スキップしてメイン コンテンツに移動

F-117にみるステルス技術の「神話」と現実

よくあることなのですが、記事のタイトルと内容特に結論が乖離していますね。たしかにF-117は退役後も米国西部にこっそりと温存されていますが、投入できる範囲は限られるでしょう。戦闘機の分類ながら空戦能力が皆無で対地攻撃機に使うのが本領の同機ですがなぜF-117になったのでしょうね。戦闘機と言いながら爆撃機というのはF-105サンダーチーフの例が前にもありましたね。



Could the F-117 Nighthawk Make a 'Stealth' Comeback? F-117ナイトホークが「ステルス」カムバックする可能性はあるのか



June 5, 2018

ッキード・マーティンF-117ナイトホークは伝説の機材だ。2008年に退役したF-117は今日でも有効な戦力になれるのか。
その答えはイランのような中距離程度の脅威を有する国相手なら間違いなくイエスだ。だがロシアや中国と言ったハイエンド脅威国が対象となると怪しくなる。F-117が「ステルス戦闘機」として開発が始まって以来の技術進歩には相当のものがある。
F-117の開発
1970年代に開発が始まり、秘密のうちに供用を開始した1983年、F-117は米国による戦闘の独壇場を開いた機体となった。皮肉にも米国がナイトホークを開発した出発点はソ連でピョートル・ヤコブレビッチ・ウフィムツェフが1962年に執筆した論文だ。折角の構想をソ連は非実用的と無視したが、ロッキードのスカンクワークスのデニス・オーバーホルサーがロシア物理学者の論文に実用的な意義を見出したのだ。
オーバーホルサーの研究からスカンクワークスで絶望のダイヤモンドと呼ばれたコンセプトが生まれた。だがすぐに不格好なダイヤモンド形状がレーダー断面積削減に大きな効果があることが判明した。そこでペンタゴンは直ちにロッキードに契約交付し実証機ハブブルーの作成にあたらせた。これは生存可能試験機(XST)事業の一環だった。ペンタゴンは当時ワルシャワ条約軍の防空体制が実効力を強める中で対策に全力を尽くす必要に迫られ、第三次大戦勃発となればNATO空軍部隊は多大な損害を覚悟せねばならない状態だった。
ロッキードは絶望のダイヤモンド機の設計から辛うじて飛行可能な機体製作に向かった。そこから生まれた機体は多数の面で敵レーダーを無効にする設計でF-117の縮小版の様相で1977年に初飛行した。試作型二機は喪失したが、このハブブルー事業は驚くほどの成功を収めた。このため空軍は後継機としてF-117開発を進めることとした。
F-117は1981年初飛行し1983年に戦力化した。ロッキードがここまで早く作戦機材を開発できたのは他機種の既存コンポネントを流用したためだ。フライバイワイヤはF-16から、エンジンはF/A-18AのジェネラルエレクトリックF404ターボファンからアフターバーナーを省いたものだった。さらにF-117は通常型の航空宇宙用アルミニウム製で、その後のステルス機と一線を画し、製造が容易だった。ロッキードは合計59機のF-117AとYF-117A開発試作型5機を製造した。
F-117の戦歴
F-117の極秘戦闘デビューは1989年でパナマ侵攻作戦だったがその実績は精彩を欠くものだった。ただしF-117は第一次湾岸戦争(1991年)ですばらしい働きをイラクで示し続く第二次湾岸戦争のイラクの自由作戦(2003年)でも同様だった。空軍は予算節約のためとしてナイトホークを2008年に退役させロッキード・マーティンF-22ラプターの予算をねん出した。その時点での空軍見解は航空優勢が主眼のラプターの登場でF-117の出番はなくなったというものだった。
供用期間を通じ機体喪失は1999年3月にユーゴスラビア上空で撃墜されたデイル・ゼルコ中佐操縦の機体一機のみで、コソヴォで発生したこの事件はステルス機といえども無敵ではない、レーダーや赤外線の前にステルス機も探知可能と広く知らしめることとなった。もともと国家安全保障関係者や軍内部でそんな幻想を抱くものは皆無だったが、1990年代から低視認性機の性能を過信する傾向が生まれていた。ステルスは探知追尾を遅らせるだけであり、敵に見つかる前に運んできた兵装を投下するのが基本コンセプトだ。ステルスは機体を透明化にする魔法ではない。
空軍はステルス機が探知不可能であり無敵だとは一貫して考えてこなかった。砂漠の嵐作戦では米陸軍AH-64ガンシップがイラクで初めて戦闘投入されており、そのミッションはイラクの低周波早期警戒レーダーを排除することだった。各レーダーはVHF、UHF帯域を使用していた。こうしたレーダーはF-117の探知追尾が可能だ。アパッチ部隊がステルス機に侵入経路を作りイラク内部へ探知されずに移動できるようにした。同機はC、X、Kuの各帯域でステルス性を発揮できる設計だ。
その後登場したF-22やF-35も高周波火器管制レーダーに有効なステルス性能を有する。第五世代戦闘機はF-117直系といえるが、敵も何かが飛んでいることは察知できる。ただ存在が分かっても打つ手がないはずというのが理論上の説明だ。だが空軍がステルス機を運用する際は海軍の電子戦機がある場合に限っている。
ステルス戦略爆撃機のB-2は潜水艦同様で飛行中に存在を探知されない。大型爆撃機は「広帯域全アスペクト」ステルス機で、つまり低周波レーダーをもってしてもノイズと乱反射に隠れ探知されない。それでもペンタゴンとしてはロシアや中国がここまで早期に低周波レーダーを開発しB-2にも脅威になる事態が来るとは予測していなかった。「B-2の脅威をリアルタイムで予測すべく国防管理システム(DMS)を利用したが、B-2でさえ脅威の進展についていけなく事態が来るとは正直想定できなかった。このため新型LRS-B(B-21)では低周波レーダー対抗を最初から盛り込んでいる」と空軍関係者が述べている。
F-117の限界とF-22を上回るF-35のステルス性能
この空軍関係者の話でF-117が高度のハイエンド戦に対応できないことの説明がつく。亜音速軽爆撃機のF-117が高周波レーダー対策に特化していることはF-22やF-35のようにリアルタイムで脅威発生源を探知したり敵発信の特徴の把握はできないことを意味する。ましてや探知されたり空中で敵に遭遇すれば生き残るのに必要な性能が足りない。
じつはここにF-22やF-35の長所があり、F-117はおろかロシアのPAK-FA(Su-57)や中国のJ-21やJ-31でさえもこの水準に及ばない。F-117の場合は各ミッション実施前に脅威対象を回避するコース設定が必要だった。F-22、F-35では侵入コースがリアルタイムで設定でき、パイロットに情報を提供するインターフェイスが備わる。この関連で共用打撃戦闘機はラプターよりさらに一歩先の性能で、開発時期の差から生じた技術進歩を反映している。
空軍や業界の複数筋からラプターのレーダー断面積はF-35より大きいとの情報があるが、今後の新型機はさらに進歩した電子戦装備のおかげもありステルス性能が向上する。航空戦闘軍団(ACC)司令官を退いたマイク・ホステージ大将がBreaking Defenseに語ったことばを思い起こさせる。「F-35は高度性能がなく速力も劣るが、ステルス性能でF-22を上回る」と述べていた。現ACC司令官ホーク・カーライル大将はF-35のパッシブ性能が優れ自機の出すシグネチャの管理能力は高い、とNational Defense Magazineで述べていた。
そうなるとロシアや中国への優越性はこれまで多額の費用を投入してきた機体とパイロットのインターフェースにかかる。カーライル大将も何年か前に筆者に同じことをペンタゴンで語っている。にもかかわらず米国が技術面で優位性を確保するには新技術の開発に今後も尽力する必要があるのは明らかだ。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...