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姿を現し始めたB-21レイダー

Photo Caption & Credits

The Raider Takes Shape

Dec. 1, 2019
B-21レイダー爆撃機の一号機がノースロップ・グラマンのパームデール施設(カリフォーニア州)で組立て中で20ヶ月後にその姿を公開し、更に数カ月後に初飛行する。米空軍は今までの100機を150機まで追加調達する予算を要求している。B-21はこれまで極秘の機体だったがここにきて写真が流出しつつある。
空軍上層部もB-21の話題を堂々と口にするようになってきた。空軍迅速機能整備室を率いるランドール・G・ウォールデンは10月に「実際に部品製造の準備ができている」と語っていた。
製造はノースロップ・グラマンのパームデール工場で始まっている。「一機が中にある。試験用一号機だ。製造ラインはこの瞬間にも稼働中だ」とウォールデンは語る。主要構造部分の主翼などが組立ラインに搬入されている。
ただしこの段階でも事態は未だ流動的だ。空軍副参謀長スティーブン・W・ウィルソン大将はB-21初飛行日程の2021年12月をカウントダウンしていると発言。ウォールデンはそこまで自信がない。B-21の各部統合、地上テスト、さらに天候条件まで考慮すると複雑な事情のため断言できないというのだ。
ウォールデンはパームデールでのロールアウトはB-2の1988年同様に一般公開すると確約している。B-2ではロールアウトから初飛行まで9ヶ月かかったが、B-21では近隣のエドワーズAFBまでの初飛行はそこまで時間をかけず実施できるとウォールデンは述べている。
パームデールでB-2三十周年式典がありノースロップ・グラマンから同施設の従業員は24千名から28千名に増えたことを発表した。航空宇宙システムズ部門の社長ジャニス・G・パミジャンは「大幅に雇用を増やしている」とし、パームデール施設の更新拡充に触れ、RQ-4グローバルホーク、MQ-4トライトン生産を別の場所に移転したという。
ノースロップへ交付の技術製造開発契約は235億ドル規模の事業だ。製造契約は550億ドルで100機生産する内容とウォールデンは2016年に述べていたが、ここに内容不詳の「システムのファミリー」としてB-21の性能を引き上げる対策分は含まれていない。
空軍のB-21契約原案では「80機から100機」の想定であったが、ここにきて空軍は「最低100機」に変えており、空軍協会の9月カンファレンスで空軍参謀総長デイヴィッド・L・ゴールドフェイン大将は100機では足りないとの別の報道内容には「100%同じ見解」と発言して、B-21の開発サイクルはこれ以上加速できないものの、調達規模は100機を超え、しかも想定を上回るペースで進めたいと述べた。
空軍次官マシュー・P・ドノヴァンは10月のAir Force 誌取材で「必要な空軍の規模」について語り、爆撃機飛行隊はあと7つ必要とし、長距離兵力投射能力の拡充が太平洋地域等で求められると語っている。「一個飛行隊には8機を編入する」とし、空軍力の分析では56機の追加調達が必要と見ているとした。2020年度予算要求で「爆撃機の合計機数の実数がわかるはず」と述べた。だが同時に空軍協会のミッチェル航空宇宙研究所による分析では空軍にB-21が174機必要としている点に触れ、ゴールドフェイン大将も「同じ見解」だと述べた。
空軍から当初の価格目標や費用上限水準を変えるとの発表はまだ出ていない。2010年ドル価格基準で単価511百万ドルとしつつ550百万ドルは超えないとしていた。2019年ドル価格にするとそれぞれ553百万ドル、651.7百万ドルになる。ともに100機調達の前提なので調達規模が増えれば単価も下がる可能性がある。
空軍上層部からは数度に渡りB-21は空軍事業でもっとも効率よく運営されているとの言及があり、目標コストや日程管理に触れている。ウォールデンも機体価格が大幅に変化するとしたら性能要求が大きく変化した場合のみだと述べている。
USAFのグローバル打撃軍団ではB-1の62機、B-2の20機を2031年ごろまでに退役させる計画を立てている。B-21を毎年15機調達すればその時点で新型機が100機揃っているはずだ。空軍は420飛行試験飛行隊をエドワーズで再編成しており、B-21の試験を担当させる準備を整えている。
ウォールデンはAir Force 誌にB-21事業ではまだ空力特性の実証を行っておらず、風洞試験飲みになっていると述べている。「リスク低減では実証機材を使うのが通例」と述べつつ、縮小サイズの機体の実現は想定していないと述べそれ以上の詳細に触れていない。
ウォールデン発言に興味を覚えるのは空軍関係者や議会からB-21の調達方式に満足しているとの発言が出ていることだ。ノースロップ・グラマンを契約企業に選定したのは同社の「その他事業」での実績が理由だとされ、RQ-180がそのひとつとされる。ノースロップのバランスシートを見ると極秘事業が多数含まれていることが分かる。
B-21の機体形状はB-2と同じになっていることから高高度でのステルスに最適化されているようだ。B-2では事業の早い段階で要求内容が変わり、低空侵入飛行での機体取り回し性能を重視するようになった。そのためB-2では「のこぎりの歯」形状の後縁形状になり、これだけで数十億ドルと工期の追加になった。
空軍がB-21で唯一公開している想像図ではこの形状になっておらず、B-21では超低空飛行任務を想定していないことがわかる。
Comparing Stealth BombersComparing Stealth Bombers. Graphic: Dash Parham/staff; Illustration: Mike Tsukamoto/staff
B-21事業に参画する企業は7社のみ公表されている。うち、オービタルATKはノースロップグラマンが2018年に吸収した。残りはBAEシステムズGKNエアロスペースジャニッキインダストリーズロックウェル・コリンズスピリットエアロシステムズで、ロックウェル・コリンズはレイセオンテクノロジーズに合併される。
B-21では高性能デジタル工学手法が採用されており、空軍調達主任のウィル・ローパーは「デジタルセンチュリーシリーズ」戦闘機各種でも使う開発機関の短縮が特徴とする。
ウォールデンはB-21技術を次世代航空優勢(NGAD)事業にも「共有」できると見ており、ローパーがB-21事業主管のデイル・R・ホワイト大佐をNGADのトップに据えたことで実現の可能性が高まっている。
空軍は初のB-21飛行隊はサウスダコタ州ラピッドシティのエルスワースAFBになると発表している。同基地はB-1Bを運用中で、B-1からB-21への機種転換の場所となる。次がホワイトマンAFB(ミズーリ州)で唯一のB-2運用基地、さらにテキサスのダイエスAFBが続く。ヘザー・ウィルソン前空軍長官は「現時点の爆撃機基地は今後も爆撃機基地」と述べていた。ティンカーAFB(オクラホマ)がB-21の補給基地となり、同様にジョージアのロビンスAFB、オクラホマのヒルAFBも活用する。後者の二基地はサブアセンブリー部品の再生産や部品テストに使う。
B-21は最初から「基本無人機で有人操縦も選択可」の機体とされ、搭乗員がなくても運用可能だが、空軍上層部はこの点について一年以上にわたり口をつぐんでいる。また核兵器運用ではB21重力投下爆弾と長距離スタンドオフ(LRSO)ミサイル(開発中)の二型式の運用認証を受ける。LRSOでは通常型も開発中だ。
ドノヴァン次官は10月のAir Force誌で空軍は国防総省にB-21追加調達の予算計上を求めるとし、地上配備戦略抑止力事業(ミニットマンICBMの後継ミサイル)、LRSOとともに空軍の通常予算とは別扱いにすると述べていた。海軍もコロンビア級弾道ミサイル潜水艦で潜水艦建造技術基盤の温存の名目で同様の扱いを受けている。ただし抑止力三本柱の残りとなる空軍のミサイル、爆撃機では産業基盤の話題はない。

空軍としては三本柱の近代化のため優先順位の高い他の事業が犠牲になる事態に直面するかもしれない。近代化が必要なのは核兵器だけでないし、戦闘機、給油機、宇宙、サイバーもある中で予算の限界に到達してしまう。「空軍の優先事業の枠内で全てを実行できない状態」とドノヴァン次官も認めている。■

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