2016年7月26日火曜日

★★リムパックで中国が海上自衛隊を慣例に反し冷遇していた

人民解放軍は党の軍であり国軍ではありません。政治的に思考行動する組織だとまた証明されましたね。

うーん、この報道も国内には見当たりませんね。シーマンシップという常識は中国にはないのか、解放軍自体に問題があるのか、中国人の思考自体に問題がありそうですね。にしても日本が叩きやすい相手と見られているのは心外ですね。大中国に小日本ですか。海のプロの世界では例外と思っていたのですが、建前でしか行動できないのが中国海軍だとするとこれからのつきあい方も考えたほうがいいと思いつつ、日本は国としての矜持、徳性を維持すべきでしょう。皆さんはどうお思いですか。

Chinese RIMPAC Delegation Snubs Japanese Sailors

July 25, 2016 6:28 PM

Chinese sailors aboard the People's Liberation Army Navy destroyer Xi'an pose on the flight deck in route to RIMPAC 2016 after crossing the International Dateline. Xinhua Photo
日付変更線通過を祝う逐艦西安艦上の中国海軍隊員。同艦はリムパック2016に
参加Xinhua Photo



リムオブザ・パシフィック演習に参加中の中国海軍が艦内視察を海上自衛隊に拒否したうえ、艦上レセプションには嫌々ながら海自関係者を招待したことをUSNI Newsが把握した。
  1. 複数筋によると参加各国が停泊中にレセプションが催す中、7月2日の日本主催レセプションを中国が欠席した。さらにPLANは当初は海自代表を自国レセプションに招待せず、米側から公表され慌てて招待した。
  2. 米太平洋艦隊司令官スコット・スイフト大将と第三艦隊司令官ノラ・タイソン中将は各国が共同作業に加わることがリムパック成功の鍵と強調しており、両提督は7月5日の演習初日の訓示でもこの点に触れている。

Adm. Scott Swift, Commander, U.S. Pacific Fleet, addresses attendees during a news conference at Joint Base Pearl Harbor-Hickam, Hawaii at Rim of the Pacific 2016 on July 5, 2016. US Navy Photo
スコット・スイフト太平洋艦隊司令官が報道陣にパールハーバー共用基地で答えている。2016年7月5日。 US Navy Photo

  1. 海上自衛隊の隊員が中国艦の公開日に視察しようとしたがPLANに拒否されたとUSNI Newsは複数筋から把握した。
  2. 中国は初めて招聘されたリムパック2014を知る関係者は前回はレセプションや公開日で立ち入り制限は一切なかったとUSNI Newsに語っている。

Vice Adm. Nora W. Tyson, Commander, U.S. 3rd Fleet, and Rear Admiral Koji Manabe, Commander, Escort Flotilla 3, prepare to break a traditional Japanese sake drum in the hangar bay of Japan Maritime Self-Defense Force destroyer helicopter ship JS Hyuga (DDH 181) during a reception for Rim of the Pacific 2016 on July 2, 2016. U.S. Navy Photo
ノラ・W・タイソン中将(第三艦隊司令官)と眞鍋 浩司海将補(第三護衛隊群司令)が日本伝統の鏡開きに臨む。海上自衛隊ヘリコプター駆逐艦JSひゅうがのヘリ格納庫内で開かれたレセプションの席上。2016年7月2日。
U.S. Navy Photo

  1. 二年おきに開催のリムパック演習は20余ヶ国の海軍関係者が一同に会し、各国主催艦上レセプションで親交を深め各国理解を深める機会でもある。レセプションは海上演習開始前に開かれる。
  2. 前回までのリムパックに参加経験のある海軍関係者からはライバル意識が韓国や日本にあるとしても社交行事ではしばし忘れられるものだとUSNI Newsに指摘している。
  3. 中国がリムパックで示したあからさまな日本冷遇は中国政府の外交姿勢の反映と各筋は見ている。
  4. 「中国側は他国を冷たくあしらうことで自国待遇への不快感不満感を表しているのだろう」とマイケル・フックス前国務副次官補がUSNI Newsに25日語っている。「中国にとって日本は格好の標的だ」
  5. 軍組織同士の交流でも中国が政府首脳の政治感情でいきなり予定を変更するのはよくあることとジェイムズ・ホームズ海軍大学校教授もUSNI Newsに語っている。

Sailors on the PLAN guided missile frigate Hengshui hoist the Chinese Flag after arriving at the Joint Base Pearl Harbor Hickam to participate in the multinational military exercise RIMPAC in Honolulu, Hawaii, on June 29, 2016. Xinhua Photo
PLAN 誘導ミサイルフリゲート艦衡水が共用基地パールハーバーに到着後
中国国旗を掲揚している。同艦はリムパック参加のためハワイに7月29日到着。 
Xinhua Photo

  1. 米国でも台湾向け武器販売を理由に中国が軍事交流を中断したことがあり、米空母の香港寄港が予告なしに取り消されている。
  2. 「こちら側が軍交流が大切だと示したのは過ちで、あちら側は軍交流行事を中止しこちら側に不快感を覚えていると意思表示して一撃を加えたつもりになのでしょう」(ホームズ)
  3. ステニス空母打撃群の香港寄港をいきなり拒否してきた今年5月の直前には南シナ海でアシュ・カーター国防長官が乗艦している。
  4. 2013年には中国は誘導ミサイル駆逐艦青島をオーストラリア国際観艦式に週末だけ参加させ、他国艦艇がその後数日間寄港したのと対照的だったとホームズはThe Diplomatに寄稿している。シドニー港で青島乗員は艦内にとどまり、一般公開はなかったという。
  5. ホームズはハワイ港内の態度とは違い、中国政府は演習参加を評価しているという。「南シナ海問題の展開を考えると中国が軍同士の交流を中止しなかったのは驚くべきことだ」
  6. リムパックは8月4日までの会期で「27カ国、艦艇45隻、航空機200機以上、25千人」の規模だと米海軍は説明。■


次期大統領選用ヘリVH-92Aが製造段階へ


共和党、民主党の全国大会を経て、いよいよ大統領選挙運動は本格的なステージに入りますが、この新型ヘリコプターの主になるのは誰なのでしょうか。国防や安全保障にグローバルな視点を持つ人に大統領になってもらいたいものです。

US Presidential Helo Moves to Production Phase

Critical Design Review Is Successful

Christopher P. Cavas, Defense News3:17 p.m. EDT July 25, 2016
VH-92A Sikorsky Presidential Helicopter(Photo: Lockheed Martin/Sikorsky)
WASHINGTON – VH-92A大統領専用ヘリコプター更新事業がペンタゴンの大きな試練をくぐったとロッキード・マーティン傘下のシコルスキーが本日発表した重要設計審査CDR)が完了し機体製造組立工程が開始される
シコルスキーと海軍航空システムズ本部(NAVAIR)合同によるVH-92Aヘリコプター開発チームは7月に政府、民間産業会の主要メンバーを招き詳細な設計審査を行ったとロッキードは発表している。
シコルスキーは米海軍から12.4億ドルの固定価格インセンティブ付き技術製造開発(EMD)契約を2014年5月に交付され、テスト用2機、運用型21機を製造する。新型ヘリコプターは現行のVH-3DおよびVH-60Nを更新する。大統領専用ヘリコプター機材は海兵隊が運用する。
「CDRが完了したことで同ヘリコプターシステムが海兵隊の要求内容を満たすことが判明し、合理的な価格で維持可能な同ヘリコプターが重要ミッションを実施できる」と海兵隊のロバート・プリジェン大佐(NAVAIR大統領専用ヘリコプター事業主管)が声明文を発表した。
ロッキードはシコルスキーのストラトフォード工場(コネチカット州)でテスト用機材が改修中と述べている。VH-92Aの初飛行は2017年、2023年度までに機体全部が供用される。
VH-92AはシコルスキーS-92が原型。同事業はマイルストーンBの審査を2014年3月に通過している。■


2016年7月25日月曜日

★イスラエル空軍の成功の鍵は柔軟な思考形式だ



国家存続を賭けて懸命に国防力整備を図っているイスラエルには日本も大いに参考になる要素が多いです。国際共同開発に道が開けたことでイスラエルとの可能性も増えましたね。やや違和感を覚える同国の行動は目的から考える思考が背景にあるのでしょう。ただその結果として日本もF-22導入をイスラエルとともに断念せざるを得なくなったのは皮肉ですが。

War Is Boring We go to war so you don’t have to

An IAF technician with her F-15 at Hatzerim Air Force Base. IDF photo

How Israel’s Air Force Dominates the Sky

The secret is flexibility

by ROBERT FARLEY
イスラエル国防軍(IDF)の航空部門(IAF)は1960年代から一貫して国防の中心だ。戦場を制圧し一般市民を空爆から守ることで戦力を発揮しイスラエル国防軍に優位性を大きく与えている。同時にIAFは遠距離攻撃能力を遠隔地に実施する能力を実証している。
  1. IAFの今日の姿は効果的な訓練、敵側の弱点、戦力整備と導入の柔軟な対応で実現した。長年に渡りイスラエルは空軍主力機の調達に各種の選択肢を使い、フランス、米国からの調達に加え国産化も希求してきた。結局、米国製機材と国産開発の2つに落ち着いており、これが功を奏している。
Israeli F-16I fighters fly in formation on May 10, 2011. IAF photo
  1. 建国間もないイスラエルは入手可能な武器は手当たり次第に確保していた。このためIDFは古色蒼然たる各種装備を取り混ぜて運用しており、大部分はヨーロッパ製だった。
  2. 1950年代末になるとイスラエルは武器調達の関係を英仏両国とka確立する。フランスとは関係を深め、ミラージュ戦闘機はじめ高性能装備の導入に成功し、核開発でもフランスの技術支援は大きかった。
  3. ミラージュはIAFの主力戦闘機として1967年の6日間戦争の開戦直後の数時間で隣国の空軍部隊を壊滅させている。
  4. ところがフランスが武器禁輸措置を1967年に適用しイスラエルは苦境に立たされた。IDFは戦闘機をもっと必要とし、ミラージュで限界を感じていたのは中距離対地攻撃能力だった。このため、イスラエルは古来からの戦法、必要な物は盗め、を実施しスパイ活動でミラージュの技術を入手する。おそらくフランス当局もある程度これを認めていたのだろう。
  5. ここから戦闘機二種類が生まれた。イスラエル航空宇宙工業(IAI)のネシェルNesher とクフィルKfir だ。後者は強力なアメリカ製エンジンを搭載し、IAFの主力戦闘機になった。
  6. 両機種とも輸出に成功し、ネシェルはアルゼンチンが、クフィルはコロンビア、エクアドル、スリランカが運用した。
A Nesher fighter, an Israeli-made version of the Mirage 5, in Argentina in 2010. Jorge Alberto Leonardi photo via Wikimedia
  1. 両機が国内航空宇宙産業の発展につながり、イスラエル経済全体に波及効果を産んだ。国家財政で軍事技術を開発しても民生技術にイノヴェーション効果が出るとは限らない。
  2. ただしイスラエルの場合は政府投資が民生技術の初期開発段階で大きな後押し効果を産んだ。クフィルの成功によりイスラエルも国内で航空宇宙技術を確立できるとわかり、海外依存を減らせた。
  3. それでもイスラエルは海外調達も大規模に続けた。IDFはF-4ファントムを1960年代末に導入し、1970年代中葉にはF-15イーグルを調達した。後者では最初の機材が安息日に到着したことで政治危機も生んだがその結果、イトザク・ラビン首相が誕生し、国産戦闘機開発に舵を切ったのだ。
  4. 米国やソ連の空軍部隊と同様にIAFもハイ・ローミックスの戦闘機整備を目指した。これがラヴィ Lavi軽量多用途戦闘機の開発につながり、F-15イーグルを補完する存在とされた。
A Lavi B-2 prototype Muzeyon Heyl ha-Avir, Israel. Photo via Wikimedia
  1. ラヴィはF-16ヴァイパーが独占することになる隙間需要に応える存在で、一部は米ライセンスを受け、外観はF-16に酷似しながら主翼構造が異なっている。
  2. だが軍事技術を取り巻く環境は変化して、ラヴィの開発には巨額の国家投資が必要でありながら、F-16をそのまま買ってきたのと比べて得られる優位性は僅かだと判明する。
  3. さらに米国の輸出規制体制はフランスより厳格であり、違反した場合は危険な結果につながるとわかった。
  4. ラヴィも輸出すれば成功するはずと楽観視されていたが、米国技術を多用した戦闘機を堂々と輸出するのを米国が黙認しないのは明らかだった。このためラヴィ商談を進めれば問題はこじれるのは必至だった。
  5. 1987年8月にイスラエル政府がラヴィ事業を終了させると、IAIや関連部門から抗議の嵐が生まれた。同機を復活させる政治工作も失敗し、F-16の大量導入に踏み切る。
  6. その後、ラヴィはF-22ラプター輸出の途も閉ざす結果を産んだ。イスラエルがラヴィ(F-16も含む)の技術を中国に提供したことでJ-10が生まれたので、米議会はF-22輸出を全面的に禁じた。イスラエルも他の数か国同様にラプター取得の可能性がなくなり、同機生産が短命になる結果を産んだ。
Israeli F-16Is in flight. U.S. Air Force photo

  1. 純国産戦闘機開発の代わりにイスラエルは米国機材の大幅改造が好みのようだ。F-15I「雷鳴」とF-15I「暴風」は大幅改修を受けイスラエル用に特化した機材になっている。
  2. 両機種とも航続距離が伸び、エイビオニクス性能が引き上げられ、IDFは本国から遠く離れた地点でも十分に戦果をあげられる。
  3. このうちF-15IはF-15Eストライクイーグルの派生型で、IAFの長距離攻撃機の中心だ。F-35も同様にイスラエル仕様に改造しており、ソフトウェアの高性能化がそのひとつだ。
  4. IAIは多大な成功をとげてきたが、戦闘機事業は例外だ。IAIの成功は国内外向けに航空機部品を開発し販売することで達成しており、弾薬類、エイビオニクスが代表例だ。
  5. IAIはUAV市場にも参入しており、国内外で大きな業績をあげている。ラヴィで失敗したがイスラエルのハイテク国防産業分野は概ね良好な業績で、民生分野へも波及効果がある。
  6. イスラエルの国家産業政策の目標はハイテク・イノヴェーションに資金投入し国防と経済成長を同時に進めることだ。
  7. 現在のイスラエル航空宇宙戦略では米国との良好な関係の維持が欠かせない。これは機材の面でも技術共同開発にもあてはまる。
  8. イスラエルに幸運なことに米イスラエル同盟関係が当面は安泰だ。F-22は機密情報保全の懸念で導入できなくなったが、それで両国関係全体が危機になったわけではない。
  9. 今後想定外の事態が発生して、あるいはイスラエルが米国以外の相手先を探す必要が生まれても、イスラエル産業の実力は相当のもので部品やシステム開発能力があり相手先が見つからない事態は想像しにくい。■


2016年7月24日日曜日

☆★米空軍が考えるA-10後継機調達の道のり



CAS機というとA-10の印象が強い中、この記事によれば次期機材は当面は既存機種の転用、長期的には新型機の投入も可能と時間稼ぎのようなことをいっていますがどちらも軽量機となるとのことです。ということはA-10の再来は期待できないということですね。スコーピオンは検討対象外なのでしょうか。

Aerospace Daily & Defense Report

A-10 Warthog Replacement: U.S. Air Force Considers Two-Step Approach

Jul 21, 2016 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

A-10s: USAF
米空軍はA-10ウォートホグの後継機でローエンド軽攻撃機「OA-X」と高性能版の「A-X2」の二機種で構想している。
  1. A-10退役を2018年に迎える中で空軍はまだCAS任務機開発の道筋を決めかねている。7月20日に外部関係者に最新動向を説明する機会で軽攻撃機種2つを並列開発し長期短期双方のニーズに対応する考えを紹介している。
  2. 説明では「OA-X」は防空体制の低い環境用だとマーク・ガンジンガー、戦略予算評価センターのアナリストが述べている。OA-Xはローエンド、低コストで開発工程の不要な機体で既存の米空軍軽攻撃態勢を補強する存在だという。
  3. OA-Xでは既存機種の転用を考え、A-29スーパートゥカーノあるいはAT-6練習機が候補とローレン・トンプソン、レキシントン研究所のアナリストが述べている。
  4. 空軍はOA-XはA-10後継機ではなく補完機材だとガンジンガーは強調している。
  5. 空軍が注目するのが「A-X2」で長期的にはウォートホグ後継機になると両アナリストは言う。A-X2は低度から中度の脅威環境で運用できる機体が理想で、つまり航空優勢が確保できない戦場にも投入可能な機体だ。A-X2を完全新型機にするか、既存機を利用するかは未定だが、価格と運用開始までのリードタイムが重要だという。
  6. 新型軽量攻撃機構想を進める空軍は予算制約に直面する一方で運用機材の即応体制でも問題がある。空軍は安価な既存機種改造策でCAS任務以外にパイロット訓練の実施と機体数追加も目論んでいるとレベッカ・グラント、IRIS独立研究所長は説明している。
  7. 「即応体制の問題では稼働機材を増やすのも解決策で、そのため二機種開発案が出てきたのだろう」とグラントは述べ、「新型機も欲しいと考えているのだろう」
  8. ガンジンンガーは空軍は早ければ2019年度の事業目的記述文書Program Objective Memorandum (POM)にこの事業を記載すると見ていると述べた
  9. 「CASという重要任務をどう継続するか真剣に考えているはずです。現行機種が老朽化し、規模縮小する中で即応体制の問題は予算とからんできます。今回の空軍のメッセージは地上兵員の男女を守ることを空軍が真剣に考えている証です」とガンジンガーは述べた。
  10. ただガンジンガーは補正戦争予算である海外緊急作戦Overseas Contingency Operations (OCO)費目で必要な資金を確保する可能性もあると指摘している
  11. ただトンプソンは空軍が二機種を同時追加して機材近代化を進めようとすれば反対に遭遇すると指摘。
  12. 「空軍が単純なA-10後継機と見ていない理由にA-10の高コストが指摘があります。ただ一度に二機種を追加する動きは予想外」とトンプソンは認めている。■


★★★海自イージス駆逐艦こんごう級、あたご級にSM-2搭載へ

これも目立たないニュースですが中身は重要です。例によって自衛隊の呼称護衛艦は駆逐艦としています。

Japan Secures SM-2 Missiles for Destroyers

     Kongo and Atago Destroyers To Be Outfitted



Wendell Minnick, Defense News8:12 a.m. EDT July 21, 2016


636046852971898780-SM-2-2.jpg(Photo: Raytheon)


TAIPEI, Taiwan —スタンダードミサイル-2(SM-2を日本のこんごう級およびあたご級駆逐艦6隻に246発821百万ドルで売却する案件を米国務省が承認した

  1. 海外向け軍事装備販売を取り仕切る国防安全保障協力庁(DSCA)が7月19日に公表した。主契約企業はレイセオンBAE
  2. 対象はレイセオンのRIM-66M-09 SM-2ブロックIIIBで、MK13MOD O 垂直発射装備のカニスターも含む。
  3. 「イージス戦闘システムと組み合わせるとSM-2ブロックIIIBはこれまでより高性能の面での防衛能力を実現し、東アジアと西太平洋の防空、海上交通路防衛を担う」とDSCAは声明を発表。「日本には中間レベル整備施設が二箇所あり、SM-2ブロックIIIBの保守管理を行う能力があることで新装備の導入は円滑に進むだろう」
  4. 日本はあたご級を改良したイージス駆逐艦二隻を建造中で、ブロックIIIBが最初から搭載され、別に日本製ミサイルも採用する。
  5. 日本が防空体制の強化に努めているのは北朝鮮のミサイル、核開発が続いているからで、中国も東シナ海で日本が実効支配する尖閣諸島で不穏な動きを示している。
  6. 弾道ミサイル対応では日本はSM-3ブロック1Aを導入済みで、宇宙空間でのミサイル迎撃に対応している。レイセオンによれば日本はSM-3の試射に三回連続して米海軍のミサイル試射水域(ハワイ沖)で成功している。2007年、2009年、2010年にそれぞれ海上自衛隊駆逐艦から発射され太平洋上60から100マイル地点で中距離弾道ミサイルを迎撃している。
  7. 「日本は東アジアで主要な政治力、経済力を有する国であり、西太平洋でも同様に米国の主要な民主同盟国であり域内の平和と安定を守っており、域内で緊急事態が発生すれば重要な役割を果たす同盟国であり、国際協力上も密接な関係を果たす合意形成ができている国だ」と7月19日付DSCA報道発表は述べている。「今回の売却は米外交政策や国家安全保障の目的と合致しており、1960年の相互防衛援助協定に準拠している」■

2016年7月23日土曜日

★歴史に残る機体⑦ F-15イーグル



F-15はまだしっかり現役の機体であり、あと20年近く稼働するのですが、歴史に残ることは確実なのでシリーズに加える事にしました。

The National Interest

Why America's Enemies Still Fear the F-15 Eagle 

It’s the ultimate air superiority fighter.

Capt. Matt Bruckner, an F-15 Eagle pilot, flies over Washington, DC​. Wikimedia Commons/U.S. Air Force
Capt. Matt Bruckner, an F-15 Eagle pilot, flies over Washington, DC​. Wikimedia Commons/U.S. Air Force


July 8, 2016


ほぼ三十年にわたりF-15イーグル戦闘機は空の王者とされてきた。後継機F-22ラプターが登場するまで米空軍の第一線航空優勢戦闘機はF-15だった。現時点でも近代化改装を受けたイーグルは強力な機体で、メーカーのボーイングからはさらに耐用年数を延長する提案が出ている。
  1. F-15のルーツはヴィエトナム戦にあり、当時の米空軍、海軍の主力機が北ヴィエトナム機へ芳しい戦いができなかったことに由来する。大型で強力な推進力を有する米戦闘機が、ずっと小型で推力も小さい敵に翻弄されたのだ。朝鮮戦争では13対1の撃墜被撃墜率がヴィエトナムでは1.5対1のどん底にまで下がってしまった。
  2. F-4ファントムが当時の最新鋭機だったが、空対空戦ではミサイルが主力でドッグファイトは時代遅れという前提で飛行操縦性や機関銃の必要性が痛感された。米空軍は制空任務を重視した専用機材の開発を決定し、強力なエンジン、レーダーを備え、ミサイル多数に加え機関銃を再度搭載することにした。さらにドッグファイトを勝ち抜く操縦性も重視した。
  3. 空軍がFX戦闘機の新規提案を求めたは1966年で、六社がこれに応じたが試作機は製造されていない。空軍は1969年にマクダネル・ダグラス(現ボーイング)を採択し、まず107機を発注した
  4. F-15は強力な機体になった。初期型はプラット&ホイットニーF100-PW-100アフターバーナー付きターボファン双発で通常時14,500ポンド、アフターバーナーで23,500ポンドの推力を出し、推力重量比は1以上になり、垂直上昇で音速以上の飛行速度を初めて実現した。強力な推力で高度65千フィートに122秒で達した。水平飛行ではマッハ2.5まで、巡航速度はマッハ0.9だった。
  5. 機首に搭載するAN/APG-63レーダーは当時最先端の半導体方式で「ルックダウン・シュートダウン」が可能で有効範囲は200マイルだった。これによりF-15は低空飛行中の標的をクラッターなしで捕捉することができた。また同レーダーはプログラム変更可能なシステムプロセッサーを初めて採用しソフトウェア変更で性能向上が可能となった。
  6. 当初は長距離交戦にはレーダー誘導式AIM-7スパロウ4発で、短距離には赤外線誘導方式AIM-9サイドワインダー4発で対応する構想だった。だがヴィエトナム戦で米空軍のF-4Cファントムに銃がなく、敵機撃墜の機会を何度も逸していたためF-15はM61ヴァルカン20ミリ機関砲を搭載した。
  7. F-15では長距離性能も当初から想定された。600ポンド燃料タンク三本で3,000マイル飛行でき、米大陸部からヨーロッパへ空中給油なしで飛べた。ヨーロッパ有事の際に迅速に戦力増強が可能となり、その後実際に空軍は砂漠の嵐作戦でF-15飛行隊をサウジアラビアへ派遣している。
  8. F-15試作型の初飛行は1972年で量産は1973年に始まった。その後米空軍およびイスラエル、日本、サウジアラビアなど友邦国部隊に配備された。最初の撃墜事例は1979年6月でイスラエルF-15AがシリアのMiG-21を撃ち落としている。イスラエル空軍のエースパイロットのモシェ・メルニクの功績でメルニクはその後4機をF-15AとF-15Cで撃墜し生涯撃墜記録は11機になった。
  9. メルニクの撃墜記録はF-15による合計104機の連続空対空戦勝利のはじまりとなった。その間F-15の喪失は皆無だ。イスラエル、米国、サウジアラビアによる撃墜には1979年から1982年までだけでもシリアのMiG-25フォックスバット、MiG-21、MiG-23さらに対地攻撃機がある。1991年の湾岸戦争では米・サウジの撃墜実績にはイラクのMiG-29フルクラム、ミラージュF-1およびIl-76中型輸送機がある。F-15EストライクイーグルではイラクのMi-24攻撃ヘリコプターをレーザー誘導爆弾で撃墜した事例が生まれた。
  10. 生産はその後F-15Cに代わり、新型AN/APG-70合成開口レーダー、新型F100-PW-220を搭載した。最新型はゴールデンイーグルのニックネームで、最も良好な機体状況のF-15Cを178機選び、APG-63V3 アクティブ電子スキャンアレイレーダーや共用ヘルメット搭載目標捕捉システムを採用し赤外線誘導ミサイルを発射できる。
  11. 1980年代末にF-15Eが開発され、F-111戦闘爆撃機を補完し敵防空網を突破する高速戦術攻撃機としてワルシャワ条約軍と開戦の場合に敵地深くを攻撃する想定だった。E型では機体一体型燃料タンクを搭載し、大量の爆弾を搭載し、APG-63レーダーとLANTRIN全貌監視赤外線レーザー照準ポッドを採用した。F-111の退役でF-15Eストライクイーグルは今も米空軍の戦術戦闘爆撃機の主役の座にある。
  12. 米空軍向けの最終F-15調達は2001年だが、海外向け販売でボーイングは生産ラインを維持してきた。同社は二度にわたり空軍の関心を買おうとし、まず部分ステルスのサイレントイーグルを2010年に提唱し、2016年にふたたび新型F-15をイーグル2040Cの名称で発表した。イーグル2040CではAIM-120DAMRAAMレーダー誘導ミサイルを16発搭載し当初の4倍ものミサイルとなる。タロンHATEデータリンクでF-22ラプターとのネットワーク形成が可能だ。運用構想はステルスは十分だが軽武装のF-22を敵地に飛ばし、標的情報をイーグル2040Cに送るものでイーグル2040Cは空飛ぶミサイル陣地の役を果たす。
  13. 米空軍は今も改修済みF-15Cと複座型Dを合計177機、さらにF-15Eストライクイーグル224機を運用中だ。アジア、ヨーロッパで前方配備中で、英国のレイクンハース英空軍基地と沖縄の嘉手納空軍基地が有名だ。日本が運用するF-15Jも沖縄から飛ぶが、今年6月には中国Su-30フランカー編隊と交戦一歩手前までになったと伝えられる。F-15Eはイスラム国攻撃にトルコのインチリック空軍基地から出撃している。
  14. 世界では第四世代戦闘機がまだ多数の中、老朽化しつつあるとはいえF-15は今も無敵の存在だ。F-22がイーグルの後継機種だが調達機数が足りず、F-15退役が先送りされており、今はF-22を補完する訓練が進んでいる。このため残存するC型E型が退役する2030年代はじめまで有望な後継機種がない。F-15の供用期間が半世紀にわたるのはほぼ確実で米空軍の第一線戦闘機で初の事例になる。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boringand the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blogJapan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.


★防衛省のMV-22を4機追加発注を確定



なるほど17機購入意向を示した中で、これで9機を確定発注したわけですか。しかしこのニュースは国内では全く報道されていませんね。技術的すぎると判断されたのでしょうか。報道機関には機体名称を正確に記述するようお願いします。MV22ではなくMV-22ですね

Japan orders additional MV-22 tiltrotors

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
22 July 2016

今回の追加発注で日本は予定導入期数の過半数を確保した。防衛省は「遠隔島しょ部が進行を受けた際の迅速対応」に同機が
不可欠としている。 Source: US Navy

日本はベル-ボーイングMV-22Bオスプレイを四機追加調達する。国防総省DoDが7月20日発表した。日本は5機を発注済み。
  1. 今回の案件は2017年度から21年度にかけての米政府複数年度調達544.7百万ドルの一部で生産ロット17から21が該当する。日本はこれでMV-22Bを9機確保した。契約では17機調達する
  2. 契約内容通告によれば海外軍事装備販売(FMS)制度を使い、総額302.9百万ドルで製造用資材の確保、機体生産、納入まで対象とする。2020年5月までに完了する。
  3. 日本はシミュレーター一式も購入する。価格は9.6百万ドルで2017年10月末までに納入される。
  4. 2015年7月に332.5百万ドルで先行発注した5機は2018年6月までに納入される。17機導入の総額は米国防安全保障協力庁DSCAによれば30億ドル。
  5. 日本のMV-22Bは編成を急ぐ「遠隔島しょ部が侵攻を受けた際に迅速対応する」遠征師団の二個連隊に新設される揚陸部隊に編入される。同機で日本の人道援助災害救難ミッションの実施能力が向上する。■


2030年時点の世界五大空軍国はどこか


上位5位に英国が入るのはF-35を予定通り導入する前提の話ですね。今のところ英国防整備は既定方針通りすすめるようですが、経済情勢により今後どうなるかわかりません。一方、日本の状況に近いのはイスラエルですが、新型機材が登場するまで苦しい運用になりそうですね。F-3でもイスラエルと共同開発になれば面白い展開になりそうですね。

The National Interest


The 5 Most Powerful Air Forces in 2030


July 21, 2016

2030年の世界で最強の空軍部隊はどこか。今と大きくかわらない。リストでは現在も上位の米国、ロシア、英国が見える。この三国は紛争シナリオに沿って準備を怠りなく、非国家勢力への対応から全面戦争まで想定している。三国は迅速に展開可能な大規模かつ近代的航空兵力の維持が安全保障上不可欠との認識を持っている。

中華人民共和国が新たにリストに入ってくる。中国が世界第二位の経済規模に似合った空軍力を整備中であるのは納得できる。だがそうだとしても同国は数々の不合理な態度を南シナ海問題などで示しており、中国の戦力整備の今後を予言しているようだ。

米空軍、海軍、海兵隊 

米国の固定翼機運用部隊は三軍体制で、米空軍、海軍、海兵隊があり、2030年でも世界最大の「空軍力」を維持しているだろう。

2030年時点で米空軍はF-22ラプター187機を運用しているはずだ。また「ゴールデンイーグル」F-15Cも178機ありレーダーと赤外線センサー能力を大幅向上している。その時点でF-35Aが1,763機と大量導入されており、F-16CとA-10に置き換わっている。給油機部隊も100機のKC-46ペガサス導入で若返っているはずだ。第二世代ステルス爆撃機のB-21の生産も始まっており、発注は100機ほどになっているだろう。

米海軍は機材をF-35CとF/A-18E/Fスーパーホーネットに統一しているだろう。MQ-25スティングレイ給油機兼ISR無人機も運用し有人戦闘機の飛行距離を伸ばしているはずだ。V-22オスプレイが陸上基地から補給品や郵便物を空母へ運んでいるだろう。海兵隊はF-35へ機種統一し、垂直離陸式のB型と空母運用のC型になっているはずだ。

中国
人民解放軍空軍(PLAAF)と人民解放軍海軍(PLAN)のそれぞれの航空部隊は一大戦力になっているはずだ。保有機数は減るが機体性能は上がる。戦闘機で中心のSu-30、J-11、J-15、J-10は「第四世代プラス」機材だ。米国等に対抗するため中国が開発中の第五世代機J-10やJ-31はなんとしても実用化しておく必要がある。

戦闘機だけでない。PLAAFは国産長距離輸送機Y-20を運行し、2030年までに世界各地へ飛べるようになる。中国は支援機の拡充をめざし、早期警戒機や空中給油機の整備を重視している。東シナ海、南シナ海で緊張が高まる中、中国はは情報収集関し偵察(ISR)機材も重点整備しており、「神雕Divine Eagle」双胴無人機もある。

ロシア
2030年のロシア空軍の姿は大幅にばらつく可能性がある。最良の場合は経済不況から脱し、原油価格等が上昇し、西側制裁が解除された場合、ロシア空軍は世界第二位の規模になっているはずだ。

ロシア空軍で最重要事業は2つありPAK-FA戦闘機とPAK-DA戦略爆撃機だ。このうちPAK-FAはT-50の呼称でも知られ、F-22ラプターに対抗する意味で必要だ。従来型機体のMiG-29やSu-27/30/34にいつまでも依存することはできない。PAK-DA戦略爆撃機はステルス、亜音速、核搭載爆撃機でTu-160ブラックジャック、Tu-22Mバックファイヤーの旧式化に伴い必要とされる。

これは全てロシア経済が回復する前提だ。だが国防予算がさらに15年間にわたり大きな増額がないままだと、制裁効果、官僚主義、汚職で2030年のロシア空軍はトップ10に残れたら幸運となってしまう。

イスラエル
現在のイスラエル空軍の主力は制空戦闘機F-15AおよびCが58機、F-15I戦闘攻撃機25機、F-16多用途戦闘機312機だ。2030年でも中東最強の空軍部隊のままだろう。

2030年までに制空任務用のF-15は機齢40年と後継機探しが深刻になっているはずだが、残念ながらF-15Cの直系の後継機はF-22ラプターの生産が2011年に終了しており見つからない。そうなるとイスラエルはF-15Cの耐用年数を延長するか、一部任務をF-35に任せる選択に迫られるだろう。これは米国で第六世代機が誕生するまでの措置だ。

イスラエルはF-35飛行隊を2021年までに二個編成する予定で、第三飛行隊は2020年代に生まれる。高性能機体といえど、機数はF-16の四分の一しかない。F-16も200機程度を稼働させているだろう。これを補完する意味で高性能無人機部隊が各種支援任務としてISRや防空、空中給油に投入されているはずだ。

英国
2030年代までに英空軍はかつてない規模の戦力になっているはずだ。ただし高性能ユーロファイター・タイフーンは160機を切る規模だ。当初は制空戦闘機の構想だったRAF向けタイフーンは今ではペイブウェイ系統のレーザー誘導爆弾投下任務を行っており、ブリムストーンミサイル運用の改装も進行中だ。タラニスUAVを原型とした戦闘無人機は2030年頃に飛行している予定で有人機とペア運用されているだろう。

旧式化したパナヴィア・トーネードGR4攻撃ジェット機は退役しており、代わりにF-35Bが138機導入されている。F-35Bは英空軍と英海軍が運用し、新型空母HMSクイーン・エリザベスとHMSプリンス・オブ・ウェールズにも配備される。

2030年には英空軍と英海軍航空隊が運用する戦闘機は300機近くと西欧で最大最強の空軍部隊となっているだろう。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boringand the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blogJapan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.