Israel Spends With Eye On Iran Strikes In Shifting Mideast イラン攻撃を視野にイスラエルの装備増強は中東情勢の変化が背景
Israeli rampage missile
イスラエル軍が新型装備調達に動いており、イラン攻撃の想定とみられる。イランが核兵器開発を再開した場合を想定しているようだ。
すでにイスラエルは20億ドル以上を投じてイラン攻撃準備に入っていると伝えられる。
イスラエルのショッピングリストには新型空中給油機のほか新型兵器にランページRampageミサイルがあり、イスラエル軍事工業企業体(IMI)とイスラエル航空宇宙工業(IAI)が発表したばかりの長距離強襲ミサイルで両社の共同開発だ。
ランページはイスラエル空軍F-35が発射する想定だが同空軍の他機種ほとんどでも運用可能だ。両社によればランページは指揮命令所、空軍基地、整備施設、インフラなど高性能対空装備の防御をうける重要施設攻撃に最適化されている。
IAI、IMI両社によればランページの自重は570キロで全長4.7メートル、射程は150キロという。
イスラエル国防相アヴィゴドール・リーバーマンAvigdor Liebermanからは米国のイラン核合意脱退直後にイランは合意に残るのではとの発言があった。
「イランは綱渡りをしており脅迫まがいの言動も出ているが、合意そのものを反故にすることはないのではないか。というのもイランには激しい攻撃を受けることが分かっておりその場合イラン経済そのものが立ち行かなくなるからだ」
ただしだからと言ってイスラエルがイランの脅威を黙ってみているつもりはないという。「イラン対策の選択肢を下げたことはない。すべての選択肢はテーブルの上にある」
イスラエルが新兵器導入を決めたのはトランプ大統領が核合意脱退を決めたのがきっかけだが、そもそもイスラエルが攻撃力増強をめざす背景には中東の戦略地図再編がある。
イラン、サウジアラビアがこれまで長期にわたりイラクからシリアにかけて覇権をめぐり秘密のうちに戦闘を繰り広げていることが知られ、範囲はレバノンからイエメンにもひろがっている。
トランプ大統領はサウジアラビア支援を公言しイランの影響力封じ込めを狙う。サウジはトランプのイラン核合意脱退を称賛している。サウジからすれば合意は意味のない紙きれにすぎない。イスラエルも同じ見解だ。
イスラエル国防省で軍事情報研究部門に勤めた経験のあるエイモス・ジリード Amos Gilead はBreaking Defenseにイランはトランプの脅かしに屈しないと語る。「核合意はイラン側に有利に働き、あと十年もすれば核兵器保有が現実になります」
米国のイラン核合意脱退でどんな影響がシリア情勢にでるのか。イランはシリアに戦闘要員多数を送り込んでいる。
「イスラエルはイランがシリアに足場を築くのを容認できません。ロシアもシリアへの過度の影響力をイランに持たせないのが得策とみています」(ジリード)
ではイスラエルとロシアが協調してイランのシリア国内での勢力増強を食い止められるのかとジリードに尋ねてみた。「イスラエルからロシアにシリア国内のイラン軍攻撃予定を事前に教えることはありません。ロシアは信用できません」
だがイスラエルはイランを核兵器の観点以外にイスラエル-シリア国境での軍事力増強も重視している。
IDF(イスラエル国防軍)はイランのシリア派遣部隊への攻撃を繰り返している。イラン輸送機が貨物を下した直後に攻撃することもある。
一方でイスラエル情報部は欧米各国がイランに騙されているとの主張を裏付ける情報を集めるのに躍起のようだ。
その中で未確認報道がクウェート日刊紙アル・ジャリダに掲載されイスラエルのF-35戦闘機がイラン領空に侵入したという。
イランは同報道を否定したが、数日後にアリ・ハメネイAli Khamenei 最高指導者はファルザド・エスマイリ准将Brig. Gen. Farzad Esmaili をイラン防空軍司令から更迭している。アリレザ・サバヒ・ファルド准将Brig. Gen. Alireza Sabahi Fardが新司令官に就任し、最高指導者はファルド司令官は同国中央部にあるファタム・アルアンビアKhatam al-Anbia防空基地で指揮をとると発表している。
米軍はイスラエル国内基地各地に軍事物資の集積を増やしている。米軍がイスラエルに軍事装備を搬入できるのは米対外援助法で戦闘予備集積を同盟国内に置くことを認める特別条項があるからだ。同条項によれば装備品は世界各地に展開する米軍部隊が使用する一方、緊急時には集積地の国も使えるとある。もともとこの条項は韓国が米軍装備で北朝鮮奇襲攻撃に対応することを想定していた。
エイモス・ジリードによれば米軍装備品のイスラエル国内集積の狙いは米軍部隊による使用のみという。「これ以外の使途はワシントンが都度決める必要がある」とのことだ。
イスラエルと米国はイランがイランがシリア国内で攻撃を受けていることの報復で地域内軍事同盟関係国や代理勢力を使うのではないかとの点で評価が一致している。
イラン最大の成果はレバノンのヒズボラ勢力で「同国内に別の国を作った」がシリア内線で大打撃を受けているのも事実だ。苦境に立ったシリアのバシャ・アサド大統領を助けることでヒズボラは戦闘員数百名を失っている。
エイモス・ジリードによればヒズボラはレバノンからイスラエルへ発射できるロケット弾120千発がありながら抑止されている状態だという。「シリア、レバノン国内のイスラエル情報部員はヒズボラがイラン製ロケットで長距離精密攻撃能力を得るのを防ごうとしている」のだという。
中東問題に詳しいイスラエル専門家モデチャイ・ケダーMordechai Kedarによれば仮にロシアが本当にシリアからイランを追い出せばイランには大きな敗北になるという。「イランはシリアにプレゼンスを築こうと大金を投じていますが、共和国防衛隊隊員数百名がすでに戦死するという代償を払っています」
ケダーによればアサド政権の維持でロシア、米国の目標は共通しているという。「ロシアはアサドがいなければシリアが混とんとなるばかりか手が付けられない状態になるとわかっているので苦い薬も飲まざるを得ないのです」
イランはトランプ大統領の強硬策を払いのけているが、本当に自国を取り巻く脅威に目をつむれるのか。
「無理ですね。トランプはオバマと違い真剣でありイランもそのことがわかっています」(ケダー)
イエメンも同時にイランの影響力の点で見逃すことが出来ない国だ。
イエメンでイランが支援するフーシ運動はサウジが支援する政府を2015年3月に転覆させ北部地方を支援している。さらにサウジアラビアに100発以上のミサイルを発射している。
ミサイルの標的はサウジ首都でありイエメン国境近くの主要石油製造施設だ。さらにサウジの石油タンカーも狙う。
米国とサウジ主導の多国籍軍がイエメン内戦への介入を2015年に開始し、イランのフーシ向けミサイル供与を非難しているが、イランはこれを否定。
サウジ主導の多国籍軍はイエメン国内に空襲数千回をこの三年で実施し、病院学校等が被害を受け民間人数百名の犠牲が生まれているもののサウジは軍事勝利に近づけない。
サウジ政府は軍人民間人で同国国民数百名がフーシの攻撃で生命を落としたと発表。フーシは迫撃砲のほか短距離ミサイルで攻撃している。
ケダーによればイランの狙いはサウジアラビアの粉砕にあり、オバマ政権はサウジの動向は全く配慮していなかったという。今やホワイトハウスの主は交代し物事は全く違う対処を受けている、という。■
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