最長ミッション記録となった。
  5. 空爆は大きな効果を上げとはいうものの、F-111の作戦効果と作戦内容で不満足さが残った。F-111は1機を喪失。おそらくSAMによるもので乗員は死亡した。4機はエイビオニクス故障で兵装を投下できず、1機はエンジンのオーバーヒートでスペインに緊急着陸を迫られた。7機は目標を外し、爆弾数発が一般人居住地に落下し、危うくフランス大使館に命中するところだった。
  6. カダフィは空襲の直前にイタリア首相から警報を受け辛くも逃げ延びた。子ども8名と妻が負傷し、養子の幼児ハンナが死んだとされる。(ハンナの出生については謎があり、実際に生き残ったとも言われる)
  7. カダフィは衝撃を受けたものの、その後もテロ攻撃を継続し、中でもパンナム73便のハイジャック、スコットランド、ロッカビー上空でのパンナム103便爆破はよく知られている。
砂漠の盾作戦でのF-111F U.S. Air Force photo

イラク

  1. 1991年1月17日、砂漠の嵐作戦開幕の夜にアードヴァークは砂漠を低高度で縫うように飛び、イラクの防空、主要軍事施設をレーザー誘導爆弾で攻撃した。一方、EF-111レイヴンは連合軍部隊に随行しイラク国内深くに侵入し、イラク防空レーダーをジャマーで妨害した。
  2. 1991年のイラク戦に投入されたのはF-111Fが66機とF-111Eの18機でミッションは5千回にのぼった。
  3. 風説と違い、開戦初日のイラク空軍は無力ではない。F-111の2機がMiG-23の赤外線誘導式R-23ミサイルにより被弾した。MiG-29も別のアードヴァークをR-60ミサイルで被弾させている。頑丈なアードヴァークの面目躍如でこの3機は基地に帰還している。
  4. 2月にはEF-111でそこまで幸運でない事例が出た。敵機を探知後、回避行動中で地上に激突し、乗員全員が死亡した。
  5. ただしジェイムズ・デントンの操縦するレイヴンは尋常でない勝利を手にした。砂漠の嵐作戦初日にデントンのEF-111は早朝の暗さの中を高度400フィートで飛行し、F-15E戦闘爆撃機編隊と上空護衛するF-15C戦闘機編隊を先導していた。
  6. 飛行場H3を通過するとイラクのミラージュF1戦闘機一機が後方から迫ってきた。デントンは鋭い左旋回のあと右に方向を変えチャフを放出し、熱追尾ミサイルを回避した。イラクのパイロットはレイヴンの回避行動に対応する中で空間識を失い、地上へ激突した。無武装のレイヴンが空中戦勝利をあげ、F-111「戦闘機」となった。
  7. イラク防空網が弱体化すると、アードヴァークは地上攻撃に中心を移した。F-111Fのペイヴタック装備は「タンク・プリンク」すなわち赤外センサーによる装甲車両識別で効果を発揮し、レーザー誘導爆弾を頭上から投下した。F-111はイラク車両1,500両を識別した。
  8. その他の標的にサダム・フセインが妨害工作をした油田の連接管がありペルシア湾を汚染した原油流入を止めた。
  9. 砂漠の嵐作戦はアードヴァークの最後の現役活躍の場となり、F-111は1998年に米空軍から退役した。アードヴァークは効果は高いが保守点検コストが高く、空軍は短距離攻撃ミッションはF-15Eストライクイーグルで、長距離攻撃任務はB-1爆撃機が引き継げると判断した。
  10. 空軍にEF-111の交代機種がなく、ジャミング任務は海軍海兵隊のEA-6BプラウラーとEA-18Gグラウラーが今でも実施している。
オーストラリのゴールドコーストで「ダンプアンドバーン」をするF-1112008年.Simon Morris/Flickr photo

オーストラリア

  1. オーストラリアのF-111は2010年まで供用され、同国では愛情をこめ「ピッグ」と呼ばれた。
  2. 1973年受領のF-111C24機に加えFB-111を15機、F-111A4機をオーストラリアは運用した。戦闘投入は一回もなかったが、オーストラリアはF-111で兵力投射能力を確立し外交上の強みとなった。
  3. ピッグはオーストラリアの航空ショーの目玉で燃料を放出したところにアフターバーナーで点火する「ダンプアンドバーン」は有名だった。同国は対艦ミサイル運用の改修のほか、4機を偵察用に改造した。
  4. ただし運航コストが高く、F-18Fスーパーホーネット24機に交代させた。
  5. こうしてF-111は全機が退役したが、類似機種がまだ使われている。ロシアのスホイSu-24フェンサーはF-111の直後に企画され、驚くほど外観や任務が似ており、可変翼付きでもある。
  6. アードヴァークの航続力、速力、兵装搭載量には及ばないが、Su-24の生産数は三倍で、今日でも300機近くが稼働中だ。
  7. トルコ空軍のF-16が2015年にシリア上空で撃墜した機体もロシア空軍のSu-24で外交面で大事件になった。■

2016年7月16日土曜日

米空軍戦闘機パイロット不足700名、空軍長官・参謀総長の対応策とは

景気がよく軍パイロットが残らないため戦闘機パイロットが不足とのことで、空軍にはつらい状況のようですが、無人機の拡充に進む契機のひとつにもなりそうですね。人口減少が加速する日本では大丈夫なのでしょうか。空軍長官も参謀総長も専門サイトに見解を発表するのは米国のすごいところで日本にも参考になるはずです。

The US Air Force Is Short 700 Fighter Pilots. Here’s Our Plan to Fix That.

At Bagram Air Base, Afghanistan, a U.S. Air Force F-16 Fighting Falcon “Triple Nickel” aircraft pilot assigned to the 555th Expeditionary Fighter Squadron from Aviano Air Base, Italy, awaits weapons check, July 14, 2015.U.S. AIR FORCE PHOTO BY TECH. SGT. JOSEPH SWAFFORD/RELEASED
  • BY DEBORAH LEE JAMES
  • GEN. DAVE GOLDFEIN
  • JULY 14, 2016
かつてない多忙な中で規模を大幅に縮小した米空軍はパイロット賞与を増額し、家族と過ごせる時間をより多く与え、民間航空部門や好調な経済と対抗すべきだ。

ペンタゴンの様々なリーダーシップの現場でいろいろ考えさせられる場面がある。その一つに米経済に良いことが全志願制の米軍に深刻な問題となる、ということがある。低失業率で活発な雇用は国にとっては朗報だが各軍には隊員の新規確保と人材つなぎとめが難題となる。

  1. 具体的には戦闘機パイロット不足が拡大中だ。500名から700名が今年度末に不足すると見られ、世界各地で作戦展開の必要水準から21%足りない。これだけの乖離は深刻で注視すべきだ。しかも空軍だけではない。海軍、海兵隊も同様の問題に直面しているのは民間エアライン業界が定年パイロット退職に伴い大規模な採用を続けているせいだ。また新基準でエアラインパイロットの年間操縦時間が1,500時間上限となり軍が養成したパイロットが改めて注目されている。

  1. ただしエアライン業界だけが空軍パイロット不足の原因ではない。飛行時間の大幅削減はペンタゴン予算の削減が出発点だが、海外勤務が終わると急に手取り収入が下がり生活を切り詰める必要があることも一因だ。間違いなく問題は悪化の一方で解決の兆しは見えない。

  1. 筆者両名の責務はリーダーとしてこの課題に正面から立ち向かい、良識ある方法で原因を根本解決し、空軍隊員各位に隊に留まる確たる理由を実感させることだ。軍パイロットも民間パイロットも国の安全と商業活動でそれぞれ重責を担う必要不可欠な要素だ。

  1. 空軍はパイロット不足を以前も経験しており、民生部門の雇用ピークに影響される周期現象と理解しているが、今回の影響は深刻だ。空軍は25年間に渡り戦闘を継続しており、ここまで業務が多忙になったことはなく、一方でここまで規模を縮小したことはない。そのためパイロットのみならず人員全般の不足への対策で判断誤りのk許容範囲がない。民生部門なら既存の労働市場に求人すれば欠員解消できるが、軍では技能専門職を自ら育成する必要があり、相当の期間を要する。

  1. 以上を念頭に現状を逆転しパイロットをつなぎとめる策を果敢に実行に移す。新規パイロット養成を拡大し、第一線飛行部隊で時間を食う間接業務の負担を軽減し、飛行手当の拡充を図る。議会も問題の深刻さを認識し空軍に残る中堅パイロットの年間賞与を増額する提案が議会に提出されている。賞与25千ドルは1999年から据え置きのままだがインフレで価値は下がっている。

  1. 経験から金銭がすべてではないとわかっているが、軍人が民生部門の給与水準に魅力を感じると軍にとどまるか去るかの分かれ目になるのは棒給額だ。今のところ賞与を受け取るのは少数の戦闘機パイロットの男女だけで金額も低い。必要な措置を講じ水準を引き上げ意味のある形にしたい。

  1. 軍の一員が一番幸福感を覚えるのは装備が十分で、予算手当が十分かつ必要な支援を得て持てる力を十分発揮できる時だ。そこで追加措置を取る。戦闘任務から帰還する飛行隊隊員には家族と過ごす時間を十分に与えるとともに操縦訓練予算を潤沢に確保してキャリアを引き上げる道を開く。飛行時間の問題の課題のひとつは整備要員を確保し機材を飛行させることだ。

  1. 人員対策を各種検討し、整備人員不足のため機材を遊ばせておくことがないようにしたい。パイロットも整備員もともに民生部門が狙う人材であり、空軍はエアライン業界と協議し、国防のニーズと民間部門のニーズを調整したい。さらに言うまでもないことだが、健全な方向性に留まる中で予算強制削減措置の再発の余裕はないのだ。

  1. 現時点で特に重要なのはパイロット全体に実行可能な対策を打っていると示すことだ。米国、友邦国にとって世界が危険な場になっている事実そのものは変えられないが、空軍力は統合運用の中で世界各地で安定の実現手段である。経済活況の中で空軍の有能人材が引きぬかれていると嘆くばかりではダメだ。

  1. なすべきは各隊員に任務の意味を思い起こさせ軍に残る確たる理由を与えることだ。


デボラ・リー・ジェイムスは空軍長官、デイヴ・ゴールドファイン大将は空軍参謀総長。