2021年11月3日水曜日

ノースロップグラマンCMに写る興味深い新型機など。YouTubeと連携してますので本編もご覧ください。

 

Northrop Grumman Aircraft Stealth

YOUTUBE SCREENCAP

 

高機密度の詳細は見せず、ノースロップグラマンCMに同社がめざす次世代制空戦術戦闘機等の姿が垣間見える。

手な広告となると、ノースロップグラマンの思わせぶりな宣伝の右に出る企業はない。情報関連の装備品を陰影に隠しつつ、興味をかきたてるのがその手法だ。同社恒例のスーパーボウルCMでその後B-21となった長距離打撃爆撃機(LRS-B)が先に登場していたのが忘れがたい。今回の新しいCMで各種機材が登場している。当然ながら機密度が最高レベルの機材は出していない。それでも今回片鱗を見せた装備についてあれこれ想像してみるのは楽しい体験だ。

今回はハンガー内の設定でエレベーターのドアが開くと中にノースロップグラマン機材がそろい、現有のものから近未来に登場する機体が見える。まるでマイケル・ベイ監督作品のようだ。次のリンクでこのCMを見てもらいたい。

Welcome to Northrop Grumman | Defining Possible in Aerospace

ここから何を読み取るべきか。ハンガーは現在と未来に区別されているようだ。右は海軍、左は空軍用の機材だが、すべてその通りでもない。では左から右に詳しく見てみよう。

  • まず前方に次世代制空機(NGAD)の有人型が見える。空軍海軍は次世代機開発を並行して進めており、各種システムのファミリー構成となり、無人型、長距離有人型も含む。大型、ステルス機で無尾翼型となる。大きな背骨ラインから機体全体を覆う形状だ。空気取り入れ口もステルスを意識している。見えないが反対側にも空気取り入れ口があるのだろう。極秘のうちにテスト中のモデル401「Son of ARES」実証機(ノースロップグラマン子会社スケイルドコンポジッツが製造)に通じる形状が見られる。NGAD実証機は飛行開始しており、ノースロップ・グラマン製の可能性もあるが、NGADをめぐる商機は今後拡大する。他社も当然ながら事業に参画したいはずだ。

  • 次にとがった白い機首が見え、ノースロップ・グラマンが目指す新型低価格の忠実なるウィングマン無人戦闘航空体(UCAV)コンセプトのようだ。原型が先に出たモデル401で、実際にモデル401を転用した機体もある。ノースロップグラマンはペンタゴンとあわせおそらく同盟国向けにこの系列の機体を作ろうとしている。

  • 左の一番奥に全翼機形状の無人戦闘航空体が見え、同社のX-47B実証機と酷似している。同機は海軍の空中給油・偵察機選定に漏れ、ボーイング案が採用されMQ-25スティングレイになった。ノースロップグラマンは二機残るX-47Bに新機能を盛り込むとしている。同機に好機が再び訪れることを祈りたい。ハイエンドステルスUCAVとなればよい。さらにMQ-9リーパー後継機として謎を呼ぶ空軍向け次期MQ機のノースロップグラマン構想図はX-47Bそっくりだ。とはいえ今回の映像にある機体は空母運用想定だと機首についたベアローンチバーでわかる。

  • 中央奥にB-2スピリットが見える。現在と今後をつなぐ存在としてなのだろう。遠景にB-21レイダーあるいはRQ-180が離陸しているのが見える。両機は外形が似ている。RQ-180は超極秘機なのでB-21の可能性が大だ。遠景では両機は違いがわからない。

  • 右後方にはEA-18Gグラウラーが見える。ノースロップグラマンは電子戦装備で大手企業だ。

  • 次にE-2Dホークアイの姿が見える。長年海軍で供用中の空中早期警戒統制機の最新型で米海軍向けに同社が製造している。. 

  • 最後にMQ-4Cトライトンがある。海洋監視用にグローバルホークを改装したものだ。

これで全部だ。ノースロップグラマンは進行中の機材も一部紹介してくれた。中には構想段階のものもあるが、余裕をもって示した。

ここには出ていない事業も多数あるとはいえ、ノースロップグラマンがめざす高性能機材の広告は目の保養になる。いつも同社機材は見れば見るほど欲しくなる。

追記

HD版のCMは下をクリック。航空機以外にサイバー、宇宙、水中部門の製品コンセプトが見られます。

Welcome to Northrop Grumman

Glitzy Northrop Grumman Ad Teases Totally Notional New Long-Range Stealth Fighter (Updated)

While it doesn't give away sensitive details, the ad points to Northrop Grumman's ambition to build the next-generation air dominance tactical jet.

BY TYLER ROGOWAY NOVEMBER 1, 2021


ファイブアイズはナインアイズへ。米国防予算法案に加盟国拡大が盛り込まれた。日、韓、インド、ドイツが追加候補国に。対中警戒網の強化が必要との認識。

 

 

中国への対抗には従来の英米中心の体制では不十分だとの米議会筋の見解が出ている。


  1. 米国主導の「ファイブアイズ」取り決めは第二次大戦の遺産であり、中国を相手に対抗するため改編が必要だと下院情報小委員会の有力議員が語っている。

  2. アリゾナ州選出民主党のルーベン・ゲラゴRep. Ruben Gallego下院軍事委員会特殊作戦・情報活動小委員会委員長は長年誰も手を触れなかった取り決めの拡充を実行すべきとの文言を今年の国防予算案に盛り込んだ。

  3. 条項では国家情報長官及び国防関連各省に「ファイブアイズ」加盟国(米、豪州、英国、ニュージーランド、カナダ)間の情報共有の現状及び欠陥に加え、日本、韓国、インド、ドイツを加盟させた場合の効果及びリスクについて報告を求めている。

  4. 「『ファイブアイズ』モデルは時代遅れだと思う」とゲラゴ委員長はDefense OneNextgov主催の2021年度国家安全保障フォーラムで発言した。「範囲の拡大が必要だ。今までの英米中心の情報共有では不十分だ」

  5. 同条項では「当委員会は脅威の構造がファイブアイズ誕生時の想定と大きく変わったと認識し、中国及びロシアの脅威を重視。当委員会は大国間対立に対応すべく、ファイブアイズ加盟各国は従来以上に密接に作業し、志を共有するその他民主国家と信頼の輪を共有すべきと考える」とある。



  1. 前国家情報長官ジョン・ラトククリフの補佐官を務めたダスティン・カーマックは米国はインド太平洋諸国と情報共有協力を強化しており、ファイブアイズの正式変更は「言うは易し実行は困難」とする。

  2. 「すでに相当の作業が舞台裏で実行されており、従来より良好な連携が生まれている」とカーマック(現ヘリテージ財団研究員)は述べた。

  3. 例として、米国は軍事通信情報や基地をインドと共有しており、オバマ政権トランプ政権による交渉の結果だという。

  4. カーマックはファイブアイズ拡大について「賛同する」としたが、ファイブアイズの情報源や収集方法を守ることができるか追加国の審査が必要と注意喚起している。

  5. ファイブアイズは第二次大戦中に生まれた英米間の情報収集合意が元で枢軸国の打破を目指した、その後三か国を加えた。合意は70年余も存続している。

  6. ここ数年は中国が加盟国を驚かすことが増えている。今夏の極超音速ミサイル実験もそのひとつで、ミサイルは地球を一周した。

  7. ガレゴ委員長は日本、韓国、インドを加えれば米国は情報網を拡充し、中国への監視機能が向上すると述べ、理由として該当国の文化・地理条件を上げた。

  8. 「韓国とは長年にわたり協力を続け、韓国は中国国内やアジアに優秀な情報源を有し、うまく機能させているが、米国は情報を英国との例と同様に共有している」

  9. ガレゴ委員長は長年続いている構造の変更は手続き面や慣行の面からきびしい戦いになり、候補各国の情報面での関係で精査が必要と指摘した。一方で外交関係や情報活動の効果の点で新規加盟を認める効果が生まれるとした。

  10. 「基本は中国への警戒と同時に各国を勇気づけることだ。つまり『信頼するからこそ情報共有の輪に迎える』と伝える」

  11. ファイブアイズ各国はヨーロッパにルーツを有する白人国であり、ガレゴは拡大には既存加盟国の抵抗が出るかもしれないとする。

  12. 「アジアの非白人国家との情報共有に抵抗する向きが想定できる。率直に言ってこうした感情は捨てるべきだと思う。なぜなら世界は一変しており、こうした友邦国と一緒に戦う必要があり、こうした国なしでは戦いたくないからだ」

  13. .ガレゴが中心となりまとめた条項は国防予算認可法案に盛込まれ、9月に可決された。上院通過はまだで、下院案との調整が必要だが、ジョー・バイデン大統領に送られ署名の上成立する。■

 

‘Nine Eyes’? Bill Would Look at Adding Four Countries to Intel-Sharing Pact

 

Lawmaker says current ‘Anglophile view’ is insufficient against China.

BY TARA COPP

SENIOR PENTAGON REPORTER, DEFENSE ONE

NOVEMBER 2, 2021 12:26 PM ET


2021年11月2日火曜日

USSコネティカットの事故調査結果が判明。水中地形に衝突していた。潜水艦修理設備の不足がこの事件で注目を集めている。

 


USS コネティカット (SSN-22) が横須賀に入港していた。July 31, 2021. US Navy Photo

 

 

USSコネティカット(SSN-22)の事故調査で同艦は南シナ海で海図に載っていない海山に衝突していたと判明した。

 

事故は10月2日発生し、調査は先週終了した。報告書は第七艦隊司令カール・トーマス中将へ回覧されており、追加措置が必要となるか待つ状態だ。

 

「調査によりUSSコネティカットは海図にない海山と接触したことが判明し、事故地点はインド太平洋の公海内だった」と第七艦隊報道官ヘイリー・シムズ中佐がUSNI Newsに11月1日述べている。

 

バラストタンクが損傷したコネティカットは潜航できなくなり一週間かけてグアムへ移動を余儀なくされた。米海軍は原子炉や推進機関に損傷がないと繰り返し発表している。

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同艦はグアムで初期修理工事を海軍海洋システムズ本部の監督下で進めており、ピュージェットサウンド海軍工廠から人員が派遣され、潜水艦補給艦USSエモリー・S・ランド(AS-39)が支援している。

 

海軍はまず同艦が追加修理のためグアムから安全に航行できるか判断する。最終的な修理の場所と時期は海軍整備部門の作業日程次第だ。

 

「公的海軍施設で作業を行うことになれば進行中の作業日程が影響を受ける」と海軍次官補代理ジェイ・ステファニーが下院軍事委員会で先週発言していた。

 

同艦の修理工事で潜水艦部隊の保全整備の作業残があらためて注目を集めている。

 

下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員会を仕切るジョー・コートニー議員(民 コネティカット)は潜水艦用乾ドック施設がハワイ以西に不足していると指摘した。

 

「グアムにもドックがなく、潜水艦補給艦が代行している。想定外の事態になれば修理施設が必要になる」

 

「攻撃型潜水艦の公的海軍施設での修理活動は優先順位が低くなっているが、シーウルフ級は世界各地で重要なミッションについており他に代えがたいはずだ」

 

コネティカットはシーウルフ級攻撃型潜水艦三隻の一つで冷戦時に深海でソ連潜水艦を狩るべく開発された。冷戦終結で各艦は改修を受け、海軍で最も機微なミッションの実施に投入されている。■

 

Investigation Concludes USS Connecticut Grounded on Uncharted Seamount in South China Sea - USNI News

By: Sam LaGrone

November 1, 2021 1:55 PM • Updated: November 1, 2021 5:55 PM


KC-46A一号機が航空自衛隊美保基地に到着。日本が米国外で初の同機運航国となった。ただし、未解決の問題が残ったまま。

(Boeing)

ーイングが日本発注のKC-46A空中給油機4機の一号機を航空自衛隊へ納入し、米国外で初の引き渡しとなった。

同機はシリアルナンバー14-3611がつき、コールサインREACH 46でシアトルのボーイング施設から太平洋を横断し、10月29日に美保基地に到着した。

ボーイングジャパン社長ウィル・シャファーは「日本がKC-46A給油機を導入したことは米日両国が取り組むインド太平洋地区協力で大きな一歩となり、両国の同盟関係で重要な役割を実現する」との談話を発表した。力もあることから日本の災害救難人道援助任務の支援にも投入できると加えた。

また、航空自衛隊のみならず米空軍海軍海兵隊の機材への給油も可能で「強力な防御手段と戦術状況認識装備を備える」とボーイングは説明している。

日本向けKC-46の4機販売は2016年9月に国務省に承認され、FMS制度を使い2017年12月に一号機の契約289百万ドル相当が成立し二号機のオプションを2018年12月に行使していた。

その後三号機四号機のオプションが総額342百万ドルで2020年10月に行使された。

日本向け二号機は現在ボーイングが767ラインのあるワシントン州エヴァレットで製造中で、同社によれば機体構造の16%は日本が製造している。

KC-46A飛行隊を美保基地に新設し、既存の404飛行隊(小牧)のKC-767(4機)、KC-130H(2機)に加える。

KC-46はボーイング767を原型とし、貨物人員輸送にも投入でき、軍用標準パレットは最大18個輸送できる。

米空軍にこれまで48機が納入済みだが、KC-46開発は技術問題で遅延してきた。重要欠陥が6点残っており完全作戦能力宣言ができないままだ。

中でも深刻なのが遠隔視認システム(RVS)で、これはカメラとセンサーによりブームを給油を受ける機体に向け安全に操作するため映像をとらえる装備だ。米空軍は現行RVSでは映像が見にくくなる場合があり、ブーム操作員が相手機を損傷するリスクが残っているという。

ボーイングは固定価格契約を結んでおり、RVS問題の解決は自社負担となる。

ただし、航空自衛隊向けKC-46に新型RVが搭載されるのか、さらに問題解決が実施されるのかはっきりしない。実施の場合、日本は追加支払いを求められそうだ。ボーイングはこの点についてコメントを拒んでおり、米空軍に照会してほしいとしている。米空軍は航空自衛隊の問題だとしている。

日本向けKC-46でも問題が残ったままだ。

米空軍は今年4月ボーイングに88百万ドルで日本に代わりKC-46予備部品の調達を求めた。だが、その後国防総省の求める「公正かつ順当な」調達基準の実現には追加10百万ドルが必要と認めた。

ボーイングの主張はパンデミックのため一部部材の価格上昇が発生しており、米空軍が以前支払った価格の15倍に部品もあるが、以前の販売単価が誤っていたと同社は説明している。

日米両国は初号機の引き渡しをにらみ、契約を先に進めることとし航空自衛隊向け予備部品の確保を優先する。■


Japan becomes first non-American operator of KC-46A tanker

By Mike Yeo

 

Trick Or Treat: Japan Accepts Its First KC-46 Tanker

By   VALERIE INSINNA


 

新型フリゲート艦コンステレーションに高性能57mm砲Mk 110の採用が決まった。沿岸警備隊にも。毎分220発発射で対空、対艦、対地砲撃に対応。

 

コンステレーション級フリゲート艦の最新想像図Fincantieri image

 

BASEシステムズは26百万ドル契約で米海軍向けコンステレーション級フリゲート艦に完全自動57mmMk 110砲を供給する。

 

契約交付は10月初めで、USSコンステレーション(FFG 62)、USSコングレス(FFG 63)にMk 110砲2門を供給する。コンステレーション級は多任務誘導ミサイルフリゲート艦となり外洋のみならず沿海域でも活動し、前方配備海軍戦力を増強する一助となる。

 

Mk 110砲システムは国際的にはボフォース57 Mk 3として知られ、多任務中口径の艦載砲として対空、対艦、対地攻撃に対応しながら、各種砲弾の切り替えが不要だ。毎分220発を最大9カイリ発射でき、BAEシステムズの6モードのプログラム可能・事前断片化・近接信管(3P)砲弾を使う。

 

ボフォース57 Mk3 中口径砲guns (Credit: BAE Systems)

 

 

「Mk 110が米海軍のコンステレーション級フリゲート艦に採用されたのはこの砲への信頼度とあわせ、現在将来の艦艇防御能力を買われたからだ。Mk 110砲と新世代フリゲート艦の組み合わせで水上艦艇への恩恵は大きい」(BAEシステムズの兵装システム製造担当副社長ブレント・ブッチャー)

 

今回の契約では同時にMk 110システムを沿岸警備隊のアーガス級外洋哨戒カッター三号艦となるUSCGCインガムにも搭載する。海軍海上システムズ本部の統合戦闘システム(NAVSEA IWSが契約主体となり、2023年からの搭載を予定する。

 

57mm砲Mk110は米海軍では沿海域戦闘艦(LCS)、沿岸警備隊のナショナルセキュリティカッターで採用されている。これまで米海軍向けには36門、沿岸警備隊には15門をBAEシステムズが供給している。世界では9か国向けにMk110は103門がすで引き渡されている。■

 

U.S. Navy Selects 57mm Mk 110 As Main Gun For New Constellation-Class Frigates

https://www.navalnews.com/naval-news/2021/10/u-s-navy-selects-57mm-mk-110-as-main-gun-for-new-constellation-class-frigates/

Naval News Staff  30 Oct 2021

 


2021年11月1日月曜日

F-15EX向けエンジンはF110-GE-129に統一し、ジェネラルエレクトリックが供給することになった。

 


The first F-15EX arrives at Eglin AFB, Florida, after production at a Boeing facility in St. Louis, Missouri, March 11, 2021. (Master Sgt. Tristan McIntire/U.S. Air Force)


 

ェネラルエレクトリックがF-15EXイーグルIIエンジンを独占供給することになった。米空軍契約は15.8億ドルの規模となる。

固定金額契約の形態で同社はF110-GE-129エンジン29基をボーイングF-15EX12機に供給する。契約にはエンジン取付や予備部品も含まれると空軍は発表。

供給開始は2023年10月で、GEがオプション7通りを全部行使すると329基を供給することになる。136機のF-15EXが製造されると最終納品は2031年になる。

「米空軍はジェネラルエレクトリックと組み最新かつ高性能のF-15機のエンジンを調達する」とデイル・ホワイト准将(空軍ライフサイクル管理センター)が空軍公表資料で述べている。「老朽化しているF-15C/D型の後継機として維持費を下げるだけでなく、新たな戦力となりこれからの空軍力の補完勢力となる」

GEはプラット&ホイットニーを破り選定された。プラットはF-100-PW-229の採用を狙っていた。■

GE will provide all F-15EX engines under $1.6B contract

By Stephen Losey

 Oct 30, 08:42 AM


2021年10月31日日曜日

中国の新型極超音速兵器は60年代の米X-20ダイナソア宇宙爆撃機計画の焼き直し?X-37との関連はどうか。ナチドイツの研究成果も関係している。

 

 

中国の新型極超音速兵器は米国の1960年代の宇宙爆撃機構想に通じるものが多い


10月はじめに米情報機関が中国が新型極超音速兵器の実験におおむね成功し、大気圏再突入し、標的から外れたものの直撃に成功したと明らかにした。


中国が高性能極超音速ミサイルを開発したとの見出しが世界にひろがったが、事実は異なる。中国がテストしたのはミサイルではなく、新技術でもなく、実態はソ連が冷戦時に運用したのと類似の兵器システムで、米国が1960年代に運用一歩手前まで進めた極超音速準軌道で移動する宇宙爆撃機に近い。


今回の中国テストはFOB部分軌道爆撃システムと呼ばれるものでロシアの空中発射式キンザルミサイルより米空軍が秘密裏に運用するX-37B無人軌道機と比較すべき存在だ。FOBs の作動原理を説明した図 (WikiMedis Commons)


FOBは低地球周回軌道でスラスターで飛翔軌道を変え、大気圏再突入のタイミングも変えられる。これは米国にとって深刻な脅威となる。米ミサイル防衛ではICBM発射を早期探知してから慎重に軌道計算して初めて迎撃可能となるからだ。中国の新型FOBは軌道を変更しつつ極超音速滑空体を使うため迎撃手段で対抗できなくなり、南極周りの軌道を取れば米防衛網の対応能力ははるかに低くなる。


FOBが実現すれば相当の戦力を有する装備品となる。このため米国も同様の技術を開発しようとしていたがソ連は先にスプートニクを軌道に乗せた。だが、核の相互破壊保証の時代に新規の核兵器運搬手段は必要ないとされた。


現在の地政学環境は変わったが、構想は今でも有効かつ1950年代同様にしっかりしている。


X-20ダイナソアの誕生

第二次大戦中のドイツがニューヨーク爆撃機として開発した技術をもとに生まれたボーイングのX-20ダイナソアは単座機でロケットで打ち上げる構想だった。


第二次大戦中のドイツがニューヨークを爆撃し、そのまま太平洋方面に移動する研究成果から生まれたのがボーイングX-20ダイナソアで、単座でロケットで打ち上げる構想だった。


大気圏ギリギリの高度まで到達し、跳びはねながら移動し、ソ連上空でペイロードを放出する構想だった。当時の世界は冷戦の盛りだった。一部筋は同機が実際に実現したら機能していただろうと話す。


ペーパークリップ作戦、冷戦のはじまり

第二次大戦終結で米ソ両国の関係は気まずいものになっていた。ドイツが大陸各地を席捲した背後にドイツの先端軍事技術があったが米ソは冷戦の幕開けを目の当たりにし、次の大規模戦闘で生き残る策の模索のほうが重要度が高いと認識していた。


ナチ技術でドイツは軍事面で優位性を獲得し、米ソは技術に携わった科学者が戦後の責任追及を逃れようとするとわかっていた。両国とも新技術による戦略優位性の重要性がわかっていたため、ナチに協力した科学者技術者の確保に走ったの。米国はドイツ科学者確保をペーパークリップ作戦と呼び展開した。


ペーパークリップ作戦はドイツ科学者技術者等およそ1,600名を戦後の米国に移動させ、米国での技術開発に参加させた。NASAでサターンVロケット開発にあたったウェルナー・フォン・ブラウンがこの中で最も有名だが、ほかにワルター・ドーンバーガーとクラフト・エーリケもいた。


ナチ関係者からベル技術者へ転身

両名はベル航空機に職をみつけ、垂直発射式の爆撃機ミサイル一体化構想を提案した。ドイツではジルバエルフォーゲル(銀鳥)と呼んでいた。今日でも同構想は極めて理にかなっていると言える。機体はロケットで打ち上げて大気圏外の準地球周回軌道高度まで進み、大気圏に向け滑空し再び「跳ね返され」高度を上げる。これを機体の主翼により実現する。


Diagram of the planned X-20 Dyna-Soar (WikiMedia Commons)


今でこそ再利用可能な宇宙機を準周回軌道に打ち上げるのはごく普通に聞こえるが、ドーンバーガーとエーリケ提案は1952年でソ連が初の人工衛星を打ち上げる5年前のことだ。ペーパークリップ作戦ではドイツ科学者を使い米国の先端軍事装備開発を一気に進展させる狙いがあり、倫理的観点は二の次でとにかく成果を追求していたことが理解できる。


スプートニクの影

1957年10月1日にソ連がスプートニク1号打ち上げに成功し、人類初の人工衛星が誕生した。直径わずか23インチの小型の金属球で無線アンテナ四本でソ連や世界へ信号を送信してきた。これが西側世界で「スプートニクショック」を引き起こした。


第二次大戦が終わり軍事経済両面では米国が事実上のリーダーだったが、スプートニクの成功で米国の優位性に疑問符がついた。ソ連は米核兵器に追いつこうと原爆実験を1949年に行い、水爆実験は1953年に成功していた。今度は米国を追い越し、ソ連がリードをとってしまった。


ウェポンシステム464L

ドーンバーガーとエーリケの構想を米国は三段階で実現しようとしていた。ロケットブースター(RoBo)、長距離偵察機(ブラスベル)、極超音速兵器研究である。スプートニク1打ち上げを受け直ちに米国は事業を一体化させウェポンシステム464L別名ダイナソアにした。


Artist’s rendering of the X-20 Dyna-Soar (NASA)


新たにダイナソアとなった事業では三段階で技術成熟化を狙った。ダイナソア1は研究用機体。ダイナソア2は偵察機能を付与する。ダイナソア3では爆撃機能を実現する。第一段階は1963年までに無動力滑空テストを開始し、翌年に動力飛翔テストを行うとした。その段階でダイナソア2でマッハ18を実現する予定だった。ダイナソア用のミサイルは1968年に供用開始し、宇宙機は1974年の運用開始をもくろんでいた。


(U.S. Air Force image)


ベル、ボーイング両社が提案を出した。ベルが先を進んでいたが、ボーイングが契約交付を受け、X-20ダイナソアとなる装備の開発開始のめどがついた。


ダイナソアの実現

(Boeing photo)



1960年に同機設計はおおむね完了し、デルタ翼に小型ウィングレットをつけ尾翼の代わりととして機体制御する構想だった。大気圏再突入の超高温に耐えるため、熱耐性が高いレネ41超合金を機体に採用し、機体下部にはモルブデン、グラファイト、ジルコニアで熱遮断を図った。


空軍公式歴史家リチャード・ハリオン博士は「ニッケル超合金で高温に耐える構造だった」とし、「主翼前縁部に特殊合金を採用し能動冷却効果をねらった」と解説している。


同年に同機の搭乗員が選出され、その一人は30歳の海軍テストパイロット兼宇宙技術者で名前をニール・アームストロングといい、その後1962年に同事業から去った。


当時の技術でも実現可能だった

同年末に制式名称X-20がつき、ラスベガスで一般公開された。B-52が空中投下式のX-20大気圏内飛翔テストの母機に選ばれ、ロケットブースターによる高高度投下テストも初めて行われ成功した。


同事業は当時としては時代の先を行くものだったが、当時の技術でも十分実現可能だった。1960年代初頭には米国に宇宙爆撃機が生まれると見られていた。


X-20ダイナソアのモックアップが完成し、全長35.5フィート、翼幅20.4フィートになった。着陸には三点式引き込み脚を使った。自機にもA-4あるいはA-9ロケットエンジンを備え、大気圏外軌道に乗る構想だったが、ミッションの大部分は滑空飛行で大気圏まで降下して揚力を稼いでから跳躍で高度を上げ、大気圏をかすめながら移動するとした。最終的に速度が落ちてからパイロットがスペースシャトルのように地表に向かう。


X-20ダイナソアの終焉

(U.S. Air Force)


X-20構想は当時の常識を超えた存在だったが、技術面では実現可能性が十分あり、初期テスト結果からダイナソアは宣伝文句通りに機能するとわかっていた。ただし、事業経費があまりにも高く、新設のNASAはジェミニ計画に中心をおき、政府トップもソ連に対抗し実際の宇宙機の運用を早く希望していたものの、国際的な地位を高める点では貢献度が低い兵器体系の実現は二の次とされた。


ハリオン博士は「U-2同様にブラックワールド事業で進めていれば、実現したかもしれない。事業を止めるような技術的問題はなかった」とする。


大気圏内を滑空するX-20の想像図(WikiMedia Commons)


だが1963年12月10日、X-20事業は終了した。米国は4.1億ドルを開発に投入し、2021年のドル価格では35億ドルに相当する。その時点でダイナソアは宇宙爆撃機への道がまだ道半ばだった。ハリオン博士の記述ではX-20の開発状況は実機完成は2.5年先で追加3.7億ドルの投入が必要だったとある。宇宙爆撃機は世界全体を活動範囲に入れるが、米空軍は1957年にB-52で世界一周飛行を実証しており、高価なロケットを使うまでもなかった。


X-20事業を終了させ、残る予算は有人軌道実験室事業に転用され、ジェミニ宇宙機を使い、地球軌道上に有人軍事プレゼンスを実現するとされた。


ただし、X-20はそのまま飲歴史にみ込まれたわけではない。同事業の一部はNASAのスペースシャトルに応用され、そして宇宙軍の極秘宇宙機X-37BにはX-20を思わせる要素がある。X-37Bは宇宙爆撃機ではないとされ、たしかにそのようだが、再利用可能宇宙機であることに変わりない。米国が運用する最高性能の偵察機材であることは確かだ。■

 

X-20 Dyna-Soar: America's hypersonic space bomber

Alex Hollings | October 24, 2021