2010年6月30日水曜日

スホーイT-50飛行テスト状況をプーチン首相が視察

Sukhoi T-50 Prototype Demonstrated For Putin

                    aviationweek.com Jun 29, 2010

ロシア初の「低視認性」航空機をウラジミール・ プーチン首相が視察した。モスクワ郊外のジューコフスキー飛行テストセンターでスホーイの試作機T-50のコックピットまで同首相は乗り込んだ。
  1. T-50はロシア空軍のPAK FA開発計画に より開発中の多用途戦闘機でSu-27フランカーの後継機種となる。1月29日初飛行以来、米側関係者によると同機のこれまでの飛行回数は16回。初期段 階の開発は2012年に完了の予定。
  2. スホーイの予測では全世界で今後40年の市場規 模は1,000機程度。プーチン首相によると同機の価格はF-22の三分の一。また、米議会により海外販売が禁止されたF-22と違ってスホーイは最初か ら輸出を念頭に設計されている。
  3. インドは同機開発にすでに「参加」しており、複 座型に関心を示している。
  4. T-50試作一号機はレーダーを搭載していないと推測されるが、機種と後尾に合計2基の固定アク ティブ電子スキャンアレイレーダーを搭載し、前後各120度の探査範囲を確保する設計だ。
  5. 搭載エンジンはNPOサターン117S二基で、 これはフランカー各型で採用されたAL-31Fエンジンを改良したものだ。■

同機の行方には注視が必要です。いわばチープな ステルス機として今後多くの新興国が採用すれば、西側にとって厄介な存在になりかねませんし、F-22/F-35 の配備数は少数にとどまり、数では優位性が確保できる可能性が少ないためです。

2010年6月29日火曜日

次期哨戒機P-8A開発の近況

Second P-8A Moves To Pax River Testing Site

aviationweek.com Jun 23, 2010
  1. ボーイングは次期洋上哨戒機P-8Aの二号機を パタクセントリバー海軍航空基地(メリーランド州)に移動させた。また、三号機の完成もまもなくだ。飛行テストはこの三機で実施する。
  2. 二号機はT-2と呼称され基礎的なミッションシ ステムが搭載されている。初飛行は6月8日に実施されたばかり。パタクセントリバー基地への移動は6月19日に完了した。
  3. 三号機T-3の飛行テスト開始は本年第三四半期 の予定。兵装の認証を得ることが大きな目的だ。P-8Aは魚雷に加えボーイング製のスタンドオフ陸上攻撃ミサイルを搭載する。
  4. ボーイングは同機開発の進捗を良好と見ており、 2013年の初期作戦能力(IOC)獲得目標は達成可能としている。IOCまでに合計6機の購入が必要で、T-4 から6の三機は乗員訓練に使用される。
  5. その一方で海軍はP-8A の性能向上型(Increment 2)の2016年配備をめざし、企画案を完成させつつある。改良の中心は潜水艦探知に向けた機体の音響特性の向上だ。輸出についてはオーストラリアがイン ドにつぐ第二の導入国になる可能性があり、現在両国間で協議中。その次の改良(Increment 3)は2019年となる。
  6. 米国とインドは来月に最終設計審査を予定してい る。インド向け改良型の生産開始は2012年に予定され、米国向けの機体と一部が異なっており、磁気異常探知機、洋上捜査レーダーの追加装備で360度探 知が可能、および空中捜索能力の追加が主な点。■

2010年6月27日日曜日

F/A-18E/Fの調達は当分継続される

 Boeing Eyes F/A-18E/F Long-Term Production
aviationweek.com Jun 24, 2010                                                   
  1. ボーイングはF/A-18E/F スーパーホーネットの生産ラインを2020年まで稼動させる見込み。
  2. を4年間で124機調達する現行計画だが、変更 はありうると同社は見ている。複数年度調達方法で年間5億ドルが節約できるという。
  3. 平行してボーイングは米海軍または海外購入者向 けの将来の性能向上需要に向けた技術の開発を進めている。海外市場での性能向上型機種へ関心は高く、例としてインド空軍はGEの改良型F414エンジンで 20%の推力増加画可能となることに関心を示している。
  4. 一方、米海軍の目下の関心は追加兵装システムの 統合、センサー統合能力の向上および追加電子装備にある。
  5. これに対応してボーイングは新型9x11インチ のディスプレー(三次元表示にも対応)の導入改修を進めているが、実証飛行を来年に開始して顧客の関心度を探り、求められる性能を確認する予定だ。
  6. その結果で予算がつけば性能向上型は4年で実用 化される。
  7. 新型ディスプレーに対応した新設計のHUDヘッドアップディスプレーも導入されるが、パイロットにはセンサーを利用して各種情報を 統合する余裕が生まれるはずだ。
  8. なお、予備用の3.5x3.5インチがあわせて 準備される。
  9. そのほかの改善点としては赤外線探知追跡センサーが外部燃料タンクの前面に2016年までに取り付けられる。
  10. そのほか海軍が導入を予定しているのが、新型 IFF(敵味方識別装置)、データリンク能力向上、目標補足情報の共有能力で、電子攻撃の脅威に対抗する手段となる。これ以外に戦闘管理能力の向上、電子 戦統制能力、自機防衛装置として開発が遅れている360度対応ミサイル接近警告機能がある。ただ、後者についてはレーダーまたは赤外線技術のどちらを採用 するかが未定だ。■

2010年6月24日木曜日

空軍のABL開発状況、海軍もレーザー兵器実験へ

Airborne Laser Demonstrating Increased Range
aviationweek.com Jun 22, 2010    

  1. ボーイング747-400を改造した空中レー ザー(ABL)テスト機は高出力化学レーザーの発射射程が従来の3倍から4倍に延びていることがボーイングにより判明した。
  2. 同機は毎月2回の飛行をしており、そのうち一回 は実際にレーザーを発射し、実際の標的を使用することもあると、ボーイング・ネットワーク・スペースシステムズ社長のロジャー・クローンが明らかにした。 同機のレーザー照射撃墜実験は2月に始めて成功しており、引き続き今年中の実施が予定されている。現在の重点はレーザーシステムの性能向上にあり、単に射 程距離だけでなく、照射角度の改善も視野に入っている。
  3. ABLについては有効射程が 短すぎ、747をあらかじめ脅威の所在地近くに配備する必要があるとしてペンタゴンから批判があった。
  4. テスト機の予算手当ては来年も継続される。ミサ イル防衛庁(MDA)は数週間のうちに今後のテスト内容を決める。
  5. クローン社長によるとボーイングはMDAとテス ト機に固体レーザー装置の追加搭載の可能性を協議している。747機内には既存の化学レーザー装置に追加搭載するスペースは十分ある。
  6. 一方、海軍は自由電子レーザー開発でレイセオン とボーイングのいずれかを採択する予定を来月に控える。海軍の計画では採択後15ヶ月で設計審査を完了し、次の段階は100キロワット級のレーザー実証実 験をしたあと、第三段階で海上公試に移る。■
コメント ミサイル防衛では技術の進展が早いのと、技術手段が多様になったほうが選択の幅も広がることもあり、レーザー開発状況には日本も注視しておくべきでしょうね

2010年6月19日土曜日

次期大統領ヘリ選定は仕切りなおしに

Presidential Helo Competition Complicated
aviationweek.com Jun 14, 2010
  1. 大統領専用ヘリコプター調達が仕切りなおしとな る中、複雑なメーカー間の関係はより大きな防衛産業メーカーの動向をそのまま反映する形になってきた。
  2. ボーイングは6月8日にアグスタウェストランド よりAW101ヘリコプターの知的財産、技術データおよび製造権を完全に買い取るとの発表をし、今後は同機は完全にボーイングの製品となると付け加えた。
  3. アグスタウェストランドはこの取引で相当の額の 収入を得ることになる。同社にとっては大西洋の両岸でビジネスを展開する重荷がなくなることで安堵できるが、今後はボーイングがこのリスクを負うことにな る。
  4. その逆のことがボーイングにあてはまる。ボーイングはCH-47チヌークの知的財産権をアグスタウェストランドに販売し、同社がイ タリア向けの製造販売を行う。その他世界各地では両者はAW-101とCH-47で競合関係にある。なお、アグスタウェストランドはベルテクストロンの BA609ティルトローター開発で小規模の出資をしていることから、ここでもボーイングとのつながりがある。
  5. 次期大統領専用ヘリコプターVXX計画に話を戻 すと、ボーイングはベルヘリコプターと共同でV-22オスプレーを提案している。
  6. 一方、アグスタウェストランドが以前に提携して いたロッキード・マーティンは提携を解消し、新たにシコルスキーと組みS-92を候補機として売り込む構えだ。
  7. シコルスキーもボーイングも生産分担の話には入 らないだろう。ボーイングによるとAW101の生産場所は未定とのこと。
  8. 「国産品採用」の声がワシントンで高まってお り、今後の企業連合の決定にも影響を及ぼすだろう。アグスタウェストランドが第一回目の入札で苦労したのが純粋な米国企業とみなされなかった点だ。そこで AW101をボーイングに引き渡せば、その点はクリアできる。なぜかボーイングも「アメリカ製品採用」キャンペーンをしているなか、逆にボーイング101 がどれだけアメリカ製品と呼べるのかを証明する立場になっている。ヨーロッパ製の部品もあるためだ。
  9. 一方海軍も代替選択検討仕様(AOA)の作成に 苦労しており、VXX落札の行方が大きく変わることもありうる。最大で20機程度を調達する同計画の結末には予算総額数十億ドルがかかっており結論は簡単 には出ないと見られる。VH-71の7機がパタクセントリバー海軍航空基地で保管されているが、ボーイング101が採用されるとテスト用に使用される可能 性がある。ボーイングからすると20億ドルを費やして失敗に終わった一回目の機材を使うのはいかがなものかと声を上げそうなものだが、同社がいまや同機の 権利を有しており、小規模の改修でVXXの仕様書に対応が可能だ。AOAの内容が未定の現在では同社は考えられる対応の準備をしていると見られる。
  10. AOAでどのような調達方法が決まるかにせよ、 現政権がヘリ調達を管理できる規模に分解しようとしているのは明らかだ。
  11. 次期大統領専用ヘリが想定するのは一機種から二 形式を作ることで、ひとつは「完全装備の大統領用」タイプでもうひとつは「軽量、機能重視のC4I(指揮、管制、通信、コンピュータ、情報)機能重視」タ イプでVIP仕様にも転用できるものだ。あるいは異なる二機種の採用になるかもしれない。
  12. この点で海軍は極度に慎重な姿勢で、AOA完成 まではいかなる情報の提供も拒否している。現時点では各仕様の費用試算は時期尚早と海軍は6月8日に声明を出している。
  13. この姿勢の裏には現実を無視したホワイトハウス 発の要求事項に振り回された挙句海軍が2007年に批判の対象となったことがあるのだろう。

2010年6月17日木曜日

米海軍新世代空母に搭載される新技術


Carrier Launch System Passes Initial Tests
aviationweek.com June 4, 2010
  1. 全電動カタパルトのテストがレイクハースト海軍航空基地(ニュー ジャージー州)で成功したことで、新型空母USSジェラルド・フォード(CVN-78)の建造関係者は安堵しているはずだ。海軍は伝統的な蒸気カタパルト に決別する賭けをしている。
  2. 電磁誘導式航空機射出システム(Emals)の開発が遅れていたことで同空母の建造には黄色信号がついてい た。蒸気式カタパルトに復帰するには遅すぎた。フォード級空母は発電配電システムがニミッツ級より強力でEmals搭載を念頭においている。このため艦内 では暖房、厨房、ポンプはじめ延長10キロメートルの蒸気配管を全廃している。
  3. 予算115億ドルの同空母の就役は予算上の理由で二回に わたり遅れている。そこで予定通りにEmalsが進展してきたことと建造日程が合致してきたのだが海軍は同システムの開発を注視している。
  4. レ イクハーストのEmalsは陸上配備で荷重なしの高速度テストを4月に開始しており、バラストを乗せた状態で50ノットから180ノットに加速していく。 主契約事業者はジェネラルアトミックスで、試作品が同社工場で加速試験を受けており、6,800回のライフサイクルに耐えれるかを点検中だ。これまでのと ころ航空機、兵装、脱出シートに深刻なサージ電流による電磁干渉の兆候は見つかっていない。レイクハーストでは最初の航空機発進テストを年末に実施予定 だ。
  5. 2011年5月にフォード向けのEmals部品の第一陣が造船所に到着する予定。特に関心が集まるのは発電装置合計12基で、各 80千ポンドの重量ではずみ車でエネルギーを保存、提供する設計である。この製作日程に余裕がない。
  6. Emalsは蒸気カタパルトより柔 軟性が高い運用が可能だ。F-35C共用打撃戦闘機にはF/A-18E/Fよりも大きな発進エネルギーが必要で、EmalsはF-35Cを完全装備のまま 発進させることができる。
  7. 逆にEmalsの設定を蒸気カタパルトよりも低くすることも可能で無人機のような軽量機の発進にも対応でき る。
  8. フォード級空母には新型の高性能着艦装置もあり、これもジェネラルアトミックス社製品であり、従来の油圧式装置に置き換わる。この 装置はニミッツ級にも搭載可能だ。
  9. フォード級空母から共用精密誘導着艦システム(Jpals)も導入する。フォード級二番艦CVN- 79には自動着艦機能も搭載される。
  10. Jpalsの導入が急がれるのは現有のレーダーが2020年以降はサポートをうけられなくなるた め。またレーダー断面積が小さいF-35Cの運用にも対応できる。Jpals搭載はF-35Cの部隊の配備と同時期になる。
  11. Jpals の第一段階性能は高度200フィートまでの降下を視程0.5マイルで実現することだが、自動着陸には十分な精度で無人機ノースロップ・グラマンX-47B の運用で実証が進んでいる。
  12. その精度の鍵となるのが艦と連動したGPSで受信機を二期利用し、艦の位置を正確に測定し、速度、縦揺れ、 横揺れ、進路を把握する。この位置差を利用した技術でJpalsは航空機の正確な位置情報を提供する。データリンクにより自動着艦誘導を送信するものだ。


2010年6月5日土曜日

政治の混乱に左右されてはいけない日本の防衛体制

Japanese Defenses Battered By Political Storm
aviationweek.com June 4, 2010

  1. 日本は総理大臣をひとり失ったかもしれないが、代わりに政治の劇場効果で高い評価を受けることができる。
  2. 「誰 かが面子を失う必要があったのです」と日本の防衛問題を専門とする米国アナリストは見る。「鳩山首相は世論と反対の方向に進む必要に迫られ、米国と同じ方 向に進んだことで結局辞任を迫られたのです」
  3. 鳩山首相はミサイル防衛能力の増強策としてF-22および長距離ミサイルを搭載した性能向 上型のF-15の追加配備が沖縄に必要と理解するに至った。
  4. 「あわせて同首相が海兵隊の駐留を認めたのは朝鮮半島及び中国の問題に加 え、日本単独では必要な水準の防衛ができないための決断です」と米空軍高官は語る。
  5. 今や鳩山氏は過去のものとなり、民主党は新 しい指導者により強力なリーダーシップを模索しているが、米国の専門家は鳩山辞任が長期的視点では両国関係の改善につながると見ている。
  6. 「自 民党が政権を回復するとみる向きはありません。なぜなら自民党が未来を志向しているとは見られていないからです」と日本在住のアナリストは語る。「日米対 話は実り多いものになるでしょう。そして同盟関係は元の姿に戻ります。これで日本政府の思考停止状態はおわって防衛問題に明確な思考が出てくることを期待 したいですね」
  7. 「CXに注目すべきです」と上記アナリストは続ける。日本が開発中の長距離軍用輸送機については「今まで動きがありませ んが日本政府が同機の開発に力を入れる可能性があります」
  8. 日本の防衛支出では2005年から09年にかけて巡航ミサイルおよび短距離弾 道ミサイルに対する防衛能力の向上も目標のひとつであった。ただし、昨年の衆議院選挙後にこの方向の努力が停滞している。
  9. 「防 衛力を縮小する圧力がありますが、日本はミサイル防衛に多大の関心を持ち、政治的に利用することができるでしょう」と上記アナリストは見る。「ペイトリ オットミサイルの性能向上が必要なのは日本には簡単に理解できるはずです。戦闘機に長距離ミサイルを搭載してパトロールさせることは理解しにくいでしょう ね」そこで、考えられるのは高度防衛能力の獲得方法として米国製センサーおよび武器装備品を日本国内で共同生産させる選択だ。
  10. 航空自衛 隊はF-15Jの長距離レーダー性能改修を120機を対象に行う方針だ。改修でレーダー有効距離は50マイルから150マイルに拡大する。また、敵の短距 離弾道ミサイルを発射直後の加速段階で迎撃する空中発射長距離ミサイルの取得もめざしている。アルゴリズムの改修でこのミサイルで降下段階の敵ミサイルの 迎撃も可能となる見込みだ。この応用として低高度周回衛星の迎撃にも道が拓ける。また、海上自衛隊のイージス・ミサイル防衛の補完にもつながるはずだ。■

● コメント 興奮しやすい日本のマスコミですが、冷徹な安全保障への視点が不足しがちです。その裏には日常から安全保障から見た世界情勢への視点、進歩 する防衛装備の技術動向、力による解決をめざす日本以外の諸国の思考方法に親しんでおくことなのですが、みずから視点を閉ざしていては自分に都合のよい ニュースしか咀嚼できなくなりますね。横須賀の空母ジョージ・ワシントン視察に招かれて、「あの大きな船はなんという名前ですか」と聞いてホストの米海軍を驚かせた記者がいたということ です。

X-51Aスクラムジェット初飛行に成功

X-51A Team Eyes Results Of Scramjet Flight
aviationweek.com Jun 1, 2010

  1. X-51Aウェイブライダーが空気取り入れ式スクラムジェットエンジンとしては最長時間の飛 行を達成した。同機の開発チームは極超音速機開発の継続予算の承認を期待している。
  2. X-51Aは5月26日太平洋上空でスクラム ジェットの点火に成功し加速に入った。ただしエンジンの燃焼は200秒にとどまり、計画上の300秒には届かなかった。マッハ5に達したが、計画ではマッ ハ6を目指していた。その後減速を開始すると遠隔測定データが消え、飛行は終了し、機体は破壊された。以上は米空軍研究所(AFRL)のチャールス・ブリ ンク開発主査による発表。
  3. 同主査によると今回の飛行実験は95%成功したという。加速が遅れ、燃焼時間が短くなった原因はまだ不明。 実験機はまだ3機残っているが、次回の飛行実験の日程は未定。今回の飛行実験で予算を大部分使ってしまったのがその理由だという。今回の成功結果で予算が 計上され、来年の飛行再開に関係者は期待を寄せている。
  4. 高度50千フィート速度マッハ0.8で母機B-52から投下されて飛行が開始 された。機体はきれいに分離されブースターに予定通り点火成功し、マッハ4.8に加速したところで、巡航部分が分離され、予定通りのロール飛行を実施し た。
  5. マッハ4.7に到達した時点でエチレンがスクラムジェットを点火したあと、JP-7炭化水素燃料に切り替わった。X- 51Aはその後加速を続けたが、予定よりもその伸びは遅く、当初想定の0.22gではなく0.15gにとどまった。
  6. マッ ハ5近辺で減速を開始。遠隔測定データが消えた段階で、実験スタッフは機体を破壊して飛行終了することを決定。
  7. 今 回の飛行は炭化水素燃料による初のスクラムジェット運転となった。燃料は実際はエンジンの冷却に使用されて、超音速飛行で使われたのはエンジンの熱そのも のである。今回の飛行で実証された熱均衡状態によりエンジンは燃料がある限り作動を続けることが実証された。
  8. NASA のスクラムジェット機X-43Aはマッハ9.7を2004年に達成しているが、同機は水素燃料で銅製ヒートシンク付エンジンはわずか10秒作動させて溶解 している。
  9. X-51Aのエンジンメーカー、プラットアンドホイットニー・ロケットダインはエンジンの作動結果は 成功と見ている。エチレン点火からJP-7への切り替え、その後JP-7だけを燃料して200秒の連続運転ができたからだ。機体が破壊された段階で燃料は 残量があった。
  10. 飛行制御プログラムも完璧な作動を示したが、機体は全方位で不安定な状態で、今後の解決が期待さ れる。可能性としてはアクチュエーターの不良か、機体表面のシール、あるいは低マッハ速度でのドラッグの計算エラーがある。
  11. 次 の段階に移れるかは予算確保次第だ。今回の初回飛行がおおむね成功したので二号機のテストも道が開けた。ボーイングがソフトウェア改修を提案しており、位 置情報による誘導飛行の実証を目指している。成功すると、この技術を長距離攻撃ミサイルに応用することが可能となる。■

2010年5月27日木曜日

沖縄の基地問題は解決しているとアメリカはとっくに見ています

Okinawa Decision Has Missile Defense Element
aviationweek.com May 25, 2010

  1. 選挙公約を撤回した鳩山首相は結果として巡航ミサイルおよび戦術弾道ミサイルに対する防衛体制を強化 したことになる。
  2. Su-27MKK攻撃戦闘機部隊を整備した中国は巡航ミサ イル発射能力は日本にとって脅威である。北朝鮮の核搭載弾道ミサイルはずっと大きな脅威であり、同国政府の予測不可能な行動と武力行使の意思がその背景に ある。韓国艦艇の撃沈もこの一端だ。
  3. 沖縄に配備されている米空軍のF-15Cが搭載しているのは旧式のAESA(アクティブ電子スキャンアレイ) レーダーだ。レイセオン製の新型AESAで はこれまでの探知距離50マイルが150マイルになり、小型目標の捕捉も可能となりAIM-120C-6あるいはAIM-120D発達型中距離空対空ミサ イル(Amraam) で対応が可能だ。
  4. 米側の防衛関係者が本誌に語ったところではAESA搭載の戦闘機部隊を今後拡充し沖縄の対ミサイル防衛力を拡充する方針で あるという。沖縄配備のF-15部隊はアラスカで巡航ミサイル迎撃訓練を実施ししている。
  5. 最新動向として防空任務を担う州軍航空隊とレイ セオンとの間で空中発射新型ミサイル「ネットワーク中心空中発射防衛要素」(NCADE)を対弾道ミサイル防衛に 使用する検討がなされている。Aim-120Amraamミサイルの筐体を利用し有効 射程距離を拡大して弾道ミサイル防衛に用いる計画だ。
  6. 州軍はゴールデンイーグルF-15C部隊の性能向上を4月から順次開始している。
  7. ま たF-22にもAESAが搭載 されており現有220機のF-15EにもAPG-82(V)4 レーダーが、また州軍のF-15にはAPG-63(V)3 レーダーが装備されている。
  8. 米側高官は公には発言していないが、鳩山首相が前言を撤回して沖縄の米軍配備を認めたことは同首相が米軍の 持つ抑止力効果を正しく認識している表れと見ている。■
●日本国内というか連立内閣の騒ぎとは別に国際政治ははるかに冷酷であり現実的です。いったい安全保障とは何かという疑問に結局今の内閣は答えを出せずに終わる気がするのですが。

2010年5月9日日曜日

レーザー光線でUAVに電力を提供する技術

Laser Power Beaming Aimed At UAVs
aviationweek.com May 8, 2010

  1. 宇 宙エレベータ向けに動力の光線供給技術を開発する会社が同じ技術を無人機に応用できないか検討している。
  2. レーザーモーティブ LaserMotive は 動力の光線供給で電動力UAVの飛行時間が延長できると見ている。
  3. シアトルに本社を構える同社はUAVメーカー数社と協議をしており、 実際の試作機は18ヶ月で完成するという。
  4. 実証機は小型無人ヘリコプターで同社がNASAから90万ドルの賞金を得た宇宙エレベーター 競技大会の技術を応用するという。競技では長さ1キロメートルのケーブルを登るロボットに動力を供給するのに成功している。
  5. システムの 中核は赤外線に近い波長のレーザーダイオードから動力をビーム指向装置に提供し飛行中のUAVを追跡し、機体の太陽電池にビームを照射するもの。レーザー 光線は電力に変換され、バッテリー充電に使われ飛行時間が延長される。
  6. 同社は次の用途を想定している。高高度で静止待機する飛行船への レーザー動力供給で無限に近い飛行が可能だ。また、航空機の場合はビーム施設に戻り動力を補給することで長時間飛行が可能だ。これをUAVに応用すれば、 前線をパトロールして動力補給に戻る運用が考えられる。ビーム施設そのものにも移動性を与えることができる。
  7. UAV用の直流1kWの動 力供給にはビームは2kWとなり、レーザーダイオードに4kWのインプットが必要なのが現在の技術水準だ。これが小型車両であれば100から200ワット あれば十分だという。ただし、キロワットレベルの送電にはビームの安全措置が特に必要だ。 
  8. 同社は他の応用として地上配備センサーや遠 隔地の通信中継施設向けの動力供給を想定している。また災害救助にも応用できるという。■
すごい。これが実用化されれば電気飛行機という形態が普通の概念になりますね。

ご参考 同社のウェブサイト  http://lasermotive.com/

2010年5月3日月曜日

第六世代戦闘機の構想を練るACC戦闘航空軍団

ACC Looks At Possibilities For Future Weapons
aviationweekcom Apr 30, 2010
  1. 第五世代戦闘機の性能向上計画、ならびに新しく登場する第六世代戦闘機の初期企画 内容から見ると、広範囲の光学・電子監視能力、非爆発性兵器の搭載ならびに敵のネットワーク解析能力が検討されているようである。
  2. その 基礎となるのは通信能力であり、敵のネットワーク攻撃にも耐えるものとなろう。
  3. 第五世代でステルス性と超音速巡航を実現した。これに続 く第六世代機では有人飛行はオプションの一つとなりステルス性はあるものの超音速飛行は前提としない機体設計となり、高性能の電子戦闘装備とISR能力を 実現することになりそうだ。
  4. 「第六世代戦闘機企画室を創設し、盛り込むべき性能を確認していきます」(トム・アンダーソン空軍少将 戦 闘航空軍団(ACC))「生存性を高めるためにスピード、ステルス性あるいは両方を組み合わせて実現すべきか。価格も重要な要素で一機5億ドルでは多数の配備は不 可能ですね。今年から開始すれば2030年には第六世代戦闘機が実用化できるでしょう。有人操縦はオプションとなるでしょう。」
  5. 新型機 は通信リンクされて所在は相互に認識され、敵の脅威の所在はどの時点でも共有できる。この高度なリンクは共用空中階層ネットワーク Joint Aerial Layered Network (JLAN)と呼ばれ、戦闘地帯の宇宙、上空、地上をそれぞれ階層として把握できる。低迎撃・発見可能性 low probability of intercept or detection [LPI/LPD]の第一波の中心となり、情報を友軍に伝え継続攻撃部隊やステルス性のない電子妨害機を支援する。
  6. このため装備品も革 新的な設計となる。例としてLPI信号をリンク16で波形に変換して友軍に広く伝える装置がある。この伝達はステルス性を犠牲にせず、デジタル信号として 瞬時に情報を利用することが可能となる。
  7. 電子攻撃、ネットワーク侵入、高出力マイクロウェーブ(HPM)パルスを発射する兵器も開発さ れる。
  8. 「現在開発中なのは対電子装置HPM発達型ミサイル counter-electronics HPM ­advanced missile projectでおそらく三年以内に実証計画から移行できるでしょう」(デイブ・ゴールドファイン准将 戦闘航空軍団航空宇宙作戦部長)
  9. ACC関係者はHPMおよびレーザー兵器の研究が最終的には重要と考える。これまで20年間にわたり研究機関及び民間企業がそれぞれの装置の小型化と 兵器への応用に取り組んでいるが、今後一層の進展が期待される。例えば海兵隊はトラック搭載の基地防衛用HPMをアフガニスタンに投入する予定だ。
  10. 一 方、第六世代の無人機のヒントは示されていない。
  11. 「次世代の遠隔操縦航空機 RPAs は一種の標準型となり、モジュラー化により各種 ミッションに対応することになるでしょう。マシン間の通信と自動化意思決定による支援が鍵となり、通信そのものは指揮命令に関するものに限られるでしょ う。また自動化が進めばRPA運用で人手がかかる作業も軽減されます」(アンダーソン少将)
  12. アクティブ電子スキャンアレイ(AESA) レーダーの性能向上で各機は指向エネルギー兵器に転用可能となる。
  13. 第五世代及び第六世代航空機はISR、電子攻撃、通常攻撃に加え AWACSとしても運用されるだろう。
  14. 「砂漠の嵐作戦の初日(1991年1月16日)では通常爆弾を搭載したF-16に 乗っていました。10年たってコソボではレーザー誘導爆弾を搭載し、データが全部コックピットに流れきました。今後は以前とは比べ物にならない能力が手に 入ります。」(ゴールドファイン准将)
  15. にもかかわらずアフガニスタン、中東、南西アジアでの作戦環境のニーズは極めて平凡なものだ。
  16. F- 22が投入されたのは乾燥、高温、砂塵の環境で同機が長期の運用が可能かを確認するためであった。
  17. 皮肉にも中東の三大問題はメンテナン ス性、支援性および部品共用性である。F-22で得られた教訓はF-35共用打撃戦闘機に応用されている。
  18. 次世代機は追加的に性能を向 上して良くアプローチをとるだろう。
  19. ただし現在進行中のアフガニスタン作戦で使用されている兵装、センサー類はかならずしも高性能のものではない。
  20. た とえば、陸上部隊は手榴弾レベルの爆発力を持つ爆弾を利用したがる。これは住宅内の一室だけを破壊するレベルでその後の情報活動に利用するためである。
  21. そ こで空中投下兵器は小型の重量250ポンド以下となり、その分搭載数が増える。あるいは同数の爆弾を搭載してもペイロード重量が減るので、無人機の飛行性 能が向上することになる。
  22. 「MQ-9リーパー後継機の性能諸元づくりをしています。マスタースケジュールどおりなら納入は2020年に なります。モジュラー化、長時間運用、低価格の他に民間航空宇宙で開発された技術も導入し、悪天候でも運用可能で2万から3万フィートの中高度で運用しま す。兵装に加えセンサーを搭載して外部からモニター可能です。ステルス性は低価格は両立しないので、むずかしいですね」(ゴールドファイン准将)
  23. 現 在進行中の低密度紛争の中から高性能の無人機が今後の大規模戦闘にどう活用されるかを推察できる。
  24. ACC関係者はイ スラエルによるシリア攻撃(2007年)、ロシアによるグルジア攻撃(2008年)から多くを学んでいる。グルジアの防空網は統合されていなかったが、ロシアも電子戦の用 意をせず、事前分析をせず発進させていた。またイスラエルが通信及び軍用ネットワーク網に対して電子攻撃を準備しているとの動きがある。
  25. 「わ が方のネットワークが攻撃を受けた場合も戦闘継続ができるように努力しているところです。戦闘区域内で連絡手段がなくなったら重要な情報をどう伝えたら良 いでしょうか。現在、司令官レベルで集中して取り組んでいるプロジェクトが複数あります。その中には最高位将官また国防長官レベル用に敵の攻撃を受けてい る状況でも利用できる通信手段があります。このため通信手段の確保とともに迅速なデータリンクの復元、盗聴されない通信の回復が必要です。その他にも変化 していく戦況の中で目標にあわせリアルタイムで意思決定していくことも重要な要素です。」(アンダーソン少将)
●日本ではま だ第五世代も実用化していませんが、早くも第六世代ですか。これからすると無人機中心で非超音速、指向性エネルギー、通信能力がキーワードとなりそうです ね。F-22は配備記数が圧倒的に不足なので、虎の子となり、F-15を改装して護衛に回らせ2030年まで第一線に使おうというのが米空軍の構想なの で、第六世代配備開始がちょうどそれに符合しますね。

インドがC-17導入へ

Indian C-17 Deal with U.S. Advances
aviationweek.com Apr 26, 2010

  1. 米国安全保障協力局は議会 に対しボーイングC-17グローブマスターII合計10機のインド空軍向け海外軍事販売(FMS)の可能性を正式に通達した。
  2. インド国 防省から米政府にC-17をFMS方式で取得希望する内容の要望書が先に出されており、ボーイングにとっては同機の海外販売はアラブ首長国連邦向け6機に 続くものとなる。
  3. 議会向け説明では販売額を58億ドルとしており、保守サービス等も含む見積としては最高額となった。
  4. 同 価格には乗員およびメンテナンス要員の訓練、訓練機材、予備部品、地上支援装備、技術援助、エンジニアリングサービス費用が含まれる。
  5. イ ンドの現有軍用輸送機はロシア製IL-76(40機)およびAN-32(100機程度)であり、別途ロッキード・マーティンC130 Jを6機発注済で、2011年に納入予定。
  6. 160,000ポンド(約73トン)の搭載能力を有するC-17は7,600フィート(約 2,300メートル)の滑走路から運用可能で2,400海里(約4,400キロメートル)の航続距離がある。C-17導入でインドの軍用輸送は大幅に近代 化される。
  7. インドがボーイングP-8I長距離洋上監視・対潜哨戒機の購入を決定して以来米印間の防衛パートナー関係は急速に進 展している。